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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099610
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】予兆検知・診断装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20250626BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
B23Q17/09 B
B23Q17/09 D
G05B19/18 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216397
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】保坂 儒人
(72)【発明者】
【氏名】茂中 義典
(72)【発明者】
【氏名】丸野 智広
(72)【発明者】
【氏名】西澤 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】牧野 豊
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029DD01
3C029DD12
3C269AB01
3C269MN29
3C269MN36
3C269QB03
3C269QE31
(57)【要約】
【課題】工作機械の工具の摩耗や欠けが発生した時点を特定する。
【解決手段】予兆検知・診断装置1は、工作機械4のモーターに供給される負荷電流の時系列データを取得するデータ取得部10と、基準データ作成時の時系列データの中から切り出した第1のバッチデータに基づいて、カーネル密度推定を行うための基準データを時刻毎に算出する基準データ作成部12と、検査時の時系列データの中から切り出した第2のバッチデータと基準データとに基づいてカーネル密度推定量を時刻毎に算出し、この推定量に基づいて、第1のバッチデータに対する第2のバッチデータの逸脱の度合いを示すスコアを時刻毎に算出する検査実行部13とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械のモーターに供給される負荷電流の時系列データを取得するように構成されたデータ取得部と、
前記時系列データを蓄積するように構成されたデータ蓄積部と、
基準データ作成時の前記時系列データの中から切り出した第1のバッチデータに基づいて、カーネル密度推定を行うための基準データを時刻毎に算出するように構成された基準データ作成部と、
検査時の前記時系列データの中から切り出した第2のバッチデータと前記基準データとに基づいてカーネル密度推定量を時刻毎に算出し、この推定量に基づいて、前記第1のバッチデータに対する前記第2のバッチデータの逸脱の度合いを示すスコアを時刻毎に算出するように構成された検査実行部とを備えることを特徴とする予兆検知・診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の予兆検知・診断装置において、
前記バッチデータの中で、電流値がオフセット閾値以下で、かつ電流値が前記オフセット閾値以下の状態が所定時間以上継続する領域についてオフセット値を検出し、前記バッチデータからオフセット値を減算または加算するように構成されたデータ補正実行部をさらに備えることを特徴とする予兆検知・診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の予兆検知・診断装置において、
前記データ補正実行部は、複数の前記第1のバッチデータの時間位置が合うように補正し、これら第1のバッチデータと時間位置が合うように前記第2のバッチデータを補正することを特徴とする予兆検知・診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の予兆検知・診断装置において、
前記基準データ作成部は、複数の前記第1のバッチデータの特徴量と前記基準データとを、ユーザが入力したワークの品種データと対応付けて前記データ蓄積部に格納し、
前記検査実行部は、前記第1のバッチデータの特徴量と前記第2のバッチデータとに基づいて、検査時のワークの品種を判定し、検査時のワークの品種に対応する前記基準データと前記第2のバッチデータとに基づいて前記カーネル密度推定量を算出することを特徴とする予兆検知・診断装置。
【請求項5】
請求項4記載の予兆検知・診断装置において、
前記第1のバッチデータの特徴量は、これらバッチデータの平均波形と平均サイクル長であり、
前記検査実行部は、前記平均サイクル長と前記第2のバッチデータのサイクル長とを比較する1回目の品種判定を行い、1回目の品種判定で品種候補が2つ以上の場合には、前記平均波形と前記第2のバッチデータとの相関係数または相互相関に基づいて2回目の品種判定を行い、2回目の品種判定で品種候補が2つ以上の場合には、前記カーネル密度推定量を2回目の品種判定で残った品種候補毎に算出し、このカーネル密度推定量に基づいて検査時のワークの品種を判定することを特徴とする予兆検知・診断装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の予兆検知・診断装置において、
前記基準データ作成部は、前記第1のバッチデータの中で、ワークの加工が実施されていると推定される加工区間を検出し、
前記検査実行部は、前記第2のバッチデータの中で、前記加工区間と同じ時間位置の区間についてのみ前記カーネル密度推定量を算出することを特徴とする予兆検知・診断装置。
【請求項7】
請求項1記載の予兆検知・診断装置において、
前記データ取得部は、前記時系列データを取り込むと共に、ワークの品種データを前記工作機械から取得し、
前記基準データ作成部は、算出した基準データと基準データ作成時に前記データ取得部が取得した品種データとを対応付けて前記データ蓄積部に格納し、
前記検査実行部は、検査時に前記データ取得部が取得した品種データに対応する前記基準データを前記データ蓄積部から取得して、この基準データと前記第2のバッチデータとに基づいてカーネル密度推定量を算出することを特徴とする予兆検知・診断装置。
【請求項8】
工作機械のモーターに供給される負荷電流の時系列データを取得する第1のステップと、
基準データ作成時の前記時系列データの中から切り出した第1のバッチデータに基づいて、カーネル密度推定を行うための基準データを時刻毎に算出する第2のステップと、
検査時の前記時系列データの中から切り出した第2のバッチデータと前記基準データとに基づいてカーネル密度推定量を時刻毎に算出する第3のステップと、
前記カーネル密度推定量に基づいて、前記第1のバッチデータに対する前記第2のバッチデータの逸脱の度合いを示すスコアを時刻毎に算出する第4のステップとを含むことを特徴とする予兆検知・診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の異常を検出する予兆検知・診断装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械で材料の切削加工をしている際に、工具の摩耗や欠けが原因で不良品が発生することがある。
従来より、工作機械の主軸などに接続されたモーターの電流値を計測し、この変化からバッチ全体で評価を行い、工具の摩耗を検知する技術が知られている(特許文献1参照)。また、工作機械の主軸などに接続されたモーターの電流値と共に工具の変更を司るモーターの電流値を利用して、工具の種類毎に工具異常を検知する技術が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、バッチ全体での評価は可能であるが、複数の加工から成るバッチにおいて工具の摩耗や欠けの発生箇所を特定することができないという課題があった。
【0004】
また、特許文献2に開示された技術では、バッチ内の複数の加工区間を切り出すために、工具の変更を司るモーターの計測機器が別途必要になるという課題があった。さらに、区間の切り出しは工具の変更毎となるため、同一の工具による連続した異なる加工を個々に抽出することができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6952318号公報
【特許文献2】特許第6924529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、工作機械の工具の摩耗や欠けが発生した時点を特定することが可能な予兆検知・診断装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の予兆検知・診断装置は、工作機械のモーターに供給される負荷電流の時系列データを取得するように構成されたデータ取得部と、前記時系列データを蓄積するように構成されたデータ蓄積部と、基準データ作成時の前記時系列データの中から切り出した第1のバッチデータに基づいて、カーネル密度推定を行うための基準データを時刻毎に算出するように構成された基準データ作成部と、検査時の前記時系列データの中から切り出した第2のバッチデータと前記基準データとに基づいてカーネル密度推定量を時刻毎に算出し、この推定量に基づいて、前記第1のバッチデータに対する前記第2のバッチデータの逸脱の度合いを示すスコアを時刻毎に算出するように構成された検査実行部とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の予兆検知・診断装置の1構成例は、前記バッチデータの中で、電流値がオフセット閾値以下で、かつ電流値が前記オフセット閾値以下の状態が所定時間以上継続する領域についてオフセット値を検出し、前記バッチデータからオフセット値を減算または加算するように構成されたデータ補正実行部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の予兆検知・診断装置の1構成例において、前記データ補正実行部は、複数の前記第1のバッチデータの時間位置が合うように補正し、これら第1のバッチデータと時間位置が合うように前記第2のバッチデータを補正することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の予兆検知・診断装置の1構成例において、前記基準データ作成部は、複数の前記第1のバッチデータの特徴量と前記基準データとを、ユーザが入力したワークの品種データと対応付けて前記データ蓄積部に格納し、前記検査実行部は、前記第1のバッチデータの特徴量と前記第2のバッチデータとに基づいて、検査時のワークの品種を判定し、検査時のワークの品種に対応する前記基準データと前記第2のバッチデータとに基づいて前記カーネル密度推定量を算出することを特徴とするものである。
また、本発明の予兆検知・診断装置の1構成例において、前記第1のバッチデータの特徴量は、これらバッチデータの平均波形と平均サイクル長であり、前記検査実行部は、前記平均サイクル長と前記第2のバッチデータのサイクル長とを比較する1回目の品種判定を行い、1回目の品種判定で品種候補が2つ以上の場合には、前記平均波形と前記第2のバッチデータとの相関係数または相互相関に基づいて2回目の品種判定を行い、2回目の品種判定で品種候補が2つ以上の場合には、前記カーネル密度推定量を2回目の品種判定で残った品種候補毎に算出し、このカーネル密度推定量に基づいて検査時のワークの品種を判定することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の予兆検知・診断装置の1構成例において、前記基準データ作成部は、前記第1のバッチデータの中で、ワークの加工が実施されていると推定される加工区間を検出し、前記検査実行部は、前記第2のバッチデータの中で、前記加工区間と同じ時間位置の区間についてのみ前記カーネル密度推定量を算出することを特徴とするものである。
また、本発明の予兆検知・診断装置の1構成例において、前記データ取得部は、前記時系列データを取り込むと共に、ワークの品種データを前記工作機械から取得し、前記基準データ作成部は、算出した基準データと基準データ作成時に前記データ取得部が取得した品種データとを対応付けて前記データ蓄積部に格納し、前記検査実行部は、検査時に前記データ取得部が取得した品種データに対応する前記基準データを前記データ蓄積部から取得して、この基準データと前記第2のバッチデータとに基づいてカーネル密度推定量を算出することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の予兆検知・診断方法は、工作機械のモーターに供給される負荷電流の時系列データを取得する第1のステップと、基準データ作成時の前記時系列データの中から切り出した第1のバッチデータに基づいて、カーネル密度推定を行うための基準データを時刻毎に算出する第2のステップと、検査時の前記時系列データの中から切り出した第2のバッチデータと前記基準データとに基づいてカーネル密度推定量を時刻毎に算出する第3のステップと、前記カーネル密度推定量に基づいて、前記第1のバッチデータに対する前記第2のバッチデータの逸脱の度合いを示すスコアを時刻毎に算出する第4のステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基準データ作成時の時系列データの中から切り出した第1のバッチデータに基づいて、カーネル密度推定を行うための基準データを時刻毎に算出し、検査時の時系列データの中から切り出した第2のバッチデータと基準データとに基づいてカーネル密度推定量を時刻毎に算出し、この推定量に基づいて、第1のバッチデータに対する第2のバッチデータの逸脱の度合いを示すスコアを時刻毎に算出することにより、工作機械の工具の摩耗や欠けが発生したと考えられる時点を特定することができる。その結果、本発明では、バッチ内における加工手順の見直しなど運用の改善を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る工作機械検査システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る予兆検知・診断装置の基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、基準データ作成結果の1例を示す図である。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係る予兆検知・診断装置の検査時の動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、基準データ用の時系列データと検査用の時系列データの1例を示す図である。
図6図6は、スコアの時系列データの1例を示す図である。
図7図7は、本発明の第3の実施例に係る予兆検知・診断装置の基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。
図8図8は、本発明の第3の実施例に係る基準データ作成部による加工区間推定処理を説明するフローチャートである。
図9図9は、本発明の第3の実施例に係る基準データ作成部による加工区間推定処理を説明する図である。
図10図10は、本発明の第3の実施例に係る基準データ作成部による加工区間推定処理を説明する図である。
図11図11は、本発明の第3の実施例に係る予兆検知・診断装置の検査時の動作を説明するフローチャートである。
図12図12は、本発明の第4の実施例に係る工作機械検査システムの構成を示すブロック図である。
図13図13は、バッチデータのオフセット成分が基準データ作成処理や検査処理に与える影響について説明する図である。
図14図14は、本発明の第4の実施例に係る予兆検知・診断装置の基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。
図15図15は、本発明の第4の実施例に係るデータ補正実行部によるオフセット除去処理を説明するフローチャートである。
図16図16は、本発明の第4の実施例においてオフセット成分除去に使用する候補領域の表示例を示す図である。
図17図17は、本発明の第4の実施例に係る予兆検知・診断装置の検査時の動作を説明するフローチャートである。
図18図18は、本発明の第4の実施例の効果を説明する図である。
図19図19は、本発明の第5の実施例に係るデータ補正実行部の構成を示すブロック図である。
図20図20は、本発明の第5の実施例に係る予兆検知・診断装置の基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。
図21図21は、本発明の第5の実施例に係るデータ補正実行部の基準データ作成時のジッター補正処理を説明するフローチャートである。
図22図22は、本発明の第5の実施例に係る予兆検知・診断装置の検査時の動作を説明するフローチャートである。
図23図23は、本発明の第5の実施例に係るデータ補正実行部の検査時のジッター補正処理を説明するフローチャートである。
図24図24は、本発明の第5の実施例に係るデータ補正実行部の基準データ作成時のジッター補正処理の別の例を説明するフローチャートである。
図25図25は、本発明の第5の実施例に係るデータ補正実行部の検査時のジッター補正処理の別の例を説明するフローチャートである。
図26図26は、本発明の第6の実施例に係る予兆検知・診断装置の基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。
図27図27は、バッチデータの平均波形の1例を示す図である。
図28図28は、本発明の第6の実施例に係る予兆検知・診断装置の検査時の動作を説明するフローチャートである。
図29図29は、第1~第6の実施例に係る予兆検知・診断装置を実現するコンピューターの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る工作機械検査システムの構成を示すブロック図である。工作機械検査システムは、予兆検知・診断装置1と、工作機械4のワークを駆動するモーターに供給される負荷電流を予兆検知・診断装置1で扱うことが可能な大きさの電流に変換する変流器であるCT(Current Transformer)2と、予兆検知・診断装置1による検査結果等を表示するための表示器3とから構成される。
【0015】
工作機械4は、被加工物であるワークを加工する刃具(不図示)と、ワークを駆動するモーター40と、モーター40を制御する制御部41と、工作機械全体を制御するCNC(Computer Numerical Control) 42とを含む。
【0016】
予兆検知・診断装置1は、工作機械4のモーター40に供給される負荷電流波形の時系列データを取得するデータ取得部10と、時系列データを蓄積するデータ蓄積部11と、基準データ作成時の時系列データの中から切り出した基準データ用のバッチデータ(第1のバッチデータ)に基づいて、カーネル密度推定を行うための基準データを時刻毎に算出する基準データ作成部12と、検査時の時系列データの中から切り出した検査用のバッチデータ(第2のバッチデータ)と基準データとに基づいてカーネル密度推定量を時刻毎に算出し、この推定量に基づいて、基準データ用のバッチデータに対する検査用のバッチデータの逸脱の度合いを示すスコアを時刻毎に算出する検査実行部13と、表示器3に表示させるデータを生成する表示データ生成部14とを備えている。
【0017】
最初に、予兆検知・診断装置1の基準データ作成時の動作について説明する。図2は予兆検知・診断装置1の基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。
予兆検知・診断装置1のユーザは、工作機械4が正常な状態で、予兆検知・診断装置1に対して基準データ作成を指示する。
【0018】
予兆検知・診断装置1のデータ取得部10は、ユーザからの指示を受けると、工作機械4のモーター40に供給される負荷電流波形の時系列データをCT2を介して取り込む(図2ステップS100)。データ取得部10が取り込んだ基準データ用の時系列データは、データ蓄積部11に格納される。
【0019】
予兆検知・診断装置1の基準データ作成部12は、データ蓄積部11に格納された基準データ用の時系列データの中から、予め設定された条件に従って基準データ用のバッチデータを切り出す(図2ステップS101)。基準データ作成部12は、例えば加工開始時点から加工終了時点までの1バッチ分の時系列データを基準データ用のバッチデータとして切り出す。1バッチ分を大まかに示すタイミング信号は、CNC42から取得することができる。あるいは、基準データ作成部12は、電流値が一定以上になっている区間を判定して、サイクル長Lを求めるようにしてもよい。例えば電流値が0.1A以上になったら1バッチの開始と判定し、電流値が0.1A以下の状態が1秒以上続いたら1バッチの終了と判定することにより、サイクル長Lを求めることができる。データ取得部10と基準データ作成部12とは、予め指定された回数のバッチデータを切り出し終えるまで、ステップS100,S101の処理を繰り返し実行する。
【0020】
次に、基準データ作成部12は、予め指定された回数のバッチデータを切り出し終えた後に(図2ステップS102においてYES)、検査の際に実行するカーネル密度推定量の計算に必要なバンド幅hと標準偏差σとを、基準データ用のバッチデータに基づいて算出する(図2ステップS103)。標本データx,x,・・・,xについて、カーネル関数K(x)、バンド幅hを媒介変数としたカーネル密度推定量を計算する関数fKDE(x)は次の式で与えられる。
【0021】
【数1】
【0022】
カーネル関数K(x)は、式(2)で与えられる。
【0023】
【数2】
【0024】
バンド幅hは、式(3)で与えられる。
【0025】
【数3】
【0026】
式(1)~式(3)は、関数fKDE(x)が標本データと同じ個数のカーネル関数K(x)の和で近似されることを意味する。式(3)のIQR(InterQuartile Range)は、四分位範囲で標本の75%パーセンタイルと25%パーセンタイルとの差である。min(a,b)は、a,bのうち小さい方の値を取る関数である。
【0027】
基準データ作成部12は、標本データの時刻毎の標準偏差σと時刻毎のバンド幅hとを、算出対象の時刻の前後の時刻における標本データに基づいて算出する。ここで、時刻とは、例えば加工開始時点を時刻0とする経過時間のことを言う。標本データとは、バッチデータ中のある時刻における電流値のことを言う。標本数nは、標準偏差σとバンド幅hの算出対象の時刻の前後の幅(前後の時刻における標本データの点数)にバッチデータの本数(データ取得部10が取り込んだバッチ数)を掛けた値となる。
【0028】
以上で、基準データ作成が終了する。基準データ作成部12が算出した基準データ(標準偏差σとバンド幅h)の算出結果は、データ蓄積部11に格納される。図3(A)のようなデータ群を利用して基準データ作成を実施すると、図3(B)のような基準データ作成結果となる。
【0029】
次に、予兆検知・診断装置1の検査時の動作について説明する。図4は予兆検知・診断装置1の検査時の動作を説明するフローチャートである。
予兆検知・診断装置1のユーザは、予兆検知・診断装置1に対して工作機械4の検査実行を指示する。
【0030】
予兆検知・診断装置1のデータ取得部10は、ユーザからの指示を受けると、基準データ作成時と同様に工作機械4のモーター40に供給される負荷電流波形の時系列データをCT2を介して取り込む(図4ステップS200)。データ取得部10が取り込んだ検査用の時系列データは、データ蓄積部11に格納される。
【0031】
予兆検知・診断装置1の検査実行部13は、基準データ作成時と同様にデータ蓄積部11に格納された検査用の時系列データの中から、予め設定された条件に従って検査用のバッチデータを切り出す(図4ステップS201)。そして、検査実行部13は、基準データ(標準偏差σとバンド幅h)とステップS201で切り出した検査用のバッチデータとに基づいて、カーネル密度推定量fKDE(x)を時刻毎に算出する(図4ステップS202)。基準データ作成時と同様に、時刻とは、例えば加工開始時点を時刻0とする経過時間のことを言う。
【0032】
検査実行部13は、ステップS201で切り出した検査用のバッチデータ中の算出対象の時刻における標本データと、算出対象の時刻に対応する基準データ(標準偏差σとバンド幅h)とを式(1)、式(2)に代入して、算出対象の時刻におけるカーネル密度推定量fKDE(x)を算出すればよい。
【0033】
続いて、検査実行部13は、算出したカーネル密度推定量fKDE(x)に基づいて、基準データ用の標本データに対する検査用の標本データの逸脱の度合いを示すスコアSCを時刻毎に算出する(図4ステップS203)。スコアSCは、例えば次式によって得られる。
【0034】
【数4】
【0035】
スコアSCが高いほど、基準データ用の標本データに対する検査用の標本データの逸脱の度合いが大きいことを示す。工具の摩耗などが発生すると、負荷電流が変化するので、スコアSCの高さで異常検出が可能である。スコアSCの時系列データは、データ蓄積部11に格納される。
【0036】
予兆検知・診断装置1の表示データ生成部14は、例えばスコアSCの時系列データと、データ取得部10が取り込んだ検査用の時系列データとを関連付けてグラフ化して、表示器3に表示させる(図4ステップS204)。ユーザは、表示器3に表示されたグラフを確認することで、工作機械4の異常の有無等を把握する。
【0037】
本実施例による検査結果の1例を図5(A)、図5(B)、図6に示す。ここでは、図5(A)を基準データ用の時系列データとし、図5(B)を検査用の時系列データとする。検査用の時系列データは、破線で示す15秒付近の範囲においてピーク値が基準データ用の時系列データと異なる。本実施例によるスコアSCの算出結果は、図6のようになり、破線で示す15秒付近の範囲においてスコアSCの値が高くなっていることが分かる。
【0038】
以上のように、本実施例では、工具の摩耗や欠けが発生したと考えられる時点を特定することができる。その結果、本実施例では、バッチ内における加工手順の見直しなど運用の改善を行うことができる。
【0039】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例においても、工作機械検査システムの構成は第1の実施例と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
本実施例では、予兆検知・診断装置1のデータ取得部10は、負荷電流波形の時系列データをCT2を介して取り込むと共に、被加工物であるワークの品種データをCNC42から取得する。
【0040】
予兆検知・診断装置1の基準データ作成部12は、算出した基準データ(標準偏差σとバンド幅h)と基準データ作成時にデータ取得部10が取得した品種データとを対応付けてデータ蓄積部11に格納する。
【0041】
予兆検知・診断装置1の検査実行部13は、検査時にデータ取得部10が取得した品種データに対応する基準データ(標準偏差σとバンド幅h)をデータ蓄積部11から取得して、この基準データと検査時に切り出したバッチデータとに基づいて、カーネル密度推定量fKDE(x)を算出する。
【0042】
その他の動作は第1の実施例と同じである。こうして、本実施例では、複数種類のワークを加工する工作機械4に本発明を適用することができ、ワークの品種毎に工作機械4の異常を検出することができる。
【0043】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例においても、工作機械検査システムの構成は第1、第2の実施例と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
検査処理におけるスコア値の計算においては、無信号の区間を除いて実際にワークの加工が行われている区間のみの値を利用してスコア計算を実施すると、無信号区間のノイズに左右されずに摩耗などの傾向が明確に得られると考えられる。そこで、バッチデータにおいて、実際にワークの加工が行われている区間と加工が行われていない無信号の区間とを推定することが望ましい。
【0044】
図7は本実施例の予兆検知・診断装置1の基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。図7のステップS100~S102の処理は、第1、第2の実施例と同じである。
ワークの加工時は、工作機械4のモーター40の負荷電流が大きくなる。予兆検知・診断装置1の基準データ作成部12は、負荷電流が大きくなったところを加工が実施されていると推定される区間として検出し、基準データ用のバッチデータから加工区間を切り出す(図7ステップS104)。
【0045】
図8は基準データ作成部12による加工区間推定処理を説明するフローチャートである。基準データ作成部12は、基準データ用のバッチデータから閾値THを算出する(図8ステップS300)。基準データ作成部12は、例えば1バッチ分の時系列データ中の電流ピーク値の半分の電流値を閾値THとする。あるいは、基準データ作成部12は、1バッチ分の時系列データを例えば大津の二値化法によって2つのクラスに分類し、2つのクラスのそれぞれの重心の中間点の電流値を閾値THとしてもよい。あるいは、基準データ作成部12は、1バッチ分の時系列データの電流値のヒストグラムを作成し、中央値を閾値THとしてもよい。
【0046】
続いて、基準データ作成部12は、図9(A)に示すように基準データ用のバッチデータの中で、電流値が閾値TH以上の区間を加工区間SPとして検出する(図8ステップS301)。
【0047】
さらに、基準データ作成部12は、基準データ用のバッチデータの中に、予め指定された時間幅以上、加工区間SP同士の間隔が空いている領域がある場合(図8ステップS302においてYES)、ステップS300に戻る。この場合、基準データ作成部12は、ステップS302で検出した領域中のバッチデータから、この領域における閾値THを算出する(ステップS300)。
【0048】
そして、基準データ作成部12は、検出した領域中のバッチデータの中で、電流値が閾値TH以上の区間を加工区間SPとして検出する(ステップS301)。図9(B)の例では、30秒付近と、40秒から45秒付近において加工区間SPが新たに検出されている。
【0049】
ステップS300~S302の処理を、予め指定された時間幅以上、加工区間SP同士の間隔が空いている領域がなくなるまで繰り返し実行する。ステップS302において判定NOとなったとき、図10のような検出結果が得られる。基準データ作成部12は、以上のような加工区間推定処理を基準データ用のバッチデータ毎に実施する。
【0050】
次に、基準データ作成部12は、加工区間SP内のバッチデータについて、バンド幅hと標準偏差σとを加工区間SP毎および時刻毎に算出する(図7ステップS103a)。以上で、基準データ作成が終了する。
【0051】
図11は本実施例の予兆検知・診断装置1の検査時の動作を説明するフローチャートである。図11のステップS200,S201の処理は、第1、第2の実施例と同じである。予兆検知・診断装置1の検査実行部13は、基準データ(標準偏差σとバンド幅h)とステップS201で切り出した検査用のバッチデータとに基づいて、カーネル密度推定量fKDE(x)を時刻毎に算出する(図11ステップS202a)。
【0052】
ただし、本実施例では、基準データ作成部12によって加工区間SP内についてのみ基準データ(標準偏差σとバンド幅h)が算出されている。そこで、検査実行部13は、検査用のバッチデータのうち、検査用のバッチデータの開始からの経過時刻が加工区間SPと同一となる区間についてのみカーネル密度推定量fKDE(x)を算出する。
【0053】
続いて、検査実行部13は、算出したカーネル密度推定量fKDE(x)に基づいて、基準データ用の標本データに対する検査用の標本データの逸脱の度合いを示すスコアSCを時刻毎に算出する(図11ステップS203a)。本実施例では、検査実行部13は、加工区間SP内と同じ時間位置の区間についてのみスコアSCを算出することになる。
図11のステップS204の処理は、第1、第2の実施例と同じである。
【0054】
以上のように、本実施例では、加工区間SPを推定し、加工区間SP内についてのみスコアSCを算出することにより、加工が行われていない無信号区間のノイズに左右されることなく、工作機械4の異常を検出することができる。
【0055】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図12は本発明の第4の実施例に係る工作機械検査システムの構成を示すブロック図である。本実施例の工作機械検査システムは、予兆検知・診断装置1aと、CT2と、表示器3とから構成される。
【0056】
予兆検知・診断装置1aは、データ取得部10と、データ蓄積部11と、基準データ作成部12と、検査実行部13と、表示データ生成部14と、データ補正実行部15とを備えている。
【0057】
バッチデータに直流のオフセット成分が重畳されていると、基準データ作成処理や検査処理の結果に影響を与える。基準データ作成処理において図13(A)に示すように複数のバッチデータ同士のオフセット量の差が小さいデータ群を使用した場合、図13(B)に示すような基準データ作成結果となる。一方、図13(C)に示すように複数のバッチデータ同士のオフセット量の差が大きいデータ群を使用した場合、図13(D)に示すような基準データ作成結果となる。基準データ作成結果が異なるならば、検査処理で計算されるカーネル密度推定量も異なる結果となる。
【0058】
基準データ作成処理でオフセット量の差が小さいデータ群を使用したとしても、検査処理において基準データ作成処理に使用したバッチデータとのオフセット量の差が小さいデータを使用する場合とオフセット量の差が大きいデータを使用する場合では、カーネル密度推定量の計算結果が異なる。以上の理由から、バッチデータのオフセット成分を適切に除去することが望ましい。
【0059】
図14は本実施例の予兆検知・診断装置1aの基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。図14のステップS100~S102,S104の処理は、第3の実施例と同じである。
【0060】
予兆検知・診断装置1aのデータ補正実行部15は、ステップS101で切り出された基準データ用のバッチデータのオフセット成分を除去する(図14ステップS105)。図15はデータ補正実行部15によるオフセット除去処理を説明するフローチャートである。
【0061】
データ補正実行部15は、基準データ用のバッチデータにおいてオフセット成分除去に使用する候補領域CAを、表示器3に表示させるよう表示データ生成部14に指示する(図15ステップS400)。データ補正実行部15は、基準データ用のバッチデータの中で、電流値が予め設定されたオフセット閾値OTH(OTH>0)以下で、かつ電流値がオフセット閾値OTH以下の状態が所定時間以上継続する領域を候補領域CAとして検出する。オフセット閾値OTHは、0近傍の値に設定されている。
【0062】
表示器3の画面30に表示される候補領域CAの表示例を図16に示す。予兆検知・診断装置1aのユーザは、表示された候補領域CAのうち1つを選択するか、任意の範囲を指定する。
【0063】
データ補正実行部15は、ユーザによって指定された領域内のバッチデータに基づいて、オフセット値Ioffを決定する(図15ステップS401)。データ補正実行部15は、例えばユーザによって指定された領域内のバッチデータのうち、電流値の傾きが最も小さくなる点の電流値をオフセット値Ioffとする。あるいは、データ補正実行部15は、例えばユーザによって指定された領域内の電流値の最頻値をオフセット値Ioffとしてもよい。
【0064】
データ補正実行部15は、基準データ用のバッチデータからオフセット値Ioffを減算することにより、オフセット成分を除去する(図15ステップS402)。データ補正実行部15は、以上のようなオフセット除去処理を基準データ用のバッチデータ毎に実施する。
【0065】
本実施例の基準データ作成部12は、オフセット除去処理後の、加工区間SP内のバッチデータについて、バンド幅hと標準偏差σとを加工区間SP毎および時刻毎に算出する(図14ステップS103b)。以上で、基準データ作成が終了する。
【0066】
図17は本実施例の予兆検知・診断装置1aの検査時の動作を説明するフローチャートである。図17のステップS200,S201の処理は、第1~第3の実施例と同じである。予兆検知・診断装置1aのデータ補正実行部15は、ステップS201で切り出された検査用のバッチデータのオフセット成分を除去する(図17ステップS205)。このときのオフセット除去処理は、基準データ作成時と同様である。オフセット値Ioffとしては、基準データ作成時に求めた値を使用してもよい。
【0067】
予兆検知・診断装置1aの検査実行部13は、基準データ(標準偏差σとバンド幅h)とステップS205のオフセット除去処理後のバッチデータとに基づいて、カーネル密度推定量fKDE(x)を時刻毎に算出する(図17ステップS202b)。第3の実施例と同様に、検査実行部13は、加工区間SPと同じ時間位置の区間についてのみカーネル密度推定量fKDE(x)を算出する。
図17のステップS203a,S204の処理は、第3の実施例と同じである。
【0068】
例えば図18(A)に示すように複数のバッチデータ同士のオフセット量の差が大きいデータ群を基準データ作成に使用した場合でも、本実施例によってオフセット成分を除去すれば、図18(B)に示すようなバッチデータが得られる。
【0069】
以上のように、本実施例では、バッチデータに重畳されているオフセット成分を除去することができるので、オフセット成分が基準データ作成処理の結果や検査処理の結果に与える影響を低減することができる。
【0070】
なお、以上の説明では、データ補正実行部15を第3の実施例に適用する例で説明しているが、第1、第2の実施例に適用してもよい。すなわち、図14のステップS104の処理を省いてもよい。この場合、基準データ作成部12は、オフセット除去処理後の基準データ用のバッチデータについて、バンド幅hと標準偏差σとを時刻毎に算出すればよい。また、検査実行部13は、基準データ(標準偏差σとバンド幅h)と、ステップS201で切り出され、ステップS205でオフセット除去処理された検査用のバッチデータに基づいて、カーネル密度推定量fKDE(x)を時刻毎に算出すればよい。
【0071】
[第5の実施例]
次に、本発明の第5の実施例について説明する。本実施例においても、工作機械検査システムの構成は第4の実施例と同様であるので、図12の符号を用いて説明する。
基準データ作成処理における基準データの算出や検査処理におけるスコア値の算出において、バッチデータにジッターが発生していると、基準データ作成処理や検査処理の結果に影響を与える。したがって、ジッターを適切に補正することが望ましい。
【0072】
図19は本実施例のデータ補正実行部15の構成を示すブロック図である。本実施例のデータ補正実行部15は、相互相関算出部150と、補正部151とから構成される。
【0073】
図20は本実施例の予兆検知・診断装置1aの基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。図20のステップS100~S102,S104の処理は、第4の実施例と同じである。
本実施例のデータ補正実行部15は、第4の実施例と同様にステップS101で切り出された基準データ用のバッチデータのオフセット成分を除去し(図20ステップS105)、オフセット除去処理後のバッチデータのジッターを補正する(図20ステップS106)。
【0074】
図21はデータ補正実行部15のジッター補正処理を説明するフローチャートである。データ補正実行部15の相互相関算出部150は、基準データ作成部12が切り出した、予め指定された回数の基準データ作成用のバッチデータのうち、1つのバッチデータ(以下、代表データ)の加工区間SPと、代表データ以外の他のバッチデータのうち、代表データの加工区間SPと同じ時間位置にあるブロック区間との相互相関を算出する(図21ステップS501)。相互相関算出部150は、代表データの加工区間SPの先頭位置タイミングTCを中心として、所定の時間範囲内(例えばTC-window~TC+window)で、代表データと他のバッチデータのブロック区間の相互相関を繰り返し算出する(windowは所定の最大時間幅)。
【0075】
所定の時間範囲内で相互相関を全て算出し終えた後に、データ補正実行部15の補正部151は、加工区間SPの先頭位置タイミングTCを基準位置とし、相互相関が最大となった時間位置の基準位置に対するずれ量を求める(図21ステップS502)。
【0076】
相互相関算出部150と補正部151とは、ステップS501,S502の処理を代表データの加工区間SP毎に行う。全ての加工区間SPについてずれ量の算出処理を終えた場合、補正部151は、相互相関を算出した他のバッチデータのブロック区間の時間位置を、このブロック区間に対応する加工区間SPについて算出したずれ量の分だけ動かして、ジッターを補正する(図21ステップS503)。補正部151は、ステップS503のジッター補正処理を加工区間SP毎に行う。
【0077】
補正部151は、他のバッチデータのブロック区間を例えば時間が遅れる方向に動かした場合、このブロック区間の後端よりも後のデータを上記ずれ量分だけ削除することになる。さらに、ブロック区間の先端よりも前にデータのない空白部分ができるので、補正部151は、ブロック区間の直前にあるデータを用いて、ずれ量分の空白部分を補間する。
【0078】
また、補正部151は、他のバッチデータのブロック区間を時間が早まる方向に動かした場合、ブロック区間の先端よりも前のデータを上記ずれ量分だけ削除することになる。さらに、ブロック区間の後端よりも後にデータのない空白部分ができるので、補正部151は、ブロック区間の直後にあるデータを用いて、ずれ量分の空白部分を補間する。
【0079】
相互相関算出部150と補正部151とは、ステップS500~S503の処理を、基準データ作成部12が切り出した、予め指定された回数の基準データ作成用のバッチデータのうち、代表データ以外の他のバッチデータ毎に行う。代表データ以外の他のバッチデータの全てについてステップS500~S503の処理を終えた時点で(図21ステップS504においてYES)、ジッター補正処理が終了する。こうして、基準データ作成用のバッチデータの各加工区間SPの先頭時刻が同期するように補正される。ジッター補正処理後のバッチデータは、データ蓄積部11に格納される。
【0080】
本実施例の基準データ作成部12は、オフセット除去処理され、さらにジッター補正処理された後の、加工区間SP内のバッチデータについて、バンド幅hと標準偏差σとを加工区間SP毎および時刻毎に算出する(図20ステップS103c)。以上で、基準データ作成が終了する。
【0081】
図22は本実施例の予兆検知・診断装置1aの検査時の動作を説明するフローチャートである。図22のステップS200,S201の処理は、第4の実施例と同じである。
本実施例のデータ補正実行部15は、第4の実施例と同様にステップS201で切り出された検査用のバッチデータのオフセット成分を除去し(図22ステップS205)、オフセット除去処理後のバッチデータのジッターを補正する(図22ステップS206)。
【0082】
図23はデータ補正実行部15の検査時のジッター補正処理を説明するフローチャートである。データ補正実行部15の相互相関算出部150は、前記代表データの加工区間SPと、オフセット除去処理後の検査用のバッチデータのうち、代表データの加工区間SPと同じ時間位置にあるブロック区間との相互相関を算出する(図23ステップS601)。相互相関算出部150は、代表データの加工区間SPの先頭位置タイミングTCを中心として、所定の時間範囲内(例えばTC-window~TC+window)で、代表データと検査用のバッチデータのブロック区間の相互相関を繰り返し算出する。
【0083】
所定の時間範囲内で相互相関を全て算出し終えた後に、データ補正実行部15の補正部151は、加工区間SPの先頭位置タイミングTCを基準位置とし、相互相関が最大となった時間位置の基準位置に対するずれ量を求める(図23ステップS602)。
【0084】
相互相関算出部150と補正部151とは、ステップS601,S602の処理を代表データの加工区間SP毎に行う。全ての加工区間SPについてずれ量の算出処理を終えた場合、補正部151は、検査用のバッチデータのブロック区間の時間位置を、このブロック区間に対応する加工区間SPについて算出したずれ量の分だけ動かして、ジッターを補正する(図23ステップS603)。補正部151は、ステップS603のジッター補正処理を加工区間SP毎に行う。
【0085】
代表データの加工区間SPの全てについてステップS603の処理を終えた時点で、ジッター補正処理が終了する。こうして、代表データと検査用のバッチデータの各加工区間SPの先頭時刻が同期するように補正される。ジッター補正処理後の検査用のバッチデータは、データ蓄積部11に格納される。
【0086】
予兆検知・診断装置1aの検査実行部13は、基準データ(標準偏差σとバンド幅h)とステップS206のジッター補正処理後のバッチデータとに基づいて、カーネル密度推定量fKDE(x)を時刻毎に算出する(図22ステップS202c)。第3の実施例と同様に、検査実行部13は、加工区間SPと同じ時間位置の区間についてのみカーネル密度推定量fKDE(x)を算出する。
図22のステップS203a,S204の処理は、第3の実施例と同じである。
【0087】
以上のように、本実施例では、バッチデータのジッターを補正することができるので、ジッターが基準データ作成処理の結果や検査処理の結果に与える影響を低減することができる。
【0088】
なお、ジッター補正処理として以下の処理を実施してもよい。図24は、基準データ作成時のジッター補正処理の別の例を説明するフローチャートである。図24のステップS501,S502の処理は図21で説明したとおりである。データ補正実行部15の補正部151は、代表データの1番目の加工区間SPについてずれ量の算出処理を終えたときに、代表データの各加工区間SPに対応する他のバッチデータのブロック区間の全ての時間位置を、代表データの1番目の加工区間SPについて算出したずれ量の分だけ動かして、ジッターを補正する(図24ステップS505)。
【0089】
次に、補正部151は、代表データの2番目の加工区間SPについてずれ量の算出処理を終えたときに、代表データの2番目以降の各加工区間SPに対応する他のバッチデータの2番目以降のブロック区間の全ての時間位置を、代表データの2番目の加工区間SPについて算出したずれ量の分だけ動かして、ジッターを補正する(ステップS505)。
【0090】
続いて、補正部151は、代表データの3番目の加工区間SPについてずれ量の算出処理を終えたときに、代表データの3番目以降の各加工区間SPに対応する他のバッチデータの3番目以降のブロック区間の全ての時間位置を、代表データの3番目の加工区間SPについて算出したずれ量の分だけ動かして、ジッターを補正する(ステップS505)。
【0091】
相互相関算出部150と補正部151とは、以上のようなステップS501,S502,S505の処理を代表データの加工区間SP毎に行う。さらに、相互相関算出部150と補正部151とは、ステップS500~S502,S505の処理を、基準データ作成部12が切り出した、予め指定された回数の基準データ作成用のバッチデータのうち、代表データ以外の他のバッチデータ毎に行う。代表データ以外の他のバッチデータの全てについてステップS500~S503の処理を終えた時点で(図24ステップS506においてYES)、基準データ作成時のジッター補正処理が終了する。
【0092】
図25は、検査時のジッター補正処理の別の例を説明するフローチャートである。図25のステップS601,S602の処理は図23で説明したとおりである。データ補正実行部15の補正部151は、代表データの1番目の加工区間SPについてずれ量の算出処理を終えたときに、代表データの各加工区間SPに対応する検査用のバッチデータのブロック区間の全ての時間位置を、代表データの1番目の加工区間SPについて算出したずれ量の分だけ動かして、ジッターを補正する(図25ステップS605)。
【0093】
次に、補正部151は、代表データの2番目の加工区間SPについてずれ量の算出処理を終えたときに、代表データの2番目以降の各加工区間SPに対応する検査用のバッチデータの2番目以降のブロック区間の全ての時間位置を、代表データの2番目の加工区間SPについて算出したずれ量の分だけ動かして、ジッターを補正する(ステップS605)。
【0094】
続いて、補正部151は、代表データの3番目の加工区間SPについてずれ量の算出処理を終えたときに、代表データの3番目以降の各加工区間SPに対応する検査用のバッチデータの3番目以降のブロック区間の全ての時間位置を、代表データの3番目の加工区間SPについて算出したずれ量の分だけ動かして、ジッターを補正する(ステップS605)。
【0095】
相互相関算出部150と補正部151とは、以上のようなステップS601,S602,S605の処理を代表データの加工区間SP毎に行う。代表データの加工区間SPの全てについてステップS601,S602,S605の処理を終えた時点で(図25ステップS600においてYES)、検査時のジッター補正処理が終了する。図24図25で説明した処理は、ジッターが大きい場合に有効である。
【0096】
[第6の実施例]
次に、本発明の第6の実施例について説明する。本実施例においても、工作機械検査システムの構成は第4、第5の実施例と同様であるので、図12の符号を用いて説明する。
1台の工作機械4で複数の品種のワークを加工する場合、複数の品種の基準データを保持することが必要になる。第2の実施例では、品種データをCNC42から取得しているが、品種データを得るには工作機械4の改造が必要であることも少なくなく、時間と技術を要する。したがって、バッチデータからワークの品種を判別する機能が有用となる。
【0097】
図26は本実施例の予兆検知・診断装置1aの基準データ作成時の動作を説明するフローチャートである。図26のステップS100~S102,S104~S106の処理は、第5の実施例と同じである。
【0098】
本実施例の基準データ作成部12は、オフセット除去処理され、さらにジッター補正処理された後の、加工区間SP内の基準データ用のバッチデータについて、バンド幅hと標準偏差σとを加工区間SP毎および時刻毎に算出する(図26ステップS103d)。このとき、基準データ作成部12は、バンド幅hと標準偏差σの算出に用いる基準データ用の複数のバッチデータの平均波形と、基準データ用の複数のバッチデータの平均サイクル長Laveとを、基準データ用のバッチデータの特徴量として求める。
【0099】
基準データ作成部12は、1バッチ分を示すタイミング信号をCNC42から取得することにより、1バッチ分の時系列データのサイクル長を求めることができるので、複数のバッチデータのそれぞれについてサイクル長を求めることにより、平均サイクル長Laveを算出できる。あるいは、基準データ作成部12は、電流値が一定以上になっている区間を判定して、サイクル長Lを求めるようにしてもよい。例えば電流値が0.1A以上になったら1バッチの開始と判定し、電流値が0.1A以下の状態が1秒以上続いたら1バッチの終了と判定することにより、サイクル長Lを求めることができる。そして、基準データ作成部12は、バンド幅hと、標準偏差σと、バッチデータの平均波形と、平均サイクル長Laveと、データ補正実行部15が決定したオフセット値Ioffとからなる基準データを、ワークの品種データと対応付けてデータ蓄積部11に格納する。
【0100】
基準データ作成部12は、以上のような基準データ作成処理をワークの品種毎に行う。基準データ作成時のワークの品種データは、予兆検知・診断装置1aのユーザがワークの品種毎に手動で入力する。これにより、基準データ作成部12は、ワークの品種毎に基準データ作成処理を行うことが可能になる。
品種A~Eのバッチデータの平均波形の1例を、それぞれ図27(A)~図27(E)に示す。
【0101】
図28は本実施例の予兆検知・診断装置1aの検査時の動作を説明するフローチャートである。図28のステップS200,S201の処理は、第5の実施例と同じである。
本実施例の検査実行部13は、ステップS201で切り出された検査用のバッチデータのサイクル長Lを求める(図28ステップS207)。検査実行部13は、1バッチ分を示すタイミング信号をCNC42から取得することにより、1バッチ分の時系列データのサイクル長Lを求めることができる。あるいは、検査実行部13は、電流値が一定以上になっている区間を判定して、サイクル長Lを求めるようにしてもよい。例えば電流値が0.1A以上になったら1バッチの開始と判定し、電流値が0.1A以下の状態が1秒以上続いたら1バッチの終了と判定することにより、サイクル長Lを求めることができる。
【0102】
続いて、検査実行部13は、ステップS207で求めたサイクル長Lと、ワークの品種毎の基準データに含まれる平均サイクル長Laveとを比較し、平均サイクル長Laveが所定の品種判定条件を満たすワークの品種がいくつあるかを判定する(図28ステップS208)。検査実行部13は、例えばサイクル長Lが平均サイクル長Lave±5%以内に入っている場合、この平均サイクル長Laveを含む基準データに対応するワークの品種を、品種判定条件を満たすものとして、1回目の品種候補とする。
【0103】
検査実行部13は、1回目の品種候補が1つの場合、1回目の品種候補を検査時のワークの品種と判定する(図28ステップS209)。また、検査実行部13は、1回目の品種候補が存在しない場合、品種判定不可とする(図28ステップS210)。
図27(A)~図27(E)の例では、品種A、品種B、品種D、品種Eが1回目の品種候補となる。
【0104】
1回目の品種候補が2つ以上と検査実行部13が判定した場合、本実施例のデータ補正実行部15は、ステップS201で切り出された検査用のバッチデータのジッターを補正する(図28ステップS211)。このとき、データ補正実行部15は、ジッター補正処理したバッチデータを1回目の品種候補毎に生成する。例えば品種A、品種B、品種D、品種Eが1回目の品種候補の場合、データ補正実行部15は、品種Aのバッチデータの平均波形を用いてジッター補正処理した検査用のバッチデータと、品種Bのバッチデータの平均波形を用いてジッター補正処理した検査用のバッチデータと、品種Dのバッチデータの平均波形を用いてジッター補正処理した検査用のバッチデータと、品種Eのバッチデータの平均波形を用いてジッター補正処理した検査用のバッチデータとを生成する。
【0105】
検査実行部13は、ジッター補正処理された検査用のバッチデータと、1回目の品種候補の基準データに含まれるバッチデータの平均波形との相関係数または相互相関を1回目の品種候補毎に算出し(図28ステップS212)、相関係数または相互相関が所定の品種判定条件を満たすワークの品種がいくつあるかを判定する(図28ステップS213)。
【0106】
検査実行部13は、相関係数または相互相関が基準値以上の品種候補を、品種判定条件を満たす2回目の品種候補とする。図27(A)~図27(E)の例では、品種Aは基準値以下となり、品種B、品種D、品種Eが基準値以上となった。これにより、品種B、品種D、品種Eが2回目の品種候補となる。
【0107】
検査実行部13は、2回目の品種候補が1つの場合、2回目の品種候補を検査時のワークの品種と判定する(ステップS209)。また、検査実行部13は、2回目の品種候補が存在しない場合、品種判定不可とする(ステップS210)。
【0108】
2回目の品種候補が2つ以上と検査実行部13が判定した場合、本実施例のデータ補正実行部15は、検査用のバッチデータからオフセット値Ioffを減算することにより、オフセット成分を除去したバッチデータを2回目の品種候補毎に生成する(図28ステップS214)。
【0109】
このとき、データ補正実行部15は、2回目の品種候補のバッチデータの平均波形を用いてジッター補正処理した検査用のバッチデータから、同品種候補の基準データに含まれるオフセット値Ioffを減算する。したがって、データ補正実行部15は、品種Bのバッチデータの平均波形を用いてジッター補正処理した検査用のバッチデータから品種Bのオフセット値Ioffを減算し、品種Dのバッチデータの平均波形を用いてジッター補正処理した検査用のバッチデータから品種Dのオフセット値Ioffを減算し、品種Eのバッチデータの平均波形を用いてジッター補正処理した検査用のバッチデータから品種Eのオフセット値Ioffを減算することになる。なお、サイクル長が足りない等の理由でオフセット点の位置が2回目の品種候補にない場合、その品種は2回目の品種候補から除外する。
【0110】
次に、検査実行部13は、基準データ(標準偏差σとバンド幅h)とステップS214のオフセット除去処理後のバッチデータとに基づいて、カーネル密度推定量fKDE(x)を2回目の品種候補毎および時刻毎に算出する(図28ステップS215)。第3の実施例と同様に、検査実行部13は、加工区間SPと同じ時間位置の区間についてのみカーネル密度推定量fKDE(x)を算出する。検査実行部13は、品種Bのオフセット値Ioffを用いてオフセット除去処理されたバッチデータと、同品種Bの基準データとを式(1)、式(2)に代入してカーネル密度推定量fKDE(x)を算出すればよい。品種D,Eについても同様である。
【0111】
続いて、検査実行部13は、算出したカーネル密度推定量fKDE(x)に基づいて、例えば式(4)によりスコアSCを2回目の品種候補毎および時刻毎に算出し、1バッチ分のスコアSCの平均値を2回目の品種候補毎に算出する(図28ステップS216)。例えば品種BのスコアSCの平均値は2.11、品種DのスコアSCの平均値は5.83、品種EのスコアSCの平均値は6.82であった。
【0112】
検査実行部13は、スコアSCの平均値が一定値以下の品種候補がいくつあるかを判定する(図28ステップS217)。検査実行部13は、スコアSCの平均値が一定値以下の2回目の品種候補が存在しない場合、品種判定不可とする(ステップS210)。
【0113】
検査実行部13は、スコアSCの平均値が一定値以下の品種候補が1つ以上存在する場合、スコアSCの平均値が最も小さい2回目の品種候補を検査時のワークの品種と判定し、この品種候補について算出したスコアSCを検査結果として採用する(図28ステップS218)。上記の例では、品種Bを検査時のワークの品種と判定する。
【0114】
なお、1回目の品種候補または2回目の品種候補が1つの場合には、品種の判定結果に基づいて処理を行えばよい。
すなわち、データ補正実行部15は、検査時のワークの品種と判定した品種候補のバッチデータの平均波形を用いてジッター補正処理した検査用のバッチデータから、同品種候補の基準データに含まれるオフセット値Ioffを減算することにより、オフセット成分を除去する(図28ステップS219)。ただし、データ補正実行部15は、1回目の品種候補が1つの場合、この品種候補のバッチデータの平均波形を用いて検査用のバッチデータのジッター補正処理を行った上で、オフセット除去処理を行う。
【0115】
次に、検査実行部13は、オフセット除去処理された検査用のバッチデータと、検査時のワークの品種と判定した品種候補の基準データとを式(1)、式(2)に代入してカーネル密度推定量fKDE(x)を時刻毎に算出する(図28ステップS220)。続いて、検査実行部13は、算出したカーネル密度推定量fKDE(x)に基づいて、例えば式(4)によりスコアSCを時刻毎に算出すればよい(図28ステップS221)。
【0116】
ステップS218の処理によって検査時のワークの品種が確定した場合には、カーネル密度推定量fKDE(x)とスコアSCの算出処理が既に終了しているので、上記のとおり検査時のワークの品種と判定した品種候補について算出したスコアSCを検査結果として採用すればよい。
図28のステップS204の処理は、第1~第5の実施例と同じである。
【0117】
本実施例では、工作機械4から品種データを取得することが不要となり、負荷電流のみを取得すればよいことになる。また、同一品種のワークを同一の工作機械4によって切削加工をする場合でも、モーター電流プロファイルには、加工環境の影響や偶然誤差、加工不良などによりバラつきが存在する。本実施例では、基準データと対象データ間でカーネル密度推定量や相関を利用することで、これらのバラつきを許容しつつ、品種の判定が可能となる。
なお、以上の説明では、本実施例を第5の実施例に適用する例で説明しているが、図26のステップS104の処理を省いてもよい。
【0118】
第1~第6の実施例で説明した予兆検知・診断装置1,1aは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピューターと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピューターの構成例を図29に示す。
【0119】
コンピューターは、CPU200と、記憶装置201と、インターフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F102には、表示器3と工作機械4等が接続されている。このようなコンピューターにおいて、本発明の予兆検知・診断方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って第1~第6の実施例で説明した処理を実行する。また、予兆検知・診断装置1,1aの少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、工作機械の異常を検出する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1,1a…予兆検知・診断装置、2…CT、3…表示器、4…工作機械、10…データ取得部、11…データ蓄積部、12…基準データ作成部、13…検査実行部、14…表示データ生成部、15…データ補正実行部、40…モーター、41…制御部、42…CNC、150…相互相関算出部、151…補正部。
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