IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-MRAM 図1
  • 特開-MRAM 図2
  • 特開-MRAM 図3
  • 特開-MRAM 図4
  • 特開-MRAM 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099689
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】MRAM
(51)【国際特許分類】
   G06F 12/00 20060101AFI20250626BHJP
   G06F 12/02 20060101ALI20250626BHJP
   G11C 29/00 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
G06F12/00 550Z
G06F12/02 510A
G06F12/00 597Z
G11C29/00 412
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216550
(22)【出願日】2023-12-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 省エネAI半導体及びシステムに関する技術開発事業/AIエッジコンピューティングの産業応用加速のための設計技術開発 委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 広活
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 峰信
【テーマコード(参考)】
5B160
5L206
【Fターム(参考)】
5B160AA14
5B160NA03
5L206AA09
5L206CC16
(57)【要約】
【課題】MRAMの寿命を延ばす技術の提供。
【解決手段】ワーク領域とブート領域とを有するMRAMであって、信頼性判定用領域を有し、前記ワーク領域にデータが書き込まれる場合、前記信頼性判定用領域に記憶されていた旧データと異なる新データが前記信頼性判定用領域に書き込まれ、前記信頼性判定用領域に記憶されたデータが読み出され、読み出されたデータが前記新データと異なる場合に、前記ワーク領域と、他の領域とが入れ替えられる、MRAMを構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク領域とブート領域とを有するMRAMであって、
信頼性判定用領域を有し、
前記ワーク領域にデータが書き込まれる場合、前記信頼性判定用領域に記憶されていた旧データと異なる新データが前記信頼性判定用領域に書き込まれ、
前記信頼性判定用領域に記憶されたデータが読み出され、読み出されたデータが前記新データと異なる場合に、前記ワーク領域と、他の領域とが入れ替えられる、
MRAM。
【請求項2】
前記他の領域は、前記ブート領域である、
請求項1に記載のMRAM。
【請求項3】
前記他の領域は、MRAMが有する未使用領域である、
請求項1に記載のMRAM。
【請求項4】
前記ブート領域は、オペレーティングシステムの記憶領域であり、
前記ワーク領域は、前記オペレーティングシステムの処理において扱うデータの記憶領域である、
請求項1に記載のMRAM。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRAMに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、統計情報に基づいてMRAMの残り寿命を計算し、寿命に近づいた場合にMRAMへの書き込みを禁止する技術が知られている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-167809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、寿命に近づいた場合にMRAMに書き込みを行うことができなくなってしまう。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、MRAMの寿命を延ばす技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、ワーク領域とブート領域とを有するMRAMであって、前記ワーク領域は、信頼性判定用領域を有し、前記ワーク領域にデータが書き込まれる場合、前記ワーク領域内の前記信頼性判定用領域以外の領域に書き込まれ、かつ、前記信頼性判定用領域に記憶されていた旧データと異なる新データが前記信頼性判定用領域に書き込まれ、前記信頼性判定用領域に記憶されたデータが読み出され、読み出されたデータが前記新データと異なる場合に、前記ワーク領域と、他の領域とが入れ替えられる、MRAMが構成される。
【0006】
すなわち、MRAMにおいて、ワーク領域に任意のデータが書き込まれる際に、信頼性判定用領域に記憶されたデータが書き換えられる。このため、ワーク領域内の任意の領域と、信頼性判定用領域と、を比較すると、信頼性判定用領域の使用頻度が最も高くなり、信頼性判定用領域が最も早く寿命に達する。寿命であるか否かは、信頼性判定用領域に記憶されたデータが読み出され、読み出されたデータが書き込まれたデータと一致するか否かによって判定可能である。そこで、信頼性判定用領域が寿命に達していれば、ワーク領域を他の領域に入れ替えることにより、ワーク領域を更に長期にわたって使用することが可能になる。この結果、MRAMの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ICチップの構成を示すブロック図。
図2】寿命管理処理のフローチャート。
図3】ワーク領域とブート領域とを入れ替えた後のICチップの構成を示すブロック図。
図4】ICチップの構成を示すブロック図。
図5】ワーク領域と未使用領域とを入れ替えた後のICチップの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ICチップの構成:
(2)寿命管理処理:
(3)他の実施形態等:
【0009】
(1)ICチップの構成:
図1は、本発明にかかるMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)20を含むICチップ1の構成を示すブロック図である。ICチップ1は、各種の回路が形成されたパッケージとして提供される装置であり、汎用コンピュータや車載機等が備えるコンピュータに搭載される。ICチップ1は、プロセッサー10とMRAM20とを備えており、プロセッサー10は、MRAM20に記録されたプログラムを実行することにより各種の機能を実現する。プロセッサー10は、公知の各種の回路で実現可能であり、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)等の記憶装置を備えていても良い。
【0010】
MRAM20においては予め領域が区別されている。すなわち、MRAM20は、ブート領域21およびワーク領域22を備えている。本実施形態においてブート領域21は、オペレーティングシステムの記憶領域である。本実施形態において、ICチップ1に対する電力の供給が開始されると、プロセッサー10がブート領域21に記憶されたオペレーティングシステムを読み出すことによって、起動シーケンスが実行される。起動シーケンスが終了すると、プロセッサー10は、オペレーティングシステムの実行下において、各種の処理を実行する。なお、オペレーティングシステムの処理には、オペレーティングシステムの実行下で実行されるアプリケーションプログラムによる処理も含まれる。
【0011】
ワーク領域22は、オペレーティングシステムの処理において扱うデータの記憶領域である。すなわち、オペレーティングシステムの実行下における各種の処理においてデータを記憶する際には、ワーク領域22にデータが書き込まれる。
【0012】
さらに、本実施形態において、ワーク領域22は、信頼性判定用領域22aを含んでいる。本実施形態において、信頼性判定用領域22aは1ビット分の容量を有する領域である。オペレーティングシステムの処理により、ワーク領域22にデータが書き込まれる場合、信頼性判定用領域22aに記憶されていた旧データと異なる新データが信頼性判定用領域に書き込まれる。
【0013】
具体的には、ワーク領域22の信頼性判定用領域22a以外の領域に対して任意のデータが書き込まれると、信頼性判定用領域22aが書き換えられる。すなわち、信頼性判定用領域22aに記憶されていた旧データが0の場合、新データ1が信頼性判定用領域22aに書き込まれる。信頼性判定用領域22aに記憶されていた旧データが1の場合、新データ0が信頼性判定用領域22aに書き込まれる。
【0014】
以上のような書き変えが行われると、ワーク領域22に対して任意のデータが書き込まれる度に、信頼性判定用領域22aのデータが書き換えられる。このため、信頼性判定用領域22aにおける書き換え回数は、ワーク領域内の任意の領域における書き換え回数以上となる。従って、信頼性判定用領域22aの書き換え回数は、ワーク領域22の書き換え回数の最大値となる。
【0015】
従って、信頼性判定用領域22aは、ワーク領域22内で最も早く寿命に達する。このため、信頼性判定用領域22aが寿命に達した場合に、ワーク領域22を寿命に達していない他の領域と入れ替えれば、ワーク領域22の寿命を延ばすことが得きる。
【0016】
そこで、本実施形態においては、信頼性判定用領域22aに新データを書き込んだ後に、読み出しが行われ、読み出されたデータが新データと異なる場合に、ワーク領域22と、他の領域とが入れ替えられる。
【0017】
なお、本実施形態において、他の領域は、ブート領域21である。すなわち、ブート領域21に対する書き込みは、オペレーティングシステムの書き込みの際に実行されるが、多くの場合、それ以後に書き込みは行われないか、ほとんど行われない。従って、通常は、ワーク領域22と比較してブート領域21の書き込み回数は著しく少ない。オペレーティングシステムの書き換えや修正等が行われたとしても、通常は、ワーク領域22に対する書き込み回数より、ブート領域21に対する書き込み回数の方が少ない。
【0018】
従って、信頼性判定用領域22aから読み出されたデータが書き込まれたデータと異なっている場合に、ワーク領域22とブート領域21とを入れ替えることにより、MRAM20の実効的な使用可能期間を延ばすことができる。
【0019】
(2)寿命管理処理:
次に、ICチップ1において行われる寿命管理処理を説明する。ICチップ1に対して電力の供給が開始されると、プロセッサー10はブート領域21を参照し、オペレーティングシステムの読み出しを行う(ステップS100)。すなわち、ブート領域21に記憶されたオペレーティングシステムのデータをプロセッサー10内のメモリにロードし、オペレーティングシステムの実行を開始する。この状態において、プロセッサー10は、オペレーティングシステムの実行下において実行可能な任意の処理を実行可能である。
【0020】
プロセッサー10は、任意のタイミングでオペレーティングシステムの実行下において任意の処理を実行する(ステップS105)。任意の処理が実行されると、プロセッサー10は、当該処理によってワーク領域22にデータが書き込まれるか否か判定する(ステップS110)。ステップS110において、ワーク領域22にデータが書き込まれると判定されない場合、プロセッサー10は、ステップS105以降の処理を繰り返す。
【0021】
ステップS110において、ワーク領域22にデータが書き込まれると判定された場合、プロセッサー10は、信頼性判定用領域22aを書き換える(ステップS115)。すなわち、信頼性判定用領域22aに記憶されていた旧データを新データで上書きする。また、プロセッサー10は、ワーク領域22にデータを書き込む(ステップS120)。すなわち、ステップS105の処理によって書き込み対象となったデータを、ワーク領域22内の信頼性判定用領域22a以外の領域に書き込む。
【0022】
次に、プロセッサー10は、信頼性判定用領域22aのデータを読み出し(ステップS125)、データが正常であるか否か判定する(ステップS130)。すなわち、読み出されたデータが、ステップS115で書き換えた後のデータと一致した場合、データが正常であると判定する。データが一致しない場合、データが正常であると判定しない。
【0023】
ステップS130において、データが正常であると判定された場合、プロセッサー10は、ステップS105以降の処理を繰り返す。ステップS130において、データが正常であると判定されない場合、プロセッサー10は、ワーク領域22とブート領域21とを入れ替える(ステップS135)。すなわち、プロセッサー10は、ブート領域21に記憶されたオペレーティングシステムのデータをワーク領域22内の信頼性判定用領域22a以外の領域に転送する。なお、当該入れ替えは種々の手法で行われて良く、MRAM20の空き領域やMRAM20の外部のメモリ内のバックアック領域等にデータを退避しながら転送が行われても良い。
【0024】
そして、プロセッサー10は、ステップS100以後の処理を実行し、オペレーティングシステムの読み出しから再度実行する。すなわち、ICチップ1を再起動する。但し、再起動後においては、再起動前にブート領域21であった領域がワーク領域22として使用され、再起動前にワーク領域22であった領域がブート領域21として使用される。なお、ステップS105における処理を中断し、ブート領域21、ワーク領域22双方のデータを他の領域等に退避させながらブート領域21のデータとワーク領域22のデータとを入れ替え、入れ替え完了後にステップS105における処理を再開可能であれば、再起動は省略されても良い。
【0025】
図3は、図1に示すMRAM20に対して入れ替えが行われた後の状態を示している。再起動前にブート領域21であった領域はワーク領域22となるため、一部が信頼性判定用領域22aとして使用される。また、再起動前にワーク領域であった領域はブート領域となる。但し、再起動前に信頼性判定用領域として使用されていた領域21aは書き換え回数の寿命に達しているため、ブート領域21からは除外され、使用されない。
【0026】
以上の構成によれば、信頼性判定用領域22aの寿命までワーク領域22を使用した後、さらに、別の信頼性判定用領域22aの寿命までワーク領域22を使用することができる。この結果、入れ替えが行われない場合と比較してMRAM20の寿命を約2倍に延ばすことができる。
【0027】
(3)他の実施形態等:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、MRAMの使用態様は種々の態様であって良く、MRAM以外の機能を実現するための回路、例えば、プロセッサーと一体のチップで構成されておらず、MRAM単体のチップとして構成されていても良い。また、MRAMを有するチップにはプロセッサー以外の回路が含まれていても良い。
【0028】
また、ワーク領域と入れ替えられる領域はブート領域に限定されない。例えば、ワーク領域とMRAMが有する未使用領域とが入れ替えられる構成であっても良い。図4は、ICチップ1の製造後にブート領域21およびワーク領域22以外に未使用領域23が確保されている構成を示すブロック図である。図4に示す例においては、ワーク領域22と同等の容量の未使用領域23が予め確保されている。
【0029】
この構成においても図2に示す処理によってMRAMの寿命が管理される。但し、ステップS135においては、ワーク領域22と未使用領域23との入れ替えが行われる。具体的には、ステップS135においてプロセッサー10は、ワーク領域22に記憶された信頼性判定用領域22a以外のデータを未使用領域23に転送する。転送が行われると、未使用領域23であった領域は、図5に示すようにワーク領域22となる。また、プロセッサー10は、新たなワーク領域22内に信頼性判定用領域22aを確保する。さらに、転送前にワーク領域22であった領域を不使用領域24とする。プロセッサー10は、以後、不使用領域24を使用しない。
【0030】
以上の構成によれば、信頼性判定用領域22aの寿命までワーク領域22を使用した後、さらに、別の信頼性判定用領域22aの寿命までワーク領域22を使用することができる。この結果、入れ替えが行われない場合と比較してMRAM20の寿命を約2倍に延ばすことができる。また、ブート領域21を入れ替えないため、入れ替え前にワーク領域22として使用されていた領域が寿命に達したとしてもブート領域21内のデータが影響を受けることはない。
【0031】
MRAMは、磁気ランダムアクセスメモリであり、磁化の状態の変化によって情報記憶を行うメモリであれば良い。すなわち、MRAMにおいては、他の公知のメモリと比較して、データ保持の保証期間は比較的長いが、データ書き換えの保証回数は比較的少ないという特性がある。このようにMRAMの特性が、書き換えの保証回数が比較的少ない特性であっても、ワーク領域の入れ替えにより、寿命を延ばすことが可能である。
【0032】
ブート領域はブートの際に用いられる領域であるため、例えば、MRAMを使ったシステムの起動時等に用いられるが、起動後には頻繁にアクセスされない。一方、ワーク領域は、起動後に使用される領域であり、ブート領域と比較して頻繁にアクセスされる。
【0033】
信頼性判定用領域は、ワーク領域にデータが書き込まれる度に、データが書き換えられる領域であれば良い。すなわち、ワーク領域にデータが書き込まれる度に、信頼性判定用領域に記憶されていた旧データと異なる新データが信頼性判定用領域に書き込まれればよい。なお、上述の実施形態において、信頼性判定用領域は、ワーク領域内に確保された一部の領域であるが、ワーク領域以外の領域に信頼性判定用領域が確保されても良い。この場合、ワーク領域と、他の領域とが入れ替えられる際に、未使用の領域から信頼性判定用領域が新たに確保される。
【0034】
ワーク領域にデータが書き込まれる場合、信頼性判定用領域に記憶されていた旧データと異なる新データが信頼性判定用領域に書き込まれる。すなわち、信頼性判定用領域において、記憶されていた旧データは、異なる新データで上書きされる。このような書き変えを行うことにより、信頼性判定用領域における書き換え回数をワーク領域内の書き換え回数の最大値以上になるようにすることができればよい。
【0035】
旧データと新データとは、異なっていれば良い。上述の実施形態のように信頼性判定用領域が1ビットであれば、旧データと新データとの何れか一方が1,他方が0である。信頼性判定用領域は、複数ビットであっても良い。この場合、信頼性判定用領域の書き換えの際に、全ビットが異なるデータに書き換えられることが好ましい。
【0036】
さらに、本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置として実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0037】
10…プロセッサー、21…ブート領域、22…ワーク領域、22a…信頼性判定用領域、23…未使用領域、24…不使用領域、
図1
図2
図3
図4
図5