(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099744
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/54 20071001AFI20250626BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20250626BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20250626BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20250626BHJP
【FI】
B60K6/54
B60K6/485 ZHV
B60W10/10 900
B60W20/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216644
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 稜
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB12
3D202BB32
3D202CC22
3D202CC42
3D202DD18
3D202DD26
3D202DD32
3D202FF04
(57)【要約】
【課題】エンジンの再始動性を向上させるとともに、エンジンアシストを行える速度領域を拡大できるようにする。
【解決手段】エンジン1と、電動機2と、エンジン1のクランクシャフト1aに接続し、プーリ径を可変とするクランクプーリ4、電動機2の回転軸2aに接続し、プーリ径を可変とする電動機プーリ5、及びクランクプーリ4と電動機プーリ5とを接続するベルト6を具備する変速機構3と、を備えたハイブリッド車両の制御装置100であって、電動機2によってエンジン1を再始動するとき、電動機プーリ5のプーリ径に対するクランクプーリ4のプーリ径の比であるプーリ比をエンジン1の再始動が可能な所定の値にし、電動機2によってエンジン1の駆動をアシストするとき、エンジン1の回転数に応じて、プーリ比を所定の値よりも小さくするプーリ比変更手段103を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
電動機と、
前記エンジンのクランクシャフトに接続し、プーリ径を可変とするクランクプーリ、前記電動機の回転軸に接続し、プーリ径を可変とする電動機プーリ、及び前記クランクプーリと前記電動機プーリとを接続するベルトを具備する変速機構と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記電動機によって前記エンジンを再始動するとき、前記電動機プーリのプーリ径に対する前記クランクプーリのプーリ径の比であるプーリ比を前記エンジンの再始動が可能な所定の値にし、
前記電動機によって前記エンジンの駆動をアシストするとき、前記エンジンの回転数に応じて、前記プーリ比を前記所定の値よりも小さくするプーリ比変更手段を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記プーリ比変更手段は、前記エンジンの回転数及び前記プーリ比に基づいて算出される前記電動機の回転数が、前記電動機の許容回転数を超えないように、前記プーリ比を変更することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディーゼルエンジンに接続されたトランスミッションと駆動輪を駆動するデファレンシャルとを連結するプロペラシャフトと、モータージェネレーターの回転軸とを、無段変速機構を介して接続するハイブリッド車両が開示されている。モータージェネレーターによる回生発電を行うときは、モータージェネレーターの回転軸に取り付けられたプーリの直径を、プロペラシャフトに取り付けられたプーリの直径よりも小さくすることで、幅広い速度域で高効率な回生発電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、ハイブリッド車両において、回生発電の効率を改善することに着目したものであるが、エンジンの再始動やエンジンアシストのために電動機からエンジンに動力を伝達する構成については検討されておらず、改善の余地がある。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、エンジンの再始動性を向上させるとともに、エンジンアシストを行える速度領域を拡大できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、エンジンと、電動機と、前記エンジンのクランクシャフトに接続し、プーリ径を可変とするクランクプーリ、前記電動機の回転軸に接続し、プーリ径を可変とする電動機プーリ、及び前記クランクプーリと前記電動機プーリとを接続するベルトを具備する変速機構と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記電動機によって前記エンジンを再始動するとき、前記電動機プーリのプーリ径に対する前記クランクプーリのプーリ径の比であるプーリ比を前記エンジンの再始動が可能な所定の値にし、前記電動機によって前記エンジンの駆動をアシストするとき、前記エンジンの回転数に応じて、前記プーリ比を前記所定の値よりも小さくするプーリ比変更手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジンの再始動性を向上させるとともに、エンジンアシストを行える速度領域を拡大することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例に係るハイブリッド車両の要部の概略構成を示す図である。
【
図2】実施例に係るECUの機能構成を示す図である。
【
図3】実施例に係るECUが実行する処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置100は、エンジン1と、電動機2と、前記エンジン1のクランクシャフト1aに接続し、プーリ径を可変とするクランクプーリ4、前記電動機2の回転軸2aに接続し、プーリ径を可変とする電動機プーリ5、及び前記クランクプーリ4と前記電動機プーリ5とを接続するベルト6を具備する変速機構3と、を備えたハイブリッド車両の制御装置100であって、前記電動機2によって前記エンジン1を再始動するとき、前記電動機プーリ5のプーリ径に対する前記クランクプーリ4のプーリ径の比であるプーリ比を前記エンジン1の再始動が可能な所定の値にし、前記電動機2によって前記エンジン1の駆動をアシストするとき、前記エンジン1の回転数に応じて、前記プーリ比を前記所定の値よりも小さくするプーリ比変更手段103を備える。
これにより、エンジン1の再始動性を向上させるとともに、エンジンアシストを行える速度領域を拡大することが可能になる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明する。
図1に、実施例に係るハイブリッド車両である自動車の要部の概略構成を示す。
図1に示すように、自動車には、エンジン1と、ISG(Integrated Starter Generator)2と、エンジン1とISG2とを接続する変速機構3とが搭載される。
【0011】
エンジン1は、複数の気筒を有する内燃機関であり、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行い、動力を出力するように構成される。エンジン1によってクランクシャフト1aから出力される動力は、クラッチ7を介して変速機8で変速され、デファレンシャルギア9、ドライブシャフト10を経て駆動輪11に伝達されて、自動車の駆動に利用される。
【0012】
ISG2は、減速エネルギを利用して発電し、バッテリ12に充電する発電機として機能する。また、ISG2は、バッテリ12を電源として、アイドリングストップ時のエンジン1の再始動や、エンジン1の駆動をアシストするエンジンアシストのための電動機として機能する。
【0013】
変速機構3は、エンジン1のクランクシャフト1aに接続し、プーリ径を可変とするクランクプーリ4と、ISG2の回転軸2aに接続し、プーリ径を可変とするISGプーリ5と、クランクプーリ4とISGプーリ5とを接続するベルト6とを具備する。クランクプーリ4及びISGプーリ5はそれぞれV字型の溝を有し、溝幅を変化させることで、両プーリ4、5間に掛けられるリング状のベルト6の位置を移動させて、プーリ径を変えることができる。なお、本実施例では、ISG2が本発明でいう電動機の例であり、ISGプーリ5が本発明でいう電動機プーリに相当する。
【0014】
また、自動車には、各種機能を電子制御するECU(Electronic Control Unit)100が搭載される(
図2を参照)。ECU100は、エンジン制御を司り、燃料供給制御や点火時期制御を行う。このようにしたECU100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータ等を保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成される。
【0015】
本実施例では、ECU100が、本発明を適用したハイブリッド車両の制御装置として機能する。以下、本発明を適用したハイブリッド車両の制御装置としての機能を中心に説明する。
図2に、ECU100が本発明を適用したハイブリッド車両の制御装置として機能するための機能構成を示す。
ECU100は、アイドリングストップ制御部101と、アシスト制御部102と、プーリ比変更部103とを備える。また、ECU100には、各種情報、例えば、エンジン1の回転数、車速、バッテリ12の状態を表す情報等が入力される。
【0016】
アイドリングストップ制御部101は、アイドリングストップを制御する。アイドリングストップ制御部101は、例えば、減速中、車速が所定の速度以下になると、エンジン1を停止する。そして、アイドリングストップ制御部101は、ドライバがブレーキを離す等の操作を条件として、ISG2によってエンジン1を再始動する。
【0017】
アシスト制御部102は、エンジンアシストを制御する。アシスト制御部102は、例えば、車速、バッテリ12の状態、エンジン1の回転数等に応じて、ISG2によってエンジン1の駆動をアシストする。
【0018】
プーリ比変更部103は、ISGプーリ5のプーリ径に対するクランクプーリ4のプーリ径の比であるプーリ比を変更する。
プーリ比変更部103は、ISG2によってエンジン1を再始動するとき、プーリ比をエンジン1の再始動が可能な所定の値にする。所定の値は、ISG2からエンジン1の再制動に必要な始動トルクを伝達できるような、比較的大きいプーリ比である。
その一方で、プーリ比が大きいとき、エンジン1の回転数が高くなると、ISG2の回転数が高くなりやすい。エンジン1の回転数が高いときにエンジンアシストを行いたいとき、ISG2が高回転することから高出力(大電力)が必要となり、ISG2が対応できない可能性がある。そこで、プーリ比変更部103は、ISG2によってエンジン1の駆動をアシストするとき、エンジン1の回転数に応じて、プーリ比を所定の値よりも小さくする、換言すれば比較的小さいプーリ比にする。
【0019】
図3は、ECU100が実行する処理の例を示すフローチャートである。
ステップS1で、アイドリングストップ制御部101は、アイドリングストップの条件が成立したか否かを判定し、アイドリングストップの条件が成立すると、ステップS2に進む。アイドリングストップの条件は、例えば、減速中、車速が所定の速度以下になるといった条件である。
【0020】
ステップS2で、プーリ比変更部103は、クランクプーリ4のプーリ径を大きく、ISGプーリ5のプーリ径を小さくして、プーリ比をエンジン1の再始動が可能な所定の値にする。
【0021】
ステップS3で、アイドリングストップ制御部101は、アイドリングストップを実施し、エンジン1を停止する。
ステップS4で、アイドリングストップ制御部101は、ブレーキを離す等の操作を条件として、ISG2によってエンジン1を再始動する。ステップS2でプーリ比を所定の値にすることにより、エンジン1の再始動の際には、ISG2からエンジン1の再制動に必要な始動トルクを伝達できるような、比較的大きいプーリ比にすることができる。これにより、エンジン1の再始動性を向上させることができる。
【0022】
ステップS5で、アシスト制御部102は、例えば、車速、バッテリ12の状態、エンジン1の回転数等に応じて、ISG2によるアシストを実施する。
ステップS6で、アシスト制御部102は、アシスト状態で、かつ、エンジン1の回転数が所定の回転数に到達するまで待機し、エンジン1の回転数が所定の回転数以上になると、ステップS7に進む。エンジン1の回転数が所定の回転数に到達するまでは、プーリ比の変更を行わずにエンジンアシストを継続することになる。
【0023】
ステップS7で、プーリ比変更部103は、クランクプーリ4のプーリ径を小さく、ISGプーリ5のプーリ径を大きくして、プーリ比を所定の値よりも小さくする。
ステップS8で、アシスト制御部102は、エンジンアシストを継続する。ステップS7でプーリ比を所定の値よりも小さくすることにより、エンジン1がある程度回転しているときに、ISG2からエンジン1に動力(アシストトルク)を伝達する際には、高出力の回転域にも対応できるプーリ比にすることができる。これにより、エンジンアシストを行える速度領域を拡大することができる。
【0024】
ここで、ISGには、耐久性等の観点から動作保証できる範囲があり、その一つとして許容回転数がある。回転数が高いときにISGを動作させるほど、ISGに高負荷がかかるため、回転数の上限である許容回転数が設定される。そこで、プーリ比変更部103は、ステップS7でプーリ比を変更する際に、エンジン1の回転数及びプーリ比に基づいて算出されるISG2の回転数が、ISG2の許容回転数を超えないように、換言すればISG2の許容回転数に収まるように、プーリ比を変更する。これにより、エンジンアシストを行える速度領域を拡大しつつ、ISG2に高負荷がかかるのを避けることができる。
【0025】
以上述べたように、ISG2によってエンジン1を再始動するとき、プーリ比をエンジン1の再始動が可能な所定の値にし、ISG2によってエンジン1の駆動をアシストするとき、エンジン1の回転数に応じて、プーリ比を所定の値よりも小さくすることにより、エンジン1の再始動性を向上させるとともに、エンジンアシストを行える速度領域を拡大することが可能になる。
また、ISG2によってエンジン1を再始動するとき、プーリ比を比較的大きくすることにより、エンジン1の再始動時のNVH(音振)の低減、電力消費の削減にもつながる。一方、ISG2によってエンジン1の駆動をアシストするとき、プーリ比を比較的大きくすることにより、ISG2の回転低減によるファン音、電磁音の低減にもつながる。
【0026】
なお、ISG2によってエンジン1の駆動をアシストするとき、プーリ比を所定の値よりも小さくするようにしたが、ISG2だけで走行する(電動機による単独走行)機能を有する場合、ISG2だけで走行するときにも、プーリ比を所定の値よりも小さくするようにしてもよい。
【0027】
以上、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明したが、各実施例は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、各実施例に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明を適用したハイブリッド車両の制御装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により構成され、CPUが例えばROMに記憶された所定のプログラムを実行することによって、各手段の機能が実現される。
1:エンジン、1a:クランクシャフト、2:ISG、2a:回転軸、3:変速機構、4:クランクプーリ、5:ISGプーリ、6:ベルト、100:ECU、101:アイドリングストップ制御部、102:アシスト制御部、103:プーリ比変更部