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  • 特開-ゴム組成物およびタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099478
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20250626BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250626BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20250626BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20250626BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20250626BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C08L15/00
B60C1/00 A
B60C11/00 F
C08L91/00
C08K5/3445
C08K5/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216162
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 隼
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA03
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC12
3D131EA02U
3D131EA10V
3D131LA28
4J002AC062
4J002AC111
4J002AE053
4J002EU117
4J002EX036
(57)【要約】
【課題】優れたグリップ性能を示す新規なゴム組成物および当該ゴム組成物からなるタイヤ部材を備えたタイヤを提供すること。
【解決手段】エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物および2価以上のカルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一つと、オイルとを含むゴム組成物であって、前記オイルのゴム成分100質量部に対する含有量(質量部)AOを前記ゴム組成物のProcedure Xから求められる最長緩和時間(時間)T1で除した値(AO/T1)が0.045以上である、ゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物および2価以上のカルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一つと、オイルとを含むゴム組成物であって、
前記オイルのゴム成分100質量部に対する含有量(質量部)AOを前記ゴム組成物のProcedure Xから求められる最長緩和時間(時間)T1で除した値(AO/T1)が0.045以上である、ゴム組成物。
【請求項2】
O/T1が0.100以上である、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分が0質量%超50質量%未満のイソプレン系ゴムを含む、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率が50モル%以下である、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項5】
充填剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、45質量部未満である、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物から構成されるタイヤ部材を有するタイヤ。
【請求項7】
前記タイヤ部材の厚み(mm)をWとするとき、AO/T1とWとの積(AO×W/T1)が、0.180以上である、請求項6記載のタイヤ。
【請求項8】
前記タイヤ部材がキャップトレッドである、請求項6記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に装着されるタイヤにおいては、自動車の駆動、制動および旋回のいずれにおいても、トレッドと路面とのグリップ力を維持することが重要である。従来、グリップ性能を改善する手法が種々検討されている。例えば、特許文献1には、微粒子酸化亜鉛を用いることで、グリップ性能を高めたトレッドゴムを備える空気入りタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-285524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れたグリップ性能を示す新規なゴム組成物および当該ゴム組成物からなるタイヤ部材を備えたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のゴム組成物に関する。
エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物および2価以上のカルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一つと、オイルとを含むゴム組成物であって、
前記オイルのゴム成分100質量部に対する含有量(質量部)AOを前記ゴム組成物のProcedure Xから求められる最長緩和時間(時間)T1で除した値(AO/T1)が0.045以上である、ゴム組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れたグリップ性能を示す新規なゴム組成物および当該ゴム組成物からなるタイヤ部材を備えたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤのタイヤ回転軸を通る平面による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態であるゴム組成物は、エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物および2価以上のカルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一つと、オイルとを含むゴム組成物であって、
前記オイルのゴム成分100質量部に対する含有量(質量部)AOを前記ゴム組成物のProcedure Xから求められる最長緩和時間(時間)T1で除した値(AO/T1)が0.045以上である、ゴム組成物である。
【0009】
理論に拘束されることは意図しないが、前記ゴム組成物が優れたグリップ性能を示す理由は、以下のように考えられる。すなわち、エポキシ化ジエン系ゴムと、イミダゾール化合物および2価以上のカルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一つと、オイルとを含み、オイル量を最長緩和時間で除した値(AO/T1)が一定の値以上であることで、しなやかさ、ヒステリシスロスの大きさ、ヒステリシスロスへの応答速度を全て向上させ、グリップ性能の向上に寄与すると考えられる。
【0010】
O/T1は、0.100以上であることが好ましい。
【0011】
O/T1の値をより厳しい条件で満たすことで、グリップ性能が向上すると考えられる。
【0012】
前記ゴム成分は、0質量%超50質量%未満のイソプレン系ゴムを含むことが好ましい。
【0013】
発明の効果をより高めることができるからである。
【0014】
前記エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率は、50モル%以下であることが好ましい。
【0015】
発明の効果をより高めることができるからである。
【0016】
充填剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、45質量部未満であることが好ましい。
【0017】
発明の効果をより高めることができるからである。
【0018】
本発明の他の実施形態は、上記のいずれかのゴム組成物から構成されるタイヤ部材を有するタイヤである。
【0019】
上記ゴム組成物の特性が発揮できる好ましい形態の一つだからである。
【0020】
前記タイヤ部材の厚み(mm)をWとするとき、AO/T1とWとの積(AO×W/T1)は0.180以上であることが好ましい。
【0021】
発明の効果をより高めることができるからである。
【0022】
前記タイヤ部材がキャップトレッドであることが好ましい。
【0023】
上記ゴム組成物の特性が発揮できる好ましい形態の一つだからである。
【0024】
<定義>
「正規状態」とは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧の空気が充填された無負荷の状態である。
【0025】
「タイヤの各部の寸法」は、特に断りがない限り、タイヤの外表面に現れるものは正規状態で特定される値であり、一方、タイヤ内部やタイヤ切断面に存するものは、例えばタイヤをタイヤ回転軸を含む平面で切断し、当該切断したタイヤ片を正規リムのリム幅に保持した状態で特定される値である。
【0026】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0027】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、例えばJATMAであれば「最高空気圧」、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載されている最大値を指し、正規リムの場合と同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。なお、規格に定められていないタイヤの場合は、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(但し、規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250kPa以上)を指し、250kPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指すものとする。
【0028】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、例えばJATMAであれば「最大負荷能力」、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値であり、正規リムおよび正規内圧の場合と同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、前記規格に定められていないタイヤの場合は、別途計算による最大負荷能力WLを正規荷重とする。
【0029】
「最大負荷能力(WL)」は、下記計算式により算出される。「V」はタイヤの仮想体積(mm3)、「Dt」は正規状態におけるタイヤ外径(mm)、「Ht」はタイヤ回転軸を含む平面によるタイヤの断面における、タイヤ径方向のタイヤの断面高さ(mm)、「Wt」は正規状態におけるタイヤの断面幅(mm)である。Htはタイヤのリム径をRとする場合、(Dt-R)/2により求めることが可能である。Wtはタイヤ側面に模様または文字等がある場合にはそれらを除いて得られる値である。なお、最大負荷能力は、前記正規荷重と同義である。
【0030】
【数1】
【0031】
「タイヤ部材」とは、例えば、キャップトレッド、ベーストレッド、サイドウォール、クリンチ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「タイヤ部材の厚み(W)」とは、タイヤ回転軸を通る平面で切断したタイヤを、正規リム幅に保持させた状態で計測される厚み(mm)である。より具体的には、キャップトレッドおよびベーストレッドの厚みはタイヤ中心線上におけるタイヤ半径方向の厚みである。タイヤ中心線上に溝を有する場合には、タイヤ中心線に最も近い陸部のタイヤ幅方向中央部におけるゴム層の厚みである。サイドウォールの厚みは、タイヤ最大幅位置でのサイドウォールゴムの厚みである。クリンチの厚みはサイドウォールとクリンチがタイヤ外面上において接する点Pcを通るカーカスの本体部の法線に沿って測定される当該ゴム層の厚みである。
【0033】
「可塑剤」とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、ゴム組成物からアセトンを用いて抽出される成分である。また、可塑剤は、25℃で液体(液状)の可塑剤および25℃で固体の可塑剤を含む。但し、通常タイヤ工業で使用されるワックスおよびステアリン酸は含まないものとする。可塑剤の含有量は、可塑剤によって伸展されたゴム成分中の可塑剤量も含む。
【0034】
<測定方法>
「Procedure X」とは、ゴム組成物の最長緩和時間(時間)T1を求める方法である(高橋雅興「初心者の為の実用レオロジー 第3回 高分子の動的粘弾性」日本レオロジー学会誌,2021,49,135-146)。同文献(高橋)第140頁左欄~右欄を参考にすれば、一定の微小なずりひずみを与えたときの、時間tの関数であるせん断弾性率G(t)は、
G(t)=G1exp(-t/T1)+G2exp(-t/T2)+・・・
(ここで、T1は最長緩和時間を表す。)
と表されるが、この指数関数は比較的早く減少するので、t>T1では、最長緩和時間の項の寄与だけとなる。そこで、
G(t)=G1exp(-t/T1
と近似した上で、両辺の対数をとると、
lnG(t)=lnG1-t/T1
さらに、
logG(t)=logG1-t/(2.303T1
と変形できる。したがって、最長緩和時間(時間)T1は、lnG(t)対tの片対数プロット、または、logG(t)対tの片対数プロットの傾きから求めることができる。この方法をProcedure Xという。
【0035】
「最長緩和時間」は、以下のようにして測定する。すなわち、ゴム組成物について、高さ16mm、幅40mm、厚さ約2mmの測定用サンプルを準備する。測定機器は、Metrabiv社製の高周波数用動的粘弾性測定装置DMA+300を用いる。測定用サンプルをフィルムシェア型の治具(治具間のギャップは2mm)で固定し、測定温度(60℃)で5分間保持した後、10%のせん断ひずみをかけて保持し、せん断弾性率の時間変化G(t)を5秒毎に20分間測定する。この測定結果から、Procedure Xによって、最長緩和時間(時間)T1を求める。すなわち、1000秒から1200秒におけるlnG(t)の全ての点を時間tに対して片対数プロットし、最小二乗法により直線に近似し、その傾き(-(1/T1))から、最長緩和時間(時間)T1を求める。なお、上記せん断弾性率は、前記文献(高橋)の緩和弾性率と同義である。
【0036】
「エポキシ化率」は、エポキシ化ジエン系ゴムについて、エポキシ化される前のゴム中の二重結合の総数に対するエポキシ化された二重結合の数の割合(モル%)であり、日本電子(株)製のJNM-ECAシリーズのNMR装置を用いて測定される。なお、二重結合はエポキシ化により消失する。
【0037】
「ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)」とは、動的粘弾性測定装置(例えば、GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±0.5%および昇温速度2℃/minの条件下で、tanδの温度分布曲線を測定し、得られた温度分布曲線の-60℃以上40℃以下の範囲内における極大値に対応する温度(tanδピーク温度)である。なお、-60~40℃の範囲における測定において、tanδ値が温度上昇に伴い、漸増もしくは漸減し続ける場合は、ゴム組成物のガラス転移温度は、それぞれ40℃もしくは、-60℃とする。また、-60℃以上、40℃以下の範囲において、極大値を示す点が2点以上存在する場合は、最も温度が低い点をガラス転移温度とする。
【0038】
「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。
【0039】
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2:2017に準じて測定される。
【0040】
「平均一次粒子径」は、透過型または走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察された一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。粒子径は、粒子の形状がほぼ円形の場合には円の直径を粒子径とし、針状または棒状の場合には短径を粒子径とし、それ以外の場合には電子顕微鏡画像から円相当径を算出して粒子径とする。円相当径は、「4×(粒子の面積)/πの正の平方根」として求められる。カーボンブラックや、シリカ等に適用される。
【0041】
<ゴム組成物>
本実施形態のゴム組成物は、エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物および2価以上のカルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一つと、オイルとを含む。
【0042】
[ゴム成分]
エポキシ化ジエン系ゴムとしては特に限定されず、例えば、エポキシ化天然ゴム(ENR)、エポキシ化イソプレンゴム等のエポキシ化イソプレン系ゴム、エポキシ化ブタジエンゴム、エポキシ化ブタジエンアクリロニトリルゴム、エポキシ化スチレンブタジエンゴム、エポキシ化イソプレンブタジエンゴム等が挙げられる。エポキシ化ジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0043】
エポキシ化ジエン系ゴムとしては特に限定されず、市販のものでも、ジエン系ゴムをエポキシ化したものでもよい。ジエン系ゴムのエポキシ化は、天然ゴムのエポキシ化に準じて行うことができる。
【0044】
天然ゴムをエポキシ化する方法としては、例えば、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法等が挙げられる(特公平4-26617号公報、特開平2-110182号公報、英国特許第2113692号明細書等)。過酸法としては、例えば、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸等の有機過酸を反応させる方法等が挙げられる。なお、有機過酸の量や反応時間を調整することにより、様々なエポキシ化率のエポキシ化天然ゴムを調製することができる。エポキシ化される天然ゴムとしては、特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0045】
エポキシ化ジエン系ゴムとしては、入手が容易である等の実用面での観点から、ENR、エポキシ化ブタジエンゴム等が好ましく、ENRがより好ましい。
【0046】
エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率は、好ましくは15モル%超、より好ましくは20モル%超、さらに好ましくは25モル%以上である。一方、該エポキシ化率は、破壊特性の観点から、好ましくは75モル%以下、より好ましくは60モル%未満、さらに好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは50モル%未満、さらに好ましくは30モル%未満、さらに好ましくは25モル%以下である。エポキシ化率は前記方法により測定される値である。
【0047】
ゴム成分100質量%中のエポキシ化ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上である。該含有量は、70質量%超であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%超であってもよく、95質量%超であってもよく、100質量%であってもよい。
【0048】
ゴム成分は、前記のエポキシ化ジエン系ゴム以外のその他のゴム成分を含有してもよい。その他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)を含むイソプレン系ゴム(IR系ゴム)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリノルボルネンゴム等のエポキシ化されていないジエン系ゴムや、ブチルゴム(IIR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等の非ジエン系ゴムが挙げられる。このうちIR系ゴムが好ましく、とりわけ、NRが好ましい。その他のゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
IR系ゴムの含有量は50質量%未満であることが好ましく、0質量%であってもよい。該含有量は、より好ましくは45質量%未満、さらに好ましくは40質量%以下である。また、ゴム成分がIR系ゴムを含有する場合の含有量は0質量%超であり、好ましくは5質量%超、より好ましくは10質量%超、さらに好ましくは15質量%超、さらに好ましくは20質量%以上である。
【0050】
[2価以上のカルボン酸化合物]
2価以上のカルボン酸化合物とは、カルボキシル基を二つ以上有する化合物である。2価以上のカルボン酸化合物としては、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ基と反応して、イオン性結合を形成し得るものであれば特に限定されず、種々のものを用いることができる。2価以上のカルボン酸化合物としては、脂肪族カルボン酸化合物、脂環族カルボン酸化合物および芳香族カルボン酸化合物のいずれであってもよい。また、2価以上のカルボン酸化合物は置換基を有していてもよい。2価以上のカルボン酸化合物の置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。これら置換基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。また、置換基の種類は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0051】
2価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、スベリン酸、ドデカン二酸等の2価のカルボン酸化合物、クエン酸等の3価のカルボン酸化合物、ピロメリト酸等の4価のカルボン酸化合物、メリト酸等の6価のカルボン酸化合物等が挙げられる。このうち、スベリン酸、ドデカン二酸等の2価のカルボン酸化合物が好ましい。
【0052】
2価以上のカルボン酸化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
2価以上のカルボン酸化合物の好ましい例としては、2価のカルボン酸化合物が挙げられる。2価のカルボン酸化合物としては、下記式(I)で表される化合物を好適に使用することができる。この化合物は、両末端にカルボキシ基が存在することから、ポリマー間に強固なネットワークを形成することが可能となる。
HOOC-A-COOH (I)
(式中、Aは、炭素数1~18の2価の炭化水素基であり、置換基を有していてもよい。)
【0054】
Aの炭化水素基は、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれであってもよい。Aの炭化水素基のうち、脂肪族炭化水素基および脂環族炭化水素基は、飽和または不飽和のいずれであってもよい。Aの炭化水素基のうち、脂環族炭化水素基および芳香族炭化水素基は、環を構成する炭素原子が非置換であるものを指し、当該炭素原子はアルキル基で置換されていてもよい。Aの炭化水素基のうち、脂肪族炭化水素基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよい。Aの炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、また、該炭素数は、好ましくは12以下であり、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。
【0055】
Aの炭化水素基の具体例としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基等が挙げられ、アルキレン基が好ましい。また、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基(ヘキサメチレン基)、n-デシレン(デカメチレン基)等の直鎖状アルキレン基や、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等の分岐鎖アルキレン基が挙げられ、このうち、直鎖状アルキレン基が好ましく、エチレン基、n-プロピレン基、n-へキシレン基(ヘキサメチレン基)、n-デシレン(デカメチレン基)がより好ましく、n-へキシレン基(ヘキサメチレン基)、n-デシレン(デカメチレン基)がさらに好ましい。
【0056】
Aの炭化水素基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ等が挙げられる。これら置換基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。また、これら置換基の種類は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0057】
Aの炭化水素基に関し、アルキル基、アルコキシ基等としては、炭素数1~6のものが好ましく、より好ましくは炭素数1~4、さらに好ましくは炭素数1または2である。
【0058】
2価以上のカルボン酸化合物の含有量は、本発明の効果の観点から、エポキシ化ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは0.50質量部超、より好ましくは0.60質量部超、さらに好ましくは0.70質量部超、さらに好ましくは0.80質量部超であり、さらに好ましくは0.90質量部超である。また、該含有量は、好ましくは30質量部未満、より好ましくは25質量部未満、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0059】
[イミダゾール化合物]
イミダゾール化合物とは、イミダゾール環を有する化合物である。イミダゾール化合物としては、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ基と反応して、イオン性結合を生成し得るものであれば特に限定されない。
【0060】
イミダゾール化合物としては、種々のものを用いることができ、例えば、下記式(II)で表される化合物が好ましい。
【0061】
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4は、同一または異なって、水素原子または炭化水素基を表す。R3、R4は、互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0062】
1、R2、R3、R4の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基;炭素数5~24、好ましくは炭素数5~12、より好ましくは炭素数5~8のシクロアルキル基;炭素数6~30、好ましくは炭素数6~24、より好ましくは炭素数6~12のアリール基;炭素数7~25、好ましくは炭素数7~13、より好ましくは炭素数7~10のアラルキル基が挙げられる。
【0063】
また、R3、R4が結合して環構造を形成する場合、R3、R4とイミダゾール環の炭素原子とで形成される環構造としては、例えば、炭素数5~12の芳香族環、複素環、脂肪族環等が挙げられ、好ましくはベンゼン環が挙げられる。
【0064】
本発明の効果の観点から、R1、R2、R3、R4の少なくとも1つがアルキル基であることが好ましく、R1、R2、R3、R4のうち、2つがアルキル基、他の2つが水素原子であることがより好ましく、R1とR2とがアルキル基、R3とR4とが水素原子であることがさらに好ましい。
【0065】
イミダゾール化合物の具体例としては、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-デシル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、N-メチルベンゾイミダゾール等が挙げられる。イミダゾール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
なかでも、イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールが好ましく、とりわけ、イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾールが好ましい。
【0067】
イミダゾール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
イミダゾール化合物としては、例えば、四国化成工業(株)等の製品を使用できる。
【0069】
イミダゾール化合物の含有量は、本発明の効果の観点から、エポキシ化ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは0.50質量部超、より好ましくは0.60質量部超、さらに好ましくは0.70質量部超、さらに好ましくは0.80質量部超であり、さらに好ましくは0.85質量部超である。また、該含有量は、好ましくは30質量部未満、より好ましくは25質量部未満、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0070】
[オイル]
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、動物油等が挙げられる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル(ミネラルオイル)、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。プロセスオイルの具体例としては、例えば、MES(Mild Extract Solvated)、DAE(Distillate Aromatic Extract)、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract)、TRAE(Treated Residual Aromatic Extract)、RAE(Residual Aromatic Extract)等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、MES、TDAE、重ナフテン系オイル等が挙げられる。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合機やエンジンに用いられた後の廃油や、調理店で使用された廃食用油を精製したものを用いてもよい。オイルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
植物油とは、例えば、あまに油、なたね油、べに花油、大豆油、コーン油、綿実油、米油、トール油、ごま油、えごま油、ひまし油、桐油、パイン油、パインタール油、ひまわり油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、落花生油、グレープシード油、木ろう等が挙げられる。さらに、植物油としては、前記油を精製した精製油(サラダ油等)、前記油をエステル交換したエステル交換油、前記油を水素添加した硬化油、前記油を熱重合させた熱重合油、前記油を酸化させた酸化重合油、食用油等として利用したものを回収した廃食用油等も挙げられる。なお、植物油は常温(25℃)で液体であっても固体であってもよい。
【0072】
植物油は、アシルグリセロールを含むことが好ましく、トリアシルグリセロールを含むことがより好ましい。なお、本明細書において、アシルグリセロールとは、グリセリンの持つヒドロキシ基と脂肪酸とがエステル結合をした化合物を指す。アシルグリセロールとしては、特に限定されず、1-モノアシルグリセロールでもよく、2-モノアシルグリセロールでもよく、1,2-ジアシルグリセロールでもよく、1,3-ジアシルグリセロールでもよく、トリアシルグリセロールでもよい。さらに、アシルグリセロールは、単量体でもよく、2量体でもよく、3量体以上の多量体であってもよい。なお、2量体以上のアシルグリセロールは、熱重合や酸化重合等によって得ることができる。また、アシルグリセロールは常温(25℃)で液体であっても固体であってもよい。
【0073】
ゴム組成物中に前記アシルグリセロールが含まれているか確認する方法としては、特に限定されないが、1H-NMR測定によって確認することができる。例えば、トリアシルグリセロールを配合したゴム組成物を常温(25℃)で24時間重クロロホルムに浸漬し、ゴム組成物を除いた後、室温下で1H-NMRを測定し、テトラメチルシラン(TMS)のシグナルを0.00ppmとした場合、5.26ppm付近、4.28ppm付近、4.15ppm付近のシグナルが観測され、該シグナルはエステル基の酸素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子由来のシグナルと推測される。なお、この段落における「付近」とは、±0.10ppmの範囲とする。
【0074】
前記脂肪酸としては、特に限定されず、不飽和脂肪酸であっても、飽和脂肪酸であっても良い。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸等の一価不飽和脂肪酸や、リノール酸、リノレン酸等の多価不飽和脂肪酸が挙げられる。また、飽和脂肪酸としては、酪酸、ラウリン酸等が挙げられる。
【0075】
なかでも、前記脂肪酸として、二重結合が少ない脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸あるいは一価不飽和脂肪酸を含むことが望ましく、オレイン酸が好ましい。このような脂肪酸を含む植物油としては、例えば、飽和脂肪酸あるいは一価不飽和脂肪酸が含まれる植物油を使用してもよく、エステル交換等の改質を行った植物油を使用してもよい。また、このような脂肪酸を含む植物油を製造するために、品種改良、遺伝子組み換え、ゲノム編集等によって植物を改良してもよい。
【0076】
植物油としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0077】
動物油としては、魚油、牛脂、鯨油、あるいは、それらから誘導されるオレイルアルコール等が挙げられる。
【0078】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部超が好ましく、10質量部超がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、50質量部未満が好ましく、40質量部未満がより好ましく、30質量部未満がさらに好ましい。オイルの含有量には、ゴム成分の伸展に使用された伸展オイル等の量も含まれる。
【0079】
[その他の成分]
ゴム組成物には、上記以外の成分として、カーボンブラックやシリカ等の充填剤、シランカップリング剤、オイル以外の可塑剤、老化防止剤、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤等の、タイヤ工業で一般的な各種配合剤および添加剤を配合することができる。しかし、本実施形態のゴム組成物は、充填剤やシランカップリング剤を必須とするものではなく、これらを含まなくてもよい。また、本実施形態のゴム組成物は、加硫剤や加硫促進剤の如き加硫系薬品を必須とするものではなく、これらを含まなくてもよい。
【0080】
(充填剤)
ゴム組成物は充填剤を含み得るが、当該充填剤の含有量はゴム成分100質量部に対して、好ましくは45質量部未満であり、より好ましくは20質量部未満、さらに好ましくは5質量部未満であり、あるいは、充填剤を含まなくてもよい。前記充填剤の含有量は充填剤の合計含有量であり、充填剤を1種しか含まない場合には、当該1種の充填剤の含有量である。
【0081】
充填剤としては、シリカやカーボンブラックを使用することができる他、タイヤ工業で通常使用される充填剤、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー等も使用することができる。充填剤としては、シリカおよびカーボンブラックが代表的である。充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
≪シリカ≫
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、低燃費性能および耐摩耗性能の観点から、140m2/g超が好ましく、150m2/g超がより好ましく、160m2/g以上がさらに好ましく、175m2/g以上が特に好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、350m2/g未満が好ましく、300m2/g未満がより好ましく、250m2/g未満がさらに好ましい。なお、シリカのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0084】
シリカの平均一次粒子径は、25nm未満が好ましく、22nm未満がより好ましく、20nm未満がさらに好ましい。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、1nm超が好ましく、3nm超がより好ましく、5nm超がさらに好ましい。なお、平均一次粒子径は、前記方法により求めることができる。
【0085】
≪カーボンブラック≫
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、具体的にはN110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。カーボンブラックは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0086】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性の観点から、10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましく、35m2/g以上がさらに好ましく、50m2/g以上が特に好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、130m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0087】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、30nm未満が好ましく、26nm未満がより好ましく、23nm未満がさらに好ましく、22nm以下がさらに好ましい。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、1nm超が好ましく、3nm超がより好ましく、5nm超がさらに好ましい。なお、平均一次粒子径は、前記方法により求めることができる。
【0088】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来シリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、モメンティブ社等より市販されているものを使用することができる。シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部超が好ましく、3.0質量部超がより好ましく、5.0質量部超がさらに好ましい。また、コストおよび加工性の観点からは、30質量部未満が好ましく、20質量部未満がより好ましく、15質量部未満がさらに好ましい。
【0090】
(可塑剤)
オイル以外の可塑剤としては、液状ポリマー、樹脂、エステル系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は、上記オイルも含めて、石油由来のものであってもよく、バイオマス由来のものであってもよく、ゴム製品や非ゴム製品からリサイクルされたナフサを由来とするものであってもよい。また、使用済みのタイヤや各種成分を含む製品を熱分解、抽出することにより得た、低分子量の炭化水素成分を可塑剤として用いてもよい。可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
≪液状ポリマー≫
液状ポリマーは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられる。液状ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
液状ポリマーを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部超が好ましく、10質量部超がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、50質量部未満が好ましく、40質量部未満がより好ましく、30質量部未満がさらに好ましい。液状ポリマーの含有量には、ゴム成分の伸展に使用された伸展液状ポリマーの量等も含まれる。
【0093】
(エステル系可塑剤)
エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジブチル(DBP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、チミジントリリン酸(TTP)、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリキシレニル(TXP)等が挙げられる。エステル系可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
エステル系可塑剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部超が好ましく、10質量部超がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、50質量部未満が好ましく、40質量部未満がより好ましく、30質量部未満がさらに好ましい。エステル系可塑剤の含有量には、ゴム成分の伸展に使用された伸展エステル系可塑剤の量等も含まれる。
【0095】
(老化防止剤)
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン(DNPD)等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。老化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部未満が好ましく、8.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。
【0097】
(ワックス)
ワックスとしては、特に限定されず、タイヤ工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができる。例えば、石油系ワックス、鉱物系ワックス、合成ワックス、植物由来ワックス等が挙げられる。なかでも、石油系ワックス、植物由来ワックスが好ましく、石油系ワックスがより好ましい。植物由来のワックスとしては、例えば、ライスワックス、カルバナワックス、キャンデリラワックス等が挙げられる。石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、これらの精選特殊ワックス等が挙げられ、パラフィンワックスが好ましい。なお、本実施形態に係るワックスは、ステアリン酸を含まないものとする。ワックスは、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、パラメルト社等より市販されているものを使用することができる。ワックスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部未満が好ましく、7.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。
【0099】
(ステアリン酸)
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部未満が好ましく、8.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。
【0100】
(酸化亜鉛)
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部未満が好ましく、8.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。
【0101】
(加硫剤)
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。加硫剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、10質量部未満が好ましく、8.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0103】
硫黄以外の加硫剤として、公知の有機架橋剤を用いることもできる。有機架橋剤としては、ポリスルフィド結合以外の架橋鎖を形成できるものであれば特に限定されないが、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等が挙げられ、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンが好ましい。これらの有機架橋剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0104】
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、アルデヒド-アミン系加硫促進剤、アルデヒド-アンモニア系加硫促進剤、イミダゾリン系加硫促進剤、キサンテート系加硫促進剤、カプロラクタムジスルフィド等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、所望の効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、およびグアニジン系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上の加硫促進剤が好ましい。加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。
【0106】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)またはその塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0107】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。
【0108】
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0109】
チオウレア系加硫促進剤としては、例えば、チアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素等のチオ尿素化合物、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素等が挙げられる。
【0110】
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、ピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバメート(PPDC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBzC)、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaBDC)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CuMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(FeMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeEDC)等が挙げられる。
【0111】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、該含有量は、10質量部未満が好ましく、8.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。
【0112】
本明細書において、炭素原子を含む各種材料(例えば、ゴム、オイル、樹脂、加硫促進剤、老化防止剤、界面活性剤等)は、大気中の二酸化炭素由来であってもよい。二酸化炭素から当該各種材料の配合物を得る方法としては、二酸化炭素を直接変換しても良いし、二酸化炭素からメタンを合成するメタネーションの工程を経て得られたメタンを変換してもよい。
【0113】
<ゴム組成物の物性>
[AO/T1
O/T1の値は、本発明の効果の観点から、好ましくは0.050以上、より好ましくは0.090以上、さらに好ましくは0.100以上、さらに好ましくは0.200以上、さらに好ましくは0.300以上、さらに好ましくは0.500以上、さらに好ましくは1.000以上である。一方、AO/T1の値は、50以下が好ましく、より好ましくは30以下、さらに好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
【0114】
Oはゴム組成物に配合するオイルの量を増減することにより、増減することができる。一方、T1は未硬化のゴム組成物を加熱加圧するときの時間および温度の調節によって架橋密度を調節することにより、増減することができる。したがって、これらの組合せにより、AO/T1の値を調節することができる。
【0115】
[Tg]
本実施形態のゴム組成物のガラス転移温度(Tg)は、-45℃以下であることが好ましい。該Tgは、より好ましくは-50℃未満、さらに好ましくは-60℃未満である。該Tgの下限について特に制限はないが、通常-100℃程度である。
【0116】
Tgは、前記のゴム成分、フィラー、可塑剤等の種類や配合量により適宜調整することができる。例えば、ゴム成分のガラス転移点を低下させること等により下げることができ、反対に、ゴム成分のガラス転移点を上げること等により上げることができる。
【0117】
<タイヤ>
前記ゴム組成物は、当該ゴム組成物から構成されるタイヤ部材することができ、該タイヤ部材を有するタイヤとすることができる。当該タイヤ部材としては、特に限定されないが、例えば、キャップトレッド、ベーストレッド、サイドウォール、クリンチ等が挙げられる。このうち、前記ゴム組成物は、優れたグリップ性能を示すので、キャップトレッドに用いることが好ましい。
【0118】
以下、本実施形態のタイヤについて、図面を参照しながら説明する。但し、本実施形態のタイヤは、図面によって限定されるものではない。
【0119】
図1は、タイヤ回転軸を通る平面によるタイヤの断面図であって、タイヤ中心線CLより右側の上半分を示す。図1のタイヤ1は、地面と接するトレッド面を有するトレッド2と、サイドウォール3と、トレッド2とサイドウォール3とに挟まれたウイング4と、サイドウォールの一端からリムまで延びるクリンチ5と、トレッドのタイヤ半径方向内側に配置されたバンド6と、バンドのさらにタイヤ半径方向内側に配置されたブレーカー7と、ブレーカーのさらにタイヤ半径方向内側に配置されたカーカス8と、カーカスのさらにタイヤ半径方向内側に配置されたインナーライナー9とを備えている。トレッド2はキャップトレッド2aとベーストレッド2bとからなっている。図1において、WT1はキャップトレッドの厚みであり、WT2はベーストレッドの厚みであり、WSはサイドウォールの厚みであり、WCはクリンチの厚みである。
【0120】
[AO×W/T1
本実施形態のタイヤは、前記タイヤ部材の厚み(mm)をWとするとき、AO/T1とWとの積(AO×W/T1)が、0.180以上であることが好ましい。
【0121】
O×W/T1の値は、本発明の効果の観点から、好ましくは0.200以上、より好ましくは0.360以上、さらに好ましくは0.400以上、さらに好ましくは0.700以上、さらに好ましくは0.800以上、さらに好ましくは1.150以上、さらに好ましくは1.500以上、さらに好ましくは2.000以上、さらに好ましくは2.200以上、さらに好ましくは4.000以上、さらに好ましくは4.100以上である。一方、AO×W/T1の値は、100.0以下が好ましく、より好ましくは50.00以下、より好ましくは30.00以下、さらに好ましくは10.00以下、さらに好ましくは7.000以下、さらに好ましくは5.000以下である。
【0122】
Wは、該当するタイヤ部材の厚みを増減することにより、増減することができる。AO/T1の値は上記のとおり調節することができる。したがって、これらの組合せにより、AO×W/T1の値を調節することができる。
【0123】
[タイヤ部材の厚み]
タイヤ部材の厚みは特に限定されず、通常の厚みであればよい。
【0124】
(トレッドの厚み)
トレッドの全厚みは例えば、30.0mm以下が好ましく、25.0mm以下がより好ましく、20.0mm以下がさらに好ましく、15.0mm以下が特に好ましい。また、該厚みは、3.0mm以上がより好ましく、5.0mm以上がより好ましく、6.0mm以上がさらに好ましい。
【0125】
トレッドの全厚みに対するキャップトレッドの厚みの割合は、例えば、20%以上であり、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上とすることができる。一方、該割合は、例えば、90%以下、85%以下とすることができる。また、トレッドの全厚みに対するベーストレッドの厚みの割合は、例えば、5%以上であり、10%以上、15%以上とすることができる。一方、該割合は、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下とすることができる。中間ゴム層が存在する場合のトレッドの全厚みに対する中間ゴム層の厚みの割合は、例えば、1%以上、5%以上、10%以上とすることができる。一方、該割合は、60%以下、40%以下、35%以下とすることができる。
【0126】
(サイドウォールの厚み)
サイドウォールの厚みは1.0mm以上であることが好ましい。該厚みは、より好ましくは1.2mm以上、さらに好ましくは1.4mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上である。一方、サイドウォールの厚みは、30.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは20.0mm以下、さらに好ましくは10.0mm以下、さらに好ましくは8.0mm以下である。
【0127】
(クリンチの厚み)
クリンチ部の厚みは、2.0mm以上が好ましく、より好ましくは2.5mm以上、さらに好ましくは3.0mm以上、さらに好ましくは3.5mm以上である。一方、該厚みは、10.0mm以下が好ましく、より好ましくは8.0mm以下、さらに好ましくは7.0mm以下、さらに好ましは6.0mm以下である。
【0128】
<製造>
[ゴム組成物の製造]
本実施形態のゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。混練り工程は、例えば、排出温度150~170℃で3~10分間混練りする方法が挙げられる。当該混練り工程は、所望により、複数回に分けて実施することもできる。その際の各混練りの条件は、当業者が適宜設定することができる。
【0129】
[タイヤの製造]
上記で得られるタイヤゴム組成物は、未硬化の段階で、それぞれ、所望のタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工した上で、これを、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未硬化タイヤとすることができる。この未硬化タイヤを加熱加圧機中で加熱加圧することにより、本実施形態のタイヤを得ることができる。加熱加圧の条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、140~200℃で15~180分間、加熱加圧する方法が挙げられる。
【0130】
<用途>
本明細書において、前記ゴム組成物からなるタイヤ部材を有するタイヤは、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わず、いずれのタイヤにも使用できるが、空気入りタイヤとして、好適に使用することができる。また、当該タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用タイヤ、大型SUV用タイヤ、競技用タイヤ、トラック・バス等の重荷重用タイヤ、ランフラットタイヤ、二輪車用タイヤ等の様々な用途に使用することができる。なお、乗用車用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、その最大負荷能力が1400kg未満のものを指す。また、重荷重用タイヤとは、その最大負荷能力が1400kg以上のタイヤを指す。また、本明細書において、タイヤは、全シーズン用タイヤ、夏用タイヤの他、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤに使用可能である。
【実施例0131】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。以下に示す各種薬品を用いて表1に従って得られるゴム組成物を検討して下記評価方法に基づいて算出した結果を表1に示す。
【0132】
<各種薬品>
エポキシ化ジエン系ゴム1:ENR25(エポキシ化率25モル%のエポキシ化天然ゴム、クンプーランガスリー社製)
エポキシ化ジエン系ゴム2:ENR50(エポキシ化率50モル%のエポキシ化天然ゴム、クンプーランガスリー社製)
イソプレン系ゴム(IR系ゴム):TSR20(天然ゴム)
イミダゾール化合物1:イミダゾール(東京化成工業(株)製)
イミダゾール化合物2:1,2-ジメチルイミダゾール(四国化成工業(株)製)
イミダゾール化合物3:1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(Sigma-Aldrich社製)
カルボン酸化合物1:スベリン酸(2価のカルボン酸、東京化成工業(株)製)
カルボン酸化合物2:ドデカン二酸(2価のカルボン酸、Sigma-Aldrich社製)
カーボンブラック:N234(ASTM D-1765規格に準じた名称)
シリカ:Zeosil 1165MP(Rhodia社製、N2SA:160m2/g)
シランカップリング剤:トリエトキシオクチルシラン(degussa社製)
老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-p-フェニレンジアミン(サントフレックス 6-PPD、Flexsys社製)
オイル:ダイアナプロセスPS-32(ミネラルオイル、出光興産(株)製)
【0133】
実施例および比較例
表1に示す配合処方に従い、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、各種薬品を、150℃で5分間混練りし、混練物を得る。
【0134】
上記で得た各未硬化ゴム組成物を、キャップトレッドの形状に押し出し加工し、他のタイヤ部材と合わせて未加硫タイヤを作製し、表1記載の条件下で加熱加圧することにより試験用タイヤ(195/65R15)を得る。
【0135】
<最長緩和時間>
試験用タイヤのキャップトレッドから、高さ16mm、幅40mm、厚さ約2mmの測定用サンプルを切り出す。測定機器は、Metrabiv社製の高周波数用動的粘弾性測定装置DMA+300を用いる。測定用サンプルをフィルムシェア型の治具(治具間のギャップは2mm)で固定し、測定温度(60℃)で5分間保持した後、10%のせん断ひずみをかけて保持し、せん断弾性率の時間変化G(t)を5秒毎に20分間測定する。この測定結果から、Procedure Xによって、最長緩和時間(時間)T1を求める。すなわち、1000秒から1200秒におけるlnG(t)の全ての点を時間tに対して片対数プロットし、最小二乗法により直線に近似し、その傾き(-(1/T1))から、最長緩和時間(時間)T1を求める。
【0136】
<グリップ性能>
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、乾燥アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求め、基準比較例を100としたときの指数で表示する。グリップ性能指数が大きいほど、制動距離が短く、グリップ性能に優れることを示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
<実施形態>
以下に、好ましい実施形態を示す。
【0140】
[1]エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム成分と、イミダゾール化合物および2価以上のカルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一つと、オイルとを含むゴム組成物であって、
前記オイルのゴム成分100質量部に対する含有量(質量部)AOを前記ゴム組成物のProcedure Xから求められる最長緩和時間(時間)T1で除した値(AO/T1)が0.045以上、好ましくは0.050以上、より好ましくは0.090以上である、ゴム組成物。
[2]AO/T1が0.100以上、好ましくは0.200以上、より好ましくは0.300以上、さらに好ましくは0.500以上、さらに好ましくは1.000以上である、上記[1]記載のゴム組成物。
[3]前記ゴム成分が0質量%超50質量%未満、好ましくは0質量%超45質量%未満、さらに好ましくは0質量%超40質量%以下のイソプレン系ゴムを含む、上記[1]または上記[2]記載のゴム組成物。
[4]前記エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率が50モル%以下、好ましくは50モル%未満、より好ましくは30モル%未満、さらに好ましくは25モル%以下である、上記[1]~上記[3]のいずれか1項に記載のゴム組成物。
[5]充填剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、45質量部未満、好ましくは20質量部未満、さらに好ましくは5質量部未満である、上記[1]~上記[4]のいずれか1項に記載のゴム組成物。
[6]上記[1]~上記[5]のいずれか1項に記載のゴム組成物から構成されるタイヤ部材を有するタイヤ。
[7]前記タイヤ部材の厚み(mm)をWとするとき、AO/T1とWとの積(AO×W/T1)が、0.180以上、好ましくは0.200以上100.0以下、より好ましくは0.360以上50.00以下、さらに好ましくは0.400以上30.00以下、さらに好ましくは0.700以上10.00以下、さらに好ましくは0.800以上7.000以下、さらに好ましくは1.150以上5.000以下、さらに好ましくは1.500以上5.000以下、さらに好ましくは2.000以上5.000以下、さらに好ましくは2.200以上5.000以下、さらに好ましくは4.000以上5.000以下、さらに好ましくは4.100以上5.000以下である、上記[6]記載のタイヤ。
[8]前記タイヤ部材がキャップトレッドである、上記[6]または上記[7]記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0141】
1 タイヤ
2 トレッド
2a キャップトレッド
2b ベーストレッド
3 サイドウォール
4 ウイング
5 クリンチ
6 バンド
7 ブレーカー
8 カーカス
9 インナーライナー
R リム
T1 キャップトレッドの厚み
T2 ベーストレッドの厚み
S サイドウォールの厚み
C クリンチの厚み
CL タイヤ中心線
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
「最長緩和時間」は、以下のようにして測定する。すなわち、ゴム組成物について、高さ16mm、幅40mm、厚さ約2mmの測定用サンプルを準備する。測定機器は、Metra社製の高周波数用動的粘弾性測定装置DMA+300を用いる。測定用サンプルをフィルムシェア型の治具(治具間のギャップは2mm)で固定し、測定温度(60℃)で5分間保持した後、10%のせん断ひずみをかけて保持し、せん断弾性率の時間変化G(t)を5秒毎に20分間測定する。この測定結果から、Procedure Xによって、最長緩和時間(時間)T1を求める。すなわち、1000秒から1200秒におけるlnG(t)の全ての点を時間tに対して片対数プロットし、最小二乗法により直線に近似し、その傾き(-(1/T1))から、最長緩和時間(時間)T1を求める。なお、上記せん断弾性率は、前記文献(高橋)の緩和弾性率と同義である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
Aの炭化水素基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ等が挙げられる。これら置換基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。また、これら置換基の種類は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
エステル系可塑剤
エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジブチル(DBP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、チミジントリリン酸(TTP)、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリキシレニル(TXP)等が挙げられる。エステル系可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0109
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0109】
チオウレア系加硫促進剤としては、例えば、チカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素等のチオ尿素化合物、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素等が挙げられる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0133
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0133】
実施例および比較例
表1および表2に示す配合処方に従い、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、各種薬品を、150℃で5分間混練りし、混練物を得る。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0134】
上記で得た各未硬化ゴム組成物を、キャップトレッドの形状に押し出し加工し、他のタイヤ部材と合わせて未加硫タイヤを作製し、表1および表2記載の条件下で加熱加圧することにより試験用タイヤ(195/65R15)を得る。