(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099957
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 84/80 20250101AFI20250626BHJP
H10D 89/60 20250101ALI20250626BHJP
H10D 30/65 20250101ALI20250626BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250626BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20250626BHJP
H10D 12/00 20250101ALI20250626BHJP
H10D 8/50 20250101ALI20250626BHJP
H10D 62/10 20250101ALI20250626BHJP
【FI】
H01L29/78 657A
H01L27/04 H
H01L27/06 102A
H01L29/78 301D
H01L29/78 652P
H01L29/78 652M
H01L29/78 653C
H01L29/78 658F
H01L29/78 655A
H01L29/78 658A
H01L29/91 C
H01L29/06 301F
H01L29/78 652K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216980
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】星野 義典
(72)【発明者】
【氏名】下山 浩哉
(72)【発明者】
【氏名】神原 利宗
(72)【発明者】
【氏名】野村 正孝
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F038AV04
5F038AZ08
5F038BH16
5F038CA08
5F048AC06
5F048AC10
5F048BB05
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC07
5F048BC12
5F048BD07
5F048CC06
5F140AA34
5F140AB06
5F140AC23
5F140BB04
5F140BC15
5F140BD04
5F140BF04
5F140BF43
5F140BF53
5F140BH30
5F140BH47
5F140CC03
5F140CD08
5F140CE06
5F140CE07
5F140DA10
(57)【要約】
【課題】ゲート絶縁型のトランジスタと検温ダイオードとを有する半導体装置において、大幅な工程の追加を伴わずに、検温ダイオードの順方向出力電圧を安定化することを可能にする。
【解決手段】検温ダイオード120の下層側において、トレンチ131は、半導体基板101に周期的に形成される。ソースフィールドプレート133は、トレンチ131の内部に絶縁膜を介して配置される。P型拡散層134は、隣接するトレンチ131の間に形成される。ソースフィールドプレート133及びP型拡散層134はソース電位に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に形成される、スプリットゲート構造を有するゲート絶縁型のトランジスタと、
温度測定用のダイオードと、
前記半導体基板に形成される前記ダイオードの下部構造とを有し、
前記ダイオードの下部構造は、
前記半導体基板に周期的に形成されるトレンチの内部に絶縁膜を介して配置され、ソース電位が与えられるソースフィールドプレートと、
隣接する前記トレンチの間に形成され、前記ソース電位が与えられる、前記第1導電型とは反対の導電型である第2導電型の拡散層と、
前記ソースフィールドプレート及び前記拡散層を覆い、上部に前記ダイオードが形成されるダイオード下部絶縁膜とを有する、半導体装置。
【請求項2】
前記トランジスタは、
前記半導体基板に周期的に形成されるトレンチの内部に絶縁膜を介して配置されるソースフィールドプレート及びゲート電極と、
隣接する前記トレンチの間に形成され、前記半導体基板の深さ方向に積層される第1導電型の拡散層、及び前記第2導電型の拡散層とを有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ダイオードの下部構造の前記トレンチは、前記トランジスタの前記トレンチを形成する工程において前記半導体基板に形成され、
前記ダイオードの下部構造の前記ソースフィールドプレートは、前記トランジスタの前記ソースフィールドプレートを形成する工程において形成され、
前記ダイオードの下部構造の前記第2導電型の拡散層は、前記トランジスタの前記第2導電型の拡散層を形成する工程で形成される、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ダイオードの下部構造の前記トレンチのピッチは、前記トランジスタの前記トレンチのピッチよりも広い、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ダイオードの下部構造の前記トレンチの底部に注入されるボロンを更に有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に形成される、スプリットゲート構造を有するゲート絶縁型のトランジスタと、
温度測定用のダイオードと、
前記半導体基板に形成される前記ダイオードの下部構造とを有し、
前記ダイオードの下部構造は、
ソース電位が与えられるソースフィールドプレートであって、前記半導体基板に周期的に形成されるトレンチの内部に絶縁膜を介して配置される第1の部分と、前記半導体基板の表面上に絶縁膜を介して配置される平板状の第2の部分とを有するソースフィールドプレートと、
前記半導体基板の表面及び前記ソースフィールドプレートを覆い、上部に前記ダイオードが形成されるダイオード下部絶縁膜とを有する、半導体装置。
【請求項7】
前記トランジスタは、
前記半導体基板に周期的に形成されるトレンチの内部に絶縁膜を介して配置されるソースフィールドプレート及びゲート電極と、
隣接する前記トレンチの間に形成され、前記半導体基板の深さ方向に積層される第1導電型の拡散層、及び前記第2導電型の拡散層とを有する、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ダイオードの下部構造の前記トレンチは、前記トランジスタの前記トレンチを形成する工程において前記半導体基板に形成され、
前記ダイオードの下部構造の前記ソースフィールドプレートは、前記トランジスタの前記ソースフィールドプレートを形成する工程において形成される請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ダイオードの下部構造の前記トレンチの底部に注入されるボロンを更に有する、請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、例えば温度測定用のダイオードを含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、特許文献1は、半導体装置を開示する。特許文献1に記載の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板の温度を検出するためのポリシリコンダイオード(以下、検温ダイオードとも呼ぶ)とを有する。半導体基板は、チップ中央部に、パワーMOS(Metal Oxide Semiconductor)FET(Field Effect Transistor)などの絶縁ゲート型パワートランジスタが配置されるセル領域を有する。半導体基板端とセル領域との間は、環状のPウエル領域で埋められている。ポリシリコンダイオードは、環状のPウエル領域に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の半導体装置では、検温ダイオードであるポリシリコンダイオードの下層にPウエル領域が形成されている。この場合、Pウエル領域にソース電位が与えられることで、ドレイン電圧又は基板電圧変動の影響を受けて検温ダイオードの出力が不安定になることを抑制できる。しかしながら、絶縁ゲート型パワートランジスタを形成する工程は、Pウエル領域を形成する工程を含むとは限らない。絶縁ゲート型パワートランジスタを形成する工程がPウエルを形成する工程を含まない場合、検温ダイオードの出力安定のためだけに、Pウエルを形成する工程を追加する必要がある。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、半導体装置が提供される。半導体装置は、ゲート絶縁型トランジスタと、検温ダイオードと、検温ダイオードの下部構造とを有する。検温ダイオードの下部構造は、周期的に形成されるトレンチ内に配置されるソースフィールドプレートと、隣接するトレンチの間に形成される拡散層とを含む。ソースフィールドプレート及び拡散層はソース電位に接続される。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施の形態によれば、ゲート絶縁型のトランジスタと検温ダイオードとを有する半導体装置において、大幅な工程の追加を伴わずに、検温ダイオードの順方向出力電圧を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る半導体装置の断面構造の例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、検温ダイオードの平面構造の例を示す上面図である。
【
図3】
図3は、半導体装置の製造工程における断面を示す。
【
図4】
図4は、半導体装置の製造工程における断面を示す。
【
図5】
図5は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図6】
図6は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図7】
図7は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図8】
図8は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図9】
図9は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図10】
図10は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図11】
図11は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図12】
図12は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図13】
図13は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図14】
図14は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図15】
図15は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態2に係る半導体装置の断面構造の例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態3に係る半導体装置の断面構造の例を示す断面図である。
【
図19】
図19は、検温ダイオードの平面構造の例を示す上面図である。
【
図20】
図20は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【
図21】
図21は、半導体装置の製造工程における断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、上記課題を解決するための手段を適用した実施形態を詳細に説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクション又は実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、応用例、詳細説明、又は補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、及び範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0011】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、又は位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、及び範囲を含む)についても同様である。
【0012】
以下の実施形態において、MOSFETは、ゲート絶縁膜が酸化膜であるFETのみでなく、酸化膜以外の絶縁膜をゲート絶縁膜として使用するFETを含むものとする。また、MOSFETは、ゲート電極が金属によって形成されるFETのみではなく、金属以外の導電体がゲート電極として使用されるFETも含むものとする。以下の実施形態では、スプリットゲート構造の絶縁ゲート型トランジスタがMOSFETである例を説明する。しかしながら、絶縁ゲート型トランジスタは、MOSFETには限定されない。絶縁ゲート型トランジスタは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0013】
[実施形態1]
図1は、本開示の実施形態1に係る半導体装置の断面構造の例を示す。半導体装置100は、半導体基板101と、絶縁ゲート型トランジスタであるMOSFET110と、検温ダイオード120とを有する。半導体基板101は、N型の半導体基板である。本実施形態においてMOSFET110は、半導体基板101の一方の面がソースで、他方の面がドレインとなる縦型のMOSFETである。半導体装置100は、例えば100Vクラスのパワーディスクリート半導体である。
【0014】
MOSFET110の領域において、半導体基板101には、複数のトレンチ111が周期的に形成される。MOSFET110は、トレンチ111に、絶縁膜112を介して埋め込まれるソースフィールドプレート113、及びゲート電極114を有する。ソースフィールドプレート113には、ソース電位が与えられる。MOSFET110は、隣接する2つのゲート電極114の間に、チャネルP拡散層115、及びソースN+拡散層116を有する。ゲート電極114及びソースN+拡散層116は、絶縁膜135及び136により覆われる。MOSFET110は、トレンチ111内に、ゲート電極114、及びソース電位が与えられるソースフィールドプレート133が埋め込まれるスプリットゲート構造のトランジスタである。
【0015】
検温ダイオード120は、P型領域121と、N型領域122とを有する。検温ダイオード120は、例えばポリシリコンで形成される。P型領域121及びN型領域122は、例えばポリシリコンにそれぞれ不純物を導入することで形成される。MOSFET110は、電流が流れることで発熱する。検温ダイオード120は、半導体装置100の温度を測定するために使用される温度測定用のダイオードである。
【0016】
半導体基板101には、検温ダイオード120の下層側の領域において、複数のトレンチ131が形成される。トレンチ131の幅及び深さは、MOSFET110におけるトレンチ111の幅及び深さと等しいものとする。また、隣接する2つのトレンチ131間の距離、すなわちピッチaは、トレンチ111のピッチbと等しいものとする。トレンチ131内には、絶縁膜132を介して、ソースフィールドプレート133が配置される。絶縁膜132は、フィールドプレート絶縁膜とも呼ばれる。隣接する2つのトレンチ131の間には、P型拡散層134が形成される。P型拡散層134の基板深さ方向の底部の位置は、MOSFET110におけるゲート電極114の底部よりも浅い。ソースフィールドプレート133及びP型拡散層134には、ソース電位が与えられる。
【0017】
検温ダイオード120の下層側の領域において、ソースフィールドプレート133、及びP型拡散層134の上層側には、絶縁膜135が形成される。絶縁膜135は、ソースフィールドプレート133、及びP型拡散層134を覆う。絶縁膜135の上層には検温ダイオード120が形成される。絶縁膜135は、ダイオード下部絶縁膜とも呼ばれる。検温ダイオード120及び絶縁膜135の上層側には、絶縁膜136が形成される。絶縁膜135及び136には、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によって形成されるシリコン酸化膜が用いられる。絶縁膜135及び136は、例えばそれぞれ150nm程度の膜厚を有する。
【0018】
図2は、検温ダイオード120の平面構造の例を示す。検温ダイオード120において、P型領域121は、
図2に示されるように、例えば矩形状に形成される。N型領域122は、矩形状のP型領域121を取り囲むように形成される。半導体基板101には、検温ダイオード120の下部において、所定の方向に延びる複数のトレンチ131が、所定のピッチで形成される。また、検温ダイオード120の下部において、所定の方向に延びる複数のP型拡散層134が所定のピッチで形成される。
図1に示されるように、トレンチ131には、ソースフィールドプレート133が配置される。
【0019】
本実施形態において、半導体装置100は、検温ダイオード120の下部構造として、ソース電位が与えられるソースフィールドプレート133及びP型拡散層134を有する。半導体装置100において、検温ダイオード120の下部構造をソース電位とすることにより、MOSFET110のドレイン電位、すなわち基板電位の変動が、検温ダイオード120の順方向出力電圧に与える影響を抑制できる。
【0020】
また、本実施形態において、検温ダイオード120の下部構造は、本体セルであるMOSFET110の構造と似た構造を有している。検温ダイオード120の下部のトレンチ131は、MOSFET110におけるトレンチ111と同時に形成され得る。また、検温ダイオード120の下部のソースフィールドプレート133は、MOSFET110におけるソースフィールドプレート113と同時に形成され得る。さらに、検温ダイオード120の下部のP型拡散層134は、MOSFET110におけるチャネルP拡散層115と同時に形成され得る。
【0021】
続いて、半導体装置100の製造プロセスを説明する。
図3から
図15は、半導体装置100の製造工程における断面を示す。
図3に示されるように、トレンチを形成する工程において、N型の半導体基板101のMOSFETが形成される領域に、複数のトレンチ111が形成される。また、半導体基板101の検温ダイオードの下部構造が形成される領域に、複数のトレンチ131が形成される。次いで、
図4に示されるように、フィードプレート絶縁膜を形成する工程において、半導体基板101の表面に、絶縁膜141が形成される。絶縁膜141は、MOSFET110における絶縁膜112(
図1を参照)に対応する。また、絶縁膜141は、検温ダイオードの下部構造における絶縁膜132に対応する。
【0022】
図5に示されるように、電極を形成する工程において、絶縁膜141上に、ポリシリコン142が堆積される。堆積されたポリシリコンは、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により、平坦化される。
図6に示されるように、エッチング工程において、ポリシリコン142が全面的にエッチングされ、トレンチ111及び131からはみ出すポリシリコン142が除去される。
【0023】
その後、
図7に示されるように、検温ダイオードの下部構造の領域をフォトレジスト151で覆い、フォトレジスト151をマスクとしてポリシリコン142をエッチングすることにより、トレンチ111内のポリシリコン142の一部が除去される。トレンチ111内の残存するポリシリコン142は、MOSFET110におけるソースフィールドプレート113に対応する。また、トレンチ131内のポリシリコン142は、検温ダイオードの下部構造におけるソースフィールドプレート133に対応する。
【0024】
続いて、
図8に示されるように、ゲート酸化膜を形成する工程において、エッチングにより、絶縁膜141の一部が除去される。
図9に示されるように、ゲート電極を形成する工程において、トレンチ111内にポリシリコンが堆積され、ゲート電極114が形成される。
図10に示されるように、チャネルP拡散層を形成する工程において、隣接する2つのトレンチ111の間にチャネルP拡散層115が形成される。また、隣接する2つのトレンチ131の間にP型拡散層134が形成される。
図11に示されるように、ソースN+拡散層を形成する工程において、チャネルP拡散層115の一部にソースN+拡散層116が形成される。
【0025】
図12に示されるように、ダイオード下部絶縁膜を形成する工程において、半導体基板101の表面が絶縁膜135で覆われる。その後、
図13に示されるように、ポリシリコンを形成する工程において、絶縁膜135上の検温ダイオード120が形成される部分にポリシリコン143が形成される。
図14に示されるように、検温ダイオードを形成する工程において、ポリシリコン143に不純物を導入することにより、P型領域121とN型領域122とが形成される。その後、
図15に示されるように、半導体基板101の表面に、検温ダイオード120を覆うように絶縁膜136が形成される。
【0026】
[効果]
本実施形態に係る半導体装置100は、検温ダイオード120の下部構造に、ソースフィールドプレート133が埋め込まれたトレンチ131と、P型拡散層134とを有する。ソースフィールドプレート133及びP型拡散層134は、それぞれソース電位に接続される。このような構成により、基板電位、つまりMOSFET110のドレイン電位が変動した場合でも、検温ダイオード120の下部構造を、ソース電位に固定することができる。その結果、基板電位が変動した場合でも、検温ダイオード120の出力が不安定になることを抑制できる。また、本実施形態において、トレンチ131に埋め込まれたソースフィールドプレート133は、内臓RCスナバとしても機能する。このため、半導体装置100において、リカバリサージ低減効果が期待できる。
【0027】
特許文献1との比較では、特許文献1では、検温ダイオードの下部にPウエルが形成されるため、Pウエルを形成する工程が必要である。しかしながら、本体セルであるMOSFET110の製造工程は、Pウエルを形成する工程を含まない。このため、検温ダイオードの下部にPウエルを形成する場合、MOSFET110の製造工程に、フォトリソグラフィ、イオン注入、及び高温拡散の工程を追加する必要がある。これは、プロセスコストを上昇させる。
【0028】
本実施形態において、検温ダイオード120の下部構造は、MOSFET110の構造と同様な構造である。このため、検温ダイオード120の下部構造におけるトレンチ131、ソースフィールドプレート133、P型拡散層134は、MOSFET110におけるトレンチ111、ソースフィールドプレート133、及びチャネルP拡散層115とそれぞれ同時に形成できる。従って、本実施形態は、プロセスコストの上昇を伴わずに、基板電位の変動が、検温ダイオード120の順方向出力電圧に与える影響を抑制できる。
【0029】
なお、半導体装置100において、検温ダイオードの下部構造におけるトレンチ131のピッチaは、MOSFET110におけるトレンチ111のピッチbよりも広くてもよい。検温ダイオードの下部構造において、トレンチ131のピッチaを広げることで、検温ダイオードの下部構造の耐圧を、本体セルにおける耐圧よりも高くすることができる。しかしながら、トレンチ131のピッチaを極端に広げると、耐圧は低下する。特に低温環境において、耐圧低下が顕著となるのを防止するため、トレンチ131のピッチaは、例えば、トレンチ111のピッチbの1倍より広く、かつ1.1倍以下の範囲に設定されるとよい。
【0030】
トレンチ131のピッチaが、トレンチ111のピッチbの1倍より広く、かつ1.1倍以下の範囲に設定される場合、検温ダイオード120の下部構造の耐圧を、MOSFET110が形成される本体セルの耐圧よりも高くすることができる。この場合、MOSFET110のドレイン-ソース間にBVDSS以上の電圧が印加され、アバランシェ降伏が発生した場合においても、検温ダイオード120の下部構造におけるP型拡散層134へ電流が流れず、検温ダイオード120の下部構造の電位変動を抑えることができる。このため、検温ダイオードの出力安定性を高めることができる。
【0031】
[実施形態2]
図16は、本開示の実施形態2に係る半導体装置の断面構造の例を示す。
図16に示される半導体装置100aの構成は、検温ダイオードの下部構造におけるトレンチ131の底部にボロン137が注入されている点において、
図1に示される半導体装置100の構成と異なる。本実施形態において、検温ダイオードの下部構造におけるトレンチ131のピッチは、MOSFET110におけるトレンチ111のピッチと等しくてもよいし、或いは、トレンチ111のピッチより広くてもよい。
【0032】
図17は、半導体装置100aの製造工程における断面を示す。
図3に示される工程において、半導体基板101に複数のトレンチ111が形成された後、
図17に示されるように、ボロンを注入する工程において、トレンチ111の底部にボロン137が注入される。その後の工程は、
図4から
図15に示される工程と同様でよい。
【0033】
[効果]
本実施形態では、検温ダイオード120の下部構造において、トレンチ131の底部にボロン137が注入される。ソースフィールドプレート133が埋め込まれるトレンチ131の底部にボロン137が注入されることで、ボロンが注入されない場合に比べて、検温ダイオード120の下部構造の耐圧を高くすることができる。このような構成により、半導体装置100において、検温ダイオード120の下部構造の耐圧を、MOSFET110の耐圧より高くすることができる。この場合、MOSFET110のドレイン-ソース間にBVDSS以上の電圧が印加され、アバランシェ降伏が発生した場合においても、検温ダイオード120の下部構造の電位変動を抑えることができる。このため、検温ダイオードの出力安定性を高めることができる。他の効果は、実施形態1で説明した効果と同様である。
【0034】
[実施形態3]
図18は、本開示の実施形態3に係る半導体装置の断面構造の例を示す。
図19は、検温ダイオードの平面構造の例を示す。本実施形態において、検温ダイオード120の下部構造に配置されるソースフィールドプレートは、トレンチ131内に埋め込まれるソースフィールドプレート133aと、平板状のソースフィールドプレート133bとを有する。ソースフィールドプレート133bは、ダイオード下部プレートとも呼ばれる。ソースフィールドプレート133aは、ソースフィールドプレートの第1の部分とも呼ばれる。ソースフィールドプレート133bは、ソースフィールドプレートの第2の部分とも呼ばれる。
【0035】
本実施形態において、ソースフィールドプレート133bは、絶縁膜135を介して、検温ダイオード120の下部全体を覆う。ソースフィールドプレート133a及び133bには、ソース電位が与えられる。本実施形態に係る半導体装置100bでは、
図1に示される実施形態1に係る半導体装置100とは異なり、隣接する2つのトレンチ131の間にP型拡散層134は形成されていない。半導体装置100bは、
図16に示される半導体装置100aと同様に、トレンチ131の底部にボロン137が注入される構成であってもよい。本実施形態において、トレンチ131に埋め込まれたソースフィールドプレート133a、及びダイオード下部プレートであるソースフィールドプレート133bは、内臓RCスナバとしても機能する。
【0036】
図20及び
図21は、半導体装置100bの製造工程における断面を示す。
図3から
図5に示される工程により、半導体基板101に複数のトレンチ111が形成され、半導体基板101の表面に絶縁膜141が形成され、絶縁膜141上にポリシリコン142が堆積される。その後、
図20に示されるように、ダイオード下部プレートを形成する工程において、検温ダイオードの下部構造の領域がフォトレジスト152で覆われ、フォトレジスト152をマスクとしてポリシリコン142がエッチングされる。この工程により、MOSFET110の領域において、トレンチ111からはみ出すポリシリコン142が除去される。検温ダイオード120の下部構造に対応する領域では、
図20に示されるように、半導体基板101の表面のポリシリコン142は除去されない。
【0037】
次いで、
図21に示されるように、検温ダイオードの下部構造の領域をフォトレジスト153で覆い、フォトレジスト153をマスクとしてポリシリコン142をエッチングすることにより、トレンチ111内のポリシリコン142の一部を除去する。トレンチ111内のポリシリコン142は、ソースフィールドプレート113に対応する。その後の工程は、
図10に示される工程において、検温ダイオードの下部構造の領域ではP型拡散層134が形成されない点を除いて、
図8から
図15に示される工程と同様でよい。
【0038】
本実施形態では、検温ダイオード120の下部構造において、検温ダイオード120の全体がソースフィールドプレート133bで覆われる。この場合、
図1に示される実施形態1の構成に比べて、検温ダイオード120の下部構造の耐圧を高めることができる。本実施形態では、半導体装置100bにおいて、検温ダイオード120の下部構造の耐圧を、MOSFET110の耐圧より高くすることができる。この場合、実施形態2と同様に、MOSFET110のドレイン-ソース間にBVDSS以上の電圧が印加され、アバランシェ降伏が発生した場合においても、検温ダイオード120の下部構造の電位変動を抑えることができる。
【0039】
本実施形態では、ダイオード下部プレートを形成するために、MOSFET110の製造工程に対してフォトリソグラフィが追加される。しかしながら、フォトグラフィの追加は、Pウエルを形成する工程に比べて簡易である。このため、本実施形態は、検温ダイオードの下部構造に形成において、大幅な工程の追加は必要ない。従って、本実施形態は、プロセスコストを上昇させることなく、基板電位が変動した場合でも、検温ダイオード120の順方向出力電圧を安定化させることができる。
【0040】
なお、上記の実施の形態に係る半導体装置では、半導体基板、半導体層、拡散層、及び拡散領域などの導電型(P型又はN型)を反転させた構成としてもよい。例えば、N型、及びP型の一方の導電型を第1導電型とし、他方の導電型を第2導電型とする。その場合、第1の導電型をP型とし、第2導電型をN型とすることもできるし、反対に第1導電型をN型とし、第2導電型をP型とすることもできる。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
100:半導体装置
110:MOSFET
111:トレンチ
112:絶縁膜
113:ソースフィールドプレート
114:ゲート電極
115:チャネルP拡散層
116:ソースN+拡散層
120:検温ダイオード
121:P型領域
122:N型領域
131:トレンチ
132:絶縁膜
133:ソースフィールドプレート
134:P型拡散層
135、136:絶縁膜
137:ボロン
141:絶縁膜
142、143:ポリシリコン
151-153:フォトレジスト