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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009990
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】トナーバインダー用画像形成材料
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G03G9/087
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103303
(22)【出願日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2023111698
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】香島 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】前田 真一
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500CA06
2H500CA16
2H500CA24
2H500EA11B
2H500EA42B
2H500EA44B
(57)【要約】
【課題】耐久性及び離型性に優れ、広い定着幅を有するトナーに用いるトナーバインダー用画像形成材料を提供する。
【解決手段】アルコール成分とカルボン酸成分を重縮合させて得られるポリエステル樹脂(A)及びシリコーン樹脂(C)を含むトナーバインダー用画像形成材料であって、前記ポリエステル樹脂(A)は、前記アルコール成分がエチレングリコールを含み、前記カルボン酸成分がテレフタル酸を含み、前記シリコーン樹脂(C)が硬化型シリコーン樹脂の硬化物であり、前記画像形成材料中の前記シリコーン樹脂(C)の重量割合が0.1~1重量%であるトナーバインダー用画像形成材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール成分とカルボン酸成分を重縮合させて得られるポリエステル樹脂(A)及びシリコーン樹脂(C)を含むトナーバインダー用画像形成材料であって、
前記ポリエステル樹脂(A)は、前記アルコール成分がエチレングリコールを含み、前記カルボン酸成分がテレフタル酸を含み、前記シリコーン樹脂(C)が硬化型シリコーン樹脂の硬化物であり、
前記画像形成材料中の前記シリコーン樹脂(C)の重量割合が0.1~1重量%であるトナーバインダー用画像形成材料。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂(C)がジメチルシロキサンの繰り返し単位を含むシリコーン樹脂である請求項1記載のトナーバインダー用画像形成材料。
【請求項3】
熱重量・示差熱同時分析において、昇温速度10℃/分で100℃から500℃まで昇温した際の250℃~500℃の範囲で前記シリコーン樹脂(C)の重量減少が40重量%以下である請求項1又は2に記載のトナーバインダー用画像形成材料。
【請求項4】
前記画像形成材料中の前記ポリエステル樹脂(A)の重量割合が10~90重量%である請求項1又は2に記載のトナーバインダー用画像形成材料。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂(A)の前記アルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含む請求項1又は2に記載のトナーバインダー用画像形成材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナーバインダー用画像形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真システムの発展に伴い、商業印刷や産業印刷などの用途に電子写真技術の適用を広げる取り組みが進んできている。商業印刷や産業印刷の分野では安定的に高速印刷する必要があるため、一定の低温定着性と耐ホットオフセット性、つまり広い定着幅を有することが求められる。また、微粉などが生じないようトナーがカートリッジ内で受ける撹拌に伴うせん断や圧縮に対して耐久性を有することなどの要件を具備する必要がある。
画像形成材料は、上述のようなトナー特性に大きな影響を与えるものであり、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、低温定着性と耐ホットオフセット性のバランスを取りやすいことから、ポリエステル樹脂が特に注目されている。
例えば、トナーに離型剤を内添させることで低温定着性や耐オフセット性に優れたトナーが開示されている(特許文献1)。
しかしながら商業印刷や産業印刷などの用途のトナーに適用するには十分な耐久性、離型性、十分広い定着幅を有しているとは言えず、それらの改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-244398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐久性及び離型性に優れ、広い定着幅を有するトナーに用いるトナーバインダー用画像形成材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明はアルコール成分とカルボン酸成分を重縮合させて得られるポリエステル樹脂(A)及びシリコーン樹脂(C)を含むトナーバインダー用画像形成材料であって、前記ポリエステル樹脂(A)は、前記アルコール成分がエチレングリコールを含み、前記カルボン酸成分がテレフタル酸を含み、前記シリコーン樹脂(C)が硬化型シリコーン樹脂の硬化物であり、前記画像形成材料中の前記シリコーン樹脂(C)の重量割合が0.1~1重量%であるトナーバインダー用画像形成材料である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、耐久性、離型性に優れ、広い定着幅を有するトナーに用いるトナーバインダー用画像形成材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料は、アルコール成分とカルボン酸成分を重縮合させて得られるポリエステル樹脂(A)及びシリコーン樹脂(C)を含むトナーバインダー用画像形成材料であって、前記ポリエステル樹脂(A)は、前記アルコール成分がエチレングリコールを含み、前記カルボン酸成分がテレフタル酸を含み、前記シリコーン樹脂(C)が硬化型シリコーン樹脂の硬化物であり、前記画像形成材料中の前記シリコーン樹脂(C)の重量割合が0.1~1重量%であるトナーバインダー用画像形成材料である。
以下に、本発明のトナーバインダー用画像形成材料を順次説明する。
【0008】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料は、アルコール成分とカルボン酸成分を重縮合させて得られるポリエステル樹脂(A)を含む。
ポリエステル樹脂(A)は、アルコール成分がエチレングリコールを含み、カルボン酸成分がテレフタル酸を含むポリエステル樹脂である。
【0009】
カルボン酸成分がテレフタル酸を含むことにより、トナーの耐久性を向上させ、帯電性を向上させることができる。
【0010】
ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分は、エチレングリコールの他にポリオール成分(x)を含んでいてもよい。
ポリオール成分(x)としては、エチレングリコール以外のジオール(x1)及び3価以上のポリオール(x2)が挙げられる。これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであっても良い。
【0011】
ジオール(x1)としては、炭素数3~36のアルキレングリコール(プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール及び1,12-ドデカンジオール等)、炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等)、炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)、上記脂環式ジオールの(ポリ)アルキレンオキサイド付加物(好ましくは平均付加モル数1~30)、芳香族ジオール[単環2価フェノール(例えばハイドロキノン等)及びビスフェノール類等]及び上記芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物(好ましくは平均付加モル数2~30)等が挙げられる。
【0012】
上記のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物は、ビスフェノール類にアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)を付加して得られる。
【0013】
ビスフェノール類としては、下記一般式(1)で示されるもの等が挙げられる。
HO-Ar-P-Ar-OH (1)
[式中、Pは炭素数1~3のアルキレン基、-SO-、-O-、-S-又は直接結合を表し、Arは、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
【0014】
ビスフェノール類の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、トリクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジブロモビスフェノールF、2-メチルビスフェノールA、2,6-ジメチルビスフェノールA及び2,2’-ジエチルビスフェノールF等が挙げられ、これらは2種以上を併用することもできる。
【0015】
ビスフェノール類に付加するアルキレンオキサイドとしては、炭素数が2~30のアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記することがある。)、プロピレンオキサイド(「プロピレンオキサイド」をPOと略記することがある。)、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、及びこれらの2種以上の併用等が挙げられる。
【0016】
これらのジオール(x1)のうち、低温定着性と耐熱保存性の観点から、炭素数3~36のアルキレングリコール、芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、炭素数3~10のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~5)がより好ましく、炭素数3~6のアルキレングリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~5)が更に好ましく、ビスフェノールAのEO及び/又はPO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~3)が特に好ましい。
【0017】
また、ポリエステル樹脂(A)のアルコール成分が、トナーの状態の耐久性の観点から好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及びネオペンチルグリコールを含有し、更に好ましくはビスフェノールAのEO2モル付加物及びビスフェノールAのPO2モル付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物並びにネオペンチルグリコールを含有する。
【0018】
3価以上のポリオール(x2)としては、炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコール、糖類及びその誘導体、脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは1~30)、トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)等が挙げられる。
【0019】
炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコールとしては、アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物が挙げられ、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン及びジペンタエリスリトール等が挙げられる。
また、糖類及びその誘導体としては、例えばショ糖及びメチルグルコシド等が挙げられる。
【0020】
これらの3価以上のポリオール(x2)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から、炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコール、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)が好ましく、炭素数3~8の3価の脂肪族多価アルコールが更に好ましく、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
【0021】
ポリエステル樹脂(A)のポリオール成分(x)中におけるジオール(x1)は、80~100モル%であることが好ましい。また、ジオール(x1)と3価以上のポリオール(x2)とを併用する場合、ジオール(x1)と3価以上のポリオール(x2)のモル比[(x1)/(x2)]は、耐ホットオフセット性の観点から、80/20~99/1が好ましく、85/15~98/2がより好ましい
【0022】
また、ポリエステル樹脂(A)のアルコール成分として、必要により上記ポリオール成分(x)に加えて、モノオール成分を含有させることもできる。モノオールとしては、炭素数1~30の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコール等)等が挙げられる。
【0023】
これらモノオールのうち、画像強度及び耐熱保存性の観点から、炭素数8~24の直鎖又は分岐アルキルアルコールが好ましく、炭素数8~24の直鎖アルキルアルコールがより好ましく、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコールが更に好ましい。
【0024】
ポリエステル樹脂(A)を構成するカルボン酸成分は、テレフタル酸の他にポリカルボン酸成分(y)を含んでいてもよい。
ポリカルボン酸成分(y)としては、テレフタル酸以外のジカルボン酸(y1)、3価以上のポリカルボン酸(y2)が挙げられる。これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであっても良い。
【0025】
ジカルボン酸(y1)としては、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)、炭素数2~50の脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸及びセバシン酸等)、炭素数6~40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)等〕、炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸等)及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。ここで、エステル形成性誘導体とは、カルボン酸無水物、アルキル(炭素数1~24のメチル、エチル、ブチル、ステアリル等、好ましくは炭素数1~4のもの)エステル及び部分アルキルエステルを意味する。
【0026】
これらのジカルボン酸(y1)のうち、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性の両立の観点から、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸、炭素数2~50の脂肪族ジカルボン酸、炭素数4~36のアルケンジカルボン酸が好ましく、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸がより好ましく、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、フマル酸が更に好ましく、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸が特に好ましい。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
【0027】
3価以上のポリカルボン酸(y2)としては、炭素数9~20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数6~36の脂肪族(脂環式を含む)トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸及びデカントリカルボン酸等)及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0028】
これらの3価以上のポリカルボン酸(y2)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸が好ましく、トリメリット酸、ピロメリット酸がより好ましい。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
【0029】
ポリエステル樹脂(A)のポリカルボン酸成分中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計割合が80~100モル%であってもよく、100モル%であってもよい。すなわち、ポリエステル樹脂(A)がポリカルボン酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸以外のカルボン酸成分を含まなくてもよい。
【0030】
また、ポリエステル樹脂(A)のカルボン酸成分として、必要により、モノカルボン酸成分を含有させることもできる。モノカルボン酸としては、炭素数7~37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸等)、炭素数2~50の脂肪族(脂環式を含む)モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸及びベヘン酸等)等が挙げられる。
【0031】
これらモノカルボン酸のうち、画像強度及び耐熱保存性の観点から、炭素数7~37の芳香族モノカルボン酸が好ましく、安息香酸がより好ましい。
【0032】
ポリエステル樹脂(A)の酸価は、低温定着性、帯電維持率及び印刷品質の耐久性の観点から、0~30mgKOH/gが好ましく、0.1~10mgKOH/gであることがより好ましい。
なお、酸価は、JIS K0070に規定の方法で測定することができる。
【0033】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、耐熱保存性及び低温定着性の観点から、50~70℃であることが好ましく、55~65℃であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)により決定することができる。ガラス転移温度(Tg)の測定には、例えば、TA Instruments(株)製、DSC Q20等を用いることができる。ガラス転移温度(Tg)は、下記の条件で測定することができる。
<測定条件>
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で-35℃まで冷却
(4)-35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
(6)(5)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析し、変曲点の位置をガラス転移温度とする。
【0034】
なお、ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量は、低温定着性、印刷品質の耐久性の観点から、3,000~10,000であることが好ましく、5,000~9,000であることがより好ましい。
【0035】
本発明において、重量平均分子量及びピークトップ分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC-8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
分子量の測定は、0.25重量%になるように試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、不溶解分をアパチャー220nmのPTFEフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
なお、後述するポリエステル樹脂(B)、画像形成材料についても、上記と同様の方法で重量平均分子量及びピークトップ分子量を求めることができる。
【0036】
ポリエステル樹脂(A)はエチレングリコール及びテレフタル酸を混合し、重合触媒の存在下で重縮合反応を行うことによって得ることができる。
また、ポリエステル樹脂(A)に含まれるテレフタル酸成分は、PET(ポリエチレンテレフタレート)由来のテレフタル酸成分であってもよい。この場合、ポリエステル樹脂(A)はエチレングリコール、PETを混合して、重合触媒の存在下で重縮合反応を行うことによって得ることができる。
【0037】
具体的には、ポリエステル樹脂(A)は、例えば以下のようにして製造することができる。例えば、エチレングリコールとテレフタル酸とを、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、より好ましくは160~250℃、更に好ましくは170~235℃で重縮合反応させる。
また、反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは2~40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
【0038】
また、この反応の際に、エチレングリコール以外のポリオール成分、テレフタル酸以外の(ポリ)カルボン酸成分を加えてもよいし、必要に応じて、シリコーン樹脂(C)を含むものであってもよい。
【0039】
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。
エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド(テトラブトキシチタネート等)、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006-243715号公報に記載の触媒{チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等}及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル等)及び酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
【0040】
また、ポリエステルの重合を安定的に進める目的で、安定剤を添加してもよい。安定剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン及びヒンダードフェノール化合物等が挙げられる。
【0041】
続いて、本発明のトナーバインダー用画像形成材料は、ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)が含まれていてもよい。
ポリエステル樹脂(B)は、アルコール成分とカルボン酸成分を重縮合させて得られるポリエステル樹脂であるが、アルコール成分がエチレングリコールを含まない、又は、カルボン酸成分がテレフタル酸を含まない。
【0042】
ポリエステル樹脂(B)は、非線形ポリエステル樹脂であることが好ましい。「非線形」のポリエステル樹脂とは、主鎖中に分岐(架橋点)を有するポリエステル樹脂である。
【0043】
ポリエステル樹脂(B)におけるアルコール成分としては、ポリエステル樹脂(A)が含むことのできるポリオール成分(x)と同じものが挙げられる。また、カルボン酸成分がテレフタル酸を含まないのであれば、アルコール成分としてエチレングリコールを含んでもよい。
【0044】
ポリエステル樹脂(B)におけるポリオール成分(x)としては、炭素数3~36のアルキレングリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ノボラック樹脂のアルキレンオキサイド付加物等が好ましく、プロピレングリコール、ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物、フェノールノボラックのEO5.6モル付加物等がより好ましい。
【0045】
ポリエステル樹脂(B)におけるカルボン酸成分としては、ポリエステル樹脂(A)が含むことのできるポリカルボン酸成分(y)及びモノカルボン酸成分と同じものが挙げられる。また、アルコール成分にエチレングリコールを含まないのであれば、カルボン酸成分がテレフタル酸を含んでいてもよい。
【0046】
ポリエステル樹脂(B)におけるポリカルボン酸成分(y)としては、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸、炭素数9~20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸等が好ましく、アジピン酸、無水トリメリット酸がより好ましい。
【0047】
ポリエステル樹脂(B)の酸価は、低温定着性、帯電維持率及び印刷品質の耐久性の観点から、5~60mgKOH/gが好ましく、10~45mgKOH/gであることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度は、耐熱保存性及び低温定着性の観点から、50~70℃であることが好ましく、55~65℃であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(B)のピークトップ分子量は、低温定着性、印刷品質の耐久性の観点から、2,000~300,000であることが好ましく、3,000~150,000であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(B)の酸価、ガラス転移温度及びピークトップ分子量は、ポリエステル樹脂(A)と同様にして測定することができる。
【0048】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料は、シリコーン樹脂(C)を含む。
【0049】
シリコーン樹脂(C)は、硬化型シリコーン樹脂であり、ジメチルシロキサンの繰り返し単位を含むシリコーン樹脂が好ましい。硬化型シリコーン樹脂は、オルガノポリシロキサン構造を主鎖とするシリコーン樹脂を硬化させた樹脂である。硬化型シリコーン樹脂には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを白金触媒のもとに、加熱硬化させた「付加反応硬化型」、オルガノハイドロジェンポリロキサンと末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとを有機錫触媒を用いて加熱硬化させた「縮合反応硬化型」、アクリロイル基あるいはメタクリロイル基を含有するオルガノポリシロキサン、あるいはアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとメルカプト基を含有するオルガノポリシロキサンに光重合開始剤を配合し、UV光を照射することによって硬化させる「UV硬化型」、エポキシ基をオニウム塩開始剤にて光開環させて硬化させる「カチオン重合硬化型」などが挙げられる。いずれを用いてもよいが、生産性の観点から付加反応型やUV硬化型が好ましい。
【0050】
付加反応硬化型シリコーン樹脂の具体例としては、末端にビニル基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンとを含むものが好ましく、信越化学工業株式会社製のKS-847、KS-847T、KS-841、KS-774、KS-3703T、X-62-2825、ダウ・東レ株式会社製のSD7333、SRX357、SRX345、LTC310、LTC303E、LTC300B、LTC350G、LTC750A、LTC851、LTC759、LTC755、LTC761、LTC856、などが挙げられる(なお、“LTC”は登録商標である)。
【0051】
縮合反応硬化型シリコーン樹脂と触媒の具体例としては、末端に水酸基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンとを有機錫触媒を含むものが好ましく、ダウ・東レ株式会社製のSRX290やSY LOFF23等が挙げられる。
【0052】
UV硬化型シリコーン樹脂と触媒の具体例としては、アクリロイル基あるいはメタクリロイル基を含有するオルガノポリシロキサンと光重合開始剤を含むものや、アルケニル基を含むポリジメチルシロキサンとメルカプト基を含むポリジメチルシロキサンと光重合開始剤を含むものが好ましく、JNC株式会社製のFM-0711、FM-0721、FM-0725、FM-7711、FM-7721、FM-7725、ダウ・東レ株式会社製のBY24-510H及びBY24-544などが挙げられる。
【0053】
カチオン重合硬化型シリコーン樹脂と触媒の具体例としては、エポキシ基を含むシロキサンと、オニウム塩開始剤を含むものが好ましく、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のTPR6501、UV9300及びXS56-A2775などが挙げられる。
【0054】
シリコーン樹脂(C)を合成するに当たって、オルガノハイドロジエンポリシロキサンの使用量は、前記のオルガノポリシロキサン成分100重量部に対して、0.2~40重量部が好ましく、これらのシリコーン樹脂の熱による付加反応を促進させるためには白金系触媒等を共存させ、また、紫外線による付加反応を促進させるためには光重合開始剤等を共存させることにより、比較的速やかに硬化反応を達成でき、目的とするシリコーン樹脂を形成することができる。尚、このシリコーン樹脂には、本発明の範囲内で、必要に応じて公知の反応制御剤、シリカ等の無機充填剤、又は、顔料を更に配合することもできる。
【0055】
シリコーン樹脂(C)は熱重量・示差熱同時分析において、昇温速度10℃/分で100℃から500℃まで昇温した際の250℃~500℃の範囲で重量減少が耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
シリコーン樹脂(C)の重量減少は、シリコーン樹脂の分子量を調整することで40重量%以下にすることができる。
【0056】
シリコーン樹脂(C)の重量減少は、以下の式で計算することができる。
シリコーン樹脂(C)の重量減少(重量%)=500℃時の重量減少(重量%)-250℃時の重量減少(重量%)
500℃時の重量減少(重量%):(初期の重量-500℃時の重量)/初期の重量×100
250℃時の重量減少(重量%):(初期の重量-250℃時の重量)/初期の重量×100
【0057】
シリコーン樹脂(C)の重量減少は、ヤマト科学(株)製、NEXTA STA200等を用いることができる。重量減少は、下記の条件で測定することができる。
<測定条件>
(1)10℃/分で30℃から100℃まで昇温
(2)100℃で60分間保持
(3)10℃/分で100℃から500℃まで昇温
【0058】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)及びシリコーン樹脂(C)の他に、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶性ポリエステル樹脂又は結晶性ビニル樹脂等を含んでいてもよい。
【0059】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料がポリエステル樹脂(A)及びシリコーン樹脂(C)以外の成分を含む場合、画像形成材料の重量を基準(100重量%)として、ポリエステル樹脂(A)の重量割合が10~90重量%であることが好ましく、10~80重量%であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の重量割合が10重量%以上であると、トナーの定着幅をより広くすることができる。また、ポリエステル樹脂(A)の重量割合が90重量%以下であると、トナーの帯電性(帯電維持率)がより良好になる。
【0060】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料がポリエステル樹脂(A)及びシリコーン樹脂(C)以外の成分を含む場合、画像形成材料の重量を基準(100重量%)として、シリコーン樹脂(C)の重量割合は画像形成材料の重量に基づき、0.1~1重量%であり、好ましくは0.1~0.7重量%、更に好ましくは0.1~0.5重量%である。シリコーン樹脂(C)の重量割合が0.1重量%未満であると、耐ホットオフセット性の向上が得られず、1重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0061】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料が更にポリエステル樹脂(B)を含む場合、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100重量%に対するポリエステル樹脂(A)の重量割合は10~90重量%であることが好ましく、10~80重量%であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の重量割合が10重量%以上であると、トナーの定着幅をより広くすることができる。また、ポリエステル樹脂(A)の重量割合が90重量%以下であると、トナーの帯電性(帯電維持率)がより良好になる。
【0062】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料は、ポリエステル樹脂(A)を1種類又は複数種類含んでいてもよく、ポリエステル樹脂(B)を1種類又は複数種類含んでいてもよく、シリコーン樹脂(C)を1種類又は複数種類含んでいてもよい。ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)又はシリコーン樹脂(C)が複数種類含まれる場合のそれぞれの含有量は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)又はシリコーン樹脂(C)のそれぞれの合計量とする。
【0063】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料はトナー用途に好ましく用いることができる。
トナー用途に用いる場合には、必要により、着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等から選ばれる1種以上の公知の添加剤を含有してもよい。
【0064】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料及び顔料等のすべてを使用することができる。例えば、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられる。着色剤は、これらのいずれか単独であってもよく、2種以上が混合されたものであってもよい。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末若しくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー用画像形成材料100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは3~10重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、画像形成材料100重量部に対して、好ましくは20~150重量部、より好ましくは40~120重量部である。
【0065】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステルワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0066】
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-ドデセン、1-オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及び熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル等]等との共重合体及びサゾールワックス等が挙げられる。
【0067】
高級アルコールとしては、炭素数30~50の脂肪族アルコールなどであり、例えばトリアコンタノールが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数30~50の脂肪酸などであり、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0068】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素ポリマー及びハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
荷電制御剤の具体例としては、例えばT-77(保土谷化学工業株式会社製のアゾ系鉄錯体)等が挙げられる。
【0069】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末等が挙げられる。
【0070】
その他の添加剤としては、メラミン化合物等が挙げられる。
【0071】
着色剤の含有量はトナーの重量に基づき、好ましくは0.05~60重量%、より好ましくは0.1~55重量%、更に好ましくは0.5~50重量%である。
離型剤の含有量はトナーの重量に基づき、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、更に好ましくは1~10重量%である。
荷電制御剤の含有量はトナーの重量に基づき、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%、更に好ましくは0.5~7.5重量%である。
流動化剤の含有量はトナーの重量に基づき、好ましくは0~10重量%、より好ましくは0~5重量%、更に好ましくは0.1~4重量%である。
また、添加剤の含有量の合計量はトナーの重量に基づき、好ましくは3~70重量%、より好ましくは4~58重量%、更に好ましくは5~50重量%である。
トナーの組成比を上記の範囲とすることで、低温定着性、耐ホットオフセット性、帯電性(帯電維持率)、印刷品質の耐久性、トナーの耐久性が良好なトナーを容易に得ることができる。
【0072】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料において、ポリエステル樹脂(A)合成後にポリエステル樹脂(A)及びシリコーン樹脂(C)を混合してもよいし、ポリエステル樹脂(A)合成中にシリコーン樹脂(C)を加えてもよい。また、シリコーン樹脂(C)がシリコーン含有ポリエステル樹脂になることがあってもよい。
【0073】
本発明のトナーバインダー用画像形成材料をトナー用途に用いる場合にはトナーとなる。トナーは、公知の混練粉砕法、乳化転相法及び重合法等のいずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、更に分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5~20μmの微粒とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
なお、体積平均粒径(D50)はコールターカウンター{例えば、商品名:マルチサイザーIII[ベックマン・コールター(株)製]}を用いて測定される。
【0074】
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3~15μmが好ましい。
【0075】
トナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル樹脂、非硬化型シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリア粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。キャリア粒子を用いる場合、トナーとキャリア粒子との重量比は、1/99~99/1が好ましい。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
なお、トナーは、キャリア粒子を含まなくてもよい。
【0076】
トナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法及びフラッシュ定着方法等が適用できる。
【0077】
トナー及び本発明のトナーバインダー用画像形成材料は電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像又は磁気潜像の現像に用いられる。更に詳しくは、特にフルカラー用に好適な静電荷像又は磁気潜像の現像に用いられる。
【実施例0078】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
<製造例1>ポリエステル樹脂(A1)の合成
反応槽中に、エチレングリコール330重量部、ビスフェノールA・PO2モル付加物480重量部、PETフレーク(市販のPETボトルを1cm角にカットしたもの)558重量部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させ、次いで0.5~2.5kPaの減圧下で反応させ、酸価が2mgKOH/g以下になった時点で175℃まで冷却した。次に、無水トリメリット酸15重量部を入れ、175℃で1時間常圧エステル化した後、取り出してポリエステル樹脂(A1)を得た。
ポリエステル樹脂(A1)のTgは65℃、重量平均分子量は6300であった。
【0080】
<製造例2~4、8、9、11>ポリエステル樹脂(A2)~(A4)、(A8)、(A9)、(A11)の合成
表1に記載の組成にした以外は実施例1と同様にしてそれぞれポリエステル樹脂(A2)~(A4)、(A8)、(A9)、(A11)を得た。
【0081】
<製造例5>ポリエステル樹脂(A5)の合成
反応槽中に、エチレングリコール294重量部、ネオペンチルグリコール6重量部、PETフレーク(市販のPETボトルを1cm角にカットしたもの)762重量部、イソフタル酸283重量部及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させ、次いで0.5~2.5kPaの減圧下で反応させ、酸価が1mgKOH/gになった時点で取り出してポリエステル樹脂(A5)を得た。
ポリエステル樹脂(A5)のTgは60℃、重量平均分子量は7600であった。
【0082】
<製造例6、7、10>ポリエステル樹脂(A6)、(A7)、(A10)の合成
表1に記載の組成にした以外は実施例5と同様にしてそれぞれポリエステル樹脂(A6)、(A7)、(A10)を得た。
【0083】
<比較製造例1>ポリエステル樹脂(RA1)の合成
反応槽中に、エチレングリコール500重量部、イソフタル酸830重量部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させ、次いで0.5~2.5kPaの減圧下で反応させ、酸価が0.5mgKOH/gになった時点で取り出してポリエステル樹脂(RA1)を得た。
ポリエステル樹脂(RA1)のTgは60℃、重量平均分子量は5800であった。
【0084】
<比較製造例2>ポリエステル樹脂(RA2)の合成
反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物774重量部、テレフタル酸288重量部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させ、次いで0.5~2.5kPaの減圧下で反応させ、酸価が0.2mgKOH/gになった時点で取り出してポリエステル樹脂(RA2)を得た。
ポリエステル樹脂(RA2)のTgは70℃、重量平均分子量は6000であった。
【0085】
ポリエステル樹脂(A1)~(A11)、(RA1)~(RA2)の物性を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
<製造例12>ポリエステル樹脂(B1)の合成
反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物140重量部、ビスフェノールA・PO3モル付加物600重量部、フェノールノボラックのEO5.6モル付加物32重量部、テレフタル酸176重量部、無水トリメリット酸17重量部(5.2モル%)、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、220℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させ、次いで0.5~2.5kPaの減圧下で2時間反応させた。その後、210℃で無水トリメリット酸90重量部を加え、常圧下で1時間反応させた後、0.5~5kPaの減圧下で10時間反応させ、取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化しポリエステル樹脂(B1)を得た。
ポリエステル樹脂(B1)のTgは59℃、ピークトップ分子量は6200であった。ポリエステル樹脂(B1)の物性を表2に示す。
【0088】
<製造例13>ポリエステル樹脂(B2)の合成
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール715重量部、テレフタル酸740重量部、アジピン酸35重量部、重合触媒としてテトラブトキシチタネート1重量部を入れ、180℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら12時間反応させた。次いで230℃まで除々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水を除去しながら4時間反応させ、更に0.7~2.7kPaの減圧下に反応させ、軟化点が88℃になった時点で冷却した。回収されたプロピレングリコールは325重量部であった。次いで、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸50重量部を加え、密閉下2時間反応後、220℃、2.7~5.3kPaの減圧下で反応させ所定の軟化点で取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化しポリエステル樹脂(B2)を得た。
ポリエステル樹脂(B2)のTgは60℃、ピークトップ分子量は4500であった。ポリエステル樹脂(B2)の物性を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
<製造例14>シリコーン樹脂(C1)の合成
熱硬化型シリコーン樹脂[KS-847T:信越化学工業社製]100重量部に白金触媒[CAT-PL-50T:信越化学工業社製]3重量部を加えて攪拌した。エバポレーターにより、溶剤を除去して、硬化型シリコーン樹脂組成物を調整した。この硬化型シリコーン樹脂組成物を170℃で2時間加熱し、得られた硬化物を粉砕し、硬化型シリコーン樹脂の硬化物であるシリコーン樹脂(C1)を得た。
シリコーン樹脂(C1)は、熱重量・示差熱同時分析において、昇温速度10℃/分で100℃から500℃まで昇温した際の250℃~500℃の範囲での重量減少が28重量%であった。
【0091】
<実施例1~12及び比較例1、2、4>
ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)及びシリコーン樹脂(C1)を表3の配合比(重量部)に従って配合し、それぞれトナーバインダー(TB1)~(TB12)、(RTB1)、(RTB2)及び(RTB4)を得た。
【0092】
次いで、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて、トナーバインダー(TB1)~(TB12)、(RTB1)、(RTB2)及び(RTB4)それぞれと、着色剤、離型剤及び荷電制御剤とを予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。次いで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS-I]で分級し、粒径D50が7μmのトナー粒子を得た。
更に、トナー粒子100重量部にコロイダルシリカ[アエロジルR972:日本アエロジル(株)製]0.5重量部をサンプルミルにて混合して本発明のトナーバインダー用画像形成材料であるトナー(TC1)~(TC12)、(RC1)、(RC2)及び(RC4)をそれぞれ得た。
【0093】
<比較例3>
実施例1と同様に、表3に示す配合比に従って配合し、シリコーン樹脂(C1)を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にトナーバインダー(RTB3)及びトナー(RTC3)を得た。
【0094】
なお、表3中の着色剤、離型剤、荷電制御剤は以下の通りである。
着色剤:カーボンブラックMA-100[三菱化学(株)製]
離型剤:カルナバワックス[東洋アドレ(株)製]
荷電制御剤:T-77[保土谷化学(製)]
【0095】
[評価方法]
〔1〕低温定着性
上記のトナーを用いて、市販複写機[AR5030;シャープ(株)製]を用いて現像した未定着画像を、市販複写機[AR5030;シャープ(株)製]の定着機を用いて評価した。定着画像をパットで擦った後の、マクベス反射濃度計RD-191[マクベス(株)製]を用いて測定した画像濃度の残存率が75%以上となる定着ロール温度を最低定着温度(MFT)(℃)とした。MFTが低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
表3にはMFTを低温定着性(℃)として示した。低温定着性が135℃以下であれば良好である。
【0096】
〔2〕離型性(耐ホットオフセット性)
上記の低温定着性評価方法と同様にして、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。ホットオフセットが発生した定着ロール温度をホットオフセット発生温度(HOT)(℃)とした。HOTが高いほど、耐ホットオフセット性に優れることを意味する。
表3にはHOTを耐ホットオフセット性(℃)として示した。耐ホットオフセット性が220℃以上であれば良好である。
【0097】
〔3〕定着幅
HOTからMFTを差し引いたものを定着幅(℃)として表3に示した。定着幅が大きいほど、低温定着性と耐ホットオフセット性のバランスがよいことを意味する。定着幅が100℃以上であると良好である。
【0098】
〔4〕耐久性
市販複写機[MX-M754FN、シャープ(株)製]を用いて、中身のトナーを取り出し、キャリアとトナーを分離し、エアブローでカートリッジ内部を洗浄したのち、作製したトナーとキャリアを混合し、これを40℃、相対湿度50%で14日間調湿した。これによってより厳しい条件での耐久性を評価することができる。これを二成分現像剤として、75枚/分の印刷速度で連続コピーを行い、2千枚、6千枚、1万枚の各印刷状態の確認、及びトナーの一部を抜き取って粒径測定を行い、以下の基準で耐久性を評価した。
体積平均粒径(D50)はコールターカウンター{商品名:マルチサイザーIII[ベックマン・コールター(株)製]}を用いて測定した。結果を表3に示した。
[判定基準]
<印刷品質>
◎:1万枚コピー後も画質に変化なく、カブリの発生もない。
○:1万枚コピー後でカブリが発生している。
△:6千枚コピー後でカブリが発生している。
×:2千枚コピー後でカブリが発生している。
<トナーの状態>
◎:粒径D50の変化が3%未満で、2μm以下の微粉は確認されない。
○:粒径D50の変化が3~5%で、2μm以下の微粉は確認されない。
×:粒径D50の変化が5%を超えている、又は2μm以下の微粉の発生がある。
この評価条件では印刷品質とトナーの状態がいずれも〇又は◎の範囲であることが好ましい。
【0099】
【表3】
【0100】
ポリエステル樹脂(A)及びシリコーン樹脂(C)を含む実施例のトナーは、離型性及び耐久性、十分広い定着幅に優れていた。一方で、比較例のトナーは、少なくとも1つの評価項目で性能が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明におけるトナーバインダー用画像形成材料は、耐久性及び離型性に優れ、広い定着幅を有するため、電子写真や静電記録や静電印刷等に用いる、静電荷像現像用トナー用として好適に使用できる。更に、インクジェット用、記録媒体用表面改質剤として好適に使用できる。