(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099505
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】回転電機のロータ構造
(51)【国際特許分類】
H02K 1/32 20060101AFI20250626BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
H02K1/32 Z
H02K9/19 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216204
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 真
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601BB20
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD12
5H601DD30
5H601EE26
5H601GA22
5H601GA24
5H601GA32
5H601GE02
5H601GE10
5H601GE11
5H601GE15
5H609BB03
5H609BB16
5H609BB19
5H609PP07
5H609QQ05
5H609QQ11
5H609RR27
5H609RR37
5H609RR41
5H609RR46
(57)【要約】
【課題】回転電機を介して発生する騒音を抑制する。
【解決手段】ロータ10は、ロータコア11を軸方向又は径方向に貫通し、周方向に並んで配置された複数の補強ロッド73を備える。ロータコア11は、周方向に間隔を空けて設けられた第1空孔部71及び第2空孔部72を有し、補強ロッド73は、第1空孔部71及び第2空孔部72を、該第1空孔部71及び第2空孔部72の内周面との間に隙間を空けて貫通するようにそれぞれ配置され、補強ロッド73は、補強ロッド73内を該補強ロッド73の軸方向に貫通しかつ空気が通る第1エア通路81と、第1エア通路81と第1空孔部71及び第2空孔部72とを連通させる複数の連通孔85と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアを有しかつシャフトに固定されたロータと、該ロータコアと空隙を空けて配置されたステータコアを有するステータとを備えた回転電機のロータ構造であって、
前記ロータコアを軸方向又は径方向に貫通し、周方向に並んで配置された複数のロッドを備え、
前記ロータコアは、前記周方向に間隔を空けて設けられた複数の空孔部を有し、
前記ロッドは、前記空孔部を、該空孔部の内周面との間に隙間を空けて貫通するようにそれぞれ配置され、
更に前記ロッドは、
前記ロッド内を該ロッドの軸方向に貫通しかつ空気が通る第1エア通路と、
前記第1エア通路と前記空孔部とを連通させる複数の連通孔と、
を有することを特徴とする、回転電機のロータ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のロータ構造において、
前記回転電機は、前記ロータと前記ステータとが前記径方向に隙間を空けて配置されたラジアルギャップモータであり、
前記ロッドは、前記ロータコアを前記軸方向に貫通し、
前記第1エア通路は、前記ロータの前記軸方向の一端側と他端側とを連通させるように前記ロッドを貫通することを特徴とする、回転電機のロータ構造。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機のロータ構造において、
前記空孔部は、前記軸方向で該空孔部を仕切る仕切り壁を有し、
前記ロッドは、前記仕切り壁を貫通して配置され、
前記連通孔は、前記ロッドにおける前記仕切り壁で仕切られた各空間に位置する部分のそれぞれに形成されており、
前記仕切り壁により仕切られた各空間は、互いに容積が異なることを特徴とする、回転電機のロータ構造。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機のロータ構造において
前記回転電機は、前記ロータと前記ステータとが前記軸方向に隙間を空けて配置されたアキシャルギャップモータであり、
前記シャフトは、該シャフト内を軸方向に延びる第2エア通路を有し、
前記ロッドは、前記ロータコアを前記径方向に貫通し、
前記第1エア通路は、前記第2エア通路と前記ロータの外部と連通させるように前記ロッドを貫通することを特徴とする、回転電機のロータ構造。
【請求項5】
請求項4に記載の回転電機のロータ構造において、
前記ロッドは複数種類あり、
一の種類の前記ロッドに形成された前記連通孔の径は、他の種類の前記ロッドに形成された前記連通孔の径と異なることを特徴とする、回転電機のロータ構造。
【請求項6】
請求項4に記載の回転電機のロータ構造において、
前記空孔部は、前記径方向で該空孔部を仕切る仕切り壁を有し、
前記ロッドは、前記仕切り壁を貫通して配置され、
前記連通孔は、前記ロッドにおける前記仕切り壁で仕切られた各空間に位置する部分のそれぞれに形成されており、
前記仕切り壁により仕切られた各空間は、互いに容積が異なることを特徴とする、回転電機のロータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、回転電機のロータ構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロータを補強するために、ロータコアを貫通する複数のロッドを設ける構造が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、回転子鉄心(ロータコア)と、回転子鉄心の中心軸の軸線方向に回転子鉄心を貫通する導体バー(ロッド)と、回転子鉄心の端部に設けられ、端部から突き出る導体バーに接続された環状のエンドリングと、回転子鉄心及びエンドリングの間に設けられ、エンドリングに接する環状の第1の補強部材とを備え、前記第1の補強部材には、前記端部から突き出る前記導体バーが挿入される挿入孔が形成されている、ロータ構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転電機とエンジンとを両方有するハイブリッド自動車では、エンジンで発生した振動が回転電機に伝達されて、回転電機から車外に抜けることで騒音を発生させるおそれがある。エンジンを有さず、回転電機のみを有する電気自動車であったとしても、変速機で発生する振動が回転電機を介して車外に抜けて、騒音を発生させるおそれがある。
【0006】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回転電機を介して発生する騒音を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様は、ロータコアを有しかつシャフトに固定されたロータと、該ロータコアと空隙を空けて配置されたステータコアを有するステータとを備えた回転電機のロータ構造を対象として、前記ロータコアを軸方向又は径方向に貫通し、周方向に並んで配置された複数のロッドを備え、前記ロータコアは、前記周方向に間隔を空けて設けられた複数の空孔部を有し、前記ロッドは、前記空孔部を、該空孔部の内周面との間に隙間を空けて貫通するようにそれぞれ配置され、更に前記ロッドは、前記ロッド内を該ロッドの軸方向に貫通しかつ空気が通る第1エア通路と、前記エア通路と前記空孔部とを連通させる複数の連通孔と、を有する。
【0008】
第1の態様では、第1エア通路と、連通孔と、空孔部とによりヘルムホルツ共鳴器が構成される。ヘルムホルツ共鳴器により、回転電機に入力された振動のうち、ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数に応じた周波数の振動を、吸収することができる。これにより、回転電機を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0009】
ここに開示された技術の第2の態様は、第1の態様において、前記回転電機は、前記ロータと前記ステータとが前記径方向に隙間を空けて配置されたラジアルギャップモータであり、前記ロッドは、前記ロータコアを前記軸方向に貫通し、前記第1エア通路は、前記ロータの前記軸方向の一端側と他端側とを連通させるように前記ロッドを貫通する。
【0010】
第2の態様では、簡単な構成でヘルムホルツ共鳴器を形成することができ、回転電機を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0011】
ここに開示された技術の第3の態様は、第2の態様において、前記空孔部は、前記軸方向で該空孔部を仕切る仕切り壁を有し、前記ロッドは、前記仕切り壁を貫通して配置され、前記連通孔は、前記ロッドにおける前記仕切り壁で仕切られた各空間に位置する部分のそれぞれに形成されており、前記仕切り壁により仕切られた各空間は、互いに容積が異なる。
【0012】
第3の態様では、空孔部が、容積の異なる複数の空間に分けられるため、複数の周波数に対応したヘルムホルツ共鳴器を形成することができる。これにより、回転電機を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0013】
ここに開示された技術の第4の態様は、第1の態様において、前記回転電機は、前記ロータと前記ステータとが前記軸方向に隙間を空けて配置されたアキシャルギャップモータであり、前記シャフトは、該シャフト内を軸方向に延びる第2エア通路を有し、前記ロッドは、前記ロータコアを前記径方向に貫通し、前記第1エア通路は、前記第2エア通路と前記ロータの外部と連通させるように前記ロッドを貫通する。
【0014】
振動はシャフトを介して回転電機に入力されやすい。第4の態様では、シャフト内に第2エア通路を形成して第1エア通路と連通させることで、ロッドに振動が伝達されやすくなり、吸音効率を向上させることができる。これにより、回転電機を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0015】
ここに開示された技術の第5の態様は、第4の態様において、前記ロッドは複数種類あり、一の種類の前記ロッドに形成された前記連通孔の径は、他の種類の前記ロッドに形成された前記連通孔の径と異なる。
【0016】
第5の態様では、連通孔の径が異なることで、複数の周波数に対応したヘルムホルツ共鳴器を形成することができる。これにより、回転電機を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0017】
ここに開示された技術の第6の態様は、第4の態様において、前記空孔部は、前記径方向で該空孔部を仕切る仕切り壁を有し、前記ロッドは、前記仕切り壁を貫通して配置され、前記連通孔は、前記ロッドにおける前記仕切り壁で仕切られた各空間に位置する部分のそれぞれに形成されており、前記仕切り壁により仕切られた各空間は、互いに容積が異なる。
【0018】
第6の態様では、空孔部が、容積の異なる複数の空間に分けられるため、複数の周波数に対応したヘルムホルツ共鳴器を形成することができる。これにより、回転電機を介して発生する騒音を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、第1エア通路と、連通孔と、空孔部とによりヘルムホルツ共鳴器を構成することで、ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数に応じた周波数の振動を、吸収することができ、回転電機を介して発生する騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るロータ構造を有する駆動モータを備えた自動車の概略図である。
【
図2】
図2は、軸方向に直交する平面で切断した駆動モータの断面図である。
【
図3】
図3は、駆動モータの磁極部を拡大した拡大断面図である。
【
図4】
図4は、ロータを、第1空孔部及び第2空孔部を通る面で切断した断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係るロータ構造を有する駆動モータの概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る駆動モータのロータを軸方向のステータ側から見た図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線相当の平面で切断した断面図である。
【
図9】
図9は、
図7のIX-IX線相当の平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
〈車両の構成〉
図1に、本実施形態1に係るロータ構造を有する駆動モータ2を備えた自動車1を概略的に示す。ここで例示する自動車は、ハイブリッド車である。自動車の駆動源としては、開示する技術を適用した駆動モータ2(磁力可変モータ)とともにエンジン3が搭載されている。これらが協働して、4つの車輪4F,4F,4R,4Rのうち、左右対称状に位置する2輪(駆動輪4R)を回転駆動する。それにより、自動車1は移動(走行)する。この自動車1は、電力を利用した走行が可能なハイブリッド車である。なお、自動車1は、駆動モータ2のみを搭載した電気自動車であってもよい。自動車1はまた、4輪駆動であってもよい。
【0023】
この自動車1の場合、エンジン3は車体の前側に配置されており、駆動輪4Rは車体の後側に配置されている。すなわち、この自動車1は、いわゆるFR車である。この自動車1の場合、駆動源としては、駆動モータ2よりもエンジン3が主体となっており、駆動モータ2は、エンジン3の駆動をアシストする形で利用される(いわゆるマイルドハイブリッド)。駆動モータ2はまた、駆動源としてだけでなく、回生時には発電機としても利用される。
【0024】
エンジン3は、例えばガソリンを燃料にして燃焼を行う内燃機関である。エンジン3は、軽油を燃料とするディーゼル機関であってもよい。駆動モータ2は、第1クラッチ5を介してエンジン3の後方に連結されている。駆動モータ2は、三相の交流によって駆動する永久磁石同期モータである。
【0025】
この駆動モータ2は上述したように磁力可変モータである。そのロータには、後述する磁力固定磁石40及び磁力可変磁石51,52が設けられていて、磁力の変更が可能に構成されている。モータ性能を向上するために、そのロータの構造は工夫が施されている。駆動モータ2の詳細については後述する。
【0026】
駆動モータ2は、インバータ6を介してバッテリ7と接続されている。バッテリ7は、複数のリチウムイオン電池で構成されている。バッテリ7の定格電圧は50V以下(具体的には48V)である。バッテリ7は、インバータ6に直流電力を供給する。インバータ6は、その直流電力を位相が異なる3相の交流電流に変換して駆動モータ2に供給する。それにより、駆動モータ2は回転する。
【0027】
駆動モータ2の後方には、第2クラッチ8を介して変速機9が連結されている。変速機9は、多段式自動変速機(いわゆるAT)である。エンジン3及び/又は駆動モータ2によって出力される回転動力は、第2クラッチ8を通じて変速機9に出力される。変速機9はプロペラシャフトを介してデファレンシャルギアに連結されている。
【0028】
デファレンシャルギアは、一対の駆動シャフトを介して左右の駆動輪4Rに連結されている。自動車1の走行時(力行時)には、変速機9で変速された回転動力が、デファレンシャルギアで振り分けられて各駆動輪4Rに伝達される。
【0029】
自動車1の減速時(回生時)には、駆動モータ2を用いて消費されるエネルギーの回収が行われる。具体的には、自動車1が制動する時に、第2クラッチ8は連結したままで第1クラッチ5を解放する。そうすることにより、駆動輪の回転動力で駆動モータ2を回転させて発電する。その電力をバッテリ7に充電してエネルギーを回収する。
【0030】
〈駆動モータの構成〉
図2は、駆動モータ2の横断面を示す。
図3に示すように、駆動モータ2は、後述する磁極部12を6個有する6極のモータである。駆動モータ2は、ロータ10と、ステータ20と、シャフト30とを備える。駆動モータ2は、ラジアルギャップモータであり、ロータ10とステータ20とは径方向に隙間を空けて配置されている。なお、駆動モータ2の極数は特に限定されず、7極以上であってもよい。
【0031】
以下の説明では、回転軸方向又は軸方向は、回転軸Qが延びている方向を表す。径方向は、回転軸Qを中心とした半径方向を表す。周方向は、回転軸Qを中心としたその周囲の方向を表す。径方向において、回転軸Qから遠い側を「径方向外側」といい、回転軸Qに近い側を「径方向内側」という。
【0032】
〔ステータ〕
ステータ20は、径方向においてロータ10と隙間を隔てて対向する。ステータ20は、ステータコア21と、複数のコイル22とを有する。
【0033】
ステータコア21は、円環状に形成されたバックヨーク21aと、バックヨーク21aから径方向内側に放射状に突出する複数(9個)のティース21bとを有する。例えば、ステータコア21は、透磁率の高い複数の電磁鋼板を回転軸方向に積層して構成された積層コアである。
【0034】
複数のコイル22は、複数のティース21bに巻回される。複数のコイル22が通電すると、複数のコイル22に磁束が発生する。例えば、複数のコイル22は、流れる電流の位相が異なるU相、V相、及びW相からなる三相のコイル群を構成している。各相のコイル22は、周方向に順番に配置されている。
【0035】
この例では、複数のコイル22において発生する磁束には、ロータ10を回転させるための磁束である回転磁束と、後述する第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させるための磁束である可変磁束(所定の磁束)とが含まれる。
【0036】
例えば、複数のコイル22に交流電流を供給することにより、複数のコイル22に回転磁束が発生する。この回転磁束によりロータ10が回転する。また、ロータ10の回転中(又は停止中)に、複数のコイル22に所定の電流(例えば回転磁束を発生させる交流電流よりも大きいパルス電流)を所定の時間だけ供給することにより、複数のコイル22に可変磁束が発生する。この可変磁束により後述する第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態が変化する。
【0037】
〔ロータ〕
次に、
図2及び
図3を参照して、ロータ10について説明する。ロータ10は、ロータコア11と、複数の磁極部12とを備える。
【0038】
〔ロータコア〕
ロータコア11は、円柱状に形成される。例えば、ロータコア11は、透磁率の高い複数枚の電磁鋼板が軸方向に積層された積層コアである。ロータコア11の中央部には、軸孔が設けられる。軸孔には、シャフト30が挿入されて固定される。
【0039】
〔磁極部〕
複数の磁極部12は、ロータコア11に設けられ、周方向に並ぶ。複数の磁極部12の各々は、磁力固定磁石40と、第1磁力可変磁石51と、第2磁力可変磁石52と、第1補助磁石61と、第2補助磁石62と、を有する。
【0040】
ロータ10の周方向に相隣接する磁極部12は、互いに磁性が異なっている。具体的には、磁力固定磁石40、第1補助磁石61、及び第2補助磁石62の磁化方向が互いに逆向きになっている。
【0041】
〈磁力固定磁石〉
磁力固定磁石40は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、磁力固定磁石40は、ロータコア11に設けられた磁力固定磁石孔H40に収容される。また、磁力固定磁石40は、径方向と直交する方向(接線方向)に延びる。具体的には、磁力固定磁石40は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向が接線方向を向く。
【0042】
磁力固定磁石40には、ネオジム磁石などの、磁束密度が高く、保磁力も大きい磁石が用いられる。磁力固定磁石40は、所定の磁束、例えばバッテリ7及びインバータ6が出力可能な大電流(例えば750Arms)で発生する磁束が印加されても磁化状態が実質的に変化しない。磁力固定磁石40の保磁力は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の保磁力よりも高い。これら磁力固定磁石40は、それぞれ異なる磁性体であってもよいが、このロータ10では、同じ磁性体が用いられている。
【0043】
〈磁力可変磁石〉
複数の磁極部12にそれぞれ含まれる第1磁力可変磁石51は、磁極部12の周方向の一端側に隣接(
図2及び
図3では時計回り方向の隣り)する他の磁極部12に含まれる第2磁力可変磁石52とq軸を挟んで隣り合う。q軸は、周方向に隣り合う2つの磁極部12の間を通過して径方向に延びる仮想線である。
【0044】
また、複数の磁極部12のそれぞれにおいて、第1磁力可変磁石51と第2磁力可変磁石52とはd軸に対して対称に配置される。d軸は、磁力固定磁石40の周方向における中央を通過して径方向に延びる仮想線である。
【0045】
〈第1磁力可変磁石〉
第1磁力可変磁石51は、磁力固定磁石40の周方向の一端側に配置される。第1磁力可変磁石51は、周方向において磁力固定磁石40と間隔をおいて対向する。第1磁力可変磁石51とq軸との間の周方向長さは、第1磁力可変磁石51と磁力固定磁石40との間の周方向長さよりも短い。
【0046】
第1磁力可変磁石51は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第1磁力可変磁石51は、ロータコア11に設けられた第1磁力可変磁石孔H51に収容される。また、第1磁力可変磁石51は、q軸(周方向において隣り合うq軸)に沿うように延びる。具体的には、第1磁力可変磁石51は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向がq軸と平行な方向を向く。
【0047】
〈第2磁力可変磁石〉
第2磁力可変磁石52は、磁力固定磁石40の周方向の他端側に配置される。第2磁力可変磁石52は、周方向において磁力固定磁石40と間隔をおいて対向する。第2磁力可変磁石52とq軸との間の周方向長さは、第2磁力可変磁石52と磁力固定磁石40との間の周方向長さよりも短い。
【0048】
第2磁力可変磁石52は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第2磁力可変磁石52は、ロータコア11に設けられた第2磁力可変磁石孔H52に収容される。また、第2磁力可変磁石52は、q軸(周方向において隣り合うq軸)に沿うように延びる。具体的には、第2磁力可変磁石52は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向がq軸と平行な方向を向く。
【0049】
〈磁力可変磁石の磁気特性〉
第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52には、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などの、磁束密度は高いが、保磁力は小さい磁石が用いられる。第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の各々は、所定の磁束、例えばバッテリ7及びインバータ6が出力可能な大電流(例えば750Arms)で発生する磁束により、その磁力を変化させることができる。第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52は、駆動モータ2を普通に駆動する時の電流の大きさでは、ほとんど着磁しない。このときには、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52も永久磁石として機能する。
【0050】
この例では、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の各々の磁化容易方向は、周方向、より詳しくは、径方向と直交する方向(接線方向)を向く。第1磁力可変磁石51の磁化困難方向は、第1磁力可変磁石51の磁化容易方向と直交する方向(この例では径方向)を向く。第2磁力可変磁石52の磁化困難方向は、第2磁力可変磁石52の磁化容易方向と直交する方向(この例では径方向)を向く。
【0051】
また、この例では、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の各々は、磁化方向が第1方向を向く状態と、磁化方向が第2方向を向く状態と、磁力が実質的にゼロとなるゼロ状態とに切り換え可能である。第1方向は、ティース21bと鎖交する磁束(有効磁束)を増加させる方向である。第2方向は、ティース21bと鎖交する磁束(有効磁束)を減少させる方向である。例えば、磁力固定磁石40の磁化方向が径方向外方へ向かう方向である場合、第1方向は、第1磁力可変磁石51(又は第2磁力可変磁石52)から磁力固定磁石40へ向かう方向となり、第2方向は、磁力固定磁石40から第1磁力可変磁石51(又は第2磁力可変磁石52)へ向かう方向となる。
【0052】
〈補助磁石〉
複数の磁極部12の各々において、第1補助磁石61と第2補助磁石62は、d軸に対して対称に配置される。
【0053】
〈第1補助磁石〉
第1補助磁石61は、磁力固定磁石40と第1磁力可変磁石51との間に配置される。第1補助磁石61と磁力固定磁石40との間の周方向長さは、第1補助磁石61と第1磁力可変磁石51との間の周方向長さよりも短い。
【0054】
第1補助磁石61は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第1補助磁石61は、ロータコア11に設けられた第1補助磁石孔H61に収容される。また、第1補助磁石61は、磁力固定磁石40の周方向の一端部に沿うように延びる。具体的には、第1補助磁石61は、横断面形状が矩形状に形成され、短手方向が磁力固定磁石40の長手方向を向く。
【0055】
第1補助磁石61は、磁力固定磁石40の径方向外端と第1磁力可変磁石51との間における磁束の流れを阻害する方向に着磁される。具体的には、磁力固定磁石40の磁化方向が径方向外方へ向かう方向である場合、第1補助磁石61の磁化方向は、第1磁力可変磁石51から磁力固定磁石40へ向かう方向となる。磁力固定磁石40の磁化方向が径方向内方へ向かう方向である場合、第1補助磁石61の磁化方向は、磁力固定磁石40から第1磁力可変磁石51へ向かう方向となる。
【0056】
〈第2補助磁石〉
第2補助磁石62は、磁力固定磁石40と第2磁力可変磁石52との間に配置される。第2補助磁石62と磁力固定磁石40との間の周方向長さは、第2補助磁石62と第2磁力可変磁石52との間の周方向長さよりも短い。
【0057】
第2補助磁石62は、ロータコア11に埋め込まれる。この例では、第2補助磁石62は、ロータコア11に設けられた第2補助磁石孔H62 に収容される。また、第2補助磁石62は、磁力固定磁石40の周方向の他端部に沿うように延びる。具体的には、第2補助磁石62は、横断面形状が矩形状に形成され、短手方向が磁力固定磁石40の長手方向を向く。
【0058】
第2補助磁石62は、磁力固定磁石40の径方向外端と第2磁力可変磁石52との間における磁束の流れを阻害する方向に着磁される。具体的には、磁力固定磁石40の磁化方向が径方向外方へ向かう方向である場合、第2補助磁石62の磁化方向は、第2磁力可変磁石52から磁力固定磁石40へ向かう方向となる。磁力固定磁石40の磁化方向が径方向内方へ向かう方向である場合、第2補助磁石62の磁化方向は、磁力固定磁石40から第2磁力可変磁石52へ向かう方向となる。
【0059】
〈空孔部〉
複数の磁極部12の各々に含まれる第1空孔部71は、磁極部12の周方向の一端側(
図3及び
図4の例では時計回りの方向の隣り)に位置する他の磁極部12に含まれる第2空孔部72と、q軸を挟んで隣り合う。
【0060】
複数の磁極部12の各々において、第1空孔部71と第2空孔部72とは、d軸に対して対称に配置される。第1空孔部71及び第2空孔部72は、ステータ20からの磁束が、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52よりも径方向内側に侵入するのを抑制して、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に磁束を流入しやすくするものである。
【0061】
〈第1空孔部〉
第1空孔部71は、磁極部12の周方向の一端側において、磁力固定磁石40、第1磁力可変磁石51、及び第1補助磁石61の径方向内側の位置に配置される。第1空孔部71は、磁力固定磁石40及び第1補助磁石61の径方向内端とは離間している。
【0062】
第1空孔部71は、ロータコア11を軸方向に貫通する。また、第1空孔部71は、q軸(周方向において隣り合うq軸)に沿うように延びる。具体的には、第1空孔部71の横断面形状は、台形状に形成される。第1空孔部71の一方の斜辺は、q軸と平行な方向を向き、第1空孔部71の他方の斜辺は、d軸と平行な方向を向く。
【0063】
図4に示すように、第1空孔部71には、第1空孔部71を、2つの空間に区分けする第1仕切り壁71aが形成されている。第1仕切り壁71aは、第1空間部71の軸方向の中央に対して軸方向の一方側にずれた位置に配置されている。第1仕切り壁71aにより仕切られた各空間は、互いに容積が異なる。具体的には、第1仕切り壁71aは、第1空孔部71を、相対的に容積が大きい大空間71bと、相対的に容積が小さい小空間71cとに仕切る。なお、第1仕切り壁71aは、第1空孔部71内に複数設けられていてもよい。この場合、複数の第1仕切り壁71aは、仕切られて形成された複数の空間の容積が、互いに異なるように第1空孔部71を仕切る。
【0064】
〈第2空孔部〉
第2空孔部72は、磁極部12の周方向の他端側において、磁力固定磁石40、第2磁力可変磁石52、及び第2補助磁石62の径方向内側の位置に配置される。第2空孔部72は、磁力固定磁石40及び第2補助磁石62の径方向内端とは離間している。
【0065】
第2空孔部72は、ロータコア11を軸方向に貫通する。また、第2空孔部72は、q軸(周方向において隣り合うq軸)に沿うように延びる。具体的には、第2空孔部72の横断面形状は、台形状に形成される。第2空孔部72の一方の斜辺は、q軸と平行な方向を向き、第2空孔部72の他方の斜辺は、d軸と平行な方向を向く。
【0066】
図4に示すように、第2空孔部72には、第2空孔部72を、2つの空間に区分けする第2仕切り壁72aが形成されている。第2仕切り壁72aは、第2空間部72の軸方向の中央に対して軸方向の一方側にずれた位置に配置されている。第2仕切り壁72aにより仕切られた各空間は、互いに容積が異なる。具体的には、第2仕切り壁72aは、第2空孔部72を、相対的に容積が大きい大空間72bと、相対的に容積が小さい小空間72cとに仕切る。なお、第2仕切り壁72aは、第2空孔部72内に複数設けられていてもよい。この場合、複数の第2仕切り壁72aは、仕切られて形成された複数の空間の容積が、互いに異なるように第2空孔部72を仕切る。
【0067】
〔エンドプレート、絶縁シート〕
図5に示すように、ロータコア11の軸方向の一端側には、第1エンドプレート13が配置されている。ロータコア11の軸方向の他端側には、第2エンドプレート14が配置されている。第1エンドプレート13及び第2エンドプレート14の外径は、ロータコア11の外径と等しい。第1エンドプレート13及び第2エンドプレート14の中心には、シャフト30が挿通している。
【0068】
第1エンドプレート13とロータコア11との間には、第1絶縁シート15が配置されている。第2エンドプレート14とロータコア11との間には、第2絶縁シート16が配置されている。第1絶縁シート15及び第2絶縁シート16の外径はロータコア11の外径と等しい。第1絶縁シート15及び第2絶縁シート16の中心には、シャフト30が挿通している。
【0069】
〔補強ロッド〕
周方向における第1空孔部71及び第2空孔部72の位置には、補強ロッド73がそれぞれ配置されている。補強ロッド73は、ロータ10の強度を向上させるための部材である。ロータコア11を軸方向に貫通する。補強ロッド73は、周方向に並んで配置される。
【0070】
図5に示すように、補強ロッド73は、ヘッド部73aと、軸部73bと、ねじ部73cとを含む。ヘッド部73aは、軸部73bの一端側に配置され、ねじ部73cは、軸部73bの他端側に形成されている。ヘッド部73a、軸部73b、及びねじ部73cは、同心である。ヘッド部73aは、軸部73bよりも大径である。
【0071】
図4に示すように、補強ロッド73は、第1空孔部71及び第2空孔部72を、第1空孔部71の内周面及び第2空孔部72の内周面との間に隙間を空けて貫通するようにそれぞれ配置されている。具体的には、第1空孔部71の位置において、補強ロッド73は、第1エンドプレート13と第1絶縁シート15とを貫通して、第1空孔部71に侵入する。補強ロッド73は、第1空孔部71内を通った後、第2絶縁シート16を貫通する。補強ロッド73のねじ部73cは、第2エンドプレート14に螺合により接続される。一方で、補強ロッド73のヘッド部73aは、第1エンドプレート13を貫通せずに、第1エンドプレート13の軸方向の前記一端側に位置する。ヘッド部73aは、第1エンドプレート13に設けられた凹部13aに収容される。これにより、補強ロッド73は、第1エンドプレート13及び第2エンドプレート14に接続されて固定される。補強ロッド73が第1エンドプレート13及び第2エンドプレート14に固定された状態で、ヘッド部73aは、第1エンドプレート13と面一である。
図4に示すように、第2空孔部72の位置に配置された補強ロッド73も同様の構成である。
【0072】
補強ロッド73は、アルミや銅などの非磁性導体で構成されている。補強ロッド73は、第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52の磁化状態を変化させるための磁束が入力されたときに、該磁束に反発する反発磁束が生じるような渦電流を発生させる。反発磁束により、前記磁束が第1空孔部71及び第2空孔部72により侵入しにくくなるため、前記磁束を第1磁力可変磁石51及び第2磁力可変磁石52に向かって流れやすくすることができる。
【0073】
〔エア通路〕
各補強ロッド73は、空気が通るエア通路81を有する。エア通路81は、補強ロッド73内を、補強ロッド73の軸方向である第1特定方向に貫通する。つまり、エア通路81は、ヘッド部73a、軸部73b、及びねじ部73cを、第1特定方向に沿って貫通する。エア通路81は、ロータ10の、軸方向の一端側と他端側とを連通させる。第1特定方向は、シャフト30の軸方向と平行である。
【0074】
軸部73bは、エア通路81と第1空孔部71及び第2空孔部72とを連通させる複数(
図4及び
図5では6つ)の連通孔85が設けられている。連通孔85は、前記第1特定方向に並んで配置されるとともに、前記第1特定方向と直交する第2特定方向に対向して配置されている。連通孔85は、補強ロッド73における、大空間71b、72bに位置する部分及び小空間71c、72cに位置する部分のそれぞれに形成されている。連通孔85は、補強ロッド73における、第1仕切り壁71a及び第2仕切り壁72aに位置する部分には形成されていない。
【0075】
ここで、自動車1のようなハイブリッド車では、エンジン3で発生した振動が駆動モータ2に伝達されて、駆動モータ2から車外に抜けることで騒音を発生させるおそれがある。また、変速機9のギヤが変化する際の振動が駆動モータ2を介して車外に抜けて、騒音を発生させるおそれがある。
【0076】
これに対して、本実施形態1に係るロータ10では、エア通路81と、連通孔85と、第1空孔部71及び第2空孔部72とによりヘルムホルツ共鳴器が構成される。ヘルムホルツ共鳴器により、駆動モータ2に入力された振動のうち、ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数に応じた周波数の振動を、吸収することができる。これにより、駆動モータ2を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0077】
なお、共鳴周波数は、以下の式により表される
【0078】
【0079】
vは音速であり、Vは大空間71b,72b又は小空間71c、72cの容積であり、Lは連通孔85の長さであり、Sは連通孔85の開口面積である。
【0080】
〔実施形態1の効果〕
以上のように、実施形態1のロータ構造を有するロータ10では、ロータコア11を軸方向に貫通し、周方向に並んで配置された複数の補強ロッド73を備える。ロータコア11は、周方向に間隔を空けて設けられた複数の第1空孔部71及び第2空孔部72を有し、補強ロッド73は、第1空孔部71及び第2空孔部72を、第1空孔部71の内周面及び第2空孔部72の内周面との間に隙間を空けて貫通するようにそれぞれ配置される。補強ロッド73は、補強ロッド73内を該補強ロッドの軸方向である第1特定方向に貫通しかつ空気が通るエア通路81と、エア通路81と第1空孔部71及び第2空孔部72とを連通させる複数の連通孔85と、を有する。これにより、エア通路81と、連通孔85と、第1空孔部71及び第2空孔部72とによりヘルムホルツ共鳴器が構成される。ヘルムホルツ共鳴器により、駆動モータ2に入力された振動のうち、ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数に応じた周波数の振動を、吸収することができる。これにより、駆動モータ2を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態1では、補強ロッド73は、ロータコア11を軸方向に貫通し、エア通路81は、ロータ10の軸方向の一端側と他端側とを連通させるように補強ロッド73を貫通する。これにより、簡単な構成で前記のヘルムホルツ共鳴器を形成することができ、駆動モータ2を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態1では、第1空孔部71は、互いに容積が異なるように軸方向で第1空孔部71を仕切る第1仕切り壁71aを有し、第2空孔部72は、互いに容積が異なるように軸方向で第2空孔部72を仕切る第2仕切り壁72aを有する。補強ロッド73は、第1仕切り壁71a及び第2仕切り壁72aを貫通して配置される。連通孔85は、補強ロッド73における第1仕切り壁71a及び第2仕切り壁72aで仕切られた各空間71b,71c,72b,72cに位置する部分のそれぞれに形成されている。第1空孔部71及び第2空孔部72が、容積の異なる複数の空間71b,71c,72b,72cに分けられるため、複数の周波数に対応したヘルムホルツ共鳴器を形成することができる。これにより、駆動モータ2を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0083】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0084】
本実施形態2は、駆動モータ202が、ロータ210とステータ220とが軸方向に隙間を空けて配置されたアキシャルギャップモータである点で、前述の実施形態1とは異なる。駆動モータ202は、ロータ210に対して軸方向に2つのステータ220が対向して配置された1ロータ2ステータ型のモータである。ロータ210及びステータ220は、ハウジング290に収容される。
【0085】
ロータ210及び各ステータ220の中心には、シャフト230が挿通している。ロータ210はシャフト230に固定されている。各ステータ220は、シャフト230とベアリングを介して接続されており、シャフト230が回転したとしても、ステータ220は回転しない。以下の説明では、回転軸方向又は軸方向は、回転軸Jが延びている方向を表す。径方向は、回転軸Jを中心とした半径方向を表す。周方向は、回転軸Jを中心としたその周囲の方向を表す。径方向において、回転軸Jから遠い側を「径方向外側」といい、回転軸Jに近い側を「径方向内側」という。また、軸方向におけるロータ210側を「軸方向内側」といい、軸方向におけるロータ210とは反対側を「軸方向外側」という。
【0086】
〔ステータ〕
図6に示すように、ステータ220は、ステータコア221と、複数のコイル222とを有する。ステータコア21は、円環状に形成されたバックヨーク221aと、バックヨーク221aから径方向内側に放射状に突出する複数(ここでは9個)のティース221bとを有する。例えば、ステータコア221は、透磁率の高い複数の電磁鋼板を径方向に積層して構成された積層コアである。
【0087】
複数のコイル222は、複数のティース221bに巻回される。複数のコイル222が通電すると、複数のコイル222に磁束が発生する。例えば、複数のコイル222は、流れる電流の位相が異なるU相、V相、及びW相からなる三相のコイル群を構成している。各相のコイル222は、周方向に順番に配置されている。
【0088】
前記実施形態1と同様に、複数のコイル222において発生する磁束には、各ロータ210を回転させるための磁束である回転磁束と、後述する第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態を変化させるための磁束である可変磁束(所定の磁束)とが含まれる。
【0089】
複数のコイル222に交流電流を供給することにより、複数のコイル222に回転磁束が発生する。この回転磁束により各ロータ210が回転する。また、各ロータ210の回転中(又は停止中)に、複数のコイル222に所定の電流(例えば回転磁束を発生させる交流電流よりも大きいパルス電流)を所定の時間だけ供給することにより、複数のコイル222に可変磁束が発生する。この可変磁束により後述する第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態が変化する。
【0090】
〔ロータ〕
次に、
図7~9を参照して、ロータ210について説明する。ロータ210は、ロータコア211と、複数の磁極部212と、複数の空孔部271と、外側壁部216と、内側壁部217と、複数の補強ロッド273と、を備える。
【0091】
〔ロータコア〕
ロータコア211は、円柱状に形成される。例えば、ロータコア211は、透磁率の高い複数枚の円筒状の電磁鋼板が径方向に積層された積層コアである。ロータコア211の中央部にはシャフト230が挿通するシャフト孔H230(
図9参照)が形成されている。
【0092】
〔磁極部〕
複数の磁極部212は、ロータコア211に設けられ、周方向に並ぶ。複数の磁極部212の各々は、一対の磁力固定磁石240と、一対の第1磁力可変磁石251と、一対の第2磁力可変磁石252と、を有する。
図8に示すように、一対の磁力固定磁石240、一対の第1磁力可変磁石251、及び一対の第2磁力可変磁石252は、ロータ210の軸方向の中心を通りかつ軸方向に直交する特定平面Pに対して鏡面対象に配置されている。
【0093】
ロータ210の周方向に相隣接する磁極部212は、互いに磁性が異なっている。具体的には、磁力固定磁石240の磁化方向が互いに逆向きになっている。また、同じ磁極部212において、軸方向に相隣接する磁力固定磁石240は、磁化方向が互いに逆向きになっている。
【0094】
〈磁力固定磁石〉
磁力固定磁石240は、ロータコア211に埋め込まれる。磁力固定磁石240は、軸方向と直交する方向(接線方向)に延びる。具体的には、磁力固定磁石240は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向が接線方向を向き、短手方向が軸方向を向く。磁力固定磁石240は、軸方向から見て扇型に形成されている。磁力固定磁石240の周方向の長さは、径方向内側ほど短い。磁力固定磁石240の材質は、前述の実施形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0095】
〈第1磁力可変磁石〉
第1磁力可変磁石251は、磁力固定磁石240の周方向の一端側に配置される。第1磁力可変磁石251は、周方向において磁力固定磁石240と間隔をおいて対向する。
【0096】
第1磁力可変磁石251は、ロータコア211に埋め込まれる。第1磁力可変磁石251は、軸方向に沿うように延びる。具体的には、第1磁力可変磁石251は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向が軸方向を向き、短手方向が前記接線方向を向く。
【0097】
第1磁力可変磁石251は、軸方向から見て扇型に形成されている。第1磁力可変磁石251の周方向の長さは、径方向内側ほど短い。第1磁力可変磁石251の材質は、前述の実施形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0098】
〈第2磁力可変磁石〉
第2磁力可変磁石252は、磁力固定磁石240の周方向の他端側に配置される。第2磁力可変磁石252は、周方向において磁力固定磁石240と間隔をおいて対向する。
【0099】
第2磁力可変磁石252は、ロータコア211に埋め込まれる。第2磁力可変磁石252は、軸方向に沿うように延びる。具体的には、第2磁力可変磁石252は、横断面形状が矩形状に形成され、長手方向が軸方向を向き、短手方向が前記接線方向を向く。
【0100】
第2磁力可変磁石252は、軸方向から見て扇型に形成されている。第2磁力可変磁石252の周方向の長さは、径方向内側ほど短い。第2磁力可変磁石252の材質は、前述の実施形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0101】
〔空孔部〕
図8に示すように、空孔部271は、隣り合う2つの磁極部212に跨がって設けられている。空孔部271は、一方の磁極部212における周方向の一端側の部分から他方の磁極部212における周方向の他端側の部分にかけて設けられている。空孔部271は、特定平面Pに対して対称となるように、ロータコア211における、特定平面Pよりも軸方向の一端側と特定平面Pよりも軸方向の他端側とにそれぞれ設けられている。
【0102】
空孔部271は、横断面がT字状をなしている。空孔部271は、磁力固定磁石240の軸方向内側、並びに第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の軸方向内側の位置に配置される。空孔部271は、周方向における第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の位置において、軸方向外側に向かって突出している。
【0103】
図7及び
図9に示すように、空孔部271は、ロータコア211を径方向に貫通している。空孔部271は、軸方向から見て扇形に形成されている。空孔部271の周方向の長さは、径方向内側ほど短い。
【0104】
空孔部271と磁力固定磁石240とは、軸方向及び周方向に離間している。空孔部271と第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252とは、軸方向に離間している。
【0105】
〔外側壁部、内側壁部〕
外側壁部216は、ロータコア211の外周部を覆う壁部である。外側壁部216は、ロータコア211の径方向外側の周面に沿って配置されている。外側壁部216は、円筒状である。外側壁部216は、ロータコア211と同心に配置される。外側壁部216の内径は、ロータコア211の外径と等しいか又はロータコア211の外径よりも僅かに大きい。
【0106】
内側壁部217は、ロータコア211とシャフト230との間に配置される。内側壁部217は、ロータコア211のシャフト孔H230に沿って配置されている。内側壁部217は、円筒状である。内側壁部217は、ロータコア211と同心に配置される。内側壁部217の外径は、シャフト孔H230と等しいか又はシャフト孔H230の径よりも僅かに小さい。内側壁部217の内径は、シャフト230の径と等しい。
【0107】
〔補強ロッド〕
各空孔部271内には、補強ロッド273がそれぞれ配置されている。詳しくは後述するが補強ロッド273は、第1補強ロッド274及び第2補強ロッド275の2種類がある。第1補強ロッド274の数と第2補強ロッド275の数とは同じである。以下の説明では、これらを区別しないときには、単に補強ロッド273という。
【0108】
補強ロッド273は、特定平面Pよりも軸方向の一端側の空孔部271と、特定平面Pよりも軸方向の他端側の空孔部271とにそれぞれ配置されている。補強ロッド273は、ロータコア211を径方向に貫通する。
【0109】
補強ロッド273は、ヘッド部273aと、軸部273bと、ねじ部273cとを含む。ヘッド部273aは、軸部273bの一端側に配置され、ねじ部273cは、軸部273bの他端側に形成されている。ヘッド部273a、軸部273b、及びねじ部273cは、同心である。ヘッド部273aは、軸部273bよりも大径である。
【0110】
図9に示すように、補強ロッド273は、空孔部271を、空孔部271の内周面との間に隙間を空けて貫通するようにそれぞれ配置されている。具体的には、補強ロッドは、外側壁部216を貫通して、空孔部271に侵入して、空孔部271の内周面との間に隙間を空けた状態で径方向に延びる。補強ロッド273のねじ部273cは、内側壁部217に螺合により接続される。一方で、補強ロッド273のヘッド部273aは、外側壁部216を貫通せずに、外側壁部216に設けられた凹部216aに収容される。凹部216aの深さは、ヘッド部273aの厚みと同程度である。これにより、補強ロッド273は、外側壁部216及び内側壁部217に接続される。
【0111】
補強ロッド273は、アルミや銅などの非磁性導体で構成されている。補強ロッド273は、第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252の磁化状態を変化させるための磁束が入力されたときに、該磁束に反発する反発磁束が生じるような渦電流を発生させる。反発磁束により、前記磁束が空孔部271により侵入しにくくなるため、前記磁束を第1磁力可変磁石251及び第2磁力可変磁石252に向かって流れやすくすることができる。
【0112】
〔エア通路〕
ロータ210には、空気が通るエア通路が形成されている。エア通路は、補強ロッド273内に形成された第1エア通路281と、シャフト230内に形成された第2エア通路282とを含む。
【0113】
第1エア通路281は、補強ロッド273内を、補強ロッド273の軸方向である第3特定方向に貫通する。つまり、第1エア通路281は、ヘッド部273a、軸部273b、及びねじ部273cを、第3特定方向に沿って貫通する。第1エア通路281は、ロータ210の、軸方向の一端側と他端側とを連通させる。第3特定方向は、シャフト230の軸方向と直交する方向である。
【0114】
軸部273bは、第1エア通路281と空孔部271とを連通させる複数(
図4及び
図5では6つ)の連通孔285を有する。連通孔285は、前記第1特定方向に並んで配置されるとともに、前記第1特定方向と直交する第2特定方向に対向して配置されている。
【0115】
第1補強ロッド274と第2補強ロッド275とは、連通孔285の径が異なる。
図9に示すように、第1補強ロッド274の連通孔285の径は、第2補強ロッド275の連通孔285の径よりも大きい。
【0116】
第2エア通路282は、シャフト230の軸方向に延びる。第2エア通路282の流路断面積は、第1エア通路281の流路断面積よりも大きい。軸方向において、第2エア通路282は、ロータ210の全体を通り抜けず、途中でせき止められている。
【0117】
内側壁部217は、第1エア通路281の位置に、第1エア通路281と第2エア通路282とを連通させる流入孔284を有する。これにより、第2エア通路282とロータ210の外部とが第1エア通路281により連通する。
【0118】
空気は、第2エア通路282から流入孔284を介して第1エア通路281に流入する。第1エア通路281に流入した空気の一部は連通孔285を通って空孔部271に抜ける。第1エア通路281に流入した空気の残部は、ロータ210の外部に流出する。
【0119】
本実施形態2に係るロータ210でも、第1エア通路281と、連通孔285と、空孔部271とによりヘルムホルツ共鳴器が構成される。ヘルムホルツ共鳴器により、駆動モータ202に入力された振動のうち、ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数に応じた周波数の振動を、吸収することができる。これにより、駆動モータ202を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0120】
〔実施形態2の効果〕
以上のように、実施形態2では、シャフト230は、シャフト230内を軸方向に延びる第2エア通路282を有し、補強ロッド273は、ロータコア211を径方向に貫通し、第1エア通路281は、第2エア通路282とロータ210の外部と連通させるように補強ロッド273を貫通する。シャフト230内に第2エア通路282を形成して第1エア通路281と連通させることで、補強ロッド273に振動が伝達されやすくなり、吸音効率を向上させることができる。これにより、駆動モータ202を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0121】
実施形態2では、補強ロッド273は、第1補強ロッド274と第2補強ロッド275との2種類あり、第1補強ロッド274に形成された連通孔285の径は、第2補強ロッド275に形成された連通孔285の径とは異なる。連通孔285の径が異なることで、複数の周波数に対応したヘルムホルツ共鳴器を形成することができる。これにより、駆動モータ202を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0122】
〔実施形態2の変形例1〕
図10は、本実施形態2の変形例1を示す。変形例1では、補強ロッド373は一種類のみである。各補強ロッド373に設けられた連通孔385の径は同じである。
【0123】
変形例1では、空孔部371には、空孔部371を、2つの空間に区分けする仕切り壁371aが形成されている。仕切り壁371aにより仕切られた各空間は、互いに容積が異なる。具体的には、仕切り壁371aは、空孔部371を、相対的に容積が大きい大空間371bと、相対的に容積が小さい小空間371cとに仕切る。なお、仕切り壁371aは、空孔部371内に複数設けられていてもよい。この場合、複数の仕切り壁371aは、仕切られて形成された複数の空間の容積が、互いに異なるように空孔部371を仕切る。
【0124】
変形例1では、補強ロッド373は、外壁部316を貫通して、第1空孔部371に侵入する。補強ロッド373は、仕切り壁371aを貫通して、空孔部371内を通った後、内壁部317を貫通する。補強ロッド373のねじ部373cは、内壁部317に螺合により接続される。
【0125】
連通孔385は、補強ロッド373における、大空間371bに位置する部分及び小空間371cに位置する部分のそれぞれに形成されている。連通孔385は、補強ロッド373における、仕切り壁371aに位置する部分には形成されていない。
【0126】
変形例では、空孔部371が、容積の異なる複数の空間371b,371cに分けられるため、各補強ロッド373を通過する音に対して複数の周波数に対応したヘルムホルツ共鳴器を形成することができる。これにより、各補強ロッド373を通過する音に対して複数の周波数の消音が可能になり、駆動モータ202を介して発生する騒音を抑制することができる。
【0127】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0128】
実施形態1及び2では、自動車1は、エンジン3を有するハイブリッド車であった。これに限らず、自動車1は、駆動源として駆動モータ2,202のみを有する電気自動車であってもよい。
【0129】
実施形態1では、第1仕切り壁71a及び第2仕切り壁72aは、第1空孔部71及び第2空孔部72における軸方向の中央に対して軸方向の一側にずれた位置に配置されていた。これに限らず、第1仕切り壁71a及び第2仕切り壁72aは、第1空孔部71及び第2空孔部72における軸方向の中央に配置されていてもよい。この場合、仕切られた空間のうち一方にのみ非磁性部材を配置するなどして、空気が入る容積を異ならせるようにすればよい。
【0130】
実施形態2では、空孔部271は、特定平面Pよりも軸方向の一端側と特定平面Pよりも軸方向の他端側とに分離して設けられていた。これに限らず、
図11に示す空孔部471のように、一体になっていてもよい。この場合、空孔部471は、横断面が十字型をなす。また、空孔部471の数が減少するため、空孔部471内に配置される補強ロッド473の数も減少する。補強ロッド473は、空孔部471における交点部分に配置される。
【0131】
実施形態2では、補強ロッド273は、第1補強ロッド274と第2補強ロッド275との2種類であったが、補強ロッド273の種類は3種類以上であってもよい。各種類の補強ロッド273は、互いに連通孔285の径が異なる。
【0132】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0133】
ここに開示された技術は、回転電機のロータ構造として有用である。
【符号の説明】
【0134】
10 ロータ
11 ロータコア
14 第1エンドプレート
15 第2エンドプレート
20 ステータ
21 ステータコア
40 磁力固定磁石
51 第1磁力可変磁石
52 第2磁力可変磁石
71 第1空孔部
71a 第1仕切り壁
71b 大空間
71c 小空間
72 第2空孔部
72a 第2仕切り壁
72b 大空間
72c 小空間
73 補強ロッド
81 エア通路
85 連通孔
210 ロータ
211 ロータコア
212 磁極部
216 外側壁部
217 内側壁部
220 ステータ
240 磁力固定磁石
251 第1磁力可変磁石
252 第2磁力可変磁石
271 空孔部
273 補強ロッド
274 第1補強ロッド
275 第2補強ロッド
281 第1エア通路
282 第2エア通路
285 連通路
373 補強ロッド
371 空孔部
371a 仕切り壁
371b 大空間
371c 小空間
381 第1エア通路
385 連通路
471 空孔部
475 補強ロッド