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2025-99736レンズユニット、レンズユニットを備えた光学機器、及び撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099736
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】レンズユニット、レンズユニットを備えた光学機器、及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20250626BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
G02B7/02 B
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
G02B3/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216630
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】井上 聡
(72)【発明者】
【氏名】浦井 茂雄
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA01
2H044AA05
2H044AB10
2H044AJ01
(57)【要約】
【課題】使用環境の温度範囲が広い場合であっても、所望の光学性能が得られなくなる可能性を低減することができるレンズユニットを提供する。
【解決手段】
レンズユニットにおいて、第1レンズ光学面と、該第1レンズ光学面の外周に設けられる第1レンズ第1テーパ部と第1レンズ第2テーパ部と、を有する第1レンズ、及び、第1レンズ光学面に対向する第2レンズ光学面と、第1レンズ第1テーパ部と離間しかつ対向して第2レンズ光学面の外周に設けられる第2レンズ第1テーパ部と、第2レンズ光学面の外周に設けられて第1レンズ第2テーパ部と当接部にて当接する第2レンズ第2テーパ部と、を有する第2レンズ、を配することとする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レンズ光学面と、前記第1レンズ光学面の外周に設けられる第1レンズ第1テーパ部と第1レンズ第2テーパ部と、を有する第1レンズと、
前記第1レンズ光学面に対向する第2レンズ光学面と、前記第1レンズ第1テーパ部と離間しかつ対向して前記第2レンズ光学面の外周に設けられる第2レンズ第1テーパ部と、前記第2レンズ光学面の外周に設けられて前記第1レンズ第2テーパ部と当接部にて当接する第2レンズ第2テーパ部と、を有する第2レンズと、
を備えるレンズユニット。
【請求項2】
前記第1レンズ第1テーパ部の径は、前記第2レンズ第2テーパ部の径よりも大きく、
前記第1レンズの線膨張係数α1、前記第1レンズの前記第2レンズの側の面の頂点と前記当接部と間の光軸方向の距離h1、前記第2レンズの線膨張係数α2、前記第2レンズの前記第1レンズの側の面の頂点と前記当接部と間の光軸方向の距離h2、前記当接部の外径D、前記当接部を構成するテーパ面と光軸と垂直方向のなす角度をθとしたときに式
|(h2×α2-h1×α1)|≧|(h2×α2-h1×α1)-(α2-α1)×tanθ×D/2|
を満たす請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記第1レンズ第1テーパ部及び前記第2レンズ第1テーパ部と光軸と垂直方向のなす角は、前記第1レンズ第2テーパ部及び前記第2レンズ第2テーパ部と光軸と垂直方向のなす角度より大きい、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記第1レンズ第1テーパ部及び前記第2レンズ第1テーパ部と光軸と垂直方向のなす角が45度以上90度以下である、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記第1レンズ光学面と、前記第2レンズ光学面とは離間して配置される、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記第1レンズ及び前記第2レンズは、ガラスレンズである、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記第1レンズにおいて、前記第1レンズ光学面と、前記第1レンズ第1テーパ部と、前記第1レンズ第2テーパ部と、の少なくとも2つは連続して配置されており、
前記第2レンズにおいて、前記第2レンズ光学面と、前記第2レンズ第1テーパ部と、前記第2レンズ第2テーパ部と、の少なくとも2つは連続して配置されている、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記第1レンズ及び前記第2レンズを収容して、前記第2レンズ光学面が設けられる面と反対の面の外周部分に設けられる前記第2レンズの平面部と当接する突き当て部を有する保持部材と、
前記第1レンズ光学面が設けられる面と反対の前記第1レンズの面に対して当接して、前記突き当て部と共に前記第1レンズ及び前記第2レンズを挟持する押さえ部材と、をさらに備える、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記第1レンズ及び前記第2レンズを収容する円筒形状の保持部材をさらに備え、
前記第1レンズの外周面と前記第2レンズの外周面との少なくとも一方は、前記保持部材の内周面に当接する、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のレンズユニットを含む光学系と、
前記光学系を内包する筐体と、
を備える光学機器。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のレンズユニットを含む光学系と、
前記光学系を通過した光を受光する撮像素子と、
前記光学系及び前記撮像素子を内包する筐体と、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズユニット、レンズユニットを備えた光学機器、及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学機器や撮像装置にてレンズを使用する場合、保持部材にレンズを保持させてレンズユニットを構成し、レンズユニットごと光学機器や撮像装置内に取り付けて用いることがある。このようなレンズユニットでは、例えば保持部材にレンズを載置する保持穴を設け、この保持穴にレンズを載置して光軸方向の位置決めを行う。そして、例えば接着剤などによって、保持枠に対してレンズを固定している。その際に、光学機器や撮像装置の光学性能を悪化させないことを目的として、この位置固定について、高精度に位置決めする手法が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、レンズ外側にテーパ形状を設けた形態が開示されている。具体的には、レンズ外側にテーパ形状を設けたレンズ2つを互いのテーパ面が向き合うように配置し、テーパ面同士で当接させることで、レンズ組み立て時のレンズ位置決めを高精度化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-067474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光学機器や撮像装置を使用する環境温度の範囲が広いと、温度に応じてレンズに変形が生じる。このような場合、レンズ組み立て時に複数のレンズが高精度に位置決めされていたとしても、例えば環境温度の上限や下限、或いはその近傍において、膨張や収縮といったレンズの変形によって、所望の光学性能が得られなくなることが生じえる。
【0006】
本開示は、そのような背景に鑑みたものであって、使用環境の温度範囲が広い場合であっても、所望の光学性能を維持することができるレンズユニットを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の一態様に係るレンズユニットは、
第1レンズ光学面と、前記第1レンズ光学面の外周に設けられる第1レンズ第1テーパ部と第1レンズ第2テーパ部と、を有する第1レンズと、
前記第1レンズ光学面に対向する第2レンズ光学面と、前記第1レンズ第1テーパ部と離間しかつ対向して前記第2レンズ光学面の外周に設けられる第2レンズ第1テーパ部と、前記第2レンズ光学面の外周に設けられて前記第1レンズ第2テーパ部と当接部にて当接する第2レンズ第2テーパ部と、を有する第2レンズと、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、使用環境の温度範囲が広い場合であっても、所望の光学性能を維持することができるレンズユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係るレンズユニットの平面図である。
図2図1に示すレンズユニットのA-A断面図である。
図3図2に示すレンズユニットの分解断面図である。
図4図1に示す第1レンズと第2レンズとの断面図であって個々のレンズテーパ部の関係を説明する図である。
図5】レンズユニットの変形例を示す断面図である。
図6】レンズユニットの製造方法の一態様を示すフローチャートである。
図7】本開示に係るレンズユニットを搭載した光学機器或いは撮像装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための例示的な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明される寸法、材料、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本開示が適用される装置の構成は様々な条件に応じて変更できる。また、同一であるか又は機能的に類似している要素を示す場合には、図面間で同じ参照符号を用いる。
【0011】
なお、本開示に係るレンズユニットは、例えば、屋外等で使用される監視カメラや、車載カメラ、等の、マイナス数十度の低温から、100度前後の高温までの温度範囲での使用が想定される。そして、以下の説明では、該レンズユニットの光軸に沿った方向を光軸方向とし、該光軸と直交する面に沿った方向を水平方向として便宜上定義する。
【0012】
本開示に係るレンズユニットは、第1レンズと第2レンズとを備え、各レンズの外周部にテーパ形状の当接部とテーパ形状の位置規制部とを設けている。そして、位置規制部の空隙によってレンズ間の位置を規定し、当接するテーパ部によって光軸方向の熱変形による位置精度悪化を減少させている。
【0013】
<第1実施形態>
以下、図1乃至5を参照して、本開示の第1実施形態について説明する。図1は本開示の第1実施形態に係るレンズユニット1の平面図を示し、図2は、図1のレンズユニット1のA-A断面の概略構成を示している。また、図3は、図2のレンズユニットの分解断面図であり、図4は、第1レンズ11と第2レンズ12との断面図であって個々のレンズテーパ部の関係を説明する図である。
【0014】
本実施形態に係るレンズユニット1は、第1レンズ11と、第2レンズ12と、押さえ部材13と、保持部材14と、を備える。本実施形態では、押さえ部材13は、リング形状を有する。保持部材14は、円筒形状を有しており、円筒形状の一方の端部側の内側に突き出した保持部材突き当て部141を有する。両レンズは、第2レンズ12及び第1レンズ11の順で、円筒形状の内部に対して第2レンズ12が保持部材突き当て部141に当接するまで挿入される。そして、円筒形状の内側に、第1レンズ11の後から押さえ部材13を挿入して、これらレンズを保持部材突き当て部141と押さえ部材13とにより挟持することで、保持部材14中にこれらレンズを固定している。
【0015】
監視カメラや車載カメラに搭載させるため、レンズユニット1は、例えば-40度の低温環境から100度の高温環境に晒されることが想定される。ここで、第1レンズ11と第2レンズ12とは、各々の材料が異なるガラスレンズとして製造されることが多く、この場合各々のレンズの線膨張係数も異なる。環境温度が変化した場合、例えば後で詳述する第1レンズ及び第2レンズの形状において、熱膨張等によりレンズ面の光軸方向の位置関係が変化し得る。このような環境温度に起因した位置関係の変化は、例えば、温度25度の室温環境にてレンズ組み立て時に所定の光学性能を達成できていたとしても、-40度や100度の環境温度においては、当該光学性能が得られないことを生じさせ得る。
【0016】
本開示は、かかる観点から得られている。本実施形態のレンズユニット1は、-40度や100度の環境温度によって個々のレンズに熱膨張又は熱収縮が生ずる場合であっても、レンズ間隔の変化を抑制し、光学性能の悪化を低減する。次に、具体的な、レンズ間隔の変化の抑制方法について述べる。
【0017】
図3は、上述したレンズユニット1の分解断面図を示している。図3に示すように、第1レンズ11は、第1レンズ第2テーパ部112と、第1レンズ第1テーパ部113と、第1レンズ光学面115と、第1レンズ押さえ面117と、第1レンズ側面119と、を有する。第1レンズ光学面115は、第2レンズ12と対向する位置に配置される面であり、第1レンズ11の光学有効部を構成する。第1レンズ第2テーパ部112は、第2レンズ12が位置する側の面の第1レンズ光学面115の外周に設けられた円錐面形状からなる。第1レンズ第1テーパ部113は、第1レンズ光学面115の外周、かつ、第1レンズ第2テーパ部112の内周に設けられた面であり、円錐面形状を有するように構成されている。本実施形態においては、第1レンズ第1テーパ部113は、第1レンズ光学面115の外周において該第1レンズ光学面115から連続し、第1レンズ第2テーパ部112の内周において該第1レンズ第2テーパ部112に連続するように設けられている。しかし、第1レンズ光学面115の外周と第1レンズ第1テーパ部113との間には第1レンズ光学面115と曲率が異なる第1アール部が設けられ、連続していない態様とすることもできる。また、第1レンズ第1テーパ部113と第1レンズ第2テーパ部112との間には曲率を有する第2アール部が設けられて、連続していない態様とすることもできる。第1レンズ押さえ面117は、第2レンズ12とは反対側の面の外周に設けられ、押さえ部材13と当接する面とされる。第1レンズ側面119は、光軸に平行であって保持部材14の内周面と対向する面として構成されている。
【0018】
第2レンズ12は、第2レンズ第2テーパ部123と、第2レンズ第1テーパ部124と、第2レンズ光学面126と、保持部材接触面128と、第2レンズ側面130と、を有する。第2レンズ光学面126は、第1レンズ光学面115と対向するように配置される面であり、第2レンズ12の光学有効部を構成する。第2レンズ第2テーパ部123は、第1レンズ11が位置する側の面の第2レンズ光学面126の外周に設けられた円錐面形状からなる。第2レンズ第1テーパ部124は、第2レンズ光学面126の外周、かつ、第2レンズ第2テーパ部123の内周に設けられた面であり、円錐面形状を有するように構成されている。本実施形態においては、第2レンズ第1テーパ部124は、第2レンズ光学面126の外周において該第2レンズ光学面126と連続するように設けられている。しかし、第2レンズ光学面126の外周と第2レンズ第1テーパ部124との間には第2レンズ光学面126と曲率が異なる第3アール部が設けられ、連続していない態様とすることもできる。また、第2レンズ第1テーパ部124と第2レンズ第2テーパ部123との間には曲率を有する第4アール部が設けられて、連続していない態様とすることもできる。保持部材接触面128は、保持部材突き当て部141と当接する面とされる。第2レンズ側面130は、光軸に平行であって保持部材14の内周面と対向する面として構成されている。
【0019】
このとき、第1レンズ第2テーパ部112と第2レンズ第2テーパ部123は、各々の円錐面形状の少なくとも一部が当接可能となるように、各々の内径及び外径が決定される。また、第1レンズ第1テーパ部113の外径及び内径と、第2レンズ第1テーパ部124の外径及び内径とは、製造時の温度において当接しないように、各々の内径及び外径が決定される。より好ましくは、第1レンズ11と第2レンズ12の各々の線膨張係数の関係から、想定される最高もしくは最低環境温度にて第1レンズ第1テーパ部と第2レンズ第1テーパ部が当接するテーパ部の外径及び内径を規定する。また、上記では当接する第2テーパ部が第1テーパ部の外周に設けられているが、当接する第2テーパ部が第1テーパ部の内周に設けられていてもよい。
【0020】
製造時の温度において当接しない第1レンズ第1テーパ部113と第2レンズ第1テーパ部124により、環境温度の変化で発生する熱変形による第1レンズ11と第2レンズ12の径方向の位置変動を抑制できる。その結果、各々のレンズの熱膨張もしくは熱収縮が生じても、レンズユニット1において、所望の光学性能が得られなくなる可能性を低減することができる。
【0021】
次に第1レンズ11と第2レンズ12の当接部である第1レンズ第2テーパ部112と第2レンズ第2テーパ部123の当接位置とテーパ角度θ2の好適な形について図4を参照して説明する。図4(a)は第1レンズと第2レンズの熱変形に関する寸法及び物性を示した断面図であり、図4(b)は、第1レンズ11と第2レンズ12との接触部分の拡大断面図である。なお、以下の説明において、テーパ角度θ1及びθ2は、断面A-Aにおいて、水平方向とテーパ面とのなす角とする。
【0022】
まず、レンズの光軸方向の熱変形について説明する。環境温度の変化量ΔH、当接部から第1レンズの光学面までの光軸方向の投影距離h1、線膨張係数α1のとき、第1レンズ11の光軸方向の熱変形量はΔH×h1×α1である。第2レンズ12の光軸方向の熱変形量は、当接部から第2レンズ12の光学面までの光軸方向の投影距離h2、線膨張係数α2のとき、ΔH×h2×α2である。このとき、第1レンズ11の熱変形量と第2レンズ12の熱変形量の差分である、ΔH×(α1×h1-α2×h2)の量だけレンズ間の距離が変化する。
【0023】
ここで、レンズの径方向の熱変形及び光軸方向の熱変形への影響について説明する。当接部が平面の場合、レンズ光軸から当接位置までの距離をD/2としたとき、径方向のレンズ位置の変化量はΔH×(α2-α1)×D/2となる。なお、ここでDは、図4(a)に示すように、第1レンズ11の第1レンズ第2テーパ部112と第2レンズ12の第2レンズ第2テーパ部123との当接部の径を示す。第1レンズ第2テーパ部112と第2レンズ第2テーパ部123とは、互いに円錐面形状であることから、理想的には面接触するが、例えば面精度等の影響で実際には点接触或いは一部面接触となる。本実施形態では、便宜上、互いのテーパ部は面接触していることとし、接触面の中心を当接部として規定する。また、当接部に関する径をDとするが、当接部はこれに限られず、第1レンズ第2テーパ部112と第2レンズ第2テーパ部123とが実際に当接する部分とすることができる。本開示における互いのレンズが当接する部分をテーパ形状にした場合、径方向の熱変形によって第1レンズ第2テーパ部112と第2レンズ第2テーパ部123との間で滑りが生じる。これにより、光軸方向の第1レンズ11と第2レンズ12の位置関係を変えることができる。第1レンズ第2テーパ部112と第2レンズ第2テーパ部123の水平方向となす角度をθ2としたとき、光軸の位置関係の変化量はΔH×(α2-α1)×tanθ2×D/2となる。そこで、前記第1レンズ11の熱変形量と第2レンズ12の熱変形量の差分である、ΔH×(α1×h1-α2×h2)が小さくなるように、テーパ面の角度及び当接位置は第1レンズ11と第2レンズ12の各々の線膨張係数から決定される。
【0024】
具体的には下の式(1)によりテーパ面の角度及び当接位置を決める。最良の形態は第1レンズと第2レンズの光軸方向の熱変形差ΔH×(h2×α2-h1×α1)とΔH×(α2-α1)×tanθ2×D/2とから求められる変化量を等しくし、これらを相殺するテーパ面の角度及び当接位置とするとよい。
|(h2×α2-h1×α1)|≧|(h2×α2-h1×α1)-(α2-α1)×tanθ2×D/2|・・・・式(1)
【0025】
このとき、α1>α2且つα1×h1>α2×h2の場合とα1<α2且つα1×h1<α2×h2の場合は、図4(a)のような、外周が第2レンズに向かうテーパ形状とするとよい。また、α1>α2且つα1×h1<α2×h2の場合とα1<α2且つα1×h1>α2×h2の場合は、図5のような、外周が第1レンズに向かうテーパ形状にすることで、光軸方向の熱変形方向が一致し、レンズ間の位置悪化を低減することができる。
【0026】
図5は、α1>α2且つα1×h1<α2×h2の場合とα1<α2且つα1×h1>α2×h2の条件に対応するように構成される、本実施形態にかかるレンズユニットの変形例を示す。なお、図3等を参照して説明したレンズユニット1における構成と同一の構成に関しては、同じ参照符号を用いてここでの説明を省略する。変形例として示されるレンズユニット5は、第1レンズ51と、第2レンズ52と、を備える。第1レンズ51の一面には、略中心に設けられる第1レンズ光学面515から順に、第1レンズ第1テーパ部513、第1レンズ平面部511、第1レンズ第2テーパ部512が設けられる。また、第2レンズ52の一面には、略中心に設けられる第2レンズ光学面526から順に、第2レンズ第1テーパ部524、第1レンズ平面部522、第1レンズ第2テーパ部523が設けられる。第1レンズ51及び第2レンズ52は、第1レンズ光学面515と第2レンズ光学面526とが対向するように配置される。本変形例は、各レンズにおける光学面に対する第1テーパ部と第2テーパ部との配置が上述した実施形態とは異なる。しかし、当該配置においても、上記条件を満たせば同じ効果が得られる。
【0027】
次に、第1レンズ第2テーパ部112と、第1レンズ第1テーパ部113、第2レンズ第2テーパ部123と、第2レンズ第1テーパ部124の好適なテーパ角度について図4(b)を参照して説明する。なお、以下で述べるテーパ角度(θ1,θ2)は、各テーパ部と水平方向とのなす角度とする。
【0028】
第1レンズ第1テーパ部113と第2レンズ第1テーパ部124は、環境温度の変化により第1レンズ11と第2レンズ12の径方向の熱変形が発生した際に、製造時の温度での隙間量以上に互いのレンズの径方向の位置関係の変化を防ぐ機能が求められる。つまり径方向の負荷を多く受ける形状が好ましい。そのため、第1レンズ第1テーパ部113と第2レンズ第1テーパ部124との水平方向のなす角度であるテーパ角度θ1は、45度以上90度以下の範囲とすることが好ましい。また、互いのテーパ部が接触直前まで間隔を維持する必要上、各々のテーパ角度は等しくされることが好ましい。
【0029】
以上により、第1レンズ第1テーパ部113と第2レンズ第1テーパ部124の角度θ1は等しく、且つレンズの位置規制の観点から水平方向のなす角度を45度以上90度以下の範囲とすることが好ましい。そして、第1レンズ第2テーパ部112と第2レンズ第2テーパ部123の角度θ2は、これらテーパ部が面接触可能となるように、互いに等しいことが好ましい。また、第1テーパ部の角度と第2テーパ部角度は上記観点の違いより、θ2よりもθ1の角度が大きいことが好ましい。各々のテーパ角度がこの条件を満たすことで、各々のレンズの熱膨張もしくは熱収縮が生じても、所望の光学性能が得られなくなる可能性を低減したレンズユニット1が容易に製造できる。
【0030】
次に、本開示の一態様に係るレンズユニット1の組立について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
まず、ステップS601において、レンズユニット1に求められる光学条件に基づいて、第1レンズ11の材料と、第2レンズ12の材料と、各々の光学面の形状とを決定する。次に、ステップS602において、第1レンズ11の線膨張係数α1、第2レンズ12の線膨張係数α2及び第1レンズ11と第2レンズ12の光学面間距離に基づいて、第2テーパ部の角度θ2と当接位置を決定する。また、併せて、第1テーパ部の角度θ1も決定される。これにより、第1レンズ11の各寸法と第2レンズ12の各寸法が決定され、これらレンズが製造される。
【0032】
次に、ステップS603において、保持部材14に対して第2レンズ12を挿入する。この操作は、ステップS604において、第2のレンズの保持部材接触面128と保持部材突き当て部141とを当接させることで終了される。第2のレンズの保持部材接触面128は、第2レンズ12の第2レンズ光学面126が設けられる面とは反対の面の外周部分に設けられ、平面部を構成する。なお、このとき、第2レンズの第2レンズ側面130は保持部材14に接触していても、してなくても問題ない。
【0033】
次に、ステップS605において、保持部材14に対して第1レンズ11を挿入する。その際、保持部材14と第1レンズ11とに、挿入方向に対して垂直な平面内の方向(水平方向)に振動を与えながら挿入を行う。この操作は、ステップS606において、第1レンズ第2テーパ部112を第2レンズ第2テーパ部123に当接させることで終了する。
【0034】
上述したように第1レンズ11の挿入時に水平面内の振動を与えることにより、これらレンズの光軸の位置合わせが行われる。したがって、第1レンズ11の第1レンズ側面119と、第2レンズ12の第2レンズ側面130のいずれか一方が保持部材14の内周に固定されていれば、他方のレンズも、保持部材14に対して所望の位置に配置されることとなる。また、使用時の想定温度と製造時基準温度との高低の関係に応じて、第1レンズ側面119と第2レンズ側面130とのいずれかが保持部材14に当接するかを決めることで、当接しないレンズの熱変形に対する当接面からの拘束を無くすることができる。なお、以上のように、これらレンズは一方のみが保持部材14の内部に当接するようにすることで各々のレンズの光軸方向の位置合わせが容易となる。しかし、例えば想定温度が製造時基準温度とそれほど差がない、或いは保持部材14が比較的変形容易である等、保持部材14によるレンズ外径への拘束がそれほど問題とならない場合には、両レンズが保持部材14の内部と当接してもよい。
【0035】
最後に、ステップS607において、保持部材14に対して押さえ部材13を挿入する。そして、ステップS608において、第1レンズ押さえ面117に押さえ部材13を当接させて、該押さえ部材13を保持部材14に対して固定する。例えば、以上の工程を経ることによって、本開示に係るレンズユニットを製造することができる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、押さえ部材13は、例えば、カシメリングのような円筒部品で示しているが、その態様は実施形態の形状に限られない。例えば、押さえ部材13として、複数のつめやねじのような部品を用いることもできる。また、上述した製造方法は一例であり、ステップS602の第2テーパ部の角度と当接位置の決定方法以外の工程は、公知の提供可能な種々の方法により代替することができる。
【0037】
また、本開示の効果を得るためには、両レンズが環境温度に応じて個別に熱膨張或いは熱収縮することが好ましく、よって第1レンズ11の第1レンズ光学面115と第2レンズ12の第2レンズ光学面126は離間していることが好ましい。
【0038】
<第1実施形態の適用例>
上述した第1実施形態に係るレンズユニット1を搭載した撮像装置について、その一例である車載カメラについて、図面を参照して次に説明する。図7は、本開示に係る車載カメラの概略構成を示す図であり、図7(a)は外観斜視図を示し、図7(b)は構成要素の概略を示している。
【0039】
本開示に係る車載カメラ100は、複数のレンズを有する内部の光学系102、光学系を通過した光を受光する撮像素子103、及びこれら構成等を内包し、第1実施形態として述べたレンズユニット1が適用される筐体101を備える。車載カメラ100は、例えば夏に屋外にて直射日光にさらされる自動車に搭載され、数十度の温度環境下に置かれる場合が想定される。第1実施形態に係るレンズユニット1を用いることにより、該レンズユニット1において、このような環境下であっても、所望の光学性能が得られなくなる可能性を低減することが可能となる。撮像素子103は、例えば、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。イメージセンサは、光学系102を介して入射した光を電気信号に変換する機能を有する。
【0040】
以上に述べたように、本開示に係るレンズユニット1は、少なくとも第1レンズ11と第2レンズ12とを備える。第1レンズ11は、例えば、第1レンズ光学面115と、該第1レンズ光学面115の外周に設けられる第1レンズ第1テーパ部113と、第1レンズ光学面115の外周に設けられた第1レンズ第2テーパ部112と、を有する。第2レンズ12は、例えば、第1レンズ光学面115と対向する第2レンズ光学面126と、第1レンズ第1テーパ部113と対向して第2レンズ光学面126の外周に設けられる第2レンズ第1テーパ部124と、を有する。第2レンズ12は、さらに第2レンズ光学面126の外周に設けられて第1レンズ第2テーパ部112と当接部において当接するように配置される第2レンズ第2テーパ部123を有する。なお、第1レンズ第2テーパ部112と第2レンズ第2テーパ部123とは、互いに同じテーパ角度(θ2、テーパ面と光軸と垂直な方向とのなす角)を有し、互いの円錐面において当接するように配置される。当接部分は、理想的には当接面となるが熱変形等に鑑みて変形の基準となる部分を規定するために、例えば当接面の(図4(b)のテーパ部112,123の接触部分)の中央部分を当接部とすることができる。そして、レンズユニット1に求められる光学条件に基づいて、第1レンズ11の材料と、第2レンズ12の材料と、各々の光学面の形状とが選択される。この選択は熱変形時の第1レンズ11と第2レンズ12の光軸方向の面間距離の変化が小さくなるように行われる。
【0041】
また、この時、温度25℃の環境において、第1レンズ第1テーパ部113の外周端と第2レンズ第1テーパ部124の外周端との距離は所定距離だけ離間して設定される。より詳細には、第2テーパ部の角度θ2及び当接位置は式(1)に示すようにα1とα2とDによって定められる。なお、上述した実施形態では製造時基準温度25度を基準温度として説明しているが、基準とする温度はこれに限られない。例えば、レンズユニットの車載カメラへの搭載を考えた場合、該車載カメラの使用環境の平均温度を基準温度としてもよい。また、想定温度として、実施形態では温度100度を採用しているが、想定温度の上限は温度100度に限られない。例えば、実際に屋外で測定された車載カメラの温度の最高値に対して安全係数をかけることで設定してもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、想定温度の下限として温度-40度である場合を採用している。しかし、例えば、実際に屋外で測定された車載カメラの温度の最低値に対して安全係数をかけることで設定されてもよい。
【0043】
ここで、第1レンズ第1テーパ部113及び前記第2レンズ第1テーパ部124と光軸と垂直方向のなす角は、第1レンズ第2テーパ部112及び第2レンズ第2テーパ部123と光軸と垂直方向のなす角度より大きいことが好ましい。また、第1レンズ11の第1レンズ第1テーパ部113及び第2レンズ12の第2レンズ第1テーパ部124と光軸と垂直な方向とがなす角度は、レンズユニット1のレンズ位置規制の観点より、45度以上90度以下であることが好ましい。
【0044】
なお、上述したように、本開示に係るレンズユニット1は、第1レンズ11及び第2レンズ12を収容する保持部材14も備える。保持部材14は、第2レンズ第2テーパ部123が形成される面とは反対の面に設けられる保持部材接触面128と当接する保持部材突き当て部141を有することができる。保持部材突き当て部141は、円筒形状を有する保持部材14の内周面から内部に張り出すように設けられることができる。また、レンズユニット1は、第1レンズ第2テーパ部112が設けられる面とは反対側に設けられる面(117)に対して当接して、保持部材突き当て部141と共に第1レンズ11及び第2レンズ12を挟持する押さえ部材13もさらに備える。そして、第1レンズ11の外周面(側面119)と第2レンズ12の外周面(側面130)との少なくとも一方は、或いは両方は、保持部材14の内周面に当接させることができる。また、図示した実施形態では、第1レンズ光学面115と、第2レンズ光学面126とは離間している。
【0045】
また、本開示は、上述したレンズユニットを製造する方法として構築されることもできる。該方法は、第2レンズ12を保持部材14に挿入することと、第1レンズ11を保持部材14に挿入し、その際に第1レンズ第2テーパ部112が第2レンズ第2テーパ部123に当接部にて当接するまで挿入を続けることと、を含む。そして、該方法はさらに、保持部材14に押さえ部材13を挿入してこれらレンズを保持部材14に対して固定することと、を含む。また、押さえ部材13は、レンズの固定に際し、第1レンズ11の第1レンズ第2テーパ部112が設けられる面とは反対の面である、第1レンズ押さえ面117から第1レンズ11の挿入方向に、第1レンズ11を押圧固定する。ここで、第1レンズ第1テーパ部113と、第2レンズ第1テーパ部124は離間させる。そして、第2テーパ部の角度θ2及び当接位置を式(1)に基づいて決定する。
【0046】
以上のようなレンズユニット1、或いは製造方法により得られたレンズユニット1を用いることにより、該レンズユニット1において、例えば車載カメラにおける使用環境下であっても、所望の光学性能が得られなくなる可能性を低減することが可能となる。なお、本開示はレンズユニット1を車載カメラに適用した例を示した。しかし、本開示に係るレンズユニット1は、車載カメラ以外の撮像装置であるコンパクトデジタルカメラ、一眼レフデジタルカメラ、ミラーレスデジタルカメラ、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器にも適用可能である。また光学機器としては、双眼鏡、顕微鏡、望遠鏡などにも適用可能である。これら光学機器は、上述したレンズユニット1を含む光学系と、該光学系を内包する筐体とから構成される。
【0047】
<実施例>
以下、本開示を具体化した実施例、及び該実施例に対する比較例を参照して、本開示の効果について説明する。なお、以下の実施例は、本開示の一例であって、本開示は下記実施例に限定されるものではない。
【0048】
また、光軸方向における各レンズの位置変動については、KEYENCE製マルチカラーレーザ同軸変位計CL-3000シリーズのCL-P015及びCL-P070をレンズユニット1の上下に配置して計測した。
【0049】
[実施例1]
本実施例において、第1レンズには、M-TAFD305(HOYA製:線膨張係数α1=60×10-7/℃)を用いた。また、レンズ形状は、外径φ36.6mm、中心厚6.8mm、コバ厚1.7mmの凸メニスカスレンズとした。第2レンズには、M-PCD55AR(HOYA製:線膨張係数α2=92×10-7/℃)を用いた。レンズ形状は、外径φ36.6mm、全高8.0mm、中心厚1.8mm、コバ厚2.8mm、の凹メニスカスレンズとした。
【0050】
このとき、式(1)を用いて熱変形による変形量が小さくなるように、各レンズの寸法を決定した。具体的には、当接部外径Dをφ30mm、当接部から第1レンズ光学面までの光軸方向の投影距離h1を12mm、当接部から第2レンズ光学面までの光軸方向の投影距離h2を11mm、第2テーパ部の角度θ2を31度とした。また、第1レンズ第1テーパ部の外径をφ27.005mm、第2レンズ第1テーパ部の外径をφ27.000とし、テーパ角度θ1は60度とした。
【0051】
次に、室内温度25度の場所にて、第2レンズ及び第1レンズの順に、これらを保持部材に挿入した。このとき、光軸方向から力を加えることで、第1及び第2レンズの第1テーパ部が呼び込みとなってこれらレンズが保持部材に挿入された。第1レンズの挿入後に、第1レンズの上方から第1レンズ第2テーパ部及び第2レンズ第2テーパ部を観察すると、干渉縞ができていることが確認できた。なお、この干渉縞が形成されることにより、第1レンズ第2テーパ部及び第2レンズ第2テーパ部が互いの面同士で当接していることが確認される。
【0052】
最後に、第1レンズ11の上方からカシメリング(押さえ部材13)を用いて第1レンズ11を押さえ、レンズユニット1を組み立てた。その後、KEYENCE製マルチカラーレーザ同軸変位計CL-3000シリーズCL-P015をレンズユニットの上下に配置して、レンズの位置関係を計測した。このとき、水平方向の位置はレンズ中心に近づけるために、第1レンズ11は頂点、第2レンズ12は底面に合わせ、測定したところ、レンズユニット1の中心部の全高は10.360mmであった。
【0053】
次に、ヒータを用いて、レンズユニット1全体を温度100度まで加熱して、再度同じ手法により測定したところ、レンズユニット1の中心部の全高は10.368mmであった。レンズユニット1の形態と線膨張係数から計算される、レンズユニット1の中心部の全高の変動値は8.5μmであるので、第1レンズ11と第2レンズ12との間の距離変動が1μm以下と良好であることが確認できた。
【0054】
[比較例1]
次に、比較例して、以下の条件によりレンズユニット1を作成し、実施例1と同様の測定を行った。その詳細について以下に述べる。
【0055】
本比較例では、実施例1と同様に、第1レンズ11には、M-TAFD305(HOYA製:線膨張係数α1=60×10-7/℃)を用いた。また、レンズ形状は、外径φ36.6mm、中心厚6.8mm、コバ厚1.7mmの凸メニスカスレンズとした。第2レンズ12には、M-PCD55AR(HOYA製:線膨張係数α2=92×10-7/℃)を用いた。レンズ形状は、外径φ36.6mm、全高8.0mm、中心厚1.8mm、コバ厚2.8mm、の凹メニスカスレンズとした。
【0056】
このとき、実施例1では第2テーパ部にあたる、当接部をテーパではなく平坦面とした。第1テーパ部については、実施例1と同様に第1レンズの第1テーパ部の外径をφ27.005mm、第2レンズの第1テーパ部の外径をφ27.000mmとし、テーパ角度θ1は60度とした。
【0057】
次に、室内温度25度の場所にて、第2レンズ及び第1レンズの順に、これらを保持部材に挿入した。このとき、光軸方向から力を加えることで、第1、第2レンズの第1テーパ部が呼び込みとなってこれらレンズが保持部材に挿入された。第1レンズの挿入後に、第1レンズの上方から当接部である、第1レンズ及び第2レンズの平坦面を観察すると、干渉縞ができていることが確認できた。
【0058】
最後に、第1レンズ11の上方からカシメリング(押さえ部材13)を用いて第1レンズ11を押さえ、レンズユニット1を組み立てた。その後、KEYENCE製マルチカラーレーザ同軸変位計CL-3000シリーズCL-P015をレンズユニットの上下に配置して、レンズの位置関係を計測した。このとき、水平方向の位置はレンズ中心に近づけるために、第1レンズ11は頂点、第2レンズ12は底面に合わせ、測定したところ、レンズユニット1の中心部の全高は10.453mmであった。
【0059】
次に、ヒータを用いて、レンズユニット1全体を温度100度まで加熱して、再度同じ手法により測定したところ、レンズユニット1の中心部の全高は10.464mmであった。レンズユニット1の形態と線膨張係数から計算される、レンズユニット1の中心部の全高の変動値は8.5μmであるので、第1レンズ11と第2レンズ12との間の距離変動が2μm以上となった。
【0060】
なお、本開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
第1レンズ光学面と、前記第1レンズ光学面の外周に設けられる第1レンズ第1テーパ部と第1レンズ第2テーパ部と、を有する第1レンズと、
前記第1レンズ光学面に対向する第2レンズ光学面と、前記第1レンズ第1テーパ部と離間しかつ対向して前記第2レンズ光学面の外周に設けられる第2レンズ第1テーパ部と、前記第2レンズ光学面の外周に設けられて前記第1レンズ第2テーパ部と当接部にて当接する第2レンズ第2テーパ部と、を有する第2レンズと、
を備えるレンズユニット。
(構成2)
前記第1レンズ第1テーパ部の径は、前記第2レンズ第2テーパ部の径よりも大きく、
前記第1レンズの線膨張係数α1、前記第1レンズの前記第2レンズの側の面の頂点と前記当接部と間の光軸方向の距離h1、前記第2レンズの線膨張係数α2、前記第2レンズの前記第1レンズの側の面の頂点と前記当接部と間の光軸方向の距離h2、前記当接部の外径D、前記当接部を構成するテーパ面と光軸と垂直方向のなす角度をθとしたときに式
|(h2×α2-h1×α1)|≧|(h2×α2-h1×α1)-(α2-α1)×tanθ×D/2|
を満たす構成1に記載のレンズユニット。
(構成3)
前記第1レンズ第1テーパ部及び前記第2レンズ第1テーパ部と光軸と垂直方向のなす角は、前記第1レンズ第2テーパ部及び前記第2レンズ第2テーパ部と光軸と垂直方向のなす角度より大きい、構成1又は2に記載のレンズユニット。
(構成4)
前記第1レンズ第1テーパ部及び前記第2レンズ第1テーパ部と光軸と垂直方向のなす角が45度以上90度以下である、構成1乃至3のいずれかに記載のレンズユニット。
(構成5)
前記第1レンズ光学面と、前記第2レンズ光学面とは離間して配置される、構成1乃至4のいずれかに記載のレンズユニット。
(構成6)
前記第1レンズ及び前記第2レンズは、ガラスレンズである、構成1乃至5のいずれかに記載のレンズユニット。
(構成7)
前記第1レンズにおいて、前記第1レンズ光学面と、前記第1レンズ第1テーパ部と、前記第1レンズ第2テーパ部と、の少なくとも2つは連続して配置されており、
前記第2レンズにおいて、前記第2レンズ光学面と、前記第2レンズ第1テーパ部と、前記第2レンズ第2テーパ部と、の少なくとも2つは連続して配置されている、構成1乃至6のいずれかに記載のレンズユニット。
(構成8)
前記第1レンズ及び前記第2レンズを収容して、前記第2レンズ光学面が設けられる面と反対の面の外周部分に設けられる前記第2レンズの平面部と当接する突き当て部を有する保持部材と、
前記第1レンズ光学面が設けられる面と反対の前記第1レンズの面に対して当接して、前記突き当て部と共に前記第1レンズ及び前記第2レンズを挟持する押さえ部材と、をさらに備える、構成1乃至7のいずれかに記載のレンズユニット。
(構成9)
前記第1レンズ及び前記第2レンズを収容する円筒形状の保持部材をさらに備え、
前記第1レンズの外周面と前記第2レンズの外周面との少なくとも一方は、前記保持部材の内周面に当接する、構成1乃至8のいずれかに記載のレンズユニット。
(構成10)
構成1乃至9のいずれかに記載のレンズユニットを含む光学系と、
前記光学系を内包する筐体と、
を備える光学機器。
(構成11)
構成1乃至9のいずれかに記載のレンズユニットを含む光学系と、
前記光学系を通過した光を受光する撮像素子と、
前記光学系及び前記撮像素子を内包する筐体と、
を備える撮像装置。
【0061】
以上、実施形態及び実施例を参照して本開示について説明したが、本開示はこれら実施形態等に限定されるものではない。本開示の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本開示と均等な発明も本開示に含まれる。また、上述の実施形態、変形例、及び実施例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・レンズユニット
11・・・第1レンズ
12・・・第2レンズ
13・・・押さえ部材
14・・・保持部材
112・・・第1レンズ第2テーパ部
113・・・第1レンズ第1テーパ部
115・・・第1レンズ光学面
117・・・第1のレンズの押さえ面
119・・・第1レンズ側面
123・・・第2レンズ第2テーパ部
124・・・第2レンズ第1テーパ部
126・・・第2レンズ光学面
128・・・保持部材接触面
130・・・第2レンズ側面130
141・・・保持部材突き当て部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1レンズ第1テーパ部と、前記第1レンズ第1テーパ部の外側に連続して設けられる第1レンズ第2テーパ部と、を有する第1レンズと、
前記第1レンズに対向する第2レンズであって、前記第1レンズ第1テーパ部と離間しかつ対向して設けられる第2レンズ第1テーパ部と、前記第1レンズ第2テーパ部と当接部にて当接し、前記第2レンズ第1テーパ部の外側に連続して設けられる第2レンズ第2テーパ部と、を有する第2レンズと、
を備えるレンズユニット。
【請求項2】
前記第1レンズ第1テーパ部と前記第1レンズ第2テーパ部と前記第2レンズ第1テーパ部と前記第2レンズ第2テーパ部とは、いずれも光軸と垂直方向のなす角が90度以下である、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記第1レンズ第1テーパ部と光軸とのなす角は、前記第1レンズ第2テーパ部と光軸とのなす角より、大きい、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記第1レンズ第1テーパ部の径は、前記第2レンズ第2テーパ部の径よりも大きく、
前記第1レンズの線膨張係数α1、前記第1レンズの前記第2レンズの側の面の頂点と前記当接部と間の光軸方向の距離h1、前記第2レンズの線膨張係数α2、前記第2レンズの前記第1レンズの側の面の頂点と前記当接部と間の光軸方向の距離h2、前記当接部の外径D、前記当接部を構成するテーパ面と光軸と垂直方向のなす角度をθとしたときに式
|(h2×α2-h1×α1)|≧|(h2×α2-h1×α1)-(α2-α1)×tanθ×D/2|
を満たす請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記第1レンズ第1テーパ部及び前記第2レンズ第1テーパ部と光軸と垂直方向のなす角は、前記第1レンズ第2テーパ部及び前記第2レンズ第2テーパ部と光軸と垂直方向のなす角度より大きい、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記第1レンズ第1テーパ部及び前記第2レンズ第1テーパ部と光軸と垂直方向のなす角が45度以上90度以下である、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記第1レンズ光学面と、前記第2レンズ光学面とは離間して配置される、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記第1レンズ及び前記第2レンズは、ガラスレンズである、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記第1レンズにおいて、前記第1レンズ光学面と、前記第1レンズ第1テーパ部と、前記第1レンズ第2テーパ部と、の少なくとも2つは連続して配置されており、
前記第2レンズにおいて、前記第2レンズ光学面と、前記第2レンズ第1テーパ部と、前記第2レンズ第2テーパ部と、の少なくとも2つは連続して配置されている、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記第1レンズ及び前記第2レンズを収容して、前記第2レンズ光学面が設けられる面と反対の面の外周部分に設けられる前記第2レンズの平面部と当接する突き当て部を有する保持部材と、
前記第1レンズ光学面が設けられる面と反対の前記第1レンズの面に対して当接して、前記突き当て部と共に前記第1レンズ及び前記第2レンズを挟持する押さえ部材と、をさらに備える、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項11】
前記第1レンズ及び前記第2レンズを収容する円筒形状の保持部材をさらに備え、
前記第1レンズの外周面と前記第2レンズの外周面との少なくとも一方は、前記保持部材の内周面に当接する、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のレンズユニットを含む光学系と、
前記光学系を内包する筐体と、
を備える光学機器。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のレンズユニットを含む光学系と、
前記光学系を通過した光を受光する撮像素子と、
前記光学系及び前記撮像素子を内包する筐体と、
を備える撮像装置。