(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099722
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】アルコール飲料
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20250626BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216608
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】中島 美保子
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH11
4B115LP02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】青葉アルコールとアルコールにより生じる苦味が抑制された、アルコール飲料の提供を目的とする。
【解決手段】青葉アルコールを100ppb~15000ppb、γ-ノナノラクトンを50ppb以上、およびイソアミルアルコール、を含む、アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青葉アルコールを100ppb~15000ppb、
γ-ノナノラクトンを50ppb以上、および
イソアミルアルコール、
を含む、アルコール飲料。
【請求項2】
リナロール、ゲラニオール、およびα-テルピネオールからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
蒸留酒である、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
焼酎である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、新規なアルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
市場には様々な風味特性を有するアルコール飲料が存在している。アルコール飲料の風味特性は、競合品に対する差別化要因の一つであり、各メーカーは様々な工夫を凝らしている。例えば、植物原料に由来する香り成分を用い、アルコール飲料に風味付けすることが行われている。特許文献1には、緑茶、紅茶、およびハーブ等の植物原料を用い、フレッシュな香りと深みのある風味を付与しつつ、植物原料に由来する苦味を感じさせない、アルコール飲料が開示されている。特許文献2には、味の厚み、ふくらみ、およびコクに優れたビール等のアルコール飲料を提供するために、γ-ノナノラクトンを特定の濃度に調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-159502号公報
【特許文献2】特開2023-142898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルコール飲料にフレッシュ感等を付与するため、植物等に由来する青葉アルコールの濃度を調整することが考えられるが、青葉アルコールがアルコールと相まって苦味を生じさせる場合があることを、本願の発明者は発見した。本願発明は、青葉アルコールとアルコールにより生じる苦味が抑制された、アルコール飲料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋭意検討の結果、本願の発明者は、青葉アルコールとアルコールにより生じる苦味の抑制に、特定の成分が有効であることを見出した。本願発明は、かかる知見に基づいて完成された。限定されないが、本願発明によれば、以下のものが提供される。
(1)青葉アルコールを100ppb~15000ppb、
γ-ノナノラクトンを50ppb以上、および
イソアミルアルコール、
を含む、アルコール飲料。
(2)リナロール、ゲラニオール、およびα-テルピネオールからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分をさらに含む、(1)に記載のアルコール飲料。
(3)蒸留酒である、(1)または(2)に記載のアルコール飲料。
(4)焼酎である、(1)~(3)のいずれかに記載のアルコール飲料。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<アルコール飲料>
本願発明はアルコール飲料を提供する。アルコール飲料は、例えば、発泡性酒、醸造酒、蒸留酒、および混成酒であり得るが、これに限定されない。発泡性酒には、ビールおよび発泡酒等が含まれる。醸造酒には、清酒および果実酒等が含まれる。蒸留酒には、焼酎(麦焼酎、芋焼酎等)、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、泡盛、ウイスキー、ブランデー、原料アルコール、スピリッツ(例えば、ウオツカ、ラム、テキーラ、ジン、アクアビット)、原料用アルコール、ニュートラルアルコール(ニュートラルスピリッツともいう)等が含まれる。混成酒には、合成清酒、甘味果実酒、およびリキュール等が含まれる。ここに列挙したものに限らず、アルコールを含有する飲料一般が本願発明に適用できる。
【0007】
本願発明のアルコール飲料は、青葉アルコール(シス-3-ヘキセン-1-オールとも呼ばれる)を成分として含む。青葉アルコールは、不飽和アルコールの一種であり、緑茶の香り成分として発見・命名された常温で無色の液体である。緑茶以外の様々な植物にも存在し、植物の緑の香りに関係している。また、食品等にフレッシュな香りを付与したり、ヒトの疲労を軽減するための香料としても広く利用されている。青葉アルコールは、例えば、100ppb~15000ppb、500ppb~15000ppb、または500ppb~10000ppbでアルコール飲料に存在し得る。青葉アルコールとアルコールが共存することによって、アルコール飲料に苦味が生じることは予想外であった。青葉アルコールは、アルコール飲料の製造に用いるいずれの原料に由来するものであってもよい。例えば、製造過程において、原料の発酵や加工等により生成する青葉アルコール、および/またはいずれかの工程で必要に応じて配合し得る香料やエキスに由来する青葉アルコールであり得る。青葉アルコールの濃度調整は、アルコール飲料の製造過程のいずれにおいて行ってもよい。例えば、原料の仕込み、発酵、濾過、蒸留、熟成、混合、および/または容器詰めの前、途中、および/または後であってもよい。
【0008】
本願発明のアルコール飲料は、γ-ノナノラクトン(γ-ノナラクトンと呼ばれることもある)を成分として含む。γ-ノナノラクトンは、ココナッツフレーバーとして、食品等に利用されることがある成分である。γ-ノナノラクトンは、例えば、50ppb以上、100ppb以上、または500ppb以上でアルコール飲料に存在し得る。γ-ノナノラクトンの濃度の上限は特に制限されないが、例示するならば、2500ppb以下または2000ppb以下であり得る。或いは、γ-ノナノラクトンは、50ppb~2500ppb、100ppb~2500ppb、100ppb~2000ppb、または500ppb~2000ppbでアルコール飲料に存在し得る。γ-ノナノラクトンは、アルコール飲料の製造に用いるいずれの原料に由来するものであってもよい。例えば、製造過程において、原料の発酵や加工等により生成するγ-ノナノラクトン、および/またはいずれかの工程で必要に応じて配合し得る香料やエキスに由来するγ-ノナノラクトンであり得る。γ-ノナノラクトンの濃度調整は、アルコール飲料の製造過程のいずれにおいて行ってもよい。例えば、原料の仕込み、発酵、濾過、蒸留、熟成、混合、および/または容器詰めの前、途中、および/または後であってもよい。
【0009】
本願発明のアルコール飲料は、イソアミルアルコールを含む。イソアミルアルコールは、様々な植物(例えば、ジャスミン、クチナシ、梅等)の香り成分の一つであり、甘い香りに寄与することが知られている。イソアミルアルコールは、ごく少量でアルコール飲料に存在していればよい。従って、アルコール飲料におけるイソアミルアルコールの濃度は特に制限されず、いずれの濃度であってもよい。例示するならば、イソアミルアルコールは、3000ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、100ppm以下、50ppm以下でアルコール飲料に存在し得る。また、イソアミルアルコールは、10ppm以上、100ppm以上、500ppm以上、1000ppm以上、3000ppm以上でアルコール飲料に存在し得る。さらに、イソアミルアルコールは、50ppm~3000ppm、100ppm~1000ppm、100ppm~500ppmといった、一定の範囲でアルコール飲料に存在し得る。イソアミルアルコールは、アルコール飲料の製造に用いるいずれの原料に由来するものであってもよい。例えば、製造過程において、原料の発酵や加工等により生成するイソアミルアルコール、および/またはいずれかの工程で必要に応じて配合し得る香料やエキスに由来するイソアミルアルコールであり得る。イソアミルアルコールの濃度調整は、アルコール飲料の製造過程のいずれにおいて行ってもよい。例えば、原料の仕込み、発酵、濾過、蒸留、熟成、混合、および/または容器詰めの前、途中、および/または後であってもよい。
【0010】
本願発明のアルコール飲料はアルコールを含む。本願明細書において、単に「アルコール」というときは、特段の記載がない限り、エタノールを意味するものとする。アルコール飲料のアルコール度数(「アルコール含量」ということもある)は、1.0%(v/v)以上、5%(v/v)以上、10%(v/v)以上、12%(v/v)以上、15%(v/v)以上、20%(v/v)以上、25%(v/v)以上、または30%(v/v)以上であり得るが、好ましくは10%(v/v)以上である。さらに、アルコール度数は、1%(v/v)~60%(v/v)、5%(v/v)~60%(v/v)、10%(v/v)~60%(v/v)、10%(v/v)~50%(v/v)、15%(v/v)~50%(v/v)、または20%(v/v)~40%(v/v)であってもよい。アルコールは、アルコール飲料の製造に用いるいずれの原料に由来するものであってもよい。例えば、製造過程において、原料の発酵や加工等により生成するアルコール、および/またはいずれかの工程で必要に応じて配合し得る香料、エキス、またはアルコールに由来するアルコールであり得る。アルコールの濃度調整は、アルコール飲料の製造過程のいずれにおいて行ってもよい。例えば、原料の仕込み、発酵、濾過、蒸留、熟成、混合、および/または容器詰めの前、途中、および/または後であってよい。限定されないが、蒸留条件を調節したり、アルコール度数の異なるアルコール源や水を添加する等によって、所望のアルコール度数に設定することができる。
【0011】
本願発明のアルコール飲料は、テルペン化合物を更に含むことができる。テルペン化合物は、例えば、リナロール、ゲラニオール、およびα-テルピネオールからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分であり得る。これらのテルペン化合物のアルコール飲料中の濃度は、適宜設定することができる。これらのテルペン化合物は、アルコール飲料の製造に用いるいずれの原料に由来するものであってもよい。例えば、製造過程において、原料の発酵や加工等により生成するもの、および/またはいずれかの工程で必要に応じて配合し得る香料やエキスに由来するものであり得る。これらのテルペン化合物の濃度調整は、アルコール飲料の製造過程のいずれにおいて行ってもよい。例えば、原料の仕込み、発酵、濾過、蒸留、熟成、および/または容器詰めの前、途中、および/または後であってもよい。
【0012】
本願発明のアルコール飲料は、炭酸を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。アルコール飲料が炭酸を含む場合、炭酸の供給は、当業者に通常知られる方法を用いて行うことができる。例えば、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、カーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料を混合してもよいし、二酸化炭素を充填したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、或いは、飲料と炭酸水を混合してもよい。炭酸ガス圧の下限値は1.0kgf/cm2以上、1.2kgf/cm2以上、1.3kgf/cm2以上であり、炭酸ガス圧の上限値は3.0kgf/cm2以下、2.7kgf/cm2以下、または2.5kgf/cm2以下である。典型的には、本発明の炭酸アルコール飲料における炭酸ガス圧は、20℃において1.0~3.0kgf/cm2、1.2~2.7kgf/cm2、1.3~2.5kgf/cm2である。
【0013】
本願発明のアルコール飲料は、上記で説明した以外の成分をさらに含有していてもよい。本願発明のアルコール飲料は、植物由来の成分を含有していてもよい。植物には、果実、野菜、ハーブ、葉、花等が含まれるが、これらに限定されない。果実または野菜は、果実または野菜そのものであってもよく、加工したものであってもよい。例えば、果実または野菜を搾汁するなどして果汁または野菜汁を得、これをそのまま使用してもよいし、果汁または野菜汁を濃縮して得られる濃縮果汁または濃縮野菜汁を使用してもよい。また、果実、果汁、濃縮果汁、野菜、野菜汁、濃縮野菜汁を加工して得られる、種子等の固形物を除いた汁、ピューレ、清澄液、混濁汁、またはこれらの抽出物を使用することもできる。
【0014】
果実には、柑橘類(オレンジ、うんしゅうみかん、グレープフルーツ、レモン、ライム、柚子、いよかん、なつみかん、はっさく、ポンカン、シイクワシャー、かぼす等)、仁果類(りんご、なし、など)、核果類(もも、梅、アンズ、スモモ、さくらんぼ、など)、しょうか類(ブドウ、カシス、ブルーベリー、など)、熱帯、亜熱帯性果実類(パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、ライチ、など)、果実的野菜(いちご、メロン、スイカ、など)が含まれるが、これらに限定されない。また、野菜には、トマト、コーン、かぼちゃ、ニンジン等が含まれるが、これらに限定されない。果実または野菜は、1種類を単独で使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、果実と野菜を組み合わせてもよい。
【0015】
植物の葉は、葉そのものであってもよく、加工したものであってもよい。例えば、葉そのものを使用してもよいし、葉から抽出液を得、これを使用してもよいし、葉の抽出液を濃縮して得られるエキスを使用してもよい。葉は、生葉、乾燥葉、発酵葉、酵素処理した葉、微生物処理した葉、またはこれらの粉砕物等であってもよい。葉には、茶の葉が含まれる。茶の葉には、不発酵の茶葉、半発酵の茶葉、発酵茶葉が含まれる。不発酵の茶葉には、緑茶葉が含まれ、例えば、煎茶、玉露、かぶせちゃ、番茶、甜茶、玉緑茶、龍井茶、黄山毛峰等の茶葉が挙げられる。半発酵茶には、白茶葉および青茶葉が含まれ、例えば、白牡丹、銀針白竜、武夷岩茶、鉄観音茶、水仙茶、ウーロン茶等の葉が挙げられる。発酵茶には、紅茶葉、黄茶葉、黒茶葉が含まれ、例えば、紅茶、プアール茶等の葉が挙げられる。
【0016】
上記の植物(果実、野菜、ハーブ、葉、花等)、並びにその加工品(抽出物、エキス、濃縮物等)は、アルコール飲料の製造過程のいずれにおいて用いてもよい。例えば、原料の仕込み、発酵、濾過、蒸留、熟成、および/または容器詰めの前、途中、および/または後に用いることができ、他の原料と混合してもよい。
【0017】
本願発明のアルコール飲料は、飲料に配合し得る添加剤をさらに含んでもよい。添加剤には、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
本願発明のアルコール飲料は、容器詰めの形態で提供することができる。容器詰め飲料とすることにより長期間に渡って安定に保存することが可能になるため好適である。容器詰め飲料の容器は特に限定されず、金属製容器、樹脂製容器、紙容器、ガラス製容器など、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。容器には、例えば、アルミ缶やスチール缶、ペットボトル、紙パック、ガラス瓶、樽、陶器、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。また、適宜、アルコール飲料を殺菌してもよい。殺菌方法は特に制限されないが、例えば、アルコール飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌して容器に充填する方法などが挙げられる。
【0019】
<成分分析>
本願発明のアルコール飲料およびその製造に用いる原料の成分分析は以下の方法で行うことができる。
【0020】
(1)アルコール度数
本明細書において、アルコール度数は公知のいずれの方法によっても測定することができる。例えば、アルコール度数は、振動式密度計を用いて測定することができる。より詳細には、測定対象のアルコール飲料を濾過または超音波処理することによって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)および比重(15/15℃)換算表」を用いて換算することによりアルコール度数を求める。1.0%(v/v)未満のアルコール度数は、国税庁所定分析法3-4(アルコール分)に記載の「B)ガスクロマトグラフ分析法」を用いることによって測定することができる。
【0021】
(2)青葉アルコール(シス-3-ヘキセン-1-オール)およびテルペン化合物(リナロール、ゲラニオール、およびα-テルピネオールなど)の分析
本明細書において、これらの成分の含有量の測定方法は特に限定されず、公知の方法を適宜選択して利用することができる。例えば、GC-MSを用いて測定することが好ましい。例えば、これらの成分は、以下の条件に設定したガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)により行うことができる。
GC/MS分析条件:
・カラム:HP-INNOWAX(0.25mm I.D.×60m、膜厚0.25μm)、
・気化室温度:200℃
・昇温プログラム: 50℃(1min)
50℃→240℃(3℃/min)
240℃(5min)、
・スプリット比:1:2
・線速度:30.0cm/s(一定)
・キャリアーガス:He
・イオン源温度:200℃
・トランスファー温度:240℃。
【0022】
(3)γ-ノナノラクトンの分析
[GC/MS条件(Full evaporation dynamic headspace(FE-DHS)注入法)]
・装置:Agilent製7890B(GC)、5977B(MS)、Gester製MultiPurpose Sampler(auto-sampler)
・吸着樹脂:TENAX
・インキュベーション温度:80℃
・窒素ガスパージ量:3L
・窒素ガスパージ流量:100mL/min
・TDU:[30℃]-[210℃/min]-[240℃(3min)]
・CIS:[10℃]-[120℃/sec]-[240℃](ライナー充填剤:TENAX)
・カラム:GESTEL社製DB-WAX(30m×250μm×0.25μm)
・カラム温度:[40℃(3min)]-[5℃/min]-[240℃(7min)]
・キャリアガス:He
・トランスファーライン:250℃
・イオン源温度:230℃
・Scan Parameter:m/z=28.7~300
・スプリット:なし。
【0023】
(4)イソアミルアルコールの分析
・GCシステム 8860GC/FID
・インレット
・スプリット/スプリットレス、250℃、スプリット比30:1
・ライナ:ウルトライナート(p/n5190-2295)
・カラム:J&W DB-FATWAX ウルトライナート、30m×0.25mm、0.25μm(p/nG3903-63008)
・キャリアガス:ヘリウム、1 mL/minの定流量
・オーブン
40℃(4分間)
5℃/minで100℃まで昇温
10℃/minで200℃まで昇温(10分間)
・FID:250℃
・水素:30mL/min
・空気:300mL/min
・メークアップガス(N2):25mL/min
・注入:0.5μL。
【0024】
(5)炭酸のガス圧
飲料中の炭酸ガス圧の測定は、当業者に公知の方法によって行うことができる。例えば、炭酸のガス圧は、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500Aを用いて測定することができる。例えば、試料温度を20℃にし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸のガス圧を測定する。本願明細書においては、特段の記載がない限り、当該方法によって炭酸のガス圧を測定する。
【0025】
<発明の効果>
本願発明により、アルコール飲料について、青葉アルコールとアルコールによって生じる苦味を抑制することができる。このような苦味が発生すること、並びに当該苦味とγ-ノナノラクトンおよび/またはイソアミルアルコールとの関係は知られていない。そして、γ-ノナノラクトンの濃度を特定の範囲に調整することによって、美味しさを損なうことなく、苦味を抑制できる。
【実施例0026】
本願発明の具体例を以下に示す。以下の具体例は、本願発明を理解することを目的とするものであって、本願発明の範囲を具体例に限定することを意図するものではない。
【0027】
[試験例1]青葉アルコールとアルコールによる苦味の発現
アルコール飲料の苦味に対する、青葉アルコールとアルコールの影響を確認した。
【0028】
市販のニュートラルアルコールに純水を加え、アルコール度数を以下の表1に記載の含有量に調整した。ここに、青葉アルコール(シス-3-ヘキセン-1-オール(東京化成工業株式会社製))を以下の表1に記載の含有量となるように溶解させて、各サンプルを作成した。得られた各サンプルの苦味の強さについて、6名の訓練されたパネリストにより、以下の基準に基づいて官能試験による評価を行った。なお、官能試験を行う前に、純水(青葉アルコール無添加)と、60v/v%のアルコール水に青葉アルコールを15000ppb溶解させた溶液とを準備し、前者を1点、後者を6点とすることを6名の訓練されたパネリスト間で確認し、それらを基準として苦味の点数付けを行った。
<官能試験評価基準>
非常に感じる 6点
感じる 5点
やや感じる 4点
あまり感じない 3点
ほとんど感じない 2点
まったく感じない 1点
パネリスト6名の評価点から平均点を算出し、平均点に応じて以下の5段階の評価とした。
平均点 1以上2未満 「-」
平均点 2以上3未満 「±」
平均点 3以上4未満 「+」
平均点 4以上5未満 「++」
平均点 5以上 「+++」
【0029】
【0030】
表1の結果より、次のことが確認できた。アルコールを含有しないサンプルでは、青葉アルコールが存在しても、苦味は感じられない、または実質的に苦味は感じられなかった。アルコールを含有するサンプルでは、青葉アルコールが存在すると、苦味が感じられるようになった。サンプルのアルコール度数と青葉アルコール濃度が高い程、苦味が強く感じられる傾向が示された。この結果から、アルコールと青葉アルコールが相まって、アルコール飲料に苦味が発生することが判明した。
【0031】
[実施例1]イソアミルアルコールによる苦味の抑制効果
市販のニュートラルアルコールに純水を加え、アルコール度数を以下の表2に記載の含有量に調整した。ここに、青葉アルコールを10000ppbとなるように溶解させ、そして、イソアミルアルコール(富士フイルム和光純薬株式会社)を100ppm、500ppm、1000ppm、または3000ppmとなるように溶解させて、各サンプルを作成した。得られた各サンプルの苦味の強さについて、6名の訓練されたパネリストが、試験例1に示した基準に基づいて官能で評価した。
【0032】
【0033】
表2の結果より、イソアミルアルコールを含有させることにより、苦味が抑制できたことが示された。イソアミルアルコールは試験したいずれの濃度で、同等の苦味抑制効果を示した。
【0034】
[実施例2]γ-ノナノラクトンによる効果
市販のニュートラルアルコールに純水を加え、アルコール度数を以下の表3に記載の含有量に調整した。ここに、青葉アルコール、イソアミルアルコール、γ―ノナノラクトンを表3に示す濃度にて溶解させて各サンプルを作成した。
【0035】
得られた各サンプルの苦味の強さについて、6名の訓練されたパネリストが、試験例1に示した基準に基づいて官能で評価した。
【0036】
また、得られたサンプルの飲料としての美味しさを、訓練されたパネリストが官能で評価した。美味しさの評価は、さわやかな香味が感じられるか、そして、不自然な香味や異味異臭がないか、といった観点から評価した。美味しさの評価が高い順に、6点から1点の点数をつけた。3点を合格ラインとすることを事前に確認した。
<美味しさの官能試験の評価基準>
感じない 1点
わずかに感じる 2点
やや感じる 3点
感じる 4点
よく感じる 5点
非常によく感じる 6点
パネリスト6名の評価点から平均点を算出し、平均点に応じて以下の5段階の評価とした。
平均点 1以上2未満 「-」
平均点 2以上3未満 「±」
平均点 3以上4未満 「+」
平均点 4以上5未満 「++」
平均点 5以上 「+++」。
【0037】
なお、苦味の抑制の評価が「+」以下であり、かつ美味しさの評価が「+」以上であれば合格とした。美味しさの評価が「++」以上であればより優れているとした。
【0038】
【0039】
表3の結果から、γ-ノナノラクトンを含有させることにより、苦味が抑制できたことが示された。γ-ノナノラクトン濃度が高くなると苦味の抑制効果が若干高くなる傾向にあったが、いずれの濃度でも苦味を抑制できた。少なくともγ-ノナノラクトンが100ppbの濃度で存在すれば、効果が得られることが理解できる。
【0040】
一方、γ-ノナノラクトンの濃度が高すぎると、飲料としての美味しさの評価が却って低くなる傾向が見られた。美味しさの側面から、γ-ノナノラクトンの濃度は2500ppb未満、または2000ppb以下に設定し得ることが示唆される。