(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009958
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】筆記具用油性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具
(51)【国際特許分類】
C09D 11/16 20140101AFI20250109BHJP
【FI】
C09D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102479
(22)【出願日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2023105978
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 良介
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD19
4J039AE02
4J039BC07
4J039BC08
4J039BC14
4J039BC15
4J039BC20
4J039BC36
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE07
4J039BE22
4J039EA10
4J039EA33
4J039GA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】着色剤の析出や筆跡乾燥性の悪化等の不具合を生じることなく、前述の白化現象を効果的に抑制することができ、鮮明な筆跡が長期に亘って形成できる筆記具用油性インキ組成物と筆記具を提供する。
【解決手段】炭素数5以下の脂肪族アルコール及び/又はグリコールエーテルから選ばれる有機溶剤と、着色剤と、樹脂と、沸点が170℃以上である下記一般式(1)で表されるアミド化合物とを含んでなる筆記具用油性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具。
〔式中、R1及びR2は、水素、炭素数4以下のアルキル基から選ばれるいずれかであり、R3は、水素又は炭素数1~10のアルキル基、アリール基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基から選ばれるいずれかであり、且つ、R1、R2及びR3の炭素数の和が4以上である。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数5以下の脂肪族アルコール及び/又はグリコールエーテルから選ばれる有機溶剤と、着色剤と、樹脂と、沸点が170℃以上である下記一般式(1)で表されるアミド化合物とを含んでなる筆記具用油性インキ組成物。
【化1】
〔式中、R1及びR2は、水素、炭素数4以下のアルキル基から選ばれるいずれかであり、R3は、水素又は炭素数1~10のアルキル基、アリール基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基から選ばれるいずれかであり、且つ、R1、R2及びR3の炭素数の和が4以上である。〕
【請求項2】
アミド化合物の沸点が290℃以下である請求項1記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項3】
アミド化合物の融点が0℃以下である請求項1又は2に記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項4】
アミド化合物がインキ組成物全量中0.1質量%~20質重量%の範囲で用いられる請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項5】
ポリエーテル変性シリコーンを含んでなる請求項1記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項6】
ポリエーテル変性シリコーンが側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端型ポリエーテル変性シリコーン、ABN型ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる一種以上である請求項5記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項7】
ポリエーテル変性シリコーンがインキ組成物全量中0.01質量%~5質量%の範囲で用いられる請求項5又は6に記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物を内蔵してなる筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用油性インキ組成物に関する。更には、筆跡乾燥時に生じる白化を抑制することで鮮明な筆跡が形成できる筆記具用油性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マーキングペン等に用いられる油性インキは、筆跡の速乾性を得るために低級アルコール等の揮発性(低沸点)の有機溶剤が主溶媒として用いられている。そのため、高湿度下では有機溶剤の蒸発に伴う温度降下により空気中の水分が凝結し筆跡塗膜が白ボケしてしまう。これは、筆跡塗膜中の樹脂が部分的に析出し、塗膜表面が均等に平滑にならず凹凸状に形成されることで、筆跡が光を乱反射して白く見えてしまうという白化現象という問題である。
前記問題を解消するために、各種化合物の添加が検討されており、例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルや、乳酸n-ブチルを添加する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-48926号公報
【特許文献2】特開昭63-135468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献の技術は、前記ジプロピレングリコールモノメチルエーテルや乳酸n-ブチルを油性インキ中に添加することで、筆跡の乾燥時間を遅らせて塗膜の形成速度を調整し、前述の白化を生じ難くするものであるが、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルにおいては、溶解性の点で着色剤の種類が限定されてしまったり、乳酸n-ブチルにおいては臭気が強く、白化抑制効果が得られる量を添加した際に筆跡の乾燥性を悪化させてしまうものであった。
【0005】
本発明は、着色剤の析出や筆跡乾燥性の悪化等の不具合を生じることなく、前述の白化現象を効果的に抑制することができ、鮮明な筆跡が長期に亘って形成できる筆記具用油性インキ組成物と筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の筆記具用油性インキ組成物は、炭素数5以下の脂肪族アルコール及び/又はグリコールエーテルから選ばれる有機溶剤と、着色剤と、樹脂と、沸点が170℃以上である下記一般式(1)で表されるアミド化合物とを含んでなることを要件とする。
【化1】
〔式中、R1及びR2は、水素、炭素数4以下のアルキル基から選ばれるいずれかであり、R3は、水素又は炭素数1~10のアルキル基、アリール基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基から選ばれるいずれかであり、且つ、R1、R2及びR3の炭素数の和が4以上である。〕
更に、アミド化合物の沸点が290℃以下であること、アミド化合物の融点が0℃以下であること、アミド化合物がインキ組成物全量中0.1質量%~20質重量%の範囲で用いられることを要件とする。
更に、ポリエーテル変性シリコーンを含んでなること、ポリエーテル変性シリコーンが側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端型ポリエーテル変性シリコーン、ABN型ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる一種以上であること、ポリエーテル変性シリコーンがインキ組成物全量中0.01質量%~5質量%の範囲で用いられることを要件とする。
更には、前記筆記具用油性インキ組成物を内蔵してなる筆記具を要件とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、着色剤の析出や筆跡乾燥性の悪化等の不具合を生じることなく、空気中の水分凝結や、樹脂の部分的な析出に伴う白化現象を効果的に抑制することができる。そのため、鮮明な筆跡が長期に亘って形成できる筆記具用油性インキ組成物と筆記具を提供できる。更にポリエーテル変性シリコーンにより、前記効果と合わせて、安定したインキ組成を維持したまま、濡れ性の悪い筆記面に対してもはじきを生じることなく密着性に優れた、良好な筆跡が形成できる。これらを合わせることで、環境温度や筆記面を問わず、より鮮明な筆跡が得られるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の油性インキ組成物は、溶剤として炭素数5以下の脂肪族アルコールやグリコールエーテルから選ばれる有機溶剤を主溶剤として用いた際に、沸点が170℃以上であり一般式(1)で表されるアミド化合物を用いることで、筆跡の白化現象を抑制することができるため、鮮明で良好な筆跡を形成できるものである。
【0009】
前記一般式(1)で表され、沸点が170℃以上であるアミド化合物は、油性インキ中に添加することで、筆跡の乾燥性を損なうことなく、有機溶剤の蒸発に伴う温度降下による空気中の水分凝結が起こす部分的な樹脂の析出を抑制できるものと推察される。また、筆記により筆跡塗膜を形成する際には、樹脂の造膜速度を均一に保つことができるため、塗膜表面が均等に平滑になるので、筆跡が光を乱反射して白化することがなく、鮮明な色相が視覚されるようになると推察される。
【0010】
前記一般式(1)で表されるアミド化合物としては、式中のR1及びR2が、水素、炭素数4以下のアルキル基から選ばれるいずれかであり、R3は、水素又は炭素数1~10のアルキル基、アリール基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基から選ばれるいずれかであり、且つ、R1、R2及びR3の炭素数の和が4以上である置換基から選択され、沸点が170℃以上のものが適用でき、本発明の構成として例示される特定の有機溶剤を主溶剤として用いた際に白化抑制効果を付与できる。
具体的には、2-メチル-5-オキソペンタノアート、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-tert-ブチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド等が挙げられる。
【0011】
前記アミド化合物のうち、特に沸点が290℃以下の範囲にあるものは、筆跡乾燥性に優れ、沸点が170℃以上の範囲にあるものは、前述の白化抑制効果が高い。そのため、沸点が170℃~230℃の範囲にあるものは、筆跡乾燥性と白化抑制効果が効率的に高めることができ、より有用である。
また、低温環境下における白化抑制効果をより効果的に発現するべく、融点が低いアミド化合物を用いることで、インキ中で析出し難くなるため、融点が0℃以下であることが好ましい。
【0012】
前記アミド化合物は、インキ中に0.1~20質量%、好ましくは1.0~10質量%の範囲で添加される。
0.1質量%未満では所望の効果が得られ難く、また、多量に添加することも可能であるが、20質量%以下で所望の効果は充分に得られる。
【0013】
本発明の油性インキに適用される有機溶剤は、炭素数5以下の脂肪族アルコールやグリコールエーテルから選ばれる少なくとも一種が主溶剤として用いられる。前記アルコールとしては、炭素数1~5の低級脂肪族アルコールが適用され、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ペンチルアルコール等が例示できる。
また、前記グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
前記有機溶剤は一種又は二種以上を混合して、インキ組成中30~85質量%の範囲で用いられる。その際、相溶性のある汎用の溶剤を併用することもできる。
【0014】
前記着色剤としては、従来から油性インキに適用される汎用の染料、顔料が適宜用いられる。
前記染料としては、例えば、カラーインデックスにおいてソルベント染料として分類される有機溶剤可溶性染料が挙げられる。
前記ソルベント染料の具体例としては、バリファストブラック3806(C.I.ソルベントブラック29)、同3807(C.I.ソルベントブラック29の染料のトリメチルベンジルアンモニウム塩)、スピリットブラックSB(C.I.ソルベントブラック5)、スピロンブラックGMH(C.I.ソルベントブラック43)、バリファストレッド1308(C.I.ベーシックレッド1の染料とC.I.アシッドイエロー23の染料の造塩体)、バリファストイエローAUM(C.I.ベーシックイエロー2の染料とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンイエローC2GH(C.I.ベーシックイエロー2の染料の有機酸塩)、スピロンバイオレットCRH(C.I.ソルベントバイオレット8-1)、バリファストバイオレット1701(C.I.ベーシックバイオレット1とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンレッドCGH(C.I.ベーシックレッド1の染料の有機酸塩)、スピロンピンクBH(C.I.ソルベントレッド82)、ニグロシンベースEX(C.I.ソルベントブラック7)、オイルブルー613(C.I.ソルベントブルー5)、ネオザポンブルー808(C.I.ソルベントブルー70)等が挙げられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料、アルミニウム粉やアルミニウム粉表面を着色樹脂で処理した金属顔料、透明又は着色透明フィルムにアルミニウム等の金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、フィルム等の基材に形成したアルミニウム等の金属蒸着膜を剥離して得られる厚みが0.01~0.1μmの金属顔料、金、銀、白金、銅から選ばれる平均粒子径が5~30nmのコロイド粒子、蛍光顔料、蓄光性顔料、熱変色性顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料等が挙げられる。
前記着色剤は一種又は二種以上を併用してもよく、インキ組成物中1~25質量%の範囲で用いられる。
【0015】
前記樹脂としては、先の有機溶剤に対して可溶なものであれば特に限定されることなく適用でき、筆跡の滲み抑制、定着性向上、堅牢性等を付与する目的でインキ中に添加できる。
具体的には、ケトン樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン系樹脂、クマロン-インデン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸エステル、ケトン-ホルムアルデヒド樹脂、α-及びβ-ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物等が挙げられる。
これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いてもよく、インキ組成中0.5~40質量%、好ましくは1~20質量%の範囲で用いられる。0.5質量%未満では筆跡の紙への滲み抑制、定着性向上、堅牢性付与等の充分な効果を発揮できず、40質量%を越えて添加すると、樹脂の溶剤への溶解性が低下し、インキの流動性が低下することがある。
【0016】
また、本発明のインキ組成物では、ポリエーテル変性シリコーンを併用することで、安定したインキ組成を維持したまま、金属、プラスチック等のインキ非吸収面やクラフトテープ等の表面処理を施した紙類に筆記した場合であっても、はじきの無い良好な筆跡が形成できるようになるため、前記アミド化合物による白化抑制と合わせることで、あらゆる環境下で、更に被筆記面を選ぶことなく、より鮮明な筆跡が形成できるものとなる。
ポリエーテル変性シリコーンは、前記定着性の悪い筆記面への筆跡定着性を向上させることを目的として用いられる材料のなかでも、一般式のアミド化合物との併用においても析出等を生じることなく、安定したインキ組成を維持したまま、所望の効果が発現できるため、特に有用なものである。
【0017】
前記ポリエーテル変性シリコーンとしては、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端変性型ポリエーテル変性シリコーン、ABN型ポリエーテル変性シリコーンが例示できる。
側鎖型ポリエーテル変性シリコーン及び両末端変性型ポリエーテル変性シリコーンとは、直鎖状のポリオルガノシロキサンを主鎖として、側鎖もしくは主鎖両末端をポリエーテル基で置換したものである。
ABN型ポリエーテル変性シリコーンとは、ポリオルガノシロキサンとポリエーテルの直鎖状ブロック共重合体である。尚、本発明において、前記ポリオルガノシロキサンは、にじみのない良好な筆跡を効果的に得ることができることから、分子量が大きく、より疎水性の高いポリジメチルシロキサンであることが特に好ましい。
【0018】
前記ポリエーテル変性シリコーンとしては、特に制限なく汎用のものを適宜選択することができるが、溶解性の観点から、HLBが4以上であるものが特に好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンは、適宜合成しても良いし、市販品を使用しても良く、市販品としては、例えば、ダウ・東レ株式会社製の商品名「DOWSIL 501W Additive」、「DOWSIL FZ-2104 Fluid」、「DOWSIL FZ-2123」、「DOWSIL FZ-2164」、「DOWSIL FZ-2191」、「DOWSIL FZ-2208」、「DOWSIL FZ-2215」、「DOWSIL L-7001」、「DOWSIL L-7604」、「DOWSIL OFX-0309 Fluid」、「DOWSIL OFX-5221 Fluid」、「DOWSIL SF-8410 Fluid」、「DOWSIL OFX-0193 Fluid」、「DOWSIL SH-3746 Fluid」、「DOWSIL SH-8400 Fluid」、「DOWSIL SH-8700 Fluid」、「BY11-030」、「SILSTYLE104」、「OP-8496 Conditioning Agent」;信越化学工業株式会社製の商品名「KF-351A」、「KF-353」、「KF-354L」、「KF-355A」、「KF-615A」、「KF-945」、「KF-640」、「KF-642」、「KF-643」、「KF-644」、「KF-6204」、「KF-6011」、「KF-6012」、「KF-6015」、「KF-6017」、「KP-541」、「X-22-4952」、「X-22-4272」、「X-22-6266」;SILTECH社製の商品名「Silsurf A004」、「Silsurf A004-UP」、「Silsurf A008」、「Silsurf A008-UP」、「Silsurf A010-D-UP」、「Silsurf CR1115」、「Silsurf Di-2012」、「Silsurf G8-I」、「Siltech OP-8」、「Siltech OP-11」、「Siltech OP-12」、「Siltech OP-15」、「Siltech OP-20」、「Siltech C-241」、「Siltech C-442」、「Silsurf G8-I」等が挙げられる。
特に、前記アミド化合物との併用時に有用な材料としては、ダウ・東レ株式会社製の商品名「DOWSIL FZ-2208」、「DOWSIL FZ-2222」;信越化学工業株式会社製の商品名「KF-6004」、「KP-541」;SILTECH社製の商品名「Silsurf B608」、「Silsurf C208」、「Silsurf C410」、「Silsurf D208」、「Silsurf D208-30」、「Silsurf D212-CG」、「Silsurf Di-1510」、「Silsurf Di-15-I」、「Silsurf E608」、「Silsurf J1015-O」、「Silsurf J1015-O-AC」、「Silsurf J208」、「Silsurf J208-6」、「Siltech C-241」、「Siltech C-442」、「BY11-030」、「SILSTYLE104」、「OP-8496 Conditioning Agent」等が挙げられる。
【0019】
前記ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、優れた定着性と鮮明な筆跡を形成する観点から、インキ組成物全量に対し、0.01~5質量%、好ましくは0.5~1.5質量%の範囲で用いられる。
【0020】
更に、本発明の筆記具用油性インキ組成物には、必要に応じて上記成分以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、潤滑剤、粘度調整剤、剥離剤、顔料分散剤、消泡剤、剪断減粘性付与剤、界面活性剤等の各種添加剤を使用できる。
前記添加剤はいわゆる慣用的添加剤と呼ばれるもので、公知の化合物から適宜必要に応じて使用することができる。
【0021】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等が使用できる。
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドロキシトルエン、フラボノイド、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸誘導体、α-トコフェロール、カテキン類等が使用できる。
紫外線吸収剤としては、2-(2′-ヒドロキシ-3′-t-ブチル5′-5′-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、p-安息香酸-2-ヒドロキシベンゾフェノン等が使用できる。
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン等が使用できる。
【0022】
更に、非浸透面への筆記時に擦過消去性を付与することを目的に、剥離剤を添加することもできる。剥離剤としては、ホーロー、ガラス、金属或いは熱可塑性又は熱硬化性プラスチック等の素材からなる筆記板(ホワイトボード)に用いられるインキ組成物に含まれる剥離性を付与できる化合物であれば全て用いることができ、例えば、カルボン酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を挙げることができるが、好適に用いられる剥離剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はこれらの塩、脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、ポリアルキレングリコールエステルから選ばれる化合物であり、一種又は二種以上を併用して用いることもできる。
【0023】
また、本発明の油性インキ組成物をボールペンに適用する際には、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル等の潤滑剤を必要により添加することもできるが、特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等を用いるとボール受け座の摩耗防止効果に優れる。
【0024】
更に、剪断減粘性付与剤を添加することによって、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
前記剪断減粘性付与剤としては、従来公知の化合物を用いることが可能であり、例えば、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、架橋型N-ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N-ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体非架橋型N-ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体の水溶液、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、デキストリン脂肪酸エステル、N-アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、ヘクトライト系無機化合物、シリカ等が例示できる。
【0025】
前記インキ組成物は、チップを筆記先端部に装着したボールペンやマーキングペンに充填して実用に供される。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更にインキの端面には逆流防止用に液栓や固体栓等のインキ追従体が密接している構造のボールペンを例示できる。
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップを筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により前記筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
特に、前記マーキングペンに適用されるチップとしてポリエステル繊維束の樹脂加工体であるポリエステルチップを用いた場合、筆記感がやわらかくインキ追従性がよい反面、耐ドライアップ性に不利であることから本発明のインキによる効果が発現され易く効果的である。
【実施例0026】
実施例及び比較例のインキ組成を以下の表に示す。
尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
【0027】
【0028】
表中の原料の内容を注番号に沿って説明する。
(1)C.I.Solvent Black 7
(2)C.I.Acid Yellow 42と C.I.Basic Red 1の造塩体
(3)C.I.Pigment Black 7 20%、ポリビニルブチラール20%、エタノール60%分散体
(4)3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(融点-80℃、沸点215℃)
(5)2-メチル-5-オキソペンタノアート(融点<-30℃、沸点280℃)
(6)3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(融点-17℃、沸点252℃)
(7)N-tert-ブチルホルムアミド(融点13℃、沸点202℃)
(8)デカンアミド(融点98℃、沸点301℃)
(9)側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、SILTECH社製、商品名:Siltech C-241
(10)両末端型ポリエーテル変性シリコーン、信越化学工業株式会社製、商品名:KF-6004(HLB:9)
(11)ABN型ポリエーテル変性シリコーン、ダウ・東レ株式会社製、商品名:DOWSIL FZ-2222(HLB:6)
【0029】
インキの調製
前記実施例及び比較例の各原料を混合し、ディスパーにて40℃で2時間撹拌することにより筆記具用油性インキ組成物を得た。
【0030】
マーキングペンの作製
得られたインキ組成物1.5gを、市販のマーキングペン外装(パイロットコーポレーション製;SC-EU、アクリル製チップを備える)に充填することで油性マーキングペンを得た。
【0031】
筆記試験
各マーキングペンを用いて、20℃で湿度65%、30℃で湿度90%、20℃で湿度90%、10℃で湿度90%の環境下で透明なPETフィルム上に5個連続して丸を書いた際の乾燥後の筆跡状態を目視により確認した。
耐擦過試験
各マーキングペンを用いて、30℃でPPフィルムに筆記した後、筆跡と300g分銅間にティッシュを挟み移動させることで、筆跡の擦過に対する強度を確認した。
筆跡定着試験
クラフトテープ(ニチバン株式会社製、商品名:クラフト粘着テープNo.313)の表面に筆記し、筆跡のはじきの有無を目視により観察した。
試験結果を以下の表に示す。
【0032】
【0033】
表中の記号の内容を以下に説明する。
筆記試験
○:鮮明な筆跡が得られる。
△:筆跡に若干の白化がみられる。
×:筆跡に白化現象がみられ、マット調の筆跡となる。
耐擦過試験
○:ハガレなし。
◇:若干の析出物により、ややハガレが生じる。
△:粒子析出に伴うハガレあり。
×:粒子析出に伴う大きなハガレあり。
筆跡定着試験
○:筆跡のはじきは確認されず、鮮明な筆跡が得られた。
×:筆跡のはじきが確認され、筆跡がぼやけていた。