(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099622
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20250626BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20250626BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20250626BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L93/04
C08K3/04
B60C1/00 Z
B60C1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216414
(22)【出願日】2023-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】土方 健介
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA03
3D131BA01
3D131BA05
3D131BB09
3D131BC12
3D131BC13
4J002AC081
4J002AC083
4J002AF022
4J002DA036
4J002DA040
4J002DE100
4J002EF050
4J002FD016
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】一般に、タイヤに求められる性能は多岐にわたっているが、その中で、ドライグリップ性能、ウォームアップ性能および操縦安定性を同時に満たすことが要求されている。
【解決手段】スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのみからなるジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g以下かつ水素添加されたロジンエステル樹脂を5~120質量部、および窒素吸着比表面積(N2SA)が100~500m2/gのカーボンブラックを50~200質量部配合したことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのみからなるジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g以下かつ水素添加されたロジンエステル樹脂を5~120質量部、および窒素吸着比表面積(N2SA)が100~500m2/gのカーボンブラックを50~200質量部配合したことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ロジンエステル樹脂の水酸基価が50mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、スチレン量が35質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにガラス転移温度(Tg)が-40℃以上の液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムを5~50質量部含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものであり、詳しくは、操縦安定性を維持または改善し、ドライグリップ性能およびウォームアップ性能を共に向上させ得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、競技用の空気入りタイヤでは、ドライ路面走行用タイヤとウェット路面走行用タイヤとが用意され、走行時の天候および路面の状態に応じそれぞれ最適のタイヤを選択するようにしている。ここでドライ路面走行用の競技用タイヤでは、ドライ路面でのグリップ性能(ドライグリップ性能)を向上させるために小粒径のカーボンブラックや樹脂を多量配合する手法が知られている。しかし、これらの配合手法ではドライグリップ性能が発動するまでに時間がかかってしまい、ウォームアップ性能が低下するという問題点がある。一方、低軟化点樹脂やオイルなどの軟化剤の配合も検討されているが、いずれの手法もドライグリップ性能と操縦安定性とを両立することができない。
【0003】
なおタイヤ用ゴム組成物にロジン系樹脂を配合する技術としては、下記特許文献1~3等に見られるが、下記で説明するスチレン-ブタジエン共重合体ゴムのみからなるジエン系ゴムに対し、酸価が30mgKOH/g以下かつ水素添加されたロジンエステル樹脂および特定の比表面積を有するカーボンブラックを特定量で配合し、操縦安定性を維持または改善し、ドライグリップ性能およびウォームアップ性能を共に向上させるという技術思想は何ら開示または示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-193444号公報
【特許文献2】特許第7151083号公報
【特許文献3】特開2021-95465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、操縦安定性を維持または改善し、ドライグリップ性能およびウォームアップ性能を共に向上させ得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのみからなるジエン系ゴムに対し、特定範囲の酸価を有しかつ水素添加されたロジンエステル樹脂および特定の比表面積を有するカーボンブラックを特定量で配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのみからなるジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g以下かつ水素添加されたロジンエステル樹脂を5~120質量部、および窒素吸着比表面積(N2SA)が100~500m2/gのカーボンブラックを50~200質量部配合したことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのみからなるジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g以下かつ水素添加されたロジンエステル樹脂を5~120質量部、および窒素吸着比表面積(N2SA)が100~500m2/gのカーボンブラックを50~200質量部配合したことを特徴としているので、操縦安定性を維持または改善し、ドライグリップ性能およびウォームアップ性能を共に向上させ得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することができる。
【0009】
本発明に使用されるロジンエステル樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下であるので、これよりも高い酸価を有する樹脂に比べてスチレン-ブタジエン共重合体ゴムとの相溶性が高まり、また、加硫促進剤を使用する場合に過剰な反応性を示さない。これらの特定のため、操縦安定性を維持または改善し、ドライグリップ性能およびウォームアップ性能を同時に高めることができる。また、ロジンエステル樹脂が水素添加されていることにより、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムとの相溶性が高まるという作用効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のみからなる。SBRは、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
SBRの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100,000~5,000,000であることが好ましく、200,000~3,000,000であることがより好ましく、300,000~2,000,000であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値である。
また、本発明で使用されるSBRは、スチレン量が35質量%未満であることが好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。スチレン量を上記のように設定することにより、SBRの極性が低くなり、ロジンエステル樹脂との相溶性をさらに高めることができる。
【0012】
(ロジンエステル樹脂)
本発明で使用されるロジンエステル樹脂は、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンのような原料ロジンエステルとアルコール類を反応させ、触媒の存在下に重合したものであることができる。前記エステル化反応および重合反応は公知の条件に基づけばよい。得られたロジンエステル樹脂は必要に応じて精製してもよく、この精製ロジンエステル樹脂の色調は、通常、ガードナー色数で10以下である。
本発明で使用されるロジンエステル樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下である。酸価が30mgKOH/g以下であることにより、SBRとの相溶性が高まり上記のような効果を発揮できる。本発明において酸価は、20mgKOH/g以下であるのがさらに好ましい。
また、本発明で使用されるロジンエステル樹脂は水素添加されている。水素添加によって、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムとの相溶性が高まるために破断強度が向上するという作用効果を発揮する。水素添加は、ロジンエステル樹脂のハーゼン単位色数(JIS K0071-1)が200以下となるまで行うことが好ましい。
また、本発明の効果向上の観点から、本発明で使用されるロジンエステル樹脂の水酸基価は好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下であるのがよい。水酸基価が50mgKOH/g以下であることにより、SBRとの相溶性が高まり、ドライグリップ性能をさらに高めることができる。
また、本発明の効果向上の観点から、本発明で使用されるロジンエステル樹脂の重量平均分子量は、200~1800であることが好ましく、300~1500であることがさらに好ましく、ガラス転移温度は20~100℃であることが好ましく、30~90であることがさらに好ましく、軟化点(JIS K6220-1)は60~150℃であることが好ましく、70~140であることがさらに好ましい。
本発明におけるロジンエステル樹脂は、市販されているものを使用することができ、例えば荒川化学工業株式会社製KE-359(水添ロジンエステル樹脂、酸価=13mgKOH/g、水酸基価=45mgKOH/g)、KE-100(水添ロジンエステル樹脂、酸価=6mgKOH/g、水酸基価=0mgKOH/g)、KE-311(水添ロジンエステル樹脂、酸価=7mgKOH/g、水酸基価=0mgKOH/g)等が挙げられる。
【0013】
(配合割合)
本発明のゴム組成物は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのみからなるジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g以下かつ水素添加されたロジンエステル樹脂を5~120質量部および窒素吸着比表面積(N2SA)が100~500m2/gのカーボンブラックを50~200質量部配合したことを特徴とする。
前記ロジンエステル樹脂の配合量が5質量部未満では、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に120質量部を超えると、硬度(100℃)が低下する。
前記ロジンエステル樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、5~120質量部が好ましく、15~110質量部がさらに好ましく、25~100質量部がとくに好ましい。
また前記カーボンブラックの配合量が50質量部未満では硬度(100℃)が低下し、逆に200質量部を超えると、硬度(20℃)が低下する。
前記カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、50~200質量部が好ましく、70~180質量部がさらに好ましい。
なお、カーボンブラックの前記窒素吸着比表面積(N2SA)範囲は、本発明の効果を奏するのに有効な範囲であり、さらに好ましい前記窒素吸着比表面積(N2SA)範囲は120~400m2/gである。また前記窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K6217-2に準拠して求めた値である。
【0014】
(液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴム)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度(Tg)が-40℃以上の液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムを配合するのが好ましい。このような液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムを配合することにより、ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)が上昇し、ドライグリップ性能を高めることができる。また該液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムは、SBRとなじみやすく、かつ本発明で使用されるロジンエステル樹脂の分散性を高め、本発明の効果を高めることができる。
液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムとしては、液状スチレン-ブタジエン共重合体(液状SBR)が好ましい。液状SBRは、重量平均分子量が2000~40000であり、好ましくは3000~20000のものを使用することができる。また液状SBRのガラス転移温度は前記のように-40℃以上であり、-20℃~-5℃がさらに好ましい。液状SBRは、市販されているものを利用することができ、例えばCray Valley社製 RICON 100、クラレ(株)製L-SBR 820等が挙げられる。なお、本発明で言うTgは、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。
なお、本発明で使用される液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムは、23℃で液体である。したがって、この温度では固体である前記ジエン系ゴムとは区別される。
また、液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し5~50質量部が好ましく、10~45質量部であるのがさらに好ましい。
【0015】
(その他成分)
本発明におけるタイヤ用ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛;クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、操縦安定性を維持または改善し、ドライグリップ性能およびウォームアップ性能を共に向上させ得ることから、タイヤのトレッド、とくにキャップトレッド、好ましくは競技用タイヤのトレッド、とくにキャップトレッドに好適に用いられ得る。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例0017】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0018】
標準例1、実施例1~6および比較例1~5
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0019】
ウォームアップ性能:JIS K6253に準拠して20℃にて硬度を測定し、この値をもってドライグリップ性能を評価した。結果は、標準例1の値を100として指数表示した。指数が小さいほどウォームアップ性能に優れることを示す。
操縦安定性:JIS K6253に準拠して100℃にて硬度を測定し、この値をもって操縦安定性を評価した。結果は、標準例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど100℃での硬度が高く操縦安定性に優れることを示す。
ドライグリップ性能:JIS K6394に基づき、株式会社東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪=10%、振幅=±2%、周波数=20Hzの条件下でtanδ(100℃)を測定し、この値をもってドライグリップ性能を評価した。結果は、標準例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、ドライグリップ性能が良好であることを示す。
結果を表1に併せて示す。
【0020】
【0021】
*1:SBR-1(日本ゼオン株式会社製 Nipol 1739、スチレン量=40質量%、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部)
*2:SBR-2(日本ゼオン株式会社製 Nipol 1723、スチレン量=23.5質量%、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部)
*3:BR(日本ゼオン株式会社製 Nipol BR1220)
*4:カーボンブラック-1(東海カーボン株式会社製シースト9 (N2SA 142m2/g))
*5:カーボンブラック-2(キャボットジャパン社製 ショウブラックN339(N2SA 94m2/g))
*6:樹脂-1(荒川化学工業株式会社製ガムロジンWW、未水添ロジン樹脂、酸価 170mgKOH/g 水酸基価 0mgKOH/g)
*7:樹脂-2(荒川化学工業株式会社製アルコンP-90、水添石油樹脂、酸価 0mgKOH/g 水酸基価 0mgKOH/g)
*8:樹脂-3(荒川化学工業株式会社製エステルガム105、未水添ロジンエステル樹脂 酸価 14mgKOH/g 水酸基価 0mgKOH/g)
*9:樹脂-4(荒川化学工業株式会社製KR-140、水添ロジン樹脂、酸価 147mgKOH/g 水酸基価 0mgKOH/g)
*10:樹脂-5(荒川化学工業株式会社製KE-359、水添ロジンエステル樹脂、酸価 13mg KOH/g 水酸基価 45mgKOH/g)
*11:樹脂-6(荒川化学工業株式会社製KE-100、水添ロジンエステル樹脂、酸価 6mg KOH/g 水酸基価 0mgKOH/g)
*12:樹脂-7(荒川化学工業株式会社製KE-311、水添ロジンエステル樹脂、酸価 7mg KOH/g 水酸基価 0mgKOH/g)
*13:液状SBR(Cray Valley社製 RICON 100、重量平均分子量=6400、Tg=-15℃)
*14:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*15:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*16:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社社製酸化亜鉛3種)
*17:老化防止剤(フレキシス社製 6PPD)
*18:加硫促進剤(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーCZ-G)
*19:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
【0022】
表1の結果から、実施例のタイヤ用ゴム組成物は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのみからなるジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g以下かつ水素添加されたロジンエステル樹脂を5~120質量部、および窒素吸着比表面積(N2SA)が100~500m2/gのカーボンブラックを50~200質量部配合したので、標準例1に比べて、操縦安定性が維持または改善され、ドライグリップ性能およびウォームアップ性能が同時に向上していることが分かる。
これに対し、比較例1は水素添加した石油樹脂を使用した例であるので、操縦安定性およびドライグリップ性能が低下した。
比較例2は、水素添加していないロジンエステル樹脂を使用した例であるので、ウォームアップ性能が低下した。
比較例3は、酸価の値が本発明で規定する上限を超えたロジンエステル樹脂を使用した例であるので、ウォームアップ性能が低下した。
比較例4は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が本発明の範囲外であるので、操縦安定性およびドライグリップ性能が低下した。
比較例5は、ブタジエンゴム(BR)を配合した例であるので、操縦安定性およびドライグリップ性能が低下した。
【0023】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]:スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのみからなるジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g以下かつ水素添加されたロジンエステル樹脂を5~120質量部、および窒素吸着比表面積(N2SA)が100~500m2/gのカーボンブラックを50~200質量部配合したことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
発明[2]:前記ロジンエステル樹脂の水酸基価が50mgKOH/g以下であることを特徴とする発明1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[3]:前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、スチレン量が35質量%未満であることを特徴とする発明1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[4]:前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにガラス転移温度(Tg)が-40℃以上の液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムを含むことを特徴とする発明1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[5]:発明1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに用いたタイヤ。