(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099535
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】粘着テープ、積層体及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20250626BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20250626BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250626BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
H01L21/304 622J
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216249
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 真
(72)【発明者】
【氏名】安井 浩登
(72)【発明者】
【氏名】荒添 弘樹
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
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5F131EC73
(57)【要約】
【課題】半導体デバイスの加工のばらつきを低減することができる粘着テープを提供する。
【解決手段】第1の粘着層と、第2の粘着層と、前記第1の粘着層と前記第2の粘着層との間に配置された中間層とを有する粘着テープであって、前記中間層は、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属及びシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含み、前記中間層の厚みは、5nm以上3μm以下である、粘着テープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の粘着層と、第2の粘着層と、前記第1の粘着層と前記第2の粘着層との間に配置された中間層とを有する粘着テープであって、
前記中間層は、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属及びシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含み、
前記中間層の厚みは、5nm以上3μm以下である、
粘着テープ。
【請求項2】
前記第1の粘着層上に、1cm×1cm×高さ50μmの2以上の半導体チップを配置したときに、前記粘着テープの前記2以上の半導体チップが配置された面とは反対側の面からの前記半導体チップの高さのばらつきが5μm未満である、
請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記中間層の、波長355nmの光の光線透過率が60%以上である、
請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記第1の粘着層は、放射線硬化性粘着剤を含む、
請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着テープと、
前記粘着テープの前記第1の粘着層上に配置された、半導体デバイスと、
を含む、
積層体。
【請求項6】
前記半導体デバイスは、2以上の半導体チップである、
請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着テープの前記第2の粘着層と支持体とを貼り合わせ、前記第1の粘着層と半導体デバイスとを貼り合わせる工程と、
前記半導体デバイスを加工する工程と、
前記第1の粘着層と前記加工された半導体デバイスとの間、又は、前記第2の粘着層と前記支持体との間を剥離する工程と、
を含む、
半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の粘着層は、放射線硬化性粘着剤を含み、
前記剥離する工程では、前記第2の粘着層を介して前記第1の粘着層に放射線を照射して前記放射線硬化性粘着剤を硬化させることにより、前記第1の粘着層と前記加工された半導体デバイスとを剥離する、
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ、積層体及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、例えば半導体装置の製造工程において、部材や部品の仮固定等に使用されている。
【0003】
例えば、半導体チップは、半導体ウエハの裏面を研磨機により研磨して、半導体ウエハの厚さを30~600μm程度まで薄くした後、裏面に電極等を形成し、ダイシングしてチップ化して製造される。ここで、裏面の研削加工を行う際には、半導体ウエハの表面に粘着テープを貼り付けたり、粘着テープを介して支持体を貼り付けたりしてすることにより、半導体ウエハの破損を防止し、研磨等の加工を容易にしている。
【0004】
また、半導体パッケージは、2以上の半導体チップを粘着テープで支持した状態で樹脂封止した後、得られた封止体の裏面を所定の厚さになるまで研削する工程を経て製造されることがある。
【0005】
このような工程で使用される粘着テープには、加工時には半導体ウエハや半導体チップ等の被着体を強固に固定できるだけの高い粘着力を有しつつ、加工後には糊残りなく剥離できることが求められる。
【0006】
このような粘着テープとして、例えば特許文献1では、基材と、その両面に配置された2つの粘着剤層とを有する粘着テープが開示されている。具体的には、基材として厚み100μmの透明PETフィルムと、光硬化性のアクリル系粘着剤を含む2つの粘着剤層とを含む粘着テープが開示されている。そして、当該粘着テープに光を照射することで、粘着力を低下させて、容易に剥離できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような粘着テープを用いて半導体ウエハや封止体の裏面研削を行うと、加工にばらつきが生じることがある。それにより、半導体ウエハの面内で厚みのばらつきが生じたり、2以上の半導体チップ間で厚みのばらつきが生じたりすることがあった。
【0009】
本発明の目的は、半導体デバイスの加工のばらつきを低減することができる粘着テープ、積層体及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1] 第1の粘着層と、第2の粘着層と、前記第1の粘着層と前記第2の粘着層との間に配置された中間層とを有する粘着テープであって、前記中間層は、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属及びシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含み、前記中間層の厚みは、5nm以上3μm以下である、粘着テープ。
[2] 前記第1の粘着層上に、1cm×1cm×高さ50μmの2以上の半導体チップを配置したときに、前記粘着テープの前記2以上の半導体チップが配置された面とは反対側の面からの前記半導体チップの高さのばらつきが5μm未満である、[1]に記載の粘着テープ。
[3] 前記中間層の、波長355nmの光の光線透過率が60%以上である、[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4] 前記第1の粘着層は、放射線硬化性粘着剤を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の粘着テープ。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の粘着テープと、前記粘着テープの前記第1の粘着層上に配置された、半導体デバイスと、を含む、積層体。
[6] 前記半導体デバイスは、2以上の半導体チップである、[5]に記載の積層体。
[7] [1]~[4]のいずれかに記載の粘着テープの前記第2の粘着層と支持体とを貼り合わせ、前記第1の粘着層と半導体デバイスとを貼り合わせる工程と、前記半導体デバイスを加工する工程と、前記第1の粘着層と前記加工された半導体デバイスとの間、又は、前記第2の粘着層と前記支持体との間を剥離する工程と、を含む、半導体装置の製造方法。
[8] 前記第1の粘着層は、放射線硬化性粘着剤を含み、前記剥離する工程では、前記第2の粘着層を介して前記第1の粘着層に放射線を照射して前記放射線硬化性粘着剤を硬化させることにより、前記第1の粘着層と前記加工された半導体デバイスとを剥離する、[7]に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体デバイスの加工のばらつきを低減することができる粘着テープ、積層体及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1A~
図1Gは、本発明の一実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な部分拡大断面図である。
【
図3】
図3A~
図3Gは、変形例に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な部分拡大断面図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、半導体チップの高さのばらつきの測定方法を示す模式的な図である。
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る粘着テープ及びそれを用いた半導体装置の製造方法について、詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。本発明の一実施の形態において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
1.粘着テープ
本発明の一実施の形態に係る粘着テープは、第1の粘着層と、第2の粘着層と、それらの間に配置された中間層とを有する。
【0015】
上記の通り、従来の粘着テープを用いて半導体ウエハや封止体の裏面研削を行うと、加工にばらつきが生じることがあった。
【0016】
また、裏面研削やその後の電極形成プロセス等では、プロセス温度が高温となる。しかしながら、従来の粘着テープは耐熱性が低いため、高温プロセスでは粘着テープとウエハの界面でボイドが発生しやすく、粘着テープが半導体ウエハから剥離したり、しわになったりしやすい。剥離やしわを生じると、半導体ウエハや封止体を安定に支持固定できないため、半導体デバイスの加工にばらつきが一層生じやすい。
【0017】
本発明者らは、半導体デバイスの加工のばらつきが、粘着テープの厚みのばらつきに起因すること、当該粘着テープの厚みのばらつきが、主に中間層の厚みのばらつきに起因することを見出した。そして、中間層の厚みを所定以下に薄くすることで、中間層の厚みのばらつきを少なくできること、それにより、半導体デバイスの加工のばらつきを低減できることを見出した。
【0018】
また、本発明者らは、中間層が、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属及びシロキサン化合物からなる群より選ばれる一以上を含むことにより、中間層の厚みを薄くしてもバリア性を維持できるだけでなく、耐熱性を高めることができることを見出した。それにより、中間層を介した第1の粘着層と第2の粘着層との間の低分子量成分の移動を抑制しつつ、高温プロセスにおいても粘着テープの変形等を抑制でき、半導体デバイスの加工のばらつきを低減することができることを見出した。
【0019】
即ち、本実施の形態では、中間層は、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属及びシロキサン化合物からなる群より選ばれる一以上を含む。そして、中間層の厚みが所定以下(具体的には5nm~3μm)に調整されている。以下、各層について具体的に説明する。
【0020】
1-1.中間層
中間層は、第1の粘着層と第2の粘着層の間に配置され、これらの間での低分子量成分等の移動を阻止する機能を有する。また、中間層は、高温プロセスにおいても、半導体デバイス等の被着体を安定に支持固定することが望まれる。
【0021】
これらの観点から、中間層は、上記の通り、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属及びシロキサン化合物からなる群より選ばれる1以上を含む。
【0022】
無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム合金、酸化カルシウム、酸化銀、酸化マンガン、酸化白金等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等が挙げられる。無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。金属としては、アルミニウム、銀、銅、スズ、ニッケル、チタン、ケイ素等が挙げられる。無機物としては、ダイヤモンドライクカーボン、グラフェン等が挙げられる。
【0023】
シロキサン化合物は、Si-O結合を有する化合物である。シロキサン化合物の例には、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、ビニル基、アルキル基、フェニル基より選択される1つ以上の官能基を有するポリシロキサンが含まれる。当該ポリシロキサンの例には、アルコキシシラン及び/又はその部分縮合物の硬化物が含まれる。
【0024】
アルコキシシランは、例えば下記式(1)で表される化合物を例示できる。
【化1】
【0025】
式(1)中、xは、0~2の整数を示す。
R1は、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、メルカプト基からなる群より選ばれる官能基を有してもよい低級アルキル基、アリル基又はアリール基を示す。複数のR1は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
R2は、水素原子又は低級アルキル基を示す。
なお、低級アルキル基とは、炭素数6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。
【0026】
式(1)で表されるアルコキシシランにおいて、
x=0の場合の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類が挙げられ;
x=1の場合の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類が挙げられ;
x=2の場合の例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ-グリシドシキプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類が挙げられる。
なお、アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン類及び/又はトリアルコキシシラン類が好ましい。これらアルコキシシランは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
アルコキシシランの部分縮合物とは、アルコキシシランの1種又は2種以上が、少なくとも2分子以上加水分解した部分縮合である。アルコキシシランの縮合物の縮合度は特に制限されないが、取り扱い性が良好なことから、アルコキシシランの縮合物1分子あたりSi原子を平均2~8個含有する縮合物が好ましい。なお、当該縮合物の構造は特に限定されず、直鎖構造、分岐構造のいずれでもよく、分岐鎖同士間又は分岐鎖と主鎖との間に酸素原子を介する結合が存在してもよい。
【0028】
中でも、中間層の厚みを薄くしても高いバリア性が得られやすい観点では、金属、無機物、シロキサン化合物が好ましく、光透過性をより高めやすくし、第1の粘着層や第2の粘着層を構成する粘着剤を光硬化させやすくする観点では、シロキサン化合物がより好ましい。
【0029】
中間層における、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属及びシロキサン化合物からなる群より選ばれる1以上の成分の含有量は、中間層に対して90質量%以上でありうる。
【0030】
そして、本実施の形態では、中間層の厚みを5nm~3μmとする。中間層の厚みを3μm以下とすることにより、中間層の厚みのばらつきを少なくすることができる。そのため、粘着テープ全体の厚みのばらつきも少なくすることができ、半導体デバイスの加工のばらつきを少なくすることができる。また、中間層の厚みを5nm以上とすることで、バリア性を高めることができ、第1の粘着層と第2の粘着層との間の低分子量成分等の移動を抑制できる。同様の観点から、中間層の厚みを10~500nmとすることが好ましく、30~150nmとすることがより好ましい。中間層の厚みは、粘着テープの断面を電子顕微鏡で観察することにより測定してもよいし、分光干渉法を利用した膜厚計測装置で測定してもよい。例えば、中間層がシロキサン化合物を含む場合、分光干渉法を利用した非接触の膜厚測定装置(例えば浜松フォトニクス社 Optical Nano Gauge C13027)により測定することができる。
【0031】
中間層の表面抵抗率は、特に限定されないが、10-10Ω/□以下であることが好ましく、10-9Ω/□以下であることがより好ましい。中間層の表面抵抗率が10-10Ω/□以下であると、静電気による回路破壊の危険性を抑制できる。中間層の表面抵抗率は、表面抵抗計SIMCO社製ST-4により測定することができる。
【0032】
中間層は、光透過性を有していてもよいし、有していなくてもよい。例えば、中間層を介して第1の粘着層又は第2の粘着層に光を照射して光硬化させる場合は、中間層は、光透過性を有することが好ましい。
【0033】
中間層の波長355nmの光の光線透過率は、例えば60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。中間層の上記光線透過率が60%以上であると、中間層を介して第1の粘着層又は第2の粘着層に含まれる粘着剤を光硬化させやすくすることができる。中間層の光線透過率は、光学透過率測定器(東亜システムクリエイト社製 DST―2501)により測定することができる。
【0034】
中間層の光線透過率は、中間層の材料によって調整することができる。例えば、中間層の材料として、シロキサン化合物を用いることで、光線透過率をより高めることができる。
【0035】
中間層の加熱収縮率は、例えば0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。中間層の加熱収縮率が0.3%以下であると、粘着テープとしたときに熱を加えたときの形状安定性を高めることができる。中間層の加熱収縮率は、オーブンにより200℃で10分間加熱した後、室温まで冷却した後に、加熱による収縮量と加熱前の寸法の比として評価できる。具体的には、下記式から算出できる。
中間層の加熱収縮率(%)=[(加熱前の寸法-加熱後の寸法)/加熱前の寸法)]×100
【0036】
中間層の加熱収縮率は、中間層の材料によって調整することができる。例えば、熱による熱膨張を生じにくい材料(例えば無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属及びシロキサン化合物)を選択したりすることで、加熱収縮率をより低くすることができる。
【0037】
中間層は、1層であってもよいし、2層以上あってもよい。中間層が2層以上ある場合、中間層の材料の組み合わせは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0038】
中間層は、任意の方法で作製することができる。例えば、中間層は、ドライコーティング法、ウエットコーティング法、又はラミネート法で形成することができる。ドライコーティング法としては、真空蒸着法、酸化反応蒸着法、スパッタリング法、プラズマ化学気相成長法等が挙げられる。ウエットコーティング法としては、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。ラミネート法としては、金属箔等のラミネートする方法等が挙げられる。これらの中でも、ラミネート法が好ましい。具体的には、離型フィルムにグラビアコート法により中間層を形成後、当該中間層を粘着層にラミネートして、離型フィルムを剥離して転写することにより形成することができる。
【0039】
1-2.第1の粘着層
第1の粘着層は、中間層の一方の面上に配置されている。例えば、粘着テープを半導体デバイスの製造に用いる場合、第1の粘着層は、半導体デバイスが配置される側に位置することが好ましい。第1の粘着層に含まれる粘着剤は、光や熱を付与することにより粘着力が低下する粘着剤であってもよいし、感圧性粘着剤であってもよい。本実施の形態では、第1の粘着層に含まれる粘着剤は、光や熱の付与により粘着力が低下する粘着剤であることが好ましい。
【0040】
光や熱の付与により粘着力が低下する粘着剤は、放射線硬化性粘着剤であってもよいし、加熱発泡型粘着剤であってもよい。
【0041】
1-2-1.放射線硬化性粘着剤
放射線硬化性粘着剤は、例えば電子線、紫外線、α線、β線、γ線又はX線の照射により硬化する粘着剤であり、紫外線照射によって硬化する粘着剤(光硬化性粘着剤)であることが好ましい。
【0042】
放射線硬化性粘着剤は、粘着主剤としてベースポリマーを少なくとも含む。放射線硬化性粘着剤は、必要に応じて、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分若しくはオリゴマー成分をさらに含んでもよいし、熱架橋剤や光重合開始剤等をさらに含んでもよい。
【0043】
(ベースポリマー)
ベースポリマーは、アクリル系ポリマーでありうる。アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含む。なお、本願明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル及び/又はメタクリルを意味するものとする。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例には、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、及びエイコシルエステルが含まれる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルの例には、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステル及びシクロヘキシルエステルが含まれる。(メタ)アクリル酸アリールエステルの例には、(メタ)アクリル酸フェニル及び(メタ)アクリル酸ベンジルが含まれる。アクリル系ポリマーを構成するモノマーは、1種類の(メタ)アクリル酸エステルを含んでもよいし、2種類以上の(メタ)アクリル酸エステルを含んでもよい。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、アクリル系ポリマーの全構成単位に対して40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
【0046】
アクリル系ポリマーは、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な1又は2種類以上の他のモノマーに由来する構成単位さらに含んでいてもよい。
【0047】
他のモノマーの例には、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド及びアクリロニトリル等の官能基含有モノマーが含まれる。アクリル系ポリマーがこれらの官能基含有モノマーに由来する構成単位をさらに含むことで、凝集力や耐熱性を高めることができる。
カルボキシ基含有モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸が含まれる。酸無水物モノマーの例には、無水マレイン酸及び無水イタコン酸が含まれる。ヒドロキシ基含有モノマーの例には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシドデシル、及び(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルが挙げられる。グリシジル基含有モノマーの例には、(メタ)アクリル酸グリシジル及び(メタ)アクリル酸メチルグリシジルが含まれる。スルホン酸基含有モノマーの例には、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が含まれる。リン酸基含有モノマーの例には、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが含まれる。
【0048】
他のモノマーの例には、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な多官能性モノマーも含まれる。アクリル系ポリマーが多官能性モノマーに由来する構成単位をさらに含むことで、ポリマー骨格中に放射線重合性基を導入できるため、架橋性を付与できる。それにより、架橋密度が増して、剥離時の粘着力の低下を生じさせやすく、凝集力を高めることができる。架橋構造を形成することができる。
多官能性モノマーの例には、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(即ち、ポリグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートが含まれる。
【0049】
アクリル系ポリマーが他のモノマーに由来する構成単位を含む場合、他のモノマーに由来する構成単位の含有量は、アクリル系ポリマーの全構成単位に対して好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上20質量%以下でありうる。
【0050】
また、アクリル系ベースポリマーは、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有してもよい。そのようなベースポリマーを含む放射線硬化性粘着剤は、後述するモノマー成分やオリゴマー成分を含まなくても、ラジカル重合性を有する。
【0051】
アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入手法としては、例えば、所定の官能基(第1の官能基)を有するモノマーを含む原料モノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得た後、第1の官能基との間で反応を生じて結合しうる所定の官能基(第2の官能基)と放射線重合性炭素-炭素二重結合とを有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0052】
第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基が挙げられる。これら組み合わせのうち、反応追跡の容易さの観点からは、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせや、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが、好適である。また、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製するのは技術的難易度が高いことから、アクリル系ポリマーの作製又は入手のしやすさの点では、アクリル系ポリマー側の上記第1の官能基がヒドロキシ基であり且つ上記第2の官能基がイソシアネート基である場合が、より好適である。また、放射線重合性炭素-炭素二重結合と第2の官能基たるイソシアネート基とを併有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、及びm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートが挙げられる。
【0053】
アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万~300万である。数平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算にて測定することができる。
【0054】
(モノマー成分、オリゴマー成分)
放射線重合性モノマー成分やオリゴマー成分は、放射線の照射により架橋構造をより形成しやすくする観点から、放射線重合性基を2以上有する2官能以上のモノマーやオリゴマーであることが好ましい。
【0055】
放射線重合性モノマー成分の例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及び1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0056】
放射線重合性オリゴマー成分の例には、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等のオリゴマーが含まれる。オリゴマー成分の分子量は、例えば100~30000程度とすることができる。
【0057】
放射線硬化性粘着剤中の放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分の総含有量は、特に限定されないが、第1の粘着層の粘着力を、放射線の照射により低下させやすくする観点から、ベースポリマー100質量部に対して、例えば0.5~150質量部であることが好ましく、1~100質量部であることがより好ましく、3~10質量部であることがさらに好ましい。
【0058】
(熱架橋剤)
放射線硬化性粘着剤は、熱架橋剤をさらに含むことが好ましい。熱架橋剤は、主にベースポリマーが有する官能基(例えばカルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基等)と反応して架橋構造を形成する。熱架橋剤は、例えば、放射線硬化性粘着剤を塗布後、加熱により乾燥させて第1の粘着層を形成する際に、ベースポリマーを架橋させることができる。それにより、第1の粘着層の凝集力等をより調整しやすくすることができる。
【0059】
熱架橋剤は、ベースポリマーが有する官能基と反応する架橋剤であればよい。そのような熱架橋剤の例には、ポリイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、ポリオール系架橋剤(ポリフェノール系化合物等)、アジリジン系架橋剤、及びメラミン系架橋剤が含まれる。熱架橋剤の含有量は、例えばベースポリマー100質量部に対して6質量部以下であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0060】
(光重合開始剤)
放射線硬化性粘着剤は、光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。光重合開始剤は、主に、放射線重合性基を有するアクリル系ポリマーやモノマー成分、オリゴマー成分と反応して、架橋構造を形成する。光重合開始剤は、例えば第1の粘着層に紫外線等を照射した際に、ベースポリマーやモノマー成分等を架橋させやすくし、粘着力をより低下させることができる。
【0061】
光重合開始剤の例には、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が含まれる。α-ケトール系化合物の例には、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが含まれる。
アセトフェノン系化合物の例には、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1が含まれる。
ベンゾインエーテル系化合物の例には、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びアニソインメチルエーテルが含まれる。
ケタール系化合物の例には、ベンジルジメチルケタールが含まれる。
芳香族スルホニルクロリド系化合物の例には、2-ナフタレンスルホニルクロリドが含まれる。光活性オキシム系化合物の例には、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムが含まれる。
ベンゾフェノン系化合物の例には、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸及び3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンが含まれる。
チオキサントン系化合物の例には、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン及び2,4-ジイソプロピルチオキサントンが含まれる。
【0062】
放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して例えば0.05~20質量部である。
【0063】
(その他添加剤)
放射線硬化性粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、光増感剤、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤等をさらに含んでいてもよい。
【0064】
光増感剤は、ベンゾフェノン等であってよい。
【0065】
着色剤は、顔料や染料であってもよい。また、着色剤は、放射線照射を受けて着色する化合物であってもよい。そのような化合物としては、例えばロイコ染料が挙げられる。
【0066】
放射線硬化性粘着剤としては、アクリル系ポリマー等のベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含む添加型の放射線硬化性粘着剤であってもよいし;放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含む内在型の放射線硬化性粘着剤であってもよい。
【0067】
1-2-2.加熱発泡型粘着剤
加熱発泡型粘着剤は、例えば、粘着主剤と、加熱によって発泡や膨張をする成分とを少なくとも含む。加熱発泡型の粘着層は、発泡性成分や膨張性成分が充分な加熱を受けると膨張し、その表面(粘着面)にて凹凸形状を生じる。所定の被着体に粘着面が貼着している状態で加熱発泡型粘着層がそのような加熱を受けると、当該粘着層が膨張してその粘着面にて凹凸形状を生じて被着体に対する接着総面積を減じ、当該被着体に対する粘着力が低下する。
【0068】
粘着主剤としては、上記した粘着主剤としてのアクリル系ポリマーや、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤を用いることができる。
【0069】
加熱によって発泡や膨張をする成分としては、例えば、発泡剤及び熱膨張性微小球が挙げられる。
【0070】
発泡剤としては、種々の無機系発泡剤及び有機系発泡剤が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム及びアジド類が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタンやジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリルやアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド) 等のヒドラジン系化合物、ρ-トルイレンスルホニルセミカルバジドや4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物、並びに、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンやN,N'-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物が挙げられる。
【0071】
熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン及びペンタンが挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルベーション法や界面重合法等によって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン及びポリスルホンが挙げられる。
【0072】
加熱発泡型粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記した放射線硬化型粘着剤と同様の熱架橋剤やその他添加剤をさらに含んでもよい。
【0073】
1-2-3.物性
第1の粘着層の厚みは、特に限定されないが、例えば1~100μmであることが好ましい。中でも、第1の粘着層が放射線硬化性粘着剤を含む場合、第1の粘着層の厚みは、例えば2~50μmであることが好ましい。
【0074】
1-3.第2の粘着層
第2の粘着層は、中間層の他方の面上に配置されている。例えば、粘着テープを半導体デバイスの製造に用いる場合、第2の粘着層は、支持体が配置される側に位置することが好ましい。
【0075】
第2の粘着層に含まれる粘着剤は、光や熱を付与することにより粘着力が低下する粘着剤であってもよいし、感圧性粘着剤であってもよい。即ち、第2の粘着層に含まれる粘着剤は、放射線硬化性粘着剤や加熱発泡型硬化性粘着剤であってもよいし、感圧性粘着剤であってもよい。
【0076】
放射線硬化性粘着剤や加熱発泡型硬化性粘着剤は、第1の粘着層に用いられる放射線硬化性粘着剤や加熱発泡型硬化性粘着剤とそれぞれ同様であってよい。要は、粘着テープの使い方に応じて組成や物性を調整すればよい。例えば、第2の粘着層は、第1の粘着層ほどの高い粘着力や高い剥離性は求められない場合には、粘着力をある程度維持できるものであってよい。これとは反対に、第2の粘着層は、第1の粘着層よりも剥離性が高いものであってもよい。
【0077】
例えば、アクリル系ポリマー等のベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含む放射線硬化性粘着剤(添加型の放射線硬化性粘着剤)を用いてもよい。また、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する放射線硬化性粘着剤(内在型の放射線硬化性粘着剤)を用いてもよい。また、これらを併用してもよい。放射線照射による粘着力低下の程度については、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基の含有量や、上記したモノマー成分やオリゴマー成分の含有量、光重合開始剤の種類及び含有量等によって調整することができる。
【0078】
第2の粘着層の放射線硬化性粘着剤に含まれる低分子量成分の種類や量は、第1の粘着層の放射線硬化性粘着剤に含まれる低分子量成分の種類や量と異なっていてもよい。例えば、第2の粘着層の放射線硬化性粘着剤に含まれる低分子量成分の含有量は、第1の粘着層の放射線硬化性粘着剤に含まれる低分子量成分の含有量よりも少なくてもよいし、多くてもよい。また、第2の粘着層の放射線硬化性粘着剤は光増感剤を含まず、第1の粘着層の放射線硬化性粘着剤は光増感剤を含んでいてもよい。
【0079】
感圧性粘着剤としては、上記した粘着主剤としてのアクリル系ポリマーやゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤を用いることができる。
【0080】
第2の粘着層に含まれる粘着剤は、第1の粘着層に含まれる粘着剤と同様のその他添加剤をさらに含んでもよい。
【0081】
第2の粘着層の厚みは、特に限定されず、第1の粘着層の厚みと同じであってもよいし、異なってもよい。第2の粘着層は、例えば表面が平坦な支持体と接着させるため、第1の粘着層の厚みよりも薄くすることができる。第2の粘着層の厚みは、例えば0.1~30μmであることが好ましく、0.1~10μmであることがより好ましい。
【0082】
1-4.他の層
粘着テープは、上記した中間層、第1の粘着層及び第2の粘着層以外の他の層をさらに含んでいてもよい。
【0083】
1-5.粘着テープの物性
第1の粘着層上に2以上の半導体チップを配置したときに、半導体チップの高さのばらつきが5μm未満であることが好ましい。
【0084】
チップの高さのばらつきは、以下の手順で測定することができる。
1)まず、粘着テープを10cm×10cmの大きさにカットする。次いで、当該粘着テープの第2の粘着層を、ガラス基板に貼付する。
2)次いで、当該粘着テープの第1の粘着層上に、1cm×1cm×高さ50μmの半導体チップを5枚配置する。具体的には、上記第1の粘着層の中央部と4隅に、それぞれ半導体チップを配置し、2Nの力で圧着して固定する。
3)そして、該ガラス基板、粘着テープ及び半導体チップの総厚みを、高さ計測機(例えばミツトヨ製Litematic VL-50A-S等の接触式高さ計測機)で測定する。測定された値から予め測定したガラス基板の厚みを差し引いて、粘着テープ上の半導体チップの高さ(粘着テープの半導体チップが配置されている面とは反対側の面からの半導体チップの高さ)を測定する。
サンプルを3点作り、各サンプルで5点×3サンプル=15点の測定結果のうち最大値と最小値の差を「半導体チップの高さのばらつき」とする。
【0085】
半導体チップの高さのばらつきは、上記した通り、中間層の厚みによって調整することができる。中間層の厚みを小さくするほど、半導体チップの高さのばらつきはより小さくなりやすい。
【0086】
1-6.粘着テープの製造方法
上記粘着テープは、任意の方法で製造することができる。例えば、中間層の一方の面上に第1の粘着層を形成し、他方の面上に第2の粘着層を形成して、粘着テープを製造してもよい。また、セパレータ上に第1の粘着層を形成したもの、セパレータ上に第2の粘着層を形成したもの、をそれぞれ準備し、セパレータ付き第1の粘着層を中間層の一方の面に貼り合わせ、セパレータ付き第2の粘着層を中間層の他方の面に貼り合わせて、粘着テープを製造してもよい。なお、各粘着層は、粘着剤を塗布した後、加熱により乾燥させて形成することができる。
【0087】
2.半導体装置の製造方法
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、支持体上に、粘着テープを介して半導体デバイスを配置する工程と、半導体デバイスを加工する工程と、第1の粘着層と加工された半導体デバイスとの間、又は、第2の粘着層と支持体との間を剥離する工程とを有する。
【0088】
半導体デバイスは、半導体ウエハ、半導体チップ、及び複数のチップがモールドされた半導体デバイスでありうる。半導体ウエハは、例えばシリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、サファイアからなる群より選ばれる少なくとも1種の半導体材料を含む基板を有する。当該基板の表面には、所定の回路が形成されていてもよい。半導体チップは、当該基板を用いた電気回路素子でありうる。
【0089】
半導体デバイスを加工する工程は、特に限定されず、例えば半導体ウエハの裏面を研削して薄化する工程や、半導体ウエハの裏面に電極を形成する工程であってもよい。また、半導体デバイスを加工する工程は、1又は2以上の半導体チップを樹脂封止する工程や、得られる封止体の裏面を研削して薄化する工程であってもよい。
以下の実施の形態では、半導体デバイスを加工する工程として、2以上の半導体チップを樹脂封止した後、得られる封止体の裏面を研削して薄化する例で説明する。
【0090】
図1A~
図1Gは、本発明の一実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な部分拡大断面図である。
図2は、
図1Aの部分拡大断面図を示す。
【0091】
図1A~
図1Gに示すように、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、1)支持体20上に粘着テープ10を介して、2以上の半導体チップ30を配置する工程と(
図1A参照)、2)2以上の半導体チップ30を樹脂封止して、封止体40を得る工程(
図1B参照)と、3)封止体40の裏面を研削する工程と(
図1C参照)、4)粘着テープ10と支持体20との間を剥離する工程と(
図1D、
図1E参照)、5)粘着テープ10と2以上の半導体チップ30との間を剥離する工程とを含む(
図1F、
図1G参照)。なお、本実施の形態では、粘着テープ10の第1の粘着層11と第2の粘着層12が、光の吸収波長が異なる放射線硬化性粘着剤を含む例で説明する。
【0092】
1)の工程
支持体20上に、粘着テープ10を介して2以上の半導体チップ30を配置する(
図1A参照)。本実施の形態では、粘着テープ10の第2の粘着層12と支持体20とを貼り合わせ、第1の粘着層11と半導体チップ30とを貼り合わせる(
図2参照)。それにより、粘着テープ10と、第1の粘着層11上に配置された2以上の半導体チップ30と、第2の粘着層12上に配置された支持体20とを含む積層体が得られる。
【0093】
支持体20は、剛性を有する基板であればよく、例えば樹脂基板、セラミックス基板、ガラス基板のいずれであってもよい。このうち、紫外線照射により第1の粘着層11や第2の粘着層12の粘着力を低下させて剥離する場合は、支持体は、紫外線を透過する透明支持体であることが好ましく、ガラス基板や、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、PET、ナイロン、ウレタン等の透明樹脂基板であることが好ましい。中でも、厚みの精度が高く、耐熱性(半導体デバイスとの線膨張係数の差が小さいこと)の観点ではガラス基板やセラミック基板が好ましく、さらに紫外線透過性の観点では、ガラス基板がより好ましい。
【0094】
支持体20の厚みは、半導体チップを安定に支持固定できる程度であれば特に制限されないが、500μm~3mmが好ましく、0.7~1mmであることがより好ましい。
【0095】
半導体チップ30は、回路形成面(表面)が第1の粘着層11側となるように配置してもよいし、回路形成面とは反対側の面(裏面)が第1の粘着層11側となるように配置してもよい。本実施の形態では、半導体チップ30は、回路形成面(表面)が第1の粘着層11側となるように配置している。
【0096】
半導体チップ30の配置は、押圧により行うことができる。なお、第1の粘着層11と半導体チップ30との貼り合わせと、第2の粘着層12と支持体20との貼り合わせは、同時に行ってもよいし、逐次的に行ってもよい。
【0097】
2)の工程
次いで、2以上の半導体チップ30を、粘着テープ10を介して支持体20に固定した状態で、2以上の半導体チップ30を埋めるように封止材Sを付与して、封止体40を得る(
図1B参照)。
【0098】
封止材は、特に限定されないが、硬化性組成物でありうる。硬化性組成物は、例えば、熱硬化性樹脂と、硬化剤とを含む。熱硬化性樹脂の例には、エポキシ樹脂が含まれる。硬化剤の例には、酸無水物類、アミン化合物、フェノール化合物等が含まれる。硬化性組成物は、必要に応じて無機フィラー等をさらに含んでもよい。
【0099】
封止材を、2以上の半導体チップ30を埋めるように付与した後、硬化させる。封止材の付与方法は、特に限定されず、インクジェット法であってもよい。封止材の硬化は、加熱により行うことができる。封止材の加熱温度は、熱硬化性樹脂が硬化しうる温度であればよく、例えば150~185℃とすることができる。
【0100】
3)の工程
次いで、封止体40を、粘着テープ10を介して支持体20に固定した状態で、封止体40の裏面を研削する(
図1C参照)。それにより、封止体40を、所定以下の厚みに薄化させる。
【0101】
4)の工程
次いで、粘着テープ10と支持体20との間を剥離する(
図1D、
図1E参照)。本実施の形態では、支持体20を介して第2の粘着層12の放射線硬化性粘着剤の吸収波長に近い光を照射して、第2の粘着層12の放射線硬化性粘着剤を硬化させる。それにより、第2の粘着層12の粘着力を低下させて、支持体20を剥離する。
【0102】
照射する放射線は、粘着テープ10の第1の粘着層11や第2の粘着層12を構成する粘着剤を硬化させることができる波長のものであればよい。例えば、波長が200~360nm(好ましくは355nm)の光でありうる。照射エネルギーは、第2の粘着層12の粘着剤の粘着力を十分に低下させる程度であればよい。
【0103】
5)の工程
そして、粘着テープ10と封止体40との間を剥離する(
図1F、
図1G参照)。本実施の形態では、第2の粘着層12及び中間層13を介して、第1の粘着層11の放射線硬化性粘着剤の吸収波長に近い光を照射することにより、第1の粘着層11の放射線硬化性粘着剤を硬化させる。それにより、第1の粘着層11の粘着力を低下させて、封止体40から粘着テープ10を剥離する。
【0104】
(作用)
上記実施の形態では、半導体チップ30の封止や研削等の加工を、上記粘着テープ10を介して支持体20に固定した状態で行う(上記2)、3)の工程)。上記粘着テープ10は、中間層13の厚みが薄いため、粘着テープ10全体の厚みのばらつきも少ない。そのため、粘着テープ10の第1の粘着層11上に2以上の半導体チップ30を配置したときに、半導体チップ30間で高さのばらつきを少なくすることができるため、半導体チップ30間で加工のばらつきも少なくすることができる。また、樹脂封止したり、裏面を研削したりする工程では、プロセス温度が高温になる。上記粘着テープ10は、中間層の耐熱性が高いため、そのような高温下でも半導体デバイスからの剥離やしわを抑制できるため、半導体チップ30の加工のばらつきを少なくすることができる。
【0105】
一方、粘着テープ10を剥離する際には、支持体20を介して光を照射したり(4)の工程)、粘着テープ10の第2の粘着層12や中間層13を介して光を照射したり(5)の工程)することで容易に剥離することができる。本実施の形態では、特に中間層13が光透過性を有するため、第2の粘着層12側から光を照射しても、中間層13を介して第1の粘着層11の内部に光を到達することができる。そのため、第1の粘着層11の粘着力を低下させることができ、粘着テープ10を容易に剥離することができる。
【0106】
3.変形例
なお、上記実施の形態では、粘着テープ10と支持体20との間を剥離した後(4)の工程)、粘着テープ10と半導体チップ30との間を剥離している(5)の工程)が、これに限らない。例えば、4)の工程と5)の工程とを同時に行ってもよいし、4)の工程を省略してもよい。4)の工程を省略する場合、第1の粘着層11が光硬化性粘着剤を含んでいればよく、第2の粘着層12は、光硬化性粘着剤を含まなくてもよく、例えば感圧粘着剤を含んでいてもよい。また、第2の粘着層12が光硬化性粘着剤を含む場合、第2の粘着層12の光硬化性粘着剤は、第1の粘着層11の光硬化性粘着剤よりも、光照射により粘着力の低下が少ないもの(粘着力を維持できるもの)であってよい。
【0107】
また、上記実施の形態では、光照射により第1の粘着層11や第2の粘着層12の粘着剤を光硬化させて、粘着力を低下させているが、これに限らず、加熱発泡型粘着剤を用いてもよく、機械的に剥離してもよい。加熱発泡型粘着剤を用いる場合、剥離時には、光照射に代えて、積層体を、発泡成分が発砲できる程度に加熱することが好ましい。また、支持体や粘着テープの中間層は、光透過性を有さないものであってもよい。
【0108】
また、上記実施の形態では、半導体デバイスとして、2以上の半導体チップ30を加工する例を示したが、これに限定されず、1つの半導体ウエハ30を加工してもよい。
【0109】
図3A~
図3Gは、変形例に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な図である。変形例に係る半導体装置の製造方法は、1)支持体20上に粘着テープ10を介して、半導体ウエハ30を配置する工程と(
図3A参照)、2)半導体ウエハ30の裏面を研削する工程と(
図3B参照)、3)半導体ウエハ30の裏面に電極50を形成する工程(
図3C参照)、4)粘着テープ10と支持体20との間を剥離する工程と(
図3D、3E参照)、5)粘着テープ10と半導体ウエハ30との間を剥離する工程とを剥離する(
図3F、3G参照)。変形例に係る半導体装置の製造方法は、半導体デバイスとして半導体ウエハ30を用い、加工内容が異なる以外は、上記実施の形態に係る半導体装置の製造方法と同様である。
【0110】
2)の工程では、例えば厚み100μm以下となるまで半導体ウエハ30の裏面を研削する(
図3B参照)。3)の工程では、半導体ウエハ30の裏面に電極等を形成することができる(
図3C参照)。
【0111】
このように、半導体ウエハ30の裏面研削や電極形成等の加工を、上記粘着テープ10を介して支持体20に固定した状態で行う(上記2)、3)の工程)。上記の通り、粘着テープ10は中間層13の厚みが薄いため、粘着テープ10全体の厚みのばらつきも少ない。そのため、粘着テープ10の第1の粘着層11上に半導体ウエハ30を配置したときに、半導体ウエハ30の面内の高さのばらつきを少なくすることができる。そのため、半導体ウエハ30の面内での加工のばらつきも少なくすることができる。
【0112】
また、上記実施の形態では、第1の粘着層11上に半導体デバイスを配置し、第2の粘着層12上に支持体20を配置する例を示したが、これに限らず、第2の粘着層12上に半導体デバイスを配置し、第1の粘着層11上に支持体20を配置してもよい。
【0113】
また、上記実施の形態では、1)の工程では、粘着テープ10と、第1の粘着層11上に配置された2以上の半導体チップ30と、第2の粘着層12上に配置された支持体20とを含む積層体が得られる(
図1A、
図3A参照)。また、5)の工程では、粘着テープ10と、第1の粘着層11上に配置された2以上の半導体チップ30とを有する積層体が得られる(
図1E、
図3E参照)。これらの積層体は、半導体デバイスが仮固定された構造体として搬送、保管又は使用することができる。
【実施例0114】
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
図4A及び
図4Bは、半導体チップの高さのばらつきの測定方法を示す模式的な図である。
【0115】
1.材料
1-1.粘着主剤(ベースポリマー)の溶液の調製
アクリル酸エチル48.5質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル19.5質量部、アクリル酸メチル21.5質量部、メタクリル酸グリシジル10.5質量部及び重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を混合し、トルエン39質量部、酢酸エチル49質量部が入った窒素置換フラスコ中に撹拌しながら80℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、冷却し、これにキシレン74質量部、アクリル酸5.0質量部、フェノチアジン0.03質量部とテトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド0.6質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で32時間反応させ、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合を持つアクリル系樹脂(重量平均分子量:250,000)を含む粘着主剤の溶液を得た(固形分39wt%)。
【0116】
1-2.第1の粘着層の材料
・粘着材1(光硬化性粘着剤)
得られた粘着主剤の溶液100質量部に、モノマー成分(光架橋成分)としてジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(東亜合成(株)製、アロニックスM400)0.81質量部、光開始剤として2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.社製:Omnirad651)0.52質量部、熱架橋剤としてポリイソシアネートプレポリマー(三井化学(株)製オレスターP49-75s)0.12質量部、酢酸エチル116.5質量部を添加して、粘着材1を得た。
【0117】
・粘着材1-2(感圧性粘着剤)
得られた粘着主剤の溶液100質量部に、熱架橋剤としてポリイソシアネートプレポリマー(三井化学(株)製、オレスターP49-75s)0.24質量部、酢酸エチル95質量部を添加して粘着材1-2を得た。
【0118】
1-3.第2の粘着層の材料
・粘着材2
得られた粘着主剤の溶液100質量部に、モノマー成分(光架橋成分)としてジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(東亜合成(株)製、アロニックスM400)4.41質量部、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.社製:Omnirad651)2.63質量部、熱架橋剤としてポリイソシアネートプレポリマー(三井化学(株)製オレスターP49-75s)0.12質量部、酢酸エチル116.5質量部を添加して、粘着材2を得た。
【0119】
1-4.中間層の材料
・C-1
コルコート社製のコルコートN-103X
・C-2
銅箔(福田金属箔紛工業社製、FUTF 5DAS-2、厚さ2μm)
・C-3
PETフィルム(東レ社製、ルミラーS10、厚さ50μm)
・C-4
PENフィルム(東洋紡製、テオネックスQ51、厚さ50μm)
【0120】
(厚み)
中間層C-1については、後述するようにコルコートN-103X(コルコート社製)をOPPセパレータ(王子エフテックス社製、アルファンE-201M、厚み50μm)にバーコーターで塗工し、100℃で10分間乾燥させて得られる中間層C-1の厚みを、膜厚測定装置:浜松フォトニクス社 Optical Nano Gauge C13027で測定した。
【0121】
(光線透過率)
中間層の光線透過率は、波長355nmの光の光線透過率を光学透過率測定器(東亜システムクリエイト社製、DST-2501)により測定した。
【0122】
(加熱収縮率)
中間層をオーブンにより200℃で10分間加熱した後、室温まで冷却した。加熱前後の寸法を測定し、下記式に基づいて加熱収縮率(%)を算出した。
中間層の加熱収縮率(%)=[(加熱前の寸法-加熱後の寸法)/加熱前の寸法)]×100
【0123】
【0124】
2.粘着テープの作製
2-1.各層の作製
(中間層の形成)
中間層としてシロキサン系樹脂(コルコート社製、コルコートN-103X)をOPPセパレータ(王子エフテックス社製、アルファンE-201M、幅200mm、長さ300mm、厚み50μm)にバーコーターで塗工し、100℃で10分間乾燥させて、厚み50nmの中間層を形成した。
【0125】
(第1の粘着層の形成)
次いで、粘着材1をPETセパレータ(三井化学東セロ社製、L41、幅200mm、長さ300mm、厚み38μm)にバーコーターで塗工し、100℃で10分間乾燥させて、第1の粘着層として厚み5μmの粘着層1を形成した。
【0126】
また、粘着材1-2をPETセパレータ(三井化学東セロ社製、L41、幅200mm、幅200mm、長さ300mm、厚み38μm)にバーコーターで塗工し、100℃で10分間乾燥させて、第1の粘着層として厚み5μmの粘着層1-2を形成した。
【0127】
(第2の粘着層の形成)
次いで、粘着材2をセパレータ(三井化学東セロ社製、T15、幅200mm、長さ300mm、厚み38μm)上にバーコーターで塗工した後、100℃で10分間乾燥させて、第2の粘着層として厚み5μmの粘着層2を形成した。
【0128】
2-2.粘着テープ1の作製
得られた中間層を粘着層1と貼り合わせ中間層側のOPPを剥離したのち、中間層に粘着層2を貼り合わせ、さらに50℃で3日間処理させて、PETセパレータ(L41)/粘着層1/中間層(コルコートN-103X)/粘着層2/PETセパレータ(T15)がこの順に積層された粘着テープを得た。
【0129】
<粘着テープ2~5の作製>
中間層及び第1の粘着層を表2に示すように変更したこと以外は粘着テープ1と同様にしてセパレータ付き粘着テープを得た。
【0130】
3.評価
上記作製したセパレータ付き粘着テープ1~5について、以下の評価を行った。
【0131】
3-1.半導体チップの高さばらつき
まず、上記作製したセパレータ付き粘着テープを、10cm×10cmの大きさにカットした。
次いで、当該粘着テープ10の第2の粘着層12上のセパレータ(不図示)を剥離し、同じ大きさのガラス基板(不図示)に貼付した。
次いで、当該粘着テープ10の第1の粘着層11上のセパレータ(不図示)を剥がした後、露出した第1の粘着層11上に、1cm×1cm×高さ50μmの半導体チップ30を5枚配置した。具体的には、上記第1の粘着層11の中央部と4隅に、それぞれ半導体チップ30を配置し、2Nの力で圧着して固定した(
図4A参照)。
そして、該ガラス基板(不図示)、粘着テープ10及び半導体チップ30の総厚みを、ミツトヨ製接触式高さ計測機Litematic VL-50A-Sで測定した。測定により得られた値から予め測定したガラス基板(不図示)の厚さを差し引いて、粘着テープ10上の半導体チップ30の高さ(粘着テープ10の半導体チップ30が配置された面とは反対側の面からの半導体チップ30の高さH)を測定した(
図4B参照)。
この測定を3サンプルに対して実施した。そして、5点×3サンプル=15点の測定結果のうち最大値と最小値の差を「半導体チップの高さのばらつき」とした。
【0132】
3-2.粘着性
3-2-1.粘着力
(第1の粘着層)
上記作製したセパレータ付き粘着テープを50mm×200mmの大きさにカットした。この粘着テープの第2の粘着層上のセパレータを剥離し、この第2の粘着層に剥離用テープを貼り合わせた。その後第1の粘着層上のセパレータを剥離し、SUS304に貼り付けて1時間経過後に第2の粘着層側から紫外線を照射(光源:高圧水銀灯、照射強度:12mW/cm2、時間:1分間)した。
具体的には、引張試験機(例えば株式会社エー・アンド・ディ社製、RTF)を用いて剥離試験を行い、第1の粘着層の、SUS304に対する剥離粘着力を測定した。試験条件は、剥離速度300mm/分、剥離角度180°、温度25℃とした。
【0133】
なお、実施例2の第1の粘着層の粘着力は、以下の方法で測定した。
上記作製したセパレータ付き粘着テープを50mm×200mmの大きさにカットした。この粘着テープの第2の粘着層上のセパレータを剥離し、この第2の粘着層に剥離用テープを貼り合わせた。その後、第1の粘着層上のセパレータを剥離し、SUS304に貼り付けて1時間放置した。
具体的には、引張試験機(例えば株式会社エー・アンド・ディ社製RTF)を用いて剥離試験を行い、第1の粘着層の、SUS304に対する剥離粘着力を測定した。試験条件は、剥離速度300mm/分、剥離角度180°、温度25℃とした。
【0134】
(第2の粘着層)
上記作製したセパレータ付き粘着テープを50mm×200mmの大きさにカットした。この粘着テープの第2の粘着層上のセパレータを剥離し、SUS304に貼り付けて1時間放置後、第1の粘着層側のセパレータを剥離し剥離用テープを貼付した。その後、紫外線を照射(光源:高圧水銀灯、照射強度:12mW/cm2、時間:1分間)した。
そして、上記と同様の方法で粘着力を測定した。
【0135】
3-3.熱履歴後の形状安定性
セパレータ付き粘着テープの第1の粘着層上のセパレータを剥離して、ガラス基板に貼り付けた。得られた積層体をオーブンにより230℃で30分間加熱した後、室温まで冷却した後の外観を評価した。
【0136】
粘着テープ1~5の評価結果を表2に示す。
【表2】
【0137】
表2に示されるように、厚みが3μmよりも厚い中間層を有する粘着テープ4及び5では、半導体チップの高さのばらつきが大きかった。また、熱履歴後に粘着テープの半導体ウエハからの剥離やしわが発生し、形状安定性に劣り、耐熱性が低いことがわかる。
【0138】
これに対し、粘着テープ1~3では、半導体チップの高さのばらつきが少なかった。また、中間層の加熱収縮率が低く熱履歴後の形状安定性も良好であり、耐熱性が高いことがわかる。また、粘着テープ1及び2では、バリア性を有することで添加剤の透過もなく中間層を介して光照射後の粘着力の低下が良好であった。
【0139】
これらのことから、中間層の厚みを3μm以下とすることで、半導体チップの高さばらつきを少なくできることがわかる。また、中間層を金属やシロキサン化合物等で構成することで、耐熱性、バリア性を良好にしうることがわかる。