(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099703
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】印刷制御装置、印刷制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G06F3/12 356
G06F3/12 308
G06F3/12 353
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216584
(22)【出願日】2023-12-22
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】堀 大輔
(57)【要約】
【課題】 印刷プレビューを備えるアプリケーションにおいて、これまで印刷設定をプリンタドライバに指定するタイミングに関する検討が不十分であった。そのため、アプリケーションの作りによっては、印刷プレビューと印刷結果がずれる不具合が発生する恐れがあった。
【解決手段】 印刷結果を事前にプレビュー表示し、プリンタドライバに印刷指示を行うことで印刷を実行する画像処理装置であって、プリンタドライバの描画能力情報や画像処理装置のプレビュー表示に影響する印刷設定を、プレビュー表示を行うよりも前のタイミングでプリンタドライバに設定する設定手段を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷結果を事前にプレビュー表示し、プリンタドライバに印刷指示を行うことで印刷を実行する画像処理装置であって、
前記プリンタドライバの描画能力情報や前記画像処理装置のプレビュー表示に影響する印刷設定を、プレビュー表示を行うよりも前のタイミングでプリンタドライバに設定する設定手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記印刷設定は、前記プリンタドライバの印刷解像度の上限を変更する設定であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理装置は、プレビュー表示より前に前記プリンタドライバに印刷設定を指定するだけでなく、描画に影響しない印刷設定に関しては、印刷実行直前に前記プリンタドライバに印刷設定を指定することを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置、印刷制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アプリケーションの中には、様々な印刷設定をプリンタドライバに指定し、印刷を実行する前に、印刷用紙にどのように印刷されるのかを画面上にプレビュー表示するものがある。印刷プレビューに関する先行技術として、特許文献1では、両面印刷のプレビューに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまでの先行技術では、プリンタドライバへの印刷指定のタイミングについては特に考慮されてこなかった。そのため、例えば印刷解像度が変わる印刷設定を印刷実行直前に行ってしまった場合、それまで表示していたプレビュー結果と印刷実行結果が変わってしまう不具合が発生する恐れがあった。
【0005】
本発明の目的は、印刷解像度等の描画に関する印刷設定をプリンタドライバに指定するアプリケーションにおいて、印刷プレビューと印刷結果が異なる不具合を確実に抑制することが可能となる印刷制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のような課題を解決するため、本発明の印刷システムの一態様は、印刷結果を事前にプレビュー表示し、プリンタドライバに印刷指示を行うことで印刷を実行する画像処理装置であって、前記プリンタドライバの描画能力情報や前記画像処理装置のプレビュー表示に影響する印刷設定を、プレビュー表示を行うよりも前のタイミングでプリンタドライバに設定する設定手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、印刷解像度等の描画に関する印刷設定をプリンタドライバに指定するアプリケーションにおいて、印刷プレビューと印刷結果が異なる不具合を確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】印刷システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】印刷システムの構成を模式的に示したブロック図である。
【
図3】実施形態1におけるアプリケーション画面の一例を示す図である。
【
図4】実施形態1において、印刷プレビューを表示するまでの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0010】
<<実施形態1>>
<印刷システムのハードウェア構成>
図1は、印刷システムのハードウェア構成を示すブロック図である。本図において、ホストコンピュータ101は、情報処理装置の一例であり、入力インタフェース110、CPU111、ROM112、RAM113、外部記憶装置114、出力インタフェース115、及び入出力インタフェース116を有する。また、入力インタフェース110には、キーボード118、ポインティングデバイス117などの入力デバイスが接続され、出力インタフェース115には、表示部119などの表示デバイスが接続されている。
【0011】
ROM112には、初期化プログラムが格納され、外部記憶装置114には、アプリケーションプログラム群、オペレーティングシステム(OS)、プリンタドライバ、その他の各種のデータが格納されている。RAM113は、外部記憶装置114にストアされる各種のプログラムの実行の際のワークメモリ等として使用される。
【0012】
なお、本実施形態では、CPU111が、ROM112に格納されたプログラムの手順に従って処理を行うことによって、ホストコンピュータ101における後述の機能及び後述するフローチャートに係る処理を実行する。デバイスである印刷装置102は、入出力インタフェース116を介して、ホストコンピュータ101と接続されている。ここでは、ホストコンピュータ101と印刷装置102が分かれて構成されているが、これらが一つの情報処理装置として構成されていても良い。なお、印刷装置は、インクを紙面上に吐出することで印刷するインクジェットプリンタを例に説明するが、他の方法(例えば電子写真方式)で印刷が実行されても良い。また、ホストコンピュータ101は、デスクトップパソコンでも、スマートフォンでも、ノートパソコンでも構わない。
【0013】
<印刷システムの構成>
図2は、本実施形態における印刷システムの構成を模式的に示した図である。OS201には本実施形態の一態様として、Windowsが搭載されているものとして以下説明を行う。
【0014】
アプリケーション202は画像データを印刷用にレイアウトし、印刷を実行することができるソフトウェアである。
【0015】
ユーザはアプリケーション202上で、印刷用のデータを作成後、印刷装置ベンダが提供するプリンタドライバ203に対して、各種印刷設定を行う。印刷設定を行うための画面は、アプリケーション202からOS201を介して呼び出されたユーザーインターフェース部204によって表示される。ユーザは印刷設定画面にて、用紙の種類や用紙サイズの指定など、各種印刷に必要な設定を行うことができる。なお、アプリケーション202はPrintTicketやPrintCapabilities等のOSの機能を用いることで、前述した印刷設定画面を表示せず、直接アプリケーションの画面上でユーザからの印刷設定変更指示を受け付けることも可能である。
【0016】
ユーザは、印刷設定完了後、アプリケーション202上で印刷ボタンを押下することでアプリケーション202に対して印刷の実行を指示する。ユーザからの印刷指示により、アプリケーション202は印刷データを作成し、OS201を介して、プリンタドライバ203のグラフィックス処理部205へ印刷データを渡す。
【0017】
グラフィックス処理部205は印刷データに対して、色処理やレンダリング等を実施後、印刷装置102が解釈可能なデータ形式に変換し、通信部206を経由して印刷データを印刷装置102へ送信する。
【0018】
その後、印刷装置102に給紙された記録媒体に記録ヘッドからインクが吐出され、画像が形成される。
【0019】
<アプリケーション画面の一例>
図3は画像を印刷用紙上に自由に配置して印刷することができるアプリケーション202の画面の一例を示した図である。なお、画像の入力方法については特に図示しないが、例えばユーザがアプリケーション202のファイルメニューからエクスプローラーを開き画像を入力する方法や、アプリケーション202に直接画像をドラッグ&ドロップすることにより入力する方法がある。また、画像のフォーマットはアプリケーション202が解釈できるフォーマットであれば何れでもよく、例えば、BitmapやTiff等の画像フォーマットが考えられる。また、XPS(XML Paper Specification)やEMF(Enhanced Metafile)のようなベクターフォーマットでも良い。
【0020】
プレビュー領域301は、用紙領域302やユーザがレイアウトした画像303を表示する領域である。ユーザはプレビューを確認しながら、例えば後述する余白設定308等を操作して画像303の大きさや位置、余白領域304を調整することができる。
【0021】
プリンタ設定305は、印刷に使用するプリンタドライバ203の指定を受け付けるコンボボックスである。用紙サイズ設定306は、印刷に使用する用紙サイズの指定を受け付けるコンボボックスであり、印刷の向き設定307は、印刷の向きの指定を受け付けるコンボボックスである。アプリケーション202は、プリンタ設定305でユーザに選択されたプリンタドライバ203に対し、PrintCapabilities等のOSの機能を用いることで、用紙サイズ設定306、印刷の向き設定307で設定可能な能力情報を取得することができる。306及び307で設定された値に従って、アプリケーション202は、用紙領域302の大きさや向きを決定する。
【0022】
余白設定308は余白領域304の大きさを指定するためのコントロールである。ユーザは上下左右それぞれのスライダーを調整することにより、用紙領域302上の余白領域304の大きさを調整することができる。本実施形態では、画像303はこの余白領域304を除いた印字領域に対してフィットした状態で配置されるものとする。なお、ユーザがポインティングデバイス等を用いて画像303を直接移動させ、余白領域304の大きさが自動的に決定される構成であっても良い。
【0023】
部数設定309は印刷する部数の指定を受け付ける数値入力コントロールである。ユーザはここで印刷する部数を指定することができる。
【0024】
印刷ボタン310は、306、307、309で設定された印刷設定情報、及びユーザが編集した用紙領域302のレイアウト情報(画像の描画情報)を、305で指定されたプリンタドライバ203に送信するためのボタンである。
図3の例では、A4サイズで横向きの画像が20部印刷されることとなる。
【0025】
<印刷設定反映タイミング>
次に、
図4のフローチャートを用いて、本実施形態におけるアプリケーション202がプリンタドライバ203へ印刷設定の指定を行うタイミングについて説明を行う。本フローチャートはアプリケーション202起動直後やプリンタ設定305にて印刷対象のプリンタドライバが変更されたタイミング、また、印刷設定が変更されたタイミング等で開始される。なお、アプリケーション202を本処理の主体として説明するが、実際には対応するプログラムをCPU111が実行することで対応する機能が実現される。
【0026】
まずS401にて、アプリケーション202は、描画に関する印刷設定が存在するかどうかを確認し、存在する場合は処理をS402へ、存在しない場合は処理をS403へと移行する。
【0027】
ここで、描画に関する印刷設定とは、プレビュー領域301の描画に影響を及ぼすプリンタドライバ203に指定すべき印刷設定であり、本実施形態では用紙サイズ設定306および印刷の向き設定307が該当する。なお、余白設定308はプレビュー領域301に影響を与えるが、プリンタドライバ203に指定する設定ではないため、対象外となる。また、ユーザが直接指定する設定以外にも、アプリケーション202が暗黙的にプリンタドライバ203に設定する印刷設定も存在する。例えば高解像で画像を美しく印刷したいアプリケーションであれば、プリンタドライバ203に対し高解像度の印刷設定を指定するものが存在する。プリンタドライバ203はどのようなアプリケーションからも失敗なく印刷を受け付けられるよう、あえて印刷解像度を落としてアプリケーションに負荷なく印刷させる場合がある。プリンタドライバ203は高解像度の指定を受け付けた場合のみ、例えば通常600dpiまでしか許容していない印刷解像度を1200dpiまで解放する。高解像度の設定は、描画できるピクセル数に影響するため、S401では、描画に関する印刷設定として判断される。
【0028】
S402では、アプリケーション202はプリンタドライバ203へ描画に関する印刷設定を行い、処理をS403へと移行する。本実施形態では、用紙サイズ設定306、印刷の向き設定307、前述した高解像度の設定等が該当する。プリンタドライバ203への設定方法としては、OSが提供するPrintTicket等を用いて設定しても良いし、プリンタドライバを提供するベンダが用意したSDK(Software Development Kit)を用いても良い。
【0029】
S403では、アプリケーション202はS402で設定した印刷設定以外で、事前にプリンタドライバ203へ設定しておいた方が良い印刷設定があれば設定を行い、処理をS404へと移行する。例えば、
図3では図示していないが、給紙方法を設定することができるアプリケーションであれば、あらかじめここで給紙方法を設定しておく。給紙方法の種類によっては用紙サイズ設定306で選択できる用紙サイズに制限が入る場合があり、事前にプリンタドライバ203に給紙方法を設定しておくことで、印刷可能な用紙サイズのみをユーザが適切に選択できるようになる。このように他の印刷設定の設定値に影響するような印刷設定はあらかじめプリンタドライバ203へ設定しておくことが望ましい。
【0030】
S404では、アプリケーション202はプリンタドライバ203から各種能力情報を取得し、処理をS405へと移行する。能力情報の取得はOSが提供するPrintCapabilitiesやGetDeviceCaps等のAPIを用いて取得することが可能である。アプリケーション202はここでプレビュー領域301に必要な描画情報(印字可能領域の縦横のピクセル数や用紙周囲の物理マージン情報等)を取得する。
【0031】
S405では、アプリケーション202はS404で取得した描画情報や305~308で設定された設定情報、画像303をもとに、印刷結果を表すプレビュー画像をプレビュー領域301に表示し、本処理を終了する。
【0032】
なお、ユーザが305~307の設定を変更した場合は、アプリケーション202は再度
図4のフローチャートを実施する。このとき、すでにプリンタドライバ203へ設定済みの印刷設定は設定操作をスキップすることも可能である。なお、余白設定308や部数設定309はプリンタドライバ203の能力情報に影響を与える設定ではないため、ユーザによって値を変更された場合でも、
図4のフローチャートを再実施する必要はない。
【0033】
ユーザは各種設定を行った後、印刷ボタン310を押下する。アプリケーション202は、印刷ボタン310が押下されたタイミングで、これまでプリンタドライバ203へ設定していなかった印刷設定(例えば部数設定309)をプリンタドライバ203へ反映した上でプリンタドライバ203へ印刷を実行する。
【0034】
以上の処理により、アプリケーション202は描画に関する印刷設定をプレビュー表示よりも前に確実にプリンタドライバに指定することができるようになる。例えば、印刷ボタン310が押下されたタイミングで高解像度の設定が行われてしまった場合、印刷のタイミングで描画できる印字領域や物理マージンにも影響を与えることになる。アプリケーション202の作りによっては、描画情報が変わったことから画像303の位置や大きさが微妙にずれる、余白設定308の値が初期値に戻ってしまう等、印刷結果がそれまでのプレビュー結果と異なる結果となってしまう恐れがあった。本発明を用いることで、ユーザは確実に印刷プレビュー通りに印刷を実行できるようになる。
【0035】
なお、描画に関する印刷設定を含め、全ての印刷設定をプレビュー表示前にプリンタドライバに反映してしまうことで上記問題を回避することも可能である。ただし、対象とするプリンタドライバや印刷設定によっては、ユーザが設定値を変更するたびに印刷設定を反映しなおすとパフォーマンスが低下する懸念があるため、印刷実行時に設定すれば十分な印刷設定は印刷前に設定する方が好ましい。
【0036】
<<実施形態2>>
上述した実施形態は、以下の処理を実行することによっても実行される。すなわち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUまたはMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。これによって、上述した目的を達成することができる。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することとなり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0037】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVDなどを用いることができる。
【0038】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでない。そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0039】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書きこまれてもよい。そして、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ってもよい。その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【符号の説明】
【0040】
101 ホストコンピュータ
102 印刷装置
201 OS
202 アプリケーション
203 プリンタドライバ
204 ユーザーインターフェース部
205 グラフィックス処理部
206 通信部