(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099520
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】ボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20250626BHJP
B65D 1/42 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216226
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】栗原 吾郎
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA18
3E033CA02
3E033CA05
3E033CA20
3E033DA04
3E033DB01
3E033EA04
3E033EA05
3E033FA03
(57)【要約】
【課題】胴部のうち、周溝と上下方向で隣接する平滑部分の剛性を確保しつつ、ボトル内の洗浄液を排出するのに要する時間を抑えることができる環境保全に対応可能なボトルを提供する。
【解決手段】上下方向に延びる胴部13に、周方向の全長にわたって連続して延びる複数の周溝21が、上下方向に間隔をあけて形成され、胴部において、周溝と上下方向で隣接する平滑部分15aに、周方向および上下方向に対して交差する方向に延びる複数の凹リブ23が、周方向に間隔をあけて形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる胴部に、周方向の全長にわたって連続して延びる複数の周溝が、上下方向に間隔をあけて形成され、
前記胴部において、前記周溝と上下方向で隣接する平滑部分に、周方向および上下方向に対して交差する方向に延びる複数の凹リブが、周方向に間隔をあけて形成されている、ボトル。
【請求項2】
複数の前記凹リブが延びる、周方向および上下方向に対して交差する各向きが、互いに同じになっている、請求項1に記載のボトル。
【請求項3】
前記凹リブの周方向の大きさは、周方向で互いに隣り合う前記凹リブ同士の周方向の間隔より大きくなっている、請求項1または2に記載のボトル。
【請求項4】
1つの前記周溝を上下方向に挟む2つの前記平滑部分に、複数の前記凹リブが周方向に間隔をあけて各別に形成され、
周方向で互いに隣り合う前記凹リブ同士の間隔は、上下方向で隣り合う2つの前記平滑部分において同じ周方向の位置に位置している、請求項1または2に記載のボトル。
【請求項5】
前記凹リブの深さは、前記周溝の深さより浅くなっている、請求項1または2に記載のボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の観点から容器の軽量化が強く求められているが、一般に軽量化に伴い容器物性が低下することから、これを補う必要が生ずる。軽量化に伴って低下する容器物性の1つとして、胴部剛性が挙げられる。胴部剛性を高めるために、例えば下記特許文献1に示されるように、胴部に複数の周溝を設けたボトルが知られているが、軽量化の程度によっては、胴部のうち、周溝と上下方向で隣接する平滑部分の剛性が低くなることが考えられ、この場合、胴部の把持時に、平滑部分が大きく変形するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この対策として、胴部の平滑部分にも周溝を設けることが考えられるが、周溝が増えると、内容物を充填する前のボトル洗浄工程において、ボトルを倒立姿勢にして洗浄液を排出する際に、ボトル内の洗浄液が周溝に引っ掛かり、洗浄液の排出に時間がかかるおそれがある。
【0005】
本発明は、胴部のうち、周溝と上下方向で隣接する平滑部分の剛性を確保しつつ、ボトル内の洗浄液を排出するのに要する時間を抑えることができる環境保全に対応可能なボトルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るボトルは、上下方向に延びる胴部に、周方向の全長にわたって連続して延びる複数の周溝が、上下方向に間隔をあけて形成され、前記胴部において、前記周溝と上下方向で隣接する平滑部分に、周方向および上下方向に対して交差する方向に延びる複数の凹リブが、周方向に間隔をあけて形成されている。
【0007】
胴部の平滑部分に、複数の凹リブが周方向に間隔をあけて形成されているので、平滑部分の剛性を確保することができ、また、複数の凹リブが、周方向および上下方向に対して交差する方向に延びているので、内容物を充填する前のボトル洗浄工程において、ボトルを倒立姿勢にして洗浄液を排出する際に、ボトル内の洗浄液が、凹リブを伝って口部に向けて流れやすく、周溝に引っ掛かりにくくなり、ボトル内の洗浄液を排出するのに要する時間を抑えることができる。
【0008】
複数の前記凹リブが延びる、周方向および上下方向に対して交差する各向きが、互いに同じになってもよい。
【0009】
複数の凹リブが延びる、周方向および上下方向に対して交差する各向きが、互いに同じになっているので、胴部の平滑部分に応力が集中する部分を生じにくくすることができる。
【0010】
前記凹リブの周方向の大きさは、周方向で互いに隣り合う前記凹リブ同士の周方向の間隔より大きくなってもよい。
【0011】
凹リブの周方向の大きさが、周方向で互いに隣り合う凹リブ同士の周方向の間隔より大きくなっているので、胴部の平滑部分の剛性を確実に確保することができるとともに、ボトル内の洗浄液を排出するのに要する時間を確実に抑えることができる。
【0012】
1つの前記周溝を上下方向に挟む2つの前記平滑部分に、複数の前記凹リブが周方向に間隔をあけて各別に形成され、周方向で互いに隣り合う前記凹リブ同士の間隔は、上下方向で隣り合う2つの前記平滑部分において同じ周方向の位置に位置してもよい。
【0013】
周方向で互いに隣り合う凹リブ同士の間隔が、上下方向で隣り合う2つの平滑部分において同じ周方向の位置に位置しているので、ボトル内の洗浄液が、凹リブを伝って、周方向で互いに隣り合う凹リブ同士の間隔に到達した後、口部に向けて流れ落ちるときに、この平滑部分に対して口部側で隣接する他の平滑部分において、凹リブを伝って、周方向で互いに隣り合う凹リブ同士の間隔に到達した洗浄液と合流しやすくなり、ボトル内の洗浄液を排出するのに要する時間を確実に抑えることができる。
【0014】
前記凹リブの深さは、前記周溝の深さより浅くなってもよい。
【0015】
凹リブの深さが、周溝の深さより浅くなっているので、平滑部分において、周方向で互いに隣り合う凹リブ同士の間に位置する部分に応力が集中しやすくなるのを抑制することが可能になり、平滑部分の剛性を確実に確保することができ、また、例えば平滑部分にラベルを装着した場合には、ラベルに、凹リブに起因した皺が発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、胴部のうち、周溝と上下方向で隣接する平滑部分の剛性を確保しつつ、ボトル内の洗浄液を排出するのに要する時間を抑えることができる環境保全に対応可能なボトルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るボトルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態のボトル1は、
図1に示されるように、口部11、肩部12、胴部13および底部14を備え、これら11~14が、それぞれの中心軸線を共通軸上に位置させた状態で、この順に連設された概略構成となっている。
【0019】
以下、前記共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸O方向に沿って口部11側を上側、底部14側を下側といい、ボトル軸Oに沿う方向を上下方向といい、また、上下方向から見てボトル軸Oに交差する方向を径方向といい、上下方向から見てボトル軸O回りに周回する方向を周方向という。
ボトル1は、射出成形により有底筒状に形成されたプリフォームが、ブロー成形されて形成され、例えばポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂材料で一体に形成されている。ボトル1の内容量(満注容量)に対するボトル1の重量の比率は、0.027g/ml以下となっている。口部11、肩部12、胴部13および底部14はそれぞれ、ボトル軸Oに直交する横断面視形状が円形状となっている。
【0020】
胴部13は、肩部12から下方に向けて延びる上胴部15と、底部14から上方に向けて延びる下胴部16と、上胴部15および下胴部16を互いに連結するくびれ部17と、を備えている。
【0021】
上胴部15の上下方向の大きさは、下胴部16の上下方向の大きさよりわずかに小さくなっている。上胴部15に、周方向の全長にわたって連続して延びる複数の第1周溝(周溝)21が、上下方向に間隔をあけて形成されている。下胴部16に、周方向の全長にわたって連続して延びる複数の第2周溝22が、上下方向に間隔をあけて形成されている。上下方向で互いに隣り合う第1周溝21同士の間隔は、上下方向で互いに隣り合う第2周溝22同士の間隔より狭くなっている。
【0022】
上胴部15において、第1周溝21と上下方向で隣接する平滑部分15aに、周方向および上下方向に対して交差する方向に延びる複数の凹リブ23が、周方向に間隔をあけて形成されている。
平滑部分15aは、上下方向に間隔をあけて複数配設されている。1つの第1周溝21を上下方向に挟む2つの平滑部分15aに、複数の凹リブ23が周方向に間隔をあけて各別に形成されている。図示の例では、全ての平滑部分15aに、複数の凹リブ23が周方向に間隔をあけて形成されている。なお、複数の平滑部分15aのうちの少なくとも1つに、複数の凹リブ23が形成されていればよい。
【0023】
複数の凹リブ23が延びる、周方向および上下方向に対して交差する各向き(以下、凹リブ23の傾斜向きという)が、互いに同じになっている。複数の凹リブ23の周方向に対する傾斜角度は、互いに同じになっている。
なお、1つの平滑部分15aに形成された複数の凹リブ23のうちの少なくとも1つの傾斜向きを、他の凹リブ23の傾斜向きと異ならせてもよい。1つの平滑部分15aに形成された複数の凹リブ23の傾斜向きが全て同じになっている場合、複数の平滑部分15aのうち、1つの平滑部分15aに形成された凹リブ23の傾斜向きを、他の平滑部分15aに形成された凹リブ23の傾斜向きと異ならせてもよい。
【0024】
凹リブ23の周方向の大きさは、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の周方向の間隔より大きくなっている。なお、前者の大きさを、後者の大きさ以下としてもよい。複数の凹リブ23の周方向の大きさは、互いに同じになっている。複数の凹リブ23は、周方向に同じ間隔をあけて設けられている。
複数の凹リブ23の溝長さは、互いに同じになっている。前記間隔は、凹リブ23の溝長さよりも小さくなっている。なお、前記間隔を、凹リブ23の溝長さ以上としてもよい。
【0025】
周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間隔は、上下方向で隣り合う2つの平滑部分15aにおいて同じ周方向の位置に位置している。すなわち、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間隔は、全周にわたって、第1周溝21を上下方向に挟んで隣り合う他の平滑部分15aに設けられた前記間隔と同じ周方向の位置に位置している。
第1周溝21を上下方向に挟んで隣り合う前記間隔の周方向の中央部同士は、同じ周方向の位置に位置している。第1周溝21を上下方向に挟んで隣り合う凹リブ23の周方向の中央部同士は、同じ周方向の位置に位置している。
【0026】
なお、第1周溝21を上下方向に挟んで隣り合う前記間隔の周方向の中央部同士は、周方向に離れていてもよい。
例えば、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間隔は、全周にわたって、第1周溝21を上下方向に挟んで隣り合う他の平滑部分15aに設けられた凹リブ23と同じ周方向の位置に位置してもよいし、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間隔のうちの一部のみが、第1周溝21を上下方向に挟んで隣り合う他の平滑部分15aに設けられた凹リブ23と同じ周方向の位置に位置してもよい。
【0027】
凹リブ23の深さは、第1周溝21の深さより浅くなっている。凹リブ23の深さは、0.4mm以上1.0mm以下とされ、かつ第1周溝21の深さの0.13倍以上0.67倍以下となっている。凹リブ23の溝幅は、第1周溝21の溝幅より狭くなっている。
なお、凹リブ23の溝幅および溝深さをそれぞれ、第1周溝21の溝幅および溝深さと比べて同じか大きくしてもよい。
凹リブ23および平滑部分15aそれぞれの上下方向の中央領域は重複している。凹リブ23の上下方向の大きさは、平滑部分15aの上下方向の大きさの半分より大きくなっている。
【0028】
周方向に間隔をあけて設けられた複数の凹リブ23からなるリブ列24は、1つの平滑部分15aに1つ設けられるとともに、上胴部15に上下方向に間隔をあけて2つ以上、好ましくは4つ以上(図示の例では5つ)設けられている。
【0029】
図示の例では、平滑部分15aの外径は、例えば約76mmとされ、凹リブ23の周方向の大きさは、例えば約19mmとされ、1つのリブ列24は、8つの凹リブ23を備え、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間隔は、例えば約10.5mmとされている。
1つのリブ列24において、複数の凹リブ23の周方向の大きさの合計をAとし、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間隔の合計をBとしたときに、A/Bが1.5以上1.9以下を満たしている。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によるボトル1によれば、胴部13の平滑部分15aに、複数の凹リブ23が周方向に間隔をあけて形成されているので、平滑部分15aの剛性を確保することができ、また、複数の凹リブ23が、周方向および上下方向に対して交差する方向に延びているので、内容物を充填する前のボトル洗浄工程において、ボトル1を倒立姿勢にして洗浄液を排出する際に、ボトル1内の洗浄液が、凹リブ23を伝って口部11に向けて流れやすく、第1周溝21に引っ掛かりにくくなり、ボトル1内の洗浄液を排出するのに要する時間を抑えることができる。
【0031】
複数の凹リブ23が延びる、周方向および上下方向に対して交差する各向きが、互いに同じになっているので、胴部13の平滑部分15aに応力が集中する部分を生じにくくすることができる。
【0032】
凹リブ23の周方向の大きさが、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の周方向の間隔より大きくなっているので、胴部13の平滑部分15aの剛性を確実に確保することができるとともに、ボトル1内の洗浄液を排出するのに要する時間を確実に抑えることができる。
【0033】
周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間隔が、上下方向で隣り合う2つの平滑部分15aにおいて同じ周方向の位置に位置しているので、ボトル1内の洗浄液が、凹リブ23を伝って、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間隔に到達した後、口部11に向けて流れ落ちるときに、この平滑部分15aに対して口部11側で隣接する他の平滑部分15aにおいて、凹リブ23を伝って、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間隔に到達した洗浄液と合流しやすくなり、ボトル1内の洗浄液を排出するのに要する時間を確実に抑えることができる。
【0034】
凹リブ23の深さが、第1周溝21の深さより浅くなっているので、平滑部分15aにおいて、周方向で互いに隣り合う凹リブ23同士の間に位置する部分に応力が集中しやすくなるのを抑制することが可能になり、平滑部分15aの剛性を確実に確保することができ、また、例えば平滑部分15aにラベルを装着した場合には、ラベルに、凹リブ23に起因した皺が発生するのを抑制することができる。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0036】
下胴部16およびくびれ部17を有しない胴部を採用してもよい。
凹リブ23は、下胴部16に形成してもよい。
【0037】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0038】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
上下方向に延びる胴部に、周方向の全長にわたって連続して延びる複数の周溝が、上下方向に間隔をあけて形成され、
前記胴部において、前記周溝と上下方向で隣接する平滑部分に、周方向および上下方向に対して交差する方向に延びる複数の凹リブが、周方向に間隔をあけて形成されている、ボトル。
<2>
複数の前記凹リブが延びる、周方向および上下方向に対して交差する各向きが、互いに同じになっている、前記<1>に記載のボトル。
<3>
前記凹リブの周方向の大きさは、周方向で互いに隣り合う前記凹リブ同士の周方向の間隔より大きくなっている、前記<1>または<2>に記載のボトル。
<4>
1つの前記周溝を上下方向に挟む2つの前記平滑部分に、複数の前記凹リブが周方向に間隔をあけて各別に形成され、
周方向で互いに隣り合う前記凹リブ同士の間隔は、上下方向で隣り合う2つの前記平滑部分において同じ周方向の位置に位置している、前記<1>から<3>のいずれか1つに記載のボトル。
<5>
前記凹リブの深さは、前記周溝の深さより浅くなっている、前記<1>から<4>のいずれか1つに記載のボトル。
【符号の説明】
【0039】
1 ボトル
13 胴部
15a 平滑部分
21 周溝(第1周溝)
23 凹リブ