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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099577
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】センサ装置の製造方法及びセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   B81C 1/00 20060101AFI20250626BHJP
   H10D 48/50 20250101ALI20250626BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
B81C1/00
H01L29/84 A
H01L29/84 B
G01L9/00 303F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216353
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 宏介
(72)【発明者】
【氏名】樋口 徹
【テーマコード(参考)】
2F055
3C081
4M112
【Fターム(参考)】
2F055BB01
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE14
2F055FF43
2F055GG01
3C081AA17
3C081BA45
3C081BA48
3C081BA77
3C081CA17
3C081CA40
3C081DA03
3C081EA03
4M112AA01
4M112BA01
4M112CA01
4M112CA03
4M112CA04
4M112CA09
4M112CA14
4M112DA02
4M112DA06
4M112DA09
4M112DA10
4M112DA13
4M112EA03
4M112EA06
4M112EA07
4M112EA10
4M112EA11
4M112FA01
(57)【要約】
【課題】フォトリソグラフィ工程を用いることなく基板の内部に空洞を形成することが可能なセンサ装置の製造方法を提供する。
【解決手段】センサ装置(100)の製造方法は、基板(10)を準備する工程(S1)と、基板の内部に第1空洞(11)を形成する工程(S2)とを備える。第1空洞を形成する工程は、レーザ光(L)を基板の内部において集光及び吸収させることで基板の内部に複数の第2空洞(13)を形成する工程(S21)と、基板に対して熱処理を行うことで複数の第2空洞を連結させて第1空洞とする工程(S22)とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を準備する工程と、
前記基板の内部に第1空洞を形成する工程とを備え、
前記第1空洞を形成する工程は、レーザ光を前記基板の内部において集光及び吸収させることで前記基板の内部に複数の第2空洞を形成する工程と、前記基板に対して熱処理を行うことで前記複数の第2空洞を連結させて前記第1空洞とする工程とを有する、センサ装置の製造方法。
【請求項2】
前記基板の厚さ方向において前記複数の第2空洞の形成位置を変えることで、前記基板の厚さ方向において前記第1空洞の形成位置が変えられる、請求項1に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項3】
前記複数の第2空洞は、平面視において行列状に並んでいる、請求項1に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項4】
前記複数の第2空洞は、平面視において列状に並んでいる、請求項1に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項5】
前記複数の第2空洞の一部は、平面視において行列状に第1領域内に並んでおり、
前記複数の第2空洞の他の一部は、平面視において行列状に前記第1領域とは異なる第2領域内に並んでいる、請求項1に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項6】
基板を準備する工程と、
前記基板の内部に第1空洞を形成する工程とを備え、
前記第1空洞を形成する工程は、レーザ光を前記基板の内部において集光及び吸収させることで前記基板の内部に複数の第2空洞を形成する工程と、前記基板に対して熱処理を行うことで前記複数の第2空洞を連結させて前記第1空洞とする工程とを有し、
前記基板の内部には、第3空洞が形成されており、
前記第3空洞は、前記第1空洞により前記基板の外部と連通される、センサ装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3空洞は、前記第1空洞により、前記基板の主面又は前記基板の側面において前記基板の外部と連通される、請求項6に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項8】
基板を備え、
前記基板の内部には、第1空洞が形成されており、
前記基板の主面は、前記第1空洞の上方にある第1部分と、前記第1部分の周囲にある第2部分とを有し、
前記第1部分及び前記第2部分は、平坦に連なっており、
前記第1空洞の底面には、凹凸が形成されている、センサ装置。
【請求項9】
前記第1空洞の側面は、断面視において曲線状である、請求項8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記基板は、前記第1空洞と前記基板の主面との間にあるメンブレンを有する、請求項8又は請求項9に記載のセンサ装置。
【請求項11】
基板を備え、
前記基板の内部には、第1空洞と第3空洞とが形成されており、
前記第3空洞は、前記第1空洞により、前記基板の側面において前記基板の外部と連通されている、センサ装置。
【請求項12】
前記基板は、前記第3空洞と前記基板の主面との間にある第1メンブレンを有する、請求項11に記載のセンサ装置。
【請求項13】
前記第1メンブレン上に配置されている伸縮部材をさらに備える、請求項12に記載のセンサ装置。
【請求項14】
前記基板の内部には、第4空洞がさらに形成されており、
前記基板は、前記第4空洞と前記基板の主面との間に第2メンブレンを有する、請求項12に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ装置の製造方法及びセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2021-025966号公報(特許文献1)には、MEMS(Micro Electro Mechanical System)センサが記載されている。特許文献1に記載のMEMSセンサは、基板を有している。特許文献1に記載のMEMSセンサの製造方法では、第1に、第1基板が準備される。第2に、第1基板の主面上にフォトリソグラフィ工程で形成されたレジストパターンをマスクとして第1基板の主面がエッチングされることにより、凹部が形成される。
【0003】
第3に、第1基板の主面上に、第2基板が貼付される。第2基板は、SOI(Silicon On Insulator)基板であり、第1半導体層と、第2半導体層と、絶縁層とを有している。第2基板は、第1半導体層が第1基板の主面に接触するように貼付される。第4に、第2半導体層及び絶縁層が除去される。以上のようにして、特許文献1に記載のMEMSセンサでは、基板の内部に、凹部と第1半導体層とで画された凹部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-025966号公報 [概要] 特許文献1に記載のMEMSセンサの製造方法では、SOI基板を用いるため、製造コストが上昇してしまう。また、特許文献1に記載のMEMSセンサの製造方法では、フォトリソグラフィ工程が必要となる。基板の内部に空洞を形成する他の方法として、例えば熱処理を用いる方法と犠牲層エッチングを用いる方法とがある。
【0005】
熱処理を用いる方法では、第1に、基板の主面上にフォトリソグラフィ工程で形成されたレジストパターンをマスクとして、基板の主面に複数の溝を形成するためのエッチングが行われる。第2に、上記の溝を通して、基板の内部に対するエッチングが行われる。第3に、基板に対して熱処理を行うことにより、上記の溝が閉塞される。このように、熱処理を用いる方法でも、フォトリソグラフィ工程が必要となる。
【0006】
犠牲層エッチングを用いる方法では、第1に、基板上に例えばシリコン酸化物で形成された犠牲層が形成される。第2に、犠牲層上にフォトリソグラフィ工程で形成されたレジストパターンをマスクとして犠牲層がエッチングされることにより、犠牲層が基板の内部に形成される空洞の形状の形に合わせてパターンニングされる。
【0007】
第3に、基板の構成材料がデポジションされることにより、犠牲層が基板に内包されることになる。第4に、基板上にフォトリソグラフィ工程で形成されたレジストパターンをマスクとして基板に対するエッチングが行われることにより、犠牲層を露出させる溝が形成される。第5に、上記の溝を通して犠牲層がエッチングで除去されることにより、基板の内部に空洞ができる。このように、犠牲層エッチングを用いる方法では、複数回のフォトリソグラフィ工程が必要となる。
【0008】
本開示のセンサ装置の製造方法は、基板を準備する工程と、基板の内部に第1空洞を形成する工程とを備える。第1空洞を形成する工程は、レーザ光を基板の内部において集光及び吸収させることで基板の内部に複数の第2空洞を形成する工程と、基板に対して熱処理を行うことで複数の第2空洞を連結させて第1空洞とする工程とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】センサ装置100の平面図である。
図2図1中のII-IIにおける断面図である。
図3】センサ装置100の製造工程図である。
図4】レーザ光照射工程S21を説明する断面図である。
図5】熱処理工程S22を説明する断面図である。
図6】比較例1に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第1説明図である。
図7】比較例1に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第2説明図である。
図8】比較例1に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第3説明図である。
図9】比較例2に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第1説明図である。
図10】比較例2に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第2説明図である。
図11】第1絶縁膜形成工程S3を説明する断面図である。
図12】第2絶縁膜形成工程S5を説明する断面図である。
図13】コンタクトホール形成工程S6を説明する断面図である。
図14】パッド形成工程S7を説明する断面図である。
図15】変形例1に係るレーザ光照射工程S21を説明する平面図である。
図16】変形例2に係るレーザ光照射工程S21を説明する平面図である。
図17】変形例2に係るレーザ光照射工程S21が適用されたセンサ装置100の一例の平面図である。
図18】センサ装置200の断面図である。
図19】センサ装置200の製造方法において行われる準備工程S1を説明する断面図である。
図20】センサ装置200の製造方法において行われるレーザ光照射工程S21を説明する断面図である。
図21】センサ装置200の製造方法において行われる熱処理工程S22を説明する断面図である。
図22】変形例1に係るセンサ装置200の断面図である。
図23】変形例2に係るセンサ装置200の断面図である。
図24】変形例3に係るセンサ装置200の断面図である。
【0010】
[詳細な説明]
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るセンサ装置を説明する。第1実施形態に係るセンサ装置を、センサ装置100とする。
【0012】
<センサ装置100の構成>
以下に、センサ装置100の構成を説明する。
【0013】
図1は、センサ装置100の平面図である。図1中では、保護膜40の図示が省略されている。図2は、図1中のII-IIにおける断面図である。図1及び図2に示されているように、センサ装置100は、基板10と、絶縁膜20と、パッド30と、保護膜40とを有している。センサ装置100は、例えば、絶対圧センサである。
【0014】
基板10の構成材料は、例えば、単結晶シリコンである。基板10は、主面10aと、主面10bと、側面10cとを有している。主面10bは、主面10aの反対面である。主面10a及び主面10bは、基板10の厚さ方向における端面である。側面10cは、主面10a及び主面10bに連なっている。
【0015】
基板10の内部には、空洞11が形成されている。空洞11は、平面視において、例えば矩形状である。基板10は、メンブレン12を有している。メンブレン12は、空洞11と主面10aとの間にある基板10の部分である。主面10aは、第1部分と第2部分とを有している。第1部分は、空洞11の上方にある主面10aの部分である。第2部分は、第1部分の周囲にある主面10aの部分である。第1部分及び第2部分は、平坦に連なっている。空洞11の底面には、凹凸が形成されている。また、空洞11の側面は、断面視において曲線状になっている。
【0016】
図示されていないが、メンブレン12にある主面10aには抵抗が形成されており、メンブレン12の周囲にある主面10aには配線及びコンタクト領域が形成されている。抵抗、配線及びコンタクト領域は、不純物元素がドーピングされることにより形成されている。配線の一方端部は、抵抗に電気的に接続されている。配線の他方端部は、コンタクト領域に電気的に接続されている。抵抗の電気抵抗値は、気圧等の変動でメンブレン12が撓んだ際に変動することになる。
【0017】
絶縁膜20は、基板10上に配置されている。より具体的には、絶縁膜20は、主面10a上に配置されている。絶縁膜20の構成材料は、例えば、シリコン酸化物である。絶縁膜20は、例えば、第1層21と第2層22とを有している。第2層22は、第1層21上に配置されている。
【0018】
パッド30は、絶縁膜20上に配置されている。パッド30の構成材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料である。パッド30は、絶縁膜20に形成されているコンタクトホール20aを通じて、主面10aに形成されているコンタクト領域に電気的に接続されている。保護膜40は、絶縁膜20上に配置されている。保護膜40には、パッド30を少なくとも部分的に露出させる開口部が形成されている。保護膜40の構成材料は、例えばシリコン窒化物である。
【0019】
<センサ装置100の製造方法>
以下に、センサ装置100の製造方法を説明する。
【0020】
図3は、センサ装置100の製造工程図である。図3に示されているように、センサ装置100の製造方法は、準備工程S1と、空洞形成工程S2と、第1絶縁膜形成工程S3と、イオン注入工程S4と、第2絶縁膜形成工程S5と、コンタクトホール形成工程S6と、パッド形成工程S7と、保護膜形成工程S8とを有している。
【0021】
準備工程S1では、基板10が準備される。準備工程S1の後には、空洞形成工程S2が行われる。空洞形成工程S2では、基板10の内部に空洞11が形成される。空洞形成工程S2は、レーザ光照射工程S21と、レーザ光照射工程S21の後に行われる熱処理工程S22とを有している。
【0022】
図4は、レーザ光照射工程S21を説明する断面図である。レーザ光照射工程S21では、図4に示されているように、レーザ光Lが基板10の内部に集光され、基板10の内部において吸収される。これにより、基板10の内部に空洞13が形成される。レーザ光Lが走査されることにより、複数の空洞13が、例えば平面視において行列状に並ぶ。レーザ光Lは、基板10に対する吸収率が低い波長を選択するとともに、焦点位置を調整することにより、基板10の内部で集光・吸収されるようになる。
【0023】
図5は、熱処理工程S22を説明する断面図である。熱処理工程S22では、基板10に対する熱処理が行われる。熱処理が行われている際、基板10は、基板10の構成材料の原子が流動しやすい温度まで昇温される。熱処理が行われることにより、表面エネルギを小さくすべく基板10の構成材料の原子が流動し、複数の空洞13が連結されて空洞11になる。空洞11はこのようにして形成されるため、空洞11の底面には、凹凸が残存するとともに、空洞11の側面は断面視において曲線状となる。熱処理工程S22が行われた後には、すなわち空洞形成工程S2が行われた後には、第1絶縁膜形成工程S3が行われる。
【0024】
図6は、比較例1に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第1説明図である。熱処理により空洞11を形成する場合、図6に示されているように、第1に、主面10aにフォトリソグラフィ工程(主面10a上に塗布されたフォトレジストを露光・現像する工程)を用いて形成されたレジストパターンをマスクとするエッチングにより、主面10aに複数の溝10dが形成される。
【0025】
図7は、比較例1に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第2説明図である。熱処理により空洞11を形成する場合、図7に示されているように、第2に、溝10dを通して基板10の内部をエッチングすることにより、基板10の内部に空洞11が形成される。図8は、比較例1に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第3説明図である。熱処理により空洞11を形成する場合、図8に示されているように、第3に、基板10に対する熱処理が行われることにより、基板10の構成材料の原子が流動し、溝10dが閉塞される。その結果、熱処理により空洞11を形成する場合、第1部分が第2部分よりも凹んだ主面10aの形状が形成され、第1部分と第2部分とが平坦に連ならない。
【0026】
図9は、比較例2に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第1説明図である。SOI基板の貼付により空洞11を形成する場合、図9に示されているように、第1に、主面10aにフォトリソグラフィ工程を用いて形成されたレジストパターンをマスクとするエッチングにより、主面10aに凹部10eが形成される。
【0027】
図10は、比較例2に係るセンサ装置の製造方法における空洞形成工程S2を説明する第2説明図である。SOI基板の貼付により空洞11を形成する場合、図10に示されているように、第2に、主面10aにSOI基板50が貼付される。SOI基板50は、半導体層51と、半導体層52と、絶縁層53とを有している。絶縁層53は、半導体層51と半導体層52との間に配置されている。SOI基板50は、半導体層51が主面10aに対向するように貼付される。これにより、半導体層51が基板10と一体化され、半導体層51であった部分と凹部10eとにより空洞11が画される。SOI基板50が貼付された後、半導体層52及び絶縁層53は除去される。SOI基板の貼付により空洞11を形成する場合、空洞11の側面(すなわち、凹部10eの側面)がエッチングで形成されるため、断面視において曲線状にはならない。
【0028】
図11は、第1絶縁膜形成工程S3を説明する断面図である。図11に示されているように、第1絶縁膜形成工程S3では、例えば熱酸化により、主面10aに第1層21が形成される。第1絶縁膜形成工程S3の後には、イオン注入工程S4が行われる。イオン注入工程S4では、イオン注入が行われることにより、主面10aに抵抗、配線及びコンタクト領域が形成される。イオン注入工程S4の後には、第2絶縁膜形成工程S5が行われる。
【0029】
図12は、第2絶縁膜形成工程S5を説明する断面図である。図12に示されているように、第2絶縁膜形成工程S5では、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、第1層21上に第2層22が形成される。第2絶縁膜形成工程S5の後には、コンタクトホール形成工程S6が行われる。
【0030】
図13は、コンタクトホール形成工程S6を説明する断面図である。図13に示されているように、コンタクトホール形成工程S6では、絶縁膜20にコンタクトホール20aが形成される。コンタクトホール形成工程S6では、第1に、絶縁膜20上に、フォトリソグラフィ工程を用いて、レジストパターンが形成される。第2に、レジストパターンをマスクとするエッチングで絶縁膜20が部分的に開口されることにより、コンタクトホール20aとなる。コンタクトホール形成工程S6の後には、パッド形成工程S7が行われる。
【0031】
図14は、パッド形成工程S7を説明する断面図である。パッド形成工程S7では、図14に示されているように、絶縁膜20上にパッド30が形成される。パッド形成工程S7では、第1に、パッド30の構成材料が、例えばスパッタリングにより絶縁膜20上に成膜される。この際、パッド30の構成材料は、コンタクトホール20a中にも埋め込まれる。第2に、成膜されたパッド30の構成材料が、フォトリソグラフィ工程を用いて形成されたレジストパターンをマスクとするエッチングによりパターンニングされる。パッド形成工程S7の後には、保護膜形成工程S8が行われる。
【0032】
保護膜形成工程S8では、絶縁膜20上に保護膜40が形成される。保護膜形成工程S8では、第1に、例えばCVD法により、パッド30を覆うように絶縁膜20上に保護膜40の構成材料が成膜される。第2に、成膜された保護膜40の構成材料に対してフォトリソグラフィ工程を用いて形成されたレジストパターンをマスクとするエッチングが行われることにより、パッド30が露出される。以上のようにして、図1及び図2に示されているセンサ装置100の構造が得られることになる。
【0033】
<センサ装置100の効果>
以下に、センサ装置100の効果を説明する。
【0034】
センサ装置100では、基板10の内部におけるレーザ光Lの集光・吸収及び熱処理により、基板10の内部に空洞11が形成される。そのため、センサ装置100では、空洞11を形成するためにフォトリソグラフィ工程を経る必要がなく、工程が簡略化されることになる。センサ装置100では、レーザ光Lが集光・吸収される位置を調整することにより基板10の厚さ方向における空洞13の形成される位置が変わり、その結果、空洞11が形成される基板10の厚さ方向における位置が変わる。すなわち、センサ装置100によると、空洞11の基板10の厚さ方向における位置を容易に調整可能である。
【0035】
空洞11が形成される基板10の厚さ方向における位置が変わると、メンブレン12の厚さが変わる。そのため、センサ装置100では、メンブレン12の厚さが異なる、すなわち感度や耐圧を容易に変えることが可能である。
【0036】
<変形例1>
図15は、変形例1に係るレーザ光照射工程S21を説明する平面図である。図15に示されているように、複数の空洞13のうちの一部は平面視において第1領域R1に行列状に並ぶように形成され、複数の空洞13のうちの他の一部は平面視において第2領域R2に行列状に並ぶように形成されてもよい。第1領域R1及び第2領域R2は、平面視において互いに異なる領域である。この場合、基板10に複数の空洞11を形成することが可能である。
【0037】
<変形例2>
図16は、変形例2に係るレーザ光照射工程S21を説明する平面図である。図16に示されているように、複数の空洞13は、列状に並んでいてもよい。この場合、列状に並んだ複数の空洞13が連結されることにより、平面視において直線状に延在する空洞11が形成されることになる。このように、空洞11の形状は限定されない。
【0038】
図17は、変形例2に係るレーザ光照射工程S21が適用されたセンサ装置100の一例の平面図である。センサ装置100は、絶対圧センサに限られない。図17では、基板10以外の構成の図示が省略されている。図17に示されているように、センサ装置100は、バイオセンサであってもよい。この場合、平面視において直線状に延在している空洞11を複数接続することにより、基板10の内部に、培地等が流れる流路を構成することが可能である。
【0039】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るセンサ装置を説明する。第2実施形態に係るセンサ装置を、センサ装置200とする。ここでは、センサ装置100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0040】
<センサ装置200の構成>
以下に、センサ装置200の構成を説明する。
【0041】
図18は、センサ装置200の断面図である。図18に示されているように、センサ装置200は、基板10と、絶縁膜20と、パッド30と、保護膜40とを有している。この点に関し、センサ装置200の構成は、センサ装置100の構成と共通している。
【0042】
センサ装置200では、基板10の内部に、空洞14が形成されている。空洞14は、空洞11により、基板10の外部と連通されている。より具体的には、空洞14は、基板10の厚さ方向に交差する方向に沿って延在している空洞11により、側面10cにおいて基板10の外部と連通されている。このことを別の観点から言えば、空洞14は、大気開放されている。センサ装置200では、空洞14と主面10aとの間にある基板10の部分が、メンブレン12になっている。センサ装置200は、差圧センサである。すなわち、空洞14が大気開放されているため、メンブレン12は大気圧との差圧に応じて撓むことになり、センサ装置200は当該撓みに応じた信号を出力する。これらの点に関し、センサ装置200の構成は、センサ装置100の構成と異なっている。
【0043】
<センサ装置200の製造方法>
以下に、センサ装置200の製造方法を説明する。
【0044】
センサ装置200の製造方法は、準備工程S1と、空洞形成工程S2と、第1絶縁膜形成工程S3と、イオン注入工程S4と、第2絶縁膜形成工程S5と、コンタクトホール形成工程S6と、パッド形成工程S7と、保護膜形成工程S8とを有している。この点に関し、センサ装置200の製造方法は、センサ装置100の製造方法と共通している。
【0045】
図19は、センサ装置200の製造方法において行われる準備工程S1を説明する断面図である。図19に示されているように、センサ装置200の製造方法では、準備工程S1において、空洞14が形成されている基板10が準備される。空洞14は、従来公知の方法により形成されてもよい。例えば、比較例1において説明した熱処理を用いた方法や比較例2において説明したSOI基板を貼付する方法で形成されてもよい。もちろん、空洞14も、空洞形成工程S2と同様の方法で形成されてもよい。
【0046】
図20は、センサ装置200の製造方法において行われるレーザ光照射工程S21を説明する断面図である。図21は、センサ装置200の製造方法において行われる熱処理工程S22を説明する断面図である。図20及び図21に示されているように、基板10の内部におけるレーザ光Lの集光及び吸収並びにレーザ光Lの走査により複数の空洞13が形成されるとともに、熱処理が行われることにより複数の空洞13が連結されることで、空洞14と基板10の外部とを連通させる空洞11が形成される。これらの点に関し、センサ装置200の製造方法は、センサ装置100の製造方法と異なっている。
【0047】
<変形例1>
図22は、変形例1に係るセンサ装置200の断面図である。図22に示されているように、センサ装置200では、基板10に複数の空洞14が形成されていてよい。図22に示されている例では、2つの空洞14が形成されているが、これらをそれぞれ空洞14a及び空洞14bと呼ぶことがある。空洞14aは、空洞11により側面10cにおいて基板10の外部と連通されている。他方で、空洞14bは空洞11により基板10の外部と連通されていない。
【0048】
この場合、空洞14bの上方にあるメンブレン12が周囲の圧力で撓む一方、空洞14aの上方にあるメンブレン12は、空洞14bは空洞11により基板10の外部と連通されていないため、周囲の圧力で撓まない。そのため、空洞14aの上方にあるメンブレン12に形成されている抵抗の電気抵抗値をリファレンスとして用いることが可能となり、センサ装置200にリファレンス機能を持たせることが可能となる。
【0049】
<変形例2>
図23は、変形例2に係るセンサ装置200の断面図である。図23に示されているように、センサ装置200は、伸縮部材60をさらに有していてもよい。伸縮部材60は、メンブレン12上に配置されている。伸縮部材60の構成材料は、熱で伸縮する材料、水蒸気を吸収して伸縮する材料、匂い物質や化学物質を吸収して伸縮する材料等である。センサ装置200では、空洞14が空洞11により基板10の外部と連通しているため、メンブレン12は、周囲の圧力では撓まず、伸縮部材60の伸縮のみで撓む。そのため、この場合、センサ装置200が熱、水蒸気、匂い、化学物質等を検知するセンサとなる。
【0050】
図24は、変形例3に係るセンサ装置200の断面図である。上記においては空洞14が空洞11により側面10cにおいて基板10の外部と連通されている例を説明したが、図24に示されているように、空洞14は、空洞11により主面10aにおいて基板10の外部と連通されていてもよい。
【0051】
<センサ装置200の効果>
以下に、センサ装置200の効果を説明する。
【0052】
センサ装置200では、空洞14が空洞11で基板10の外部と連通されているため、センサ装置200に様々な機能を付与することが可能となる。なお、空洞14を側面10cにおいて基板10の外部と連通させる横穴としての空洞11を形成することは、従来知られている方法では極めて困難ないし不可能である。
【0053】
(付記)
上記の各実施形態には、以下の構成が含まれている。
【0054】
<付記1>
基板を準備する工程と、
前記基板の内部に第1空洞を形成する工程とを備え、
前記第1空洞を形成する工程は、レーザ光を前記基板の内部において集光及び吸収させることで前記基板の内部に複数の第2空洞を形成する工程と、前記基板に対して熱処理を行うことで前記複数の第2空洞を連結させて前記第1空洞とする工程とを有する、センサ装置の製造方法。
【0055】
<付記2>
前記基板の厚さ方向において前記複数の第2空洞の形成位置を変えることで、前記基板の厚さ方向において前記第1空洞の形成位置が変えられる、付記1に記載のセンサ装置の製造方法。
【0056】
<付記3>
前記複数の第2空洞は、平面視において行列状に並んでいる、付記1又は付記2に記載のセンサ装置の製造方法。
【0057】
<付記4>
前記複数の第2空洞は、平面視において列状に並んでいる、付記1又は付記2に記載のセンサ装置の製造方法。
【0058】
<付記5>
前記複数の第2空洞の一部は、平面視において行列状に第1領域内に並んでおり、
前記複数の第2空洞の他の一部は、平面視において行列状に前記第1領域とは異なる第2領域内に並んでいる、付記1又は付記2に記載のセンサ装置の製造方法。
【0059】
<付記6>
基板を準備する工程と、
前記基板の内部に第1空洞を形成する工程とを備え、
前記第1空洞を形成する工程は、レーザ光を前記基板の内部において集光及び吸収させることで前記基板の内部に複数の第2空洞を形成する工程と、前記基板に対して熱処理を行うことで前記複数の第2空洞を連結させて前記第1空洞とする工程とを有し、
前記基板の内部には、第3空洞が形成されており、
前記第3空洞は、前記第1空洞により前記基板の外部と連通される、センサ装置の製造方法。
【0060】
<付記7>
前記第3空洞は、前記第1空洞により、前記基板の主面又は前記基板の側面において前記基板の外部と連通される、付記6に記載のセンサ装置の製造方法。
【0061】
<付記8>
基板を備え、
前記基板の内部には、第1空洞が形成されており、
前記基板の主面は、前記第1空洞の上方にある第1部分と、前記第1部分の周囲にある第2部分とを有し、
前記第1部分及び前記第2部分は、平坦に連なっており、
前記第1空洞の底面には、凹凸が形成されている、センサ装置。
【0062】
<付記9>
前記第1空洞の側面は、断面視において曲線状である、付記8に記載のセンサ装置。
【0063】
<付記10>
前記基板は、前記第1空洞と前記基板の主面との間にあるメンブレンを有する、付記8又は付記9に記載のセンサ装置。
【0064】
<付記11>
基板を備え、
前記基板の内部には、第1空洞と第3空洞とが形成されており、
前記第3空洞は、前記第1空洞により、前記基板の側面において前記基板の外部と連通されている、センサ装置。
【0065】
<付記12>
前記基板は、前記第3空洞と前記基板の主面との間にある第1メンブレンを有する、付記11に記載のセンサ装置。
【0066】
<付記13>
前記第1メンブレン上に配置されている伸縮部材をさらに備える、付記12に記載のセンサ装置。
【0067】
<付記14>
前記基板の内部には、第4空洞がさらに形成されており、
前記基板は、前記第4空洞と前記基板の主面との間に第2メンブレンを有する、付記12に記載のセンサ装置。
【0068】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0069】
10 基板、10a,10b 主面、10c 側面、10d 溝、10e 凹部、11 空洞、12 メンブレン、13,14,14a,14b 空洞、20 絶縁膜、20a コンタクトホール、21 第1層、22 第2層、30 パッド、40 保護膜、50 SOI基板、51,52 半導体層、53 絶縁層、60 伸縮部材、100 センサ装置、200 センサ装置、L レーザ光、R1 第1領域、R2 第2領域、S1 準備工程、S2 空洞形成工程、S21 レーザ光照射工程、S22 熱処理工程、S3 第1絶縁膜形成工程、S4 イオン注入工程、S5 第2絶縁膜形成工程、S6 コンタクトホール形成工程、S7 パッド形成工程、S8 保護膜形成工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24