(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099487
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20250626BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250626BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20250626BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20250626BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08K3/013
C08L21/00
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
H05K1/03 610L
B32B27/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216178
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池平 秀
(72)【発明者】
【氏名】秋永 有輝
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AK42B
4F100AK53A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CA23A
4F100GB41
4F100GB43
4F100JA06
4F100JA07A
4F100JK06
4F100JL04
4F100JL14B
4F100YY00A
4J002AC00Y
4J002AC03Y
4J002AC06Y
4J002BB00Y
4J002BG02Y
4J002CD04W
4J002CD04X
4J002CD05X
4J002CD07W
4J002CG00Y
4J002CH02Y
4J002CP03Y
4J002FD016
4J002FD147
4J002GF00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】誘電正接が低く、反りを抑制でき、かつ、導体層との密着性に優れる絶縁層を形成できる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)特定の構造を有する第一エポキシ樹脂、(B)第一エポキシ樹脂以外の第二エポキシ樹脂、(C)硬化剤、(D)低弾性ポリマー、及び、(E)無機充填材、を含む樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(A-1)で表される第一エポキシ樹脂、(B)第一エポキシ樹脂以外の第二エポキシ樹脂、(C)硬化剤、(D)低弾性ポリマー、及び、(E)無機充填材、を含む樹脂組成物。
【化1】
(前記式において、
R
a1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;
R
a2は、それぞれ独立に、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3b)で表される基を示し;少なくとも2つのR
a2のうち、1つは式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を示し;
R
a3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;
R
a4は、それぞれ独立に、水素原子又は式(A-3a)で表される基を示し;
A
aは、式(A-1)から2つのR
a2を除いた残基であって、残基中のR
a2は水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示し;
i
aは、0~2の整数を示し;
n
aは、繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数であり;
p
aは、繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。)
【請求項2】
(E)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、50質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)第二エポキシ樹脂が、芳香環構造を含有するエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B)第二エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂及びフェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(D)低弾性ポリマーが、5,000より大きい重量平均分子量を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(D)低弾性ポリマーが、ポリブタジエン構造、ポリカーボネート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリスチレン構造からなる群より選択される1以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
絶縁層形成用の、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
【請求項11】
請求項10に記載の回路基板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその硬化物、樹脂シート、回路基板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の回路基板は、各種電子機器に広く使用されている。回路基板の製造方法としては、内層基板に絶縁層と導体層とを交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。絶縁層は、例えば、樹脂組成物の硬化物によって形成される。具体例を挙げると、樹脂組成物を含む樹脂組成物層を形成し、その樹脂組成物層を硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層が形成される。このような樹脂組成物としては、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物が知られていた(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2023/100572号
【特許文献2】特開2022-150798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁層には、一般に、誘電正接が低いことが求められる。ところが、低い誘電正接を得るためのエポキシ樹脂を用いた場合、従来は、密着性及び反りに劣っていた。具体的には、低い誘電正接が得られる従来のエポキシ樹脂を用いた絶縁層を回路基板に設けると、回路基板の反りが大きくなる傾向があった。また、そのような反りを抑制しながら低い誘電正接を得られるエポキシ樹脂を用いた場合には、絶縁層と導体層との密着性が低くなる傾向があった。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、誘電正接が低く、反りを抑制でき、かつ、導体層との密着性に優れる絶縁層を形成できる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板;並びに、前記回路基板を含む半導体装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、特定のエポキシ樹脂と、当該特定のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂と、硬化剤と、低弾性ポリマーと、無機充填材と、を組み合わせた場合に、前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0007】
<1> (A)式(A-1)で表される第一エポキシ樹脂、(B)第一エポキシ樹脂以外の第二エポキシ樹脂、(C)硬化剤、(D)低弾性ポリマー、及び、(E)無機充填材、を含む樹脂組成物。
【化1】
(前記式において、
R
a1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;
R
a2は、それぞれ独立に、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3b)で表される基を示し;少なくとも2つのR
a2のうち、1つは式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を示し;
R
a3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;
R
a4は、それぞれ独立に、水素原子又は式(A-3a)で表される基を示し;
A
aは、式(A-1)から2つのR
a2を除いた残基であって、残基中のR
a2は水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示し;
i
aは、0~2の整数を示し;
n
aは、繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数であり;
p
aは、繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。)
<2> (E)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、50質量%以上である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> (B)第二エポキシ樹脂が、芳香環構造を含有するエポキシ樹脂を含む、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> (B)第二エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂及びフェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1以上を含む、<1>~<3>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<5> (D)低弾性ポリマーが、5,000より大きい重量平均分子量を有する、<1>~<4>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<6> (D)低弾性ポリマーが、ポリブタジエン構造、ポリカーボネート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリスチレン構造からなる群より選択される1以上を含む、<1>~<5>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<7> 絶縁層形成用の、<1>~<6>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<8> 支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、<1>~<7>のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
<9> <1>~<7>のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
<10> <1>~<7>のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
<11> <10>に記載の回路基板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誘電正接が低く、反りを抑制でき、かつ、導体層との密着性に優れる絶縁層を形成できる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板;並びに、前記回路基板を含む半導体装置;を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において変更して実施してもよい。
【0010】
本明細書において、化合物又は基についていう「置換基を有していてもよい」という用語は、該化合物又は基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該化合物又は基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
【0011】
<樹脂組成物の概要>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)式(A-1)で表される第一エポキシ樹脂、(B)第一エポキシ樹脂以外の第二エポキシ樹脂、(C)硬化剤、(D)低弾性ポリマー、及び、(E)無機充填材、を含む。以下の説明では、「(A)式(A-1)で表される第一エポキシ樹脂」を「(A)第一エポキシ樹脂」ということがあり、また、「(B)第一エポキシ樹脂以外の第二エポキシ樹脂」を「(B)第二エポキシ樹脂」ということがある。
【0012】
【0013】
(前記式において、Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;Ra2は、それぞれ独立に、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3b)で表される基を示し;少なくとも2つのRa2のうち、1つは式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を示し;Ra3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~8の炭化水素基を示し;Ra4は、それぞれ独立に、水素原子又は式(A-3a)で表される基を示し;Aaは、式(A-1)から2つのRa2を除いた残基であって、残基中のRa2は水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示し;iaは、0~2の整数を示し;naは、繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数であり;paは、繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。*は、結合部位を表す。)
【0014】
前記の樹脂組成物によれば、誘電正接が低く、反りを抑制でき、かつ、導体層との密着性に優れる絶縁層を形成できる。また、この樹脂組成物は、通常、低い最低溶融粘度を有することができる。
このように優れた効果が得られる仕組みを、本発明者は、下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みによって制限されるものでは無い。
【0015】
(A)第一エポキシ樹脂は、主鎖中のベンゼン環に結合した基Ra2として、式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を含有する。式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基は、分子骨格から理解できるように、主鎖に対して自由に動くことができる。そうすると、式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基は樹脂組成物中で他の分子間に容易に進入し、それら分子間の相互作用を妨げることができる。よって、極性基同士の相互作用が妨げられる結果、極性部位が集合したり、極性基間の相互作用で微小なレベルでの分子配向が生じたりすることを抑制できるので、樹脂組成物全体としての極性の偏りが生じることを抑制できる。したがって、樹脂組成物及びその硬化物の極性を低減できるから、当該硬化物を含む絶縁層の誘電正接を低くできる。
【0016】
その一方で、(A)第一エポキシ樹脂の式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基が分子間の相互作用を妨げるので、(A)第一エポキシ樹脂を含む従来の樹脂組成物の硬化物においては、分子構造の拘束が小さかった。よって、従来の樹脂組成物の硬化物は、熱膨張の程度は大きくなる傾向があり、そのため熱膨張による反りが大きい傾向があった。これに対し、本実施形態においては、(A)第一エポキシ樹脂に(D)低弾性ポリマー及び(E)無機充填材を組み合わせて、反りを抑制している。(D)低弾性ポリマーは、熱変化によって硬化物中に応力が生じた場合に、その応力を吸収できる。また、(E)無機充填材は、一般に、樹脂成分よりも熱膨張係数が小さい。したがって、これら(D)低弾性ポリマー及び(E)無機充填材により、反りの抑制が達成される。
【0017】
また、(A)第一エポキシ樹脂の式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基が分子間の相互作用を妨げるから、(A)第一エポキシ樹脂を含む従来の樹脂組成物の硬化物は、機械的強度が低い傾向があった。硬化物の機械的強度が低いと、硬化物の破壊を伴う剥離(デラミネーション)が生じやすい。これに対し、本実施形態では、分子間の相互作用を妨げる式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を含む(A)第一エポキシ樹脂に、当該(A)第一エポキシ樹脂以外の(B)第二エポキシ樹脂を組み合わせている。このように(A)第一エポキシ樹脂以外の(B)第二エポキシ樹脂を組み合わせることにより、硬化物の機械的強度を高められるので、硬化物の破壊を伴う剥離を抑制できる。したがって、導体層との間の密着性を高めることができる。
【0018】
さらに、上述したように(A)第一エポキシ樹脂の式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基が分子間の相互作用を妨げるので、相互作用による分子間の拘束力を低減できる。よって、樹脂組成物中において分子の流動性を高めることができるので、通常、樹脂組成物の最低溶融粘度を低減することができる。
【0019】
<(A)第一エポキシ樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分としての(A)第一エポキシ樹脂を含む。(A)第一エポキシ樹脂は、式(A-1)で表される。
【0020】
【0021】
式(A-1)において、Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~8の炭化水素基を示す。Ra1が示す炭化水素基は、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数6~8のアリール基、炭素原子数7~8のアラルキル基、又はアリル基が好ましい。Ra1におけるアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。Ra1におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基等が挙げられる。Ra1におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、フェニル基及びメチル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。(A)第一エポキシ樹脂が1分子中に複数のRa1を含有する場合、それらのRa1は、同じでもよく、異なっていてもよい。ベンゼン環へのRa1の結合位置は、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれであってもよいが、オルト位が好ましい。
【0022】
式(A-1)において、Ra2は、それぞれ独立に、水素原子、ジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3b)で表される基を示す。ここで、少なくとも2つのRa2のうち、1つはジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3b)で表される基を示す。
【0023】
ジシクロペンテニル基は、ジシクロペンタジエンに由来する基であり、式(A-2а)もしくは式(A-2b)で表される。(A)第一エポキシ樹脂が1分子中にジシクロペンテニル基を複数含有する場合、それらのジシクロペンテニル基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0024】
【0025】
式(A-3a)又は式(A-3b)で表される基は、以下のとおりである。
【0026】
【0027】
式(A-3a)において、Ra3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~8の炭化水素基を示す。Ra3における炭素原子数1~8の炭化水素基としては、Ra1における炭素原子数1~8の炭化水素基と同じものが例示される。中でも、Ra3は、硬化物の耐熱性の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、及びビニル基が好ましく;水素原子、メチル基及びエチル基がより好ましく;水素原子及びエチル基が更に好ましい。(A)第一エポキシ樹脂が1分子中にRa3を複数含有する場合、それらのRa3は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、共通のベンゼン環に結合するRa3のうち、1つがエチル基であり、残りが水素原子であることが特に好ましい。また、Ra3としての炭素原子数1~8の炭化水素基のベンゼン環への結合位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、メタ位及びパラ位が好ましい。
【0028】
式(A-3b)において、Ra3は、式(A-3a)におけるRa3と同義である。
【0029】
式(A-3b)において、Aaは、式(A-1)から2つのRa2を除いた2価の残基を示す。この2価の残基中のRa2は、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示す。(A)第一エポキシ樹脂が1分子中にAaを複数含有する場合、それらのAaは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0030】
式(A-3b)において、Ra4は、それぞれ独立に、水素原子又は式(A-3a)で表される基を示す。(A)第一エポキシ樹脂が1分子中にRa4を複数含有する場合、それらのRa4は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0031】
式(A-3b)において、paは、繰り返し数を表す0以上の数を示す。paの平均値(数平均)は、通常0.01~3.0であり、好ましくは0.1~2.0であり、より好ましくは0.2~1.0であり、更に好ましくは0.3~0.8である。
【0032】
式(A-1)において、iaは、0~2の整数を示す。iaは、基Ra1の数を表し、通常0~2であり、好ましくは1又は2であり、より好ましくは2である。
【0033】
式(A-1)において、naは繰り返し数を表す0以上の数を示す。naの平均値(数平均)は、通常0~5.0であり、好ましくは1.0~4.0であり、より好ましくは1.1~3.0であり、更に好ましくは1.2~2.5である。
【0034】
(A)第一エポキシ樹脂は、例えば、下記式(A-4)で表される多価ヒドロキシ樹脂と、エピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンとを反応させることによって製造できる。具体的な製造方法は、国際公開第2023/100572号を参照しうる。
【0035】
【0036】
(前記式において、Ra5は、それぞれ独立に、水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、式(A-3a)で表される基、又は、式(A-3c)で表される基を示し;少なくとも2つのRa5のうち、1つは式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基を示し、もう1つは式(A-3a)もしくは式(A-3c)で表される基を示し;Aa1は、式(A-4)から2つのRa5を除いた残基であって、残基中のRa5は水素原子、式(A-2a)もしくは式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(A-3a)で表される基を示し;その他の記号は上述した通りである。*は、結合部位を表す。)
【0037】
(A)第一エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは200g/eq.以上、より好ましくは250g/eq.以上、更に好ましくは300g/eq.以上、更に好ましくは350g/eq.以上であり、好ましくは4,000g/eq.以下、より好ましくは2,000g/eq.以下、更に好ましくは1,000g/eq.以下、更に好ましくは500g/eq.以下である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0038】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定を行った場合の(A)第一エポキシ樹脂の組成としては、式(A-1)において、好ましくは、na=0体が20面積%以下、na=1体が40面積%~90面積%、na=2体以上が0面積%~60面積%の範囲にある。
【0039】
(A)第一エポキシ樹脂の全塩素含有量は、2000ppm以下が好ましく、1500ppm以下が更に好ましい。
【0040】
(A)第一エポキシ樹脂の150℃における溶融粘度は、好ましくは1.0Pa・s以下、より好ましくは0.7Pa・s以下、更に好ましくは0.5Pa・s以下である。下限は、例えば、0.01Pa・s以上、0.05Pa・s以上、0.1Pa・s以上などでありうる。
【0041】
(A)第一エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(A)第一エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。樹脂組成物中の不揮発成分とは、別に断らない限り、樹脂組成物中の(J)溶剤を除いた成分を表す。(A)第一エポキシ樹脂の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0043】
(A)第一エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。樹脂組成物中の樹脂成分とは、別に断らない限り、樹脂組成物中の不揮発成分のうちで(E)無機充填材を除いた成分を表す。(A)第一エポキシ樹脂の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0044】
(A)第一エポキシ樹脂の量の範囲は、(A)第一エポキシ樹脂及び(B)第二エポキシ樹脂の合計量100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。(A)第一エポキシ樹脂の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0045】
(A)第一エポキシ樹脂と(D)低弾性ポリマーとの質量比((A)第一エポキシ樹脂/(D)低弾性ポリマー)の範囲は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。質量比((A)第一エポキシ樹脂/(D)低弾性ポリマー)が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0046】
(A)第一エポキシ樹脂及び(B)第二エポキシ樹脂の合計量と(D)低弾性ポリマーとの質量比((A)第一エポキシ樹脂及び(B)第二エポキシ樹脂の合計量/(D)低弾性ポリマー)の範囲は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上、特に好ましくは1.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。質量比((A)第一エポキシ樹脂及び(B)第二エポキシ樹脂の合計量/(D)低弾性ポリマー)が前記範囲にある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0047】
(A)第一エポキシ樹脂及び(D)低弾性ポリマーの合計量の範囲は、(E)無機充填材100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは18質量%以下である。(A)第一エポキシ樹脂及び(D)低弾性ポリマーの合計量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0048】
<(B)第二エポキシ樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(B)成分としての(B)第二エポキシ樹脂を含む。(B)第二エポキシ樹脂は、(A)第一エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を表す。よって、(B)第二エポキシ樹脂は、エポキシ基を含有する樹脂としてのエポキシ樹脂のうち、上述した式(A-1)で表されるもの以外の樹脂を表す。(B)第二エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(B)第二エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
(B)第二エポキシ樹脂は、芳香族構造を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましく、芳香族構造を含有するエポキシ樹脂のみを含んでいてもよい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。芳香族構造を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビシキレノール型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、(B)第二エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂及びフェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1以上を含むことがより好ましい。
【0051】
(B)第二エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(B)第二エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
【0052】
(B)第二エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。(B)第二エポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0053】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0054】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP-4032」、「HP-4032-D」、「HP-4032-SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0055】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましく;ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂及びフェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂がより好ましく;ビキシレノール型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂が更に好ましい。
【0056】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0057】
(B)第二エポキシ樹脂が液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含む場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは7:1~1:7である。
【0058】
(B)第二エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~3,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1,000g/eq.である。
【0059】
(B)第二エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0060】
(B)第二エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。(B)第二エポキシ樹脂の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0061】
(B)第二エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。(B)第二エポキシ樹脂の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0062】
(B)第二エポキシ樹脂と(D)低弾性ポリマーとの質量比((B)第二エポキシ樹脂/(D)低弾性ポリマー)の範囲は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下である。質量比((B)第二エポキシ樹脂/(D)低弾性ポリマー)が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0063】
<(C)硬化剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(C)成分としての(C)硬化剤を含む。(C)硬化剤は、(A)第一エポキシ樹脂及び(B)第二エポキシ樹脂といったエポキシ樹脂と反応して結合を形成し、樹脂組成物を硬化させうる。(C)硬化剤には、上述した(A)~(B)成分に該当するものは含めない。(C)硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
(C)硬化剤としては、例えば、活性エステル系樹脂、フェノール系樹脂、カルボジイミド系樹脂、シアネート系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、酸無水物系樹脂、アミン系樹脂、チオール系樹脂などが挙げられる。中でも、活性エステル系樹脂、フェノール系樹脂、カルボジイミド系樹脂及びシアネート系樹脂が好ましい。
【0065】
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いうる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。
【0066】
活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0067】
具体的には、活性エステル系樹脂としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が好ましく、中でもナフタレン型活性エステル系樹脂がより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル系樹脂としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂が好ましい。
【0068】
活性エステル系樹脂の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「HPC-8151-62T」(DIC社製);りん含有活性エステル系樹脂として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0069】
活性エステル系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。活性エステル系樹脂の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0070】
フェノール系樹脂としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基(フェノール性水酸基)を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する樹脂を用いうる。耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系樹脂が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール系樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0071】
フェノール系樹脂の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0072】
フェノール系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。フェノール系樹脂の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0073】
カルボジイミド系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する樹脂を用いうる。カルボジイミド系樹脂の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド系樹脂の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-05」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ランクセス社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0074】
カルボジイミド系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。カルボジイミド系樹脂の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0075】
シアネート系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のシアネート基を有する樹脂を用いうる。シアネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート系樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート系樹脂;これらシアネート系樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネート系樹脂の具体例としては、ロンザ社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネート系樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0076】
シアネート系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。シアネート系樹脂の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0077】
ベンゾオキサジン系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のベンゾオキサジン環を有する樹脂を用いうる。ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」、「ALP-d」などが挙げられる。
【0078】
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上の酸無水物基を有する樹脂を用いうる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系樹脂の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;レゾナック社製の「HN-2200」;クレイバレー社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0079】
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する樹脂を用いうる。アミン系樹脂としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂の市販品としては、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」;三菱ケミカル社製の「エピキュアW」;住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。
【0080】
チオール系樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0081】
(C)硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3,000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1,000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの樹脂の質量を表す。例えば、フェノール系樹脂の活性基当量はフェノール性水酸基当量を表し、フェノール性水酸基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0082】
(C)硬化剤の重量平均分子量(Mw)の範囲は、(B)第二のエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲と同じであってもよい。
【0083】
(C)硬化剤の活性基数は、(A)第一エポキシ樹脂のエポキシ基数及び(B)第二エポキシ樹脂のエポキシ基数の合計を1とした場合、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下である。樹脂組成物中の「(A)第一エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)第一エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をそのエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、樹脂組成物中の「(B)第二エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)第二エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をそのエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。さらに、樹脂組成物中の「(C)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(C)硬化剤の不揮発成分の質量をその活性基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。
【0084】
(C)硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。(C)硬化剤の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0085】
(C)硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。(C)硬化剤の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0086】
<(D)低弾性ポリマー>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(D)成分としての(D)低弾性ポリマーを含む。(D)低弾性ポリマーは、低い弾性率を有するポリマーである。通常、(D)低弾性ポリマーは、(A)~(C)成分等の樹脂成分と相溶した状態で樹脂組成物に含まれ、当該相溶した状態を維持したまま硬化物に含まれる。(D)低弾性ポリマーには、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(D)低弾性ポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
(D)低弾性ポリマーは、通常、低い弾性率を有する。具体的には、日本工業規格(JIS K7161)に準拠し、温度25℃、湿度40%RHにて引っ張り試験を行った場合、(D)低弾性ポリマーは、通常1GPa以下の弾性率を示す。(D)低弾性ポリマーの前記弾性率の範囲は、詳細には、通常1GPa以下、好ましくは0.9GPa以下、より好ましくは0.8GPa以下、更に好ましくは0.7GPa以下であり、好ましくは0.01GPa以上、より好ましくは0.03GPa以上、更に好ましくは0.05GPa以上、特に好ましくは0.1GPa以上である。
【0088】
(D)低弾性ポリマーは、ポリマーであるので、通常は大きな重量平均分子量を有する。(D)低弾性ポリマーの重量平均分子量Mwの範囲は、好ましくは5,000より大きく、より好ましくは8,000以上、更に好ましくは10,000以上である。上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは200,000以下、更に好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下である。
【0089】
(D)低弾性ポリマーとしては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリカーボネート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリスチレン構造からなる群より選択される1以上を含む樹脂が好ましい。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレート並びにそれらの組み合わせを包含する。これらの構造は、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。これらの構造は、通常、当該構造に含まれる原子間結合による原子の動きの制限が小さく、結合角の変化及び回転が可能な範囲が広いので、柔軟な分子骨格として機能できる。よって、これらの構造を含む樹脂として(D)低弾性ポリマーを容易に得ることができる。中でも、ポリブタジエン構造、ポリカーボネート構造及びポリアルキレン構造からなる群より選択される1以上を含む樹脂が更に好ましい。
【0090】
ポリブタジエン構造を含む樹脂を、「ポリブタジエン樹脂」ということがある。ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0091】
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン);日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン);ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)、等が挙げられる。
【0092】
また、ポリブタジエン樹脂の具体例としては、分子内にポリブタジエン構造、ウレタン構造及びイミド構造を有するポリイミド樹脂が挙げられる。該ポリイミド樹脂は、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料として線状ポリイミド樹脂(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)として製造しうる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0093】
ポリカーボネート構造を含む樹脂を、「ポリカーボネート樹脂」ということがある。ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。
【0094】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」;旭化成社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール);クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0095】
また、ポリカーボネート樹脂の具体例としては、分子内にイミド構造、ウレタン構造およびポリカーボネート構造を有するポリイミド樹脂が挙げられる。該ポリイミド樹脂は、ヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド樹脂として製造しうる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0096】
ポリアルキレン構造を含む樹脂を、「ポリアルキレン樹脂」ということがある。ポリアルキレン樹脂としては、繰り返し単位中にアルキレン鎖を含む樹脂を用いることができる。当該アルキレン鎖の炭素原子数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは7以上である。上限は、例えば、36以下、15以下、10以下、8以下などであってもよい。このポリアルキレン樹脂としては、繰り返し単位中にダイマー酸由来の炭素骨格を含む樹脂が好ましい。
【0097】
ダイマー酸由来の炭素骨格とは、ダイマー酸の二つの末端カルボキシ基(-COOH)を除いてなる2価の基の骨格を表す。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数11~22のもの、更に好ましくは炭素数18のもの)を二量化することにより得られる既知の化合物であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されている。ダイマー酸は、とりわけ安価で入手しやすいオレイン酸、リノール酸等の炭素原子数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36のダイマー酸を主成分とするものが容易に入手できる。また、ダイマー酸は、製造方法、及び、精製の程度に応じ、任意量のモノマー酸、トリマー酸、その他の重合脂肪酸等を含有する場合がある。また、不飽和脂肪酸の重合反応後には二重結合が残存するが、本明細書では、さらに水素添加反応して不飽和度を低下させた水素添加物も、ダイマー酸に包含される。
【0098】
ダイマー酸由来の炭素骨格を含有するポリアルキレン樹脂は、一般に、2価の炭化水素基を含み、この2価の炭化水素基がダイマー酸由来の炭素骨格を含む。ダイマー酸由来の炭素骨格を含むこの2価の炭化水素基は、通常、炭素原子数が7以上の長い脂肪族炭素鎖を有し、この長い脂肪族炭素鎖にアルキレン鎖が含まれる。ダイマー酸由来の炭素骨格を含む前記の2価の炭化水素基の炭素原子数は、36であってもよい。
【0099】
ダイマー酸由来の炭素骨格を含有するポリアルキレン樹脂の具体例としては、ダイマー酸由来の炭素骨格を含有するポリイミド樹脂が挙げられる。このポリイミド樹脂は、例えば、ダイマー酸型ジアミンとテトラカルボン酸無水物とのイミド化反応によって得られる樹脂が挙げられる。ダイマー酸型ジアミンは、ダイマー酸の二つの末端カルボキシ基(-COOH)が、アミノメチル基(-CH2-NH2)又はアミノ基(-NH2)に置換された構造のジアミン化合物を意味する。ダイマー酸型ジアミンは、例えば、クローダジャパン社製の「PRIAMINE1073」、「PRIAMINE1074」、「PRIAMINE1075」;コグニスジャパン社製の「バーサミン551」、「バーサミン552」等が挙げられる。また、テトラカルボン酸無水物としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物を用いてもよく、芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0100】
ポリアルキレンオキシ構造を含む樹脂を、「ポリアルキレンオキシ樹脂」ということがある。ポリアルキレンオキシ樹脂が含むアルキレンオキシ構造の炭素原子数は、2~15が好ましく、3~10がより好ましく、5~8が更に好ましい。アルキレンオキシ樹脂の具体例としては、DIC社製「EXA-4850-150」、「EXA-4816」、「EXA-4822」;ADEKA社製「EP-4000」、「EP-4003」、「EP-4010」、「EP-4011」;新日本理化社製「BEO-60E」、「BPO-20E」;三菱ケミカル社製「YL7175」、「YL7410」等が挙げられる。
【0101】
ポリシロキサン構造を含む樹脂を、「ポリシロキサン樹脂」ということがある。ポリシロキサン樹脂としては、例えば、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」;アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0102】
ポリ(メタ)アクリレート構造を含む樹脂を、「ポリ(メタ)アクリレート樹脂」ということがある。ポリ(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン;根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」;東亞合成社製の「ARUFON UH-2000」等が挙げられる。
【0103】
ポリイソプレン構造を含む樹脂を、「ポリイソプレン樹脂」ということがある。ポリイソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0104】
ポリイソブチレン構造を含む樹脂を、「ポリイソブチレン樹脂」ということがある。ポリイソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0105】
ポリスチレン構造を含む樹脂を、「ポリスチレン樹脂」ということがある。ポリスチレン樹脂は、スチレン単位に組み合わせて、前記のスチレン単位とは異なる任意の繰り返し単位を含む共重合体であってもよく、水添ポリスチレン樹脂であってもよい。ポリスチレン樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0106】
ポリスチレン樹脂の具体例としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマー「H1041」、「タフテックH1043」、「タフテックP2000」、「タフテックMP10」(旭化成社製);エポキシ化スチレン-ブタジエン熱可塑性エラストマー「エポフレンドAT501」、「CT310」(ダイセル社製);ヒドロキシル基を有する変成スチレン系エラストマー「セプトンHG252」(クラレ社製);カルボキシル基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN503M」、アミノ基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN501」、酸無水物基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックM1913」(旭化成社製);未変性スチレン系エラストマー「セプトンS8104」(クラレ社製);スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体「FG1924」(Kraton社製)、「EF-40」(CRAY VALLEY社製)が挙げられる。
【0107】
(D)低弾性ポリマーは、25℃以下のガラス転移温度Tgを有するか、又は、25℃以下で液状であることが好ましい。(D)低弾性ポリマーが25℃以下のガラス転移温度Tgを有する場合、当該ガラス転移温度Tgは、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。ガラス転移温度Tgの下限は、特に限定されないが、好ましくは-15℃以上でありうる。(D)低弾性ポリマーが25℃以下で液状である場合、当該(D)低弾性ポリマーは、25℃で液状であることが好ましく、20℃で液状であることがより好ましく、15℃で液状であることが更に好ましい。ガラス転移温度Tgは、DSC(示差走査熱量測定)により、5℃/分の昇温速度で測定しうる。
【0108】
(D)低弾性ポリマーは、(A)第一エポキシ樹脂及び(B)第二エポキシ樹脂といったエポキシ樹脂と反応できる官能基を有していてもよい。(D)低弾性ポリマーがエポキシ樹脂と反応できる場合、樹脂組成物の硬化物の機械的強度を高めることができる。エポキシ樹脂と反応できる官能基には、加熱によって現れる官能基が包含される。この官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、ウレタン基及びマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)が挙げられる。中でも、水酸基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、ウレタン基及びマレイミド基が好ましく、フェノール性水酸基がより好ましい。
【0109】
(D)低弾性ポリマーの量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。(D)低弾性ポリマーの量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0110】
(D)低弾性ポリマーの量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。(D)低弾性ポリマーの量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成でき、更に通常は、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低減できる。
【0111】
<(E)無機充填材>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(E)成分としての(E)無機充填材を含む。(E)無機充填材は、無機材料の粒子である。よって、(E)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれ、通常は、当該粒子の状態を維持したまま硬化物に含まれる。(E)無機充填材には、上述した(A)~(D)成分に該当するものは含めない。
【0112】
(E)無機充填材を形成する無機材料としては、通常、無機化合物を用いる。(E)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ及びアルミナが好適であり、シリカが特に好適である。よって、(E)無機充填材は、シリカを含むことが好ましく、シリカのみを含んでいてもよい。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(E)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
(E)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製の「セルスフィアーズ」「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」「BA-1」などが挙げられる。
【0114】
(E)無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下である。
【0115】
(E)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0116】
(E)無機充填材の比表面積は、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上であり、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは70m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以下、特に好ましくは40m2/g以下である。(E)無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで測定できる。
【0117】
(E)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0118】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0119】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%の表面処理剤で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%の表面処理剤で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0120】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物層の溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0121】
(E)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0122】
(E)無機充填材の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。(E)無機充填材の量が前記範囲のある場合、誘電正接の低減、反りの抑制、及び、密着性の向上を効果的に達成できる。また、一般に、(E)無機充填材を多く含む樹脂組成物は溶融粘度が高い傾向があるが、本実施形態に係る樹脂組成物では、通常、最低溶融粘度を低くすることができる。
【0123】
(A)第一エポキシ樹脂、(B)第二エポキシ樹脂、(C)硬化剤、(D)低弾性ポリマー及び(E)無機充填材の合計量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。上限は、通常100質量%以下であるが、99.9質量%以下であってもよい。
【0124】
<(F)重合性不飽和樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(F)重合性不飽和樹脂を含んでいてもよい。(F)成分としての(F)重合性不飽和樹脂には、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)重合性不飽和樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
(F)重合性不飽和樹脂としては、非芳香族性の炭素-炭素不飽和結合を含有する樹脂を用いうる。よって、(F)重合性不飽和樹脂は、通常、非芳香族性の炭素-炭素不飽和結合を含む重合性不飽和基を有しうる。重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基等のα,β-不飽和カルボニル基等が挙げられる。これらの重合性不飽和基を有する(F)重合性不飽和樹脂は、通常、ラジカル重合によって反応しうる。(F)重合性不飽和樹脂は、重合性不飽和基を2個以上有することが好ましい。
【0126】
(F)重合性不飽和樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系重合性不飽和樹脂、スチレン系重合性不飽和樹脂、アリル系重合性不飽和樹脂、マレイミド系重合性不飽和樹脂、などが挙げられる。
【0127】
(メタ)アクリル系重合性不飽和樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する樹脂を用いうる。(メタ)アクリル系重合性不飽和樹脂としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル樹脂;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル樹脂;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル樹脂;(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂などの高分子量(分子量1000以上)の(メタ)アクリル酸エステル樹脂などが挙げられる。用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸及びその組み合わせを包含する。(メタ)アクリル系重合性不飽和樹脂の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」(ジオキサングリコールジアクリレート)、共栄社化学社製の「DCP-A」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「DCP」(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)、「BPE-1300N」(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート)、日本化薬社製の「KAYARAD R-684」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「KAYARAD R-604」(ジオキサングリコールジアクリレート)、SABIC社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル)などが挙げられる。
【0128】
スチレン系重合性不飽和樹脂としては、芳香族炭素原子に直接結合したビニル基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する樹脂を用いうる。スチレン系重合性不飽和樹脂としては、例えば、ジビニルベンゼン、2,4-ジビニルトルエン、2,6-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテルなどの低分子量(分子量1000未満)のスチレン系樹脂;ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの高分子量(分子量1000以上)のスチレン系樹脂;などが挙げられる。スチレン系重合性不飽和樹脂の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ODV-XET(X03)」、「ODV-XET(X04)」、「ODV-XET(X05)」(スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、三菱ガス化学社製の「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)が挙げられる。
【0129】
アリル系重合性不飽和樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のアリル基を有する樹脂を用いうる。アリル系重合性不飽和樹脂としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリルなどの芳香族カルボン酸アリルエステル樹脂;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸アリルエステル樹脂;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパンなどのエポキシ含有芳香族アリル樹脂;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタンなどのベンゾオキサジン含有芳香族アリル樹脂;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼンなどのエーテル含有芳香族アリル樹脂;ジアリルジフェニルシランなどのアリルシラン樹脂などが挙げられる。アリル系重合性不飽和樹脂の市販品としては、例えば、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、富士フィルム和光純薬社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日触テクノファインケミカル社製の商品名「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP-d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成工業社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)、DIC社製の「NE-V-1100-70T」などが挙げられる。
【0130】
マレイミド系重合性不飽和樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のマレイミド基を有する樹脂を用いうる。マレイミド系重合性不飽和樹脂は、芳香環に直接結合したマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂であってもよく、芳香環に直接結合したマレイミド基を有さない脂肪族マレイミド樹脂であってもよい。マレイミド系ラジカル重合性樹脂の市販品としては、例えば、「SLK-1500」(信越化学工業社製)、「SLK-2600」(信越化学工業社製)、「SLK-6895-T90」(信越化学工業社製)、「BMI-1500」(Designer Molecules Inc.社製)、「BMI-1700」(Designer Molecules Inc.社製)、「BMI-3000J」(Designer Molecules Inc.社製)、「BMI-689」(Designer Molecules Inc.社製)、「BMI-2500」(Designer Molecules Inc.社製)などの、脂肪族骨格(好ましくはダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格)を含む脂肪族マレイミド樹脂;「MIR-3000-70MT」(日本化薬社製)、「BMI-4000」(大和化成社製)、「BMI-80」(ケイアイ化成社製)、「BMI-6100」(Designer Molecules Inc.社製)などの、芳香族マレイミド樹脂;が挙げられる。また、マレイミド系重合性不飽和樹脂として、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に開示されているマレイミド樹脂(インダン環骨格含有マレイミド化合物)を用いてもよい。
【0131】
(F)重合性不飽和樹脂の重合性不飽和基当量は、好ましくは20g/eq.~3,000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~2,500g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは90g/eq.~1,500g/eq.である。重合性不飽和基当量は、重合性不飽和基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0132】
(F)重合性不飽和樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以下、より好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下、特に好ましくは3,000以下である。下限は、特に限定されるものではないが、例えば、150以上などでありうる。
【0133】
(F)重合性不飽和樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0134】
(F)重合性不飽和樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0135】
<(G)有機充填材>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(G)有機充填材を含んでいてもよい。(G)成分としての(G)有機充填材には、上述した(A)~(F)成分に該当するものは含めない。(G)有機充填材は、通常、(G)有機充填材以外の樹脂成分と相溶せず粒子の状態で樹脂組成物に含まれ、当該粒子の状態を維持したまま硬化物に含まれる。また、(G)有機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
(G)有機充填材としては、有機材料の粒子を用いうる。(G)有機充填材に含まれる有機材料としては、ゴム成分が好ましい。ゴム成分としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系エラストマー;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、イソプレン-イソブチレン共重合体、イソブチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等のアクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。さらにゴム成分には、ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴムを混合してもよい。ゴム粒子に含まれるゴム成分は、ガラス転移温度が例えば0℃以下であり、-10℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。
【0137】
(G)有機充填材は、上記で挙げたゴム成分を含むコア粒子と、コア粒子に含まれるゴム成分と共重合可能なモノマー成分をグラフト共重合させたシェル部からなるコア-シェル型ゴム粒子であってもよい。ここでコア-シェル型とは、必ずしもコア粒子とシェル部が明確に区別できるもののみを指しているわけではなく、コア粒子とシェル部の境界が不明瞭なものも含み、コア粒子はシェル部で完全に被覆されていなくてもよい。
【0138】
(G)有機充填材の具体例としては、例えば、サムスンSDI社製の「CHT」;テクノUMG社製の「B602」;ダウ社製の「パラロイドEXL-2602」、「パラロイドEXL-2603」、「パラロイドEXL-2655」、「パラロイドEXL-2311」、「パラロイド-EXL2313」、「パラロイドEXL-2315」、「パラロイドKM-330」、「パラロイドKM-336P」、「パラロイドKCZ-201」、三菱レイヨン社製の「メタブレンC-223A」、「メタブレンE-901」、「メタブレンS-2001」、「メタブレンW-450A」「メタブレンSRK-200」、カネカ社製の「カネエースM-511」、「カネエースM-600」、「カネエースM-400」、「カネエースM-580」、「カネエースMR-01」、アイカ工業社製の「スタフィロイドAC3355」、「スタフィロイドAC3816」、「スタフィロイドAC3816N」、「スタフィロイドAC3832」、「スタフィロイドAC4030」、「スタフィロイドAC3364」等が挙げられる。
【0139】
(G)有機充填材の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0140】
(G)有機充填材の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0141】
<(H)硬化促進剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(H)硬化促進剤を含んでいてもよい。(H)成分としての(H)硬化促進剤には、上述した(A)~(G)成分に該当するものは含めない。(H)硬化促進剤は、(A)第一エポキシ樹脂及び(B)第二エポキシ樹脂といったエポキシ樹脂の反応に触媒として作用して樹脂組成物の硬化を促進することができる。
【0142】
(H)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(H)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0144】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0145】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0146】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0147】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0148】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0149】
(H)硬化促進剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0150】
(H)硬化促進剤の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0151】
<(I)任意の添加剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、更に(I)任意の添加剤を含んでもよい。(I)成分としての(I)任意の添加剤には、上述した(A)~(H)成分に該当するものは含めない。(I)任意の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(I)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0152】
<(J)溶剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(I)成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に任意の揮発性成分として(J)溶剤を含んでいてもよい。(J)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(J)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0153】
(J)溶剤の量は、樹脂組成物中の全成分100質量%に対して、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下でありえ、0質量%であってもよい。
【0154】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、樹脂組成物に含まれうる成分を混合することによって、製造することができる。上述した成分は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適宜設定してもよく、よって、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。
【0155】
<樹脂組成物及びその硬化物の特性>
本実施形態に係る樹脂組成物は、通常、低い最低溶融粘度を有することができる。よって、例えば表面に配線を備える内層基板上に樹脂組成物層を形成する場合に、内層基板表面の配線を樹脂組成物層に良好に埋め込むことができる。樹脂組成物の具体的な最低溶融粘度の範囲は、好ましくは6,000poise未満、より好ましくは5,000poise未満、更に好ましくは4,000poise未満である。下限は、例えば、500poise以上、1,000poise以上などでありうる。
【0156】
樹脂組成物の最低溶融粘度は、動的粘弾性測定装置を使用して、開始温度60℃から200℃まで、昇温速度5℃/分、測定間隔温度2.5℃、振動数1Hz、歪み5degの測定条件で昇温しながら動的粘弾性率を測定し、測定された溶融粘度の最低値を最低溶融粘度として得ることができる。具体的な測定方法は、後述する実施例の<試験例3:最低溶融粘度の測定試験>の方法を採用しうる。
【0157】
樹脂組成物を硬化させることにより、当該樹脂組成物の硬化物を得ることができる。そして、この硬化物によって、絶縁層を形成できる。通常、樹脂組成物の硬化時には熱が加えられるので、樹脂組成物に含まれる成分のうち、(J)溶剤等の揮発性成分は、硬化時の熱によって揮発しうる。よって、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、(A)~(I)成分といった不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
【0158】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、優れた誘電特性を有することができ、具体的には、低い誘電正接Dfを有することができる。一例において、硬化物の誘電正接Dfは、好ましくは0.0040以下、より好ましくは0.0038以下、更に好ましくは0.0036以下である。誘電正接Dfの下限は、特に制限は無く、例えば、0.0010以上でありうる。
【0159】
樹脂組成物の硬化物の誘電正接Dfは、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃の測定条件で測定できる。試料が硬化前の樹脂組成物である場合、その樹脂組成物を200℃90分の硬化条件で硬化して硬化物を得て、その硬化物の誘電正接Dfを測定してもよい。具合的な測定方法は、後述する実施例の<試験例1:誘電正接Dfの測定試験>の方法を採用しうる。
【0160】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物を回路基板に設けた場合、その回路基板の反りを抑制することができる。一例において、後述する実施例の<試験例2:反り測定試験>に記載の方法によって反り量を測定した場合、反り量の範囲は、好ましくは2,500μm未満、より好ましくは2,000μm以下である。
【0161】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、導体層との密着性に優れることができる。この密着性は、硬化物上に設けられた導体層を引き剥がすために要する荷重(密着強度)の大きさによって表すことができる。一例において、後述する実施例の<試験例4:密着強度の測定試験>に記載の方法によって密着強度を測定した場合、密着強度の範囲は、好ましくは0.3kgf/cm以上、より好ましくは0.4kgf/cm以上である。上限は、大きいほど好ましく、例えば1.0kgf/cm以下であってもよい。
【0162】
<樹脂組成物の用途>
本実施形態に係る樹脂組成物は、絶縁層の形成用途に用いることができ、特に回路基板の絶縁層形成用途に用いることが好ましい。また、樹脂組成物は、樹脂シートの製造用に用いてもよい。通常、この樹脂シートを用いて、絶縁層の形成が行われる。また、樹脂組成物は、その他の用途に用いてもよく、例えば、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、封止樹脂、部品埋め込み樹脂等の用途に用いてもよい。
【0163】
<樹脂シート>
本発明の一実施形態に係る樹脂シートは、支持体と、該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備える。樹脂組成物層は、上述した樹脂組成物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物のみを含む。
【0164】
樹脂シートが備える樹脂組成物層の厚みは、薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。樹脂組成物層の厚みの下限は、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上等でありうる。
【0165】
支持体としては、例えば、プラスチック材料のフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料のフィルム及び金属箔が好ましい。
【0166】
支持体としてプラスチック材料のフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0167】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0168】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0169】
支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、ウレタン系離型剤、及びシリコーン系離型剤からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、シリコーン系離型剤又はアルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「PET501010」、「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0170】
支持体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、好ましくは75μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0171】
樹脂シートは、必要に応じて任意の部材を備えていてもよい。例えば、樹脂シートは、樹脂組成物層を保護する保護フィルムを備えていてもよい。保護フィルムは、通常、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを備える場合、樹脂組成物層の表面へのゴミの付着及びキズを抑制できる。
【0172】
樹脂シートは、例えば、支持体上に樹脂組成物層を形成することを含む方法によって、製造できる。具体例を挙げると、液状(ワニス状)の樹脂組成物をそのまま、或いは溶剤と樹脂組成物とを混合して液状(ワニス状)の樹脂組成物を調製し、これを支持体上に塗布し、更に必要に応じて乾燥させて熱樹脂組成物層を形成させることによって、樹脂シートを製造してもよい。溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した(J)溶剤と同様のものを用いてもよい。
【0173】
樹脂組成物の塗布は、ダイコーター等の塗布装置を用いて行いうる。また、乾燥は、例えば、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施しうる。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の溶剤の含有量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。溶剤の沸点によっても異なりうるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0174】
製造された樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートが使用可能となる。
【0175】
<回路基板>
本発明の一実施形態に係る回路基板は、上述した樹脂組成物の硬化物を含む。通常、回路基板は絶縁層を備え、この絶縁層が樹脂組成物の硬化物を含む。絶縁層は、樹脂組成物の硬化物のみを含んでいてもよい。絶縁層の厚みは、特に制限はなく、例えば、樹脂シートが備える樹脂組成物層の厚みと同じ範囲にありうる。また、絶縁層は、通常、上述した樹脂組成物の硬化物と同様の特性を有することができる。
【0176】
好ましくは、回路基板は内層基板を備え、この内層基板上に前記の絶縁層を備える。また、回路基板は、導体層を備えていてもよい。例えば、絶縁層上に導体層を備えていてもよい。以下、好ましい回路基板の製造方法の例を説明する。
【0177】
好ましい例に係る回路基板の製造方法は、
内層基板上に樹脂組成物層を形成する工程(I)と、
樹脂組成物層を硬化させる工程(II)と
を含む。
【0178】
「内層基板」とは、回路基板の基材となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、内層基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよい。また、内層基板が備える導体層は、パターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。また、回路基板を製造する際に、更に絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、用語「内層基板」に含まれる。また、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0179】
内層基板上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板上に樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥することを含む形成方法によって行ってもよいが、樹脂シートを用いて行なうことが好ましい。樹脂シートを用いた樹脂組成物層の形成方法は、通常、樹脂シートと内層基板とを積層することを含む。樹脂シートと内層基板との積層は、樹脂シートの樹脂組成物層と内層基板とが接合するように行われる。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行ってもよい。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスすることが好ましい。
【0180】
内層基板と樹脂シートとの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0181】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行ってもよい。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0182】
回路基板の製造方法は、積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、樹脂シートの平滑化処理を行うことを含んでいてもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着の条件と同様の条件としてもよい。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。積層と平滑化処理とは、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0183】
本例に係る回路基板の製造方法は、工程(I)の後で、樹脂組成物層を硬化させる工程(II)を含む。工程(II)において樹脂組成物層を硬化することにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を形成できる。
【0184】
樹脂組成物層の硬化は、通常、熱硬化によって行う。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。例えば、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。また、硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0185】
回路基板の製造方法は、樹脂組成物層の熱硬化の前に、当該樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含んでいてもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃~150℃、好ましくは60℃~140℃、より好ましくは70℃~130℃の温度にて、樹脂組成物層を通常5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。予備加熱は、通常は工程(I)の後に行われる。また、内層基板と樹脂シートとの積層の後に平滑化処理が行われる場合、予備加熱は、通常、その平滑化処理の後に行われうる。
【0186】
樹脂シートを用いた場合、回路基板の製造方法は、内層基板と樹脂シートとの積層の後に、樹脂シートの支持体を剥離する工程を含みうる。支持体の剥離は、工程(I)と工程(II)との間に行ってもよく、工程(II)の後に行ってもよい。また、回路基板の製造方法が、後述するように絶縁層にホールを形成する工程(III)、絶縁層に粗化処理を施す工程(IV)、導体層を形成する工程(V)を含む場合、支持体の剥離は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。
【0187】
回路基板の製造方法は、工程(II)の後で、絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成する工程(III)を含んでいてもよい。ホールの形成方法は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等の要素に応じて選択しうる。例えば、ドリル加工、レーザー加工、プラズマ加工等の加工方法によってホールを形成してもよく、中でもレーザー加工が好ましい。例えば、支持体の剥離後に絶縁層にレーザー光を照射してホールを形成してもよく、支持体を介して絶縁層にレーザー光を照射してホールを形成してもよい。ホールの寸法及び形状は、回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0188】
回路基板の製造方法は、絶縁層に粗化処理を施す工程(IV)を含んでいてもよい。粗化処理によれば、絶縁層の表面の粗化を行うことができる。また、粗化処理によれば、絶縁層からスミア(樹脂残渣)を除去できる。よって、この粗化処理は「デスミア処理」と呼ばれることがある。例えば、工程(III)でホールの形成を行うと、そのホール内にスミアが形成されることがありうるので、工程(III)の後で工程(IV)の粗化処理を行って、前記のスミアを除去することが好ましい。
【0189】
粗化処理の手順及び条件は特に限定されず、回路基板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による酸化処理、中和液による中和処理を絶縁層に対してこの順に施して、粗化処理を実施してもよい。
【0190】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0191】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による酸化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0192】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化剤による酸化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性の観点から、酸化剤による酸化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0193】
回路基板の製造方法は、絶縁層上に導体層を形成する工程(V)を含んでいてもよい。回路基板の製造方法が工程(III)又は(IV)を含む場合、導体層を形成する工程(V)は、通常、工程(III)及び(IV)の後に行うことが好ましい。
【0194】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であってもよく、合金層であってもよい。合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0195】
導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。導体層が複層構造を有する場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0196】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μmである。
【0197】
導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法が好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0198】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきにより無電解めっき層(めっきシード層)を形成する。次いで、形成された無電解めっき層上に、所望の配線パターンに対応して無電解めっき層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出した無電解めっき層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要な無電解めっき層をエッチングにより除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0199】
別の例として、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱業社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0200】
絶縁層上に導体層を形成した場合、回路基板の製造方法は、導体層の形成後にアニール処理を行うことを含んでいてもよい。アニール処理によれば、絶縁層と導体層との密着性を高めることができる。アニール処理は、例えば、150℃~210℃で20分~180分間加熱することにより行いうる。
【0201】
回路基板の製造方法において、上述した各工程は、1回のみ行ってもよく、2回以上繰り返して行ってもよい。例えば、工程(I)~工程(V)を繰り返し実施して、複数の絶縁層及び導体層を備える多層プリント配線板等の多層構造を有する回路基板を形成してもよい。
【0202】
回路基板の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、回路基板の製造方法は、導体層と接合するように半導体チップを設ける工程を含んでいてもよい。具体例を挙げると、半導体チップを備える半導体チップパッケージ用の回路基板を製造する場合に、回路基板の製造方法は、半導体チップを設ける工程を含んでいてもよい。半導体チップは、半導体チップの端子電極と絶縁層上に形成された導体層とが導体接続できる適切な条件を採用できる。例えば、フリップチップ実装において使用される条件を採用してもよい。また、半導体チップは、絶縁性の接着剤を介して接合してもよく、リフローにより接合してもよい。さらに、必要に応じて、設けた半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。また、回路基板の製造方法は、例えば、封止層を形成する工程、ソルダーレジスト層を形成する工程、製造した回路基板をダイシングして個片化する工程などを含んでいてもよい。
【0203】
回路基板としては、例えば、プリント配線板及び半導体チップパッケージ等が挙げられる。半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、Fan-out型WLP(Wafer Level Package)、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP(Panel Level Package)、Fan-in型PLPが挙げられる。これらの半導体チップパッケージにおいては、上述した樹脂組成物を硬化させた硬化物により、絶縁層としての再配線形成層を形成することが好ましい。ただし、回路基板は、ここで例示するものには限られない。
【0204】
<半導体装置>
前記の回路基板は、半導体装置の製造に用いることができる。半導体装置は、上述した回路基板を備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0205】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、特に指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(23℃)及び大気圧(1atm)であった。
以下の説明において、別途明示の無い限り、「MIBK」は、メチルイソブチルケトンを表す。
【0206】
<合成例1:エポキシ樹脂(A1)の合成>
(測定方法の説明)
(1)水酸基当量:
水酸基当量は、JIS K0070規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。なお、別途明示が無い限り、フェノール系樹脂の水酸基当量は、フェノール性水酸基当量を表す。
【0207】
(2)軟化点:
軟化点は、JIS K7234規格、環球法に準拠して測定した。具体的には、自動軟化点装置(メイテック社製「ASP-MG4」)を使用した。
【0208】
(3)エポキシ当量:
エポキシ当量は、JIS K7236規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。具体的には自動電位差滴定装置(平沼産業社製「COM-1600ST」)を用いて、溶媒としてクロロホルムを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液で滴定した。
【0209】
(4)全塩素含有量:
全塩素含有量は、JIS K7243-3規格に準拠して測定を行い、単位は「ppm」で表した。具体的には、溶媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用し、1mol/L水酸化カリウム1,2-プロパンジオール溶液を加えて加熱処理した後、自動電位差滴定装置(平沼産業社製「COM-1700」)を用いて、0.01mol/Lの硝酸銀溶液で滴定した。
【0210】
(5)溶融粘度:
溶融粘度は、ICI粘度測定装置(東亜工業社製「CV-1S」)を使用し、150℃で測定した。
【0211】
(6)GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
GPC測定は、本体(東ソー社製「HLC-8220GPC」)にカラム(東ソー社製「TSKgelG4000HXL」、「TSKgelG3000HXL」、「TSKgelG2000HXL」)を直列に備えたものを使用し、カラム温度40℃で行った。溶離液にはテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料はサンプル0.1gを10mLのTHFに溶解し、マイクロフィルターで濾過したものを50μL使用した。データ処理は、東ソー社製の「GPC-8020モデルIIバージョン6.00」を使用した。
【0212】
(7)IR(赤外吸光スペクトル):
フーリエ変換型赤外分光光度計(Perkin Elmer Precisely社製「Spectrum One FT-IR Spectrumeter 1760X」)を用い、セルには塩化ナトリウムを使用し、クロロホルムに溶解させたサンプルをセル上に塗布、乾燥させた後、波数450cm-1~4000cm-1の透過率を測定した。
【0213】
(8)ESI-MS:
質量分析計(島津製作所製「LCMS-2020」)を用い、移動相としてアセトニトリルと水を用い、アセトニトリルに溶解させたサンプルを測定することにより、質量分析を行った。
【0214】
(工程1.多価ヒドロキシ樹脂(PH1)の合成)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、滴下ロート、及び冷却管を備えたガラス製セパラブルフラスコからなる反応装置に、2,6-キシレノール500部、及び、47%BF3エーテル錯体7.1部を仕込み、撹拌しながら100℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン60.1部(2,6-キシレノールに対し0.11倍モル)を1時間で滴下した。さらに、115℃~125℃の温度で4時間反応した。その後、MIBK560部を加えて生成物を溶解した。炭酸水素ナトリウム19.0部を加え、80℃の温水507部を加えて水洗し、下層の水層を分離除去した。その後、160℃まで加温して脱水した。その後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して、未反応の原料を蒸発除去した。MIBK1320部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水400部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。120℃まで加温して還流脱水し、ろ過した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色の多価ヒドロキシ樹脂(PH1、下記式(A-5)の樹脂、Ra1はメチル基、iaは2である)を164部得た。
【0215】
【0216】
得られた多価ヒドロキシ樹脂(PH1)は、水酸基当量は195g/eq.であり、軟化点は73℃であった。また、多価ヒドロキシ樹脂(PH1)のGPCで測定した重量平均分子量Mwは470、数平均分子量Mnは440、ma=0体含有量は2.8面積%、ma=1体含有量は86.2面積%、ma=2体以上の含有量は11.0面積%であった。多価ヒドロキシ樹脂(PH1)の150℃での溶融粘度は、0.05Pa・sであった。
【0217】
(工程2.多価ヒドロキシ樹脂(PH2)の合成)
工程1と同様の反応装置に、工程1で得た多価ヒドロキシ樹脂(PH1)500部、及び、MIBK125部を仕込み、撹拌しながら100℃に加温した。47%BF3エーテル錯体5.0部を仕込み、同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン75.0部(多価ヒドロキシ樹脂(PH1)の水酸基に対し0.22倍モル)を1時間で滴下した。さらに、115℃~125℃の温度で4時間反応した。その後、MIBK669部を加えて生成物を溶解した。炭酸水素ナトリウム13.3部を加え、80℃の温水521部を加えて水洗し、下層の水層を分離除去した。120℃まで加温して還流脱水し、ろ過した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色の多価ヒドロキシ樹脂(PH2、式(A-6)の樹脂、Ra1はメチル基、iaは2である)を558部得た。
【0218】
【0219】
得られた多価ヒドロキシ樹脂(PH2)のFT-IR測定において、側鎖Ra6としてジシクロペンテニル基が導入されていることを示すジシクロペンタジエン骨格のオレフィン部位のC-H伸縮振動に由来するピークが3040cm-1付近に現れた。多価ヒドロキシ樹脂(PH2)の水酸基当量は234g/eq.であり、軟化点は86℃であった。多価ヒドロキシ樹脂(PH2)のGPCで測定した重量平均分子量Mwは560、数平均分子量Mnは470、ka=0体含有量は6.2面積%、ka=1体含有量は74.0面積%、ka=2体以上の含有量は19.8面積%であった。多価ヒドロキシ樹脂(PH2)の150℃での溶融粘度は、0.15Pa・sであった。
【0220】
(工程3.多価ヒドロキシ樹脂(P1)の合成)
工程1と同様の反応装置に、工程2で得られた多価ヒドロキシ樹脂(PH2)100部、パラトルエンスルホン酸・1水和物1.0部、及び、MIBK25部を仕込み、撹拌しながら120℃に加温した。同温度に保持しながら、ジビニルベンゼン(アルドリッチ社製、ジビニルベンゼン55%、エチルビニルベンゼン45%)20部(PH2の水酸基に対し0.36倍モル)を1時間で滴下した。さらに、120℃~130℃の温度で4時間反応した。MIBK155部を加えて生成物を溶解し、炭酸水素ナトリウム1.3部で中和し、90℃の温水105部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。120℃まで加温して還流脱水し、ろ過した。その後、5mmHgの減圧下、180℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色の多価ヒドロキシ樹脂(P1)を116部得た。
【0221】
多価ヒドロキシ樹脂(P1)の水酸基当量は272g/eq.であり、軟化点は77℃であった。吸収比(A3040/A1210)は0.23であった。多価ヒドロキシ樹脂(P1)のESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=375、507、629、639、761が確認され、式(A-4)の多価ヒドロキシ樹脂であって、式(A-2a)又は式(A-2b)で表されるジシクロペンテニル基、及び式(A-3a)又は式(A-3c)で表されるジビニルベンゼンに由来する基をいずれも置換基として有する構造であることを確認した。多価ヒドロキシ樹脂(P1)のGPCで測定した重量平均分子量Mwは693、数平均分子量Mnは472、na=0体含有量は10.8面積%、na=1体含有量は61.4面積%、na=2体以上の含有量は27.8面積%であった。多価ヒドロキシ樹脂(P1)の150℃での溶融粘度は、0.11Pa・sであった。
【0222】
(工程4.エポキシ樹脂(A1)の合成)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、滴下ロート、及び冷却管を備えた反応装置に、工程3で得た多価ヒドロキシ樹脂(P1)100部、エピクロルヒドリン(下記式(X1))170.1部、及び、ジエチレングリコールジメチルエーテル25.5部を加えて65℃に加温した。
【0223】
【0224】
125mmHgの減圧下、63℃~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液25.5部を3時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK281部を加えて生成物を溶解した。その後、240部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、式(A-1)で表される赤褐色のエポキシ樹脂(A1)を117部得た。
【0225】
エポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量は354g/eq.、全塩素含有量1362ppm、軟化点59℃であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=487、619、797が確認された。エポキシ樹脂(A1)のGPCで測定した重量平均分子量Mwは755、数平均分子量Mnは475、na=0体含有量は9.1面積%、na=1体含有量は41.1面積%、na=2体以上の含有量は49.8面積%であった。エポキシ樹脂(A1)の150℃での溶融粘度は、0.15Pa・sであった。
【0226】
<合成例2:低弾性ポリマー(D1)の合成>
反応容器に、2官能性ヒドロキシ基末端ポリブタジエン(日本曹達社製「G-3000」、数平均分子量=3000、ヒドロキシ基当量=1800g/eq.)69gと、PGMEA(昭和電工社製、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)40gと、ジブチル錫ラウレート0.005gとを入れ、混合して均一に溶解させた。均一になったところで60℃に昇温し、更に撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製「IPDI」、イソシアネート基当量=113g/eq.)8gを添加し、約3時間反応を行った。
【0227】
次いで反応物に、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、水酸基当量=117g/eq.)23gと、PGMEA60gとを添加し、攪拌しながら150℃で還流昇温し、約10時間反応を行った。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温した。そして、反応物を100メッシュの濾布で濾過して、ブタジエン構造及びフェノール性水酸基を有する低弾性ポリマー(D1)(フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂:不揮発成分50質量%)を得た。低弾性ポリマー(D1)の重量平均分子量は27,000、ガラス転移温度は-7℃であった。
【0228】
得られた低弾性ポリマー(D1)の弾性率を、下記の弾性率測定方法で測定した。すなわち、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃)を用意した。該支持体上に低弾性ポリマー(D1)を、乾燥後のポリマー層の厚さが50μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、70℃から120℃で10分間乾燥して、低弾性ポリマー層を形成した。この低弾性ポリマー層を支持体から剥離し、JIS K7161に準拠した引っ張り試験(温度25℃、湿度40%RH)によって弾性率を測定して、低弾性ポリマー(D1)の弾性率が0.05GPaであることを確認した。
【0229】
<合成例3:低弾性ポリマー(D2)の合成>
撹拌装置、温度計及びコンデンサーを取り付けられたフラスコに、溶剤として、エチルジグリコールアセテート368.41g及び芳香族系溶剤(エクソンモービル社製「ソルベッソ150(登録商標)」)368.41gを仕込んだ。さらに、前記のフラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネート100.1g(0.4モル)と、ポリカーボネートジオール(クラレ社製「C-2015N」、数平均分子量:約2000、水酸基当量:1000g/eq.、不揮発成分:100質量%)400g(0.2モル)とを仕込んで、70℃で4時間反応を行った。これにより、第1の反応溶液を得た。
【0230】
次いで、前記のフラスコに、更にノニルフェノールノボラック樹脂(水酸基当量:229.4g/eq、平均4.27官能、平均計算分子量:979.5g/モル)195.9g(0.2モル)と、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート41.0g(0.1モル)とを仕込んで、2時間かけて150℃に昇温し、12時間反応させた。これにより、第2の反応溶液を得た。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、第2の反応溶液を室温まで降温した。そして、第2の反応溶液を、100メッシュの濾布で濾過した。これにより、濾液として、フェノール性水酸基を有する低弾性ポリマー(D2)(フェノール性水酸基含有ポリカーボネート樹脂:不揮発成分50質量%)を得た。低弾性ポリマー(D2)の重量平均分子量は20,000、ガラス転移温度は5℃であった。低弾性ポリマー(D1)と同様の弾性率測定方法により、JIS K7161に準拠した引っ張り試験(温度25℃、湿度40%RH)によって測定される低弾性ポリマー(D2)の弾性率が0.5GPaであることを確認した。
【0231】
<合成例4:低弾性ポリマー(D3)の合成>
オイルバスを備えた撹拌棒付き1Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、シクロヘキサノン200gを加え、ジアミンとして、ダイマー酸型ジアミン(クローダジャパン社製「PRIAMINE 1075」)149.4g、モノアミン化合物として、m-アミノフェノール4.7gを撹拌しながら加え、続いてテトラカルボン酸類として、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物67.3gを加えて、室温で30分撹拌した。これを100℃に昇温し、3時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、ワニス状のポリイミド前駆体を得た。その後、ディーンスタークトラップを用いて留出する水を系外に除去しながら、170℃で10時間加熱を行い、イミド化して、ダイマー酸由来の炭素骨格を有する低弾性ポリマー(D3)(不揮発成分50質量%)を得た。得られた低弾性ポリマー(D4)の重量平均分子量は10,000であった。低弾性ポリマー(D1)と同様の弾性率測定方法により、JIS K7161に準拠した引っ張り試験(温度25℃、湿度40%RH)によって測定される低弾性ポリマー(D3)の弾性率が0.2GPaであることを確認した。
【0232】
<合成例5:マレイミド樹脂(F1)の合成>
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法で合成されたマレイミド樹脂(F1)のMEK溶液(不揮発成分60質量%)を用意した。このマレイミド樹脂(F1)は、下記式(F-1)で表される構造を有し、重量平均分子量は2000であった。
【0233】
【0234】
<実施例1~13及び比較例1~4>
(1)樹脂組成物の製造:
表1及び表2に記載の量(質量部)にて各成分を秤量及び混合し、更にMEK15部及びシクロヘキサノン15部を混合し、高速回転ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。表1及び表2に記載の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0235】
(A)第一エポキシ樹脂:
「エポキシ樹脂A1」:合成例1で合成したエポキシ樹脂(A1)、エポキシ当量354g/eq.。
【0236】
(B)第二エポキシ樹脂:
「ESN-4100V」:メトキシ基含有ナフトールアラルキル構造を含むナフタレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製、エポキシ当量360g/eq.)。
「ZX-1059」:ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の1:1混合品、エポキシ当量169g/eq.)。
「NC3100」:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、エポキシ当量258g/eq.)。
「HP6000H」:ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製、エポキシ当量250g/eq.)。
「WHR991S」:フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、エポキシ当量266g/eq.)。
「HP4032SS」:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、エポキシ当量約144g/eq.)。
「YX4000H」:ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、エポキシ当量約185g/eq.)。
【0237】
(C)硬化剤:
「HPC-8000-65T」:活性エステル化合物(DIC社製、活性基当量約223g/eq.、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)。
「LA3018-50P」:トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製、水酸基当量約151g/eq.、不揮発成分50%の1-メトキシ-2-プロパノール溶液)。
「V-03」:カルボジイミド樹脂(日清紡ケミカル社製、カルボジイミド当量216g/eq.、不揮発成分50%のトルエン溶液)。
「BA230S75」:ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザ社製、シアネート基当量約235g/eq.、不揮発成分75%のMEK溶液)。
「PT30」:フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製、シアネート基当量約124g/eq.)。
【0238】
(D)低弾性ポリマー:
「ポリマーD1」:合成例2で合成した低弾性ポリマー(D1)、不揮発成分50質量%。
「ポリマーD2」:合成例3で合成した低弾性ポリマー(D2)、不揮発成分50質量%。
「ポリマーD3」:合成例4で合成した低弾性ポリマー(D3)、不揮発成分50質量%。
【0239】
(E)無機充填材:
「SO-C2」:アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製)。
「アルミナA」:アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形アルミナ(平均粒径1.0μm)。
【0240】
(F)重合性不飽和樹脂:
「OPE-2St 1200」:ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(三菱瓦斯化学社製、不揮発成分率65%のトルエン溶液)。
「SLK-6895-T90」:ビスマレイミド樹脂(信越化学工業社製、マレイミド当量約345g/eq.、不揮発成分90%のトルエン溶液)。
「マレイミド樹脂F1」:合成例5で合成したマレイミド樹脂(F1)、不揮発成分60質量%。
【0241】
(G)有機充填材:
「EXL2655」:有機充填剤(DOW社製)
【0242】
(H)硬化促進剤:
「2P4MZ」: 2-フェニル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業製)。
「Co(acac)3」:コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成社製)。
【0243】
(2)樹脂シートの製造:
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃)を用意した。該支持体上に樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが50μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、70℃から100℃で3分間乾燥して、樹脂組成物層を形成した。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を貼り合わせた。これにより、支持体、樹脂組成物層、及び保護フィルムをこの順に有する樹脂シートを得た。
【0244】
<試験例1:誘電正接Dfの測定試験>
樹脂シートから保護フィルムを剥離した。200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離して、硬化物を得た。得られた硬化物を、幅2mm、長さ80mmに切り出し、評価用の試験片を得た。
【0245】
試験片について、測定装置(アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」)を用いて、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、誘電正接を測定した。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。この平均値に基づき、誘電正接を下記の評価基準で評価した。
【0246】
誘電正接の評価基準
「良」:誘電正接が0.004以下。
「不良」:誘電正接が0.004より大きい。
【0247】
<試験例2:反り測定試験>
保護フィルムを剥離した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、12インチシリコンウエハ(厚さ775μm)の片面全体に積層した。この積層は、樹脂組成物層とシリコンウエハとが接合するように行った。樹脂シートの支持体を剥離して、樹脂組成物層を露出させた。この露出した樹脂組成物層の表面に、更に、保護フィルムを剥離した樹脂シートを同様に積層し、支持体を剥離し、12インチシリコンウエハの片面に、2層の樹脂組成物層(合計厚さ100μm)を形成した。なお、前記の積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaで圧着することにより行った。
【0248】
オーブンにて100℃で30分間加熱し、続けて200℃で90分間更に加熱して、樹脂組成物層を硬化させて、「シリコンウエハ/硬化物層」の層構成を有する試料積層体を得た。得られた試料積層体の反り量を、シャドウモアレ測定装置(Akorometrix社製「ThermoireAXP」)を用いて測定した。測定は、電子情報技術産業協会規格のJEITA EDX-7311-24に準拠して行った。具体的には、測定領域の評価基板面(硬化物層のシリコンウエハとは反対側の面)の全データについて最小二乗法を用いて求めた仮想平面を基準面として、該基準面から評価基板面までの垂直方向の高さの最小値と最大値との差を反り量として求めた。得られた反り量の測定値を以下の基準で評価した。反り量が小さいほど、反りを効果的に抑制できていることを表す。
【0249】
反りの評価基準:
「優」:反り量が0μm以上2000μm以下。
「良」:反り量が2000μmより大きく、2500μm未満。
「不良」:反り量が2500μm以上。
【0250】
<試験例3:最低溶融粘度の測定試験>
樹脂シートから樹脂組成物層の一部を剥離して樹脂組成物の試料を得て、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を使用して溶融粘度を測定した。具体的には、樹脂組成物の試料1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで、昇温速度5℃/分にて昇温し、測定間隔温度2.5℃、振動数1Hz、歪み5degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(ポイズ)を算出した。測定された最低溶融粘度を下記の基準で評価した。
【0251】
最低溶融粘度の評価基準:
「優」:最低溶融粘度が5000Poise未満。
「良」:最低溶融粘度が5000Poise以上、6000Poise未満。
「不良」:最低溶融粘度が6000Poise以上。
【0252】
<試験例4:密着強度の測定試験>
(1)銅箔の下地処理:
電解銅箔(三井金属鉱業社製「3EC-III」、厚さ35μm)の光沢面を、エッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして、銅表面の粗化処理を行った。次いで、銅箔の粗化処理を施された面に防錆剤((メック社製「CL8300」)を用いて防錆処理を施した。この銅箔に、更に130℃のオーブンで30分間加熱処理を施して、CZ処理銅箔を得た。
【0253】
(2)内層基板の準備:
内層基板としては、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この内層基板の両面を、エッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。さらに、この内層基板に、130℃のオーブンで30分間加熱処理を施した。
【0254】
(3)樹脂組成物層の積層:
樹脂シートから保護フィルムを剥がして、樹脂組成物層を露出させた。バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が上記内層基板と接するように、内層基板の両面に樹脂シートをラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。その後、支持体を剥がし、樹脂組成物層を露出させた。
【0255】
(4)銅箔の積層及び樹脂組成物層の硬化:
露出させた樹脂組成物層上に、CZ処理銅箔の処理面を、上記樹脂シートのラミネートと同様の条件で、ラミネートした。そして、200℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化して、硬化物層としての絶縁層を形成した。これにより、CZ処理銅箔/絶縁層/内層基板/絶縁層/CZ処理銅箔の層構成を有する評価基板を得た。
【0256】
この評価基板を100mm×30mmの小片に切断した。小片のCZ処理銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの矩形部分を囲む切込みをいれた。矩形分の一端を剥がして引張試験機のつかみ具で掴み、室温(常温)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重[kgf/cm]を測定した。この測定の結果得られる荷重の値を「密着強度」とする。測定には、引張試験機(ティー・エス・イー社製オートコム万能試験機「AC-50C-SL」)を使用し、測定は日本工業規格JIS C6481に準拠して行った。測定された密着強度を下記の基準で評価した。
【0257】
密着強度の評価基準:
「優」:密着強度が0.4kgf/cm以上。
「良」:密着強度が0.3kgf/cm以上、0.4kgf/cm未満。
「不良」:密着強度が0.3kgf/cm未満。
【0258】
<結果>
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
NVC:不揮発成分の含有量
Df:誘電正接
【0259】
【0260】
【0261】