(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009987
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】画像形成材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20250109BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/08 381
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103266
(22)【出願日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2023110976
(32)【優先日】2023-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 宙
(72)【発明者】
【氏名】本夛 将
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500BA22
2H500CA06
2H500CA44
2H500EA41B
2H500EA42B
(57)【要約】
【課題】帯電性に優れ、広い定着幅を有し、粉砕性と耐擦過性に優れる画像形成材料を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂(A)及び着色剤を含む画像形成材料の製造方法であって、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と炭素数2~5のジオール(b)とを180℃~250℃で反応させて前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を解重合する工程を有し、反応後の解重合物(bx)の合計重量に基づいてテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを60重量%以上含み、解重合工程後に前記解重合物(bx)を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて前記ポリエステル樹脂(A)を得る工程を有する画像形成材料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)及び着色剤を含む画像形成材料の製造方法であって、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と炭素数2~5のジオール(b)とを180℃~250℃で反応させて前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を解重合する工程を有し、反応後の解重合物(bx)の合計重量に基づいてテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを60重量%以上含み、解重合工程後に前記解重合物(bx)を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて前記ポリエステル樹脂(A)を得る工程を有する画像形成材料の製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂(A)のアルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含む請求項1に記載の画像形成材料の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂(A)のカルボン酸成分がイソフタル酸を含む請求項1又は2に記載の画像形成材料の製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂(A)の重量割合が画像形成材料の重量に基づいて10~90重量%である請求項1又は2に記載の画像形成材料の製造方法。
【請求項5】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)が再生PET樹脂である請求項1又は2に記載の画像形成材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真システムの発展に伴い、商業印刷や産業印刷などの用途に電子写真技術の適用を広げる取り組みが進んできている。商業印刷や産業印刷の分野では安定的に高速印刷する必要があるため、一定の低温定着性と耐ホットオフセット性、つまり広い定着幅を有することが求められる。また、微粉などが生じないようトナーがカートリッジ内で受ける撹拌に伴うせん断や圧縮に対して耐久性を有することや、同品質の画像を大量に安定して印刷するために帯電性能を保持することなどの要件を具備する必要がある。
トナー等に使用される画像形成材料は、上述のようなトナー特性に大きな影響を与えるものであり、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、定着性と帯電性のバランスを取りやすいことから、ポリエステル樹脂が特に注目されている。
例えば、定着性や帯電性に優れ、炭素数2~4の脂肪族ジオールを主成分とするポリエステル樹脂を含有するトナーバインダーが開示されている(特許文献1及び2)。
しかしながら商業印刷や産業印刷などの用途のトナーに適用するには十分な帯電性、十分広い定着幅、十分な粉砕性、耐擦過性を有しているとは言えず、それらの改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-141966号公報
【特許文献2】特開平9-278873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、帯電性及び粉砕性に優れ、広い定着幅、耐擦過性を有する画像形成材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明はポリエステル樹脂(A)及び着色剤を含む画像形成材料の製造方法であって、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と炭素数2~5のジオール(b)とを180℃~250℃で反応させて前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を解重合する工程を有し、反応後の解重合物(bx)の合計重量に基づいてテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを60重量%以上含み、解重合工程後に前記解重合物(bx)を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて前記ポリエステル樹脂(A)を得る工程を有する画像形成材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、帯電性及び粉砕性に優れ、広い定着幅、耐擦過性を有する画像形成材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の画像形成材料の製造方法について詳細に説明する。
【0008】
本発明の画像形成材料の製造方法は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と炭素数2~5のジオール(b)とを180℃~250℃で反応させて前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を解重合する工程を有し、反応後の解重合物(bx)の合計重量に基づいてテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを60重量%以上含み、解重合工程後に前記解重合物(bx)を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて前記ポリエステル樹脂(A)を得る工程を有する。
【0009】
本発明における画像形成材料は、解重合物(bx)を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂(A)及び着色剤を含む。
【0010】
ポリエステル樹脂(A)は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と炭素数2~5のジオール(b)と反応させて得られた解重合物(bx)を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてなるポリエステル樹脂である。
【0011】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す)樹脂であり、例えば再生PET樹脂であり、その原料としては市中から回収されたPET製品(以下、回収PET製品と言う)が用いられ、PET製品としては例えばPETボトル、PETフィルム等がある。
【0012】
炭素数2~5のジオール(b)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンチルグリコール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコール等が挙げられる。これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであっても良い。
これらの炭素数2~5のジオール(b)のうち、低温定着性の観点から、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコールであり、更に好ましくはエチレングリコールである。
【0013】
本発明において、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と炭素数2~5のジオール(b)とを反応させてポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を解重合する工程を有する。解重合工程により、解重合物(bx)が得られる。
解重合物(bx)には、テレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルが含まれ、更にポリエチレンテレフタレートのオリゴマー及びポリエチレンテレフタレートのオリゴマーの少なくとも1つの末端エチレングリコール残基が炭素数3~5のジオール残基に置換されたもの等が含まれている可能性がある。
【0014】
反応後の解重合物(bx)は、解重合物(bx)の合計重量に基づいてテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを60重量%以上含む。その下限について、好ましくは80重量%であり、更に好ましくは90重量%であり、その上限について、好ましくは99.9重量%であり、更に好ましくは99重量%であり、特に好ましくは95重量%である。
解重合物(bx)中のテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルの重量割合が60重量%未満であると帯電維持率が悪化する。
【0015】
反応後の解重合物(bx)中(構成単量体として含まれているものと化合物として含まれているものとを両方考慮する)に含まれる炭素数2~5のジオール(b)とテレフタル酸のモル比(ジオール(b)/テレフタル酸)は、帯電維持率の観点から好ましくは2.00以上であり、より好ましくは2.02以上であり、更に好ましくは2.04以上であり、後工程での過剰のジオール(b)の除去の観点から好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、更に好ましくは4以下である。
なお、解重合物(bx)中のモル比(ジオール(b)/テレフタル酸)は、反応時の炭素数2~5のジオール(b)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を構成するテレフタル酸及びエチレングリコールの量から算出することができる。具体的に、ジオール(b)のモル数は、反応時に用いた炭素数2~5のジオール(b)のモル数(仕込み量/分子量)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を構成するエチレングリコールのモル数(ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の仕込み量/210)の合計として算出することができる。また、テレフタル酸のモル数は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を構成するテレフタル酸のモル数(ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の仕込み量/210)として算出することができる。
【0016】
解重合工程について説明する。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と炭素数2~5のジオール(b)とを180℃~250℃で反応させて、解重合物(bx)を得る解重合工程である。
例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と炭素数2~5のジオール(b)とを添加し、かつ攪拌しながらエステル化反応装置を180℃~250℃でポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を構成するテレフタル酸に対して、ジオール(b)をモル比((b)/テレフタル酸)1.0以上で好ましくは0.1~30時間解重合することで解重合物(bx)を得ることができる。本条件でテレフタル酸に対するジオール(b)のモル比((b)/テレフタル酸)を1.0以上にすることで、反応後の解重合物(bx)の合計重量に基づいてテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを60重量%以上に容易にすることができるので好ましい。モル比((b)/テレフタル酸)が1.0未満であると、テレフタル酸に対するジオール(b)の量が少なくなるため、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)が解重合されにくく、反応後の解重合物(bx)の合計重量に基づいたテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを60重量%以上にすることが困難になる可能性がある。なお、解重合物(bx)に含まれるテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルの重量割合は、例えば液体クロマトグラフ質量分析計を用いることで分析できる。
解重合工程の進行を早める為に、必要に応じて公知のエステル触媒を添加しても良い。
ポリエチレンテレフタレート樹脂を融解させて解重合反応を促進させるために、反応温度は200℃以上250℃以下であることが好ましく、220℃以上240℃以下であることが特に好ましい。250℃を超えると解重合物(bx)の熱分解反応が起こり、再度重縮合する際に重合度が低くなるなど品質面で問題が起こる。180℃未満であると、解重合反応の進行が遅く、実生産上問題である。
【0017】
この解重合物(bx)は、必要により再度縮重合させて粘度を制御することによって重合度が一定の、溶融粘度が安定したポリエステルジオールとすることができる。
【0018】
本発明において、ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分として解重合物(bx)を含み、(bx)以外のポリオール成分(x)を含んでいてもよい。
ポリオール成分(x)としては、炭素数2~5のジオール(x1)、炭素数2~5のジオール(x1)以外のジオール(x2)及び3価以上のポリオール(x3)が挙げられる。これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであっても良い。
【0019】
炭素数2~5のジオール(x1)としては、前記炭素数2~5のジオール(b)に挙げたものと同じものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0020】
ジオール(x2)としては、炭素数6~36のアルキレングリコール(3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール及び1,12-ドデカンジオール等)、炭素数6~36のアルキレンエーテルグリコール(ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等)、炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)、上記脂環式ジオールの(ポリ)アルキレンオキサイド付加物(好ましくは平均付加モル数1~30)、芳香族ジオール[単環2価フェノール(例えばハイドロキノン等)及びビスフェノール類等]及び上記芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物(好ましくは平均付加モル数2~30)等が挙げられる。
【0021】
上記のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物は、ビスフェノール類にアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)を付加して得られる。
【0022】
ビスフェノール類としては、下記一般式(1)で示されるもの等が挙げられる。
HO-Ar-P-Ar-OH (1)
[式中、Pは炭素数1~3のアルキレン基、-SO2-、-O-、-S-又は直接結合を表し、Arは、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
【0023】
ビスフェノール類の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、トリクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジブロモビスフェノールF、2-メチルビスフェノールA、2,6-ジメチルビスフェノールA及び2,2’-ジエチルビスフェノールF等が挙げられ、これらは2種以上を併用することもできる。
【0024】
ビスフェノール類に付加するアルキレンオキサイドとしては、炭素数が2~30のアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記することがある。)、プロピレンオキサイド(「プロピレンオキサイド」をPOと略記することがある。)、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、及びこれらの2種以上の併用等が挙げられる。
【0025】
これらのジオール(x2)のうち、低温定着性と耐熱保存性の観点から、炭素数6~36のアルキレングリコール、芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、炭素数6~10のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~5)がより好ましく、炭素数3~6のアルキレングリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~5)が更に好ましく、ビスフェノールAのEO及び/又はPO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~3)が特に好ましい。
【0026】
また、ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有することが好ましく、ビスフェノールAのEO及び/又はPO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~3)を含有することがより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むと、これを含まない場合と比較してトナーの状態の耐久性が向上する。
【0027】
3価以上のポリオール(x3)としては、炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコール、糖類及びその誘導体、脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは1~30)、トリスフェノール(トリスフェノールPA等)のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)等が挙げられる。
【0028】
炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコールとしては、アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物が挙げられ、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン及びジペンタエリスリトール等が挙げられる。
また、糖類及びその誘導体としては、例えばショ糖及びメチルグルコシド等が挙げられる。
【0029】
これらの3価以上のポリオール(x3)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から、炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコール、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)が好ましく、炭素数3~8の3価の脂肪族多価アルコールが更に好ましく、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
【0030】
ポリエステル樹脂(A)を構成する解重合物(bx)以外のポリオール成分(x)中におけるジオール(x2)は、前記解重合物(bx)以外のポリオール成分(x)のモル数に基づいて40~100モル%であることが好ましい。
また、ポリエステル樹脂(A)を構成する解重合物(bx)以外のポリオール成分(x)としてジオール(x2)と3価以上のポリオール(x3)とを併用する場合、ジオール(x2)と3価以上のポリオール(x3)のモル比[(x2)/(x3)]は、耐ホットオフセット性の観点から、80/20~99/1が好ましく、85/15~98/2がより好ましい。
【0031】
また、ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分として、必要によりモノオール成分を含有させることもできる。モノオールとしては、炭素数1~30の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコール等)等が挙げられる。
【0032】
これらモノオールのうち、画像強度及び耐熱保存性の観点から、炭素数8~24の直鎖又は分岐アルキルアルコールが好ましく、炭素数8~24の直鎖アルキルアルコールがより好ましく、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコールが更に好ましい。
【0033】
本発明において、ポリエステル樹脂(A)を構成するカルボン酸成分としては、ジカルボン酸(y1)、3価以上のポリカルボン酸(y2)等が挙げられる。これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであっても良い。
【0034】
ジカルボン酸(y1)としては、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)、炭素数2~50の脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸及びセバシン酸等)、炭素数6~40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)等〕、炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸等)及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。ここで、エステル形成性誘導体とは、カルボン酸無水物、アルキル(炭素数1~24のメチル、エチル、ブチル、ステアリル等、好ましくは炭素数1~4のもの)エステル及び部分アルキルエステルを意味する。
【0035】
これらのジカルボン酸(y1)のうち、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性の両立の観点から、好ましくは炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸、炭素数2~50の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4~36のアルケンジカルボン酸であり、更に好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸及びフマル酸であり、特に好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、フマル酸及びコハク酸であり、最も好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸及びコハク酸である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
【0036】
3価以上のポリカルボン酸(y2)としては、炭素数9~20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数6~36の脂肪族(脂環式を含む)トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸及びデカントリカルボン酸等)及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0037】
これらの3価以上のポリカルボン酸(y2)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から、好ましくは炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸であり、更に好ましくはトリメリット酸、ピロメリット酸である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
【0038】
また、ポリエステル樹脂(A)を構成するカルボン酸成分として、必要により、モノカルボン酸成分を含有させることもできる。モノカルボン酸としては、炭素数7~37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸等)、炭素数2~50の脂肪族(脂環式を含む)モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸及びベヘン酸等)等が挙げられる。
【0039】
これらモノカルボン酸のうち、画像強度及び耐熱保存性の観点から、炭素数7~37の芳香族モノカルボン酸が好ましく、安息香酸がより好ましい。
【0040】
ポリエステル樹脂(A)の酸価は、低温定着性、帯電維持率及び印刷品質の耐久性の観点から、0~50mgKOH/gが好ましく、0.1~30mgKOH/gであることがより好ましい。
なお、酸価は、JIS K0070に規定の方法で測定することができる。
【0041】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、耐熱保存性及び低温定着性の観点から、50~75℃であることが好ましく、55~70℃であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)により決定することができる。ガラス転移温度(Tg)の測定には、例えば、TA Instruments(株)製、DSC Q20等を用いることができる。ガラス転移温度(Tg)は、下記の条件で測定することができる。
<測定条件>
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で-35℃まで冷却
(4)-35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
(6)(5)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析し、変曲点の位置をガラス転移温度とする。
【0042】
なお、ポリエステル樹脂(A)のピークトップ分子量は、低温定着性、耐熱保存性、粉砕性の観点から、3,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましい。
【0043】
本発明において、重量平均分子量及びピークトップ分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC-8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
分子量の測定は、0.25重量%になるように試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、不溶解分をアパチャー220nmのPTFEフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
【0044】
ポリエステル樹脂(A)を得る工程について説明する。
ポリエステル樹脂(A)は解重合物(bx)を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを重合触媒の存在下で重縮合反応を行うことによって得ることができる。
【0045】
具体的には、ポリエステル樹脂(A)は、例えば以下のようにして製造することができる。例えば、解重合物(bx)を含むアルコール成分と、カルボン酸成分とを、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、より好ましくは160~250℃、更に好ましくは170~235℃で重縮合反応させる。
【0046】
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。
エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド(テトラブトキシチタネート等)、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006-243715号公報に記載の触媒{チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等}及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル等)及び酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
【0047】
また、ポリエステルの重合を安定的に進める目的で、安定剤を添加してもよい。安定剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン及びヒンダードフェノール化合物等が挙げられる。
【0048】
本発明における画像形成材料は、ポリエステル樹脂(A)の他に、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ビニル樹脂等の樹脂を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の画像形成材料がポリエステル樹脂(A)以外の樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂(A)の重量割合は、樹脂の合計重量を基準(100重量%)として、トナーの定着幅の観点から、好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは20重量%以上である。
また、ポリエステル樹脂(A)以外の樹脂の重量割合は、樹脂の合計重量を基準(100重量%)として、トナーの定着幅の観点から、好ましくは90重量%以下であり、更に好ましくは80重量%以下である。
画像形成材料中のポリエステル樹脂(A)の重量割合は、画像形成材料の重量に基づき、トナーの定着幅の観点から、好ましくは10~90重量%、より好ましくは10~87重量%、更に好ましくは20~76重量%、特に好ましくは25~68重量%である。
画像形成材料中のポリエステル樹脂(A)以外の樹脂の重量割合は、画像形成材料の重量に基づき、トナーの定着幅の観点から、好ましくは10~90重量%、より好ましくは10~87重量%、更に好ましくは20~76重量%、特に好ましくは25~65重量%である。
画像形成材料中のポリエステル樹脂(A)を含む樹脂の重量割合は、画像形成材料の重量に基づき、トナーの定着幅の観点から、好ましくは30~97重量%、より好ましくは40~95重量%、更に好ましくは45~92重量%である。
【0050】
本発明における画像形成材料は、着色剤を含む。
【0051】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料及び顔料等のすべてを使用することができる。例えば、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられる。着色剤は、これらのいずれか単独であってもよく、2種以上が混合されたものであってもよい。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末若しくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
【0052】
本発明における画像形成材料は、着色剤以外に、必要により、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等から選ばれる1種以上の公知の添加剤を含有してもよい。
【0053】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステルワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0054】
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-ドデセン、1-オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及び熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル等]等との共重合体及びサゾールワックス等が挙げられる。
【0055】
高級アルコールとしては、炭素数30~50の脂肪族アルコールなどであり、例えばトリアコンタノールが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数30~50の脂肪酸などであり、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0056】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素ポリマー及びハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
荷電制御剤の具体例としては、例えばT-77(保土谷化学工業株式会社製のアゾ系鉄錯体)等が挙げられる。
【0057】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末等が挙げられる。
【0058】
着色剤の含有量は画像形成材料の重量に基づき、好ましくは0.05~60重量%、より好ましくは0.1~55重量%、更に好ましくは0.5~50重量%である。
離型剤の含有量は画像形成材料の重量に基づき、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、更に好ましくは1~10重量%である。
荷電制御剤の含有量は画像形成材料の重量に基づき、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%、更に好ましくは0.5~7.5重量%である。
流動化剤の含有量は画像形成材料の重量に基づき、好ましくは0~10重量%、より好ましくは0~5重量%、更に好ましくは0.1~4重量%である。
また、添加剤の含有量の合計量は画像形成材料の重量に基づき、好ましくは3~70重量%、より好ましくは4~58重量%、更に好ましくは5~50重量%である。
画像形成材料の組成比を上記の範囲とすることで、低温定着性、耐ホットオフセット性、帯電性(帯電維持率)、印刷品質の耐久性、画像形成材料の耐久性が良好な画像形成材料を容易に得ることができる。
【0059】
画像形成材料は、公知の混練粉砕法、乳化転相法及び重合法等のいずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、混練粉砕法により画像形成材料を得る場合、流動化剤を除く画像形成材料を構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、更に分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5~20μmの微粒とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
なお、体積平均粒径(D50)はコールターカウンター{例えば、商品名:マルチサイザーIII[ベックマン・コールター(株)製]}を用いて測定される。
【0060】
また、乳化転相法により画像形成材料を得る場合、流動化剤を除く画像形成材料を構成する成分を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、必要に応じて凝集等を経て、次いで分離、分級して製造することができる。画像形成材料の体積平均粒径は、3~15μmが好ましい。
【0061】
トナー用途の場合には、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリア粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。キャリア粒子を用いる場合、トナーとキャリア粒子との重量比は、1/99~99/1が好ましい。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
なお、トナーは、キャリア粒子を含まなくてもよい。
【0062】
画像形成材料は、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法及びフラッシュ定着方法等が適用できる。
【0063】
画像形成材料は電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像又は磁気潜像の現像に用いられる。更に詳しくは、特にフルカラー用に好適な静電荷像又は磁気潜像の現像に用いられる。
【0064】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0065】
本開示(1)は、ポリエステル樹脂(A)及び着色剤を含む画像形成材料の製造方法であって、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と炭素数2~5のジオール(b)とを180℃~250℃で反応させて前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を解重合する工程を有し、反応後の解重合物(bx)の合計重量に基づいてテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを60重量%以上含み、解重合工程後に前記解重合物(bx)を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて前記ポリエステル樹脂(A)を得る工程を有する画像形成材料の製造方法である。
【0066】
本開示(2)は、前記ポリエステル樹脂(A)のアルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含む本開示1に記載の画像形成材料の製造方法である。
【0067】
本開示(3)は、前記ポリエステル樹脂(A)のカルボン酸成分がイソフタル酸を含む本開示(1)又は(2)に記載の画像形成材料の製造方法である。
【0068】
本開示(4)は、前記ポリエステル樹脂(A)の重量割合が画像形成材料の重量に基づいて10~90重量%である本開示(1)~(3)のいずれか1項に記載の画像形成材料の製造方法。
【0069】
本開示(5)は、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)が再生PET樹脂である本開示(1)~(4)のいずれか1項に記載の画像形成材料の製造方法である。
【実施例0070】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
<製造例1>ポリエステル樹脂(A1)の合成
加圧可能な反応槽中に、エチレングリコール170重量部(2.74モル部)、回収PET樹脂556重量部(構成単量体であるテレフタル酸及びエチレングリコールそれぞれのモル部、2.65モル部)を入れ、撹拌しながら220℃で2時間解重合反応(密閉エステル交換反応)を行い、反応後の解重合物を得た。解重合物は液体クロマトグラフ質量分析の結果、テレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを90重量%含んでいた。
次に、解重合物726重量部を180℃に冷却し、ビスフェノールA・PO2モル付加物478重量部、縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃に昇温させながら0.5~2.5kPaの減圧下で減圧してエチレングリコールを除去し、ピークトップ分子量が6700となったところで175℃に冷却した。次に、無水トリメリット酸15重量部を入れ、175℃で1時間常圧エステル化した後、取り出してポリエステル樹脂(A1)を得た。留去で回収したエチレングリコールは、230重量部であった。
【0072】
<製造例2>ポリエステル樹脂(A2)の合成
表1に記載の原料及び反応温度で行った以外は、製造例1と同様にして解重合反応を行い、反応後の解重合物を得た。
次に、解重合物954重量部を180℃に冷却し、イソフタル酸281重量部、縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃に昇温させながら0.5~2.5kPaの減圧下で減圧してエチレングリコール及び水を除去し、ピークトップ分子量が7800となったところで175℃に冷却した。次に、無水トリメリット酸15重量部を入れ、175℃で1時間常圧エステル化した後、取り出してポリエステル樹脂(A2)を得た。留去で回収したエチレングリコールは、191重量部であった。
【0073】
<製造例3>ポリエステル樹脂(A3)の合成
表1に記載の原料及び反応温度で行った以外は、製造例1と同様にして解重合反応を行い、反応後の解重合物を得た。
次に、解重合物726重量部を180℃に冷却し、ビスフェノールA・PO2モル付加物478重量部、縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃に昇温させながら0.5~2.5kPaの減圧下で減圧してエチレングリコールを除去し、ピークトップ分子量が6400となったところで175℃に冷却した。次に、無水トリメリット酸15重量部を入れ、175℃で1時間常圧エステル化した後、取り出してポリエステル樹脂(A3)を得た。留去で回収したエチレングリコールは、230重量部であった。
【0074】
<製造例4>ポリエステル樹脂(A4)の合成
表1に記載の原料及び反応温度で行った以外は、製造例1と同様にして解重合反応を行い、反応後の解重合物を得た。
次に、解重合物726重量部を180℃に冷却し、ビスフェノールA・PO2モル付加物478重量部、縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃に昇温させながら0.5~2.5kPaの減圧下で減圧してエチレングリコールを除去し、ピークトップ分子量が7100となったところで175℃に冷却した。次に、無水トリメリット酸15重量部を入れ、175℃で1時間常圧エステル化した後、取り出してポリエステル樹脂(A4)を得た。留去で回収したエチレングリコールは、230重量部であった。
【0075】
<比較製造例1>ポリエステル樹脂(A’1)の合成
加圧可能な反応槽中に、エチレングリコール170重量部、ビスフェノールA・PO2モル付加物478重量部、回収PET樹脂556重量部を入れ、撹拌しながら200℃で窒素気流下に、エチレングリコールを留去しながら15時間反応させ、次いで2.5~5.0kPaの減圧下で反応させ、重量平均分子量(Mw)が6800となったところで175℃に冷却した。次に、無水トリメリット酸15重量部を入れ、175℃で1時間常圧エステル化した後、取り出してポリエステル樹脂(A’1)を得た。留去で回収したエチレングリコールは、230重量部であった。
【0076】
<比較製造例2>ポリエステル樹脂(A’2)の合成
表1に記載の原料及び反応温度で行った以外は、製造例1と同様にして解重合反応を行い、反応後の解重合物を得た。
次に、解重合物726重量部を180℃に昇温し、ビスフェノールA・PO2モル付加物478重量部、縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃に昇温させながら0.5~2.5kPaの減圧下で減圧してエチレングリコールを除去し、ピークトップ分子量が7400となったところで175℃に冷却した。次に、無水トリメリット酸15重量部を入れ、175℃で1時間常圧エステル化した後、取り出してポリエステル樹脂(A’2)を得た。留去で回収したエチレングリコールは、230重量部であった。
【0077】
【0078】
<製造例5>ポリエステル樹脂(C1)の合成
反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物140重量部、ビスフェノールA・PO3モル付加物600重量部、トリメチロールプロパン32重量部、テレフタル酸176重量部、無水トリメリット酸17重量部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させ、次いで0.5~2.5kPaの減圧下で2時間反応させた。その後、210℃で無水トリメリット酸90重量部を加え、常圧下で1時間反応させた後、0.5~5kPaの減圧下で10時間反応させ、取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化しポリエステル樹脂(C1)を得た。ポリエステル樹脂(C1)の物性を表2に示す。
【0079】
<製造例6>ポリエステル樹脂(C2)の合成
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール715重量部、テレフタル酸740重量部、アジピン酸35重量部、重合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、180℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら12時間反応させた。次いで230℃まで除々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水を除去しながら4時間反応させ、更に0.7~2.7kPaの減圧下に反応させ、軟化点が88℃になった時点で冷却した。回収されたプロピレングリコールは325重量部であった。次いで、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸50重量部を加え、密閉下2時間反応後、220℃、2.7~5.3kPaの減圧下で反応させ所定の軟化点で取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化しポリエステル樹脂(C2)を得た。ポリエステル樹脂(C2)の物性を表2に示す。
【0080】
【0081】
<実施例1~4>
ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて、表3の配合比(重量部)に従って、トナーバインダーとしてポリエステル樹脂(A)、及びポリエステル樹脂(C)と、着色剤、離型剤及び荷電制御剤とを予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。次いで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製MDS-I]で分級し、粒径D50が7μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100重量部にコロイダルシリカ[アエロジルR972:日本アエロジル(株)製]0.5重量部をサンプルミルにて混合して画像形成材料であるトナー(T1)~(T4)を得た。
【0082】
<比較例1~2>
ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて、表3の配合比(重量部)に従って、トナーバインダーとして比較用のポリエステル樹脂(A’)、及びポリエステル樹脂(C)と、着色剤、離型剤及び荷電制御剤とを予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。次いで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製MDS-I]で分級し、粒径D50が7μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100重量部にコロイダルシリカ[アエロジルR972:日本アエロジル(株)製]0.5重量部をサンプルミルにて混合して画像形成材料であるトナー(T’1)~(T’2)を得た。
【0083】
【0084】
なお、表3中の着色剤、離型剤、荷電制御剤は以下の通りである。
着色剤:カーボンブラックMA-100[三菱化学(株)製]
離型剤:カルナバワックス[東洋アドレ(株)製]
荷電制御剤:T-77[保土谷化学(製)]
【0085】
[評価方法]
<帯電維持率>
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック(株)製、F-150)20gとを50mLのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間以上調湿した。
(2)ターブラーシェーカーミキサーにて50rpmで10分間及び60分間摩擦撹拌し、それぞれの時間での帯電量をブローオフ帯電量測定装置[京セラケミカル(株)製]を用いて測定した。
得られた値を用いて「摩擦時間60分後の帯電量/摩擦時間10分後の帯電量」を計算し、これを帯電安定性指数とした。
本帯電安定性指数が大きいほど帯電維持率に優れることを意味する。この評価条件では0.8以上であると好ましい。
【0086】
<定着幅>
トナーを紙面上に1.00mg/cm2となるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90~230℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのコールドオフセットの有無を目視し、コールドオフセットの発生温度(MFT)とホットオフセットの発生温度を測定した。上記低温定着温度と耐ホットオフセット温度の差を定着幅とした。
定着幅が広いほど優れることを意味する。この評価条件では、80℃以上であることが好ましい。
【0087】
<粉砕性>
トナー(T1)~(T4)及び(T’1)~(T’2)に用いたそれぞれのトナーバインダー85重量部に対して、顔料のカーボンブラックMA-100[三菱化学(株)製]8重量部、離型剤のカルナバワックス4重量部、荷電制御剤T-77[保土谷化学(製)]2重量部を加え、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練して得た混合物を冷却後に8.6メッシュパス~30メッシュオンの大きさに粉砕分級したものを粉砕性評価用粒子として用い、この粉砕性評価用粒子を超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]により下記の条件で微粉砕した。
粉砕圧:0.5MPa
粉砕時間:10分
アジャスターリング:15mm
ルーバーの大きさ:中
粉砕性評価用粒子の微粉砕物を分級せずに、微粉砕物の体積平均粒径(μm)をコールターカウンター-TAII(米国コールター・エレクトロニクス社製)により測定し、下記の判定基準で粉砕性を評価した。この条件では、7μm未満であることが好ましい。
【0088】
<擦過性>
定着幅の測定で使用した150℃での定着画像を試験片として用い、学振型摩擦堅牢度試験機を用いた耐擦過試験を実施した。60mm×60mmの綿布(カナキン3号)を取り付けた摩擦子で、荷重100gをかけて50往復擦った。試験後の定着画像から目視で画像の残存率を求め、トナーの耐擦過性を以下の基準で評価した。
◎:画像の残存率が70~100%
○:画像の残存率が50~69%
×:画像の残存率が50%未満
この評価では◎以上であることが望ましい。
本発明における画像形成材料は、帯電性に優れ、広い定着幅を有し、粉砕性と擦過性に優れるため、電子写真や静電記録や静電印刷等に用いる、静電荷像現像用トナー用として好適に使用できる。更に、インクジェット用として、及び、記録媒体用表面改質剤として好適に使用できる。