(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099543
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】一酸化窒素産生促進のための組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20250626BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20250626BHJP
A61K 36/8969 20060101ALI20250626BHJP
A61K 36/235 20060101ALI20250626BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250626BHJP
A61P 9/08 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K36/8969
A61K36/235
A61P9/10 101
A61P9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216264
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】島田 正一郎
(72)【発明者】
【氏名】加治屋 勝子
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LG18
4B117LG24
4B117LL09
4C088AB40
4C088AB85
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC11
4C088AC13
4C088BA07
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA45
(57)【要約】
【課題】一酸化窒素産生促進のための組成物を提供する。
【解決手段】ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる、一酸化窒素産生促進のための組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる、一酸化窒素産生促進のための組成物。
【請求項2】
一酸化窒素産生促進が、血管内皮細胞において行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる、血管内皮機能改善のための組成物。
【請求項4】
ナルコユリおよび/またはウイキョウが、果実、根茎、花、種子、芽、葉、茎、および根からなる群から選択される少なくとも一種の部位を含む、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項5】
経口用である、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が飲食品または食品添加物である、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が保健機能食品である、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、特定保健用食品、栄養機能食品、および機能性表示食品からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1または3に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる一酸化窒素産生促進のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮細胞は、血管の内表面を構成する細胞であり、一酸化窒素(NO)等の生理活性物質を産生する機能を有することが知られている。一酸化窒素は、血管内皮由来弛緩因子の一つであり、生体内ではNO合成酵素(NOS)によるL-アルギニンからL-シトルリンへの変換反応の副産物として生じる。一酸化窒素は、血管の弾力性改善や動脈硬化へのなりにくさなど、血管機能に貢献する分子である。したがって、血管内皮細胞において一酸化窒素産生を促進することは、血管を弛緩、拡張させ、動脈硬化の抑制等に有効である。
【0003】
一酸化窒素を増やす方法として、スタチンやアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)等の薬剤が知られているが、食品として日常的に摂取することは、日常的に動脈硬化などを予防することができ、効果的である。これまで、ホップ由来のイソキサントフモール(特許文献1)等に、一酸化窒素産生促進する機能があることが知られているものの、それ以外にも食品由来の一酸化窒素産生成分が求められているといえる。
【0004】
一方、ナルコユリやウイキョウには、血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物としての利用が記載されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、ナルコユリやウイキョウと、一酸化窒素産生促進または血管内皮機能改善作用との関係については何ら報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許7352570号
【特許文献2】特開2023-97354号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一酸化窒素産生促進のための組成物を提供する。
【0008】
本発明者らは、ナルコユリおよび/またはウイキョウが血管内皮細胞における一酸化窒素の産生促進に有用であることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0009】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる、一酸化窒素産生促進のための組成物。
(2)一酸化窒素産生促進が、血管内皮細胞において行われる、(1)に記載の組成物。
(3)ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる、血管内皮機能改善のための組成物。
(4)ナルコユリおよび/またはウイキョウが、果実、根茎、花、種子、芽、葉、茎、および根からなる群から選択される少なくとも一種の部位を含む、(1)~(3)のいずれか一つに記載の組成物。
(5)経口用である、(1)~(4)のいずれか一つに記載の組成物。
(6)前記組成物が飲食品または食品添加物である、(1)~(5)のいずれか一つに記載の組成物。
(7)前記組成物が保健機能食品である、(1)~(6)のいずれか一つに記載の組成物。
(8)前記組成物が、特定保健用食品、栄養機能食品、および機能性表示食品からなる群から選択される少なくとも一種である、(1)~(7)のいずれか一つに記載の組成物。
(9)一酸化窒素産生促進のための組成物の製造における、ナルコユリおよび/またはウイキョウの使用。
(10)血管内皮機能改善のための組成物の製造における、ナルコユリおよび/またはウイキョウの使用。
(11)一酸化窒素の産生を促進する方法であって、ナルコユリおよび/またはウイキョウの有効量を、それを必要とする対象に投与することまたは摂取させることを含んでなる、方法。
(12)血管内皮の機能を改善する方法であって、ナルコユリおよび/またはウイキョウの有効量を、それを必要とする対象に投与することまたは摂取させることを含んでなる、方法。
(13)一酸化窒素産生促進のための、ナルコユリおよび/またはウイキョウ。
(14)血管内皮機能改善のための、ナルコユリおよび/またはウイキョウ。
【0010】
本発明によれば、一酸化窒素産生促進のための組成物が提供される。また、本発明によれば、血管内皮機能改善のための組成物を提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ナルコユリまたはウイキョウを添加した際の、ヒト冠状動脈血管内皮細胞における一酸化窒素の産生量の比較を示した図である。
【発明の具体的説明】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、一酸化窒素産生促進のための組成物が提供され、当該一酸化窒素産生促進のための組成物は、ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる。なお、本明細書において、「ナルコユリおよび/またはウイキョウ」とは、ナルコユリ、ウイキョウ、またはナルコユリおよびウイキョウの組合せをいう。
【0013】
本発明の別の態様によれば、血管内皮機能改善のための組成物が提供され、当該血管内皮機能改善のための組成物は、ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる。
【0014】
本発明の「ナルコユリ」は、ユリ科アマドコロ属の植物であるナルコユリ(Polygonatum falcatum)であり、ナルコランとも呼ばれ、日本や東アジアを原産地とする。
【0015】
本発明に用いられるナルコユリの部位として、例えば、果実、根茎、花、種子、芽、葉、茎、および根等が用いられ、好ましくは根茎が用いられる。
【0016】
本発明に用いるナルコユリは生のままでも乾燥したものでも使用することができる。本発明の一つの実施態様によれば「ナルコユリ」は、ナルコユリ根茎またその乾燥物であり、好ましくは、前記根茎乾燥物を粉砕して得られた根茎粉末とされる。
【0017】
ナルコユリ(根茎、根茎の乾燥粉末、エキス等を含む)が市販されている場合、本発明の目的効果を有するものが得られるのであれば、それを使用してもよい。
【0018】
本発明の「ウイキョウ」は、セリ科ウイキョウ属の植物であるウイキョウ(Foeniculum vulgare)であり、フェンネルとも呼ばれ、ヨーロッパ地中海沿岸地方を原産地とする。
【0019】
本発明に用いられるウイキョウの部位として、例えば、果実(果肉や果皮等)、根茎、花、種子、芽、葉、茎、および根等が用いられ、好ましくは果実が用いられる。
【0020】
本発明に用いるウイキョウは生のままでも乾燥したものでも使用することができる。本発明の一つの実施態様によれば「ウイキョウ」は、ウイキョウ果実またその乾燥物であり、好ましくは、前記果実乾燥物を粉砕して得られた果実粉末とされる。
【0021】
ウイキョウ(果実、果実の乾燥粉末、エキス等を含む)が市販されている場合、本発明の目的効果を有するものが得られるのであれば、それを使用してもよい。
【0022】
一酸化窒素(NO)は、生体内においてアルギニンからNO合成酵素(NOS)により合成される。ここで、一酸化窒素は、グアニル酸シクラーゼの活性化、サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の上昇、細胞外へカルシウムイオンの放出、血管平滑筋弛緩等の情報伝達系によって、血管平滑筋の弛緩作用による血管を拡張させ、降圧作用を発揮することにより、高血圧を予防、改善できる。また、一酸化窒素は、プロスタグランジンI2産生促進による血小板凝集抑制作用、および血栓の原因となる細胞接着因子の発現を抑制する作用等により血管内皮機能の改善作用を発揮し、動脈硬化を予防、改善できる。
【0023】
血管内皮細胞は、流動性の維持・調節機能や細胞の移動調節機能等、血管の恒常性を維持する機能を担っている。これらの機能のうち、流動性の維持・調節機能は、血管内皮細胞による血管の弛緩・収縮調節機能の他、血液凝固促進・抑制物質の放出による血液凝固の調節機能によって行なわれる。また、細胞の移動調節は、血管接着因子の発現調節等の機能によって行なわれる。
【0024】
本発明における「血管内皮機能改善」は、Flow-Mediated Dilation(FMD)検査やプレチスモグラフィなどによって非侵襲的な測定および診断が可能であり、好ましくは血管内皮細胞における一酸化窒素産生の促進である。
【0025】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明における一酸化窒素の産生促進は血管内皮細胞において行われる。本発明における血管内皮細胞としては、限定されるわけではないが、例えば、生体から取得された細胞、その継代された細胞、または株化された細胞等を使用してもよく、必要に応じてこれらの細胞を分化させて使用してもよい。本発明における血管内皮細胞は、いかなる動物に由来する細胞であってもよく、好ましくはヒト細胞である。本発明における血管内皮細胞としては、具体的には、ヒト腎糸球体内皮細胞(HRGEC)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト大動脈血管内皮細胞(HAEC)、ヒト肺動脈血管内皮細胞(HPAEC)、ヒト冠状動脈血管内皮細胞(HCAEC)、ヒト腸骨動脈内皮細胞(HIAEC)、ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)等が挙げられる。
【0026】
本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物は、生体内(in vivo)および生体外(in vitro)のいずれにおいて適用してもよい。本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物を対象に適用する場合、適用される対象としては、限定されるわけではないが、例えば、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどの齧歯類等の哺乳動物等が挙げられる。
【0027】
本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物におけるナルコユリおよび/またはウイキョウの配合量は、用途や後述の摂取量に応じて適宜決定できる。かかる配合量としては、例えば、本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物の一日推奨摂取量に対するナルコユリの根茎の乾燥質量またはウイキョウの果実の乾燥質量としては、例えば、1mg~5000mgが挙げられ、好ましくは1mg~1000mgとされ、より好ましくは1mg~500mgとされる。本発明の組成物がナルコユリおよびウイキョウの両方を含む場合、前記の配合量はそれらの合計量を意味する。
【0028】
本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物は、経口用組成物または局所用組成物であってもよい。本発明におけるナルコユリおよび/またはウイキョウは、好ましくは、経口摂取により消化管より吸収されて、その有効成分が体内で作用すると考えられる。したがって、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物は、経口用組成物である。
【0029】
本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物を経口用組成物とする場合、経口用組成物に配合される公知の成分(添加剤)をさらに配合することができる。このような成分としては、限定されるわけではないが、例えば、甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤(防ばい剤)、イーストフード、ガムベース、かんすい、苦味料、酵素、光沢剤、香料、酸味料、チューインガム軟化剤、軟化剤、調味料、豆腐用凝固剤、乳化剤、pH調整剤、膨張剤、栄養強化剤、その他(製造用剤等)、食品素材等が挙げられる。
【0030】
本発明における経口用組成物は、液体、半固体、固体のいずれであってもよい。
【0031】
本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物を局所用組成物とする場合、局所用組成物に配合される公知の成分(添加剤)をさらに配合することができる。このような成分としては、限定されるわけではないが、例えば、乳化剤、水和剤、溶媒、エモリエント、安定剤、増粘剤、保存剤、滑沢剤、キレート剤、充填剤、賦形剤、粉末、芳香剤、香料、吸収剤、染料、乳白剤、抗酸化剤、ビタミン、アミノ酸等が挙げられる。
【0032】
本発明における局所用組成物は、液体、半固体、固体のいずれであってもよい。
【0033】
本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物は、医薬組成物、化粧用組成物、食品組成物(例えば、飲食品、食品添加物)のいずれであってもよく、好ましくは食品組成物である。
【0034】
本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物は、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の保健機能食品であってもよく、また治療食(すなわち、治療の目的を果たすもの、または、医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの)、食事療法食、介護食等として、製造されてもよい。
【0035】
本発明の一酸化窒素産生促進のための組成物および血管内皮機能改善のための組成物におけるナルコユリおよび/またはウイキョウの一食分または一日あたりの摂取量は、一酸化窒素の産生を促進する対象や血管内皮機能を改善する対象の年齢、体重、性別や、摂取前の一酸化窒素や血管内皮機能に関係する指標値などに応じて、また非臨床的または臨床的な試験結果等に基づいて、適宜設定することができる。本発明の組成物の摂取期間も適宜設定することができ、長期間に亘って繰り返し、また日常的に、摂取することが好ましい。本発明の一つの実施態様として、本発明の組成物は、そこに含まれる有効成分の摂取量(ナルコユリおよび/またはウイキョウの有効量ともいう)として、例えば、0.001~1000mg/体重kg/日が挙げられ、好ましくは0.005~100mg/体重kg/日、より好ましくは0.01~10mg/体重kg/日である。また、かかる摂取量は5g/日以下が好ましく、2g/日以下がより好ましく、1g/日以下がより好ましくなるよう摂取されるものである。投与回数は、例えば、1日に1~5回が挙げられ、好ましくは1日に1~3回である。
【0036】
本発明の組成物の「一酸化窒素産生促進」または「血管内皮機能改善」という用途は、直接的にまたは間接的に表示することができる。直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール等の場所または手段による、広告・宣伝活動である。本発明の組成物を機能性表示食品等として製造する場合は、例えば、「血管内皮機能を改善する」、「血管内皮機能の低下を予防する」、「血管の健康を保つ」、「血管のしなやかさを維持する」、またはこれらと同視できる表示または機能表示等のように、機能性成分として含まれる成分の作用効果に基づく機能性を表示することができる。
【0037】
また、本発明の別の態様によれば、一酸化窒素産生促進のための組成物の製造における、ナルコユリおよび/またはウイキョウの使用が提供される。また、本発明のさらに別の態様によれば、血管内皮機能改善のための組成物の製造における、ナルコユリおよび/またはウイキョウの使用が提供される。
【0038】
本発明の別の態様によれば、一酸化窒素の産生を促進する方法であって、ナルコユリおよび/またはウイキョウの有効量を、それを必要とする対象に投与することまたは摂取させることを含んでなる、方法が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、血管内皮の機能を改善する方法であって、ナルコユリおよび/またはウイキョウの有効量を、それを必要とする対象に投与することまたは摂取させることを含んでなる、方法が提供される。上記方法は、治療的な方法であってもよく、非治療的な方法であってもよい。ナルコユリおよび/またはウイキョウを対象に投与するかまたは摂取させると、血管内皮細胞における一酸化窒素産生が促進され、一酸化窒素産生量が増加する。このような作用により、血管内皮機能改善が可能となる。
【0039】
また、本発明の別の態様によれば、一酸化窒素産生促進のための、ナルコユリおよび/またはウイキョウが提供される。また、本発明のさらに別の態様によれば、血管内皮機能改善のための、ナルコユリおよび/またはウイキョウが提供される。
【0040】
また、本発明の別の態様によれば、ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる組成物の一酸化窒素産生促進のための使用が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる、血管内皮機能改善のための組成物が提供される。
【0041】
上記の、製造における使用、一酸化窒素の産生を促進する方法、血管内皮の機能を改善する方法、ナルコユリおよび/またはウイキョウ、ならびに、ナルコユリおよび/またはウイキョウを含んでなる組成物の使用の態様はいずれも、本発明の組成物や方法に関する記載に準じて実施することができる。
【実施例0042】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有量は特記しない限り、質量%で示す。
【0043】
バッファー等の調製
HEPESバッファーについては次のように調製した。KCl 0.22g、NaCl 7.7g、Na2HPO4 0.14g、D-グルコース 1.8g、HEPES(株式会社 同仁化学研究所) 7.15gを超純水に添加、混合し、pH7.4に調製後、超純水で1Lにメスアップして、HEPESバッファーを得た。
【0044】
2×レコーディングメディウムについては次のように調製した。KCl 0.80g、NaCl 13.44g、CaCl2 0.40g、MgCl2 0.152g、D-グルコース 4.98g、HEPES 9.54gを超純水に添加、混合し、4mol/l KOHを用いてpH7.4(25℃)に調整した後、超純水を加えて全量を1Lにして、2×レコーディングメディウムを得た。その後、0.2μm滅菌フィルターでフィルター滅菌後、冷蔵(4℃)で保存した。使用時には、1×レコーディングメディウムとなるように超純水で希釈し使用した。
【0045】
ローディングバッファー(終濃度2.5μM DAF-FM DA)は次のように調製した。2×レコーディングメディウム 5mL、1.25mM プロベネシド 50μL、50μM DAF-FM DA(Diaminofluorescein-FM diacetate)(五稜化薬社) 500μL、および超純水 4.95mLを混合し、ローディングバッファーを得た。
【0046】
内皮細胞に適用する被験物質サンプルの調製
被験物質1(陽性対照)として、アデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)(富士フイルム和光純薬社)を用いた。ATPとHEPESバッファーとを混合し、被験物質1サンプルを得た(n=4)。さらに、被験物質2として、ウイキョウの果実の粉末(殺菌品)(日本粉末薬品社)を用いた。ウイキョウの果実の粉末とHEPESバッファーを混合し、被験物質2サンプルを得た(n=4)。さらに、被験物質3として、ナルコユリの根茎の粉末(殺菌品)(日本粉末薬品社)を用いた。ナルコユリの根茎の粉末とHEPESバッファーを混合し、被験物質3サンプルを得た(n=4)。
【0047】
内皮細胞の培養
8代目のヒト冠状動脈血管内皮細胞(Human coronary artery endothelial cells;HCAEC、クラボウ社)を96ウェルプレートに播種し、HuMedia-EG2(クラボウ社)を用いてコンフルエントまで培養した。試験前日に培地をHuMedia-EG2から血清を除いた培地に交換し一晩培養した。一晩培養後、培地をローディングバッファー100μL/ウェルに交換し、37℃、5%CO2で、1時間培養した。培養後に上清を除去し、レコーディングメディウムを100μL/ウェル添加し、測定サンプルとした。被験物質1の終濃度が10μM、被験物質2および3の終濃度がそれぞれ50μg/mLとなるように、被験物質1サンプル~被験物質3サンプルを上記測定サンプルに添加し、37℃で培養して50秒後に蛍光強度を測定した。なお、コントロール群にはHEPESバッファーのみを添加した。
【0048】
蛍光強度の測定
上記の被験物質サンプルを添加した測定サンプルについて、プレートリーダー(Infinite200PRO、TECAN社)を用いて、蛍光強度(ex.485nm,em.535nm)を測定した。得られた結果(平均値±標準偏差)を
図1に示す。コントロール群の蛍光強度に対する各被験物質の蛍光強度について、Tukey検定により群間(コントロール群vs被験物質1(ATP)添加群、コントロール群vs被験物質2(ウイキョウ)添加群、コントロール群vs被験物質3(ナルコユリ)添加群)の有意差検定を行った(有意水準:p<0.05)。その結果、被験物質2(ウイキョウ)添加群、被験物質3(ナルコユリ)添加群では、コントロール群との間に有意差が認められた。以上の結果から、ナルコユリおよびウイキョウが血管内皮細胞において一酸化窒素(NO)産生を高める生理作用(血管内皮機能改善作用)を有することが示された。