IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 味の素株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099465
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20250626BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20250626BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250626BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250626BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L35/00
C08K3/013
C08K3/36
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216144
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC023
4J002BG023
4J002BH022
4J002CC034
4J002CC294
4J002CD041
4J002CD071
4J002DE146
4J002DJ016
4J002EH008
4J002EH107
4J002EN008
4J002FD016
4J002FD030
4J002FD050
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD144
4J002FD148
4J002FD150
4J002FD200
4J002GF00
4J002GQ01
4J002HA01
(57)【要約】
【課題】高温高周波での誘電正接が低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に優れる絶縁層を形成できる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)特定のエポキシ樹脂、(B)マレイミド樹脂、及び、(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって;(B)マレイミド樹脂の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上、30質量%以下であり、(C)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、65%質量以上である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(A-1)で表されるエポキシ樹脂、(B)マレイミド樹脂、及び、(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、
(B)マレイミド樹脂の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上、30質量%以下であり、
(C)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、65%質量以上である、樹脂組成物。
【化1】
(前記式において、
a1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;
a2は、それぞれ独立に、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3b)で表される基を示し;少なくとも2つのRa2のうち、1つは式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を示し;
a3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;
a4は、それぞれ独立に、水素原子又は式(A-3a)で表される基を示し;
は、式(A-1)から2つのRa2を除いた残基であって、残基中のRa2は水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示し;
は、0~2の整数を示し;
は、繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数であり;
は、繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。)
【請求項2】
(B)マレイミド樹脂が、芳香族マレイミド樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)マレイミド樹脂が、脂環式骨格を含有するマレイミド樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(D)重合性不飽和樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(E-1)活性エステル系樹脂を含む(E)硬化剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
【請求項9】
請求項8に記載の回路基板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその硬化物、樹脂シート、回路基板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の回路基板は、各種電子機器に広く使用されている。回路基板の製造方法としては、内層基板に絶縁層と導体層とを交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。絶縁層は、例えば、樹脂組成物の硬化物によって形成される。具体例を挙げると、樹脂組成物を含む樹脂組成物層を形成し、その樹脂組成物層を硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層が形成される。このような樹脂組成物としては、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物が知られていた(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2023/100572号
【特許文献2】特開2022-150798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第5世代移動通信システム(5G)などの高速通信では、高周波環境で作動させる際に伝送損失を抑制することが求められる。また、回路基板は半導体チップの発熱によって高温になることがある。そこで、本発明者は、高温高周波での誘電正接を低くできる絶縁層の開発を試みた。
【0005】
ところが、本発明者の検討によれば、高温高周波での誘電正接を低くした絶縁層は、導体層との密着性に劣ることが判明した。具体的には、下記の通りである。一般に、絶縁層は、導体層と接合するように形成されることがあり、回路基板の信頼性向上のためには絶縁層と導体層との間の密着性が高いことが望まれる。特に、長期間にわたって高い信頼性を達成して回路基板の長寿命化を実現する観点では、HAST(High Accelerated Stress Test;加速環境試験)後において絶縁層と導体層との間の密着性に優れることが望ましい。ところが、高温高周波での誘電正接の低い絶縁層は、HAST後の密着性に劣る傾向があった。
【0006】
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたものであって、高温高周波での誘電正接が低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に優れる絶縁層を形成できる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板;並びに、前記回路基板を含む半導体装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、特定のエポキシ樹脂と、特定範囲の量のマレイミド樹脂と、特定範囲の量の無機充填材と、を組み合わせて含む樹脂組成物が、前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0008】
<1> (A)式(A-1)で表されるエポキシ樹脂、(B)マレイミド樹脂、及び、(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、
(B)マレイミド樹脂の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上、30質量%以下であり、
(C)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、65%質量以上である、樹脂組成物。
【化1】
(前記式において、
a1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;
a2は、それぞれ独立に、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3b)で表される基を示し;少なくとも2つのRa2のうち、1つは式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を示し;
a3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;
a4は、それぞれ独立に、水素原子又は式(A-3a)で表される基を示し;
は、式(A-1)から2つのRa2を除いた残基であって、残基中のRa2は水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示し;
は、0~2の整数を示し;
は、繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数であり;
は、繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。)
<2> (B)マレイミド樹脂が、芳香族マレイミド樹脂を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> (B)マレイミド樹脂が、脂環式骨格を含有するマレイミド樹脂を含む、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> (D)重合性不飽和樹脂を含む、<1>~<3>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<5> (E-1)活性エステル系樹脂を含む(E)硬化剤を含む、<1>~<4>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<6> 支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、<1>~<5>のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
<7> <1>~<5>のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
<8> <1>~<5>のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
<9> <8>に記載の回路基板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温高周波での誘電正接が低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に優れる絶縁層を形成できる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板;並びに、前記回路基板を含む半導体装置;を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において変更して実施してもよい。
【0011】
本明細書において「誘電率」とは、別に断らない限り、「比誘電率」を意味する。
【0012】
本明細書において、化合物又は基についていう「置換基を有していてもよい」という用語は、該化合物又は基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該化合物又は基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
【0013】
<樹脂組成物の概要>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)式(A-1)で表されるエポキシ樹脂、特定範囲の量の(B)マレイミド樹脂、及び、特定範囲の量の(C)無機充填材、を組み合わせて含む。以下の説明では、「(A)式(A-1)で表されるエポキシ樹脂」を「(A)特定エポキシ樹脂」ということがある。
【0014】
【化2】
【0015】
(前記式において、Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;Ra2は、それぞれ独立に、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3b)で表される基を示し;少なくとも2つのRa2のうち、1つは式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を示し;Ra3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;Ra4は、それぞれ独立に、水素原子又は式(A-3a)で表される基を示し;Aは、式(A-1)から2つのRa2を除いた残基であって、残基中のRa2は水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示し;iは、0~2の整数を示し;nは、繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数であり;pは、繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。*(アスタリスク)は、結合部位を表す。)
【0016】
前記の樹脂組成物によれば、高温高周波での誘電正接が低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に優れる絶縁層を形成できる。また、この樹脂組成物によれば、通常、絶縁層の比誘電率を低くすること、HAST前の導体層と絶縁層との密着性を優れたものにすること、絶縁層のスミア除去性を良好にすること、絶縁層のクラック耐性を改善すること、及び、絶縁層のガラス転移温度を高くすること、が可能である。
【0017】
前記のように優れた効果が得られる仕組みを、本発明者は、下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みによって制限されるものでは無い。
【0018】
(A)特定エポキシ樹脂は、主鎖中のベンゼン環に結合したグリシジルオキシ基を含有する。このグリシジルオキシ基は、分子骨格から理解できるように、主鎖に対して自由に動くことができる。そうすると、グリシジルオキシ基は樹脂組成物中で他の分子間に容易に進入し、それら分子間の相互作用を妨げることができる。よって、極性基同士の相互作用が妨げられる結果、極性部位が集合したり、極性基間の相互作用で微小なレベルでの分子配向が生じたりすることを抑制できるので、樹脂組成物全体としての極性の偏りが生じることを抑制できる。したがって、樹脂組成物及びその硬化物の極性を低減できるから、当該硬化物を含む絶縁層の誘電正接を低くでき、更に通常は比誘電率も低くできる。
【0019】
また、このような(A)特定エポキシ樹脂は、グリシジルオキシ基が分子間の相互作用を低減するので、(A)特定エポキシ樹脂を含む樹脂組成物の硬化物の分子間には小さい水分子が浸入しやすい傾向があった。よって、硬化物を高温高湿環境に置いた場合、一般に、水蒸気の浸入による加水分解によって硬化物が劣化し、密着性の大きな低下を生じることがあった。これに対し、本実施形態に係る樹脂組成物は、(B)マレイミド樹脂を用いている。(B)マレイミド樹脂は、ラジカル重合を生じて炭素-炭素結合を形成できる。この炭素-炭素結合は、エポキシ基の反応によって形成されるエステル結合等の結合と比べ、加水分解に対する耐性に優れる。また、(B)マレイミド樹脂は、酸素原子及び窒素原子等のヘテロ原子を含有するから、それらのヘテロ原子の作用により、(A)特定エポキシ樹脂による相互作用の低減が生じる条件でも、樹脂組成物の硬化物が金属等の無機材料に高い親和性を発揮できる。よって、本実施形態に係る樹脂組成物によれば、水蒸気に対する耐性が高く、かつ、無機材料に対して高い親和性を有する硬化物によって絶縁層を形成できるから、HAST後の導体層と絶縁層との密着性を良好にできる。さらに、前記のヘテロ原子の作用による密着性の向上は、HAST前でも発揮できるから、本実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常、HAST前の導体層と絶縁層との密着性も良好にできる。
【0020】
さらに、(A)特定エポキシ樹脂のグリシジルオキシ基は、硬化時に反応して架橋構造を形成するが、その架橋構造は、(A)特定エポキシ樹脂の主鎖部分に比べて自由に動くことができる。よって、そのグリシジルオキシ基に由来する架橋構造が、応力を緩和するように動くことができるので、硬化物の靭性を高めることができる。よって、絶縁層の破壊による剥離(デラミネーション)を抑制できる。このようにデラミネーションを抑制できることも、本実施形態に係る絶縁層が優れた密着性を発揮できる一因と考えられる。しかし、(B)マレイミド樹脂が過剰であると、グリシジルオキシ基に由来する架橋構造が相対的に少なくなり、応力を緩和する作用が不足して、かえって密着性の低減を生じることがありうる。よって、(B)マレイミド樹脂の量は、適切な範囲に収めることが求められる。
【0021】
また、前記のように、(A)特定エポキシ樹脂は、グリシジルオキシ基が分子間の相互作用を低減するので、スミアを除去するデスミア処理で使用される膨潤液及び酸化剤溶液の成分は、樹脂組成物の硬化物中に浸入しやすい。また、(B)マレイミド樹脂のラジカル重合によって形成される炭素-炭素結合は、酸化剤による酸化を受けやすい。したがって、通常、硬化物を含む絶縁層は、優れたスミア除去性を有することができる。
【0022】
さらに、(A)特定エポキシ樹脂のグリシジルオキシ基に由来する架橋構造は、前記のように、応力を緩和するように動くことができるので、樹脂組成物の硬化物の応力に対する耐性を高めることができる。したがって、応力によるクラックの発生を抑制することができるから、クラック耐性に優れる絶縁層を形成できる。
【0023】
<(A)特定エポキシ樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分としての(A)特定エポキシ樹脂を含む。(A)特定エポキシ樹脂は、式(A-1)で表される。
【0024】
【化3】
【0025】
式(A-1)において、Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~8の炭化水素基を示す。Ra1が示す炭化水素基は、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数6~8のアリール基、炭素原子数7~8のアラルキル基、又はアリル基が好ましい。Ra1におけるアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。Ra1におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基等が挙げられる。Ra1におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、フェニル基及びメチル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。(A)特定エポキシ樹脂が1分子中に複数のRa1を含有する場合、それらのRa1は、同じでもよく、異なっていてもよい。ベンゼン環へのRa1の結合位置は、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれであってもよいが、オルト位が好ましい。
【0026】
式(A-1)において、Ra2は、それぞれ独立に、水素原子、ジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3b)で表される基を示す。ここで、少なくとも2つのRa2のうち、1つはジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を示す。
【0027】
ジシクロペンテニル基は、ジシクロペンタジエンに由来する基であり、式(A-2а)もしくは式(A-2b)で表される。(A)特定エポキシ樹脂が1分子中にジシクロペンテニル基を複数含有する場合、それらのジシクロペンテニル基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0028】
【化4】
【0029】
式(A-3a)又は式(A-3b)で表される基は、以下のとおりである。
【0030】
【化5】
【0031】
式(A-3a)において、Ra3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~8の炭化水素基を示す。Ra3における炭素原子数1~8の炭化水素基としては、Ra1における炭素原子数1~8の炭化水素基と同じものが例示される。中でも、Ra3は、硬化物の耐熱性の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、及びビニル基が好ましく;水素原子、メチル基及びエチル基がより好ましく;水素原子及びエチル基が更に好ましい。(A)特定エポキシ樹脂が1分子中にRa3を複数含有する場合、それらのRa3は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、共通のベンゼン環に結合するRa3のうち、1つがエチル基であり、残りが水素原子であることが特に好ましい。また、Ra3としての炭素原子数1~8の炭化水素基のベンゼン環への結合位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、メタ位及びパラ位が好ましい。
【0032】
式(A-3b)において、Ra3は、式(A-3a)におけるRa3と同義である。
【0033】
式(A-3b)において、Aは、式(A-1)から2つのRa2を除いた2価の残基を示す。この2価の残基中のRa2は、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示す。(A)特定エポキシ樹脂が1分子中にAを複数含有する場合、それらのAは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0034】
式(A-3b)において、Ra4は、それぞれ独立に、水素原子又は式(A-3a)で表される基を示す。(A)特定エポキシ樹脂が1分子中にRa4を複数含有する場合、それらのRa4は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0035】
式(A-3b)において、pは、繰り返し数を表す0以上の数を示す。pの平均値(数平均)は、通常0.01~3.0であり、好ましくは0.1~2.0であり、より好ましくは0.2~1.0であり、更に好ましくは0.3~0.8である。
【0036】
式(A-1)において、iは、0~2の整数を示す。iは、基Ra1の数を表し、通常0~2であり、好ましくは1又は2であり、より好ましくは2である。
【0037】
式(A-1)において、nは繰り返し数を表す0以上の数を示す。nの平均値(数平均)は、通常0~5.0であり、好ましくは1.0~4.0であり、より好ましくは1.1~3.0であり、更に好ましくは1.2~2.5である。
【0038】
(A)特定エポキシ樹脂は、例えば、下記式(A-4)で表される多価ヒドロキシ樹脂と、エピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンとを反応させることによって製造できる。具体的な製造方法は、国際公開第2023/100572号を参照しうる。
【0039】
【化6】
【0040】
(前記式において、Ra5は、それぞれ独立に、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3c)で表される基を示し;少なくとも2つのRa5のうち、1つは式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3c)で表される基を示し;Aa1は、式(A-4)から2つのRa5を除いた残基であって、残基中のRa5は水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示し;その他の記号は上述した通りである。*は、結合部位を表す。)
【0041】
(A)特定エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは200g/eq.以上、より好ましくは250g/eq.以上、更に好ましくは300g/eq.以上、更に好ましくは350g/eq.以上であり、好ましくは4,000g/eq.以下、より好ましくは2,000g/eq.以下、更に好ましくは1,000g/eq.以下、更に好ましくは500g/eq.以下である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0042】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定を行った場合の(A)特定エポキシ樹脂の組成としては、式(A-1)において、好ましくは、n=0体が20面積%以下、n=1体が40面積%~90面積%、n=2体以上が0面積%~60面積%の範囲にある。
【0043】
(A)特定エポキシ樹脂の全塩素含有量は、2000ppm以下が好ましく、1500ppm以下が更に好ましい。
【0044】
(A)特定エポキシ樹脂の150℃における溶融粘度は、好ましくは1.0Pa・s以下、より好ましくは0.7Pa・s以下、更に好ましくは0.5Pa・s以下である。下限は、例えば、0.01Pa・s以上、0.05Pa・s以上、0.1Pa・s以上などでありうる。
【0045】
(A)特定エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(A)特定エポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。樹脂組成物中の不揮発成分とは、別に断らない限り、樹脂組成物中の成分のうちで(I)溶剤を除いた成分を表す。(A)特定エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0047】
(A)特定エポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。樹脂組成物中の樹脂成分とは、別に断らない限り、樹脂組成物中の不揮発成分のうちで(C)無機充填材を除いた成分を表す。(A)特定エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0048】
樹脂組成物は、後述するように、(A)特定エポキシ樹脂に組み合わせて(A’)任意のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。このとき、(A)特定エポキシ樹脂の量は、(A)特定エポキシ樹脂及び(A’)任意のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂の全体量100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、通常100質量%以下である。(A)特定エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0049】
(A)特定エポキシ樹脂及び(A’)任意のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂の全体量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。エポキシ樹脂の全体量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0050】
(A)特定エポキシ樹脂及び(A’)任意のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂の全体量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。エポキシ樹脂の全体量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0051】
<(B)マレイミド樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(B)成分としての(B)マレイミド樹脂を含む。(B)マレイミド樹脂は、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を含有する樹脂を表す。(B)マレイミド樹脂には、上述した(A)成分に該当するものは含めない。
【0052】
(B)マレイミド樹脂としては、例えば、芳香環に直接結合したマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂、脂肪族基に直接結合したマレイミド基を有する脂肪族マレイミド樹脂、が挙げられる。(B)マレイミド樹脂は、芳香族マレイミド樹脂のみを含んでいてもよく、脂肪族マレイミド樹脂のみを含んでいてもよく、芳香族マレイミド樹脂及び脂肪族マレイミド樹脂を組み合わせて含んでいてもよい。中でも、ガラス転移温度の高い硬化物を得る観点では、(B)マレイミド樹脂は、芳香族マレイミド樹脂を含むことが好ましく、芳香族マレイミド樹脂のみを含むことがより好ましい。
【0053】
また、(B)マレイミド樹脂は、特定の分子骨格を含有するものが好ましい。好ましい分子骨格としては、例えば、ビフェニル骨格、脂環式骨格などが挙げられる。これらの分子骨格を含有する(B)マレイミド樹脂によれば、誘電正接、比誘電率、密着性、スミア除去性及びクラック耐性といった特性を特に良好にできる。また、脂環式骨格の中でも、インダン骨格を含有するマレイミド樹脂は、相溶性に優れることから、前記の特性を特に良好に改善できる。
【0054】
(B)マレイミド樹脂の好ましい例としては、下記式(B-1)で表される部分構造を含有するマレイミド樹脂が挙げられる。通常、式(B-1)で表される部分構造を含有するマレイミド樹脂は、脂肪族マレイミド樹脂である。また、式(B-1)で表される部分構造を含有するマレイミド樹脂が1分子に有するマレイミド基の数は、2以上であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
【0055】
【化7】
【0056】
(式(B-1)において、環Bは、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環を示し;i及びjは、それぞれ独立に、0又は1以上の整数を示し、且つiとjの合計が6以上であり;*は、結合部位を示す。)
【0057】
式(B-1)において、環Bは、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環を表す。脂肪族炭化水素環は、飽和脂肪族炭化水素環であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素環であってもよい。また、脂肪族炭化水素環は、1つの環を有する単環式の脂肪族炭化水素環であってもよく、複数の環を有する多環式の脂肪族炭化水素環であってもよい。脂肪族炭化水素環の炭素原子数は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは14以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは6以下である。
【0058】
環Bの脂肪族炭化水素環は、前記の中でも、単環式の脂肪族炭化水素環が好ましく、単環式の飽和脂肪族炭化水素環がより好ましい。単環式の飽和脂肪族炭化水素環としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等のモノシクロアルカン環が挙げられ、シクロヘキサン環が好ましい。
【0059】
環Bの脂肪族炭化水素環が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。中でも、アルキル基及びアルケニル基が好ましく、アルキル基が更に好ましい。
【0060】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0061】
アルキル基は、直鎖、分枝鎖又は環状の1価の脂肪族飽和炭化水素基でありうる。アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~14、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
【0062】
アルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖又は環状の1価の脂肪族不飽和炭化水素基でありうる。アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2~14、より好ましくは2~6、更に好ましくは2又は3である。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基)、ブテニル基(1-ブテニル基、クロチル基、メタリル基、イソクロチル基等)、ペンテニル基(1-ペンテニル基等)、ヘキセニル基(1-ヘキセニル基等)、ヘプテニル基(1-ヘプテニル基等)、オクテニル基(1-オクテニル基等)、シクロペンテニル基(2-シクロペンテニル基等)、シクロヘキセニル基(3-シクロヘキセニル基)等が挙げられる。
【0063】
アリール基は、芳香族炭素環の1個の水素原子を除いてなる1価の芳香族炭化水素基でありうる。アリール基の炭素原子数は、好ましくは6~14、より好ましくは6~10である。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0064】
アラルキル基は、1個又は2個以上(好ましくは1個)のアリール基で置換されたアルキル基でありうる。アラルキル基の炭素原子数は、好ましくは7~15、より好ましくは7~11である。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロシンナミル基、α-メチルベンジル基、α-クミル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0065】
式(B-1)において、i及びjは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示す。また、iとjの合計は、通常6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。i及びjは、好ましくは0~20の整数であり、より好ましくは1~20の整数であり、更に好ましくは5~10の整数である。i及びjは、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、i及びjは、特に好ましくは8である。
【0066】
式(B-1)で表される部分構造を含有するマレイミド樹脂の例としては、下記式(B-2)で表されるマレイミド樹脂が挙げられる。
【0067】
【化8】
【0068】
(式(B-2)において、Rb10は、それぞれ独立して、置換基を示し;環Cは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;Db1及びDb2は、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し;Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;cは、それぞれ独立して、0又は1を示し;dは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し;eは、それぞれ独立して、0、1又は2を示し;nは、0又は1以上の整数を示し;その他の記号は上述した通りである。c単位、d単位及びn単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0069】
式(B-2)において、Rb10は、それぞれ独立して、置換基を示す。Rb10が示す置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。
【0070】
式(B-2)において、環Cは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示す。芳香環は、環上のπ電子系に含まれる電子数が4p+2個(pは自然数)であるヒュッケル則に従う環でありうる。芳香環は、炭素原子のみを環構成原子とする芳香族炭素環;又は環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する芳香族複素環;がありうるが、芳香族炭素環が好ましい。芳香環は、5~14員の芳香環が好ましく、6~14員の芳香環がより好ましく、6~10員の芳香環がさらに好ましい。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環又はナフタレン環であり、更に好ましくはベンゼン環である。
【0071】
環Cの芳香環が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。中でも、アルキル基が好ましい。
【0072】
式(B-2)において、Db1及びDb2は、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、好ましくは、単結合、-C(R-、又は-O-であり、より好ましくは-O-である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。
【0073】
式(B-2)において、cは、それぞれ独立して、0又は1を示し、好ましくは1である。
【0074】
式(B-2)において、dは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し、好ましくは0、1、2又は3であり、より好ましくは0、1又は2であり、更に好ましくは0である。
【0075】
式(B-2)において、eは、それぞれ独立して、0、1又は2を示し、好ましくは0である。
【0076】
式(B-2)において、nは、0又は1以上の整数を示し、好ましくは0である。
【0077】
式(B-2)中に含まれる下記式(B-3)で表される部分構造の例としては、後述する式(b-1)~(b-3)で表される部分構造が挙げられる。
【0078】
【化9】
【0079】
【化10】
【0080】
(式中、*は結合部位を示す。)
【0081】
式(B-1)で表される部分構造を含有するマレイミド樹脂の市販品としては、例えば、Designer Molecules Inc.社製の「BMI-689」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」;信越化学工業社製の「SLK-1500-T80」(下記式(b-4)の化合物)、「SLK-6895-T90」(式(b-5)の化合物)等が挙げられる。
【0082】
【化11】
【0083】
(B)マレイミド樹脂の別の好ましい例としては、式(B-4)で表されるマレイミド樹脂が挙げられる。
【0084】
【化12】
【0085】
(式(B-4)において、Rb20は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;環E、環F及び環Gは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;Zb1は、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、又は-NHCO-を示し;Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;fは、1以上の整数を示し;gは、それぞれ独立して、0又は1を示し;hは、それぞれ独立して、0、1、2又は3を示す。f単位及びh単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0086】
式(B-4)において、Rb20は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0087】
式(B-4)において、環E、環F及び環Gは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示す。環E、環F及び環Gにおける置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。環E、環F及び環Gは、好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくはアルキル基及びアリール基から選ばれる基で置換されていてもよいベンゼン環であり、更に好ましくは無置換のベンゼン環である。
【0088】
式(B-4)において、Zb1は、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、又は-NHCO-を示し、好ましくは単結合である。Rは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0089】
式(B-4)において、fは、1以上の整数を示し、好ましくは1~10の整数である。
【0090】
式(B-4)において、gは、それぞれ独立して、0又は1を示し、好ましくは1である。
【0091】
式(B-4)において、hは、それぞれ独立して、0、1、2又は3を示し、好ましくは0、1又は2であり、より好ましくは0又は1であり、更に好ましくは1である。
【0092】
式(B-4)で表されるマレイミド樹脂の市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」、「MIR-5000-60T」等が挙げられる。
【0093】
(B)マレイミド樹脂の更に別の好ましい例としては、式(B-5)で表されるマレイミド樹脂が挙げられる。
【0094】
【化13】
【0095】
(式(B-5)において、Rb30は、それぞれ独立して、アルキル基を示し;環H及び環Iは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;mは、1以上の整数を示す。m単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0096】
式(B-5)において、Rb30は、それぞれ独立して、アルキル基を示し、好ましくはメチル基である。
【0097】
式(B-5)において、環Hは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示す。環Hにおける置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。環Hは、好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくはアルキル基で置換されていてもよいベンゼン環であり、更に好ましくはアルキル基で置換されたベンゼン環である。
【0098】
式(B-5)において、環Iは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示す。環Iにおける置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。環Iは、好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくはアルキル基で置換されていてもよいベンゼン環であり、更に好ましくは無置換のベンゼン環である。
【0099】
式(B-5)において、mは、1以上の整数を示し、好ましくは1~20の整数である。
【0100】
式(B-5)で表されるマレイミド樹脂は、例えば、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の方法又はそれに準ずる方法を用いて製造することができる。
【0101】
(B)マレイミド樹脂のマレイミド基当量は、好ましくは30g/eq.以上、より好ましくは75g/eq.以上、更に好ましくは150g/eq.以上、更に好ましくは200g/eq.以上、更に好ましくは250g/eq.以上、更に好ましくは300g/eq.以上であり、好ましくは2,500g/eq.以下、より好ましくは2,000g/eq.以下、更に好ましくは1,500g/eq.以下、更に好ましくは1,000g/eq.以下、更に好ましくは500g/eq.以下である。マレイミド基当量は、マレイミド基1当量当たりの樹脂の質量を表す。
【0102】
(B)マレイミド樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上、更に好ましくは400以上、更に好ましくは500以上、更に好ましくは600以上であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは3,000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0103】
(B)マレイミド樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、通常2質量%以上、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。(B)マレイミド樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、絶縁層の比誘電率を低くすること、HAST前の導体層と絶縁層との密着性を優れたものにすること、絶縁層のスミア除去性を良好にすること、絶縁層のクラック耐性を改善すること、及び、絶縁層のガラス転移温度を高くすること、が可能である。
【0104】
(B)マレイミド樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。(B)マレイミド樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0105】
(A)特定エポキシ樹脂及び(B)マレイミド樹脂の合計量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは7質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。(A)特定エポキシ樹脂及び(B)マレイミド樹脂の合計量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0106】
(A)特定エポキシ樹脂と(B)マレイミド樹脂との質量比((B)マレイミド樹脂の量/(A)特定エポキシ樹脂の量)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の質量比((B)マレイミド樹脂の量/(A)特定エポキシ樹脂の量)は、具体的には、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.6以下である。質量比((B)マレイミド樹脂の量/(A)特定エポキシ樹脂の量)が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0107】
(A)特定エポキシ樹脂及び(A’)任意のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂の全体量と(B)マレイミド樹脂との質量比((B)マレイミド樹脂の量/エポキシ樹脂の全体量)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の質量比((B)マレイミド樹脂の量/エポキシ樹脂の全体量)は、具体的には、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下である。質量比((B)マレイミド樹脂の量/エポキシ樹脂の全体量)が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0108】
<(C)無機充填材>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(C)成分としての(C)無機充填材を含む。(C)無機充填材は、無機材料の粒子である。よって、(C)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれ、通常は、当該粒子の状態を維持したまま硬化物に含まれる。
【0109】
(C)無機充填材を形成する無機材料としては、通常、無機化合物を用いる。(C)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ及びアルミナが好適であり、シリカが特に好適である。よって、(C)無機充填材は、シリカを含むことが好ましく、シリカのみを含んでいてもよい。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
(C)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製の「セルスフィアーズ」「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」「BA-1」などが挙げられる。
【0111】
(C)無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下である。
【0112】
(C)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0113】
(C)無機充填材の比表面積は、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは1m/g以上、特に好ましくは3m/g以上であり、好ましくは100m/g以下、より好ましくは70m/g以下、さらに好ましくは50m/g以下、特に好ましくは40m/g以下である。(C)無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで測定できる。
【0114】
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0115】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0116】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%の表面処理剤で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%の表面処理剤で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0117】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物層の溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
【0118】
(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0119】
(C)無機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、通常65質量%以上、好ましくは68質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。前記のように(C)無機充填材が多い場合、相対的に樹脂成分が少なくなるので、一般的には絶縁層と導体層との密着性は低くなる傾向があり、特にHAST後の密着性は大きく低下する傾向があった。これに対し、本実施形態に係る樹脂組成物によれば、前記のように(C)無機充填材が多くてもHAST後の密着性に優れる絶縁層を得ることができる。また、(C)無機充填材の量が前記範囲にある場合、通常は、誘電正接、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0120】
(A)特定エポキシ樹脂、(B)マレイミド樹脂及び(C)無機充填材の合計量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0121】
<(A’)任意のエポキシ樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(A)特定エポキシ樹脂以外の(A’)任意のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。(A’)成分としての(A’)任意のエポキシ樹脂としては、エポキシ基を有する硬化性樹脂であって、(A)特定エポキシ樹脂に該当しない樹脂を用いうる。よって、(A’)任意のエポキシ樹脂には、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(A’)任意のエポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
(A’)任意のエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0123】
(A’)任意のエポキシ樹脂は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、芳香族構造を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。芳香族構造を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビシキレノール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0124】
(A’)任意のエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A’)任意のエポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
【0125】
(A’)任意のエポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。(A’)任意のエポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0126】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0127】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP-4032」、「HP-4032-D」、「HP-4032-SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0128】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0129】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0130】
(A’)任意のエポキシ樹脂が液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含む場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは7:1~1:7である。
【0131】
(A’)任意のエポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~3,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1,000g/eq.である。
【0132】
(A’)任意のエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。
【0133】
(A’)任意のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。(A’)任意のエポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0134】
(A’)任意のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。(A’)任意のエポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0135】
<(D)重合性不飽和樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(B)マレイミド樹脂以外の(D)重合性不飽和樹脂を含んでいてもよい。(D)成分としての(D)重合性不飽和樹脂には、上述した(A)~(C)成分又は(A’)成分に該当するものは含めない。(D)重合性不飽和樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
(D)重合性不飽和樹脂としては、非芳香族性の炭素-炭素不飽和結合を含有する樹脂を用いうる。よって、(D)重合性不飽和樹脂は、通常、非芳香族性の炭素-炭素不飽和結合を含む重合性不飽和基を有しうる。重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基等のα,β-不飽和カルボニル基等が挙げられる。これらの重合性不飽和基を有する(D)重合性不飽和樹脂は、通常、ラジカル重合によって、(B)マレイミド樹脂と反応したり、(D)重合性不飽和樹脂同士で反応したりできる。(D)重合性不飽和樹脂は、重合性不飽和基を2個以上有することが好ましい。
【0137】
(D)重合性不飽和樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系重合性不飽和樹脂、スチレン系重合性不飽和樹脂、アリル系重合性不飽和樹脂などが挙げられる。
【0138】
(メタ)アクリル系重合性不飽和樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する樹脂を用いうる。(メタ)アクリル系重合性不飽和樹脂としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂などの高分子量(分子量1000以上)のアクリル酸エステル化合物などが挙げられる。(メタ)アクリル系重合性不飽和樹脂の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」(ジオキサングリコールジアクリレート)、共栄社化学社製の「DCP-A」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「DCP」(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)、「BPE-1300N」(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート)、日本化薬社製の「KAYARAD R-684」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「KAYARAD R-604」(ジオキサングリコールジアクリレート)、SABIC社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル)などが挙げられる。
【0139】
スチレン系重合性不飽和樹脂としては、芳香族炭素原子に直接結合したビニル基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する樹脂を用いうる。スチレン系重合性不飽和樹脂としては、例えば、ジビニルベンゼン、2,4-ジビニルトルエン、2,6-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテルなどの低分子量(分子量1000未満)のスチレン系化合物;ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの高分子量(分子量1000以上)のスチレン系化合物;などが挙げられる。これらのスチレン系重合性不飽和樹脂の中でも、モノビニル芳香族化合物単位及びジビニル芳香族化合物単位を組み合わせて含む樹脂が好ましい。モノビニル芳香族化合物単位とは、ビニル基1個が単独で直接結合した芳香環を有するスチレン等のモノビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位を表す。また、ジビニル芳香族化合物単位とは、ビニル基2個が直接結合した芳香環を有するジビニルベンゼン等のジビニル芳香族化合物を重合して形成される構造を有する構造単位を表す。かかる好ましいスチレン系重合性不飽和樹脂としては、例えば、国際公開第2017/115813号に記載の樹脂が挙げられる。スチレン系重合性不飽和樹脂の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ODV-XET(X03)」、「ODV-XET(X04)」、「ODV-XET(X05)」(スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、三菱ガス化学社製の「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)が挙げられる。
【0140】
アリル系重合性不飽和樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のアリル基を有する樹脂を用いうる。アリル系重合性不飽和樹脂としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリルなどの芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパンなどのエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタンなどのベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼンなどのエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシランなどのアリルシラン化合物などが挙げられる。中でも、末端にアリル基を有する樹脂が好ましい。アリル系重合性不飽和樹脂の市販品としては、例えば、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、富士フィルム和光純薬社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日触テクノファインケミカル社製の商品名「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP-d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成工業社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)、DIC社製の「NE-V-1100-70T」などが挙げられる。
【0141】
(D)重合性不飽和樹脂としては、ラジカル反応が可能な重合性不飽和基に組み合わせて、ラジカル反応以外の反応によって結合を形成できる活性基を含む樹脂を用いてもよい。このような活性基としては、例えば、フェノール性水酸基(芳香環に直接結合した水酸基)、活性エステル基、などが挙げられる。
【0142】
(D)重合性不飽和樹脂は、分子骨格にインダン骨格を含む樹脂を含んでいてもよい。インダン骨格を含む重合性不飽和樹脂は、通常、他の樹脂成分との相溶性に優れる。
【0143】
(D)重合性不飽和樹脂は、分子骨格にポリフェニレンエーテル骨格を含む樹脂を含んでいてもよい。
【0144】
(D)重合性不飽和樹脂の重合性不飽和基当量は、好ましくは20g/eq.~3,000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~2,500g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは90g/eq.~1,500g/eq.である。重合性不飽和基当量は、重合性不飽和基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0145】
(D)重合性不飽和樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以下、より好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下、特に好ましくは3,000以下である。下限は、特に限定されるものではないが、例えば、150以上などでありうる。
【0146】
(D)重合性不飽和樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。(D)重合性不飽和樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0147】
(D)重合性不飽和樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。(D)重合性不飽和樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0148】
<(E)硬化剤>
本実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(A)特定エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂同士が反応して結合を形成してもよいが、(E)硬化剤と反応して結合を形成してもよい。よって、樹脂組成物は、任意の成分として、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させることができる(E)硬化剤を含んでいてもよい。(E)成分として(E)硬化剤には、上述した(A)~(D)成分又は(A’)成分に該当するものは含めない。例えば、適切な触媒下では(B)マレイミド樹脂はエポキシ樹脂と反応することがありえるが、(B)マレイミド樹脂は(E)硬化剤には分類しない。(E)硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
(E)硬化剤は、(E-1)活性エステル系樹脂を含むことが好ましい。(E-1)成分としての(E-1)活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いうる。(E-1)活性エステル系樹脂はエポキシ樹脂との反応によって水酸基等の極性基を生成しないので、硬化物の極性を低くでき、よって絶縁層の誘電正接及び比誘電率を低くできる。また、従来、(E-1)活性エステル系樹脂を用いて形成した絶縁層はスミア除去性に劣る傾向があったが、本実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常は、(E-1)活性エステル系樹脂を用いながらスミア除去性を良好にできる。
【0150】
(E-1)活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。
【0151】
(E-1)活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0152】
具体的には、(E-1)活性エステル系樹脂としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が好ましく、中でもナフタレン型活性エステル系樹脂がより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル系樹脂としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂が好ましい。
【0153】
(E-1)活性エステル系樹脂の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「HPC-8151-62T」(DIC社製);りん含有活性エステル系樹脂として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0154】
(E-1)活性エステル系樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0155】
(E-1)活性エステル系樹脂の活性エステル基数は、(A)特定エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは5以下である。樹脂組成物中の「(A)特定エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)特定エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をそのエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、樹脂組成物中の「(E-1)活性エステル系樹脂の活性エステル基数」とは、樹脂組成物中に存在する(E-1)活性エステル系樹脂の不揮発成分の質量をその活性エステル基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。さらに、活性エステル基当量は、活性エステル基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0156】
(E-1)活性エステル系樹脂の活性エステル基数は、(A)特定エポキシ樹脂及び(A’)任意のエポキシ樹脂を含めた全エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは2以下である。樹脂組成物中の「全エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をそのエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。
【0157】
(E-1)活性エステル系樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。(E-1)活性エステル系樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0158】
(E-1)活性エステル系樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。(E-1)活性エステル系樹脂の量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0159】
(A)特定エポキシ樹脂、(B)マレイミド樹脂及び(E-1)活性エステル系樹脂の合計量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。(A)特定エポキシ樹脂、(B)マレイミド樹脂及び(E-1)活性エステル系樹脂の合計量が前記範囲にある場合、高温高周波での誘電正接が特に低く、かつ、HAST後の導体層との密着性に特に優れる絶縁層を形成できる。また、通常は、比誘電率、HAST前の密着性、スミア除去性、クラック耐性、及び、ガラス転移温度を特に良好にできる。
【0160】
(E-1)活性エステル系樹脂以外の(E)硬化剤の好ましい例としては、フェノール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、酸無水物系樹脂、アミン系樹脂などが挙げられる。
【0161】
フェノール系樹脂としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基(フェノール性水酸基)を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する樹脂を用いうる。耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系樹脂が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール系樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0162】
フェノール系樹脂の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0163】
ベンゾオキサジン系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のベンゾオキサジン環を有する樹脂を用いうる。ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」、「ALP-d」などが挙げられる。
【0164】
シアネートエステル系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のシアネート基を有する樹脂を用いうる。シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネートエステル系樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネートエステル系樹脂;これらシアネートエステル系樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザ社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル系樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0165】
カルボジイミド系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する樹脂を用いうる。カルボジイミド系樹脂の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド系樹脂の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-05」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ランクセス社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0166】
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上の酸無水物基を有する樹脂を用いうる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系樹脂の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;レゾナック社製の「HN-2200」;クレイバレー社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0167】
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する樹脂を用いうる。アミン系樹脂としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂の市販品としては、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」;三菱ケミカル社製の「エピキュアW」;住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。
【0168】
(E)硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3,000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1,000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの樹脂の質量を表す。例えば、フェノール系樹脂の活性基当量はフェノール性水酸基当量を表し、フェノール性水酸基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0169】
(E)硬化剤の重量平均分子量(Mw)の範囲は、(A’)任意のエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲と同じであってもよい。
【0170】
(E)硬化剤の活性基数は、(A)特定エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは5以下である。樹脂組成物中の「(E)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(E)硬化剤の不揮発成分の質量をその活性基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。
【0171】
(E)硬化剤の活性基数は、(A)特定エポキシ樹脂及び(A’)任意のエポキシ樹脂を含めた全エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは3以下である。
【0172】
(E)硬化剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0173】
(E)硬化剤の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0174】
<(F)硬化促進剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(F)硬化促進剤を含んでいてもよい。(F)成分としての(F)硬化促進剤には、上述した(A)~(E)成分又は(A’)成分に該当するものは含めない。(F)硬化促進剤は、(A)特定エポキシ樹脂及び(A’)任意のエポキシ樹脂といったエポキシ樹脂の反応に触媒として作用して樹脂組成物の硬化を促進することができる。
【0175】
(F)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(F)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0176】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0177】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0178】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0179】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0180】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0181】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0182】
(F)硬化促進剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0183】
(F)硬化促進剤の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0184】
<(G)有機充填材>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(G)有機充填材を含んでいてもよい。(G)成分としての(G)有機充填材には、上述した(A)~(F)成分又は(A’)成分に該当するものは含めない。(G)有機充填材は、通常、(G)有機充填材以外の樹脂成分と相溶せず粒子の状態で樹脂組成物に含まれ、当該粒子の状態を維持したまま硬化物に含まれる。また、(G)有機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0185】
(G)有機充填材としては、有機材料の粒子を用いうる。(G)有機充填材に含まれる有機材料としては、ゴム成分が好ましい。ゴム成分としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系エラストマー;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、イソプレン-イソブチレン共重合体、イソブチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等のアクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。さらにゴム成分には、ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴムを混合してもよい。ゴム粒子に含まれるゴム成分は、ガラス転移温度が例えば0℃以下であり、-10℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。
【0186】
(G)有機充填材は、上記で挙げたゴム成分を含むコア粒子と、コア粒子に含まれるゴム成分と共重合可能なモノマー成分をグラフト共重合させたシェル部からなるコア-シェル型ゴム粒子であってもよい。ここでコア-シェル型とは、必ずしもコア粒子とシェル部が明確に区別できるもののみを指しているわけではなく、コア粒子とシェル部の境界が不明瞭なものも含み、コア粒子はシェル部で完全に被覆されていなくてもよい。
【0187】
(G)有機充填材の具体例としては、例えば、サムスンSDI社製の「CHT」;テクノUMG社製の「B602」;ダウ社製の「パラロイドEXL-2602」、「パラロイドEXL-2603」、「パラロイドEXL-2655」、「パラロイドEXL-2311」、「パラロイド-EXL2313」、「パラロイドEXL-2315」、「パラロイドKM-330」、「パラロイドKM-336P」、「パラロイドKCZ-201」、三菱レイヨン社製の「メタブレンC-223A」、「メタブレンE-901」、「メタブレンS-2001」、「メタブレンW-450A」「メタブレンSRK-200」、カネカ社製の「カネエースM-511」、「カネエースM-600」、「カネエースM-400」、「カネエースM-580」、「カネエースMR-01」、アイカ工業社製の「スタフィロイドAC3355」、「スタフィロイドAC3816」、「スタフィロイドAC3816N」、「スタフィロイドAC3832」、「スタフィロイドAC4030」、「スタフィロイドAC3364」等が挙げられる。
【0188】
(G)有機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0189】
(G)有機充填材の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0190】
<(H)任意の添加剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、更に(H)任意の添加剤を含んでもよい。(H)成分としての(H)任意の添加剤には、上述した(A)~(G)成分又は(A’)成分に該当するものは含めない。(H)任意の添加剤としては、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(H)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0191】
<(I)溶剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(H)成分及び(A’)成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に任意の揮発性成分として(I)溶剤を含んでいてもよい。(I)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(I)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0192】
(I)溶剤の量は、樹脂組成物中の全成分100質量%に対して、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下でありえ、0質量%であってもよい。
【0193】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、樹脂組成物に含まれうる成分を混合することによって、製造することができる。上述した成分は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適宜設定してもよく、よって、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。
【0194】
<樹脂組成物及びその硬化物の特性>
本実施形態に係る樹脂組成物は、通常、低い最低溶融粘度を有することができる。よって、例えば表面に配線を備える内層基板上に樹脂組成物層を形成する場合に、内層基板表面の配線を樹脂組成物層に良好に埋め込むことができる。樹脂組成物の具体的な最低溶融粘度の範囲は、好ましくは1900poise以下、より好ましくは1800poise以下、更に好ましくは1700poise以下である。下限は、例えば、500poise以上、1000poise以上などでありうる。(A)特定エポキシ樹脂のグリシジルオキシ基が樹脂組成物中で他の分子間に容易に進入し、それら分子間の相互作用を妨げることができるので、このように低い最低溶融粘度が得られるものと推察される。ただし、本発明の技術的範囲は、この推察によって制限されない。
【0195】
樹脂組成物の最低溶融粘度は、動的粘弾性測定装置を使用して、周波数1Hz、歪み5度、荷重100g、昇温速度5℃/分、温度範囲60℃~180℃の測定条件で昇温しながら溶融粘度を測定し、測定された溶融粘度の最低値を最低溶融粘度として得ることができる。
【0196】
樹脂組成物を硬化させることにより、当該樹脂組成物の硬化物を得ることができる。そして、この硬化物によって、絶縁層を形成できる。通常、樹脂組成物の硬化時には熱が加えられるので、樹脂組成物に含まれる成分のうち、(I)溶剤等の揮発性成分は、硬化時の熱によって揮発しうる。よって、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、(A)~(H)成分及び(A’)成分といった不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
【0197】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、優れた誘電特性を有することができ、具体的には、低い誘電正接Dfを有することができる。一例において、硬化物の誘電正接Dfは、好ましくは0.0030以下、より好ましくは0.0027以下、更に好ましくは0.0025以下である。誘電正接Dfの下限は、特に制限は無く、例えば、0.0010以上でありうる。
【0198】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、低い比誘電率Dkを有することができる。一例において、硬化物の比誘電率Dkは、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下である。誘電正接Dkの下限は、特に制限は無く、例えば、1.5以上でありうる。
【0199】
前記の硬化物の誘電正接Df及び比誘電率Dkは、スプリットシリンダー法により、測定周波数10GHz、測定温度90℃で測定できる。試料が硬化前の樹脂組成物である場合、その樹脂組成物を190℃で90分の硬化条件で硬化して硬化物を得て、その硬化物の誘電正接Df及び比誘電率Dkを測定してもよい。具体的な測定方法は、後述する実施例の<試験1.比誘電率Dk及び誘電正接Dfの測定試験>に記載の方法を採用しうる。
【0200】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、導体層との間の密着性に優れ、特にHAST後の密着性に優れることができる。例えば、後述する実施例の<試験5.導体層との密着性の測定試験>に記載の方法で硬化物によって絶縁層を形成し、HAST後の絶縁層と導体層との間の密着強度を測定した場合、高い密着強度を得ることができる。具体的なHAST後の密着強度の範囲は、好ましくは0.2N/cm以上、より好ましくは0.3N/cm以上、更に好ましくは0.4N/cm以上である。上限は、特に制限は無く、例えば1.5N/cm以下でありうる。
【0201】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、HAST前の導体層との間の密着性に優れることができる。例えば、後述する実施例の<試験5.導体層との密着性の測定試験>に記載の方法で硬化物によって絶縁層を形成し、そのHAST前に絶縁層と導体層との間の密着強度を測定した場合、高い密着強度を得ることができる。具体的なHAST前の密着強度の範囲は、好ましくは0.4N/cm以上、より好ましくは0.5N/cm以上、更に好ましくは0.6N/cm以上である。上限は、特に制限は無く、例えば2N/cm以下でありうる。
【0202】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、優れたスミア除去性を有することができる。例えば、後述する実施例の<試験3.スミア除去性の評価試験>に記載の方法で硬化物によって絶縁層を形成し、そのスミア除去性を評価した場合、最大スミア長を5μm未満にできる。
【0203】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、優れたクラック耐性を有することができる。例えば、後述する実施例の<試験4.デスミア処理後のクラック耐性の評価試験>に記載の方法で硬化物によって絶縁層を形成し、そのクラック耐性の評価を行った場合、クラックの数を10個以下にできる。
【0204】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、高いガラス転移温度Tgを有することができる。一例において、硬化物のガラス転移温度Tgは、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上、特に好ましくは160℃以上であるガラス転移温度Tgの上限は、特に制限は無く、例えば、240℃以下、220℃以下、200℃以下などでありうる。
【0205】
前記の硬化物のガラス転移温度Tgは、熱機械分析装置を用い、測定範囲25℃から250℃、昇温速度5℃/分の条件で測定できる。試料が硬化前の樹脂組成物である場合、その樹脂組成物を190℃で90分の硬化条件で硬化して硬化物を得て、その硬化物のガラス転移温度Tgを測定してもよい。具体的な測定方法は、後述する実施例の<試験2.ガラス転移温度Tgの測定試験>に記載の方法を採用しうる。
【0206】
<樹脂組成物の用途>
本実施形態に係る樹脂組成物は、絶縁層の形成用途に用いることができ、特に回路基板の絶縁層形成用途に用いることが好ましい。また、樹脂組成物は、樹脂シートの製造用に用いてもよい。通常、この樹脂シートを用いて、絶縁層の形成が行われる。また、樹脂組成物は、その他の用途に用いてもよく、例えば、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、封止樹脂、部品埋め込み樹脂等の用途に用いてもよい。
【0207】
<樹脂シート>
本発明の一実施形態に係る樹脂シートは、支持体と、該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備える。樹脂組成物層は、上述した樹脂組成物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物のみを含む。
【0208】
樹脂シートが備える樹脂組成物層の厚みは、薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。樹脂組成物層の厚みの下限は、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上等でありうる。
【0209】
支持体としては、例えば、プラスチック材料のフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料のフィルム及び金属箔が好ましい。
【0210】
支持体としてプラスチック材料のフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0211】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0212】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0213】
支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、ウレタン系離型剤、及びシリコーン系離型剤からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、シリコーン系離型剤又はアルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「PET501010」、「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0214】
支持体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、好ましくは75μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0215】
樹脂シートは、必要に応じて任意の部材を備えていてもよい。例えば、樹脂シートは、樹脂組成物層を保護する保護フィルムを備えていてもよい。保護フィルムは、通常、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを備える場合、樹脂組成物層の表面へのゴミの付着及びキズを抑制できる。
【0216】
樹脂シートは、例えば、支持体上に樹脂組成物層を形成することを含む方法によって、製造できる。具体例を挙げると、液状(ワニス状)の樹脂組成物をそのまま、或いは溶剤と樹脂組成物とを混合して液状(ワニス状)の樹脂組成物を調製し、これを支持体上に塗布し、更に必要に応じて乾燥させて熱樹脂組成物層を形成させることによって、樹脂シートを製造してもよい。溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した(I)溶剤と同様のものを用いてもよい。
【0217】
樹脂組成物の塗布は、ダイコーター等の塗布装置を用いて行いうる。また、乾燥は、例えば、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施しうる。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の溶剤の含有量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。溶剤の沸点によっても異なりうるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0218】
製造された樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートが使用可能となる。
【0219】
<回路基板>
本発明の一実施形態に係る回路基板は、上述した樹脂組成物の硬化物を含む。通常、回路基板は絶縁層を備え、この絶縁層が樹脂組成物の硬化物を含む。絶縁層は、樹脂組成物の硬化物のみを含んでいてもよい。絶縁層の厚みは、特に制限はなく、例えば、樹脂シートが備える樹脂組成物層の厚みと同じ範囲にありうる。また、絶縁層は、通常、上述した樹脂組成物の硬化物と同様の特性を有することができる。
【0220】
好ましくは、回路基板は内層基板を備え、この内層基板上に前記の絶縁層を備える。また、回路基板は、導体層を備えていてもよい。例えば、絶縁層上に導体層を備えていてもよい。以下、好ましい回路基板の製造方法の例を説明する。
【0221】
好ましい例に係る回路基板の製造方法は、
内層基板上に樹脂組成物層を形成する工程(I)と、
樹脂組成物層を硬化させる工程(II)と
を含む。
【0222】
「内層基板」とは、回路基板の基材となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、内層基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよい。また、内層基板が備える導体層は、パターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。また、回路基板を製造する際に、更に絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、用語「内層基板」に含まれる。また、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0223】
内層基板上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板上に樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥することを含む形成方法によって行ってもよいが、樹脂シートを用いて行なうことが好ましい。樹脂シートを用いた樹脂組成物層の形成方法は、通常、樹脂シートと内層基板とを積層することを含む。樹脂シートと内層基板との積層は、樹脂シートの樹脂組成物層と内層基板とが接合するように行われる。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行ってもよい。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスすることが好ましい。
【0224】
内層基板と樹脂シートとの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0225】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行ってもよい。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0226】
回路基板の製造方法は、積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、樹脂シートの平滑化処理を行うことを含んでいてもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着の条件と同様の条件としてもよい。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。積層と平滑化処理とは、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0227】
本例に係る回路基板の製造方法は、工程(I)の後で、樹脂組成物層を硬化させる工程(II)を含む。工程(II)において樹脂組成物層を硬化することにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を形成できる。
【0228】
樹脂組成物層の硬化は、通常、熱硬化によって行う。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。例えば、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。また、硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0229】
回路基板の製造方法は、樹脂組成物層の熱硬化の前に、当該樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含んでいてもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃~150℃、好ましくは60℃~140℃、より好ましくは70℃~130℃の温度にて、樹脂組成物層を通常5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。予備加熱は、通常は工程(I)の後に行われる。また、内層基板と樹脂シートとの積層の後に平滑化処理が行われる場合、予備加熱は、通常、その平滑化処理の後に行われうる。
【0230】
樹脂シートを用いた場合、回路基板の製造方法は、内層基板と樹脂シートとの積層の後に、樹脂シートの支持体を剥離する工程を含みうる。支持体の剥離は、工程(I)と工程(II)との間に行ってもよく、工程(II)の後に行ってもよい。また、回路基板の製造方法が、後述するように絶縁層にホールを形成する工程(III)、絶縁層に粗化処理を施す工程(IV)、導体層を形成する工程(V)を含む場合、支持体の剥離は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。
【0231】
回路基板の製造方法は、工程(II)の後で、絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成する工程(III)を含んでいてもよい。ホールの形成方法は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等の要素に応じて選択しうる。例えば、ドリル加工、レーザー加工、プラズマ加工等の加工方法によってホールを形成してもよく、中でもレーザー加工が好ましい。例えば、支持体の剥離後に絶縁層にレーザー光を照射してホールを形成してもよく、支持体を介して絶縁層にレーザー光を照射してホールを形成してもよい。ホールの寸法及び形状は、回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0232】
回路基板の製造方法は、絶縁層に粗化処理を施す工程(IV)を含んでいてもよい。粗化処理によれば、絶縁層の表面の粗化を行うことができる。また、粗化処理によれば、絶縁層からスミア(樹脂残渣)を除去できる。よって、この粗化処理は「デスミア処理」と呼ばれることがある。例えば、工程(III)でホールの形成を行うと、そのホール内にスミアが形成されることがありうるので、工程(III)の後で工程(IV)の粗化処理を行って、前記のスミアを除去することが好ましい。
【0233】
粗化処理の手順及び条件は特に限定されず、回路基板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による酸化処理、中和液による中和処理を絶縁層に対してこの順に施して、粗化処理を実施してもよい。
【0234】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0235】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による酸化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0236】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化剤による酸化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性の観点から、酸化剤による酸化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0237】
回路基板の製造方法は、絶縁層上に導体層を形成する工程(V)を含んでいてもよい。回路基板の製造方法が工程(III)又は(IV)を含む場合、導体層を形成する工程(V)は、通常、工程(III)及び(IV)の後に行うことが好ましい。
【0238】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよい。合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0239】
導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。導体層が複層構造を有する場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0240】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μmである。
【0241】
導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法が好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0242】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきにより無電解めっき層(めっきシード層)を形成する。次いで、形成された無電解めっき層上に、所望の配線パターンに対応して無電解めっき層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出した無電解めっき層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要な無電解めっき層をエッチングにより除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0243】
別の例として、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱業社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0244】
絶縁層上に導体層を形成した場合、回路基板の製造方法は、導体層の形成後にアニール処理を行うことを含んでいてもよい。アニール処理によれば、絶縁層と導体層との密着性を高めることができる。アニール処理は、例えば、150℃~210℃で20分~180分間加熱することにより行いうる。
【0245】
回路基板の製造方法において、上述した各工程は、1回のみ行ってもよく、2回以上繰り返して行ってもよい。例えば、工程(I)~工程(V)を繰り返し実施して、複数の絶縁層及び導体層を備える多層プリント配線板等の多層構造を有する回路基板を形成してもよい。
【0246】
回路基板の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、回路基板の製造方法は、導体層と接合するように半導体チップを設ける工程を含んでいてもよい。具体例を挙げると、半導体チップを備える半導体チップパッケージ用の回路基板を製造する場合に、回路基板の製造方法は、半導体チップを設ける工程を含んでいてもよい。半導体チップは、半導体チップの端子電極と絶縁層上に形成された導体層とが導体接続できる適切な条件を採用できる。例えば、フリップチップ実装において使用される条件を採用してもよい。また、半導体チップは、絶縁性の接着剤を介して接合してもよく、リフローにより接合してもよい。さらに、必要に応じて、設けた半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。また、回路基板の製造方法は、例えば、封止層を形成する工程、ソルダーレジスト層を形成する工程、製造した回路基板をダイシングして個片化する工程などを含んでいてもよい。
【0247】
回路基板としては、例えば、プリント配線板及び半導体チップパッケージ等が挙げられる。半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、Fan-out型WLP(Wafer Level Package)、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP(Panel Level Package)、Fan-in型PLPが挙げられる。これらの半導体チップパッケージにおいては、上述した樹脂組成物を硬化させた硬化物により、絶縁層としての再配線形成層を形成することが好ましい。ただし、回路基板は、ここで例示するものには限られない。
【0248】
<半導体装置>
前記の回路基板は、半導体装置の製造に用いることができる。半導体装置は、上述した回路基板を備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0249】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、特に指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(23℃)及び大気圧(1atm)であった。
以下の説明において、別途明示の無い限り、「MIBK」は、メチルイソブチルケトンを表す。
【0250】
<合成例1:特定エポキシ樹脂(A1)の製造>
(測定方法の説明)
(1)水酸基当量:
水酸基当量は、JIS K0070規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。なお、別途明示が無い限り、フェノール系樹脂の水酸基当量は、フェノール性水酸基当量を表す。
【0251】
(2)軟化点:
軟化点は、JIS K7234規格、環球法に準拠して測定した。具体的には、自動軟化点装置(メイテック社製「ASP-MG4」)を使用した。
【0252】
(3)エポキシ当量:
エポキシ当量は、JIS K7236規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。具体的には自動電位差滴定装置(平沼産業社製「COM-1600ST」)を用いて、溶媒としてクロロホルムを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液で滴定した。
【0253】
(4)全塩素含有量:
全塩素含有量は、JIS K7243-3規格に準拠して測定を行い、単位は「ppm」で表した。具体的には、溶媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用し、1mol/L水酸化カリウム1,2-プロパンジオール溶液を加えて加熱処理した後、自動電位差滴定装置(平沼産業社製「COM-1700」)を用いて、0.01mol/Lの硝酸銀溶液で滴定した。
【0254】
(5)溶融粘度:
溶融粘度は、ICI粘度測定装置(東亜工業社製「CV-1S」)を使用し、150℃で測定した。
【0255】
(6)GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
GPC測定は、本体(東ソー社製「HLC-8220GPC」)にカラム(東ソー社製「TSKgelG4000HXL」、「TSKgelG3000HXL」、「TSKgelG2000HXL」)を直列に備えたものを使用し、カラム温度40℃で行った。溶離液にはテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料はサンプル0.1gを10mLのTHFに溶解し、マイクロフィルターで濾過したものを50μL使用した。データ処理は、東ソー社製の「GPC-8020モデルIIバージョン6.00」を使用した。
【0256】
(7)IR(赤外吸光スペクトル):
フーリエ変換型赤外分光光度計(Perkin Elmer Precisely社製「Spectrum One FT-IR Spectrumeter 1760X」)を用い、セルには塩化ナトリウムを使用し、クロロホルムに溶解させたサンプルをセル上に塗布、乾燥させた後、波数450cm-1~4000cm-1の透過率を測定した。
【0257】
(8)ESI-MS:
質量分析計(島津製作所製「LCMS-2020」)を用い、移動相としてアセトニトリルと水を用い、アセトニトリルに溶解させたサンプルを測定することにより、質量分析を行った。
【0258】
(工程1.多価ヒドロキシ樹脂(PH1)の合成)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、滴下ロート、及び冷却管を備えたガラス製セパラブルフラスコからなる反応装置に、2,6-キシレノール500部、及び、47%BFエーテル錯体7.1部を仕込み、撹拌しながら100℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン60.1部(2,6-キシレノールに対し0.11倍モル)を1時間で滴下した。さらに、115℃~125℃の温度で4時間反応した。その後、MIBK560部を加えて生成物を溶解した。炭酸水素ナトリウム19.0部を加え、80℃の温水507部を加えて水洗し、下層の水層を分離除去した。その後、160℃まで加温して脱水した。その後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して、未反応の原料を蒸発除去した。MIBK1320部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水400部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。120℃まで加温して還流脱水し、ろ過した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色の多価ヒドロキシ樹脂(PH1、式(A-5)において、Ra1はメチル基、iは2である)を164部得た。
【0259】
【化14】
【0260】
得られた多価ヒドロキシ樹脂(PH1)は、水酸基当量は195g/eq.であり、軟化点は73℃であった。また、多価ヒドロキシ樹脂(PH1)のGPCで測定した重量平均分子量Mwは470、数平均分子量Mnは440、m=0体含有量は2.8面積%、m=1体含有量は86.2面積%、m=2体以上の含有量は11.0面積%であった。多価ヒドロキシ樹脂(PH1)の150℃での溶融粘度は、0.05Pa・sであった。
【0261】
(工程2.多価ヒドロキシ樹脂(PH2)の合成)
工程1と同様の反応装置に、工程1で得た多価ヒドロキシ樹脂(PH1)500部、及び、MIBK125部を仕込み、撹拌しながら100℃に加温した。47%BFエーテル錯体5.0部を仕込み、同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン75.0部(多価ヒドロキシ樹脂(PH1)の水酸基に対し0.22倍モル)を1時間で滴下した。さらに、115℃~125℃の温度で4時間反応した。その後、MIBK669部を加えて生成物を溶解した。炭酸水素ナトリウム13.3部を加え、80℃の温水521部を加えて水洗し、下層の水層を分離除去した。120℃まで加温して還流脱水し、ろ過した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色の多価ヒドロキシ樹脂(PH2、式(A-6)において、Ra1はメチル基、iは2である)を558部得た。
【0262】
【化15】
【0263】
得られた多価ヒドロキシ樹脂(PH2)のFT-IR測定において、側鎖Ra6としてジシクロペンテニル基が導入されていることを示すジシクロペンタジエン骨格のオレフィン部位のC-H伸縮振動に由来するピークが3040cm-1付近に現れた。多価ヒドロキシ樹脂(PH2)の水酸基当量は234g/eq.であり、軟化点は86℃であった。多価ヒドロキシ樹脂(PH2)のGPCで測定した重量平均分子量Mwは560、数平均分子量Mnは470、k=0体含有量は6.2面積%、k=1体含有量は74.0面積%、k=2体以上の含有量は19.8面積%であった。多価ヒドロキシ樹脂(PH2)の150℃での溶融粘度は、0.15Pa・sであった。
【0264】
(工程3.多価ヒドロキシ樹脂(P1)の合成)
工程1と同様の反応装置に、工程2で得られた多価ヒドロキシ樹脂(PH2)100部、パラトルエンスルホン酸・1水和物1.0部、及び、MIBK25部を仕込み、撹拌しながら120℃に加温した。同温度に保持しながら、ジビニルベンゼン(アルドリッチ社製、ジビニルベンゼン55%、エチルビニルベンゼン45%)20部(PH2の水酸基に対し0.36倍モル)を1時間で滴下した。さらに、120℃~130℃の温度で4時間反応した。MIBK155部を加えて生成物を溶解し、炭酸水素ナトリウム1.3部で中和し、90℃の温水105部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。120℃まで加温して還流脱水し、ろ過した。その後、5mmHgの減圧下、180℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色の多価ヒドロキシ樹脂(P1)を116部得た。
【0265】
多価ヒドロキシ樹脂(P1)の水酸基当量は272g/eq.であり、軟化点は77℃であった。吸収比(A3040/A1210)は0.23であった。多価ヒドロキシ樹脂(P1)のESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=375、507、629、639、761が確認され、式(A-4)の多価ヒドロキシ樹脂であって、式(A-2a)又は式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、及び式(A-3a)又は式(A-3c)で表されるジビニルベンゼンに由来する基をいずれも置換基として有する構造であることを確認した。多価ヒドロキシ樹脂(P1)のGPCで測定した重量平均分子量Mwは693、数平均分子量Mnは472、n=0体含有量は10.8面積%、n=1体含有量は61.4面積%、n=2体以上の含有量は27.8面積%であった。多価ヒドロキシ樹脂(P1)の150℃での溶融粘度は、0.11Pa・sであった。
【0266】
(工程4.特定エポキシ樹脂(A1)の合成)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、滴下ロート、及び冷却管を備えた反応装置に、工程3で得た多価ヒドロキシ樹脂(P1)100部、エピクロルヒドリン(下記式(X1))170.1部、及び、ジエチレングリコールジメチルエーテル25.5部を加えて65℃に加温した。
【0267】
【化16】
【0268】
125mmHgの減圧下、63℃~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液25.5部を3時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK281部を加えて生成物を溶解した。その後、240部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色の特定エポキシ樹脂(A1)を117部得た。
【0269】
特定エポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量は354g/eq.、全塩素含有量は1362ppm、軟化点は59℃であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=487、619、797が確認された。特定エポキシ樹脂(A1)のGPCで測定した重量平均分子量Mwは755、数平均分子量Mnは475、n=0体含有量は9.1面積%、n=1体含有量は41.1面積%、n=2体以上の含有量は49.8面積%であった。特定エポキシ樹脂(A1)の150℃での溶融粘度は、0.15Pa・sであった。
【0270】
<合成例2:マレイミド樹脂(B1)の合成>
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1にしたがって、下記式(b-6)で表されるマレイミド樹脂(B1)のMEK溶液(不揮発成分62質量%)を用意した。このマレイミド樹脂(B1)のMw/Mnは1.81、式(b-6)中のt’’は1.47(主に1、2又は3)であった。
【0271】
【化17】
【0272】
<合成例3:ビニル樹脂(D1)の合成>
国際公開第2017/115813号の実施例1に従って、ジビニルベンゼン3.0モル(390.6g)、エチルビニルベンゼン1.8モル(229.4g)、スチレン10.2モル(1066.3g)、及び酢酸n-プロピル15.0モル(1532.0g)を5.0Lの反応器内に投入し、70℃で600ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた。その後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、重合体を回収した。得られた重合体を秤量して、当該重合体としてビニル樹脂(D1)896.7gが得られたことを確認した。ビニル樹脂(D1)の重量平均分子量Mwは、41300であった。
【0273】
<合成例4:ビニル樹脂(D2)の合成>
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた1Lフラスコに2,6-ジメチルフェノール48.9g(0.4mol)、α,α’-ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン272.0g(1.4mol)、キシレン280g、及び、活性白土70gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら210℃になるまで昇温し、3時間反応させた。その後、140℃まで冷却し、2,6-ジメチルフェノール146.6g(1.2mol)を仕込んだ。その後、220℃まで昇温し、3時間反応させた。反後、100℃まで空冷し、トルエン300gで希釈して、ろ過により活性白土を除いた。その後、減圧下で、溶剤及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、中間体フェノール化合物365.3gを得た。得られた中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は、299g/eq.であった。
【0274】
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコに、得られた中間体フェノール化合物365.3g、2,4-ジニトロフェノール(2,4-DNP)0.184g(0.001mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)23.5g(0.073mol)、クロロメチルスチレン209g(1.37mol)、及び、メチルエチルケトン400gを加え、攪拌しながら75℃に昇温した。次いで、75℃に保った反応容器に48%NaOH水溶液を20分かけて滴下した。滴下終了後、更に75℃で4時間攪拌を継続した。4時間後、室温まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mで3回分液洗浄した。得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過及び乾燥し、下記式(D2)で表されるビニル樹脂(D2)を得た。ビニル樹脂(D2)の重量平均分子量は1500であった。
【0275】
【化18】
【0276】
<合成例5.活性エステル化合物(E1)の合成>
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、及び撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7-ジヒドロキシナフタレン320g(2.0モル)、ベンジルアルコール184g(1.7モル)、パラトルエンスルホン酸・1水和物5.0gを仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、150℃に昇温し、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した。反応終了後、メチルイソブチルケトン900g及び20%水酸化ナトリウム水溶液5.4gを添加して中和した。その後、分液により水層を除去し、水280gで3回水洗を行い、メチルイソブチルケトンを減圧下除去して、ベンジル変性ナフタレン化合物(E0)460g得た。得られたベンジル変性ナフタレン化合物(E0)は黒色固体であり、水酸基当量は180g/eq.であった。
【0277】
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、及び撹拌器を取り付けたフラスコに、イソフタル酸クロリド203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン1400gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、オルトクレゾール72.4g(0.67モル)、ベンジル変性ナフタレン化合物(E0)240g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.70gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いで、この条件下で、1.0時間撹拌を続けて反応を進行させた。
【0278】
反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。さらに、反応物が溶解しているトルエン層に水を投入して15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去して、不揮発成分65質量%のトルエン溶液状態にある活性エステル化合物(E1)を得た。得られた活性エステル化合物(E1)の活性エステル基当量は、238g/eq.であった。
【0279】
<実施例1~10、及び、比較例1~3>
(1)樹脂組成物の製造:
後述する表1及び表2に記載の配合組成にしたがって各成分を秤量及び混合し、更にMEK10部及びシクロヘキサノン10部を混合し、高速回転ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。なお、表1及び表2に記載の配合組成は、不揮発性成分の量(質量部)を表す。また、表1及び表2に記載の各成分の詳細は、以下のとおりである。
【0280】
(A)特定エポキシ樹脂:
・エポキシ樹脂A1:合成例1で製造した特定エポキシ樹脂(A1)。エポキシ当量354g/eq.。
【0281】
(A’)任意のエポキシ樹脂:
・HP-4032-SS:DIC社製のナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量144g/eq。
・NC-3000L:日本化薬社製のビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量270g/eq。
【0282】
(B)マレイミド樹脂:
・マレイミドB1:合成例2で合成したマレイミド樹脂(B1)。
・MIR-3000-70MT:下記式(B2)で表される構造を有する日本化薬社製の芳香族マレイミド樹脂(式(B2)において、nは1~100を示す)、不揮発成分70質量%のトルエン・MEK溶液。
・SLK-6895:信越化学工業社製の脂肪族マレイミド化合物。
・SLK-1500:信越化学工業社製の脂肪族マレイミド化合物。
【0283】
【化19】
【0284】
(C)無機充填材:
・SO-C2:アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g、アドマテックス社製。
【0285】
(D)重合性不飽和樹脂:
・OPE-2St-1200:三菱瓦斯化学社製のポリフェニレンエーテル骨格を有するスチレン系重合性不飽和樹脂、不揮発成分65質量%のトルエン溶液。
・ビニル樹脂D1:合成例3で合成したビニル樹脂(D1)。
・NE-V-1100-70T:DIC社製のアリル系重合性不飽和樹脂。末端にアリル基を有し、かつ、活性エステル基を含む樹脂。不揮発成分70質量%のトルエン溶液。
・ビニル樹脂D2:合成例4で合成したビニル樹脂(D2)。
【0286】
(E-1)活性エステル系樹脂:
・HPC-8150-62T:DIC社製のナフタレン構造を有する活性エステル系樹脂、活性エステル基当量230g/eq.、不揮発成分61.5質量%のトルエン溶液。
・HPC-8000L-65MT:DIC社製のジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、活性エステル基当量223g/eq.、不揮発成分65質量%のトルエン/MEK溶液。
・活性エステル系樹脂E1:合成例5で合成した活性エステル系樹脂(E1)、活性エステル基当量238g/eq.。
【0287】
(E-2)任意の硬化剤:
・LA-3018-50P:DIC社製のフェノール系樹脂、フェノール性水酸基当量151g/eq.、不揮発成分50質量%の1-メトキシ-2-プロパノール溶液。
【0288】
(F)硬化促進剤:
・1B2PZ:四国化成工業社製のイミダゾール系硬化促進剤。
【0289】
(G)有機充填材:
・EXL-2655:ダウ社製のゴム成分を含む有機充填材。
【0290】
(2)樹脂シートの製造:
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、得られた樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂組成物を80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、樹脂組成物層/支持体の層構成を有する樹脂シートAを得た。
【0291】
また、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが25μmとなるように樹脂組成物の塗布厚みを変更した以外は、樹脂シートAと同じ製造方法により、樹脂シートBを製造した。
【0292】
<試験1.比誘電率Dk及び誘電正接Dfの測定試験>
樹脂シートAを190℃のオーブンで90分間加熱し、樹脂組成物層を硬化させた。次いで、支持体を剥離して樹脂組成物層の硬化物を得た。その硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し、誘電特性測定用の硬化物サンプルを得た。
【0293】
硬化物サンプルについて、測定装置(アジレントテクノロジーズ(AgilentTechnologies)社製「HP8362B」)を用いて、スプリットシリンダー法により、測定周波数10GHz、測定温度90℃にて、比誘電率Dk及び誘電正接Dfを測定した。2本の試験片にて測定を実施し、その平均を算出した。
【0294】
<試験2.ガラス転移温度Tgの測定試験>
樹脂シートAを190℃のオーブンで90分加熱し、樹脂組成物層を硬化させた。次いで、支持体を剥離して樹脂組成物層の硬化物を得た。その硬化物を長さ20mm、幅6mmに切り出し、ガラス転移温度測定用の硬化物サンプルとした。この硬化物サンプルについてTMA装置(熱機械分析装置、リガク社製)を用い、25℃から250℃まで、5℃/分の昇温速度でガラス転移温度Tgを測定した。同一の硬化物サンプルについて2回測定を行い、2回目の値を記録した。
【0295】
<試験3.スミア除去性の評価試験>
(1)内層基板の用意:
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして、銅表面の粗化処理を行い、内層基板を得た。
【0296】
(2)樹脂シートAの積層:
バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂シートAを、樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスして、樹脂組成物層を平滑化した。
【0297】
(3)樹脂組成物層の熱硬化:
その後、樹脂シートAが積層された内層基板を、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層/内層基板/絶縁層の構造を有する硬化基板を得た。
【0298】
(4)ビアホールの形成:
得られた硬化基板の絶縁層に対し、COレーザー加工機(ビアメカニクス社製「LK-2K212/2C」)を使用して、周波数2000Hzでパルス幅3μ秒、出力0.95W、ショット数3の条件で穴あけ加工を施して、ビアホールを形成した。形成されたビアホールの絶縁層表面における開口径(直径、トップ径)は50μm、絶縁層底面における直径(ボトム径)は50μmであった。
【0299】
(5)粗化処理:
ビアホールを形成された硬化基板の絶縁層に、粗化処理としてのデスミア処理を施した。デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
【0300】
(湿式デスミア処理)
硬化基板を、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間浸漬した。次いで、硬化基板を、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で25分間浸漬した。最後に、硬化基板を、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後、硬化基板を80℃で15分間乾燥した。このデスミア処理後の硬化基板を、以下「評価用基板A」と称することがある。
【0301】
(6)スミア除去性の評価:
評価用基板Aについて、ビアホールの底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察した。得られた画像から、ビアホール底部の壁面からの延びるスミア(樹脂残渣)のうち、最も長いスミアの長さ(最大スミア長)を測定し、以下の基準で評価した。
「なし」:最大スミア長が5μm未満。スミア長が5μm以上のスミアなし。
「あり」:最大スミア長が5μm以上。
【0302】
<試験4.デスミア処理後のクラック耐性の評価試験>
(1)内層基板の用意:
内層基板として、残銅率60%になるように直径350μmの円形の銅パッド(銅厚35μm)を400μm間隔で格子状に形成したコア材(レゾナック社製「E705GR」、厚さ400μm)を用意した。
【0303】
(2)樹脂シートBの積層:
バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂シートBを、樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスして、樹脂組成物層を平滑化した。
【0304】
(3)樹脂組成物層の熱硬化:
その後、樹脂シートBが積層された内層基板を、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで175℃のオーブンに移し替えて40分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層/内層基板/絶縁層の構造を有する硬化基板を得た。
【0305】
(4)デスミア処理:
得られた硬化基板を、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間浸漬した。次いで、硬化基板を、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で30分間浸漬した。最後に、硬化基板を、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後、硬化基板を80℃で15分間乾燥した。このデスミア処理後の硬化基板を、以下「評価用基板B」と称することがある。
【0306】
(5)クラック耐性の評価:
評価用基板Bについて、銅パッド部を100個観察し、絶縁層のクラックの有無を確認し、以下の基準でクラック耐性を評価した。
「良」:クラックが10個以下。
「不良」:クラックが10個より多い。
【0307】
<試験5.導体層との密着性の測定試験>
(1)銅箔の下地処理:
電界銅箔(三井金属鉱業社製「3EC-III」、厚み35μm)の光沢面を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)に浸漬した。前記の浸漬により、銅箔の表面に粗化処理が施され、当該表面の算術平均粗さRaが1μmとなった。その後、その表面に防錆処理(メック社製「CL8300」)を施した。この得られた銅箔を、以下「CZ銅箔」ということがある。このCZ銅箔に、更に130℃のオーブンで30分間加熱処理した。
【0308】
(2)銅箔の積層と絶縁層形成:
前記<試験3.スミア除去性の評価試験>の工程(1)及び工程(2)と同じ方法によって、樹脂シートAが積層された内層基板を用意した。その後、両面にある支持体を剥離し、双方の樹脂組成物層を露出させた。それらの樹脂組成物層上に、前記のCZ銅箔を積層した。この積層は、CZ銅箔の処理面(粗化処理及び防錆処理が施された面)と樹脂組成物層とが接合するように行った。また、前記の積層は、前記<試験3.スミア除去性の評価試験>の工程(2)と同じ条件でラミネートすることにより実施した。その後、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成した。絶縁層の形成により、CZ銅箔/絶縁層/内層基板/絶縁層/CZ銅箔の構造を有するサンプル基板を得た。
【0309】
(3)HAST前の密着強度の測定:
作製したサンプル基板を150×30mmの小片に切断して、試験片を得た。試験片の銅箔に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの矩形部分を囲む切込みを形成した。銅箔の矩形部分の一端を剥がしてつかみ具(TSE社製「AC-50C-SL」)で掴み、垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重[kgf/cm(N/cm)]を、密着強度として測定した。密着強度の測定は、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で、JIS C6481に準拠して行った。前記の密着強度は、下地に相当する銅箔を絶縁層から引き剥がすために要する荷重を表すから、導体層と絶縁層との密着性を示す。以下、この工程(3)で測定された密着強度を「密着強度(HAST前)」ということがある。
【0310】
(4)HAST後の密着強度の測定:
前記のサンプル基板に、温度130℃、湿度85%RHの環境で100時間保存するHAST試験を行った。その後、当該サンプル基板について、前記の工程(3)と同じ方法によって密着強度を測定した。以下、この工程(4)で測定された密着強度を「密着強度(HAST後)」ということがある。
【0311】
<試験6.溶融粘度の測定>
樹脂シートAの樹脂組成物層を支持フィルムから剥がし、その樹脂組成物層の溶融粘度を動的粘弾性測定装置(ユービーエム社製「G-3000」)にて周波数1Hz、歪み5度、荷重100g、昇温速度5℃/分、温度範囲60℃~180℃で測定して、樹脂組成物の最低溶融粘度を求めた。
【0312】
<結果>
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
【0313】
【表1】
【0314】
【表2】