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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099865
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
B60C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216825
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇啓
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC01
3D131BC03
3D131GA01
3D131GA03
(57)【要約】
【課題】タイヤ回転時の空気抵抗を低減し、燃費性能を向上することを可能にしたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部1と一対のサイドウォール部2とを備えたタイヤにおいて、サイドウォール部2の外表面に複数の凹部10を形成し、複数の凹部10がそれぞれタイヤ周方向に並んで互いに連結された第一要素11および第二要素12を有し、第一要素11のタイヤ径方向の幅w1が第二要素12のタイヤ径方向の幅w2よりも広く、凹部10の表面形状がタイヤ周方向に長手方向を有するようにする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部とを備えたタイヤにおいて、
前記サイドウォール部の外表面に複数の凹部が形成され、前記複数の凹部はそれぞれタイヤ周方向に並んで互いに連結された第一要素および第二要素を有し、前記第一要素のタイヤ径方向の幅が前記第二要素のタイヤ径方向の幅よりも広く、前記凹部の表面形状はタイヤ周方向に長手方向を有することを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記第二要素のタイヤ径方向の幅w2が前記第一要素のタイヤ径方向の幅w1の50%未満であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第一要素の深さd1が前記第二要素の深さd2よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記複数の凹部がタイヤ最大幅位置よりも前記トレッド部側に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記複数の凹部がタイヤ周方向およびタイヤ径方向に配列され、タイヤ径方向に隣り合う一対の凹部の第一要素の間に別の凹部の第二要素が配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記複数の凹部が設けられた領域において、1cm四方の単位領域に含まれる前記複数の凹部の表面積の割合が60%~95%であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤサイドウォール部の外表面に複数の凹部が形成されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤ付近の空気の流れを変えることで車両の空気抵抗を低減し、それにより燃費性能を向上するために、サイドウォール部の外表面に多数の凹部(所謂「ディンプル」)を設けることが行われている(例えば、特許文献1を参照)。このような凹部は、タイヤ回転時に乱流を発生させて空気抵抗の増加を抑え、転がり抵抗を低減することにより、燃費性能を向上させることを意図している。しかしながら、従来の形状(円形、楕円形、多角形など)の凹部(ディンプル)では乱流を発生させる効果が必ずしも十分ではなく、凹部(ディンプル)による空気抵抗の低減および燃費性能の向上について更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015‐042536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、タイヤ回転時の空気抵抗を低減し、燃費性能を向上することを可能にしたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部とを備えたタイヤにおいて、前記サイドウォール部の外表面に複数の凹部が形成され、前記複数の凹部はそれぞれタイヤ周方向に並んで互いに連結された第一要素および第二要素を有し、前記第一要素のタイヤ径方向の幅が前記第二要素のタイヤ径方向の幅よりも広く、前記凹部の表面形状はタイヤ周方向に長手方向を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の発明者は、サイドウォール部の外表面に多数の凹部(ディンプル)を備えたタイヤについて鋭意研究した結果、タイヤ周方向に並んで互いに連結された第一要素および第二要素を有し、第一要素のタイヤ径方向の幅が第二要素のタイヤ径方向の幅よりも広く、表面形状(第一要素および第二要素からなる全体)がタイヤ周方向に長手方向を有する形状の凹部が、タイヤ回転時に乱流を発生させるのに効果的であることを知見した。即ち、この形状の凹部においては、個々の凹部が幅の大きい部分(第一要素)と小さい部分(第二要素)を含むため大きさの異なる2種類の凹部として異なる車両速度で乱流発生効果を発揮することができる。更に、この形状の凹部は、タイヤ周上の位置によって空気の流れ方向に対する長さ(車両進行方向に沿った長さ)が変わるため、この点でも大きさの異なる凹部として機能することとなり、異なる車両速度で乱流発生効果を発揮することができる。本発明は、上述の知見に基づくものであり、サイドウォール部の外表面に形成された複数の凹部がそれぞれ前述の第一要素および第二要素からなる形状を有するため、タイヤ回転時に効果的に乱流を発生させて空気抵抗の増加を抑え、転がり抵抗を低減して燃費性能を向上させることができる。
【0007】
本発明のタイヤにおいては、第二要素のタイヤ径方向の幅w2が第一要素のタイヤ径方向の幅w1の50%未満であることが好ましい。これにより第一要素と第二要素の大きさ(タイヤ径方向の幅)のバランスが良好になり、乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。
【0008】
本発明のタイヤにおいては、第一要素の深さd1が第二要素の深さd2よりも大きいことが好ましい。これにより第一要素と第二要素の大きさ(体積)のバランスが良好になり、乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。
【0009】
本発明のタイヤにおいては、複数の凹部がタイヤ最大幅位置よりもトレッド部側に配置されることが好ましい。当該位置は空気の流れの影響が大きい部位であるため、この部位に凹部を配置することで乱流を効率的に発生させることが可能になり、空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。
【0010】
本発明のタイヤにおいては、複数の凹部がタイヤ周方向およびタイヤ径方向に配列され、タイヤ径方向に隣り合う一対の凹部の第一要素の間に別の凹部の第二要素が配置されたことが好ましい。このような配置では、より多数の凹部を密集して配列させることができるため、乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。
【0011】
本発明のタイヤにおいては、複数の凹部が設けられた領域において、1cm四方の単位領域に含まれる複数の凹部の面積の割合が60%~95%であることが好ましい。これにより凹部を十分に密集して配置させることができるので、乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの子午線半断面図である。
図2】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの側面図である。
図3図2の凹部の形状を模式的に示す説明図である。
図4】凹部の別の実施形態を模式的に示す説明図である。
図5】凹部の別の実施形態を模式的に示す説明図である。
図6】凹部の別の実施形態を模式的に示す説明図である。
図7】1cm四方の単位領域と凹部について説明する説明図である。
図8】本発明の実施形態からなる凹部と従来例および比較例の凹部を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明の空気入りタイヤは、図1に示すように、路面に当接するトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。尚、図1は子午線半断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0015】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。カーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側には少なくとも1層のベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定されている。
【0016】
本発明は、サイドウォール部2に設けられた後述の凹部10(ディンプル)に関するものであるので、他の部位におけるタイヤの基本構造(断面構造)は上述の一般的な構造に限定されない。尚、本発明のタイヤは上記のような空気入りタイヤであることが好ましいが、サイドウォール部2に相当する側面(後述の凹部10を形成可能な部位)を備えていれば非空気式タイヤであってもよい。空気入りタイヤの場合は、その内部に空気、窒素等の不活性ガスまたはその他の気体を充填することができる。
【0017】
本発明では、図2に示すように、サイドウォール部2の外表面に複数の凹部10が設けられる。複数の凹部10はそれぞれ、図3(a)に拡大して示すように、タイヤ周方向に並んで互いに連結された第一要素11および第二要素12を有する。各凹部10において第一要素11のタイヤ径方向の幅w1は第二要素12のタイヤ径方向の幅w2よりも広く構成されている。また、凹部10の表面形状(第一要素11および第二要素12からなる全体の形状)はタイヤ周方向に長手方向を有する。例えば、図3(a)の凹部10は、略長方形状(長方形の頂点が円弧状に面取りされた形状)の第一要素11と、第一要素11よりもタイヤ径方向の幅が小さい長方形状の第二要素12とで構成されることで、前述の条件をすべて満たしている。
【0018】
このような凹部10は、従来の円形のディンプルと比較して、タイヤ回転時に乱流を発生させる効果に優れ、走行時のタイヤ周辺の空気抵抗の増加を抑え、転がり抵抗を低減して燃費性能を向上させることができる。具体的には、個々の凹部10が幅の大きい部分(第一要素11)と小さい部分(第二要素12)を含むため大きさの異なる2種類の凹部10として異なる車両速度で乱流発生効果を発揮することができる。更に、この形状の凹部10は、タイヤ周上の位置によって空気の流れ方向に対する長さ(車両進行方向に沿った長さ)が変わるため、この点でも大きさの異なる凹部10として機能することとなり、異なる車両速度で乱流発生効果を発揮することができる。その結果、タイヤ回転時に効果的に乱流を発生させて空気抵抗の増加を抑え、転がり抵抗を低減して燃費性能を向上させることができる。
【0019】
凹部10は、前述の第一要素11および第二要素12によって構成されていれば具体的な形状は特に限定されない。即ち、第一要素11および第二要素12の形状としてはそれぞれ円形、楕円形、多角形等の任意の形状を採用することができる。例えば図3(a)の形状は、前述のように略長方形状(長方形の頂点が円弧状に面取りされた形状)の第一要素11と、第一要素11よりもタイヤ径方向の幅が小さい長方形状の第二要素12とで構成されるが、この形状に限定されず後述の各種態様を採用することができる。尚、本発明では凹部10の表面形状が重要であり凹部10の断面形状は特に限定されない。凹部10(特に第一要素11)の断面形状は、その表面形状に拘わらずに、例えば図3(b)に示すような半円状であっても、図3(c)に示すような矩形状であってもよい(図3(b)~図3(c)は図3(a)のX-X矢視断面図である)。
【0020】
図3(a)の例の他に、例えば図4に示すように、円形状の第一要素11に楕円形状の第二要素12が連結した態様(図4(a))、円形状の第一要素11に三角形状の第二要素12が連結した態様(図4(b))、円形状の第一要素11に四角形状の第二要素12が連結した態様(図4(c)~(d))を例示することができる。また、楕円形状の第一要素11に円形状の第二要素12が連結した態様(図5(a))、楕円形状の第一要素11に三角形状の第二要素12が連結した態様(図5(b))、楕円形状の第一要素11に四角形状の第二要素12が連結した態様(図5(c)~(d))を例示することができる。或いは、四角形状の第一要素11に円形状の第二要素12が連結した態様(図6(a))、四角形状の第一要素11に楕円形状の第二要素12が連結した態様(図6(b))、四角形状の第一要素11に三角形状の第二要素12が連結した態様(図6(c))、四角形状の第一要素11に図3(a)の例とは異なる向きで四角形状(ひし形状)の第二要素12が連結した態様(図6(d))を例示することができる。これら様々な態様のいずれであっても、凹部10はそれぞれタイヤ周方向に並んで互いに連結された第一要素11および第二要素12を有し、第一要素11のタイヤ径方向の幅が第二要素12のタイヤ径方向の幅よりも広く、凹部10の表面形状はタイヤ周方向に長手方向を有するので、上述の本発明の効果を発揮することができる。
【0021】
前述のように第一要素11のタイヤ径方向の幅w1は第二要素12のタイヤ径方向の幅w2よりも広く構成されるが、その際に、第二要素12のタイヤ径方向の幅w2が第一要素11のタイヤ径方向の幅w1の好ましくは50%未満、より好ましくは35%未満、更に好ましくは25%以上35%未満であるとよい。これにより第一要素11と第二要素12の大きさ(タイヤ径方向の幅)のバランスが良好になり、乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。即ち、本発明の発明者の知見によれば、従来の円形のディンプルの場合、ディンプルの幅(直径)が大きいほど高速走行時に乱流を発生させる効果を発揮し、ディンプルの幅(直径)が小さいほど低速走行時に乱流を発生させる効果を発揮する傾向があるため、本発明の凹部10の場合も同様に、第一要素11および第二要素12の大きさに適度な差を設けることで、幅が大きい第一領域11では高速域における効果を発揮し、幅が小さい第二領域12では低速域において効果を発揮することが見込めるため、これらの協働により様々な速度域において乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制する効果を得ることができる。このとき、第二要素のタイヤ径方向の幅w2が第一要素のタイヤ径方向の幅w1の50%以上であると、第一要素11および第二要素12の大きさに十分な差が生じないため、上述の効果が十分に見込めなくなる。
【0022】
上述の幅w1,w2の関係に加えて、更に、図3(b)~(c)に示すように、第一要素11の深さd1が第二要素12の深さd2よりも大きいことが好ましい。これにより第一要素11と第二要素12の大きさ(体積)のバランスが良好になり、乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。即ち、前述の幅w1,w2の場合と同様に、第一要素11および第二要素12の大きさ(深さd1,d2)に適度な差を設けることで、窪み量(つまり体積)が大きい第一領域11では高速域における効果を発揮し、窪み量(体積)が小さい第二領域12では低速域において効果を発揮することが見込めるため、これらの協働により様々な速度域において乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制する効果を得ることができる。尚、第一要素11の深さd1を第二要素12の深さd2よりも大きくするにあたって、第二要素12の深さd2は第一要素11の深さd1の好ましくは80%未満、より好ましくは60%~70%であるとよい。
【0023】
前述のように凹部10の表面形状はタイヤ周方向に長手方向を有するが、その際、凹部10のタイヤ周方向に沿った長さLは好ましくは2mm~20mm、より好ましくは3mm~10mmであるとよい。このように凹部10が適度な長さを有することで、効果的に乱流を発生させることが可能になる。凹部10のタイヤ周方向に沿った長さLが2mm未満であると、個々の凹部10が小さすぎるため乱流を発生させる効果が限定的になる。凹部10のタイヤ周方向に沿った長さLが20mmを超えると、凹部10を設けた位置におけるサイドウォール部2の表面の凹凸が顕著になりタイヤの外観が低下する。
【0024】
尚、幅w1,w2、深さd1,d2の個々の値は特に限定されないが、第一要素11のタイヤ径方向の幅w1は例えば2mm~10mm、第二要素12のタイヤ径方向の幅w2は例えば0.5mm~5mmに設定することができる。また、第一要素11の深さd1は例えば0.5mm~5mm、第二要素12の深さd2は例えば0.3mm~4mmに設定することができる。
【0025】
複数の凹部10はサイドウォール部2の任意の位置に設けることができるが、凹部10が乱流を発生させるための要素であることを踏まえると、サイドウォール部2において空気の流れの影響が大きい部位に集中して複数の凹部10を設けることが好ましい。即ち、複数の凹部10はタイヤ最大幅位置Pよりもトレッド部1側に配置されることが好ましい。これにより、より効率的に乱流を発生させることが可能になり、空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。
【0026】
複数の凹部10はタイヤ周方向およびタイヤ径方向に配列して設けることが好ましい。これによりサイドウォール部2の特定の領域に多数の凹部10が集中して配置されるので乱流を効果的に発生させることが可能になる。特に、図2に示すように、タイヤ径方向に隣り合う一対の凹部10の第一要素11の間に別の凹部10の第二要素12を配置することが好ましい。このような配置では、より多数の凹部10を密集して配列させることができるため、乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。
【0027】
複数の凹部10は互いに離間して疎らに配置されると乱流を発生させる効果が十分に得られない虞がある。そのため、複数の凹部10は適度に集中して設けることが好ましい。具体的には、図7に示すように、複数の凹部10が設けられた領域において、1cm四方の任意の単位領域(図中の斜線領域)を想定し、この単位領域(面積:1cm2)に含まれる複数の凹部10の表面積の割合を好ましくは60%~95%、より好ましくは75%~90%に設定するとよい。これにより凹部10を十分に密集して配置させることができるので、乱流を効果的に発生させて空気抵抗を抑制し、燃費性能を向上するには有利になる。単位領域に含まれる複数の凹部10の表面積の割合が60%未満であると、複数の凹部10の配置が疎らになるため乱流を発生させる効果が限定的になる。単位領域に含まれる複数の凹部10の表面積の割合が95%を超えると、凹部10以外の部分が過小であるため所望の凹凸形状として機能せず、乱流を発生させる効果が限定的になる。
【0028】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0029】
タイヤサイズが235/60R18であり、図1に例示する基本構造(断面構造)を有し、サイドウォール部に設ける凹部の形状に関して、第一要素の形状、第二要素の形状、凹部の概形(図番)、第一要素のタイヤ径方向の幅w1に対する第二要素のタイヤ径方向の幅w2の割合(w2/w1×100%)、第一要素の深さd1と第二要素の深さd2の大小関係(深さの大諸関係)、最大幅位置に対する凹部の配置箇所、単位領域に示す凹部の面積の割合を表1のように設定した従来例1、比較例1、実施例1~6の空気入りタイヤを作成した。
【0030】
表1の「凹部の概形(図番)」は、図8に例示した凹部の形状のいずれであるか、その図番を表示した。表1の「最大幅位置に対する凹部の配置箇所」の欄は、凹部が最大幅位置よりもビード部側に設けられた場合を「内側」、凹部が最大幅位置よりもトレッド側に設けられた場合を「外側」と表示した。
【0031】
尚、比較例1は、従来例1と同様に互いに離間した複数の凹部(円形のディンプル)のみが設けられた例であるが、図8(b)に示したように直径の異なる2種類のディンプルが含まれ、これら2種類のディンプルがタイヤ周方向に交互に配列された例である。便宜的に直径が大きい方のディンプルを第一要素、直径が小さい方のディンプルを第二要素と見做して、表1の「第二要素の形状」、「w2/w1×100%」および「深さの大小関係」の欄に参考値を示した。
【0032】
これら空気入りタイヤ(試験タイヤ)について、下記の評価方法により、燃費性能を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0033】
燃費性能
各試験タイヤをホイール(リムサイズ:18×7.0J)に組み付けて試験車両(排気量2000ccの前輪駆動SUV)に装着し、空気圧230kPaを充填し、全長2kmのテストコースを時速100km/hにて500周走行した際の燃料消費率を測定した。尚、燃料消費率とはガソリン1リットル当たりの走行距離である。評価結果は、従来例1の燃料消費率を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど燃費性能が優れていることを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から明らかなように、実施例1~6の空気入りタイヤは、従来例1と比較して燃費性能を向上した。一方で、大きさの異なる2種類のディンプルを設けた比較例1は燃費性能を十分に向上することができなかった。
【0036】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部とを備えたタイヤにおいて、
前記サイドウォール部の外表面に複数の凹部が形成され、前記複数の凹部はそれぞれタイヤ周方向に並んで互いに連結された第一要素および第二要素を有し、前記第一要素のタイヤ径方向の幅が前記第二要素のタイヤ径方向の幅よりも広く、前記凹部の表面形状はタイヤ周方向に長手方向を有することを特徴とするタイヤ。
発明[2] 前記第二要素のタイヤ径方向の幅w2が前記第一要素のタイヤ径方向の幅w1の50%未満であることを特徴とする発明[1]に記載のタイヤ。
発明[3] 前記第一要素の深さd1が前記第二要素の深さd2よりも大きいことを特徴とする発明[1]または[2]に記載のタイヤ。
発明[4] 前記複数の凹部がタイヤ最大幅位置よりも前記トレッド部側に配置されたことを特徴とする発明[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[5] 前記複数の凹部がタイヤ周方向およびタイヤ径方向に配列され、タイヤ径方向に隣り合う一対の凹部の第一要素の間に別の凹部の第二要素が配置されたことを特徴とする発明[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[6] 前記複数の凹部が設けられた領域において、1cm四方の単位領域に含まれる前記複数の凹部の表面積の割合が60%~95%であることを特徴とする発明[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0037】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
10 凹部
11 第一要素
12 第二要素
CL タイヤ赤道
P タイヤ最大幅位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8