(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009996
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】HSCコンバータを用いた出力電圧生成方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H02M3/155 A
H02M3/155 Q
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024103670
(22)【出願日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】63/524,316
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】増田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】志治 肇
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS05
5H730AS08
5H730BB03
5H730BB13
5H730BB57
5H730BB61
5H730DD04
5H730FG06
(57)【要約】
【課題】一次巻線を有さない変圧器を含み、入力電圧の4分の1の出力電圧を供給するHSCコンバータを提供する。
【解決手段】HSC電圧変換モジュールは、入力電圧と、一次巻線を有さず、磁気コアによって磁気的に結合された二次巻線を含む変圧器と、変圧器及び入力電圧に接続された第1のスイッチブリッジ及び第2のスイッチブリッジと、変圧器の単一のノードに接続され、入力電圧の4分の1の出力電圧を供給する出力キャパシタと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSC電圧変換モジュールであって、
入力電圧と、
一次巻線を有さず、磁気コアによって磁気的に結合された二次巻線を含む変圧器と、
前記変圧器及び前記入力電圧に接続された第1のスイッチブリッジ及び第2のスイッチブリッジと、
前記変圧器の単一のノードに接続され、前記入力電圧の4分の1の出力電圧を供給する出力キャパシタと、を含む、HSC電圧変換モジュール。
【請求項2】
前記第1のスイッチブリッジと前記変圧器との間に接続された第1の共振回路と、
前記第2のスイッチブリッジと前記変圧器との間に接続された第2の共振回路と、をさらに含む、請求項1に記載のHSC電圧変換モジュール。
【請求項3】
前記第1の共振回路は、第1の共振キャパシタを含み、
前記第2の共振回路は、第2の共振キャパシタを含み、
前記第1の共振回路及び前記第2の共振回路は、前記変圧器の漏れインダクタンスを利用する、請求項2に記載のHSC電圧変換モジュール。
【請求項4】
前記第1のスイッチブリッジ及び前記第2のスイッチブリッジの各々は、直列に接続された第1のスイッチ、第2のスイッチ、及び第3のスイッチを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のHSC電圧変換モジュール。
【請求項5】
前記変圧器の前記二次巻線は、第1の巻線及び第2の巻線を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のHSC電圧変換モジュール。
【請求項6】
前記HSC電圧変換モジュールは、双方向性である、請求項1~3のいずれか一項に記載のHSC電圧変換モジュール。
【請求項7】
コンバータであって、
入力電圧を受ける入力端子と、
前記入力電圧を挟んで並列に接続された第1のスイッチブリッジであって、
直列に接続された第1のスイッチ、第2のスイッチ、及び第3のスイッチと、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの間の第1のノードと、
前記第2のスイッチと前記第3のスイッチとの間の第3のノードと、を含む、第1のスイッチブリッジと、
第2のスイッチブリッジであって、
直列に接続された第4のスイッチ、第5のスイッチ、及び第6のスイッチと、
前記第4のスイッチと前記第5のスイッチとの間の第2のノードと、
前記第5のスイッチと前記第6のスイッチとの間の第4のノードと、を含む、第2のスイッチブリッジと、
出力キャパシタと、
変圧器であって、
互いに物理的に接続されて二次巻線群を画定し、磁気コアによって磁気的に結合された第1の二次巻線及び第2の二次巻線を含む単一の巻線と、
前記出力キャパシタに接続された単一のタップと、を含む、変圧器と、
前記第1のノードと前記単一の巻線の第1の端部との間に接続された第1の共振回路と、
前記第2のノードと前記単一の巻線の前記第1の端部とは反対側の前記単一の巻線の第2の端部との間に接続された第2の共振回路と、
前記第1の出力キャパシタに接続されて前記入力電圧の4分の1の第1の出力電圧を供給する出力端子と、を備える、コンバータ。
【請求項8】
前記第1の共振回路は、第1の共振キャパシタを含み、
前記第2の共振回路は、第2の共振キャパシタを含み、
前記第1の共振回路及び前記第2の共振回路は、前記変圧器の漏れインダクタンスを利用する、請求項7に記載のコンバータ。
【請求項9】
前記コンバータは、電力が前記入力端子から前記出力端子へ、及び前記出力端子から前記入力端子へ流れることができるように双方向性である、請求項7又は8に記載のコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC-DCコンバータに関する。より具体的には、本発明は、入力電圧の4分の1の出力電圧を供給するハイブリッドスイッチドキャパシタ(HSC:hybrid switched-capacitor)コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
第1段がLLC共振コンバータであり、第2段が負荷端(POL:point-of-load)コンバータである2段変換を使用することが知られている。LLC共振コンバータは、一次側又は高電圧(HV:high-voltage)側にゼロ電圧スイッチング(ZVS:zero-voltage switching)を有し、二次側又は低電圧(LV:low-voltage)側にゼロ電流スイッチング(ZCS:zero-current switching)を有する中間バスコンバータとして使用される。絶縁が必要とされない場合、第1段は、無調整ゼロ電圧スイッチングスイッチドキャパシタコンバータであることがある。
【0003】
コンバータの実装面積のサイズを低減するために、第1段及び第2段において高いスイッチング周波数の動作が必要とされる。しかしながら、特に第1段(すなわち、1MHz~2MHz)での高周波の動作は、より高い損失(すなわち、スイッチング損失、ゲート駆動損失、及び導通損失)をもたらす。いくつかの用途では、例えばスイッチング損失及び導通損失を含む損失を低減するために、第1段に高い降圧比(step-down ratio)が望ましいことがある。48V電力送達用途では、第1段の降圧比は8:1であり、6V中間バスを提供する。48Vの入力電圧を6Vの中間バス電圧に低減することにより、高い効率を維持しながら、より高い電力密度が可能になる。スイッチドキャパシタ(SC:switched-capacitor)コンバータは高い変換比を提供するが、SCコンバータはフローティングドライバの要件並びに必要とされるスイッチ及びセラミックキャパシタの数に関して複雑であるとともにかさばる。センタータップ付き整流器を有するLLCコンバータは、複雑さを減じながら高い変換比を提供するが、絶縁が必要とされないときには、電力密度が増加するので、非絶縁トポロジーが好ましい。低出力電圧用途では、センタータップ付き整流器を有するLLCコンバータを使用することができるが、このトポロジーは、二次巻線がスイッチングサイクルの半分の間導通しているので、銅利用率が最適ではない。
【0004】
高い降圧比のために、スイッチドキャパシタコンバータ及びLLCコンバータの制限を克服するハイブリッドスイッチドキャパシタ(HSC)コンバータを使用することが知られている。HSCコンバータは、スイッチドキャパシタコンバータの利点と、変圧器ベースのコンバータの高い降圧比能力とを組み合わせる。キャパシタ(コンデンサ)及び磁気デバイスを通じてエネルギーを伝送することによって、効率及び電力密度を大幅に改善することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、既知のHSCコンバータは、入力電圧の4分の1の出力電圧を供給することができない。出力電圧が入力電圧の4分の1である用途では、異なるトポロジー、例えばLLCトポロジーが必要とされる。LLCコンバータでは、二次巻線の電流を半波整流するため、電流ピーク値が大きく、損失が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の例示的な実施形態は、一次巻線を有さない変圧器を含み、入力電圧の4分の1の出力電圧を供給するHSCコンバータを提供する。
例示的な実施形態によれば、HSC電圧変換モジュールは、入力電圧と、一次巻線を有さず、磁気コアによって磁気的に結合された二次巻線を含む変圧器と、変圧器及び入力電圧に接続された第1のスイッチブリッジ及び第2のスイッチブリッジと、変圧器の単一のノードに接続され、入力電圧の4分の1の出力電圧を供給する出力キャパシタと、を含む。
【0007】
HSC電圧変換モジュールは、第1のスイッチブリッジと変圧器との間に接続された第1の共振回路と、第2のスイッチブリッジと変圧器との間に接続された第2の共振回路とをさらに含んでもよい。第1の共振回路は、第1の共振キャパシタを含んでもよく、第2の共振回路は、第2の共振キャパシタを含んでもよく、第1の共振回路及び第2の共振回路は、変圧器の漏れインダクタンスを利用してもよい。
【0008】
第1のスイッチブリッジ及び第2のスイッチブリッジの各々は、直列に接続された第1のスイッチ、第2のスイッチ、及び第3のスイッチを含んでもよい。変圧器の二次巻線は、第1の巻線及び第2の巻線を含んでもよい。HSC電圧変換モジュールは双方向性であってもよい。
【0009】
本発明の例示的な実施形態によれば、コンバータは、入力電圧を受ける入力端子と、入力電圧を挟んで並列に接続された第1のスイッチブリッジであって、直列に接続された第1のスイッチ、第2のスイッチ、及び第3のスイッチと、第1のスイッチと第2のスイッチとの間の第1のノードと、第2のスイッチと第3のスイッチとの間の第3のノードと、を含む、第1のスイッチブリッジと、第2のスイッチブリッジであって、直列に接続された第4のスイッチ、第5のスイッチ、及び第6のスイッチと、第4のスイッチと第5のスイッチとの間の第2のノードと、第5のスイッチと第6のスイッチとの間の第4のノードと、を含む、第2のスイッチブリッジと、出力キャパシタと、変圧器であって、互いに物理的に接続されて二次巻線群を画定し、磁気コアによって磁気的に結合された第1の二次巻線及び第2の二次巻線を含む単一の巻線と、出力キャパシタに接続された単一のタップと、を含む、変圧器と、第1のノードと単一の巻線の第1の端部との間に接続された第1の共振回路と、第2のノードと単一の巻線の第1の端部とは反対側の単一の巻線の第2の端部との間に接続された第2の共振回路と、第1の出力キャパシタに接続されて入力電圧の4分の1の第1の出力電圧を供給する出力端子と、を含む。
【0010】
第1の共振回路は、第1の共振キャパシタを含んでもよく、第2の共振回路は、第2の共振キャパシタを含んでもよく、第1の共振回路及び第2の共振回路は、変圧器の漏れインダクタンスを利用してもよい。
【0011】
コンバータは、電力が入力端子から出力端子へ、及び出力端子から入力端子へ流れることができるように双方向性であってもよい。
添付の図面を参照した本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明から、本発明の上記及び他の特徴、要素、特性、ステップ、並びに利点がより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】関連技術のハイブリッドスイッチドキャパシタ(HSC)コンバータを示す。
【
図2】一次巻線を有さず、2つの接続された二次巻線を有するHSCコンバータを示す。
【
図3】
図2のHSCコンバータの様々な電流経路を示す。
【
図4A】
図2のHSCコンバータの様々な波形のグラフを示す。
【
図4B】
図2のHSCコンバータの様々な波形のグラフを示す。
【
図5】LLCコンバータ及びHSCコンバータの特性を比較する表を示す。
【
図6】LLCコンバータの様々な波形のグラフを示す。
【
図7】HSCコンバータの様々な波形のグラフを示す。
【
図8】
図7及び
図8で使用されるLLCコンバータ及びHSCコンバータの様々な特性の表を示す。
【
図9A】
図2のHSCコンバータのシミュレーション結果を示す波形のグラフを示す。
【
図9B】
図2のHSCコンバータのシミュレーション結果を示す波形のグラフを示す。
【
図9C】
図2のHSCコンバータのシミュレーション結果を示す波形のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、単一の出力を含む関連技術のハイブリッドスイッチドキャパシタ(HSC)コンバータの回路図である。
図1のHSCコンバータは、入力電圧Vinと、第1のブリッジ及び第2のブリッジと、第1のブリッジと第2のブリッジとの間に接続された変圧器と、第1のブリッジと変圧器との間に接続された第1の共振回路と、第2のブリッジと変圧器との間に接続された第2の共振回路と、変圧器に接続された第1の出力キャパシタCoutと、出力キャパシタCoutに接続された出力端子Voutとを含む。
【0014】
図1のHSCコンバータの入力電圧Vinは、任意の適切なDC電圧源とすることができ、例えば48Vを含む任意の適切なDC電圧を供給することができる。出力電圧Voutは、以下の式(1)によって与えられるように、巻線L11~L22の巻数に依存する。
【0015】
図1のHSCコンバータの第1のブリッジ及び第2のブリッジは、入力電圧Vinとグランドとの間に並列に接続することができる。第1のブリッジは、第1のスイッチQ1と第3のスイッチQ3との間に第2のスイッチQ2が接続された状態で直列に接続されたスイッチQ1、Q2、Q3を含む。第2のブリッジは、第4のスイッチQ4と第6のスイッチQ6との間に第5のスイッチQ5が接続された状態で直列に接続されたスイッチQ4、Q5、Q6を含む。第1のノードは第1のスイッチQ1と第2のスイッチQ2との間に位置することができ、第2のノードは第2のスイッチQ2と第3のスイッチQ3との間に位置することができ、第3のノードは第4のスイッチQ4と第5のスイッチQ5との間に位置することができ、第4のノードは第5のスイッチQ5と第6のスイッチQ6との間に位置することができる。スイッチQ1~Q6は、スイッチQ1、Q3、Q5を含む第1のスイッチ群と、Q2、Q4、Q6を含む第2のスイッチ群とに分割することができる。第1のスイッチ群及び第2のスイッチ群は、位相が180°シフトされたパルス幅変調器(PWM:pulse-width modulator)を用いて相補的に制御することができる。第1のスイッチ群及び第2のスイッチ群は、二乗平均平方根(RMS:root-mean-square)電流を低減又は最小化するために、50%近くにされ得る同じ固定デューティサイクルで制御することができる。スイッチQ1~Q6は、スイッチQ1~Q6に駆動信号を供給するコントローラによって制御することができる。任意の適切なコントローラを使用することができ、ハードウェア及び/又はソフトウェアで実装することができる。コントローラは、本明細書に記載の機能を提供するように構成及び/又はプログラムすることができる。
【0016】
図1のHSCコンバータの変圧器は、第1の巻線L12、第2の巻線L22、第3の巻線L21、及び第4の巻線L11を含む単一の巻線を含むマルチタップ付き単巻変圧器とすることができる。第1の巻線L12は第2の巻線L22に物理的に接続され、第2の巻線L22は第3の巻線L21に物理的に接続され、第3の巻線L21は第4の巻線L11に物理的に接続されている。変圧器の単一の巻線の第1の端部(すなわち、第2の巻線L22に接続されていない第1の巻線L12の端部)は、第1の共振回路に接続することができ、変圧器の単一の巻線の第2の端部(すなわち、第3の巻線L21に接続されていない第4の巻線L11の端部)は、第2の共振回路に接続することができる。第1の巻線L12、第2の巻線L22、第3の巻線L21、及び第4の巻線L11は、磁気コアと磁気的に結合することができる。
【0017】
図1のHSCコンバータの変圧器の単一の巻線は、第1の巻線L12と第2の巻線L22との間の第1のタップと、第2の巻線L22と第3の巻線L21との間の第2のタップと、第3の巻線L21と第4の巻線L11との間の第3のタップとを含むことができる。第1のタップは、第5のスイッチQ5と第6のスイッチQ6との間の第4のノードに接続することができる。第2のタップは、出力キャパシタCoutに接続することができる。第3のタップは、第2のスイッチQ2と第3のスイッチQ3との間の第2のノードに接続することができる。
【0018】
図1のHSCコンバータにおいて、変圧器の第1の巻線群又は一次巻線群は、変圧器の第1の端部と変圧器の第1のタップとの間の巻線(すなわち、第1の巻線L12)と、変圧器の第2の端部と変圧器の第3のタップとの間の巻線(すなわち、第4の巻線L11)とを含むことができる。変圧器の第2の巻線群又は二次巻線群は、変圧器の第1のタップと第2のタップとの間の巻線(すなわち、第2の巻線L22)と、変圧器の第2のタップと第3のタップとの間の巻線(すなわち、第3の巻線L21)とを含むことができる。巻線L11~L22は互いに物理的に接続されているので、一次巻線群と二次巻線群とは互いに絶縁されていない。
図1のHSCコンバータは、非絶縁DC-DCコンバータである。
【0019】
図1のHSCコンバータにおいて、第1の共振回路は、第1の共振キャパシタCres1を含むことができ、第1の共振回路は、第1の巻線L12と、第1のスイッチQ1と第2のスイッチQ2との間の第1のノードとの間に接続することができる。
図1のHSCコンバータにおいて、第2の共振回路は、第2の共振キャパシタCres2を含むことができ、第2の共振回路は、第4の巻線L11と、第4のスイッチQ4と第5のスイッチQ6との間の第3のノードとの間に接続することができる。第1の共振回路及び第2の共振回路は、変圧器の漏れインダクタンスを使用することができる。代替的に、第1の共振回路及び第2の共振回路は、ディスクリート(discrete)インダクタを使用することができる。
【0020】
図1のHSCコンバータの出力端子Voutは、単一の出力電圧を供給する。単一の出力電圧は、調整されていない出力電圧とすることができる。入力電圧Vinと出力電圧Voutとの比は、以下の式によって与えられる。
【0021】
【0022】
ここで、Voutは出力端子Voutの出力電圧、Vinは入力電圧Vinの電圧、N1は第1及び第4の巻線L12,L11の巻数、N2は第2及び第3の巻線L22,L21の巻数である。出力電圧Voutは、巻線L11~L22の巻数を調整することによって調整することができる。しかし、巻線L11~L22の巻数をどのように調整しても、出力電圧Voutを入力電圧の4分の1に調整することはできない。
【0023】
出力電圧が入力電圧の4分の1である用途では、通常、異なるトポロジー、例えば、LLCトポロジーが必要とされる。LLCコンバータでは、二次巻線の電流を半波整流するため、電流ピーク値が大きく、損失が発生する。
【0024】
図2は、出力電圧が入力電圧の4分の1であるHSCコンバータを示す。
図2のHSCコンバータにおいて、単巻変圧器は、第1の巻線L22及び第2の巻線L21を含むが、いかなる一次巻線も含まない。
図2の単巻変圧器は、出力キャパシタCoutに接続された単一のタップを含む。
図1のHSCコンバータと比較して、
図2のHSCコンバータは、第1の巻線L12及び第4の巻線L11を含まない。
図2の変圧器は、2つの巻線(すなわち、巻線L22、L21)のみを含む。
図2の変圧器は、二次巻線のみを含み、いかなる一次巻線も含まない。一次巻線を含まないことにより、一次巻線に生じる銅箔を流れる電流による損失である銅損がなくなる。変圧器の構造が簡略化されるので、一次巻線が占有する空間をより有効に利用することができる。
【0025】
図1のHSCコンバータと同様に、
図2のHSCコンバータは、入力電圧Vinと、第1のブリッジ及び第2のブリッジと、第1のブリッジと第2のブリッジとの間に接続された変圧器と、第1のブリッジと変圧器との間に接続された第1の共振回路と、第2のブリッジと変圧器との間に接続された第2の共振回路と、変圧器に接続された第1の出力キャパシタCoutと、出力キャパシタCoutに接続された出力端子Voutとを含む。
【0026】
図2のHSCコンバータの第1のブリッジ及び第2のブリッジは、入力電圧Vinとグランドとの間に並列に接続することができる。第1のブリッジは、第1のスイッチQ1と第3のスイッチQ3との間に第2のスイッチQ2が接続された状態で直列に接続されたスイッチQ1、Q2、Q3を含む。第2のブリッジは、第4のスイッチQ4と第6のスイッチQ6との間に第5のスイッチQ5が接続された状態で直列に接続されたスイッチQ4、Q5、Q6を含む。第1のノードは第1のスイッチQ1と第2のスイッチQ2との間に位置することができ、第2のノードは第2のスイッチQ2と第3のスイッチQ3との間に位置することができ、第3のノードは第4のスイッチQ4と第5のスイッチQ5との間に位置することができ、第4のノードは第5のスイッチQ5と第6のスイッチQ6との間に位置することができる。スイッチQ1~Q6は、スイッチQ1、Q3、Q5を含む第1のスイッチ群と、Q2、Q4、Q6を含む第2のスイッチ群とに分割することができる。第1のスイッチ群及び第2のスイッチ群は、位相が180°シフトされたパルス幅変調器(PWM)を用いて相補的に制御することができる。第1のスイッチ群及び第2のスイッチ群は、二乗平均平方根(RMS)電流を低減又は最小化するために、50%近くにされ得る同じ固定デューティサイクルで制御することができる。スイッチQ1~Q6は、スイッチQ1~Q6に駆動信号を供給するコントローラによって制御することができる。任意の適切なコントローラを使用することができ、ハードウェア及び/又はソフトウェアで実装することができる。コントローラは、本明細書に記載の機能を提供するように構成及び/又はプログラムすることができる。
【0027】
図2のHSCコンバータの変圧器は、第1の巻線L22及び第2の巻線L21を含む単一の巻線を含むシングルタップ付き単巻変圧器とすることができる。第1の巻線L22は、第2の巻線L21に物理的に接続されている。変圧器の単一の巻線の第1の端部(すなわち、第2の巻線L21に接続されていない第1の巻線L22の端部)は、第1の共振回路に接続することができ、変圧器の単一の巻線の第2の端部(すなわち、第1の巻線L22に接続されていない第2の巻線L21の端部)は、第2の共振回路に接続することができる。第1の巻線L22及び第2の巻線L21は、磁気コアと磁気的に結合することができる。
【0028】
図2のHSCコンバータの変圧器の単一の巻線は、第1の巻線L22と第2の巻線L21との間の単一のタップを含むことができる。単一のタップは、出力キャパシタCoutに接続することができる。
【0029】
図2のHSCコンバータの変圧器は、単一の巻線群又は二次巻線群を含む。変圧器の単一の巻線群又は二次巻線群は、変圧器の第1の端部と変圧器の第2の端部との間の巻線(すなわち、第1の巻線L22及び第2の巻線L21)を含むことができる。巻線L21及びL22は互いに物理的に接続されているので、
図2のHSCコンバータは非絶縁型DC-DCコンバータである。
【0030】
図2のHSCコンバータにおいて、第1の共振回路は、第1の共振キャパシタCres1を含むことができ、第1の共振回路は、第1の巻線L12と、第1のスイッチQ1と第2のスイッチQ2との間の第1のノードとの間に接続することができる。
図2のHSCコンバータにおいて、第2の共振回路は、第2の共振キャパシタCres2を含むことができ、第2の共振回路は、第4の巻線L11と、第4のスイッチQ4と第5のスイッチQ6との間の第3のノードとの間に接続することができる。第1の共振回路及び第2の共振回路は、変圧器の漏れインダクタンスを使用することができる。代替的に、第1の共振回路及び第2の共振回路は、ディスクリートインダクタを使用することができる。
【0031】
図1のHSCコンバータの出力端子Voutは、単一の出力電圧を供給する。単一の出力電圧は、調整されていない出力電圧とすることができる。入力電圧Vinと出力電圧Voutとの比は、以下の式によって与えられる。
【0032】
【0033】
図3は、
図2のHSCコンバータにおける様々な電流経路を示す。第1の電流経路は、入力電圧Vinの一方の端子から、オンであるスイッチQ1、及び第1のノード、次いで第1の共振回路及び第4のノードを通り、次いで第1の巻線L22(すなわち、巻線1)及び単一のタップを通り、次いで出力キャパシタCout、次いでグランドに接続された入力電圧Vinの他方の端子までであり、入力電圧、第1のスイッチQ1、第1の共振回路、第1の巻線L22(すなわち、巻線1)、及び出力キャパシタCoutを含む第1の電流ループを作成する。第2の電流経路は、第2のノードから第2の共振回路を通り、次いでオンである第5のスイッチ及び第4のノードを通り、次いで第1の巻線L21(すなわち、巻線1)及び単一のタップを通り、次いで出力キャパシタCoutを通り、次いで第3のスイッチQ3を通って第2のノードに戻るまでであり、第2の共振回路、第5のスイッチQ5、第1の巻線L22(すなわち、巻線1)、出力キャパシタCout、及び第3のスイッチQ3を含む第2の電流ループを作成する。第1の巻線L22(すなわち、巻線1)内の第1の電流経路及び第2の電流経路は、第2の巻線L21(すなわち、巻線2)内に第3の電流経路を誘導する。第3の電流経路は、第2の巻線L21(すなわち、巻線2)及び単一のタップを通り、次いで出力キャパシタCoutを通り、次いで第3のスイッチQ3を通って第2の巻線L21(すなわち、巻線2)に戻るまでであり、第2の巻線L21(すなわち、巻線2)、出力キャパシタCout、及び第3のスイッチQ3を含む第3の電流ループを形成する。出力端子Voutは、出力キャパシタCout、並びに第1の電流ループ、第2の電流ループ、及び第3の電流ループに接続されている。
図3において、第1の共振キャパシタCres1及び第2の共振キャパシタCres2のキャパシタンスは、Cres1=Cres2=Cresとなるように同じである。加えて、スイッチQ1、Q3、Q5を含む第1のスイッチ群がオンにされ、スイッチQ2、Q4、Q6を含む第2のスイッチ群がオフにされる。スイッチQ1~Q6は、以下の式で与えられる周波数で切り替えることができる。
【0034】
【0035】
ここで、fswはスイッチング周波数、Lkは巻線の漏れインダクタンス、Ccresは共振キャパシタCres1、Cres2のキャパシタンスである。共振キャパシタCres1、Cres2の電圧は、以下の式によって与えられるように、入力電圧の半分である。
【0036】
【0037】
ここで、Vcresは共振キャパシタCres1、Cres2の電圧であり、Vinは入力電圧の電圧である。第1の共振回路及び第2の共振回路の電流は等しく、以下の式によって与えられる。
【0038】
【0039】
ここで、Icres1、Icres2は第1の共振回路及び第2の共振回路の電流であり、Icresは第1の共振回路又は第2の共振回路のいずれかを通る電流であり、IoutDCは出力される電流である。スイッチQ1を通る二乗平均平方根(RMS)電流は、以下の式によって与えられるように、第1の共振回路を通る電流の半分である。
【0040】
【0041】
ここで、IQ1(rms)は、第1のスイッチQ1を通るRMS電流である。第3のスイッチQ3を通るRMC電流は、以下の式によって与えられるように、第2の共振回路を通る電流の2分の3である。
【0042】
【0043】
ここで、I
Q3(rms)は、第1のスイッチQ3を通るRMS電流である。第1の巻線L22(
図3において巻線1として示される)及び第2の巻線L21(
図3において巻線2として示される)を通る電流は、以下の式によって与えられるように、第1の共振回路及び第2の共振回路の両方を通る電流である。
【0044】
【0045】
ここで、I
winding1は第1の巻線L22を通る電流であり、I
winding2は第2の巻線L21を通る電流である。
図4A及び
図4Bは、54V入力、13.5V出力(=Vin/4=54V/4)、及び111A出力電流を含む
図2の1500W HSCコンバータのシミュレーションの波形を示す。第1のブリッジ及び第2のブリッジ内のスイッチは、任意の周波数を有するが180°の位相差を有する2つのPWM信号で駆動することができる。したがって、共振電流Iresは、第1の共振回路及び第2の共振回路において生成されることができ、第1の共振回路及び第2の共振回路の各々は、共振キャパシタ及び共振インダクタを含み、共振インダクタは、変圧器の漏れインダクタンス又はディスクリートインダクタのいずれかである。共振電流Iresは、スイッチQ1,Q2の各々に流れる。変圧器の第2の巻線L21には共振電流Iresの2倍の電流が誘起され、スイッチQ3には第2の電流ループの電流と第3の電流ループの電流とを合成した共振電流Iresの3倍の電流が流れる。
図4Aに示されるように、第1の巻線L22(すなわち、巻線1)及び第2の巻線L21(すなわち、巻線2)には、共振電流Iresの2倍の電流がそれぞれ電流Is1,Is2として流れる。
図4Bは、出力電圧が入力電圧の4分の1(すなわち、Vout=Vin/4)であることを示す。第1のスイッチQ1を通るRMS電流Iq1は約22.26Aであり、第2のスイッチQ2を通るRMS電流Iq2は約21.78Aであり、第3のスイッチQ3を通るRMC電流Iq3は約66.57Aである。第1の巻線L22(巻線1)を通るRMS電流Is1は約62.29Aであり、第1の巻線L22(巻線1)を通る平均電流Is1は約55.65Aである。第2の巻線L21(巻線2)を通るRMS電流IS2は約62.16Aであり、第1の巻線L22(巻線1)を通る平均電流Is1は約55.50Aである。出力電圧のRMS電圧は約13.15Vであり、出力電圧のピークトゥピーク電圧は約115.74mVである。
【0046】
LLCコンバータと比較して、
図2のHSCコンバータでは変圧器の巻線電流が全波整流されるので、単一の巻線の電流利用率が改善され、例えば巻線がプリント回路基板(PCB)に含まれることによって引き起こされる損失を含む、巻線損失を低減することができる。出力側スイッチ(すなわち、
図2のスイッチQ3、Q6)に流れる有効電流(effective current)は、LLCコンバータの同様の出力側スイッチに流れる電流と比較して低減することができるので、出力側スイッチにおいて生じる損失も低減することができる。
【0047】
図5は、同等のLLCコンバータを
図2のHSCコンバータと比較する表を示し、LLCコンバータ及びHSCコンバータは、いずれも入力電圧の4分の1の出力電圧を供給する。表に示されるように、LLCコンバータは4:1:1の巻数比を有し、HSCコンバータは1:1の巻数比を有する。LLCコンバータ及びHSCコンバータはいずれも、一次回路内に4つの80Vトランジスタを含み、二次回路内に2つの40Vトランジスタを含む。LLCコンバータの一次巻線における電流は、以下の式によって与えられる。
【0048】
【0049】
HSCコンバータは、一次巻線を有さない。LLCコンバータの二次巻線における半波電流は、以下の式によって与えられる。
【0050】
【0051】
また、HSCコンバータの二次巻線における全波電流は、LLCコンバータの電流の半分であり、以下の式によって与えられる。
【0052】
【0053】
LLCコンバータの第1の二次巻線及び第2の二次巻線におけるRMS電流は、以下の式によって与えられる。
【0054】
【0055】
また、HSCコンバータの第1の二次巻線及び第2の二次巻線におけるRMS電流は、LLCコンバータの電流の約29%であり、以下の式によって与えられる。
【0056】
【0057】
LLCコンバータ及びHSCコンバータの一次スイッチにおけるRMS電流は半波であり、以下の式によって与えられる。
【0058】
【0059】
LLCコンバータの二次スイッチにおけるRMS電流は半波整流され、以下の式によって与えられる。
【0060】
【0061】
また、HSCコンバータの二次スイッチにおけるRMS電流は半波整流され、LLCコンバータの電流の4分の3であり、以下の式によって与えられる。
【0062】
【0063】
図6及び
図7は、入力電圧の4分の1の出力電圧を供給する同等のLLCコンバータ及びHSCコンバータの電流波形のグラフを示す。LLCコンバータ及びHSCコンバータはいずれも、1500Wの電力を供給することができる。入力電圧は54Vであり、出力電圧は13.5Vであり、出力電流は111Aである。LLCコンバータについて、
図6は、スイッチQ1~Q3についての電流波形のグラフを上部に示し、一次巻線並びに第1の二次巻線及び第2の二次巻線についての電流波形のグラフを下部に示す。HSCコンバータについて、
図7は、スイッチQ1~Q3についての電流波形のグラフを上部に示し、第1の二次巻線及び第2の二次巻線の電流波形のグラフを下部に示す。
図8の表は、
図6及び
図7のグラフのピーク電流及びRMS電流をまとめたものである。LLCコンバータにおいて、第1のスイッチQ1を通る、ピーク電流は43.5Aであり、RMS電流は21.8Aであり、第2のスイッチQ2を通る、ピーク電流は43.5Aであり、RMS電流は21.8Aであり、第3のスイッチQ3を通る、ピーク電流は174Aであり、RMS電流は87.2Aである。一次巻線を通る、ピーク電流は43.5Aであり、RMS電流は30.8Aであり、第1の二次巻線を通る、ピーク電流は174Aであり、RMS電流は87.2Aであり、第2の二次巻線を通る、ピーク電流は174Aであり、RMS電流は87.2Aである。HSCコンバータにおいて、第1のスイッチQ1を通る、ピーク電流は43.5Aであり、RMS電流は21.8Aであり、第2のスイッチQ2を通る、ピーク電流は43.5Aであり、RMS電流は21.8Aであり、第3のスイッチQ3を通る、ピーク電流は131Aであり、RMS電流は65.4Aである。HSCコンバータには一次巻線がない。第1の二次巻線を通る、ピーク電流は87.2Aであり、RMS電流は61.6Aであり、第2の二次巻線を通るピーク電流は87.2Aであり、RMS電流は61.6Aである。
【0064】
図9A~
図9Cは、電力が出力端子Voutから入力電圧Vinに流れる場合の
図2のHSCコンバータの双方向挙動のシミュレーションの波形を示す。
図9A~
図9Cは、出力端子Voutにおける13.5V入力と、入力電圧Vinにおける54V出力(=Vin*4=13.5V*4)と、20A出力電流とを含む1080W HSCコンバータのシミュレーションの波形を示す。上述の
図4に示される通常動作と同様に、
図9A~
図9Cは、第1の共振回路及び第2の共振回路において共振電流Iresが流れるようにスイッチが2つのPWM信号によって駆動される状態で、電力が反対方向に流れ得ることを示している。
図9Cは、出力電圧(すなわち、入力電圧Vinにおける電圧)が入力電圧(すなわち、出力端子Voutにおける電圧)の4倍である(Vin=4×Vout)ことを示している。ピークトゥピーク出力電圧は約230.42mVである。RMS入力電圧は13.5Vであり、RMS出力電圧は約52.93Vである。
【0065】
上述のシミュレーション結果から、1次巻線を除去して入力電圧の1/4の出力電圧を供給することができ、2次巻線に流れる有効電流は同等のLLCコンバータシステムと比較して29%低減され、2次スイッチを流れる有効電流はLLCコンバータシステムと比較して25%低減され、
図1のHSCコンバータは双方向で動作することができ、双方向電源として使用できることが確認された。
【0066】
前述の説明は、本発明の例示にすぎないことを理解されたい。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な代替形態及び修正形態を考案することができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内に収まる、全てのそのような代替形態、修正形態、及び変形形態を包含することが意図されている。
【外国語明細書】