(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099503
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】回転電機のロータ構造及び回転電機の制御装置
(51)【国際特許分類】
H02K 21/14 20060101AFI20250626BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20250626BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20250626BHJP
H02K 1/2793 20220101ALI20250626BHJP
【FI】
H02K21/14 M
H02K21/24 M
H02K1/276
H02K1/2793
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216202
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠見 隆行
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621BB10
5H621HH01
5H621HH10
5H621PP10
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA09
5H622CB02
5H622CB05
5H622DD02
5H622DD03
(57)【要約】
【課題】磁力可変磁石の磁化状態を効率良く変化させる。
【解決手段】周方向に並んで配置された配置され、それぞれが所定の磁束により周方向における磁化状態を変化させることが可能な複数の磁力可変磁石51,52と、磁力可変磁石51,52の周囲に配置された孔部(第1収容孔H71、第2収容孔H72)と、孔部(第1収容孔H71、第2収容孔H72)内に配置され、所定の磁束により、所定の磁束に反発する磁束が生じるような渦電流を発生させる非磁性導体73,74と、を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアを有するロータと、該ロータコアと空隙を空けて配置されたステータコアを有するステータとを備えた回転電機のロータ構造であって、
周方向に並んで配置された配置され、それぞれが所定の磁束により前記周方向における磁化状態を変化させることが可能な複数の磁力可変磁石と、
前記磁力可変磁石に対して径方向又は軸方向に隣接配置された孔部と、
前記孔部内に配置され、前記所定の磁束により、該所定の磁束に反発する磁束が生じるような渦電流を発生させる非磁性導体と、
を備えることを特徴とする回転電機のロータ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のロータ構造において、
前記非磁性導体は、前記磁力可変磁石に向かって前記周方向と直交する方向に延びる縦延び部を有する、ことを特徴とする回転電機のロータ構造。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機のロータ構造において、
前記非磁性導体と前記孔部の内周面との間にはそれぞれ隙間が設けられることを特徴とする回転電機のロータ構造。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機のロータ構造において、
前記回転電機は、前記ロータと前記ステータとが径方向に隙間を空けて配置されたラジアルギャップモータであり、
前記ロータコアの軸方向の両端部にそれぞれ設けられたエンドプレートを更に備え、
前記孔部は、前記磁力可変磁石に対して径方向に隣接配置され、
前記非磁性導体は、前記エンドプレートにそれぞれ固定されることを特徴とする回転電機のロータ構造。
【請求項5】
請求項3に記載の回転電機のロータ構造において、
前記回転電機は、前記ロータと前記ステータとが軸方向に隙間を空けて配置されたアキシャルギャップモータであり、
前記ロータコアの径方向内側に設けられた内壁部と、
前記ロータコアの径方向外側に設けられた外壁部と、を更に備え、
前記孔部は、前記磁力可変磁石に対して軸方向に隣接配置され、
前記非磁性導体は、前記内壁部と前記外壁部とにそれぞれ固定されることを特徴とする回転電機のロータ構造。
【請求項6】
請求項1に記載の回転電機のロータ構造において、
前記ロータコアは、周方向に並びかつ前記磁力可変磁石を有する複数の磁極部を含み、
前記各磁極部は、所定の磁力を有する磁力固定磁石を有し、
前記磁力可変磁石は、
前記各磁極部において前記磁力固定磁石の前記周方向の一端側に配置された第1磁力可変磁石と、
前記各磁極部において前記磁力固定磁石の前記周方向の他端側に配置された第2磁力可変磁石と、
を有し、
互いに周方向に隣接する2つの前記磁極部において、一方の前記磁極部の前記第1磁力可変磁石と他方の前記磁極部の前記第2磁力可変磁石とは、周方向に隣接することを特徴とする回転電機のロータ構造。
【請求項7】
請求項6に記載の回転電機のロータ構造において、
前記孔部は、
前記各磁極部において前記磁力固定磁石と前記第1磁力可変磁石との間の領域に設けられた第1孔部と、
前記各磁極部において前記磁力固定磁石と前記第2磁力可変磁石との間の領域に設けられた第2孔部と、
を有し、
前記第1孔部と前記第2孔部とのそれぞれに非磁性導体が配置されていることを特徴とする回転電機のロータ構造。
【請求項8】
請求項1~7に記載のロータ構造を有する回転電機の制御装置であって、
前記所定の磁束を生成するためのパルス電流を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記パルス電流の振幅が最大値に到達した後、該パルス電流のパルス期間の間に、該パルス電流の振幅よりも小さい幅で電流を増減させるパルス制御を実行することを特徴とする回転電機の制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の回転電機の制御装置において、
前記制御部は、前記パルス制御において、前記電流を増減させる大きさ及び回数を、前記磁力可変磁石の着磁率、前記ロータの回転速度、及び電源電圧を考慮して変更することを特徴とする回転電機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、回転電機のロータ構造及び回転電機の制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、回転電機のロータとして、磁化状態を変更困難な磁力固定磁石と、磁化状態を変更容易な可変磁石とを備えるものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、ロータコアに設けられ、周方向に並ぶ複数の磁極部を備え、複数の磁極部の各々は、径方向に着磁される磁力固定磁石と、磁力固定磁石の周方向の一端側および他端側にそれぞれ配置され、それぞれが所定の磁束により周方向における磁化状態を変化させることが可能な第1磁力可変磁石及び第2磁力可変磁石と、磁力固定磁石と第1磁力可変磁石との間に配置され、磁力固定磁石の径方向外端と第1磁力可変磁石との間における磁束の流れを阻害する方向に着磁される第1補助磁石と、磁力固定磁石と第2磁力可変磁石との間に配置され、磁力固定磁石の径方向外端と第2磁力可変磁石との間における磁束の流れを阻害する方向に着磁される第2補助磁石とを有する、ロータ構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献1では、第1補助磁石の径方向外側には、第1空隙部(空孔部)が設けられ、第2補助磁石の径方向外側には、第2空隙部(空孔部)が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のロータ構造では、空孔部により、磁力固定磁石の径方向外端と第1磁力可変磁石との間及び磁力固定磁石の径方向外端と第2磁力可変磁石との間における磁束の短絡を抑制している。このように、空孔部を設けることで磁束を通り難くして、磁束の方向を制御することが可能である。
【0007】
ところで、特許文献1のように、磁力可変磁石を設け場合、磁力可変磁石の磁化状態を変化させるときには、磁力可変磁石に効率良く磁束を入力することが求められる。磁力可変磁石の磁化状態を変化させるときのステータからの磁束は比較的大きいため、特許文献1のように空孔部を設けていたとしても空孔部に磁束が侵入するおそれがある。空孔部に磁束が侵入すると、磁力可変磁石の磁化状態を効率良く変化し難くなってしまう。このため、磁力可変磁石の磁化状態を効率良く変化させるという観点からは改良の余地がある。
【0008】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、磁力可変磁石の磁化状態を効率良く変化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様は、ロータコアを有するロータと、該ロータコアと空隙を空けて配置されたステータコアを有するステータとを備えた回転電機のロータ構造を対象として、周方向に並んで配置された配置され、それぞれが所定の磁束により前記周方向における磁化状態を変化させることが可能な複数の磁力可変磁石と、前記磁力可変磁石に対して径方向又は軸方向に隣接配置された孔部と、前記孔部内に配置され、前記所定の磁束により、該所定の磁束に反発する磁束が生じるような渦電流を発生させる非磁性導体と、を備える、という構成とした。
【0010】
第1の態様では、非磁性導体が、渦電流により所定の磁束に反発する磁束を発生させることで、ステータからの磁束が孔部に侵入しにくくなる。これにより、磁力可変磁石及の磁化状態を変化させる際に、磁束を磁力可変磁石に流し易くすることができる。この結果、磁力可変磁石の磁化状態を効率良く変化させることができる。
【0011】
ここに開示された技術の第2の態様は、第1の態様において、前記非磁性導体は、前記磁力可変磁石に向かって前記周方向と直交する方向に延びる縦延び部を有する。
【0012】
第2の態様では、非磁性導体を磁力可変磁石に近づけることができる。これにより、孔部への磁束の侵入を効果的に抑制できるため、磁力可変磁石の磁化状態を効率良く変化させることができる。
【0013】
ここに開示された技術の第3の態様は、第1の態様において、前記非磁性導体と前記孔部の内周面との間にはそれぞれ隙間が設けられる。
【0014】
第3の態様では、磁力可変磁石の磁化状態を変化させるとき以外の、ステータからの磁束が比較的小さいときには、非磁性導体に磁束が届きにくくなり、渦電流が発生にくくなる。これにより、非磁性導体の渦電流が形成する磁束により、回転電機の効率が悪化するのを抑制することができる。
【0015】
ここに開示された技術の第4の態様は、第3の態様において、前記回転電機は、前記ロータと前記ステータとが径方向に隙間を空けて配置されたラジアルギャップモータであり、前記ロータコアの軸方向の両端部にそれぞれ設けられたエンドプレートを更に備え、前記孔部は、前記磁力可変磁石に対して径方向に隣接配置され、前記非磁性導体は、前記エンドプレートにそれぞれ固定される。
【0016】
第4の態様では、非磁性導体をエンドプレートの補強部材として利用することができ、ロータの強度を向上させることができる。
【0017】
ここに開示された技術の第5の態様は、第3の態様において、前記回転電機は、前記ロータと前記ステータとが軸方向に隙間を空けて配置されたアキシャルギャップモータであり、前記ロータコアの径方向内側に設けられた内壁部と、前記ロータコアの径方向外側に設けられた外壁部と、を更に備え、前記孔部は、前記磁力可変磁石に対して軸方向に隣接配置され、前記非磁性導体は、前記内壁部と前記外壁部とにそれぞれ固定される。
【0018】
第5の態様では、非磁性導体をロータの補強部材として利用することができ、ロータの強度を向上させることができる。
【0019】
ここに開示された技術の第6の態様は、第1の態様において、前記ロータコアは、周方向に並びかつ前記磁力可変磁石を有する複数の磁極部を含み、前記各磁極部は、所定の磁力を有する磁力固定磁石を有し、前記磁力可変磁石は、前記各磁極部において前記磁力固定磁石の前記周方向の一端側に配置された第1磁力可変磁石と、前記各磁極部において前記磁力固定磁石の前記周方向の他端側に配置された第2磁力可変磁石と、を有し、互いに周方向に隣接する2つの前記磁極部において、一方の前記磁極部の前記第1磁力可変磁石と他方の前記磁極部の前記第2磁力可変磁石とは、周方向に隣接する。
【0020】
第6の態様では、磁力可変磁石が多数設けられるため、所定の磁束を効率的に磁力可変磁石に入力することが求められる。このため、非磁性導体を設けることによる孔部への磁束の侵入を抑制する効果をより適切に発揮することができる。
【0021】
ここに開示された技術の第7の態様は、第6の態様において、前記孔部は、前記各磁極部において前記磁力固定磁石と前記第1磁力可変磁石との間の領域に設けられた第1孔部と、前記各磁極部において前記磁力固定磁石と前記第2磁力可変磁石との間の領域に設けられた第2孔部と、を有し、前記第1孔部と前記第2孔部とのそれぞれに非磁性導体が配置されている。
【0022】
第7の態様では、非磁性導体が第1磁力可変磁石及び第2磁力可変磁石に対してそれぞれ設けられるため、第1磁力可変磁石及び第2磁力可変磁石の近くで、ステータからの磁束が第1孔部及び第2孔部に侵入するのを抑制できる。これにより、磁力可変磁石の磁化状態を効率良く変化させることができる。
【0023】
ここに開示された技術の第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つに記載のロータ構造を有する回転電機の制御装置を対象として、前記所定の磁束を生成するためのパルス電流を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記パルス電流の振幅が最大値に到達した後、該パルス電流のパルス期間の間に、該パルス電流の振幅よりも小さい幅で電流を増減させるパルス制御を実行する、という構成にした。
【0024】
第8の態様では、磁力可変磁石の磁化状態をより効率良く変化させることができる。すなわち、磁力可変磁石の磁化状態は、ロータが回転している状態で実行されることがあるため、ロータの回転に伴って、非磁性導体に入力される磁束が変化することがある。非磁性導体に入力される磁束が減少した場合には、所定の磁束に沿うような磁束を発生させる渦電流が生じるため、磁力可変磁石の磁化状態を変更する効率が悪化するおそれがある。第8の態様のように、パルス制御を実行すれば、非磁性導体に所定の磁束に沿うような磁束を発生させる渦電流が生じたとしても、できる限り大きい磁束を磁力可変磁石に入力させることができる。これにより、磁力可変磁石の磁化状態をより効率良く変化させることができる。
【0025】
第9の態様は、前記制御部は、前記パルス制御において、前記電流を増減させる大きさ及び回数を、前記磁力可変磁石の着磁率、前記ロータの回転速度、及び前記電源電圧を考慮して変更する。
【0026】
第9の態様では、回転電機の動作状態に応じて、パルス制御における電流を増減させる大きさ及び回数を適宜変更することで、磁力可変磁石に入力される磁束をできる限り大きくすることができる。これにより、磁力可変磁石の磁化状態をより効率良く変化させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、磁力可変磁石の磁化状態を効率良く変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るロータ構造を有する駆動モータを備えた自動車の概略図である。
【
図2】
図2は、駆動モータの運転効率を示すグラフである。
【
図3】
図3は、軸方向に直交する平面で切断した駆動モータの断面図である。
【
図4】
図4は、駆動モータの磁極部を拡大した拡大断面図である。
【
図5】
図5は、ロータを第1非磁性導体を通る平面で切断した断面図である。
【
図6】
図6は、駆動モータの制御系を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、駆動モータの制御に関するシステム図である。
【
図8】
図8は、駆動モータの制御の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1磁力可変磁石及び第2磁力可変磁石の磁化状態を変更する際の磁束の流れを示す断面図であって、パルス電流を供給し始めた状態を示す。
【
図10】
図10は、第1磁力可変磁石及び第2磁力可変磁石の磁化状態を変更する際の磁束の流れを示す断面図であって、第1非磁性導体及び第2非磁性導体に渦電流が発生した状態を示す。
【
図11】
図11は、第1磁力可変磁石及び第2磁力可変磁石の磁化状態を変更する際の磁束の流れを示す断面図であって、ロータが回転した状態を示す。
【
図12】
図12は、パルス制御においてステータに供給する電流の波形の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、パルス制御を含む磁力変更制御の主な処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態2に係るロータ構造を有する駆動モータの概略図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係る駆動モータのロータを軸方向のステータ側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(実施形態1)
〈車両の構成〉
図1に、本実施形態1に係るロータ構造を有する駆動モータ2を備えた自動車1を概略的に示す。ここで例示する自動車は、電力を利用した走行が可能なハイブリッド車である。自動車の駆動源としては、開示する技術を適用した駆動モータ2(磁力可変モータ)とともにエンジン3が搭載されている。これらが協働して、4つの車輪4F,4F,4R,4Rのうち、左右対称状に位置する2輪(駆動輪4R)を回転駆動する。それにより、自動車1は移動(走行)する。なお、自動車1は、駆動モータ2のみを搭載した電気自動車であってもよい。自動車1はまた、4輪駆動であってもよい。
【0031】
この自動車1の場合、エンジン3は車体の前側に配置されており、駆動輪4Rは車体の後側に配置されている。すなわち、この自動車1は、いわゆるFR車である。この自動車1の場合、駆動源としては、駆動モータ2よりもエンジン3が主体となっており、駆動モータ2は、エンジン3の駆動をアシストする形で利用される(いわゆるマイルドハイブリッド)。駆動モータ2はまた、駆動源としてだけでなく、回生時には発電機としても利用される。
【0032】
エンジン3は、例えばガソリンを燃料にして燃焼を行う内燃機関である。エンジン3は、軽油を燃料とするディーゼル機関であってもよい。駆動モータ2は、第1クラッチ5を介してエンジン3の後方に連結されている。駆動モータ2は、三相の交流によって駆動する永久磁石同期モータである。
【0033】
この駆動モータ2は上述したように磁力可変モータである。そのロータには、後述する磁力固定磁石40及び磁力可変磁石51,52が設けられていて、磁力の変更が可能に構成されている。モータ性能を向上するために、そのロータの構造は工夫が施されている。駆動モータ2の詳細については後述する。
【0034】
駆動モータ2は、インバータ6を介してバッテリ7と接続されている。バッテリ7は、複数のリチウムイオン電池で構成されている。バッテリ7の定格電圧は50V以下(具体的には48V)である。バッテリ7は、インバータ6に直流電力を供給する。インバータ6は、その直流電力を位相が異なる3相の交流電流に変換して駆動モータ2に供給する。それにより、駆動モータ2は回転する。
【0035】
駆動モータ2の後方には、第2クラッチ8を介して変速機9が連結されている。変速機9は、多段式自動変速機(いわゆるAT)である。エンジン3及び/又は駆動モータ2によって出力される回転動力は、第2クラッチ8を通じて変速機9に出力される。変速機9はプロペラシャフトを介してデファレンシャルギアに連結されている。
【0036】
デファレンシャルギアは、一対の駆動シャフトを介して左右の駆動輪4Rに連結されている。自動車1の走行時(力行時)には、変速機9で変速された回転動力が、デファレンシャルギアで振り分けられて各駆動輪4Rに伝達される。
【0037】
自動車1の減速時(回生時)には、駆動モータ2を用いて消費されるエネルギーの回収が行われる。具体的には、自動車1が制動する時に、第2クラッチ8は連結したままで第1クラッチ5を解放する。そうすることにより、駆動輪の回転動力で駆動モータ2を回転させて発電する。その電力をバッテリ7に充電してエネルギーを回収する。
【0038】
自動車1には、エンジン3、駆動モータ2、変速機9などの駆動系装置は、センサを有する。エンジン3は、エンジン3の回転数を検出するエンジン回転センサ81を有する。駆動モータ2は、駆動モータ2の回転数をモータ回転センサ83と、磁力可変磁石51,52の磁力を検出する磁力センサ84とを有する。変速機9は、変速機9の動作状態を検出する変速機センサ82を有する。また、駆動モータ2とインバータ6との接続経路には、駆動モータ2に供給される電流を検出する電流センサ85を有する。電流センサ85により、バッテリ7の電圧、すなわち電源電圧を推測することができる。
【0039】
自動車1には、制御系の装置として、エンジンコントロールユニット(ECU)91、モータコントロールユニット(MCU)92、変速機コントロールユニット(TCU)93、総合コントロールユニット(GCU)94などが備えられている。
【0040】
<駆動モータの運転領域>
図2に、駆動モータ2の運転領域を表したマップを例示する。このマップでは、回転数別のトルク(負荷)の上限値を示す負荷上限ラインTmにより、駆動モータ2が出力できる運転領域が画定されている。
【0041】
磁力可変モータの運転領域は、力率が最適化されるように、ロータ10の磁力別に複数の磁化領域に区画されている。例示のマップでは、3つの磁化領域に区画されている。
【0042】
すなわち、最大トルクT1を含み、負荷上限ラインに沿って高負荷側に拡がる第1磁化領域Rm1と、第1磁化領域Rm1よりも低負荷側に拡がる第2磁化領域Rm2と、第2磁化領域Rm2よりも低負荷側に拡がり、高回転側において駆動モータ2が空運転するトルク(自動車1の走行に寄与しないトルク)T0を含む第3磁化領域Rm3と、に区画されている。
【0043】
これら磁化領域Rmの各々は、それぞれの出力に対応した最適な磁力が設定される。通常、第1磁化領域Rm1の磁力は、第2磁化領域Rm2の磁力よりも高く、第3磁化領域Rm3の磁力は、第2磁化領域Rm2の磁力よりも低く設定される。
【0044】
自動車1の走行中、駆動モータ2の運転状態に基づいて磁化領域Rmが予測され、磁化領域Rmを移行する場合には、その磁化領域の磁力に合わせてロータ10の磁力が変更される。例えば、第2磁化領域Rm2から第1磁化領域Rm1に移行する場合には、駆動モータ2で増磁が実行される。第2磁化領域Rm2から第3磁化領域Rm3に移行する場合には、駆動モータ2で減磁が実行される。
【0045】
詳細は後述するが、増磁又は減磁する場合には、ステータ20に対してロータ10が所定位置となるタイミングで、所定のコイル22にパルス状の大電流を流す。そうすることによって処理対象とする磁力可変磁石51,52に対してステータ20から強い磁界を発生させる。それにより、所定の磁力が得られるまで磁力可変磁石51,52を着磁する。
【0046】
増磁と減磁とでは発生させる磁界の向きは逆である。増磁では、磁力可変磁石51,52の磁力が磁力固定磁石40の磁力と同方向に向くように着磁する。減磁では、磁力可変磁石51,52の磁力が磁力固定磁石40の磁力と逆方向に向くように着磁する。着磁の状態により、磁力可変磁石51,52の磁力の向きを反転したり磁力の強さを大小に変化したりできる。
【0047】
しかしながら、着磁は車載機器の制限を受ける。すなわち、磁力可変磁石51,52の磁力を強く着磁するためには、大電流を駆動モータ2に供給する必要があり、バッテリ7の電圧及びインバータ6の容量によって制限を受ける。
【0048】
これら機器を大型化することも考えられるが、車載されているので大型化することは難しい。そのため、既存の機器を用いる制限された条件下でも効率良く着磁できるように、ここに開示する技術では、駆動モータ2の構造、特にロータ10の構造を工夫している。また、磁力可変磁石51,52の磁化状態を変化させる際の制御を工夫している。
【0049】
〈駆動モータの構成〉
図3は、駆動モータ2の横断面を示す。
図3に示すように、駆動モータ2は、後述する磁極部12を6個有する6極のモータである。駆動モータ2は、ロータ10と、ステータ20と、シャフト30とを備える。駆動モータ2は、ラジアルギャップモータであり、ロータ10とステータ20とは径方向に隙間を空けて配置されている。なお、駆動モータ2の極数は特に限定されず、7極以上であってもよい。
【0050】
以下の説明では、回転軸方向又は軸方向は、回転軸Qが延びている方向を表す。径方向は、回転軸Qを中心とした半径方向を表す。周方向は、回転軸Qを中心としたその周囲の方向を表す。径方向において、回転軸Qから遠い側を「径方向外側」といい、回転軸Qに近い側を「径方向内側」という。
【0051】
〔ステータ〕
ステータ20は、径方向においてロータ10と隙間を隔てて対向する。ステータ20は、ステータコア21と、複数のコイル22とを有する。
【0052】
ステータコア21は、円環状に形成されたバックヨーク21aと、バックヨーク21aから径方向内側に放射状に突出する複数(9個)のティース21bとを有する。例えば、ステータコア21は、透磁率の高い複数の電磁鋼板を回転軸方向に積層して構成された積層コアである。
【0053】
複数のコイル22は、複数のティース21bに巻回される。複数のコイル22が通電すると、複数のコイル22に磁束が発生する。例えば、複数のコイル22は、流れる電流の位相が異なるU相、V相、及びW相からなる三相のコイル群を構成している。各相のコイル22は、周方向に順番に配置されている。
【0054】
この例では、複数のコイル22において発生する磁束には、ロータ10を回転させるための磁束である回転磁束と、後述する第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させるための磁束である可変磁束(所定の磁束)とが含まれる。
【0055】
例えば、複数のコイル22に交流電流を供給することにより、複数のコイル22に回転磁束が発生する。この回転磁束によりロータ10が回転する。また、ロータ10の回転中(又は停止中)に、複数のコイル22に所定の電流(例えば回転磁束を発生させる交流電流よりも大きいパルス電流)を所定の時間だけ供給することにより、複数のコイル22に可変磁束が発生する。この可変磁束により後述する第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態が変化する。
【0056】
〔ロータ〕
次に、
図3及び
図4を参照して、ロータ10について説明する。ロータ10は、ロータコア11と、複数の磁極部12とを備える。
【0057】
〔ロータコア〕
ロータコア11は、円柱状に形成される。例えば、ロータコア11は、透磁率の高い複数枚の電磁鋼板が軸方向に積層された積層コアである。ロータコア11の中央部には、軸孔が設けられる。軸孔には、シャフト30が挿入されて固定される。
【0058】
〔磁極部〕
複数の磁極部12は、ロータコア11に設けられ、周方向に並ぶ。複数の磁極部12の各々は、磁力固定磁石40と、第1磁力可変磁石51と、第2磁力可変磁石52と、第1補助磁石61と、第2補助磁石62と、を有する。
【0059】
ロータ10の周方向に相隣接する磁極部12は、互いに磁性が異なっている。具体的には、磁力固定磁石40、第1補助磁石61、及び第2補助磁石62の磁化方向が互いに逆向きになっている。
【0060】
〈磁力固定磁石〉
磁力固定磁石40は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、磁力固定磁石40は、ロータコア11に設けられた磁力固定磁石孔H40に収容される。また、磁力固定磁石40は、径方向と直交する方向(接線方向)に延びる。具体的には、磁力固定磁石40は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向が接線方向を向く。
【0061】
磁力固定磁石40には、ネオジム磁石などの、磁束密度が高く、保磁力も大きい磁石が用いられる。磁力固定磁石40は、所定の磁束、例えばバッテリ7及びインバータ6が出力可能な大電流(例えば750Arms)で発生する磁束が印加されても磁化状態が実質的に変化しない。磁力固定磁石40の保磁力は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の保磁力よりも高い。これら磁力固定磁石40は、それぞれ異なる磁性体であってもよいが、このロータ10では、同じ磁性体が用いられている。
【0062】
〈磁力可変磁石〉
複数の磁極部12にそれぞれ含まれる第1磁力可変磁石51は、磁極部12の周方向の一端側に隣接(
図3及び
図4では時計回り方向の隣り)する他の磁極部12に含まれる第2磁力可変磁石52とq軸を挟んで隣り合う。q軸は、周方向に隣り合う2つの磁極部12の間を通過して径方向に延びる仮想線である。
【0063】
また、複数の磁極部12のそれぞれにおいて、第1磁力可変磁石51と第2磁力可変磁石52とはd軸に対して対称に配置される。d軸は、磁力固定磁石40の周方向における中央を通過して径方向に延びる仮想線である。
【0064】
〈第1磁力可変磁石〉
第1磁力可変磁石51は、磁力固定磁石40の周方向の一端側に配置される。第1磁力可変磁石51は、周方向において磁力固定磁石40と間隔をおいて対向する。第1磁力可変磁石51とq軸との間の周方向長さは、第1磁力可変磁石51と磁力固定磁石40との間の周方向長さよりも短い。
【0065】
第1磁力可変磁石51は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第1磁力可変磁石51は、ロータコア11に設けられた第1磁力可変磁石孔H51に収容される。また、第1磁力可変磁石51は、q軸(周方向において隣り合うq軸)に沿うように延びる。具体的には、第1磁力可変磁石51は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向がq軸と平行な方向を向く。
【0066】
〈第2磁力可変磁石〉
第2磁力可変磁石52は、磁力固定磁石40の周方向の他端側に配置される。第2磁力可変磁石52は、周方向において磁力固定磁石40と間隔をおいて対向する。第2磁力可変磁石52とq軸との間の周方向長さは、第2磁力可変磁石52と磁力固定磁石40との間の周方向長さよりも短い。
【0067】
第2磁力可変磁石52は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第2磁力可変磁石52は、ロータコア11に設けられた第2磁力可変磁石孔H52に収容される。また、第2磁力可変磁石52は、q軸(周方向において隣り合うq軸)に沿うように延びる。具体的には、第2磁力可変磁石52は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向がq軸と平行な方向を向く。
【0068】
〈磁力可変磁石の磁気特性〉
第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52には、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などの、磁束密度は高いが、保磁力は小さい磁石が用いられる。第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の各々は、所定の磁束、例えばバッテリ7及びインバータ6が出力可能な大電流(例えば750Arms)で発生する磁束により、その磁力を変化させることができる。第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52は、駆動モータ2を普通に駆動する時の電流の大きさでは、ほとんど着磁しない。このときには、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52も永久磁石として機能する。
【0069】
この例では、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の各々の磁化容易方向は、周方向、より詳しくは、径方向と直交する方向(接線方向)を向く。第1磁力可変磁石51の磁化困難方向は、第1磁力可変磁石51の磁化容易方向と直交する方向(この例では径方向)を向く。第2磁力可変磁石52の磁化困難方向は、第2磁力可変磁石52の磁化容易方向と直交する方向(この例では径方向)を向く。
【0070】
また、この例では、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の各々は、磁化方向が第1方向を向く状態と、磁化方向が第2方向を向く状態と、磁力が実質的にゼロとなるゼロ状態とに切り換え可能である。第1方向は、ティース21bと鎖交する磁束(有効磁束)を増加させる方向である。第2方向は、ティース21bと鎖交する磁束(有効磁束)を減少させる方向である。例えば、磁力固定磁石40の磁化方向が径方向外方へ向かう方向である場合、第1方向は、第1磁力可変磁石51(又は第2磁力可変磁石52)から磁力固定磁石40へ向かう方向となり、第2方向は、磁力固定磁石40から第1磁力可変磁石51(又は第2磁力可変磁石52)へ向かう方向となる。
【0071】
以下の説明において、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化方向が第1方向を向いた状態を増磁状態といい、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化方向が第2方向を向いた状態を減磁状態という。
【0072】
〈補助磁石〉
複数の磁極部12の各々において、第1補助磁石61と第2補助磁石62は、d軸に対して対称に配置される。
【0073】
〈第1補助磁石〉
第1補助磁石61は、磁力固定磁石40と第1磁力可変磁石51との間に配置される。第1補助磁石61と磁力固定磁石40との間の周方向長さは、第1補助磁石61と第1磁力可変磁石51との間の周方向長さよりも短い。
【0074】
第1補助磁石61は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第1補助磁石61は、ロータコア11に設けられた第1補助磁石孔H61に収容される。また、第1補助磁石61は、磁力固定磁石40の周方向の一端部に沿うように延びる。具体的には、第1補助磁石61は、横断面形状が矩形状に形成され、短手方向が磁力固定磁石40の長手方向を向く。
【0075】
第1補助磁石61は、磁力固定磁石40の径方向外端と第1磁力可変磁石51との間における磁束の流れを阻害する方向に着磁される。具体的には、磁力固定磁石40の磁化方向が径方向外方へ向かう方向である場合、第1補助磁石61の磁化方向は、第1磁力可変磁石51から磁力固定磁石40へ向かう方向となる。磁力固定磁石40の磁化方向が径方向内方へ向かう方向である場合、第1補助磁石61の磁化方向は、磁力固定磁石40から第1磁力可変磁石51へ向かう方向となる。
【0076】
〈第2補助磁石〉
第2補助磁石62は、磁力固定磁石40と第2磁力可変磁石52との間に配置される。第2補助磁石62と磁力固定磁石40との間の周方向長さは、第2補助磁石62と第2磁力可変磁石52との間の周方向長さよりも短い。
【0077】
第2補助磁石62は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第2補助磁石62は、ロータコア11に設けられた第2補助磁石孔H62 に収容される。また、第2補助磁石62は、磁力固定磁石40の周方向の他端部に沿うように延びる。具体的には、第2補助磁石62は、横断面形状が矩形状に形成され、短手方向が磁力固定磁石40の長手方向を向く。
【0078】
第2補助磁石62は、磁力固定磁石40の径方向外端と第2磁力可変磁石52との間における磁束の流れを阻害する方向に着磁される。具体的には、磁力固定磁石40の磁化方向が径方向外方へ向かう方向である場合、第2補助磁石62の磁化方向は、第2磁力可変磁石52から磁力固定磁石40へ向かう方向となる。磁力固定磁石40の磁化方向が径方向内方へ向かう方向である場合、第2補助磁石62の磁化方向は、磁力固定磁石40から第2磁力可変磁石52へ向かう方向となる。
【0079】
〈非磁性部材〉
複数の磁極部12の各々に含まれる第1非磁性部材71は、磁極部12の周方向の一端側(
図3及び
図4の例では時計回りの方向の隣り)に位置する他の磁極部12に含まれる第2非磁性部材72と、q軸を挟んで隣り合う。
【0080】
複数の磁極部12の各々において、第1非磁性部材71と第2非磁性部材72とは、d軸に対して対称に配置される。第1非磁性部材71及び第2非磁性部材72は、例えば、絶縁性を有する樹脂で構成される。
【0081】
〈第1非磁性部材〉
第1非磁性部材71は、磁極部12の周方向の一端側において、磁力固定磁石40、第1磁力可変磁石51、及び第1補助磁石61の径方向内側の位置に配置される。第1非磁性部材71は、磁力固定磁石40及び第1補助磁石61の径方向内端とは離間している。
【0082】
第1非磁性部材71は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第1非磁性部材71は、第1磁力可変磁石51に対して径方向内側に隣接配置された第1収容孔H71に収容される。また、第1非磁性部材71は、q軸(周方向において隣り合うq軸)に沿うように延びる。具体的には、第1非磁性部材71の横断面形状は、台形状に形成される。第1非磁性部材71の一方の斜辺は、q軸と平行な方向を向き、第1非磁性部材71の他方の斜辺は、d軸と平行な方向を向く。
【0083】
この例では、第1非磁性部材71は、第1磁力可変磁石51を保持するための部材である。具体的には、第1収容孔H71は、第1磁力可変磁石孔H51と連通する。第1非磁性部材71は、第1磁力可変磁石51へ向けて突出する突出部を有する。そして、第1非磁性部材71は、その突出部が第1磁力可変磁石孔H51に収容された第1磁力可変磁石51を径方向外方に押し付けた状態で、第1収容孔H71に収容される。
【0084】
第1非磁性部材71は、第1空隙部71aを有する。第1空隙部71aは、第1非磁性部材71を軸方向に貫通する。第1空隙部71aは、第1収容孔H71の形状に沿って形成されている。第1空隙部71aは、周方向における第1磁力可変磁石51の位置において、第1磁力可変磁石51へ向けて突出する。
【0085】
〈第2非磁性部材〉
第2非磁性部材72は、磁極部12の周方向の他端側において、磁力固定磁石40、第2磁力可変磁石52、及び第2補助磁石62の径方向内側の位置に配置される。第2非磁性部材72は、磁力固定磁石40及び第2補助磁石62の径方向内端とは離間している。
【0086】
第2非磁性部材72は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第2非磁性部材72は、第2磁力可変磁石52に対して径方向内側に隣接配置された第2収容孔H72に収容される。また、第2非磁性部材72は、q軸(周方向において隣り合うq軸)に沿うように延びる。具体的には、第2非磁性部材72の横断面形状は、台形状に形成される。第2非磁性部材72の一方の斜辺は、q軸と平行な方向を向き、第2非磁性部材72の他方の斜辺は、d軸と平行な方向を向く。
【0087】
この例では、第2非磁性部材72は、第2磁力可変磁石52を保持するための部材である。具体的には、第2収容孔H72は、第2磁力可変磁石孔H52と連通する。第2非磁性部材72は、第2磁力可変磁石52へ向けて突出する突出部を有する。そして、第2非磁性部材72は、その突出部が第2磁力可変磁石孔H52に収容された第2磁力可変磁石52を径方向外方に押し付けた状態で、第2収容孔H72に収容される。
【0088】
第2非磁性部材72は、第2空隙部72aを有する。第2空隙部72aは、第2非磁性部材72を軸方向に貫通する。第2空隙部72aは、第2収容孔H72の形状に沿って形成されている。第2空隙部72aは、周方向における第2磁力可変磁石52の位置において、第2磁力可変磁石52へ向けて突出する。
【0089】
〈第1非磁性導体〉
第1空隙部71a内には、第1非磁性導体73が配置されている。第1非磁性導体73の横断面形状は、L字状をなしている。第1非磁性導体73は、磁力固定磁石40よりも周方向の一端側に位置しかつ第1磁力可変磁石51に向かって周方向と直交する方向(ここでは径方向)に延びる第1縦延び部73aを有する。第1非磁性導体73は、第1縦延び部73aから周方向に延びる第1横延び部73bを有する。
【0090】
図5に示すように、第1非磁性導体73は、第1収容孔H71に沿って軸方向に延びる。第1非磁性導体73は、ロータコア11の両側にそれぞれ設けられた一対の絶縁シート13及び一対のエンドプレート14を軸方向に貫通する。第1非磁性導体73の軸方向の両側端部は、一対のエンドプレート14にそれぞれ固定される。
【0091】
図3~
図5に示すように、第1非磁性導体73は、第1収容孔H71の内周面とは隙間を空けて配置される。第1非磁性導体73と第1収容孔H71の内周面との隙間の幅は、第1磁力可変磁石51の周方向の幅以上の大きさである。
【0092】
第1非磁性導体73は、アルミや銅などの金属で構成されている。詳しくは後述するが、第1非磁性導体73は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させるための磁束(以下、所定の磁束という)により、所定の磁束に反発する磁束が生じるような渦電流を発生させる。
【0093】
〈第2非磁性導体〉
第2空隙部72a内には、第2非磁性導体74が配置されている。第2非磁性導体74の横断面形状は、L字状をなしている。第2非磁性導体74は、磁力固定磁石40よりも周方向の一端側に位置しかつ第2磁力可変磁石52に向かって周方向と直交する方向(ここでは径方向)に延びる第2縦延び部74aを有する。第2非磁性導体74は、第2縦延び部74aから周方向に延びる第2横延び部74bを有する。
【0094】
図示は省略するが、第2非磁性導体74は、第2収容孔H72に沿って軸方向に延びる。第2非磁性導体74は、ロータコア11の両側にそれぞれ設けられた一対の絶縁シート13及び一対のエンドプレート14を軸方向に貫通する。第2非磁性導体74の軸方向の両側端部は、一対のエンドプレート14にそれぞれ固定される。
【0095】
図3及び
図4に示すように、第2非磁性導体74は、第2収容孔H72の内周面は隙間を空けて配置される。第2非磁性導体74と第2収容孔H72の内周面との隙間の幅は、第2磁力可変磁石52の周方向の幅以上の大きさである。
【0096】
第2非磁性導体74は、アルミや銅などの金属で構成されている。詳しくは後述するが、第2非磁性導体74は、所定の磁束により、その所定の磁束に反発する磁束が生じるような渦電流を発生させる。
【0097】
〔駆動モータの制御系〕
自動車1には、運転者の操作に応じて、その走行をコントロールするために、前述した、ECU91、MCU92、TCU93、及びGCU94の各ユニットが設置されている。これらユニットの各々は、プロセッサ、メモリ、インターフェースなどのハードウエアと、データベースや制御プログラムなどのソフトウエアとで構成されている。これらユニットの各々は、例えばCAN(Controller Area Network)によって接続されていて、互いに電気通信可能に構成されている。
【0098】
ECU91は、エンジン3の作動を主に制御するユニットである。MCU92は、駆動モータ2の作動を主に制御するユニットである。TCU93は、変速機9の作動を主に制御するユニットである。GCU94は、これらECU91、MCU92、及びTCU93と電気的に接続されていて、これらを総合的に制御する上位ユニットである。
【0099】
エンジン回転センサ81は、エンジン3に取り付けられており、エンジン3の回転数を検出してECU91に出力する。変速機センサ82は、各変速機クラッチの回転数および締結トルク、出力軸の回転数などを検出してTCU93に出力する。モータ回転センサ83は、駆動モータ2に取り付けられており、駆動モータ2の回転数や回転位置を検出してMCU92に出力する。磁力センサ84は、駆動モータ2に取り付けられており、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石の磁力を検出してMCU92に出力する。電流センサ85は、駆動モータ2とインバータ6との接続経路(電線)に取り付けられており、各コイル22に供給される電流を検出してMCU92に出力する。アクセルセンサ86は、運転者が自動車1を駆動する時に踏み込むアクセルペダルに取り付けられており、自動車1の駆動に要求される出力に相当するアクセル開度を検出してECU91に出力する。
【0100】
これらセンサから入力される検出値の信号に基づいて、各ユニットが駆動系の各装置を制御することで、自動車1が走行する。例えば、自動車1がエンジン3の駆動力で走行するときには、ECU91は、アクセルセンサ86及びエンジン回転センサ81の検出値に基づいて、エンジン3の運転を制御する。
【0101】
〔駆動モータの制御〕
図6に示すように、MCU92は、プロセッサ92aと、メモリ92bとを有する。メモリ92bには、データベースや制御プログラムなどのソフトウエアが保存されている。MCU92により実行される制御は、プロセッサ92aがメモリ92bに保存されたソフトウエアを読み込むことで実行される。
【0102】
MCU92は、駆動モータ2が単独で出力する状態で、あるいは、必要に応じてエンジン3の出力をアシストする状態で、駆動モータ2が出力するパワーを使用して自動車1が走行するように制御する。
【0103】
具体的には、ECU91は、アクセルセンサ86、エンジン回転センサ81等の検出値に基づいて、エンジン3で出力するトルクを設定する。GCU94、予め設定されたエンジン3と駆動モータ2との間での出力の分配比率に従って、所定の出力範囲で、駆動モータ2に対するトルクの要求量(要求トルク)を設定する。MCU92は、その要求トルクが出力されるように駆動モータ2を制御する。
【0104】
MCU92は、コイル22に流れる駆動電流を制御することにより、駆動モータ2に、要求されたパワーを出力させる。
【0105】
MCU92は、駆動モータ2の力率を高める機能を有し、コイル22に流れる磁化電流を制御することにより、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力を変更する。具体的には、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力が、駆動電流によってコイル22に発生する電磁力と略一致するように、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力を変更する。
【0106】
力率とは、皮相電力(駆動モータ2に供給される電力)に対する有効電力(実際に消費される電力)の割合である。力率が低いと、同じ出力を得るのに大きな電流を通電する必要があるため、それだけモータが大型化する。従って、駆動モータ2の力率を高めることで、駆動モータ2を軽量かつコンパクトにできる。また、力率が高まれば、回生時の発電力も高めることができる。
【0107】
〔駆動モータの制御の具体例〕
図7に、駆動モータ2の制御に関する簡略化したシステム図を示す。
図8に、MCU92が行う駆動モータ2の制御の一例を示す。これらを参照しながら、駆動モータ2の具体的な制御の流れについて説明する。なお、駆動モータ2は、トルク電流指令Iq
*と励磁電流指令Id
*とを用いたベクトル制御によって制御されている。
【0108】
MCU92は、自動車1が走行可能な状態になると、電流センサ85、モータ回転センサ83、磁力センサ84から、常時、検出値が入力されるようになる(ステップS1)。また、ECU91は、アクセルセンサ86やエンジン回転センサ81から、常時、検出値が入力されるようになる。
【0109】
GCU94は、アクセルセンサ86の検出値を取得し、予め設定されているエンジン3と駆動モータ2との間での出力の分配比率に従って、駆動輪4Rに対して出力するトルクのうち、駆動モータ2に要求するトルク(要求トルク)を設定する。GCU94は、その要求トルクを出力するためのコマンド(トルク指令値T*)を、MCU92に出力する。
【0110】
MCU92では、駆動モータ2の出力を、所定の目標トルクに基づいて制御する(いわゆるトルク制御)。トルク制御により、駆動モータ2が出力するトルク(モータトルク)は、目標トルクと一致するように制御される。従って、この自動車1が走行している時に上述したコマンドが入力されると、MCU92は、その要求トルクを目標トルクとして、駆動モータ2を制御する。駆動モータ2のトルク制御により、自動車1は、ドライバの要求に応じて走行する。
【0111】
この自動車1が走行している時には、前述したように、磁化領域Rmを移行する時にトルク制御が中断されて、駆動モータ2のコイル22に高電圧を印加する制御が実行される(磁力変更制御)。磁力変更制御により、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石の磁力は変更される。
【0112】
具体的には、MCU92は、トルク指令値T*が入力されると(ステップS2でYes)、そのトルクを発生させる駆動電流(トルク電流成分)の変化量を出力するコマンド(駆動電流指令値Idq*)の演算処理を実行する(ステップS3)。また、MCU92は、適切な磁化領域Rmに対応した磁力最適値を出力するコマンド(磁化状態指令値Φ*)の演算処理を実行する(ステップS4)。MCU92は、磁化状態指令値Φ*に基づいて、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力の変化量に相当するトルク電流成分を出力するコマンド(磁力電流指令値Idq*)の演算処理を実行する(ステップS5)。
【0113】
MCU92は、演算した駆動電流指令値Idq*と磁力電流指令値Idq*とに基づいて、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力の変更が必要か否かを判定する(ステップS6)。例えば、上述したように、要求されたトルクを出力すると、磁化領域Rmが他の磁化領域Rmに移行する場合には、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力の変更が必要と判定し、要求されたトルクを出力しても、同じ磁化領域Rmに位置する場合には、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力の変更は不要と判定する。
【0114】
そして、MCU92は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力の変更は不要と判定した場合、出力するトルクが、駆動モータ2が空運転するトルクT1より大きいか否かを判定する(ステップS7)。そして、MCU92は、出力するトルクがトルクT1より大きい場合には、通常のベクトル制御によって駆動モータ2を制御する。
【0115】
すなわち、MCU92が、電流制御により、電流センサ85およびモータ回転センサ83の検出値に基づいて、PWM制御を行うために出力するコマンド(電圧指令値Vuvw*)の演算処理を実行する(ステップS8)。そして、PWM制御により、スイッチング指令値が演算される(ステップS9)。
【0116】
そのスイッチング指令値が、ドライバ回路を通じてインバータ6に出力されることにより、インバータ6の内部で、複数のスイッチング素子がオンオフ制御される。それにより、所定の3相の交流(駆動電流)が各コイル群に通電されて、駆動モータ2が、要求されたトルクで回転する(ステップS10)。
【0117】
一方、MCU92が、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力の変更が必要と判定した場合には(ステップS6でNo)、磁力変更制御が実行される(ステップS11)。
【0118】
また、MCU92が、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力の変更は不要と判定した場合でも、出力するトルクが、駆動モータ2が空運転するトルクT1以下と判定した場合には(ステップS7でNo)、磁力変更制御が実行される(ステップS11)。
【0119】
すなわち、駆動モータ2の回転動力の要求量が、ほとんど0(ゼロ)となった場合には、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52は、その磁力が初期状態に変更される(リセット)。自動車1の場合、例えば、アイドリング状態や停止状態から、一気にアクセルペダルが踏み込まれて急加速するような場合がある。
【0120】
第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の場合、初期状態の磁力が高負荷に合わせて高く設定されているので、空運転時に磁力をリセットすることで、そのような急加速が行われた場合でも、駆動モータ2を適切に駆動することができる。
【0121】
〔磁力変更制御時の磁束〕
MCU92が磁力変更制御を実行するときには、コイル22にパルス電流が供給される。コイル22にパルス電流が供給されると、ステータ20から磁極部12に向かって、パルス電力の大きさに応じた磁束が入力される。
【0122】
各磁極部12には、第1空隙部71a及び第2空隙部72aがそれぞれ設けられているため、ステータ20からの磁束は、ロータコア11における、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の径方向内側の領域には流れにくくなっている。このため、基本的には、ステータ20からの磁束は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に向かって流れる。
【0123】
しかしながら、磁力変更制御においてコイル22に供給されるパルス電流は、駆動モータ2の回転を制御する際のパルス電流と比較して大きいため、発生する磁束(前述の所定の磁束に相当)も比較的大きい。このため、磁力変更制御の際には、
図9に示すように、磁束が第1空隙部71a及び第2空隙部72aに侵入することがある。磁束が第1空隙部71a及び第2空隙部72aに侵入して、第1空隙部71a及び第2空隙部72aを通り抜けると、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に向かう磁束が減少する。この結果、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させる効率が悪化するおそれがある。
【0124】
これに対して、本実施形態1では、第1空隙部71a内に第1非磁性導体73を配置し、第2空隙部72a内に第2非磁性導体74を配置している。
図10に示すように、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74は、第1空隙部71a及び第2空隙部72aに磁束が侵入したときに、該磁束の影響により渦電流を発生させて、該磁束に反発する磁束(以下、単に反発磁束という)を発生させる。反発磁束が発生すると、ステータ20から磁束は、第1空隙部71a及び第2空隙部72aに侵入しにくくなる。これにより、ステータ20から磁束が第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に流れやすくなるため、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を効率良く変化させることができる。
【0125】
また、第1非磁性導体73と第1収容孔H71の内周面との間及び第2非磁性導体74と第2収容孔H72の内周面との間には、隙間が設けられているため、通常のベクトル制御によって駆動モータ2を制御する際(前述のステップS8~ステップS10)の磁束は、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74に影響しにくい。このため、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74が、駆動モータ2の通常時の動作に悪影響を与えることはない。
【0126】
〔パルス制御〕
ここで、磁束が第1空隙部71a及び第2空隙部72aに侵入して時間が経過すると、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74の渦電流が減衰する。第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74の渦電流が減衰した状態で、例えば、ロータ10が反時計回りに回転すると、第1非磁性導体73を通る磁束は一時的に減少する一方で、第2非磁性導体74を通る磁束は一時的に増加する。このとき、
図11に示すように、第2非磁性導体74は、渦電流により反発磁束を発生させるため、第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させる効率は高いままである。一方で、第1非磁性導体73には、磁力変更制御の開始時とは逆向きの渦電流が発生して、反発磁束とは逆向きの、ステータ20からの磁束の流れに沿うような磁束が発生してしまう。このときには、第1磁力可変磁石51の磁化状態を変化させる効率が悪化するおそれがある。
【0127】
そこで、本実施形態1では、MCU92は、磁力変更制御時のパルス電流の波形を単純な矩形状とはしないようにした。具体的には、MCU92は、磁力変更制御時において、パルス電流の振幅が最大値に到達した後、パルス電流のパルス期間の間に、パルス電流の振幅よりも小さい幅で電流を増減させるパルス制御を実行するようにした。
【0128】
図12は、パルス制御を行ったときの電流波形の一例を示す。MCU92は、
図9及び
図10に示すように、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に入力したい磁束の向き(破線の矢印で示す)とステータ20から入力される磁束の向きとが一致する位置でありかつ、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の少なくとも1組が、周方向に隣接するティース21bの間の位置に位置するときを時刻t0として、パルス電流を印加し始める。
【0129】
MCU92は、パルス電流の振幅が最大値に到達した後、
図11に示すように、ロータ10が僅かに回転したタイミングでパルス電流を増減させる。パルス電流の振幅及び増減させる周波数は、駆動モータ2の動作状況に応じて設定される。具体的には、MCU92は、パルス制御において、パルス電流の振幅及び増減させる周波数を、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の目標の着磁率、ロータ10の回転速度、及び電源電圧を考慮して変更する。
【0130】
第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の目標の着磁率は、パルス電流の振幅に影響する。具体的には、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の目標の着磁率が高いときの方が、目標の着磁率が低いときと比較して、パルス電流の振幅を大きくする。なお、目標の着磁率とは、磁力変更制御により変更したい磁化方向及び大きさの着磁率である。
【0131】
ロータ10の回転速度は、パルス電流の振幅に影響する。具体的には、ロータ10の回転速度が高いときの方が、回転速度が低いときと比較して、パルス電流の振幅を大きくする。ロータ10の回転速度が高いときには、ステータ20から第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74に入力される磁束の瞬間的な変化が大きいため、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74で発生する渦電流が大きくなる。渦電流が大きくなると、該渦電流により発生する磁束、特に、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52への磁束の入力を阻害する方向の磁束も大きくなる。このため、ロータ10の回転速度が高いときには、回転速度が低いときと比較してパルス電流の振幅を大きくして、できる限り大きい磁束が第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に入力されるようにする。ロータ10の回転速度は、モータ回転センサ83から検出される。
【0132】
電源電圧は、パルス電流を増減する周波数に影響する。具体的には、電源電圧が高いときの方が、電源電圧が低いときと比較して、周波数を高くする。周波数が高い方が、駆動モータ2の動作状況に合わせて細やかに電流波形を変更できる。電源電圧は、電流センサ85の検出結果から算出される。
【0133】
MCU92は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52が、時刻t0の時の位置から隣接するティース21bの位置まで回転したタイミング(
図12の時刻t1)でパルスの印加を終了する。MCU92は、パルスの印加を終了する直前にもパルス電流を増減させる。MCU92は、パルス期間の前半とパルス期間の後半とでは、パルス制御の振幅及び周波数を変更する。第1磁力可変磁石51の磁化状態を変化させる効率が悪化するおそれがあるのは、
図11に示すような、時刻t0からロータ10が僅かに回転するタイミングであるパルス期間の前半である。このため、パルス期間の前半の方がパルス期間の後半と比較して細かく(高い周波数で)パルス制御を行う必要がある。また、パルス制御時の電流波形は、パルス期間の後半の方がパルス期間の前半と比較して振幅が小さい傾向になる。
【0134】
図13は、磁力変更制御の主な処理の流れを示す。MCU92は、磁力変更制御が要求されると、磁化状態指令値Φ
*に基づいて、磁化処理の方向を判定する。すなわち、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力を増やす処理(増磁処理)を実行するのか、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力を減らす処理(減磁処理)を実行するのかを判定する。MCU92は更に、その増減する磁力の変化量を特定する。
【0135】
そして、MCU92は、モータ回転センサ83の検出値に基づいて、ロータ10のステータ20に対する位置(回転方向の位置)が、磁化処理に適した位置にあるか否かを判定する(ステップS21)。ロータ10が適正な位置に位置する時には、MCU92は、駆動モータ2の動作状況を検出して(ステップS22)、磁化電流の電流波形を設定する(ステップS23)。電流波形を設定した後、MCU92は磁化電流を出力する(ステップS24)。増磁処理と減磁処理とでは、電磁力の磁力線の向きは逆になる。
【0136】
MCU92は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力が、磁化状態指令値Φ*によって指示された磁力最適値と略同じか否かを判定し(ステップS25)、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力がその磁力最適値と略同じになるまで、磁化変更制御を実行する。第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力をリセットする場合には、初期の磁力と略同じになるまで、磁化変更制御を実行する。
【0137】
そして、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁力が、その磁力最適値または初期の磁力と略同じになれば、磁力変更制御を終了し、
図8に示すように、通常のベクトル制御によって駆動モータ2を制御する(ステップS8~S10)。
【0138】
〔実施形態1の効果〕
以上のように、実施形態1のロータ構造を有するロータ10では、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74が設けられる。第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させるような所定の磁束により、該所定の磁束に反発する磁束が生じるような渦電流を発生させる。第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74から前記所定の磁束に反発する磁束を発生させることで、ステータ20からの磁束が第1空隙部71a及び第2空隙部72aに侵入しにくくなる。これにより、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させる際に、磁束を第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に流し易くすることができる。この結果、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を効率良く変化させることができる。
【0139】
また、本実施形態1のロータ10では、第1非磁性導体73は、第1磁力可変磁石51に向かって周方向と直交する方向に延びる第1縦延び部73aを有し、第2非磁性導体74は、第2磁力可変磁石52に向かって周方向と直交する方向に延びる第2縦延び部74aを有する。第1縦延び部73aにより第1非磁性導体73を第1磁力可変磁石51にできる限り近づけることができるとともに、第2非磁性導体74を第2磁力可変磁石52に近づけることができる。これにより、第1空隙部71a及び第2空隙部72aへの磁束の侵入を効果的に抑制できるため、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を効率良く変化させることができる。
【0140】
また、本実施形態1のロータ10では、第1非磁性導体73と第1空隙部71aの内周面との間及び第2非磁性導体74と第2空隙部72aの内周面との間にはそれぞれ隙間が設けられる。これにより、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させるとき以外の、ステータ20からの磁束が比較的小さいときには、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74に磁束が届きにくくなり、渦電流が発生にくくなる。これにより、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74の渦電流が形成する磁束により、駆動モータ2の効率が悪化するのを抑制することができる。
【0141】
また、本実施形態1では、駆動モータ2はロータ10とステータ20とが径方向に隙間を空けて配置されたラジアルギャップモータであり、ロータ10の軸方向の両端部にそれぞれ設けられたエンドプレート14を更に備え、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74は、エンドプレート14にそれぞれ固定される。第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74をエンドプレート14の補強部材として利用することができ、ロータ10の強度を向上させることができる。
【0142】
また、本実施形態1では、MCU92は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させる磁力変更制御において、パルス電流の振幅が最大値に到達した後、パルス電流のパルス期間の間に、パルス電流の振幅よりも小さい幅で電流を増減させるパルス制御を実行する。パルス制御を実行することで、ロータ10の回転に伴い、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74に前記所定の磁束に沿うような磁束を発生させる渦電流が生じたとしても、できる限り大きい磁束を第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に入力させることができる。これにより、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態をより効率良く変化させることができる。
【0143】
特に、本実施形態1では、MCU92は、パルス制御において、増減させる大きさ及び回数(パルス電流の振幅及び増減させる周波数)を、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の着磁率、ロータ10の回転速度、及び電源電圧を考慮して変更する。これにより、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に入力される磁束をできる限り大きくすることができる。これにより、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態をより効率良く変化させることができる。
【0144】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0145】
本実施形態2は、駆動モータ202が、ロータ210とステータ220とが軸方向に隙間を空けて配置されたアキシャルギャップモータである点で、前述の実施形態1とは異なる。駆動モータ202は、2つのロータ210の間に1つのステータ220が配置された2ロータ1ステータ型のモータである。
【0146】
各ロータ210及びステータ220の中心には、シャフト230が挿通している。各ロータ210はシャフト230に固定されている。ステータ220は、シャフト230とベアリングを介して接続されており、シャフト230が回転したとしても、ステータ220は回転しない。以下の説明では、回転軸方向又は軸方向は、回転軸Jが延びている方向を表す。径方向は、回転軸Jを中心とした半径方向を表す。周方向は、回転軸Jを中心としたその周囲の方向を表す。径方向において、回転軸Jから遠い側を「径方向外側」といい、回転軸Jに近い側を「径方向内側」という。また、軸方向におけるステータ220側を「軸方向内側」といい、軸方向におけるステータ220とは反対側を「軸方向外側」という。
【0147】
駆動モータ202の制御については、前述の実施形態1と同じであって、本実施形態2でもMCU92は、磁力変更制御の際にパルス制御を実行する。
【0148】
〔ステータ〕
ステータ220は、軸方向において各ロータ210と隙間を隔てて対向する。ステータ220は、複数のコイルセット222を有する。
【0149】
複数のコイルセット222は、周方向に等間隔に配置されている。複数のコイルセット222は、ステータコアにコイルが巻き付けられてそれぞれ構成されている。ステータコアは、アモルファス軟磁性材料からなる鋼板を積層させた積層体で形成されている。コイルセット222が通電すると、複数のコイルセット222に磁束が発生する。
【0150】
前記実施形態1と同様に、複数のコイルセット222において発生する磁束には、各ロータ210を回転させるための磁束である回転磁束と、後述する第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態を変化させるための磁束である可変磁束(所定の磁束)とが含まれる。
【0151】
複数のコイルセット222に交流電流を供給することにより、複数のコイルセット222に回転磁束が発生する。この回転磁束により各ロータ210が回転する。また、各ロータ210の回転中(又は停止中)に、複数のコイルセット222に所定の電流(例えば回転磁束を発生させる交流電流よりも大きいパルス電流)を所定の時間だけ供給することにより、複数のコイルセット222に可変磁束が発生する。この可変磁束により後述する第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態が変化する。
【0152】
〔ロータ〕
次に、
図15~
図17を参照して、ロータ210について説明する。ロータ210は、ロータコア211と、複数の磁極部212と、絶縁シート213と、エンドプレート214と、外側壁部215と、内側壁部217と、ホルダー216と、を備える。なお、2つのロータ210は、軸方向に直行する平面に対して、鏡面対象な構造となっているため、以下の説明では、一方のロータ210の構成について詳細に説明し、他方のロータ210については説明を省略する。
【0153】
〔ロータコア〕
ロータコア211は、円柱状に形成される。例えば、ロータコア211は、透磁率の高い複数枚の電磁鋼板が径方向に積層された積層コアである。ロータコア11の中央部にはシャフト230が挿通するシャフト孔H230(
図17参照)が形成されている。
【0154】
〔磁極部〕
複数の磁極部212は、ロータコア211に設けられ、周方向に並ぶ。複数の磁極部212の各々は、磁力固定磁石240と、第1磁力可変磁石251と、第2磁力可変磁石252と、を有する。また、複数の磁極部212の各々は、第1空孔部271と、第2空孔部272と、第1非磁性導体273と、第2非磁性導体274と、を有する。
図15においては、各部材の配置を見やすくするために、一部の磁極部212に、磁力固定磁石240、第1磁力可変磁石251、及び第2磁力可変磁石252を示し、他の磁極部212に、第1空孔部271、第2空孔部272、第1非磁性導体273、及び第2非磁性導体274を示しているが、これらは各磁極部212に全て設けられている。
【0155】
ロータ10の周方向に相隣接する磁極部212は、互いに磁性が異なっている。具体的には、磁力固定磁石240の磁化方向が互いに逆向きになっている。
【0156】
〈磁力固定磁石〉
磁力固定磁石240は、ロータコア211に埋め込まれる。磁力固定磁石240は、軸方向と直交する方向(接線方向)に延びる。具体的には、磁力固定磁石240は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向が接線方向を向き、短手方向が軸方向を向く。磁力固定磁石240は、軸方向から見て扇型に形成されている。磁力固定磁石240の周方向の長さは、径方向内側ほど短い。磁力固定磁石240の材質は、前述の実施形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0157】
〈第1磁力可変磁石〉
第1磁力可変磁石251は、磁力固定磁石240の周方向の一端側に配置される。第1磁力可変磁石251は、周方向において磁力固定磁石240と間隔をおいて対向する。
【0158】
第1磁力可変磁石251は、ロータコア211に埋め込まれる。第1磁力可変磁石251は、軸方向に沿うように延びる。具体的には、第1磁力可変磁石251は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向が軸方向を向き、短手方向が前記接線方向を向く。
【0159】
第1磁力可変磁石251は、軸方向から見て扇型に形成されている。第1磁力可変磁石251の周方向の長さは、径方向内側ほど短い。第1磁力可変磁石251の材質は、前述の実施形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0160】
〈第2磁力可変磁石〉
第2磁力可変磁石252は、磁力固定磁石240の周方向の他端側に配置される。第2磁力可変磁石252は、周方向において磁力固定磁石240と間隔をおいて対向する。
【0161】
第2磁力可変磁石252は、ロータコア211に埋め込まれる。第2磁力可変磁石252は、軸方向に沿うように延びる。具体的には、第2磁力可変磁石252は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向が軸方向を向き、短手方向が前記接線方向を向く。
【0162】
第2磁力可変磁石252は、軸方向から見て扇型に形成されている。第2磁力可変磁石252の周方向の長さは、径方向内側ほど短い。第2磁力可変磁石252の材質は、前述の実施形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0163】
〈第1空孔部〉
第1空孔部271は、磁極部212の周方向の一端側において、磁力固定磁石240及び第1磁力可変磁石251に対して軸方向外側に隣接配置される。具体的には、第1空孔部271は、磁力固定磁石240の周方向の一端側でかつ第1磁力可変磁石251の軸方向外側の位置から周方向の他端側に向かって磁力固定磁石240の軸方向外側の位置に広がっている。
【0164】
第1空孔部271と磁力固定磁石240とは、軸方向及び周方向に離間している。第1空孔部271と第1磁力可変磁石251とは、軸方向に離間している。
【0165】
第1空孔部271は、ロータコア211を径方向に貫通する。第1空孔部271の周方向の長さは、径方向内側ほど短い。
【0166】
〈第2空孔部〉
第2空孔部272は、磁極部212の周方向の他端側において、磁力固定磁石240及び第2磁力可変磁石252に対して軸方向外側に隣接配置される。具体的には、第2空孔部272は、磁力固定磁石240の周方向の他端側でかつ第2磁力可変磁石252の軸方向外側の位置から周方向の一端側に向かって磁力固定磁石240の軸方向外側の位置に広がっている。
【0167】
第2空孔部272と磁力固定磁石240とは、軸方向及び周方向に離間している。第2空孔部272と第2磁力可変磁石252とは、軸方向に離間している。
【0168】
第2空孔部272は、ロータコア211を径方向に貫通している。第2空孔部272の周方向の長さは、径方向内側ほど短い。
【0169】
〈第1非磁性導体〉
第1空孔部271内には、第1非磁性導体273が配置されている。第1非磁性導体273の横断面形状は、L字状をなしている。第1非磁性導体273は、磁力固定磁石240よりも周方向の一端側に位置しかつ第1磁力可変磁石251に向かって周方向と直交する方向(ここでは軸方向)に延びる第1縦延び部273aを有する。第1非磁性導体273は、第1縦延び部273aの軸方向外側の端部から周方向の他端側に向かって延びる第1横延び部273bを有する。
【0170】
図15に示すように、第1非磁性導体273は、第1空孔部271に沿って径方向に延びる。第1横延び部273bは、径方向内側ほど短い。
図17に示すように、第1非磁性導体273の径方向外側の端部は、外側壁部215に固定される。第1非磁性導体273の径方向内側の端部は、内側壁部217に固定される。
【0171】
第1非磁性導体273は、第1空孔部271の内周面とは隙間を空けて配置される。
【0172】
第1非磁性導体273は、アルミや銅などの金属で構成されている。本実施形態2に置いても、前記実施形態1と同様に、第1非磁性導体273は、第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態を変化させるための磁束(所定の磁束)により、所定の磁束に反発する磁束が生じるような渦電流を発生させる。
【0173】
〈第2非磁性導体〉
第2空孔部272内には、第2非磁性導体274が配置されている。第2非磁性導体274の横断面形状は、L字状をなしている。第2非磁性導体274は、磁力固定磁石240よりも周方向の他端側に位置しかつ第2磁力可変磁石252に向かって周方向と直交する方向(ここでは軸方向)に延びる第2縦延び部274aを有する。第2非磁性導体274は、第2縦延び部274aの軸方向外側の端部から周方向の一端側に向かって延びる第2横延び部274bを有する。
【0174】
図15に示すように、第2非磁性導体274は、第2空孔部272に沿って径方向に延びる。第2横延び部274bは、径方向内側ほど短い。
図17に示すように、第2非磁性導体274の径方向外側の端部は、外側壁部215に固定される。第2非磁性導体274の径方向内側の端部は、内側壁部217に固定される。
【0175】
第2非磁性導体274は、第2空孔部272の内周面とは隙間を空けて配置される。
【0176】
第2非磁性導体274は、アルミや銅などの金属で構成されている。本実施形態2に置いても、前記実施形態1と同様に、第2非磁性導体274は、第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態を変化させるための磁束(所定の磁束)により、所定の磁束に反発する磁束が生じるような渦電流を発生させる。
【0177】
〔絶縁シート、エンドプレート〕
絶縁シート213は、ロータコア211の軸方向内側に配置される。絶縁シート213は円板状であって、中心にシャフト230が挿通される孔が設けられている。
【0178】
エンドプレート214は、ロータコア211の軸方向外側に配置される。エンドプレート214は円板状であって、中心にシャフト230が挿通される孔が設けられている。エンドプレート214は、外側壁部215及び内側壁部217に対して固定される。
【0179】
〔外側壁部、内側壁部〕
外側壁部215は、ロータコア211の径方向外側の周面に沿って配置されている。外側壁部215は、円筒状である。外側壁部215は、ロータコア211と同心に配置される。外側壁部215の内径は、ロータコア211の外径と等しいか又はロータコア211の外径よりも僅かに大きい。
【0180】
内側壁部217は、ロータコア211のシャフト孔H230に沿って配置されている。内側壁部217は、円筒状である。内側壁部217は、ロータコア211と同心に配置される。内側壁部217の外径は、シャフト孔H230と等しいか又はシャフト孔H230の径よりも僅かに小さい。内側壁部217の内径は、シャフト230の径と等しい。
【0181】
〔ホルダー〕
ホルダー216は、絶縁シート213の軸方向内側に配置される。ホルダー216は、リング216aと、複数の円弧部216bと、リング216aと複数の円弧部216bとをそれぞれ接続する連結部216cと、を有する。
【0182】
リング216aは、軸方向から見て内側壁部217と重複する位置に配置される。リング216aは、ロータコア211と同心に配置される。リング216aの外径は、内側壁部217の外径よりも小さい。リング216aの内径は、内側壁部217の内径よりも大きい。リング216aは、内側壁部217に対して固定される。
【0183】
円弧部216bは、軸方向から見て外側壁部215と重複する位置に配置される。円弧部216bは、ロータコア211と同心に配置される。円弧部216bは、周方向に等間隔に配置される。円弧部216bの外径は、外側壁部215の外径と等しい。円弧部216bの内径は、外側壁部215の内径と等しい。円弧部216bは、外側壁部215に対して固定される。
【0184】
連結部216cは、軸方向から見てロータコア211と重複する位置に配置される。連結部216cは、径方向に真っ直ぐに延びる。連結部216cの径方向外側の端部は、円弧部216bの周方向の中央に位置する。連結部216cは、ロータコア211に対して固定される。
【0185】
〔実施形態2の効果〕
以上のように、実施形態2では、駆動モータ202はアキシャルギャップ型のモータである。駆動モータ202が作動するときには、ロータ210に遠心力がかかる。ロータ210に遠心力がかかると、ロータコア211が径方向外側に移動しようとして、外側壁部215を径方向外側に押圧する。ロータコア211が外側壁部215を径方向外側に押圧すると、外側壁部215が変形する。このとき、外側壁部215とエンドプレート214との接続部分、外側壁部215とホルダー216との接続部分、内側壁部217とエンドプレート214との接続部分、及び内側壁部217とホルダー216との接続部分にそれぞれ比較的大きな応力が入力されてしまう。
【0186】
本実施形態2では、第1非磁性導体273及び第2非磁性導体274は、外側壁部215及び内側壁部217のそれぞれに固定されている。つまり、第1非磁性導体273及び第2非磁性導体274は、外側壁部215と内側壁部217とを一体的に接続している。これにより、ロータコア211が外側壁部215を径方向外側に押圧したとしても、外側壁部215の変形が抑制されるため、各接続部分にかかる応力が軽減される。この結果、ロータ210の強度を向上させることができる。
【0187】
また、実施形態2のロータ構造を有するロータ210では、第1非磁性導体273及び第2非磁性導体274が設けられる。第1非磁性導体273及び第2非磁性導体274は、第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態を変化させるような所定の磁束により、該所定の磁束に反発する磁束が生じるような渦電流を発生させる。これにより、第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態を効率良く変化させることができる。
【0188】
また、本実施形態2のロータ210では、第1非磁性導体273は、磁力固定磁石240よりも周方向の一端側に位置しかつ第1磁力可変磁石251に向かって周方向と直交する方向に延びる第1縦延び部273aを有し、第2非磁性導体274は、磁力固定磁石240よりも周方向の他端側に位置しかつ第2磁力可変磁石252に向かって周方向と直交する方向に延びる第2縦延び部274aを有する。これにより、第1空孔部271及び第2空孔部272への磁束の侵入を効果的に抑制できるため、第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態を効率良く変化させることができる。
【0189】
また、本実施形態2のロータ210では、第1非磁性導体273と第1空孔部271の内周面との間及び第2非磁性導体274と第2空孔部272の内周面との間にはそれぞれ隙間が設けられる。これにより、第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態を変化させるとき以外では、第1非磁性導体273及び第2非磁性導体274に磁束が作用しにくくなって、第1非磁性導体273及び第2非磁性導体274に渦電流が発生にくくなる。この結果、駆動モータ2の効率が悪化するのを抑制することができる。
【0190】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0191】
実施形態1及び2では、自動車1は、エンジン3を有するハイブリッド車であった。これに限らず、自動車1は、駆動源として駆動モータ2,202のみを有する電気自動車であってもよい。
【0192】
実施形態1及び2では、第1非磁性導体73,273)は、第1縦延び部73a,273aと第1横延び部73b,273bとを有しており、第2非磁性導体74,274は、第2縦延び部74a,274aと第2横延び部74b,274bとを有していた。これに限らず、第1横延び部73b,273b及び第2横延び部74b,274bは、省略してもよい。
【0193】
実施形態1及び2では、第1磁力可変磁石51,251と第2磁力可変磁石52,252とに対応して、孔部が2つ(第1収容孔H71、第2収容孔H72、第1空孔部271、第2空孔部272)設けられていた。これに限らず、周方向に隣接する第1磁力可変磁石51,251及び第2磁力可変磁石52,252に対して、孔部が1つであってもよい。この場合、つまり、周方向に隣接する磁力固定磁石40,240の間に1つの孔部が設けられる構成であってもよい。この場合、非磁性導体は、孔部の数に対応する数だけ設けられていればよい。
【0194】
実施形態1及び2では、各磁極部12,212に、第1磁力可変磁石51,251と第2磁力可変磁石52,252との2つの磁力可変磁石が設けられていた。これに限らず、周方向に隣接する磁極部12,212で共通する1つの磁力可変磁石が設けられていてもよい。つまり、周方向に隣接する磁力固定磁石40,240の間に1つの磁力可変磁石が設けられる構成であってもよい。この場合、孔部は、周方向に隣接する磁力固定磁石40,240の間の領域に1つ設けられていればよく、非磁性導体は、孔部の数に対応する数だけ設けられていればよい。
【0195】
実施形態1では、第1収容孔H71に第1非磁性部材71が配置され、第2収容孔H72に第2非磁性部材72が配置されていた。これに限らず、第1非磁性部材71及び第2非磁性部材72は、省略してもよい。
【0196】
実施形態1では、第1収容孔H71に第1非磁性部材71と第1非磁性導体73が配置され、第2収容孔H72に第2非磁性部材72と第2非磁性導体74が配置されていた。これに限らず、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74を省略して、第1非磁性部材71及び第2非磁性部材72を、非磁性導体で構成するようにしてもよい。この場合は、第1非磁性部材71が第1非磁性導体に相当し、第2非磁性部材72が第2非磁性導体74に相当する。
【0197】
実施形態1では、第1空隙部71a内に第1非磁性導体73を配置し、第2空隙部72a内に第2非磁性導体74を配置していた。これに限らず、第1空隙部71a及び第2空隙部72aを省略して、第1非磁性導体73を樹脂製の第1非磁性部材71でモールドし、第2非磁性導体74を樹脂製の第2非磁性部材72でモールドするように構成してもよい。この場合、第1非磁性導体73及び第2非磁性導体74をエンドプレート14に固定する必要はない。
【0198】
実施形態2では、1つステータ220が2つのロータ210に軸方向から挟まれた構成であった。これに限らず、1つのロータを2つのステータで軸方向から挟む構成としてもよい。このときには、ロータの各磁極部は、実施形態2のロータ210の磁極部212が、軸方向に直交する平面に対して鏡面対象となるように2つ配置されたような構成とすることができる。
【0199】
実施形態2では、実施形態1のような第1非磁性部材及び第2非磁性部材が設けられていなかった。これに限らず、実施形態2においても、第1空孔部271内に第1非磁性部材を配置して、第2空孔部272内に第2非磁性部材を配置してもよい。この場合、第1非磁性部材と第1非磁性導体273との間、及び第2非磁性部材と第2非磁性導体274との間には隙間を形成するのが好ましい。
【0200】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0201】
ここに開示された技術は、回転電機のロータ構造及び回転電機の制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0202】
10 ロータ
11 ロータコア
12 磁極部
14 エンドプレート
20 ステータ
21 ステータコア
40 磁力固定磁石
51 第1磁力可変磁石
52 第2磁力可変磁石
71a 第1空隙部
72a 第2空隙部
73 第1非磁性導体
73a 第1縦延び部
74 第2非磁性導体
74a 第2縦延び部
210 ロータ
211 ロータコア
212 磁極部
214 エンドプレート
220 ステータ
240 磁力固定磁石
251 第1磁力可変磁石
252 第2磁力可変磁石
271 第1空孔部(第1孔部)
272 第2空孔部(第2孔部)
273 第1非磁性導体
273a 第1縦延び部
274 第2非磁性導体
274a 第2縦延び部
H71 第1収容孔(第1孔部)
H72 第2収容孔(第2孔部)