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特開2025-9960数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009960
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20250109BHJP
   G01W 1/00 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
E02B7/02
G01W1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024102547
(22)【出願日】2024-06-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-03
(31)【優先権主張番号】202310771400.1
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA THREE GORGES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No.1 Liuhe Road, Jiang’an District, Wuhan, Hubei, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】楊 宇
(72)【発明者】
【氏名】蒋 定国
(72)【発明者】
【氏名】梁 犁麗
(72)【発明者】
【氏名】李 帥
(72)【発明者】
【氏名】▲ごん▼ 文▲亭▼
(72)【発明者】
【氏名】趙 汗青
(72)【発明者】
【氏名】▲濯▼ ▲儼▼偉
(72)【発明者】
【氏名】張 成瀟
(57)【要約】      (修正有)
【課題】数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法及び装置を提供する。
【解決手段】予め設定された数値モデルに基づいて調整・制御対象の貯水池の実測データを処理して、水温数値モデルを構築するステップと、水温数値モデルの信頼性検証を行い、検証した水温数値モデルを使用して、角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態のさまざまなパラメータに対応する作業条件が放出水の温度に及ぼす影響を分析するステップと、分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を指導するステップと、を含む。本発明による放出水の温度を調整・制御する方法及び装置は、角落しゲートの層数、稼働時間及び配置形態が放出水の温度の上昇効果に及ぼす影響を明らかにし、放出水の温度の調整・制御を科学的に指導し、発電効率の向上に貢献し、貯水池の生態学的調節のための科学的根拠を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法であって、
予め設定された数値モデルに基づいて、調整・制御対象の貯水池の実測データを処理して、水温数値モデルを構築するステップであって、前記調整・制御対象の貯水池の実測データには、地形データ、初期条件、境界条件、及び検証データが含まれ、検証データには、ダム前の水位及びダム前の垂直方向水温が含まれる、ステップと、
調整・制御対象の貯水池の実測データの初期条件及び境界条件を水温数値モデルに入力してモデル計算データを得て、水温数値モデルの信頼性検証を行うために検証データの実測データと比較して分析することを含む水温数値モデルの信頼性検証を行い、検証した水温数値モデルを使用して角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態のさまざまなパラメータに対応する作業条件が放出水の温度に及ぼす影響を分析するステップであって、さまざまなパラメータに対応する作業条件は単一変数原則に従って設定され、前記角落しゲートの配置形態は、角落しゲートが片側に設けられるか両側に設けられるか、及び両側の取水口に角落しゲートが設けられるかに基づくものであり、片側ダブルゲート、片側ゲート無し、平均放出水温度、ダブルゲート、シングルゲート、及びゲート無しを含む、ステップと、
分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を指導するステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
予め設定された数値モデルに基づいて調整・制御対象の貯水池の実測データを処理するプロセスは、
予め設定された数値モデルに基づいて、調整・制御対象の貯水池の実測データの地形データをグリッド化してから補間し、グリッド処理された地形データを得ることと、
初期条件及び境界条件に従って予め設定された数値モデルのパラメータを設定することと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法。
【請求項3】
前記予め設定された数値モデルは、EFDC数値モデル、MIKE数値モデル、FLUENT数値モデル、及びDELFT3D数値モデルを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法。
【請求項4】
数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する装置であって、
予め設定された数値モデルに基づいて調整・制御対象の貯水池の実測データを処理して、水温数値モデルを構築するための構築モジュールであって、前記調整・制御対象の貯水池の実測データには、地形データ、初期条件、境界条件、及び検証データが含まれ、検証データには、ダム前の水位及びダム前の垂直方向水温が含まれる、構築モジュールと、
調整・制御対象の貯水池の実測データの初期条件及び境界条件を水温数値モデルに入力してモデル計算データを得て、水温数値モデルの信頼性検証を行うために検証データの実測データと比較して分析することを含む水温数値モデルの信頼性検証を行い、検証した水温数値モデルを使用して角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態のさまざまなパラメータに対応する作業条件が放出水の温度に及ぼす影響を分析するための分析モジュールであって、さまざまな作業条件に対応するパラメータは単一変数原則に従って設定され、前記角落しゲートの配置形態は、角落しゲートが片側に設けられるか両側に設けられるか、及び両側の取水口に角落しゲートが設けられるかに基づくものであり、片側ダブルゲート、片側ゲート無し、平均放出水温度、ダブルゲート、シングルゲート、及びゲート無しを含む、分析モジュールと、
分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を指導するための調整・制御モジュールと、を含む、ことを特徴とする装置。
【請求項5】
少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサに通信可能に接続されたメモリと、を含み、前記メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を記憶しており、前記命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されて、請求項1~3のいずれか一項に記載の数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の水温を調整・制御する方法を前記少なくとも1つのプロセッサに実行させる、ことを特徴とするコンピュータ機器。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ命令を記憶した、ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水池の生態学的調節の技術分野に関し、具体的には、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水温は、河川システムにおける物理的、化学的、生物学的プロセスの重要な要素及び主な調整・制御因子である。大規模貯水池の完成と稼働は、水防、発電、灌漑、水運などに多大な経済的、社会的利益をもたらすが、貯水池への貯水が行われると、水温の空間的及び時間的分布が変化し、自然の河道に比べて貯水域の表面積が大きく、水の流れが緩やかで混ざりにくいため、貯水時間が長く、水-空気界面での熱交換プロセスと水域内の熱伝導プロセスが変化し、その結果、貯水池内の水温構造が貯水前とは異なり、すなわち、大規模貯水貯水池のダム前の垂直方向水温には水温成層現象があり、標高が下がるとその水温が低下する。ダム本体や発電所の取水口を通過し、ユニットを通過した後の水の温度を放出水の温度という。貯水池の水温成層の変化は、気象条件、流入水温、貯水池の稼働・管理方法、取水口の位置や形態、水の流入・流出量などに依存するため、貯水池ごとに水温分布パターンが異なる。
【0003】
河道型貯水池の「蓄冷」や「蓄熱」効果は貯水後に顕著になる。発電所の導水口は一般に深水層にあり、水温成層により、春や夏には自然環境よりも放出水の温度が低くなり、冬には自然環境よりも放出水の温度が高くなる現象が起こりやすくなる。魚類は、河川生態系の中で最も進化した生物であり、生態系におけるその地位と人間社会との密接な関係から、しばしば注目されている。魚類は、変温動物であるため、体温の調整・制御機能が低く、環境水温の影響を受けやすいため、水温変化の影響を受けやすい。放出水の温度が自然の河道の水温よりも低いと、魚類の繁殖が遅れ、産卵規模が縮小し、魚卵の生存率が低下するなどの問題が生じやすく、放出水の温度が自然の河道の水温よりも高いと、魚類の成長期間が延長し、生殖腺の発達が進み、2年目の繁殖期の前に性周期が乱れる恐れがある。
【0004】
河道型貯水池に存在する水温成層現象については、底層水の温度が低く、底層水の温度と表層水の温度との差が大きいため、従来の底層取水法では低温水が得られ、低温水が下流の生態環境に放出されると、悪影響を及ぼす可能性がある。この悪影響を軽減させるために、中国国内外の学者が多数の研究を実施し、放出水の温度を制御するための工学的又は非工学的対策をまとめてきた。「層別取水」、「水温躍層破壊」、及び「生態学的調節」の3つに大別され、このうち、層別取水対策は中国で広く行われている。層別取水は、取水建屋により取水位置を制御することで、放出水の温度を制御するのに有効な手段であり、従来の単層取水法と比較して、層別取水は、低温水域の回復距離を短縮させることができる。中国国内外で建設済み又は建設中のさまざまなタイプの層別取水建物があり、水流の特性に応じて、オーバーフロー型取水口(角落しゲート)、多層穴型取水口、コントロールカーテン取水、及び新しいウォーターカーテン取水の4つのタイプに分類でき、そのうち、角落しゲートによる層別取水は最も広く使用されている。
【0005】
角落しゲートの稼働原理は、水位が上昇すると、一連のゲートが降下して発電所の取水口前の一定範囲を遮断し、発電所の取水口の標高が取水口から角落しゲートの頂部に移動し、貯水域の水温を成層化した場合、上層の高温水を取ることである。角落しゲートの建設後、水温モニタリングデータを使用して、角落しゲートの稼働が発電所から放出される水の温度に及ぼす影響を計算して分析し、角落しゲートによる層別取水の最適化調節を詳細に研究し、角落しゲートの稼働効果を評価し、これは、生態学的補償メカニズムを改善し、河道の生態学的健全性を維持することにとって非常に重要である。従来技術では、主に取水口前に角落しゲートを設け、角落しゲートの頂部の標高を高くして角落しゲートの頂部の水深を減らすことで、表層水を可能な限り取って放出水の温度を上昇させるが、以下の欠点が存在する。(1)角落しゲートの稼働時間は規定されていないため、発電効率に影響する。(2)角落しゲートの配置形態が放出水の温度の上昇に及ぼす実際の効果は考慮されておらず、これは貯水池の生態学的調節効果の評価に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、上記の背景に記載された技術的課題を解決するために、角落しゲートの稼働時間及びその配置形態が温度の上昇効果に及ぼす影響を明らかにし、放出水の温度の調整・制御を科学的に指導することができ、発電効率の向上に貢献し、貯水池の生態学的調節のための科学的根拠を提供することができる、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成させるために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0008】
第1態様では、本発明の実施例は、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法であって、
予め設定された数値モデルに基づいて、調整・制御対象貯水池の実測データを処理して、水温数値モデルを構築するステップと、
水温数値モデルの信頼性検証を行い、検証した水温数値モデルを使用して角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態のさまざまなパラメータに対応する作業条件が放出水の温度に及ぼす影響を分析するステップと、
分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を指導するステップと、を含む、方法を提供する。
【0009】
好ましくは、調整・制御対象貯水池の実測データには、地形データ、初期条件、境界条件、及び検証データが含まれる。
【0010】
好ましくは、予め設定された数値モデルに基づいて調整・制御対象貯水池の実測データを処理するプロセスは、
予め設定された数値モデルに基づいて、調整・制御対象貯水池の実測データの地形データをグリッド化してから補間し、グリッド処理された地形データを得ることと、
初期条件及び境界条件に従って予め設定された数値モデルのパラメータを設定することと、を含む。
【0011】
好ましくは、水温数値モデルの信頼性検証を行うプロセスは、調整・制御対象貯水池の実測データの検証データを水温数値モデルに入力してモデル計算データを得て、水温数値モデルの信頼性検証を行うために検証データの実測データと比較して分析することを含む。
【0012】
好ましくは、さまざまなパラメータに対応する作業条件は単一変数原則に従って設定される。
【0013】
好ましくは、予め設定された数値モデルは、EFDC数値モデル、MIKE数値モデル、FLUENT数値モデル、及びDELFT3D数値モデルを含む。
【0014】
第2態様では、本発明の実施例は、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する装置であって、
予め設定された数値モデルに基づいて調整・制御対象貯水池の実測データを処理して、水温数値モデルを構築するための構築モジュールと、
水温数値モデルの信頼性検証を行い、検証した水温数値モデルを使用して角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態のさまざまなパラメータに対応する作業条件が放出水の温度に及ぼす影響を分析するための分析モジュールと、
分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を指導するための調整・制御モジュールと、を含む、装置を提供する。
【0015】
第3態様では、本発明の実施例は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサに通信可能に接続されたメモリと、を含み、メモリは、少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を記憶しており、命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されて、本発明の実施例の第1態様に記載の数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の水温を調整・制御する方法を少なくとも1つのプロセッサに実行させる、コンピュータ機器を提供する。
【0016】
第4態様では、本発明の実施例は、本発明の実施例の第1態様に記載の数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ命令を記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の技術的解決手段は以下の利点を有する。
【0018】
本発明は、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法及び装置を提供する。この方法は、予め設定された数値モデルに基づいて調整・制御対象貯水池の実測データを処理して、水温数値モデルを構築するステップと、水温数値モデルの信頼性検証を行い、検証した水温数値モデルを使用して、角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態のさまざまなパラメータに対応する作業条件が放出水の温度に及ぼす影響を分析するステップと、分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を指導するステップと、を含む。本発明による放出水の温度を調整・制御する方法及び装置は、角落しゲートの層数、稼働時間及び配置形態が放出水の温度の上昇効果に及ぼす影響を明らかにし、放出水の温度の調整・制御を科学的に指導し、発電効率の向上に貢献し、貯水池の生態学的調節のための科学的根拠を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の特定の実施形態又は従来技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、特定の実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を以下に簡単に紹介するが、以下の説明における図面は本発明のいくつかの実施形態であることは明らかである。当業者であれば、創造的な努力をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本発明の実施例による数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法の概略フローチャートである。
図2】本発明の実施例による水位の計算値と測定値との間の比較結果の概略図である。
図3】本発明の実施例によるダム前の垂直方向水温の計算値と実測値との比較結果の概略図である。
図4】本発明の実施例による、角落しゲートの層数が放出水の温度に及ぼす影響の概略図である。
図5】本発明の実施例による、角落しゲート落下時間が放出水の温度に及ぼす影響の概略図である。
図6】本発明の実施例による、角落しゲートの配置形態が放出水の温度に及ぼす影響の概略図である。
図7】本発明の実施例による、角落しゲートの配置形態が垂直方向水温に及ぼす影響の概略図である。
図8】本発明の実施例による、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の水温を調整・制御する装置のモジュール構成図である。
図9】本発明の実施例によるコンピュータ機器の具体例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の解決手段を当業者がよりよく理解するために、以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、説明される実施例は、本発明の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではなく、本発明の開示の範囲を限定するものではないことは明らかである。さらに、以下の説明では、本開示の概念を不要に混同させないため、公知の構成や技術の説明を省略する。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力をすることなく得た他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属するべきである。
【0021】
さらに、以下に説明する本発明の異なる実施形態に係る技術的特徴は、互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせられてもよい。
実施例1
【0022】
本発明の実施例は、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法を提供する。図1に示すように、この方法は、以下のステップS1~ステップS3を含む。
【0023】
ステップS1:予め設定された数値モデルに基づいて調整・制御対象の貯水池の実測データを処理して、水温数値モデルを構築する。
【0024】
なお、水温シミュレーション数値モデルは、垂直一次元、垂直面二次元、三次元の継続的な改善と、線から面、体に至る開発プロセスを経てきた。最も初期の垂直一次元水温モデルはWREモデルとMITモデルで、中国の密雲貯水池と隔河岩貯水池に適用されている。垂直面二次元数値モデルは、水温の縦方向及び垂直方向の変化をシミュレートすることができ、浮力流と温度成層の縦方向での形成と発展の特徴をより適切にシミュレートすることができ、河道型貯水池に適している。より成熟した垂直面二次元水温数値モデルCE-QUAL-W2は、主に糯扎渡貯水池や溪洛渡貯水池などの河道型貯水池で使用される。三次元水温数値モデルは、貯水池の流速場と温度場の三次元変化をシミュレートすることができ、実際の工学的ニーズにより適しており、例えば、中国国内の学者は、三次元水温数値モデルについて三峡貯水池、阿海貯水池、漫湾貯水池などで多くの有用な試みや工学的応用を行っている。本実施例では、予め設定された数値モデルは、EFDC数値モデル、MIKE数値モデル、FLUENT数値モデル、及びDELFT3D数値モデルを含む三次元水温数値モデルを使用する。これは、例としてのみ使用され、限定するものではない。
【0025】
本実施例では、調整・制御対象の貯水池の実測データには、地形データ、初期条件、境界条件、及び検証データが含まれる。具体的には、初期条件には、実際の使用ニーズに応じて設定される、人為的に設定された初期水位と初期水温が含まれる。境界条件には、流入流量、流入水温、流出流量、及び気象データが含まれ、そのうち、気象データには、調整・制御対象の貯水池の周辺の気象観測所から取得できる、調整・制御対象の貯水池の領域の相対湿度、温度、雲量、風速や風向などのデータが含まれる。検証データには、ダム前の水位及びダム前の垂直方向水温が含まれる。なお、河道型深層貯水池における水温成層現象を研究する場合、風や水面熱流束などの要因が湖の成層に及ぼす影響を考慮するだけでなく、流入と流出が水域の熱バランスに及ぼす影響や流体力学的プロセスによって引き起こされる混合を考慮する必要があるため、本実施例では、調整・制御対象の貯水池の実測データの具体的な設定は、例としてのみ使用され、限定するものではなく、実際のニーズに応じて調整される。
【0026】
本実施例では、予め設定された数値モデルに基づいて、調整・制御対象の貯水池の実測データの地形データをグリッド化して補間し、グリッド処理された地形データを得て、初期条件及び境界条件に従って、予め設定された数値モデルのパラメータを設定し、水温数値モデルを得る。
【0027】
DELFT3Dは、オランダデルタ研究所によって開発された水温の二次元(深さ平均)又は三次元の非定常流とその輸送特性をシミュレートできる数値モデルである。特定の実施例では、DELFT3D数値モデルを使用して水温数値モデルを構築するプロセスは次のとおりである。
【0028】
1.DELFT3D数値モデルのRGFGRIDサブモジュールは、研究領域について計算してグリッド化を行う。具体的には、可視化された平面直交曲線グリッドを生成し、実際地形データを抽出し、境界座標にインポートして境界ファイルデータを生成し、次に、スプライン曲線を描画して、可視化された平面直交曲線グリッドを生成する。QUICKINサブモジュールを使用して標高補間を行い、三角補間法を使用して内部を拡散し、点をポリゴン領域に補間してから、拡散アルゴリズムを使用して内部の点を領域の外側に拡散し、それにより、グリッドノードごとに対応する地形データを付与する。最後に、取水口、深い穴、及び表面の穴のサイズと中心線の位置と組み合わせて、垂直方向のグリッド化を行う。
【0029】
2.調整・制御対象の貯水池の初期条件、すなわち領域全体の水位と水温、及び貯水池の実際の稼働資料から決定された境界条件を取得し、すなわち上流と下流のいずれも流量境界となると、DELFT3Dのパラメータを設定して、対応する水温数値モデルを得る。具体的には、DELFT3Dパラメータには、マニング粗さ係数、水平渦粘性係数、水平拡散係数、重力加速度、水密度、空気密度、垂直渦粘性係数、及び拡散係数が含まれるが、これらは、例としてのみ使用され、特定のパラメータの設定は、実際の使用に選択された数値モデルに応じて適応的に調整される。
【0030】
ステップS2:水温数値モデルの信頼性検証を行い、検証した水温数値モデルを使用して、角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態のさまざまなパラメータに対応する作業条件が放出水の温度に及ぼす影響を分析する。
【0031】
なお、調整・制御対象の貯水池の数値モデルで計算した貯水量が実際の貯水量と一致することを確保するために、数値モデルによるダム前の水位とダム前の実測の水位との差を計算し、貯水量をチェックする必要がある。また、放出水の温度の計算の信頼性検証を行うために、調整・制御対象の貯水池のダム前の垂直方向水温の計算値と測定値を比較して分析する必要がある。
【0032】
本実施例では、水温数値モデルの信頼性検証を行うプロセスは、ダム前の水位及びダム前の垂直方向水温を含む調整・制御対象の貯水池の実測検証データを水温数値モデルに入力してモデル計算データを得て、水温数値モデルの信頼性検証を行うために検証データの実測データと比較して分析することを含む。数値モデルの信頼性検証により、その後の放出水の温度の分析や研究に水温数値モデルを活用することが可能になる。
【0033】
実際の応用では、角落しゲートによる層別取水は、貯水池の水位の変化に応じて給水口の角落しゲートの頂部での水深を調整し、貯水池の表層水をできるだけ取ることで、放出水の温度を上昇させることである。本実施例では、作業条件は、単一変数原則に従って設定される。作業条件に含まれるパラメータ変数は、角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態である。これらは一例としてのみ使用され、限定するものではない。
【0034】
なお、水温成層が存在する河道型貯水池の場合、角落しゲートによる層別取水は、放出水の温度を調整・制御する最も広く使用されている手段であり、従来技術では、多くの場合、河道の左右岸のいずれかの取水口に角落しゲートが設けられる。本発明の実施例では、角落しゲートの配置形態を総合的に考慮し、すなわち、角落しゲートが片側に設けられるか両側に設けられるか、及び両側の取水口に角落しゲートが設けられるかを考慮する。得られた配置形態は、「片側ダブルゲート」、「片側ゲート無し」、「平均放出水温度」、「ダブルゲート」、「シングルゲート」、及び「ゲート無し」を含む。具体的には、「片側ダブルゲート」及び「片側ゲート無し」は、いずれも、角落しゲートが片側に設けられる場合の作業条件を指し、それぞれこの作業条件での両側の取水口における角落しゲートの配置の状況を表す。すなわち、「片側ダブルゲート」とは、片側の取水口の前に2層の角落しゲートが設けられることを意味し、「片側ゲート無し」とは、この作業条件では反対側の取水口の前に角落しゲートが設けられないことを意味する。「片側ゲート」とは、片側の導水口の前にのみ角落しゲートが設けられることを意味するので、対応する両側の取水口からの放出水の温度が異なり、このため、「平均放出水温度」は、両側の放出水の温度の平均値を表し、すなわち、「片側ダブルゲート」と「片側ゲート無し」の2つの場合の放出水の温度の平均値を表す。「ダブルゲート」、「シングルゲート」、及び「ゲート無し」は、すべて角落しゲートが両側に設けられる場合の作業条件に対応し、それぞれ、両側の導水口の前に2層の角落しゲートが設けられる、1層の角落しゲートが設けられる、及び角落しゲートが設けられていない作業条件を表す。上記の配置形態は、一例としてのみ使用され、実際のニーズに応じて適応的に調整される。
【0035】
ステップS3:分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を指導する。
【0036】
本実施例では、前述の比較に基づいて、異なる角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態が放出水の温度に及ぼす影響を分析し、分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を科学的に指導する。
【0037】
特定の実施例では、成層現象が存在する調整・制御対象の河道型貯水池について、当該貯水池の実測データを収集し、DELFT3D数値モデルを使用して本発明の実施例の放出水の温度を調整・制御する方法を実行し、そのプロセスは次の通りである。
【0038】
ステップ1:グリッド化を行う。DELFT3DのRGFGRIDモジュールにおいてグリッド化を行って計算し、本実施例では、M方向のグリッド数は960、N方向のグリッド数は18、総グリッド数は17,280である。DELFT3DのQUICKINモジュールにおいて地形補間を行い、垂直方向において16層に分割する。
【0039】
ステップ2:パラメータを設定する。収集された貯水池の計測データから、ダム前の水位は544.75~599.6mの範囲で変化することがわかる。領域全体の初期水位と初期水温が与えられ、初期水位は589.91m、初期水温は15℃である。上流と下流の境界条件は貯水池の実際の稼働資料によって与えられ、ここでは特に制限しない。パラメータは経験値に基づいて設定され、マニング粗さ係数は0.035、水平渦粘性係数は1m/s、水平拡散係数は10m/sであり、垂直渦粘性係数と拡散係数はk-eモデルを使用して計算される。物理パラメータとしては、重力加速度は9.81m/s、水密度は1000kg/m、空気密度は1kg/mである。Delft3Dにはさまざまな熱流束モデルがあり、モデルごとに複雑さのレベルが異なり、異なるデータ入力が必要となるため、対象貯留池の計算領域が大きな水域であることを考慮して、ここではOceanモデルが選択され、このモデルでは、シミュレーション領域の相対湿度、温度、及び雲量の入力が必要であり、関連データは気象観測所から取得される。
【0040】
ステップ3:モデルを検証する。水位の検証とダム前の垂直方向水温の検証が含まれる。具体的な検証結果を図2及び図3に示す。図2から分かるように、水位の計算値は実測値と一致しており、実測水位の変化傾向をよりよく反映しており、このことから、このモデルは基本的に質量保存則に従うことが示唆された。図3から分かるように、ダム前の垂直方向水温のシミュレーション結果は、貯水池の水温成層の形成と発達プロセスをより正確に反映しており、このことから、数学的モデルが信頼できることが示唆された。さらに、図2の4月、5月、及び6月の結果から、貯水池の水温成層に季節性があることが検証された。これに基づいて、角落しゲートの落下時間が放出水の温度に及ぼす影響を検討することは、水温成層が存在する貯水池での角落しゲートの設置には実用的な工学的意義があり、プロジェクトの建設コストを削減させることができ、ある程度の経済性がある。
【0041】
ステップ4:作業条件を設定する。角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態に応じて、単一変数原則に従って次の異なる作業条件を設定し、作業条件の詳細を表1に示す。具体的には、表の作業条件1、2、及び3を使用して、角落しゲートのさまざまな層数が放出水の温度に及ぼす影響を比較して分析する。なお、実際のプロジェクトの稼働コストを考慮して、ここでは2層の角落しゲートのみが例示される。角落しゲートの1層の頂部の高さは12mである。コストへの影響を無視すると、理論的には、角落しゲートの層数が多ければ多いほど良いことになる。作業条件1、3、4、及び5を使用して、角落しゲートの落下時間が放出水の温度に及ぼす影響を比較して分析する。作業条件1、2、3、4、5、及び6を使用して、角落しゲートの配置形態が放出水の温度に及ぼす影響を比較して分析する。
【0042】
表1 作業条件の詳細
【0043】
ステップ5:角落しゲートの層数が放出水の温度に及ぼす影響を分析する。図4は、角落しゲートの層数が放出水の温度に及ぼす影響を示す。図より、角落しゲートを設けることで、放出水の温度を上昇できるが、その改善に限界があり、1層の角落しゲートを設けると、放出水の温度を0.1~0.3℃上昇させ、2層の角落しゲートを設けると、放出水の温度を0.1~0.4℃上昇させることができる。この結論は、数値モデルから得られ得る。なお、角落しゲートの層数は、一例としてのみ使用され、限定するものではなく、プロジェクトの特定のニーズに応じて決定される。
【0044】
ステップ6:角落しゲートの稼働時間が放出水の温度に及ぼす影響を分析する。図5は、角落しゲートの落下時間が放出水の温度に及ぼす影響を示す。なお、この角落しゲートの落下時間の選択は、図2の結果の分析に基づいて決定され、すなわち、貯水池の水温成層の季節的な時間要件を満たしている。図より、3月16日に角落しゲートを落下させる場合と3月1日に角落しゲートを落下させる場合では、放出水の温度に対する影響にはほとんど差がなく、3月31日に角落しゲートを落下させる場合は、3月16日角落しゲートを落下させる場合よりも、放出水の温度を短期間で0.05~0.1℃上昇できるが、時間の経過とともに、その改善効果は徐々に弱まっていき、最終的には、角落しゲートを落下させる時刻による放出水の温度の上昇効果は同じになることが分かった。したがって、角落しゲートの稼働により、必要に応じて放出水の温度を一時的に上昇させることができる。
【0045】
ステップ7:角落しゲートの配置形態が放出水の温度に及ぼす影響を分析する。図6は、角落しゲートの配置形態が放出水の温度に及ぼす影響を示す。図より、総導水流量が一致する条件では、「片側ダブルゲート」の場合の放出水の温度は「片側ゲート無し」の場合の放出水の温度に比べて0.5~1℃高いことが分かり、このことから、角落しゲートによる層別取水は、放出水の温度をある程度向上できることが示唆された。「片側ダブルゲート」の放出水の温度が「ダブルゲート」の作業条件での温度よりも0.05~0.3℃高く、「片側ゲート無し」の放出水の温度は、「ゲート無し」の作業条件での温度よりも0.25~0.5℃低く、「平均放出水温度」(両導水口の両側での平均水温)は、両導水口ゲート無しの作業条件よりわずかに高く(平均約0.05℃)、両導水口シングルゲートの作業条件よりわずかに低い。このことから、角落しゲートの配置形態は、放出水の温度に大きな影響を与え、すなわち、片側の導水口の一部の前に角落しゲートを設けるだけでは、放出水の温度の全体的な改善には大きな効果がない。上記の現象をさらに説明するために、図7は、角落しゲートの配置形態が導水口の前とダム前の垂直方向水温に及ぼす影響を示し、「片側ゲート」は、片側の導水口の前にのみ角落しゲートが設けられることを意味し、「ゲート無し」とは、角落しゲートが設けられていないことを意味する。図より、「片側ダブルゲート」の場合、垂直方向水温が全体的に「片側ゲート無し」の場合の水温よりも高く、「ゲート無し導水口」、すなわち、ゲートが設けられていない導水口の水温は両者の間にあり、このことから、片側に角落しゲートが設けられることにより、ゲート付き側の垂直方向水温が上昇しながら、ゲート無し側の垂直方向水温が低下することを示す。ゲート無し側の垂直方向水温は、両側に角落しゲートが設けられていない場合よりも低くなる。「片側ゲートの場合のダム前」の上層水域の水温は、「ゲート無しの場合のダム前」(角落しゲートが設けられていない場合)よりも低く、このことから、片側に角落しゲートが設けられることにより、ダム前の特定の領域の水温が低下することが示唆された。
【0046】
ステップ8:分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を指導する。前述の角落しゲートの層数の分析結果に基づいて、理論的には、角落しゲートの層数が多ければ多いほどよいことが分かった。角落しゲートの落下時間の分析結果から、角落しゲートを3月中旬から下旬に起動させると、放出水の温度の上昇効果がより顕著になることがわかった。角落しゲートの配置形態の分析結果から、左右両岸の取水口の前に角落しゲートを設けると、放出水の温度が全体的に上昇しやすくなることが分かった。なお、この貯水池の放出水の温度の調整・制御は一例に過ぎず、実際の調整・制御対象の貯水池を組み合わせて、本実施例の方法を使用して、角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態が放出水の温度に及ぼす影響を分析し、分析結果に基づいて、放出水の温度を動的に調整・制御する必要がある。
【0047】
本発明の実施例による数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法は、単一変数原則に従って角落しゲートのさまざまな作業条件を設定し、さまざまな角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態が放出水の温度に及ぼす影響を比較して分析し、分析結果に基づいて、貯水池の放出水の温度を調整・制御するものであり、貯水池の発電効率の向上に貢献し、貯水池の生態学的調節のための科学的根拠を提供する。
実施例2
【0048】
本発明の実施例は、図8に示すように、構築モジュールと、分析モジュールと、調整・制御モジュールと、を含む、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する装置を提供する。
【0049】
構築モジュールは、予め設定された数値モデルに基づいて、調整・制御対象の貯水池の実測データを処理して、水温数値モデルを構築することに用いられ、このモジュールは、実施例1のステップS1に記載の方法を実行するが、ここでは詳しく説明しない。
【0050】
分析モジュールは、水温数値モデルの信頼性検証を行い、検証した水温数値モデルを使用して、角落しゲートの層数、角落しゲートの落下時間、及び角落しゲートの配置形態のさまざまなパラメータに対する作業条件が放出水の温度に及ぼす影響を分析することに用いられ、このモジュールは、実施例1のステップS2に記載の方法を実行するが、ここでは詳しく説明しない。
【0051】
調整・制御モジュールは、分析結果に基づいて放出水の温度の調整・制御を指導することに用いられ、このモジュールは、実施例1のステップS3に記載の方法を実行するが、ここでは詳しく説明しない。
【0052】
本発明の実施例による数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する装置は、調整・制御対象領域の水温の時間的及び空間的な変化をシミュレーションすることで、角落しゲートによる層別取水の効果を予測し、角落しゲートの稼働時間や配置形態が放出水の温度の上昇効果に及ぼす影響を明らかにし、貯水池の生態学的調節のための科学的根拠を提供することができる。
実施例3
【0053】
本発明の実施例は、図9に示すように、少なくとも1つのプロセッサ901と、少なくとも1つの通信インターフェース903と、メモリ904と、少なくとも1つの通信バス902と、を含むコンピュータ機器を提供し、ここで、通信バス902は、これらのコンポーネント間の接続及び通信を実現することに用いられ、通信インターフェース903は、表示画面及びキーボードを含むことができ、また、通信インターフェース903は、標準の有線インターフェース及び無線インターフェースを任意に含んでもよい。メモリ904は、高速揮発性ランダムアクセスメモリ、不揮発性メモリであってもよいし、前記プロセッサ901から遠く離れた少なくとも1つの記憶装置であってもよい。プロセッサ901は、実施例1における数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法を実行することができる。メモリ904は、プログラムコードを記憶しており、プロセッサ901は、メモリ904に記憶されたプログラムコードを呼び出して、実施例1における数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法を実行する。
【0054】
通信バス902は、周辺コンポーネント相互接続(Peripheral Component Interconnect、略してPCI)バス又は拡張業界標準アーキテクチャ(Extended Industry Standard Architecture、略してEISA)バスなどであってもよい。通信バス902は、アドレスバス、データバス、制御バスなどに分けられてもよい。表現を容易にするために、図9では、1本の線のみが使用されているが、バスが1つしかない、又はバスの種類が1つしかないことを意味するものではない。
【0055】
メモリ904は、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、略してRAM)などの揮発性メモリ(Volatile Memory)を含んでもよく、フラッシュメモリ(Flash Memory)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、略してHDD)、又はソリッドステートドライブ(Solid-state Drive、略してSSD)などの不揮発性メモリ(Non-volatile Memory)を含んでもよく、上記のメモリのタイプの組み合わせを含んでもよい。
【0056】
プロセッサ901は、中央処理装置(Central Processing Unit、略してCPU)、ネットワークプロセッサ(Network Processor、略してNP)、又はCPUとNPの組み合わせであってもよい。
【0057】
プロセッサ901は、ハードウェアチップをさらに含んでもよい。上記のハードウェアチップは、特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit、略してASIC)、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device、略してPLD)、又はそれらの組み合わせであってもよい。上記のPLDは、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(Complex Programmable Logic Device、略してCPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、略してFPGA)、ジェネリックアレイロジック(Generic Array Logic、略してGAL)、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0058】
任意選択で、メモリ904は、プログラム命令を記憶することに用いられる。プロセッサ901は、本発明の実施例1と同様に、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法を実現するためのプログラム命令を呼び出すことができる。
【0059】
本発明の実施例は、数値シミュレーションに基づいて河道型貯水池からの放出水の温度を調整・制御する方法を実行することができるコンピュータ実行可能命令を記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。ここで、前記記憶媒体は、磁気ディスク、光ディスク、読み取り専用メモリ(Read Only Memory、略してROM)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、略してRAM)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、略してHDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、略してSSD)などであってもよく、前記記憶媒体は、上記のタイプのメモリの組み合わせを含んでもよい。
【0060】
明らかに、上記の実施例は、明確な説明のための例にすぎず、実施形態を限定することを意図するものではない。当業者であれば、上記の説明に基づいて、他のさまざまな形態の変更又は修正を行うことができる。すべての実施形態の完全なリストは必要ではなく、また不可能である。そこから派生する明らかな変更又は修正は依然として本発明の保護範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】