(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099641
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】レーザー切断部に隆起部がない光学フィルム積層体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B32B 37/00 20060101AFI20250626BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20250626BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20250626BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20250626BHJP
【FI】
B32B37/00
B23K26/38 Z
G02B5/30
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216446
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】竹田 覚
【テーマコード(参考)】
2H149
4E168
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AB21
2H149EA02
2H149EA12
2H149FB05
2H149FB06
4E168AD07
4E168CB02
4E168DA02
4E168DA23
4E168HA01
4E168JA23
4E168JA27
4E168JB05
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100DD07A
4F100EJ192
4F100EJ303
4F100EJ52
4F100EJ622
4F100GB48
4F100JD08A
4F100JL14C
4F100JN10A
4F100JN18A
(57)【要約】
【課題】 レーザー光によって切断された場合でも、切断部分の端部において隆起部が実質的に発生しない光学フィルム積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】 本方法においては、1つ又は複数のフィルムを含む光学機能層の一方面に第1の樹脂フィルムが積層され、他方面に第2の樹脂フィルムが積層された、原料積層体を搬送する。原料積層体の第1の樹脂フィルムに第1の基材を積層し、第2の樹脂フィルムに第2の基材を積層して、両面基材付き原料積層体を得る。原料積層体、第1の基材、第2の基材、若しくは両面基材付き原料積層体、又はこれらの複数に静電気を帯電させることによって、第1の基材及び第2の基材と原料積層体とを密着させた後、原料積層体に、レーザー光を用いて任意形状の切断面を形成する。両面基材付き原料積層体から静電気を除去し、任意形状の切断面を有する1つ又は複数の光学フィルム積層体から第1の基材及び第2の基材を剥離する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のフィルムを含む光学機能層の一方面に第1の樹脂フィルムが積層され、他方面に第2の樹脂フィルムが積層された、原料積層体を搬送する工程と、
前記原料積層体の前記第1の樹脂フィルムに第1の基材を積層し、前記第2の樹脂フィルムに第2の基材を積層して、両面基材付き原料積層体を得る工程と、
前記原料積層体、前記第1の基材、前記第2の基材、若しくは前記両面基材付き原料積層体、又はこれらの複数に静電気を帯電させることによって、前記第1の基材及び前記第2の基材と前記原料積層体とを密着させる工程と、
前記原料積層体に、レーザー光を用いて任意形状の切断面を形成する工程と、
前記両面基材付き原料積層体から静電気を除去する工程と、
任意形状の前記切断面を有する1つ又は複数の光学フィルム積層体から前記第1の基材及び前記第2の基材を剥離する工程と
を含む、光学フィルム積層体の製造方法。
【請求項2】
前記密着させる工程は、前記原料積層体の両面、前記第1の基材及び前記第2の基材の両方、若しくは前記両面基材付き原料積層体の両面、又はこれらの複数に静電気を帯電させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1の樹脂フィルム及び前記第2の樹脂フィルムの一方は、表面保護フィルムであり、前記第1の樹脂フィルム及び前記第2の樹脂フィルムの他方は、剥離ライナである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記原料積層体は、ウェブ状の積層体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1の基材及び前記第2の基材は、ウェブ状の基材である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1の基材及び前記第2の基材は、非粘着性の基材である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1の基材及び前記第2の基材は、同一の材料によって構成される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
帯電させる静電気量は、前記レーザー光による前記切断面の形成時に前記第1の基材及び前記第2の基材と前記原料積層体とが剥離しない静電気量である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記静電気量は、-10kV以上-0.5kV以下、又は、0.5kV以上10kV以下である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記静電気量は、-4.0kV以上-0.5kV以下である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記両面基材付き原料積層体を得る工程において、前記第1の基材若しくは前記第2の基材又はその両方は、任意形状の前記切断面を有する1つ又は複数の前記光学フィルム積層体を前記第1の基材及び前記第2の基材から剥離する工程において剥離された基材を再利用したものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
1つ又は複数のフィルムを含む光学機能層の一方面に第1の樹脂フィルムが積層され、他方面に第2の樹脂フィルムが積層された原料積層体を搬送する、搬送装置と、
前記原料積層体の前記第1の樹脂フィルムに第1の基材を積層し、前記第2の樹脂フィルムに第2の基材を積層して、両面基材付き原料積層体を作製する、積層装置と、
前記第1の基材及び前記第2の基材と前記原料積層体とを密着させるために、前記原料積層体、前記第1の基材、前記第2の基材、若しくは前記両面基材付き原料積層体、又はこれらの複数に静電気を帯電させる、帯電装置と、
前記両面基材付き原料積層体の前記原料積層体を切断して、任意形状の1つ又は複数の光学フィルム積層体を形成する、レーザー切断装置と、
前記両面基材付き原料積層体から静電気を除去する、除電装置と、
任意形状の1つ又は複数の前記光学フィルム積層体から、前記第1の基材及び前記第2の基材を剥離する剥離装置と
を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム積層体の製造技術に関し、より具体的には、切断前の光学フィルム積層体を、その両面に基材フィルムを静電気で密着させた状態でレーザー光で切断することによって、切断部分の端部に隆起部が実質的に生じない光学フィルム積層体を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置などの光学表示装置には、偏光フィルムや位相差フィルムといった各種の光学フィルム積層体が用いられる。従来の光学フィルム積層体の製造においては、最終製品の用途や形状に応じて、複数の異なる工程が採用されている。
【0003】
例えば、スマートフォン用途に用いられる光学フィルム積層体の製造工程においては、複数のフィルムが積層された所定の幅を有する長尺ウェブ状の積層体を繰り出し、円形刃物を用いて積層体を所定の長さに切断することによって、矩形状の複数の光学フィルム積層体を得ることができる。あるいは、近年需要が増大しつつある車載用途やスマートウォッチ用途に用いられる光学フィルム積層体の製造工程においては、所定の幅を有する長尺ウェブ状の積層体を繰り出し、トムソン型を用いて打ち抜くことによって、任意形状の複数の光学フィルム積層体を得ることができる。いずれの工程においても、長尺ウェブ状の積層体に代えて、シート状の積層体が用いられる場合や、1枚から複数の光学フィルム積層体を得ることができるシート状のマザー積層体が用いられる場合もある。このようにして得られた複数の光学フィルム積層体は、必要に応じて重ねて端面の処理を行い、梱包して出荷される。
【0004】
しかし、このように最終製品の用途や形状に応じて種々の工程が採用されると、用途や形状ごとに異なる製造装置を導入し、それぞれの製造装置への個別の対応が必要となるため、製造コストの増大を招くことになる。したがって、最終製品の用途や形状の如何に関わらず、統一された製造工程を実現することが望ましい。統一された製造工程を実現するためには、円形刃物やトムソン型に代えて、レーザー光を用いて積層体を切断する方法を採用することが好ましい。
【0005】
長尺ウェブ状やシート状の積層体をレーザー光によって切断する場合、切断された積層体の端部に盛り上がり(隆起部)が発生したり、ヒューム(溶融時に発生した蒸気が凝集した微細な粉塵)が端部に付着したりすることがある。端部に隆起部が発生すると、複数の光学フィルム積層体をそれらの縁部を揃えて重ねたときに、それぞれの光学フィルム積層体の隆起部が互いにずれたり、画像認識に不具合が生じる可能性がある。その結果、出荷時の梱包の不具合や、後の工程で液晶セルや有機ELセルに貼り合わせるためのアライメント時や、重ねた複数の光学フィルム積層体から1枚ずつ光学フィルム積層体を取り出すときの不具合などにつながるおそれがある。
【0006】
また、例えば表面保護フィルムを有する光学フィルム積層体から、後の工程で表面保護フィルムを剥離する際には、通常、表面保護フィルムは、その表面に貼り合わせた剥離テープを引き上げることによって剥離することができる。しかし、光学フィルム積層体の端部(この場合には、表面保護フィルムの端部)に隆起部があると、隆起部がないときと比較して剥離テープの端部と表面保護フィルムの表面との接触面積が小さくなり、剥離テープを引き上げても表面保護フィルムを剥離させることができない場合がある。
【0007】
特許文献1は、多層光学フィルムをレーザー光によって切断する際に発生するヒュームの除去方法が提案されている。しかし、特許文献1には、多層光学フィルムをレーザー光によって切断する場合、切断された積層体の端部における隆起部の発生及びその解決手段については、開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の課題に鑑み、本発明は、レーザー光によって切断された場合でも、切断部分の端部において隆起部が実質的に発生しない光学フィルム積層体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、レーザー光によって切断される前の積層体(原料積層体)の両面に基材フィルムを積層し、静電気を利用し両者を帯電させて密着させた上でレーザー光によって切断することによって、基材フィルムを積層した両面の端部に隆起部が実質的に発生しないことを見出した。
【0011】
本発明は、一つの態様において、1つ又は複数のフィルムを含む光学機能層の一方面に第1の樹脂フィルムが積層され、他方面に第2の樹脂フィルムが積層された、任意形状の光学フィルム積層体を製造する方法を提供する。本方法においては、まず、1つ又は複数のフィルムを含む光学機能層の一方面に第1の樹脂フィルムが積層され、他方面に第2の樹脂フィルムが積層された、原料積層体を搬送する。次に、原料積層体の第1の樹脂フィルムに第1の基材を積層し、第2の樹脂フィルムに第2の基材を積層して、両面基材付き原料積層体を得る。次に、原料積層体、第1の基材、第2の基材、若しくは両面基材付き原料積層体、又はこれらの複数に静電気を帯電させることによって、第1の基材及び第2の基材と原料積層体とを密着させた後、原料積層体に、レーザー光を用いて任意形状の切断面を形成する。両面基材付き原料積層体から静電気を除去し、任意形状の切断面を有する1つ又は複数の光学フィルム積層体から第1の基材及び第2の基材を剥離する工程する。
【0012】
本発明は、別の態様において、1つ又は複数のフィルムを含む光学機能層の一方面に第1の樹脂フィルムが積層され、他方面に第2の樹脂フィルムが積層された、任意形状の光学フィルム積層体を製造する装置を提供する。本装置は、1つ又は複数のフィルムを含む光学機能層の一方面に第1の樹脂フィルムが積層され、他方面に第2の樹脂フィルムが積層された原料積層体を搬送する、搬送装置と、原料積層体の第1の樹脂フィルムに第1の基材を積層し、第2の樹脂フィルムに第2の基材を積層して、両面基材付き原料積層体を作製する、積層装置と、第1の基材及び第2の基材と原料積層体とを密着させるために、原料積層体、第1の基材、第2の基材、若しくは両面基材付き原料積層体、又はこれらの複数に静電気を帯電させる、帯電装置と、両面基材付き原料積層体の原料積層体を切断して、任意形状の1つ又は複数の光学フィルム積層体を形成する、レーザー切断装置と、両面基材付き原料積層体から静電気を除去する、除電装置と、任意形状の1つ又は複数の光学フィルム積層体から、第1の基材及び第2の基材を剥離する剥離装置とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によって製造される光学フィルム積層体の模式的な断面図を示し、(a)は、レーザー光を用いて切断しても切断部分の端部に隆起部がない光学フィルム積層体であり、(b)は、原料積層体がレーザー光によって切断された状態を示す模式的な断面図である。
【
図2】切断部分の端部に実質的に隆起部がない光学フィルム積層体を製造する工程の概念図である。
【
図3】第1の実施形態による、切断部分に実質的に隆起部がない光学フィルム積層体を製造する装置の概念図であり、シート状の原料積層体の両面にウェブ状の基材フィルムを積層させ、静電気を帯電させて切断を行う装置を示す。
【
図4】第2の実施形態による、切断部分に実質的に隆起部がない光学フィルム積層体を製造する装置の概念図であり、ウェブ状の原料積層体の両面にウェブ状の基材フィルムを積層させ、静電気を帯電させて切断を行う装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
(隆起部のない光学フィルム積層体の構成)
図1は、本発明の一実施形態による、レーザー光で切断された端部に実質的に隆起部がない光学フィルム積層体の模式的な断面図を示す。
図1(a)は、面11にも面13にも実質的に隆起部がない光学フィルム積層体F1の模式的な断面図である。また、
図1(b)は、原料積層体RMがレーザー光によって切断された状態を示す模式的な断面図である。
【0016】
ここで、本明細書における「実質的に隆起部がない」光学フィルム積層体とは、レーザー光で切断された端部に全く隆起部がない(すなわち、隆起部の高さが0μmの)光学フィルム積層体だけではなく、隆起部があったとしても、隆起部に起因する上述の問題、すなわち、重ね合わせ時のずれ、画像認識の際の不具合、剥離テープ引き上げ時の表面保護フィルムの剥離の不具合などの問題が生じない程度のわずかな隆起部(典型的には隆起部の高さが10μm以下であるが、これに限定されない)を有する光学フィルム積層体も含む。
【0017】
光学フィルム積層体F1は、本発明に係る後述の製造方法によって製造することができ、例えばウェブ状の原料積層体RMの両面に基材フィルムBF1及びBF2を積層し、静電気を帯電させることによって原料積層体RMと基材フィルムBF1及びBF2とを密着させ、レーザー光を用いて切断することによって得られる。
図1(a)は、切断部分を側面からみた状態(
図1(b)の左斜め下方から見た状態)を示す。
図1(b)の各参照番号の部分は、
図1(a)の参照番号に対応する部分である。
【0018】
光学フィルム積層体F1は、偏光フィルムPOLの一方面に表面保護フィルムPFが積層され、他方面に剥離ライナRLが積層された積層体である。なお、本明細書においては、この構成の光学フィルム積層体を例として説明するが、本発明を利用することができる光学フィルム積層体は、これに限定されるものではい。光学フィルム積層体は、例えば、偏光フィルムに代えて、複数のフィルムから構成される光学機能層を有するものとすることもできる。また、光学フィルム積層体は、光学機能層の一方面に剥離ライナRLが積層され、多方面に表面保護フィルムPFが積層された積層体であってもよい。光学機能層は、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光フィルムと位相差フィルムとの組み合わせ、OCA(Optical Clear Adhesive)、偏光フィルムとOCAとの組み合わせ、PETフィルムなどとすることができる。あるいは、光学フィルム積層体は、例えば、OCAの一方面に軽剥離ライナが積層され、他方面に重剥離ライナが積層された積層体や、PETフィルムの一方面に軽剥離ライナが積層され、他方面に重剥離ライナが積層された積層体とすることもできる。
【0019】
光学フィルム積層体F1は、レーザー光を用いて、例えばウェブ状の原料積層体RMから任意形状を有する積層体として切り出すことができる。任意形状は、四角形、円形、楕円形などの形状だけでなく、異形も含む。異形の積層体は、例えば、四角形の形状のいずれかの片に切り欠きや凹み(いわゆるノッチ)を有する形状、自動車のインストルメントパネル用途で用いられるかまぼこ形状、四角形のフィルムの一部に円形や四角形などの孔が設けられた形状などといった、特殊な形状の積層体を含むことができる。例えば、四角形の形状のいずれかの片に切り欠きや凹み(いわゆるノッチ)を有する形状の積層体の場合には、レーザー光による切断面は、各辺だけでなく、切り欠きや凹みの内部にも形成されることになる。
【0020】
光学フィルム積層体F1は、表面保護フィルムPF側の面11の端部11aにも、剥離ライナRLの面13の端部13aにも、実質的に隆起部を有しない。端部11aは、光学フィルム積層体F1の面11の切断部分の縁11b(
図1(c))とその内方近傍とを含む。端部13aも同様である。
【0021】
本発明に係る光学フィルム積層体の製造方法においては、後述するように、原料積層体RMをレーザー光で切断する前に、表面保護フィルムPF側の面11に基材フィルムBF1を積層し、剥離ライナRL側の面13に基材フィルムBF2を積層して、両面基材付き原料積層体RMBを形成し、その両面基材付き原料積層体RMBに静電気を帯電させる。静電気によって原料積層体RMの表面保護フィルムPFの面11と基材フィルムBF1とが密着し、剥離ライナRLの面13と基材フィルムBFとが密着するため、この状態で両面基材付き原料積層体RMBを切断すると、原料積層体RMの面11及び面13のいずれにも実質的に隆起部が生じることがない。また、面11及び面13には、ヒュームも生じない。ここで、密着とは、2つのフィルムの間に空気層又は空気溜まりが存在しておらず、搬送されることによってもそうした空気層又は空気溜まりが形成されない状態をいう。表面保護フィルムPFの面11と基材フィルムBF1とが完全に密着し、剥離ライナRLの面13と基材フィルムBF2とが完全に密着していれば、物理的に隆起部が発生する空間が存在せず、また、レーザー光による切断時の熱が基材フィルムBFに伝導して表層温度が上昇しにくいため、面11及び面13には実質的に隆起部が生じない。
【0022】
光学フィルム積層体F1は、レーザー光によって切断された切断面である端面15を有する。端面15は、光学フィルム積層体F1の面11の縁11bと面13の縁13bとの間に位置する。端面15は、レーザー光による切断面の形成の特性上、典型的には傾斜面であるが、これに限定されるものではなく、面11及び面13に垂直な面であってもよい。端面15は、
図1(a)においては平面として表されているが、これに限定されるものではなく、用途に応じて任意形状の光学フィルム積層体F1とする場合には、端面15は曲面又は平面と曲面との組み合わせであってもよい。
【0023】
(本発明に係る光学フィルム積層体を製造する工程)
図2は、実施的に隆起部がない光学フィルム積層体F1を製造する工程の概念図である。
図2(a)において、原料積層体RMの一方の面に基材フィルムBF1を積層し、他方の面に基材フィルムBF2を積層して、両面基材付き原料積層体RMBを得る。原料積層体RMは、偏光フィルムPOLの一面に表面保護フィルムPFが積層され、他面に剥離ライナRLが積層された積層体であり、ウェブ状又はシート状のどちらであってもよい。
【0024】
基材フィルムBF1及びBF2(まとめて基材フィルムBFということがある)として、粘着層のない非粘着性の材料を用いても、粘着性の材料を用いてもよい。基材フィルムBF1及びBF2の両方を非粘着材の材料又は粘着性の材料としてもよく、いずれか一方を非粘着性の材料、他方を粘着性の材料としてもよい。本発明に係る製造方法では、原料積層体RMと基材フィルムBFとを静電気で密着させるため、基材フィルムBFとして非粘着性の材料を用いることができ、したがって、例えば、本発明に係る光学フィルム積層体を製造する工程で用いた基材フィルムBF2を再利用すること又は他の工程や製品で用いられた廃材を用いることが可能であり、基材フィルムの使用量の減少、製造コストの低減などが期待できる。本発明において使用できる非粘着性の基材フィルムBFは、張力がかかっても伸び難いフィルムであればよく、基材フィルムBFとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルムなどを用いることができる。
【0025】
一方、基材フィルムBFとして粘着性の材料を用いる場合には、原料積層体RMと基材フィルムBFとをより強固に密着させることができるため、基材フィルムBFが積層された面における隆起部の発生をより効果的に防止することが可能である。ただし、粘着性の材料を用いる場合には、一度使用した基材フィルムBFを再利用することは難しく、材料使用量が増加し、それにより製造コストが増大する可能性がある。また、用いられる材料の粘着力が、原料積層体RMの各フィルム間の粘着力より大きい場合には、基材フィルムBFを剥離しようとしても剥離できなかったり、原料積層体RMのフィルム間が剥離したりするおそれがあるため、使用可能な基材フィルムBFに制限がある。したがって、粘着性の基材フィルムBFは、弱粘着性の材料であることが好ましく、例えば、日東電工株式会社製の表面保護材AW303EBなどを用いることができる。
【0026】
次に、
図2(b)に示されるように、原料積層体RMと基材フィルムBF1及びBF2とが積層された両面基材付き原料積層体RMBに静電気を帯電させる(40)。静電気を帯電させることによって、原料積層体RMと基材フィルムBFとを密着させることができる(
図2(c))。
図2(b)及び
図2(c)に示されるように、例えば、原料積層体Rに基材フィルムBF1側に突出している箇所V1が存在していても、静電気を帯電させて原料積層体RMと基材フィルムBF1と密着させることによって、突出している箇所V1をなくすことができる。また、原料積層体RMが基材フィルムBF2の面から離れている箇所V2が存在していても、静電気を帯電させて原料積層体RMと基材フィルムBF2と密着させることによって、離れている箇所V2をなくすことができる。静電気の帯電は、両面基材付き原料積層体RMBに対して行われることに限定されるものではなく、基材フィルムBF1及びBF2と積層される前の原料積層体RMに対して行われてもよく、又は、原料積層体RMに積層される前の基材フィルムBF1若しくはBF2又はその両方に対して行われてもよい。図示されてはいないが、両面基材付き原料積層体RMBに静電気を帯電させるときには、両面基材付き原料積層体RMBの帯電させる部分を例えば金属ローラなどの導体に接触させた状態とし、その接触している部分に対向させるように、金属ローラとは反対側に帯電装置を配置して帯電させることが好ましい。
【0027】
静電気は、原料積層体RM並びに基材フィルムBF1及びBF2の全面に均一に帯電させることが好ましい。帯電させる静電気量は、搬送時及びレーザー光41による切断面の形成時に基材フィルムBF1及びBF2と原料積層体RMとが剥離しない(密着が失われない)静電気量である。静電気量は、-10kV以上-0.5kV以下、又は、0.5kV以上10kV以下であることが好ましく、-4.0kV以上-0.5kV以下、又は、0.5kV以上4.0kV以下であることがより好ましく、-4.0kV以上-0.5kV以下であることが最も好ましい。静電気量が-10kVより小さい場合又は+10kVより大きい場合は、隆起部の発生を抑制する効果は高まるものの、異物の吸い寄せ、除電しきれず剥離不良、大気放電による周辺装置への悪影響などという問題があり、-0.5kVより大きく+0.5kVより小さい場合は、密着力が弱く、レーザー光を照射した時の衝撃で空隙が発生するという問題がある。
【0028】
図2(c)に示されるように、静電気を帯電させた後、レーザー光41を用いて両面基材付き原料積層体RMBを切断し、光学フィルム積層体F1が形成される。レーザー光41による切断は、ここでは両面基材付き原料積層体RMBの基材フィルムBF1の側からレーザー光41を照射することによって行われているが、これに限定されるものではなく、基材フィルムBF2の側から行うこともできる。レーザー光41の強度は、表面保護フィルムPF、偏光フィルムPOL及び剥離ライナRLは切断されるが、レーザー光41の光源とは反対側の基材フィルムBF1又はBF2は切断されない深さまで到達するように、設定されることが好ましい。
【0029】
上述のとおり、レーザー光41による切断は、必要とされる光学フィルム積層体F1の形状が四角形の場合には直線的に行われるが、光学フィルム積層体F1の形状が任意形状の場合には曲線的に行われることもある。
【0030】
次に、
図2(d)に示されるように、レーザー光41による切断の後、両面基材付き原料積層体RMBから静電気を除電する(42)。静電気を除電することによって、原料積層体RMと基材フィルムBF1及びBF2との密着状態が解除される。レーザー光41による基材フィルムBF1の切断部分の両側には、切断時に発生する熱によって基材フィルムBF1が溶融し、表面に盛り上がって固まることによって、隆起部12が形成されることがある。帯電前に突出している箇所V1や離れている箇所V2が存在していた場合に、その箇所が、再び離れたり突出したりすることもある。除電のときには、帯電のときとは逆に、両面基材付き原料積層体RMBは、どこにも接触していない状態で除電させることが好ましい。
【0031】
次に、
図2(e)に示されるように、基材フィルムBF1を光学フィルム積層体F1の表面から剥離する。基材フィルムBF1によって覆われていた光学フィルム積層体F1の切断部分の端部11aには、隆起部がない。最後に、
図2(f)に示されるように、光学フィルム積層体F1に相当する部分を基材フィルムBF2から剥離し、端部に実質的に隆起部がない光学フィルム積層体F1を得ることができる。基材フィルムBF1及びBF2として非粘着性の材料が用いられる場合には、除電を行うことによって、剥離ライナRLと基材フィルムBF1及びBF2とを容易に剥離することができる。一方、基材フィルムBF1若しくはBF2のいずれか一方、又はその両方に粘着性の材料が用いられる場合には、その粘着力によっては、除電を行った場合でも、例えば光学フィルム積層体F1を基材フィルムBF1又はBF2から剥離しようとしたときに剥離ライナRLと基材フィルムBF1又はBF2とがうまく剥離されず、剥離ライナRLと偏光フィルムPOLとの間で剥離され、剥離ライナRLが基材フィルムBF1又はBF2に残るおそれがある。したがって、粘着性の基材フィルムBF1及び/又はBF2を用いる場合には、その粘着力は、剥離ライナRL及び/又は表面保護フィルムの粘着力より小さいことが好ましい。
【0032】
(隆起部がない光学フィルム積層体を製造する装置)
[第1の実施形態]
図3は、第1の実施形態による、実質的に隆起部がない光学フィルム積層体を製造する装置60の概念図である。装置60は、シート状の原料積層体RMにウェブ状の基材フィルムBF1及びBF2を積層してウェブ状の両面基材付き原料積層体RMBを形成し、その両面基材付き原料積層体RMBを帯電させてレーザー光による切断を行う、シート-ウェブ方式の装置を示す。
【0033】
装置60は、例えばストッカからシート状の原料積層体RMを取り出し、基材フィルムBF1及びBF2との積層装置62まで搬送する搬送装置61を備える。搬送装置61として、当業者に周知の吸着ピックアップ装置及び搬送ローラなどを適宜用いることができる。装置60は、複数のシート状の原料積層体RMがウェブ状の基材フィルムBF1及びBF2の間に、その長さ方向に連続的に積層されて、ウェブ状の両面基材付き原料積層体RMBを形成する。このため、装置60においては、基材フィルムのロールBFR1及びBFR2からそれぞれ繰り出されたウェブ状の基材フィルムBF1及びBF2が、原料積層体RMと基材フィルムBF1及びBF2とを積層する積層装置62まで搬送されるように構成されている。
【0034】
積層装置62においては、シート状の原料積層体RMとウェブ状の基材フィルムBF1及びBF2とを一対の積層ローラ62aの間に通すことによって、ウェブ状の基材フィルムBF1とBF2との間にシート状の原料積層体RMが挟まれたウェブ状の両面基材付き原料積層体RMBを形成することができる。積層ローラ62aとして、当業者に周知の、粘着剤を介して2つの樹脂フィルムを貼り合わせるための貼合ローラを適宜用いることができる。
【0035】
装置60は、積層装置62の下流側に帯電装置63を備える。帯電装置63は、両面基材付き原料積層体RMBに静電気を帯電させ、それにより、原料積層体RMと基材フィルムBF1及びBF2とを静電気によって密着させることができる。帯電装置63として、当業者に周知の帯電装置を適宜用いることができ、例えば、春日電機株式会製のJPK-3などを用いることができる。
図3においては、帯電装置63は、積層装置62の下流側において上方に配置されている。したがって、装置60では、両面基材付き原料積層体RMBの基材フィルムBF1側から静電気を帯電させることによって、原料積層体RMと基材フィルムBF1及びBF2とが静電気によって密着するようになっている。ただし、帯電装置63の位置は、これに限定されるものではなく、帯電装置63は、積層装置62の上流側において基材フィルムBF1又はBF2の近くに配置してもよい。この場合には、原料積層体RMに積層される前に基材フィルムBF1又はBF2に静電気を帯電させ、積層装置62で両者が積層されたときに、原料積層体RMと基材フィルムBF1及びBF2とが密着することになる。あるいは、帯電装置63は、積層装置62の上流側において、原料積層体RMの近くに配置してもよい。この場合には、積層される前に原料積層体RMに静電気を帯電させ、積層装置62で基材フィルムBF1又はBF2が積層されたときにこれらと原料積層体RMとが密着することになる。あるいは、帯電装置63は、複数の場所に配置してもよい。例えば、帯電装置は、積層装置62の上流側と下流側のそれぞれに配置してもよく、積層装置62の下流側において基材フィルムBF1側とBF2側との両方に配置してもよい。
【0036】
帯電した状態のウェブ状の両面基材付き原料積層体RMBは、当業者に周知の搬送装置64によって台座65の上を通るように搬送される。台座65は、当業者に周知のものを適宜用いることができるが、その上に配置された両面基材付き原料積層体RMBがレーザー切断の際に動かないように、吸着台座であることが好ましい。
【0037】
両面基材付き原料積層体RMBは、台座65の上で一端停止し、レーザー切断装置66のレーザー光によって切断される。レーザー切断装置66は、例えば、レーザー光を生成して、台座65の上に配置された両面基材付き原料積層体RMBに照射することができるレーザー光発生部と、両面基材付き原料積層体RMBを任意形状に切断するようにレーザー光発生部を移動させる移動部とを有するものとすることができる。レーザー切断装置66は、樹脂フィルムを切断するために用いられる、当業者に周知の装置を適宜用いることができる。
【0038】
レーザー光の強度は、両面基材付き原料積層体RMBに含まれる基材フィルムBF1、表面保護フィルムPF、偏光フィルムPOL及び剥離ライナRLは切断されるが基材フィルムBF2は切断されない深さまで到達するように、設定されることが好ましい。レーザー切断装置66によって、両面基材付き原料積層体RMBに含まれる原料積層体RMを切断して、任意形状の複数の光学フィルム積層体F1を基材フィルムBF1とBF2との間に形成することができる。この時点で、光学フィルム積層体F1の表面保護フィルムPFには、光学フィルム積層体F1と同じ形状に切断された基材フィルムBF1が密着している。
【0039】
切断後の両面基材付き原料積層体RMBは、除電装置67によって除電される。除電装置67は、帯電した両面基材付き原料積層体RMBから静電気を除去するための装置である。除電装置67は、当業者に周知の除電装置を適宜用いることができ、例えば、除電装置67として、春日電機株式会製のJPK-3などを用いることができる。
【0040】
除電装置67によって静電気が除去された、光学フィルム積層体F1を含む両面基材付き原料積層体RMBにおいては、原料積層体RM及び光学フィルム積層体F1と基材フィルムBF1及びBF2との間の密着状態が解除されており、光学フィルム積層体F1と基材フィルムBF1及びBF2とを容易に剥離できる状態になっている。装置60は、光学フィルム積層体F1と基材フィルムBF1及びBF2とを剥離するために、除電装置67の下流に剥離装置68を備える。
【0041】
剥離装置68は、表面保護フィルムPF側に積層されている基材フィルムBF1を取り除くために、当業者に周知のピックアップ装置68aを有する。基材フィルムBF1とその下の表面保護フィルムPFとは、除電により密着が解除されているため、基材フィルムBF1は、容易にピックアップすることができる。剥離装置68は、ピックアップ装置68aの下流に剥離ローラ(又は剥離バー)68bを有しており、残りの基材フィルムBF1(光学フィルム積層体F1と同形状の穴が形成されている)は、剥離ローラ68bを経由して両面基材付き原料積層体RMBの搬送方向から離れる方向(
図3では上方)に引かれる。したがって、残りの基材フィルムBF1は、光学フィルム積層体F1から剥離され、巻き取られる。
【0042】
剥離ローラ(又は剥離バー)68bのさらに下流には、別の剥離ローラ(又は剥離バー)68cが設けられており、剥離ライナRL側の基材フィルムBF2は、剥離ローラ68cを経由して両面基材付き原料積層体RMBの搬送方向から離れる方向(
図3では下方)に引かれる。したがって、基材フィルムBF2は、光学フィルム積層体F1から剥離され、巻き取られる。
【0043】
光学フィルム積層体F1が切断された原料積層体の残部RMRは、除電されることによって基材フィルムBF2とは密着状態が解除されているため、基材フィルムBF2が巻き取られたときに基材フィルムBF2と離れ、例えばそのまま落下させて回収される。一方、光学フィルム積層体F1は、剥離ローラ68b、68cによって搬送方向が変わることなく剥離装置68から送出され、当業者に周知の搬送装置69などによって取り出される。このようにして、1つ又は複数の任意形状を有する光学フィルム積層体F1を得ることができる。
【0044】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態による、実質的に隆起部がない光学フィルム積層体を製造する装置70の概念図である。装置70は、ウェブ状の原料積層体RMにウェブ状の基材フィルムBF1及びBF2を積層してウェブ状の両面基材付き原料積層体RMBを形成し、その両面基材付き原料積層体RMBを帯電させてレーザー光による切断を行う、ウェブ-ウェブ方式の装置を示す。以下においては、主に、実施形態1の装置60と異なる構成を説明する。
【0045】
実施形態1の装置60では、複数のシート状の原料積層体RMがウェブ状の基材フィルムBF1及びBF2の間に連続的に積層されて、ウェブ状の両面基材付き原料積層体RMBを形成する。これに対して、装置70では、ウェブ状の原料積層体RMの両面にウェブ状の基材フィルムBF1及びBF2を積層して、ウェブ状の両面基材付き原料積層体RMBを形成する。このため、装置70においては、原料積層体のロールRMRから繰り出されたウェブ状の原料積層体RMが、原料積層体RMと基材フィルムBF1及びBF2とを積層する積層装置72まで搬送されるように構成されている。
【0046】
積層装置72においては、ウェブ状の原料積層体RMとウェブ状の基材フィルムBF1及びBF2とを一対の積層ロール72aの間に通すことによって、ウェブ状の基材フィルムBF1及びBF2の間にウェブ状の原料積層体RMが挟まれたウェブ状の両面基材付き原料積層体RMBを形成することができる。
【0047】
装置70は、積層装置72の下流側に帯電装置73を備える。帯電装置73は、両面基材付き原料積層体RMBに静電気を帯電させ、それにより、原料積層体RMと基材フィルムBF1及びBF2とを静電気によって密着させることができる。帯電装置73の位置は、これに限定されるものではないことは、装置60の場合と同様であり、必要な任意の場所に、1つ又は複数の帯電装置73を適宜配置することができる。
【0048】
帯電した状態のウェブ状の両面基材付き原料積層体RMBは、搬送装置74によって搬送され、台座75の上でレーザー光で切断される。切断された両面基材付き原料積層体RMBは、その後、除電装置77によって除電される。搬送装置74、台座75、レーザー切断装置76、及び除電装置77、並びにそれらの機能については、装置60と同様とすることができる。
【0049】
除電装置77によって静電気が除去された、光学フィルム積層体F1を含む両面基材付き原料積層体RMBにおいては、原料積層体RM及び光学フィルム積層体F1と基材フィルムBF1及びBF2との間の密着状態が解除されており、光学フィルム積層体F1と基材フィルムBF1及びBF2とを容易に剥離できる状態になっている。装置70においても、光学フィルム積層体F1と基材フィルムBF1及びBF2とを剥離するために、除電装置77の下流に剥離装置78を備える。
【0050】
剥離装置78は、剥離装置68と同様に、光学フィルム積層体F1と同じ形状に切断された基材フィルムBF1を取り除くためにピックアップ装置を有する構成とすることもできるが、ここでは、別の構成を説明する。なお、以下に説明する構成は、剥離装置68でも採用することができる。
【0051】
剥離装置78においては、テープTPを用いて、切断された基材フィルムBF1と基材フィルムBF1の残部とを繋げ、これらをテープTPとともに光学フィルム積層体F1から剥離する。テープTPは、テープのロールTPRから、その粘着面が基材フィルムBF1側に向いた状態で繰り出される。繰り出されたテープTPは、貼合部78aにおいて、除電装置77で静電気が除去された両面基材付き原料積層体RMBの基材フィルムBF1に貼り合わされる。テープTPを貼り合わせる位置は、切断された基材フィルムBF1と基材フィルムBF1の残部とを繋げることができれば、限定されるものではない。
図4の例においては、両面基材付き原料積層体RMBの幅方向に、3つの切断された基材フィルムBF1が並んでおり、それらを基材フィルムBF1の残部と繋げるために、幅の狭い3本のテープTPがロールTPRから繰り出されるように示されている。
【0052】
貼合部78aの下流には、剥離ローラ(又は剥離バー)78bを有しており、テープTPで繋げられた基材フィルムBF1は、剥離ローラ78bを経由して両面基材付き原料積層体RMBの搬送方向から離れる方向(
図4では上方)に引かれる。したがって、テープTPで繋げられた基材フィルムBF1は、光学フィルム積層体F1から剥離され、巻取ローラに巻き取られる。
【0053】
剥離ローラ78bの下流には、別の剥離ローラ(又は剥離バー)78cが設けられている。光学フィルム積層体F1が切断されたウェブ状の原料積層体RMの残部RMRは、除電されることによって基材フィルムBF2とは密着状態が解除されており、剥離ローラ78cを経由して搬送方向から離れる方向(
図4では上方)に引かれ、巻き取られる。剥離ローラ(又は剥離バー)78cのさらに下流には、さらに別の剥離ローラ(又は剥離バー)78dが設けられており、剥離ライナRL側の基材フィルムBF2は、剥離ローラ78dを経由して搬送方向から離れる方向(
図4では下方)に引かれる。したがって、基材フィルムBF2は、光学フィルム積層体F1から剥離され、巻き取られる。
【0054】
ウェブ状の原料積層体RMから切り出された光学フィルム積層体F1は、搬送方向が変わることなく剥離ローラ78dを通過して剥離装置78から送出され、当業者に周知の搬送装置などによって取り出される。このようにして、1つ又は複数の任意形状を有する光学フィルム積層体F1を得ることができる。
【実施例0055】
以下に、本発明の実施例及び比較例を説明する。表1は、本発明の実施例及び比較例を示す。
実施例では、シート状の光学機能フィルム(光学機能層)の一方の面に表面保護フィルムが積層され、他方の面に剥離ライナが積層された光学積層体を準備し、表面保護フィルムの面と剥離ライナの面との両方にシート状の基材フィルムを積層した。これを当業者に周知の積層ローラでニップして両面基材付き原料積層体とし、ニップ後に静電気を帯電させた。
【0056】
次に、帯電した状態の両面基材付き原料積層体の表面の静電気量を測定し、表面保護フィルム側からレーザー光で、剥離ライナ側の基材フィルムが切断されないようにして、両面基材付き原料積層体を切断した。切断後、静電気を除電し、両面の基材フィルムを剥離して得られた光学フィルム積層体について、切断部分の端部における隆起部の高さを測定した。
【0057】
一方、比較例1では、実施例と同じ光学積層体の剥離ライナ側の面にシート状の基材フィルムを積層し、これを当業者に周知の積層ローラでニップして片面基材付き原料積層体とし、静電気を帯電させた。片面基材付き原料積層体の基材フィルムが積層された側とは反対側(表面保護フィルム側)からレーザー光で、基材フィルムを残して、片面基材付き原料積層体を切断した。切断後、静電気を除電し、基材フィルムを剥離して得られた光学フィルム積層体について、切断部分の端部における隆起部の高さを測定した。また、比較例2では、実施例と同様の両面基材付き原料積層体を帯電させることなくレーザー光で切断し、基材フィルムを除去した光学フィルム積層体の隆起部の高さを測定した。
【0058】
光学積層体として、日東電工株式会社製のモバイル用位相差付き偏光フィルム(GRT1794XH1UHC)を用い、厚みは178μmであった。基材フィルムとして、厚み25μmのPETフィルムを用いた。静電気の帯電及び除電のための装置は、春日電機株式会社製のJPK-3を用いた。切断に用いたレーザー光は、波長9.4μmのCO2レーザーであった。レーザー光の発生装置として、武井電機工業株式会社製のTLSM301を用い、出力35W、周波数15kH、送り速度500mm/secで、偏光フィルムの表面に焦点を合わせて切断した。
【0059】
隆起部の高さは、次のように測定した。実施例及び比較例のそれぞれについて、上記の方法で3つの光学フィルム積層体を作製し、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製)を用いて、それぞれの光学フィルム積層体の切断部分における端部の一部の画像から断面プロファイルを取得した。それぞれの断面プロファイルから50カ所の隆起量を測定し、50個の隆起量の平均値を算出した。実施例及び比較例のそれぞれについて、このようにして算出された3つの光学フィルム積層体の隆起量の平均値をさらに平均し、これを光学フィルム積層体の隆起部の高さとした。
【0060】
【0061】
実施例1及び実施例2は、いずれも帯電した静電気量が-1.0kV~-4.0kVであった。ただし、実施例1では、両面基材付き原料積層体の表面保護フィルム側から帯電させ、実施例2では、両面基材付き原料積層体の両面から帯電させた。いずれの実施例においても、実質的に隆起部がない光学フィルム積層体が得られた。
【0062】
実施例3は、静電気量が-11.0kV~-12.0kVの場合であり、帯電はニップ後であった。このように小さい数値の静電気量を帯電させた(すなわち、静電気による密着力が強い)場合には、密着面には隆起部が実質的に発生しなかったものの、異物の吸い寄せ、除電しきれず剥離不良、大気放電による周辺装置への悪影響などという問題が発生するおそれがある。
【0063】
比較例1においては、帯電した静電気量が-1.0kV~-4.0kVであり、実施例1及び実施例2と同程度の静電気量であったが、基材フィルムが積層されなかった表面保護フィルム側の切断部に、13μmの隆起部が生じた。したがって、切断部に実質的に隆起部がない光学フィルム積層体は得られなかった。比較例2は、上述の通り、両面基材付き原料積層体を帯電させることなくレーザー光で切断した場合の結果であり、摩擦などによりわずかに帯電した。比較例2では、基材フィルムがあったにも関わらず、いずれの面にも大きな隆起部が生成された。