(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099931
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】竪樋用控具及び雨水排水構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
E04D13/08 301Q
E04D13/08 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216932
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】四谷 智子
(72)【発明者】
【氏名】清水 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】西村 宙
(57)【要約】
【課題】近接した複数の竪樋を用いて雨水を排水する雨水排水構造に利用でき、かつ、その構造における施工工数を少なくできると共に、その構造の外観を向上できる竪樋用控具を提供する。
【解決手段】竪樋用控具は、建物の外壁面101に固定される固定部12と、少なくとも2つの竪樋2を支持する少なくとも2つの竪樋支持部14,16とを含む。2つの竪樋支持部の一方の竪樋支持部14の外壁面101側に固定部12が設けられる。竪樋用控具10は、固定部12から、2つの竪樋支持部の他方の竪樋支持部16に向かって延伸して、他方の竪樋支持部16に接続される連結部50を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面に固定される固定部と、少なくとも2つの竪樋を支持する少なくとも2つの竪樋支持部と、を備えた竪樋用控具であって、
前記2つの竪樋支持部の一方の竪樋支持部の外壁面側に前記固定部が設けられ、
前記固定部から、前記2つの竪樋支持部の他方の竪樋支持部に向かって延伸して、前記他方の竪樋支持部に接続される連結部を備える、
竪樋用控具。
【請求項2】
前記固定部は、取り付けネジにより前記外壁面に固定され、
前記連結部は、前記他方の竪樋支持部から前記外壁面側に向かって前記取り付けネジ側に斜めに延びている、
請求項1に記載の竪樋用控具。
【請求項3】
前記固定部の前記外壁面に接触する部分の左右方向の幅は、前記竪樋と同径以下であり、12mm以上である、
請求項1に記載の竪樋用控具。
【請求項4】
前記2つの竪樋支持部の少なくとも1つの前記竪樋支持部は、前記竪樋の後側面に設けられた2条の竪樋爪部に対応する2つの嵌合爪部を有し、
前記2つの嵌合爪部のそれぞれは、前後方向に延びた部分の先端に前記竪樋爪部と係止可能な係止部を有する板状部であり、
前記2つの嵌合爪部の一方の嵌合爪部の係止面から厚みが変化する根元端までの前後方向長さは、他方の嵌合爪部の係止面から厚みが変化する根元端までの前後方向長さの1.4倍以上である、
請求項1に記載の竪樋用控具。
【請求項5】
軒樋と、前記軒樋に接続された複数の竪樋と、前記複数の竪樋を支持し建物の外壁面に固定される竪樋用控具とを備える雨水排水構造であって、
前記竪樋用控具は、請求項1~4のいずれか1項に記載の竪樋用控具である、
雨水排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の外壁面に固定される固定部と、竪樋を支持する竪樋支持部と、を備えた竪樋用控具及び雨水排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の屋根の軒先に取り付けられた軒樋に流れ落ちた雨水を、集水して竪樋に送り、竪樋を通って下側から排出することが行われる。また、建物の屋上部に降った雨水を取水口から竪樋を介して下側から排出することも行われる。
【0003】
特許文献1には、屋上部に降った雨水を、取水口及び呼び樋を介して分岐部に送り、分岐部から、互いに近接した2つの竪樋に分配して下側に流すことが記載されている。特許文献1には、分岐部より下側に設けられた連結部の両端に、2つの竪樋を支持する支持部が設けられ、連結部材の中央部に貫通したネジにより連結部材を建物に固定することも記載されている。連結部材は、竪樋用控具に相当する。この構成では、複数の竪樋を用いて雨水を排水するので、従来と同量の雨水を処理する場合にそれぞれの竪樋の径を小さくでき、それにより、建物の外観を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、軒樋や屋上部に、互いに近接した複数の竪樋の上端を接続して、それぞれの竪樋に軒樋からの雨水を排水することが考えられる。しかし、複数の竪樋のそれぞれを建物に固定するために、建物の外壁面の内側に、互いに大きく離れて配置される複数の主柱や間柱に、複数の竪樋のそれぞれを、控具を用いて固定する必要がある。この場合には、施工工数が多くなると共に、目立ちやすい竪樋が比較的大きく離れて複数配置されるので、建物の外観を損なう原因となる。
【0006】
一方、特許文献1に記載された構成では、近接した2つの竪樋を用いて雨水を排水できることにより外観を向上できると共に、竪樋固定用の控具を少なくできることにより施工工数を少なくできる可能性はある。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、竪樋用控具に相当する連結部材の左右方向中央部にネジが貫通している。これにより、控具を前側から見た場合に、ネジが見えやすいので、外観の向上の面から改良の余地がある。
【0007】
そこで、本開示の目的は、近接した複数の竪樋を用いて雨水を排水する雨水排水構造に利用でき、かつ、雨水排水構造における施工工数を少なくできると共に、雨水排水構造の外観を向上できる竪樋用控具と、その竪樋用控具を備える雨水排水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る竪樋用控具は、建物の外壁面に固定される固定部と、少なくとも2つの竪樋を支持する少なくとも2つの竪樋支持部と、を備えた竪樋用控具であって、前記2つの竪樋支持部の一方の竪樋支持部の外壁面側に前記固定部が設けられ、前記固定部から、前記2つの竪樋支持部の他方の竪樋支持部に向かって延伸して、前記他方の竪樋支持部に接続される連結部を備える、竪樋用控具である。
本開示に係る雨水排水構造は、軒樋と、軒樋に接続された複数の竪樋と、複数の竪樋を支持し建物の外壁面に固定される竪樋用控具とを備える雨水排水構造であって、竪樋用控具は、本開示に係る竪樋用控具である、雨水排水構造である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様の竪樋用控具によれば、近接した複数の竪樋を用いて雨水を排水する雨水排水構造に利用でき、かつ、雨水排水構造における施工工数を少なくできると共に、雨水排水構造の外観を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の竪樋用控具を含む雨水排水構造が設置された建物の一部を示す斜視図である。
【
図2】
図1のA部における2つの竪樋の一部を切断した状態で、2つの竪樋及び2つの竪樋に取り付けた竪樋用控具を正面側から見た斜視図である。
【
図3】
図2に示す構造を上側から見た斜視図である。
【
図6】
図2と同様の方向から竪樋用控具を見た斜視図である。
【
図9】(a)は実施形態の別例の第1例を示している
図7に対応する模式図であり、(b)は実施形態の別例の第2例を示している
図7に対応する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る竪樋用控具の実施形態を説明する。以下で説明する形状、配置、個数、材料等は、説明のための例示であって、竪樋用控具の仕様により適宜変更することができる。以下では全ての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0012】
図1~
図8を用いて実施形態を説明する。
図1は、実施形態の竪樋用控具10を含む雨水排水構造1が設置された建物100の一部を示す斜視図である。雨水排水構造1が設けられた建物100は、屋根103の軒先に軒樋104が取り付けられる。雨水排水構造1は、軒樋104と、軒樋104に接続された複数の竪樋2と、複数の竪樋2を支持し建物100の外壁面101に固定される竪樋用控具10とを備える。具体的には、軒樋104は、前後方向に分かれた前壁105及び後壁106の下端が底板107で連結された断面溝形状であり左右方向に延びている。なお、「左右方向」とは、本明細書において、後述の竪樋用控具10が取り付けられる外壁面101に対向する正面側から見た場合の左右方向を意味する。また、前側は正面側であり、後側は外壁面101側であり、正面側と外壁面側とを結ぶ方向が前後方向である。
【0013】
軒樋104は、例えば建物100に取り付けられた吊具(図示せず)により吊り下げ支持されて、屋根103の軒先に取り付けられ、屋根から流れ落ちる雨水を受けるように配置される。軒樋104は、上面が開口すると共に、左右方向両端が塞がれる。軒樋104の底板107の中間部における左右方向に近接した2つの位置にはドレン孔(図示せず)が形成される。各ドレン孔にドレン108を介して、上側の竪樋109が接続される。竪樋109の下端には第1エルボ110、呼び樋111、第2エルボ112を介して、建物100の外壁面101の近くで上下方向に延びる下側の竪樋2が接続される。さらに各竪樋2の上下方向複数位置は、後述の複数の竪樋用控具10を介して外壁面101に固定される。各竪樋2は、雨水を下方に排出する。このとき、各竪樋2の下端は、排水管カバー5と、地中に埋設された排水管(図示せず)とを介して、排水桝(図示せず)に接続される。排水桝には、下水管につながった配管が接続される。雨水排水構造1は、軒樋104と、2つずつのドレン108、竪樋109、第1エルボ110、呼び樋111、第2エルボ112、及び竪樋2と、複数の竪樋用控具10と、排水管カバー5とを含んで構成される。雨水排水構造1では、軒樋104内の雨水が、ドレン108、竪樋109、第1エルボ110、呼び樋111、第2エルボ112、及び竪樋2を介して排水管カバー5に送られ、排水管カバー5から排水管を介して排水桝に送られる。
【0014】
本例では、2つの竪樋2の上下方向複数位置が竪樋用控具10を介して建物100の外壁面101に固定される。以下、竪樋用控具10の構成を中心に説明する。
【0015】
図2は、
図1のA部における2つの竪樋2の一部を切断した状態で、2つの竪樋2及び2つの竪樋2に取り付けた竪樋用控具10を正面側から見た斜視図である。
図3は、
図2に示す構造を上側から見た斜視図である。
図4は、
図2に示す構造の正面図である。
図5は、
図2に示す構造の右側から見た図である。なお、上、下は、外壁面101に竪樋用控具10を介して竪樋2を固定した状態での上、下を意味する。
【0016】
図2~
図5に示すように、竪樋用控具10は、左右方向に近接した状態で左右方向に離れて配置され、上下方向に延びる2つの竪樋2の後側に配置される。竪樋用控具10は、各竪樋2の後側面に設けられ上下方向に延びる2条の竪樋爪部3,4を掴んで、2つの竪樋2を支持する。各竪樋爪部3,4は、竪樋2の後側面の左右に離れた2つの位置から前後方向に突出し、その後端で互いに離れるように略直角に曲げられ先細状となっている。
【0017】
竪樋用控具10は、後端から突出するように取り付けられた取り付けネジ70により、外壁面101にネジ止め固定される。このとき、外壁面の内側に配置される主柱または間柱に、取り付けネジがネジ止め固定されることが好ましい。なお、住宅において、隣り合う間柱同士の間隔は、通常約900mmである。
【0018】
図6は、
図2と同様の方向から竪樋用控具10を見た斜視図である。
図7は、
図2に示す構造の上から見た図である。
図8は、
図5のB-B断面図である。
【0019】
図6~
図8に示すように、竪樋用控具10は、正面視で上下方向の高さが一定の横長の矩形状であり、上面視で左右方向の一方側(
図7の左側)に片寄って頂部が設けられた山形状のブロック状である。竪樋用控具10は、山形の頂部に対応し、外壁面101に接触した状態で固定される固定面13を有するブロック状の固定部12を含む。竪樋用控具10は、固定部12を1つのみ含んでいる。さらに、竪樋用控具10は、固定部12に一体に設けられ、互いに左右方向に離れて設けられる2つの竪樋支持部14,16と、連結部50とを含む。
【0020】
図8に示すように、固定部12には、外壁面固定用の取り付けネジ70が貫通する孔12aが前後方向に形成される。竪樋用控具10は、例えば樹脂等により一体に形成される。なお、竪樋用控具10は、ステンレス合金、鉄等の金属により形成されてもよい。以下では、竪樋用控具10は、控具10と記載する。
【0021】
固定部12の外壁面101側と反対側である正面側には、後述の押付部28が、前側に突出するように設けられる。固定部12のうち、押付部28を左右両側から挟む部分の前側端には、前後方向の位置が異なる肩部12b、12cが設けられる。左の肩部12bは、右の肩部12cより後側に位置する。
図8では、構成要素同士の境界を分かりやすくするために、固定部12の前側端を実線L1、L2で示し、右側端を二点鎖線L3で示している。
【0022】
2つの竪樋支持部14,16は、左右2つの竪樋2を支持する。左側の竪樋支持部14は、固定部12の正面側に設けられ、左右方向両側の2つの嵌合爪部20,21と、固定部12に対し2つの嵌合爪部20,21の左右方向の間から前側に突出するように設けられ前端が直方体状であるブロック状の押付部28とを有する。押付部28の前側面には左の竪樋2の外周面の後端縁が押し付けられる。押付部28の前側面には、断面円形で前後方向に延びる凹部29の前端が開口する。凹部29の底部には、貫通孔12aの前端が開口する。凹部29には、取り付けネジ70の頭部71が挿入可能であり、凹部29の底面が頭部71の座面となる。固定部12は、取り付けネジ70により、外壁面101に固定される。このとき、取り付けネジ70は、凹部29を貫通し、頭部71が凹部29の底面に押し付けられ、取り付けネジ70のネジ軸72が貫通孔12aを貫通する。
【0023】
また、固定部12の外壁面101に接触する部分である固定面13の左右方向の幅は、左の竪樋2と同径以下であり、かつ12mm以上である。
【0024】
2つの嵌合爪部20,21は、左側の竪樋2の2条の竪樋爪部3,4に対応し、2条の竪樋爪部3,4に係止される。2つの嵌合爪部20,21のうち、左側の嵌合爪部20は、固定部12の左の肩部12bの前端から、左前側に傾斜して延びる傾斜板部22と、傾斜板部22の前端に連結され前後方向に延びた前後方向板部23と、前後方向板部23の先端の押付部28側面から右側に突出した先細の係止部24とを有する板状部である。
【0025】
2つの嵌合爪部20,21のうち、右側の嵌合爪部21は、固定部12の右の肩部12cの前端から、前後方向に延びた前後方向板部25と、前後方向板部25の先端の押付部28側面から左側に突出した先細の係止部26とを有する板状部である。これにより、各嵌合爪部20,21の係止部24,26は、前後方向板部23,25の先端に設けられ、左の竪樋2の竪樋爪部3,4と係止可能である。
【0026】
右側の竪樋支持部16は、後述の連結部50の右側端部に接続されたものであり、左右方向両側の2つの嵌合爪部30,31と、連結部50の右側端部に対し2つの嵌合爪部30,31の左右方向の間から前側に突出するように設けられた略直方体状のブロック状の押付部38とを有する。各嵌合爪部30,31は、後で説明する。
【0027】
連結部50は、固定部12から右側の竪樋支持部16に向かって延伸して、右側の竪樋支持部16に接続されるアーム状の部分である。また、連結部50は、右側の竪樋支持部16から外壁面101側である後側に向かって、取り付けネジ70側である左側に、連結部50の長手方向の全体で斜めに延びている。
【0028】
図8に示すように、連結部50には、下面に開口し、連結部50の長手方向に沿った細長の凹部50aが形成される。凹部50aは、連結部50の肉盗み部としての役目を有し、控具10の軽量化を図る。
【0029】
連結部50の右側端部の前側端には、押付部38が前側に突出するように設けられる。連結部50の右側端部の前側端のうち、押付部38を左右両側から挟む部分の前側端には、前後方向の位置が異なる肩部51b、51cが設けられる。右の肩部51cは、左の肩部51bより後側に位置する。
図8では、構成要素同士の境界を分かりやすくするために、連結部50の右側端部の前側端を、実線L4、L5、二点鎖線L6で示している。
【0030】
右側の竪樋支持部16を形成する2つの嵌合爪部30,31のうち、右側の嵌合爪部31は、連結部50の右の肩部51cの前端から、前後方向に延びた前後方向板部33と、前後方向板部33の先端の押付部38側面から左側に突出した先細の係止部34とを有する板状部である。2つの嵌合爪部30,31のうち、左側の嵌合爪部30は、連結部50の左の肩部51bの前端から、前後方向に延びた前後方向板部35と、前後方向板部35の先端の押付部38側面から右側に突出した先細の係止部36を有する板状部である。これにより、各嵌合爪部30,31の係止部36,34は、前後方向板部35,33の先端に設けられ、右の竪樋2の竪樋爪部3,4と係止可能である。
【0031】
図7に示すように、左の竪樋支持部14の2つの嵌合爪部20,21のうち、左の嵌合爪部20の係止部24の係止面(
図7の上側面)から、厚みが変化する根元端T1までの前後方向長さd1は、右の嵌合爪部21の係止部26の係止面(
図7の上側面)から厚みが変化する根元端T2までの前後方向長さd2の1.4倍以上である。より好ましくは、長さd1は長さd2の1.5倍以上である。
【0032】
また、右の竪樋支持部16の2つの嵌合爪部30,31のうち、右の嵌合爪部31の係止部34の係止面(
図7の上側面)から、厚みが変化する根元端T3までの前後方向長さd3は、左の嵌合爪部30の係止部36の係止面(
図7の上側面)から厚みが変化する根元端T4までの前後方向長さd4の1.4倍以上である。より好ましくは、長さd3は長さd4の1.5倍以上である。
【0033】
さらに、控具10の左側面のうち、左側端の前後方向板部23の後端より後側の傾斜板部22を含む部分には、後側に向かって右側に傾斜する第1傾斜面S1が設けられる。また、控具10の右側面のうち、右側端の前後方向板部33の後端より後側には、後側に向かって左側に傾斜する第2傾斜面S2が設けられる。第1傾斜面S1と外壁面101とのなす角度である第1角度θ1に比べて、第2傾斜面S2と外壁面101とのなす角度である第2角度θ2は小さい。第1傾斜面S1を設けることにより、竪樋2及び控具10を左斜め前側から見た場合に、控具10が竪樋2の裏側に隠れて見えにくくなる。例えば、
図7の矢印α方向の後側から前側に見た場合に、控具10が左の竪樋2に隠れて見えにくくなる。これにより、雨水排水構造1の外観のさらなる向上を図れる。例えば、第1角度θ1は60度以下とすることができる。また、第2傾斜面S2を設けることにより、後述のように、控具10を右斜め前側から見た場合に、控具10の後側が見えにくくなる。
【0034】
また、左右2つの竪樋支持部14,16の間隔dLは、10mm以上で、かつ、1つの竪樋2の外径以下、例えば45mm以下とすることが好ましい。間隔dLがこのように規制される場合には、2つの竪樋2の間において控具10の外形を示す横方向のラインLa、Lb(
図4)が目立つことを抑制できると共に、竪樋2の上流側端が接続される軒樋104のドレン孔同士の間隔や、竪樋2の下流側端の外側に嵌合接続される配管部の直径を適正に確保しやすくなる。
【0035】
上記の控具10は、2つの竪樋2に支持する前に、取り付けネジ70により外壁面101において、上下方向の所定位置に固定する。
図1に示す構成では、複数の控具10が、外壁面101の上下方向の複数の所定位置に固定される。その後、各控具10の各竪樋支持部14,16の係止部24,26、34,36により、対応する竪樋2の竪樋爪部3,4を係止し、各竪樋支持部14,16に竪樋2を固定する。
【0036】
上記の控具10によれば、近接した2つの竪樋2を用いて雨水を排水する雨水排水構造1に利用できる。これにより、従来と同量の雨水を処理する場合にそれぞれの竪樋2の径を小さくできるので、雨水排水構造1の前後方向の奥行きを小さくできる。このため、雨水排水構造1を含む建物100の外観を向上できる。
【0037】
また、控具10として、2つの竪樋2を共通に支持する複数の控具10があればよい。2つの竪樋2で別の控具10を用いて外壁面101に固定する必要はない。これにより、雨水排水構造1における施工工数を少なくできる。また、控具10のうち、左側の竪樋2で正面側から隠れる部分である左側端部に、外壁固定用の取り付けネジ70が貫通している。これにより、控具10を正面側から見た場合に、取り付けネジ70が見えないので、雨水排水構造1の外観を向上できる。
【0038】
また、控具10は、固定部12から、右側の竪樋支持部16に向かって延伸して、右側の竪樋支持部16に接続される連結部50を備える。また、連結部50の正面側に2つの竪樋2を支持する2つの竪樋支持部14,16が設けられる。これにより、
図8に、二点鎖線枠Cで示す連結部50の前側で、2つの竪樋支持部14,16で挟まれた左右方向中間領域に控具10を設ける必要がなく、その部分に空間120を形成できる。これにより、2つの竪樋2を正面側から見たときに、控具10のうち、2つの竪樋2の間から見える部分をより外壁面101側に配置できるので、控具10に日光が当たることを抑制できる。このため、太陽光による控具10の劣化を抑制できる。また、2つの竪樋2を正面側から見たときに、竪樋2の上下方向の外形線だけが見える場合と比べて、2つの竪樋2の間の控具10の外形線である横方向に延びるラインLa、Lbは、目立ちやすいため、住宅等の建物の外観上のノイズとなり易い。一方、本例では、控具10のラインLa,Lbが竪樋2の後端に対して、より後側に位置するため、建物の外観への悪影響を低減できる。
【0039】
また、連結部50は、右側の竪樋支持部16から外壁面101側に向かって取り付けネジ70側に斜めに延びている。これにより、上記のように、控具10の右側面には、外壁面101と第2傾斜面S2とのなす角度である第2角度θ2を小さくできる第2傾斜面S2を形成できる。このため、控具10を右斜め前側から見た場合に、控具10の後側が見えにくくなる。例えば、
図7の矢印β方向の後側から前側に見た場合に、控具10の後側部分が見えにくくなる。これにより、雨水排水構造1の外観のさらなる向上を図れる。さらに、控具10のうち、外壁面101に接触する部分の面積を小さくできるので、外壁面101と控具10の間に雨水や砂等の堆積物が溜まることを抑制できる。これにより、外壁面101に黒ずみなどの汚れが生じるリスクを低減できる。
【0040】
また、固定部12の外壁面101に接触する部分である固定面13の左右方向の幅は、前記竪樋2と同径以下であり、12mm以上である。これにより、控具10のうち、外壁面101に接触する部分の面積をさらに小さくできるので、外壁面101と控具10の間に雨水や砂等の堆積物が溜まることをさらに抑制できる。このため、外壁面101に黒ずみなどの汚れが生じるリスクをさらに低減できる。また、固定部12の外壁面101に接触する部分の左右方向の幅が12mm以上であるので、この幅を、取り付けネジ70として用いられる一般的なネジの頭部の外径以上とできる。このため、控具10と外壁面101との結合強度を実用上必要な強度以上に確保できる。
【0041】
また、各竪樋支持部14,16において、2つの嵌合爪部20,21,30,31の一方の嵌合爪部20,31の係止面から厚みが変化した根元端T1,T3までの前後方向長さd1、d3は、他方の嵌合爪部21,30の係止面から厚みが変化した根元端T2、T4までの前後方向長さd2,d4の1.4倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。これにより、一方の嵌合爪部20,31にバネ性を持たせやすくなるので、一方の嵌合爪部20,31を弾性変形させることで、竪樋2の2つの竪樋爪部3,4を2つの嵌合爪部20,21、30,31に係止させる作業が容易になり、施工性を高くできる。また、他方の嵌合爪部21,30は曲げ剛性を高くできるので、外乱により嵌合爪部から竪樋爪部が外れ難い構造を実現できる。竪樋2を控具10に取り付ける場合には、まず、他方の嵌合爪部21,30に斜め前側から竪樋2の一方の竪樋爪部を挿入した後、一方の嵌合爪部20,31を外側に弾性的に広げて、竪樋2の他方の竪樋爪部を一方の嵌合爪部20,31に挿入することにより、2つの嵌合爪部に2つの竪樋爪部を係止できる。
【0042】
図9(a)は実施形態の別例の第1例を示している
図7に対応する模式図である。
図9(b)は実施形態の別例の第2例を示している
図7に対応する模式図である。
【0043】
図9(a)に示す別例の第1例の控具10aは、
図1~
図8の控具10に対して、2つの竪樋2の間隔Eに対する出寸法Fの割合(F/E)を大きくした以外、
図1~
図8の構成と同様である。出寸法Fは、外壁面101から竪樋2の外周面後端縁までの長さである。
【0044】
図9(b)に示す別例の第2例の控具10bは、
図9(a)の別例の第1例の控具10aと、間隔Eに対する出寸法Fの割合(F/E)が同じである。また、別例の第2例では、連結部50aは、右側の竪樋支持部16から外壁面101側に向かって取り付けネジ側に斜めに延びた傾斜部51と、傾斜部51の外壁面101側端から固定部12に向かって左右方向に沿って延びた左右方向延伸部52とを有する。これにより、別例の第2例では、左右方向延伸部52の後側面と外壁面101との間には前後方向の隙間daが形成される。このとき、隙間daは、例えば3mm以上である。また、傾斜部51の右側面である第2傾斜面S2と外壁面101とのなす角度である第2角度θ4は、80度以下である。
【0045】
図9(a)の別例の第1例、及び、
図9(b)の別例の第2例のいずれの場合でも、連結部50の右側の第2傾斜面S2と外壁面101とのなす角度である第2角度θ3、θ4は、80度以下となる。これにより、控具10を右斜め前側から見た場合に、控具10の後側が見えにくくなる。このため、雨水排水構造の外観を向上できる。特に、従来の雨水排水構造において一般的に長めとされている出寸法Fが60mmか、またはそれ以下の出寸法の場合には、第2角度θ3、θ4が80度以下であることが、控具10の後側が見えにくくなるために好ましい。
【0046】
さらに、
図9(a)の別例の第1例では、
図1~
図8の構成と同様に、連結部50の右側の竪樋支持部16から、外壁面101側である後側に向かって取り付けネジ側である左側に、連結部50の長手方向の全体で斜めに延びている。これにより、
図9(a)と
図9(b)とを比較すれば分かるように、別例の第1例では、右側の第2傾斜面S2と外壁面101とのなす角度である第2角度θ3は、別例の第2例の第2角度θ4より小さくなる。このため、別例の第1例では、控具10を右斜め前側から見た場合に、控具10の後側がさらに見えにくくなる。このため、別例の第1例では、別例の第2例に比べて、雨水排水構造の外観を向上できる効果が高くなる。
【0047】
なお、
図9(a)の構成よりも出寸法が小さくなる構成では、前側から控具10がさらに見え難くなるので、雨水排水構造の外観を向上できる効果は高くなる。例えば、出寸法は、30mm以下で、かつ、第2角度θ3を70度以下、例えば69度以下にすることがより好ましい。
【0048】
一方、連結部50が長手方向の全体で斜めに延びる場合に外観を向上できる効果は、間隔Eに対する出寸法Fの割合(F/E)が大きくなる場合に顕著になる。
【0049】
なお、上記の各実施形態において、控具10、10a、10bの左右方向の向きを逆にして、固定部12が控具の右側に位置するようにしてもよい。また、控具は、3つ以上の竪樋2を支持する3つ以上の竪樋支持部を備える構成としてもよい。このため、雨水排水構造も、軒樋に接続された3つ以上の竪樋と、3つ以上の竪樋を支持し建物の外壁面に固定される竪樋用控具とを備える構成とすることができる。また、控具10が備える複数の竪樋支持部のうち、一部の竪樋支持部のみにおいて、2つの嵌合爪部の一方の嵌合爪部の係止面から厚みが変化する根元端までの前後方向長さが、他方の嵌合爪部の係止面から厚みが変化する根元端までの前後方向長さの1.4倍以上である構成としてもよい。
【0050】
本開示は、以下の実施形態によりさらに説明される。
構成1: 建物の外壁面に固定される固定部と、少なくとも2つの竪樋を支持する少なくとも2つの竪樋支持部と、を備えた竪樋用控具であって、
前記2つの竪樋支持部の一方の竪樋支持部の外壁面側に前記固定部が設けられ、
前記固定部から、前記2つの竪樋支持部の他方の竪樋支持部に向かって延伸して、前記他方の竪樋支持部に接続される連結部を備える、
竪樋用控具。
構成2: 前記固定部は、取り付けネジにより前記外壁面に固定され、
前記連結部は、前記他方の竪樋支持部から前記外壁面側に向かって前記取り付けネジ側に斜めに延びている、
構成1に記載の竪樋用控具。
構成3: 前記固定部の前記外壁面に接触する部分の左右方向の幅は、前記竪樋と同径以下であり、12mm以上である、
構成1または構成2に記載の竪樋用控具。
構成4: 前記2つの竪樋支持部の少なくとも1つの前記竪樋支持部は、前記竪樋の後側面に設けられた2条の竪樋爪部に対応する2つの嵌合爪部を有し、
前記2つの嵌合爪部のそれぞれは、前後方向に延びた部分の先端に前記竪樋爪部と係止可能な係止部を有する板状部であり、
前記2つの嵌合爪部の一方の嵌合爪部の係止面から厚みが変化する根元端までの前後方向長さは、他方の嵌合爪部の係止面から厚みが変化する根元端までの前後方向長さの1.4倍以上である、
構成1から構成3のいずれか1つに記載の竪樋用控具。
構成5: 軒樋と、前記軒樋に接続された複数の竪樋と、前記複数の竪樋を支持し建物の外壁面に固定される竪樋用控具とを備える雨水排水構造であって、
前記竪樋用控具は、構成1~4のいずれか1つに記載の竪樋用控具である、
雨水排水構造。
【符号の説明】
【0051】
1 雨水排水構造、2 竪樋、5 排水管カバー、10,10a,10b 竪樋用控具、12 固定部、13 固定面、14,16 竪樋支持部、20,21 嵌合爪部、22 傾斜板部、23 前後方向板部、24 係止部、25 前後方向板部、26 係止部、28 押付部、29 凹部、30,31 竪樋支持部、33 前後方向板部、34 係止部、35 前後方向板部、36 係止部、38 押付部、50,50a 連結部、50a、51 傾斜部、52 左右方向延伸部、70 取り付けネジ、71 頭部、72 ネジ軸、100 建物、101 外壁面、103 屋根、104 軒樋、105 前壁、106 後壁、107 底板、108 ドレン、109 竪樋、110 第1エルボ、111 呼び樋、112 第2エルボ。