(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099935
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】アンプ及びロゴスキ型電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20250626BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
G01R15/18 A
G01R19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216937
(22)【出願日】2023-12-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「─」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】大村 一郎
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB14
2G025AC01
2G035AA08
2G035AA10
2G035AC02
2G035AC03
2G035AD10
2G035AD16
2G035AD20
(57)【要約】
【課題】長時定数を有するアンプ及びこのアンプを用いたロゴスキ型電流センサを提供する。
【解決手段】第1のオペアンプ21で構成した積分回路と、積分回路の後段に接続した第2のオペアンプ31で構成した増幅回路とを有するアンプであって、第1のオペアンプ21の出力端子は、第2のオペアンプ31の非反転入力端子に接続し、第1のオペアンプ21には、第1帰還コンデンサ22と、第1帰還抵抗体23を設け、第2のオペアンプ31には、第2帰還コンデンサ32と、第2帰還抵抗体33と、反転入力端子に一方端を接続するとともに他方端を接地した入力抵抗体34を設けたアンプとし、「Rf1・Cf1 = K・Rin2・Cf2」とする。
Cf1:第1帰還コンデンサ22の容量、
Rf1:第1帰還抵抗体23の抵抗値、
Cf2:第2帰還コンデンサ32の容量、
Rin2:入力抵抗体34の抵抗値。
K:0.9以上で1.1以下の任意の実数。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のオペアンプで構成した積分回路と、
前記積分回路の後段に接続した第2のオペアンプで構成した増幅回路と
を有するアンプであって、
前記第1のオペアンプの出力端子は、前記第2のオペアンプの非反転入力端子に接続し、
前記第1のオペアンプには、第1帰還コンデンサと、第1帰還抵抗体を設け、
前記第2のオペアンプには、第2帰還コンデンサと、第2帰還抵抗体と、反転入力端子に一方端を接続するとともに他方端を接地した入力抵抗体を設け、
Cf1:第1帰還コンデンサの容量、
Rf1:第1帰還抵抗体の抵抗値、
Cf2:第2帰還コンデンサの容量、
Rin2:入力抵抗体の抵抗値
とし、Kを0.9以上で1.1以下の任意の実数として、
Rf1・Cf1 = K・Rin2・Cf2
を満たすアンプ。
【請求項2】
ロゴスキコイルと、このロゴスキコイルの出力端子に接続したアンプとを有するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記アンプは、
第1のオペアンプで構成した積分回路と、
前記積分回路の後段に接続した第2のオペアンプで構成した増幅回路と
を有し、
前記第1のオペアンプの出力端子は、前記第2のオペアンプの非反転入力端子に接続し、
前記第1のオペアンプには、第1帰還コンデンサと、第1帰還抵抗体を設け、
前記第2のオペアンプには、第2帰還コンデンサと、第2帰還抵抗体と、反転入力端子に一方端を接続するとともに他方端を接地した入力抵抗体を設け、
Cf1:第1帰還コンデンサの容量、
Rf1:第1帰還抵抗体の抵抗値、
Cf2:第2帰還コンデンサの容量、
Rin2:入力抵抗体の抵抗値
とし、Kを0.9以上で1.1以下の任意の実数として、
Rf1・Cf1 = K・Rin2・Cf2 (式1)
を満たすロゴスキ型電流センサ。
【請求項3】
前記式1において
0.95 ≦ K ≦ 1.05
である請求項2に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項4】
前記式1において
1-α < K < 1+β (0<β<α)
である請求項2に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項5】
前記Cf2の表示値が、前記Cf1の表示値の10べき乗倍であり、
前記Rf1の表示値が、前記Rin2の表示値の前記10べき乗倍である
請求項2から4のいずれか1項に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項6】
前記Cf2の表示値が、前記Rf1の表示値の10べき乗倍であり、
前記Cf1の表示値が、前記Rin2の前記10べき乗倍である
請求項2から4のいずれか1項に記載のロゴスキ型電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンプ及びロゴスキ型電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、ロゴスキ型電流センサの開発を行っており、プリント基板等を用いてロゴスキコイルを作成し(例えば、特許文献1参照。)、このロゴスキコイルにアンプを接続して小型の電流センサとしている。
【0003】
ロゴスキコイルは空芯コイルであって、測定対象の導線をロゴスキコイルと交差させることで、導線を流れる交流電流が生成する磁場によりロゴスキコイルに誘起電圧を生じさせ、この誘起電圧が導線を流れる電流の時間微分値として出力されことを利用して、電流センサとしている。
【0004】
すなわち、ロゴスキコイルに生じた誘起電圧を積分回路に入力することで電流計測を可能としている。この積分回路は、オペアンプを利用した積分回路であり、積分回路の出力を増幅回路で増幅して利用している(例えば、特許文献2参照。)。増幅回路もオペアンプで構成することができ、通常、この積分回路と増幅回路とで、ロゴスキコイル用のアンプとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-020258号公報
【特許文献2】特開2019-138735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
積分回路を構成しているオペアンプでは、反転入力端子と出力端子との間に帰還コンデンサを接続しているが、時定数を大きくしようとして、この帰還コンデンサの容量を大きくすると、オペアンプのゲインを落とすことになり、信号ノイズの影響を受けやすくなるという問題があった。しかも、この信号ノイズが、積分回路の後段の増幅回路で増幅されることになっていた。そのため、通常では、計測対象によって求められる計測精度を考慮して帰還コンデンサの容量を設定していた。したがって、時定数を大きくすることが困難となることで、計測対象の交流電流の周波数が小さい場合に、十分な感度が得られないことがあった。
【0007】
このような状況下で、本発明者は、計測対象の交流電流の周波数が小さい場合の感度を向上させるべく研究開発を行い、積分回路の後段の増幅回路を利用することで、時定数を長く設定可能として、計測対象の交流電流の周波数が小さい場合の感度改善を図ることができ、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明では、長時定数としたアンプ及びこのアンプを用いたロゴスキ型電流センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアンプでは、第1のオペアンプで構成した積分回路と、積分回路の後段に接続した第2のオペアンプで構成した増幅回路とを有するアンプであって、第1のオペアンプの出力端子は、第2のオペアンプの非反転入力端子に接続し、第1のオペアンプには、第1帰還コンデンサと、第1帰還抵抗体を設け、第2のオペアンプには、第2帰還コンデンサと、第2帰還抵抗体と、反転入力端子に一方端を接続するとともに他方端を接地した入力抵抗体を設けているアンプとし、以下の条件を満たすことにした。
Cf1:第1帰還コンデンサの容量、
Rf1:第1帰還抵抗体の抵抗値、
Cf2:第2帰還コンデンサの容量、
Rin2:入力抵抗体の抵抗値
とし、Kを0.9以上で1.1以下の任意の実数として、
Rf1・Cf1 = K・Rin2・Cf2。
【0010】
また、本発明のロゴスキ型電流センサでは、ロゴスキコイルと、このロゴスキコイルの出力端子に接続したアンプとを有するロゴスキ型電流センサにおいて、アンプは、第1のオペアンプで構成した積分回路と、積分回路の後段に接続した第2のオペアンプで構成した増幅回路とを有し、第1のオペアンプの出力端子は、第2のオペアンプの非反転入力端子に接続し、第1のオペアンプには、第1帰還コンデンサと、第1帰還抵抗体を設け、第2のオペアンプには、第2帰還コンデンサと、第2帰還抵抗体と、反転入力端子に一方端を接続するとともに他方端を接地した入力抵抗体を設けているアンプとし、以下の条件を満たすことにした。
Cf1:第1帰還コンデンサの容量、
Rf1:第1帰還抵抗体の抵抗値、
Cf2:第2帰還コンデンサの容量、
Rin2:入力抵抗体の抵抗値
とし、Kを0.9以上で1.1以下の任意の実数として、
Rf1・Cf1 = K・Rin2・Cf2 (式1)。
【0011】
さらに、本発明のロゴスキ型電流センサでは、以下の点にも特徴を有するものである。
(1)式1において「0.95 ≦ K ≦ 1.05」であること。
(2)式1において「1-α < K < 1+β (0<β<α)」であること。
(3)Cf2の表示値が、Cf1の表示値の10べき乗倍であり、Rf1の表示値が、Rin2の表示値の前記10べき乗倍であること。
(4)Cf2の表示値が、Rf1の表示値の10べき乗倍であり、Cf1の表示値が、Rin2の前記10べき乗倍であること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長時定数としたアンプ及びこのアンプを用いたロゴスキ型電流センサとすることができ、計測対象の交流電流の周波数が小さくても高感度としたアンプ及びこのアンプを用いたロゴスキ型電流センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るロゴスキ型電流センサの回路図である。
【
図3】本発明に係るロゴスキ型電流センサの回路図であって、リセット手段を設けた回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアンプは、ロゴスキ型電流センサにおいて用いたアンプであって、以下においてロゴスキ型電流センサの実施形態を説明することで、合わせてアンプの実施形態を説明することにする。
【0015】
本実施形態のロゴスキ型電流センサは、
図1に示すように、ロゴスキコイル1と、アンプ2と、制御部4とで構成している。
【0016】
ロゴスキコイル1は、複数枚のプリント基板を積層させた積層プリント基板として形成し、この積層プリント基板にアンプ2及び制御部4を実装することで、小型のロゴスキ型電流センサとしている。なお、制御部4を設けずにアンプ2を設けた積層プリント基板型ロゴスキコイルとして、この積層プリント基板型ロゴスキコイルを適宜の測定エリアに配置して、積層プリント基板型ロゴスキコイルから制御部4まで適宜の配線を設けてもよい。
【0017】
制御部4は、アンプ2から出力された信号から電流値を特定し、制御部4に設けた表示用ディスプレイ(図示せず)等に、当該電流値を表示可能としている。また、後述するように、制御部4には、リセットボタン(図示せず)を設けて、このリセットボタンが操作されることで、アンプ2のリセット処理を実施し、その後、電流計測を行うことにしている。
【0018】
本発明の要部であるアンプ2は、第1のオペアンプ21で構成した積分回路と、この積分回路の後段に接続した第2のオペアンプ31で構成した増幅回路とを有している。第1のオペアンプ21の出力端子は、第2のオペアンプ31の非反転入力端子に接続している。
【0019】
第1のオペアンプ21には、第1帰還コンデンサ22と、第1帰還抵抗体23を設けており、この第1帰還コンデンサ22と第1帰還抵抗体23は、それぞれ一方端を第1のオペアンプ21の出力端子に、他方端を第1のオペアンプ21の反転入力端子に接続している。
【0020】
また、第1のオペアンプ21の反転入力端子は、第1抵抗体24を介してロゴスキコイル1に接続し、ロゴスキコイル1の出力信号に対して積分処理を行っている。第1のオペアンプ21の非反転入力端子は、第2抵抗25を介して接地している。
【0021】
第2のオペアンプ31には、第2帰還コンデンサ32と、第2帰還抵抗体33を設け、さらに、反転入力端子に一方端を接続するとともに他方端を接地した入力抵抗体34を設けている。第2帰還コンデンサ32と第2帰還抵抗体33は、それぞれ一方端を第2のオペアンプ31の出力端子に、他方端を第2のオペアンプ31の反転入力端子に接続している。
【0022】
第1のオペアンプ21の出力端子と、第2のオペアンプ31の非反転入力端子との間には、第3抵抗体26を設けている。また、第2のオペアンプ31の出力端子と、制御部4との間には、第4抵抗体35を設けている。
【0023】
ここで、
Cf1:第1帰還コンデンサ22の容量、
Rf1:第1帰還抵抗体23の抵抗値、
Cf2:第2帰還コンデンサ32の容量、
Rin2:入力抵抗体34の抵抗値
とし、Kを0.9以上で1.1以下の任意の実数とする。
【0024】
本実施形態のアンプ2では、
Rf1・Cf1 = K・Rin2・Cf2 (式1)
を満たすことにしている。
【0025】
別の表現方法を用いるなら、
0.9 ≦ Rf1・Cf1/Rin2・Cf2 ≦ 1.1
としている。
【0026】
なお、好適には、
0.95 ≦ K ≦ 1.05
であり、さらに好適には、
0.98 ≦ K ≦ 1.02
である。
【0027】
理想的には、K=1、すなわち、
Rf1・Cf1 = Rin2・Cf2
であるが、矩形電流(ステップ的に上昇し、その後一定電流となる波形)の計測時に、一定電流の部分で増加波形が現れ、電流の最大値を見誤る可能性があるため、実用上は、
0.9 ≦ K ≦ 1.1
の範囲において、かつ
1-α < K < 1+β (0<β<α)
となるように調整することが好ましい。より具体的には、例えば、α=0.5、β=0.3として、
0.95 ≦ K ≦ 1.03
という調整が好ましい。
【0028】
ちなみに、「Rf1・Cf1 = Rin2・Cf2」であることで、例えば、昨今多用されているパワー半導体のスイッチングにおいて、矩形波状態の波形の電流が計測対象として流れている場合に、アンプ2の出力電圧Vintの波形を、理論上は計測対象の電流の波形と同じ矩形波とすることができる。
【0029】
このことを詳細に説明する。まず「A」を、ロゴスキコイル1におけるコイルの断面積、巻き線ピッチ、第1抵抗体24の抵抗値Rin1、第1帰還コンデンサ22の容量Cf1から決定される定数とする。第1抵抗体24の抵抗値Rin1は、ロゴスキコイル1の内部抵抗を加味した抵抗値である。
【0030】
まず、
図2(a)に計測対象の電流波形を示すように、0Aから1Aにステップ的に電流が流れることにする。このとき、ロゴスキコイル1で発生する電圧Vcoilは、
図2(b)に示すように、瞬間的に電圧を発生させることになる。
【0031】
アンプ2の積分回路では、この電圧Vcoilを積分しており、積分回路を構成している第1のオペアンプ21の出力電圧Vo1は、下式となる。
【0032】
【0033】
すなわち、第1のオペアンプ21の出力電圧Vo1のグラフは、
図2(c)に示すようになり、最初、ピークの大きさAに達した後、時定数Cf1・Rf1で電圧が降下する。
【0034】
この第1のオペアンプ21の出力電圧Vo1が反転入力端子に入力される第2のオペアンプ31では、第2帰還コンデンサ32に生じる電圧Vcf2が、下式となる。
【0035】
【0036】
すなわち、第2帰還コンデンサ32に生じる電圧Vcf2のグラフは、
図2(d)に示すようになり、増幅回路を構成している第2のオペアンプ31では、Rf2を第2帰還抵抗体33の抵抗値とすると、1/Cf2・Rf2のゲインで第1のオペアンプ21の出力電圧Vo1を積分していることになる。
【0037】
したがって、アンプ2の出力電圧Vintは、「Vint = Vo1+Vcf2」であって、下式のようになる。
【0038】
【数3】
ここで、「Rf1・Cf1 = Rin2・Cf2」である場合には、下式のようになる。
【0039】
【0040】
すなわち、アンプ2の出力電圧Vintのグラフは、
図2(e)に示すようになり、計測対象の電流波形と同じ波形となる。
【0041】
ここで、「Rf1・Cf1/Rin2・Cf2 =0.9」の場合には、アンプ2の出力電圧Vintのグラフは、
図2(f)に示すようになり、「Rf1・Cf1/Rin2・Cf2 =1.1」の場合には、アンプ2の出力電圧Vintのグラフは、
図2(g)に示すようになるが、実用に際しては許容範囲である。
【0042】
「0.95 ≦ K ≦ 1.05」とすることでより好適とすることができる。さらに、「0.98 ≦ K ≦ 1.02」とすることで、実用上の最適状態とすることができる。
【0043】
特に、アンプ2では、アンプ2全体の実質的な時定数が「Cf2・Rf2」で決まるため、積分回路側では、第1帰還コンデンサ22の容量Cf1を小さく設定することで積分回路のゲインを稼ぐ一方で、後段の増幅回路で第2帰還コンデンサ32の容量Cf2を大きく設定することで、時定数を大きくすることができる。これにより、長時定数を有するアンプ2として、低周波数での感度を向上させることができる。
【0044】
また、アンプ2では、積分回路の高い周波数でのゲインを下げておくことで、後段の増幅回路に高周波成分が減衰した信号を入力している。これにより、アンプ2において発生する遅延は、積分回路で生じる遅延だけとすることができ、二段構成としたアンプ2であっても、大きな遅延を生じさせることがなく、アンプ2による遅延が問題となる恐れを解消できる。
【0045】
「Rf1・Cf1 = Rin2・Cf2」となる第1帰還抵抗体23の抵抗値Rf1、第1帰還コンデンサ22の容量Cf1、入力抵抗体34の抵抗値Rin2及び第2帰還コンデンサ32の容量Cf2を設定する際には、Cf2の表示値が、Cf1の表示値の10べき乗倍であり、Rf1の表示値が、Rin2の表示値の前記10べき乗倍であるコンデンサ及び抵抗体とすることで、上記条件を満たす組み合わせを見つけやすくすることができる。また、抵抗やコンデンサの高精度な組み合わせを成す部品の入手が容易になる。すなわち、市販のコンデンサや抵抗では、静電容量や抵抗値の先頭の二桁が、例えば10,12,15,18・・・のように、離散的なとびとびの値となっていることが多いため、他の組み合わせでは、Rf1・Cf1=Rin2・Cf2を高精度に満たすことが困難になると思われる。
【0046】
ここで、「表示値」とは、コンデンサにおける基本単位のF(ファラッド)、抵抗体における基本単位のΩ(オーム)で、数値部分のみに注目するという意味であり、例えば、上記の場合では、
第1帰還抵抗体23の抵抗値Rf1 = 30×103(Ω)、
第1帰還コンデンサ22の容量Cf1 = 1×10-9(F)、
入力抵抗体34の抵抗値Rin2 = 3×103(Ω)、
第2帰還コンデンサ32の容量Cf2 = 10×10-9(F)
といった入手容易なコンデンサや抵抗体の組み合わせとすることができる。
【0047】
あるいは、Cf2の表示値が、Rf1の表示値の10べき乗倍であり、Cf1の表示値が、Rin2の前記10べき乗倍であってもよい。この場合には、
第1帰還コンデンサ22の容量Cf1 = 1×10-9(F)、
第1帰還抵抗体23の抵抗値Rf1 = 30×103(Ω)、
第2帰還コンデンサ32の容量Cf2 = 30×10-9(F)、
入力抵抗体34の抵抗値Rin2 = 1×103(Ω)
といった入手容易なコンデンサや抵抗体の組み合わせとすることができる。
【実施例0048】
最後に、
図3を示しながら、具体的な実施例を説明する。なお、
図1に示した回路図と同一の構成に対しては、同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0049】
本実施例のロゴスキ型電流センサでは、ロゴスキコイル1は、積層プリント基板で構成し、この積層プリント基板上に、アンプ2と制御部4を実装している。
【0050】
本実施例の制御部4はリセット手段を有し、制御部4から出力したリセット信号によって、後述する第1のオペアンプ21の第1帰還コンデンサ22と、及び第2のオペアンプ31の第2帰還コンデンサ32をリセットし、電流計測を実施することにしている。
【0051】
アンプ2は、第1のオペアンプ21で構成した積分回路と、この積分回路の後段に接続した第2のオペアンプ31で構成した増幅回路とを有している。第1のオペアンプ21と第2のオペアンプ31は、それぞれ型番LT1818としている。
【0052】
第1のオペアンプ21に接続した第1帰還コンデンサ22は1nFとし、第1のオペアンプ21に接続した第1帰還抵抗体23は30kΩとしている。第1抵抗体24及び第2抵抗25は、それぞれ100Ωとしている。
【0053】
第2のオペアンプ31に接続した第2帰還コンデンサ32は10nFとし、第2抵抗34は3kΩとしている。第3抵抗体26及び第4抵抗35は、それぞれ51Ωとしている。
【0054】
第1帰還コンデンサ22に並列接続させて第1スイッチ27を設けており、第2帰還コンデンサ32に並列接続させて第2スイッチ37を設けている。第1スイッチ27及び第2スイッチ37は、制御部4からのリセット信号が入力されることで、第1のオペアンプ21の出力端子と反転入力端子とを同電位とし、また第2のオペアンプ31の出力端子と反転入力端子とを同電位として、第1帰還コンデンサ22及び第2帰還コンデンサ32をリセットしている。第1スイッチ27及び第2スイッチ37は、ADG1201としている。
【0055】
制御部4と第1スイッチ27との間には、第5抵抗体28を設けており、制御部4と第2スイッチ37との間には、第6抵抗体38を設けている。第5抵抗体28と第6抵抗体38は、それぞれ100Ωとしている。
【0056】
このように構成したロゴスキ型電流センサでは、周波数の小さい交流電流から、感度良く電流計測を行うことができる。本実施例では、第2帰還抵抗体を設けていないが、上記の回路構成とすることで、第2帰還抵抗体がなくても所望の出力を得ることができる。