(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009998
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】移動距離分析装置及び移動距離分析システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20250109BHJP
【FI】
G06Q10/0639
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103813
(22)【出願日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2023106077
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】307021210
【氏名又は名称】HRソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】武井 繁
(72)【発明者】
【氏名】大藪 貴之
【テーマコード(参考)】
5L010
【Fターム(参考)】
5L010AA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】労働者の業務中の移動に関する情報を取得し、分析することにより業務割当毎の移動距離を算出し、労働者への業務割当を評価する移動距離分析装置及び移動距離分析システムを提供する。
【解決手段】移動距離分析システムにおいて、移動情報装置は、労働者の移動情報を取得する労働者移動情報取得手段を含む制御部600を有し、移動距離分析装置は、業務割当情報を取得する業務割当情報取得手段と、労働者の移動情報に基づき、各業務中の業務中移動情報及び連続する業務間の業務間移動情報を判定する移動情報判定手段と、業務割当情報と判定した業務中移動情報及び業務間移動情報とに基づき、割り当てられた各業務の業務中移動距離及び割り当てられた連続する業務間の業務間移動距離を算出する移動距離算出手段と、を有する制御部210並びに労働者の移動情報を記憶する記憶装置を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
労働者の移動情報を取得する労働者移動情報取得手段と、
前記労働者の移動情報に基づき、各業務中の業務中移動情報と、連続する業務間の業務間移動情報と、を判定する移動情報判定手段と、
判定された前記業務中移動情報及び前記業務間移動情報に基づき、割り当てられた各業務中の業務中移動距離及び割り当てられた連続する業務間の業務間移動距離を算出する移動距離算出手段と、
前記労働者の移動情報を記憶する記憶装置と、
を有する移動距離分析装置。
【請求項2】
前記記憶装置は業務領域を含む情報を記憶し、
前記移動情報判定手段は、一つの業務領域を超えてから、他の業務領域へと進入するまでの労働者移動情報を、業務間移動情報と特定する、
請求項1に記載の移動距離分析装置。
【請求項3】
前記記憶装置は業務領域を含む情報を記憶し、
前記移動情報判定手段は、
前記労働者が前記業務領域を超えてから、所定時間内又は所定移動距離内に同じ業務領域に戻った場合は、前記業務領域を超えていないと判定する、
請求項1に記載の移動距離分析装置。
【請求項4】
前記移動情報判定手段は、
業務割当ごとに前記労働者の移動情報から重心を算出し、前記重心からの距離に基づき、前記業務中移動情報と、前記業務間移動情報と、を判定する、
請求項1に記載の移動距離分析装置。
【請求項5】
前記移動情報判定手段は、
業務割当ごとに、前記労働者の移動情報のうち、一定時間内の移動情報を業務領域中と判定し、判定した業務中移動情報以外の移動情報を業務間移動情報と判定する、
請求項1に記載の移動距離分析装置。
【請求項6】
業務割当情報を取得する業務割当情報取得手段を更に備えており、
前記移動情報判定手段は、
業務と業務中移動距離とを対応付けて記憶装置に記憶し、
取得された前記業務割当情報において、業務中移動距離が所定の距離より長い業務の有無を判定する、
請求項1に記載の移動距離分析装置。
【請求項7】
業務割当情報を取得する業務割当情報取得手段を更に備えており、
前記移動情報判定手段は、
連続する業務の組み合わせと業務間移動距離とを対応付けて記憶装置に記憶し、
取得された前記業務割当情報において、業務間移動距離が所定の距離より長い業務の組み合わせの有無を判定する、
請求項1に記載の移動距離分析装置。
【請求項8】
前記移動情報判定手段は、
一定期間における労働者の業務間移動距離の平均値を算出し、
平均値が最大となる業務間移動距離に対応する業務の組み合わせを、業務間移動距離が所定の距離より長い業務の組み合わせとして記憶装置に記憶する、
請求項1に記載の移動距離分析装置。
【請求項9】
前記労働者の位置情報を取得する労働者位置情報取得手段と、
前記位置情報を時系列に蓄積して労働者の移動情報を生成する労働者移動情報生成手段と、
前記労働者の移動情報を出力する労働者移動情報出力手段と、
を有する移動情報装置と、
請求項1~8のいずれかに記載の移動距離分析装置と、
を有する移動距離分析システム。
【請求項10】
さらに、顧客の移動情報を取得する顧客移動情報取得手段と、
前記労働者の少なくとも業務履歴及び評価を含む労働者属性情報を取得する労働者属性情報取得手段と、
労働者移動情報と、業務割当情報と、労働者属性情報と、顧客移動情報と、を含む情報に基づき、顧客に対応する労働者を特定する対応労働者特定手段と、
特定された労働者に対して、顧客への対応を指示する指示手段と、
を有する請求項9に記載の移動距離分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動距離分析装置及び移動距離分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、労働者の動作を分析することにより、労働者の負担を軽減させるなどの業務を改善しようとする試みがなされてきた。
【0003】
特許文献1には、労働者を撮影した画像を解析して労働者の動作を認識し、理想動作と比較することにより、労働者の評価情報を生成する移動距離分析装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された移動距離分析装置は、労働者の動作の評価を目的とするものであり、労働者に対する業務の割当て(シフトの割当)を評価し改善を図ることはできなかった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、労働者の業務中の移動に関する情報を取得し、分析することにより、業務割当ごとの移動距離を算出し、労働者に対する業務割当を評価する移動距離分析装置及び移動距離分析システムを提供する。なお、業務を割り当てる行為を「業務割当」又は「シフト」といい、割り当てられた業務のスケジュールを「業務割当情報」又は「シフトスケジュール」ということがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態によれば、
労働者の移動情報を取得する労働者移動情報取得手段と、
業務割当情報を取得する業務割当情報取得手段と、
労働者の移動情報に基づき、各業務中の業務中移動情報と、連続する業務間の業務間移動情報と、を判定する移動情報判定手段と、
業務割当情報と、判定した業務中移動情報及び業務間移動情報と、に基づき、割り当てられた各業務の業務中移動距離及び割り当てられた連続する業務間の業務間移動距離を算出する移動距離算出手段と、
労働者の移動情報を記憶する記憶装置と、
を有する移動距離分析装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、労働者の移動情報を取得し、それらを分析することで、業務割当の評価、見直しが可能となる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、
記憶装置は業務領域を含む情報を記憶し、
移動情報判定手段は、一つの業務領域を超えてから、他の業務領域へと進入するまでの労働者移動情報を業務間移動情報と特定する、
移動距離分析装置が提供される。
【0010】
本発明によれば、業務中移動情報と業務間移動情報とを客観的な指標により区別することができる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、
移動情報判定手段は、労働者が業務領域を超えてから、所定時間内又は所定移動距離内に同じ業務領域に戻った場合は、業務領域を超えていないと判定する、
移動距離分析装置が提供される。
【0012】
本発明によれば、突発的な事象が生じた場合でも、実態に即した形で業務中移動情報と業務間移動情報とを区別することができる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、
移動情報判定手段は、
業務割当ごとに労働者の移動情報から重心を算出し、重心からの距離に基づき、業務中移動情報と、業務間移動情報と、を判定する、
移動距離分析装置が提供される。
【0014】
本発明によれば、業務割当情報が無くても業務中移動情報と業務間移動情報とを区別することができる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、
移動情報判定手段は、
業務割当ごとに、労働者の移動情報のうち、一定時間内の移動情報を業務領域中と判定し、判定した業務中移動情報以外の移動情報を業務間移動情報と判定する、
移動距離分析装置が提供される。
【0016】
本発明によれば、突発的な事象が生じた場合でも、実態に即した形で業務中移動情報と業務間移動情報とを区別することができる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、
移動情報判定手段は、
業務と業務中移動距離とを対応付けて記憶装置に記憶し、
取得された業務割当情報において、業務中移動距離が所定の距離より長い業務の有無を判定する、
移動距離分析装置が提供される。
【0018】
本発明によれば、業務中の移動距離により当該業務が効率的に行われているか評価することができ、労働者の業務の見直し等を検討することができる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、
移動情報判定手段は、
連続する業務の組み合わせと業務間移動距離とを対応付けて記憶装置に記憶し、
取得された業務割当情報において、業務間移動距離が所定の距離より長い業務の組み合わせの有無を判定する、
移動距離分析装置が提供される。
【0020】
本発明によれば、業務間の移動距離を客観的に認識することにより、連続する複数の業務の割当の改善を検討することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、
移動情報判定手段は、
一定期間における労働者の業務間移動距離の平均値を算出し、
平均値が最大となる業務間移動距離に対応する業務の組み合わせを、業務間移動距離が所定の距離より長い業務の組み合わせとして記憶装置に記憶する、
移動距離分析装置が提供される。
【0022】
本発明によれば、業務間の移動距離を客観的に認識することにより、連続する複数の業務の割当の改善を検討することができる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、
労働者の位置情報を取得する労働者位置情報取得手段と、
位置情報を時系列に蓄積して労働者の移動情報を生成する労働者移動情報生成手段と、
労働者の移動情報を出力する労働者移動情報出力手段と、
を有する移動情報装置と、
移動距離分析装置と、
を有する移動距離分析システムが提供される。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、
さらに、顧客の移動情報を取得する顧客移動情報取得手段と、
労働者の少なくとも業務履歴及び評価を含む労働者属性情報を取得する労働者属性情報取得手段と、
労働者移動情報と、業務割当情報と、労働者属性情報と、顧客移動情報と、を含む情報に基づき、顧客に対応する労働者を特定する対応労働者特定手段と、
特定された労働者に対して、顧客への対応を指示する指示手段と、
を有する移動距離分析システムが提供される。
【0025】
本発明によれば、労働者の位置情報を適切に把握することが可能となり、その情報に基づき労働者の移動情報を分析することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の移動距離分析装置及び移動距離分析システムによれば、労働者の業務中の移動に関する情報を取得し、分析することにより、労働者に対する業務の割当てを評価し、移動距離の長い業務や業務間の移動距離が長い場合には、業務内容や業務の割振りを見直すことにより、効率的な業務の割当てが可能であり、労働者の負担を軽減することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の移動距離分析システムのシステム構成の一実施形態を示す図である。
【
図2】本発明の移動距離分析装置におけるハードウェア構成の一実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の移動距離分析装置における記憶装置内のデータベース(DB)構成の一実施形態を示す図である。
【
図4】本発明の移動距離分析システムを使用する職場の位置情報の一実施形態を示す図である。
【
図5】本発明の移動距離分析システムにおいて生成される労働者移動情報のデータテーブルの一実施形態を示す図である。
【
図6】本発明の移動距離分析システムの機能の一実施形態を示すブロック図である。
【
図7】本発明の移動距離分析システムの機能の一実施形態を示すブロック図である。
【
図8】本発明の移動距離分析システムにおける労働者移動情報の取得から労働者移動情報の判定までの工程の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図9】労働者の移動軌跡と業務領域の関係の例を示す図である。
【
図10】業務割当情報と、労働者の移動軌跡との関係の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に示す実施形態は一例であり、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されない。
【0029】
本明細書中において「労働者位置情報」とは、所定の時刻における労働者の位置を表す情報である。労働者位置情報は、例えば撮像装置により撮影された画像データや、ビーコンが自身の識別IDを含めて発信する電波等に基づいて取得される。本明細書中において、ビーコンの識別IDを「ビーコンID」といい、携帯端末の識別IDを「携帯端末ID」といい、撮像装置の識別IDを「撮像装置ID」という。
【0030】
本明細書中において「労働者移動情報」とは、労働者を特定する労働者IDと、労働者位置情報と、当該労働者位置に労働者が存在した時刻とを関連付けて記憶した情報であり、時刻の変化に応じた労働者位置の変化が客観的に把握できる情報を意味する。労働者位置に労働者が存在した時刻は、労働者がその位置に存在したとみなせる時刻であればよく、後述するように、携帯端末がビーコンからの電波を受信した時刻でもよいし、移動距離分析装置110が、移動情報装置100から労働者移動情報を取得した時刻でもよい。
【0031】
本明細書中において「業務中移動情報」とは、労働者が特定の業務を行っている時間帯の労働者移動情報であり、「業務間移動情報」とは、異なる業務間で移動をしている時間帯の労働者移動情報を意味する。
【0032】
本明細書中において「取得」とは、他の構成要素からの取得と、自身が算出することの双方を含む。例えば、「装置Aが情報を取得する」とは、「装置Aが、他の装置Bから情報を取得する」こと、及び「装置Aが、情報を算出する」ことの双方を含む。
【0033】
[1.移動距離分析システムの全体構成]
図1は、本実施形態に係る移動距離分析装置を含む移動距離分析システムの構成を示す図である。
【0034】
本発明の一実施形態における移動距離分析システムは、移動情報装置100、移動距離分析装置110、外部装置120を含む。移動情報装置100、移動距離分析装置110及び外部装置120は、ネットワークを介して或いは有線又は無線による通信手段により、相互にデータ送受信可能に接続される。
【0035】
[2.移動情報装置]
移動情報装置100は、主に職場内で働く労働者の移動情報を生成する装置であり、労働者位置情報を取得する労働者位置情報取得手段、労働者移動情報を生成する労働者移動情報生成手段、及び労働者移動情報を出力する労働者移動情報出力手段を含む。
【0036】
労働者位置情報の取得には、移動体の位置情報を取得するための公知の測定機器等を使用することができる。一実施形態としては、職場内の1か所以上に設置された電波発信機と労働者に携帯させた携帯端末とからなる電波送受信セットを利用する。すなわち職場内に電波発信機としてのビーコンを設置し、ビーコンIDを含む電波を携帯端末が受信する。携帯端末は、少なくとも受信した電波の強度、受信時刻、ビーコンID、及び携帯端末IDを移動情報装置100に送信する。移動情報装置100は、受信電波の強度と、ビーコンIDによって特定されるビーコンの設置位置と、に基づいて労働者位置情報を取得する。ビーコンIDとビーコンの設置位置との対応関係と、ビーコンが発信する電波の強度とビーコンとの距離の対応関係は、後述する施設情報DB302に記憶されており、移動情報装置100は、予め移動距離分析装置110から取得しておいてもよいし、労働者移動情報を取得するときに、移動距離分析装置110から取得してもよい。移動情報装置100は、取得した労働者位置情報を、携帯端末がビーコンIDを含む電波を受信した受信時刻(又は移動情報装置100が、携帯端末から発信された情報を受信した時刻)及び携帯端末IDに対応した労働者IDと関連付け、労働者移動情報を生成する。携帯端末IDと労働者IDとの対応関係は、後述する労働者情報DB303に記憶されており、移動情報装置100は、予め移動距離分析装置110から取得しておいてもよいし、その都度、移動距離分析装置110から取得してもよい。生成された労働者移動情報は、移動情報装置100内の記憶装置(図示せず)に記憶されてもよく、或いは移動距離分析装置110へ送信されてもよい。なお、電波発信機はビーコンに限定されるものではなく、GPSに用いられる人工衛星、WiFi基地局、携帯電話基地局、Bluetooth(登録商標)通信発信機等を使用して労働者の位置を特定してもよい。
【0037】
電波発信機としてビーコンを使用する場合、ビーコンはビーコンIDを含む電波を常時発信する。ここでビーコンIDは、Wi-Fiアクセスポイントから発信されてもよい。またビーコンが1台でもよいが、労働者移動情報を精度よく特定するためには、同一の職場内に複数のビーコンを配置することが好ましい。
【0038】
ビーコンやWi-Fi発信機などの電波発信機から発信された電波を受信するために、労働者が携帯可能でデータ通信可能なスマートフォン、タブレット端末、携帯電話などの携帯端末が利用できる。携帯端末には移動情報装置100が移動情報を算出するために必要なデータを送信するアプリケーションソフト(アプリ)がインストールされている。携帯端末内のアプリは、移動情報装置100の機能を備えることもできる。
【0039】
移動距離分析装置110が、労働者が携帯する携帯端末の位置等を認識することで労働者位置情報を取得し、かつ労働者移動情報を生成する機能、すなわち移動情報装置100の機能を有している場合には、移動情報装置100を設けなくてもよい。
【0040】
移動体の位置情報を取得するための公知の測定機器等の他の実施形態としては、職場内の1か所以上に設置された撮像装置であってよい。撮像装置は勤務中の労働者を撮影した1以上の画像情報を生成し、生成した画像データ及び撮像装置IDを移動情報装置100に送信する。移動情報装置100は、撮像装置から受信した画像情報と、撮像装置IDによって特定される撮像装置の設置位置と、に基づいて、労働者位置情報を取得する。移動情報装置100は、画像情報に含まれる労働者の労働者IDを特定し、取得した労働者位置情報を、画像データの撮影時刻及び労働者IDと関連付け、労働者移動情報を生成する、生成された労働者移動情報は、移動情報装置100内の記憶装置(図示せず)に記憶されてもよく、或いは移動距離分析装置110へ送信されてもよい。労働者IDの特定は、画像情報に含まれる顔画像データと、登録された顔画像データを比較することによって特定してもよいし、労働者IDの入力を受け付けてもよい。
【0041】
撮像される画像は複数の静止画でも動画であってもよい。撮像装置は、例えば魚眼レンズやミラー等の光学系を有し、水平方向に周囲360度を撮影可能な全方位カメラである。撮像装置は、音声受信機を備えるものであってもよい。音声受信機は、例えば労働者の接客時の音声を集音する。
【0042】
[3.移動距離分析装置]
移動距離分析装置110はサーバであり、移動情報装置100から労働者移動情報を取得し、労働者の業務中の移動を分析する。移動距離分析装置110は、例えば労働者移動情報を構成する情報を、業務内移動情報であるか又は業務間移動情報であるかの判定を行い、職場における労働者の業務割当を見直し、職場の業務効率化に繋げることができる。労働者の業務内移動情報と業務間移動情報の判定については後述する。
【0043】
外部装置120は移動距離分析装置110及び移動情報装置100以外の装置であり、移動距離分析装置110内の分析プロセスに必要な情報を提供する。外部装置120の例としては、本発明の移動距離分析装置110内の分析プロセスの一部を外部機関に委託する場合における外部機関のサーバが該当する。
【0044】
次に、移動距離分析装置110のハードウェア構成について説明する。移動距離分析装置110は、
図2に示すハードウェアの構成を有する。移動距離分析装置110は制御部210、入力装置220、記憶装置230、表示装置240、通信装置250及び出力装置260含み、これらはシステムバス270を介して接続されている。
【0045】
図2において、制御部210は、例えば、CPU等のプロセッサであり、移動距離分析装置110における処理が記述されたプログラムを実行する。入力装置220は、例えばキーボードやマウスなどで構成され、移動距離分析装置110の管理者等が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶装置230は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスク、SSDなどのストレージデバイスを含み、制御部210が実行すべきアプリケーションプログラム及び制御部210による処理の過程で得られた必要なデータ、外部装置等から取得した情報等を記憶する。また記憶装置230は、プログラム実行時の一時的な記憶領域として使用されてもよい。表示装置240は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、管理者に対して各種画面を表示する。通信装置250は、ユーザ及び外部装置とのネットワークNWを介する通信処理を実施する受信機および送信機である。出力装置260はプリンタなどである。
なお、
図2は一例であり、移動距離分析装置110のハードウェア構成は
図2の例に限定されない。
【0046】
移動距離分析装置110の機能を実行するためのアプリケーションプログラムが実行可能な状態になるまでの動作例について説明する。上述した構成をとる移動距離分析装置110には、例えば図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、移動距離分析装置110の機能を実行するためのアプリケーションプログラムがダウンロードされ、或いは通信装置250を経由してインターネットなどの伝送媒体によりダウンロードされ、記憶装置230に記憶され、その後インストールされる。アプリケーションプログラムを実行する際は、記憶装置230に記憶されたプログラムを起動させる。この状態で、制御部210は、記憶装置230から起動されたアプリケーションプログラムに従い、移動距離分析装置110としての機能を実行する。
【0047】
[3.1記憶装置]
図3は記憶装置230に含まれるデータベース(DB)の機能を示す。記憶装置230には、ユーザ情報DB301、施設情報DB302、労働者情報DB303、移動情報DB304、移動距離情報DB305、顧客情報DB306が含まれる。
【0048】
ユーザ情報DB301には、本発明の移動情報分析装置及び移動情報分析システムを利用するユーザの基本情報(ユーザの名称、氏名、移動情報分析装置にログインするためのアカウントを含む)が記憶される。各ユーザの基本情報は、本発明の移動情報分析装置及び移動距離分析システムの管理者又はユーザによる入力により、ユーザ情報DB301に記憶される。
【0049】
施設情報DB302には、移動距離分析装置及び移動距離分析システムの分析対象となる、労働者が勤務する職場(例えば、店舗)のレイアウト情報が記憶される。職場の情報としては、職場の平面及び空間座標などの位置、ビーコンID及びビーコンの設置位置、撮像装置ID及び撮像装置の設置位置、労働者が業務を行う業務領域位置情報、業務領域位置情報に対応する業務内容などの情報などが記憶される。また、労働者ごとの業務割当情報を統合した職場全体の業務割当情報も記憶される。
【0050】
施設情報DB302には、顧客情報も記憶される。顧客情報は主に、顧客の外観を含む識別情報(画像情報)、購入履歴、来店履歴等の情報が記憶される。
【0051】
図4に施設情報DB302に記憶される情報の例を示す。
図4(a)は、職場の平面位置情報を示す。
図4(b)は、
図4(a)内の各業務領域を平面座標で示した表である。労働者の位置を特定するためには、基準となる職場の位置情報が定められていなければならない。
図4(a)では労働者位置を、職場内を横軸(X軸)及び縦軸(Y軸)の2次元平面とみなしたX-Y座標を用いて特定する。労働者位置情報は、労働者が携帯する携帯端末が、ビーコンが発信したビーコンIDを含む電波を受信した時刻における位置を示している。携帯端末がビーコンID情報を受信した時刻に代えて、移動距離分析装置110(サーバ)が、移動情報装置100から労働者移動情報を取得した時刻を使用することもできる。
【0052】
図4(a)では、レジカウンターの中のレジ業務領域、冷蔵ケースの前の品出し領域、及び倉庫作業領域が設けられており、それぞれ(X軸)及び縦軸(Y軸)に座標が割り振られている。例えば
図4(b)に示すように、レジ業務領域は(1,0)、(7,0)、(1,1)及び(7,1)で囲まれる領域と定められており、品出し領域、倉庫作業領域も同様に座標により業務領域が特定されている。労働者の位置Pは、ビーコン01~05から発信される電波の強度及びビーコン01~05の設置位置を利用して経時的に座標が特定される。
図4(a)では縦方向及び横方向に10分割された座標で位置を特定しているが、分割の態様は職場の面積、形状、業務の種類により管理者が適宜設定することができ、設定されたレイアウトは施設情報DB302に記憶される。記憶された施設内の基準座標は労働者移動情報を特定する際に基準値として用いられる。
【0053】
施設情報DB302には、ビーコンIDと職場内のビーコン設置位置とを関連付けたテーブル、及びビーコンから発信される電波の強度に基づくビーコンと携帯端末との距離の関係が記憶される。移動情報装置100は、ビーコンIDを含む電波を受信すると、ビーコンIDに基づいてビーコンの設置位置を特定し、受信電波の強度に基づいてビーコンと携帯端末との距離を特定することで、労働者の位置を平面座標で特定することができる。
【0054】
労働者情報DB303は、労働者の基本情報(労働者の名称、氏名、労働者ID、携帯端末IDを含む)のほか、労働者ごとの業務割当情報、対応可能業務、業務履歴及び勤務評価を含む情報であり、例えば労働者IDごとに管理される。労働者ごとの業務割当情報は、労働者に割り当てられた業務が時刻と関連付けられて記憶されており、労働者移動情報と対比することにより、所定の時刻に実施している業務種別を特定するために利用される。また対応可能業務は、労働者ごとの対応可能な業務の種類であり、各労働者へ業務を割り当てる際に利用される。業務の割当については後述する。
【0055】
移動情報DB304は、労働者移動情報生成手段が生成した労働者移動情報を記憶する。
【0056】
移動距離情報DB305は、移動情報DB304に記憶された労働者移動情報に基づいて算出した移動距離情報を、労働者IDに対応付けて記憶する。
移動距離情報は、業務内及び業務間の移動距離や、1日の総移動距離、所定期間における業務ごとの累計移動距離の情報を含んでもよい。移動距離情報DB305は、業務領域位置情報における、労働者の滞在時間及び業務中移動距離の実績データを記憶する。
【0057】
顧客情報DB306には、職場に来店又は訪問する顧客の基本情報(顧客の氏名、性別、年齢、居所、購入履歴を含み、顔画像が登録される場合がある)が記憶される。顧客の基本情報は、本発明の移動情報分析装置及び移動距離分析システムの管理者又は顧客による入力により、顧客情報DB306に記憶される。顧客情報DB306には、注意すべき顧客の注意顧客移動情報及び注意顧客動作情報も記憶される。
【0058】
図5は移動距離情報DB305に記憶される、ある労働者に関する移動情報のデータテーブルの一例である。
図5(a)は、移動情報装置100から取得した労働者移動情報の一例であって、労働者(労働者ID=1)の10時0分から13時0分までを5分間隔で取得した位置がX-Y座標で示されている。
図5(a)のデータテーブルは移動情報DB304に記憶され、業務内容などの情報は含まない。
【0059】
後述の移動情報判定手段605により、施設情報DB302に記憶される労働者の業務割当情報に基づき、特定の時刻における業務内容や業務間又は業務中の区別がデータテーブルに追加される。
図5(b)は、移動情報判定手段605により情報が追加されたデータテーブルである。このデータテーブルには、業務割当情報として割り当てられた業務内容(作業予定)、実際に行った作業(作業実績)、同一業務内の移動であるか、異なる業務間での移動であるかの区別(移動区別)、座標から自動計算された移動距離(移動距離)が一覧形式で記載されており、移動距離情報DB305に記憶される。
【0060】
図5に示すデータテーブル内の「労働者ID」(
図5では1)は、移動情報装置100が、労働者DB303に記憶された対応関係に基づいて、携帯端末IDから特定することができる。また「X座標」及び「Y座標」は、ビーコンを用いる場合であれば、携帯端末が受信したビーコンから発信される電波の強度及びビーコンの設置位置から算出された値である。座標の設定方法は縦横の2次元直交座標に限定されず、職場の形状に応じ斜交座標や3次元座標を使用してもよい。「移動距離」は、予め設定された手法により後述の移動距離算出手段606により算出される値である。
【0061】
[3.2労働者移動距離情報の生成]
図6は、本発明の一実施形態における移動距離分析システムの機能を示すブロック図である。本実施形態では、ビーコンを用いた労働者位置情報を取得するために、ビーコン及び携帯端末が使用される。本実施形態において、一連の移動距離分析機能は、移動情報装置100内の制御部600と、移動距離分析装置110内の制御部210とにより実現される。
【0062】
[3.3労働者移動情報の生成]
制御部600の機能について説明する。
制御部600は、労働者位置情報取得手段601、労働者移動情報生成手段602、労働者移動情報出力手段603を有する。労働者位置情報取得手段601は、携帯端末より、受信した電波の強度、ビーコンID、及び携帯端末IDを取得し、移動情報装置100内の記憶装置に記憶する。
【0063】
移動情報装置100は、ビーコンIDとビーコンの設置位置との対応関係を、予め移動距離分析装置110に記憶された施設情報DB302から取得しておいてもよいし、労働者位置情報を取得するときに、移動距離分析装置110から取得してもよい。移動情報装置100は、受信電波の強度と、ビーコンIDによって特定されるビーコンの設置位置と、に基づいて労働者位置情報を取得する。
【0064】
労働者移動情報生成手段602は、労働者位置情報を、ビーコンIDを含む電波の受信時刻(又は携帯端末が受信した時刻)及び携帯端末IDに対応した労働者IDと関連付け、労働者移動情報を生成する。
【0065】
移動情報装置100は、携帯端末IDと労働者IDとの対応関係を、予め移動距離分析装置110に記憶された労働者情報DB303から取得しておいてもよいし、労働者移動情報を生成するときに、移動距離分析装置110から取得してもよい。
【0066】
労働者移動情報出力手段603は、生成された労働者移動情報を、移動距離分析装置110へ出力する。出力はネットワークを介したデータ通信を利用できるが、これに限定されない。
【0067】
[3.4労働者移動情報の分析]
制御部210の機能的構成を説明する。
制御部210は記憶装置230に保存されたアプリを起動し、かつ記憶装置230内の各DBに記憶された情報を用い、所定の機能を実現する。制御部210において実行される機能としては、労働者移動情報取得手段604、移動情報判定手段605、移動距離算出手段606、業務割当情報取得手段607、対応労働者特定手段608、労働属性情報取得手段、業務割当手段609、顧客移動情報取得手段610、労働者属性情報取得手段611、指示手段612を含む。
【0068】
労働者移動情報取得手段604は、移動情報装置100から出力された労働者移動情報を取得し、移動情報DB304へ保存する。また後述の対応労働者特定手段608が顧客対応すべき労働者を特定する工程において、労働者移動情報を対応労働者特定手段608へ出力する。
【0069】
移動情報判定手段605は、労働者移動情報に含まれる各時刻の労働者位置が、業務中移動情報又は業務間移動情報であるかを判断する(以下、本明細書中において、「移動種別の判定」という)。
【0070】
移動種別の判定について説明する。
図8は、本発明の一実施形態における労働者位置情報の取得から移動種別の判定までの工程を示すフローチャートである。
移動情報装置100は、ビーコンや撮像装置を使用して労働者位置情報を取得する(S11)。移動情報装置100内のアプリにより、取得された労働者位置情報を、労働者ID及び時刻に関連付けた労働者移動情報が生成され(S12)、生成された労働者移動情報は、移動情報装置100から移動距離分析装置110へ出力される(S13)。
【0071】
労働者移動情報取得手段604は移動情報装置100から出力された労働者移動情報を取得し(S14)、移動情報DB304に記憶する。移動情報判定手段605は、判定しようとする労働者移動情報に対応する労働者の業務割当情報を労働者情報DB303から取得し(S15)、労働者移動情報内の各時刻における位置情報について、移動種別の判定を行う(S16)。
【0072】
移動情報判定手段605は、時刻に関連付けられた労働者移動情報(座標(X,Y))を取得する(S21)とともに、施設情報DB302より業務領域の位置座標((X1,Y1)~(X4,Y4))を取得し(S22)、両者を比較する(S23)。労働者移動情報((座標(X,Y))が、業務領域((X1,Y1)~(X4,Y4))で囲まれる範囲内である場合(S24:Yes)は、業務領域中と判断する(S25)。労働者移動情報((座標(X,Y))が業務領域((X1,Y1)~(X4,Y4))で囲まれる範囲外である場合(S24:No)は、業務領域間と判断する(S26)。この移動情報判定手段605を、他の位置情報に対して行うまで繰り返し(S27:No)、全ての位置情報の判定を行うことにより終了する(S27:Yes)。
【0073】
図9は労働者移動情報の軌跡と業務領域の関係を示す図である。労働者が業務領域Aにて所定時間業務をした後に業務領域Bで業務を行った場合、労働者移動情報の推移は
図9(a)の実線で表される。
図9(a)の場合、業務領域Aの部分の業務中移動情報がア、業務領域Bの部分の業務中移動情報はウの部分となり、業務間移動情報がイの部分となる。
【0074】
移動距離算出手段606は、移動情報判定手段605により判断された業務中移動情報及び業務間移動情報に基づき、業務中移動距離と業務間移動距離とを算出する(S17)。業務割当情報と、業務中移動距離・業務間移動距離とを関連付けることにより(S18)、現在の業務割当ての改善を検討することができる。
【0075】
なお上記工程では、移動情報判定手段605は、労働者移動情報((座標(X,Y))と業務領域((X1,Y1)~(X4,Y4))とを比較することにより判定を行っているが、労働者の移動情報における各時刻と、業務割当情報において業務が割り当てられた時刻とを対比させて、移動種別の判定を行ってもよい。
【0076】
また、移動種別の判定には業務領域の位置座標を考慮しなくともよい。
図9(b)は、施設情報DB302に記憶された業務領域A及びBを特定する情報を利用しない場合である。
図9(b)に示されるように、労働者の位置の軌跡の特徴から業務領域を推定し、業務中移動情報と業務間移動情報との判定を行ってもよい。
【0077】
例えば、労働者の移動情報から移動軌跡の重心を特定し、重心から所定の距離内であるか否かによって、移動種別の判定を行ってもよい。重心の算出方法は、業務割当情報で設定された業務時間帯における労働者位置の位置座標を平均することで算出できる。また、重心からの所定の距離は、職場で働く労働者の当該業務における平均移動範囲により設定してもよい。業務割当情報で設定された業務時間帯と、労働者が実際に業務を行う時間帯とは必ずしも一致しないが、多少のズレが存在したとしても、重心の特定に及ぼす影響は少ない。
【0078】
他の例としては、労働者移動情報に基づいて、所定の割合以上の労働者が移動する領域を、当該業務における標準業務領域として設定してもよい。この標準業務領域と、労働者移動情報とを比較することによって、移動種別の判定を行ってもよい。
【0079】
他の例としては、例えば労働者が突発的な事由により一時的に業務領域から出た場合、例えば労働者Gはレジ業務を行っていたが、陳列棚の商品が崩れて床に落ちてしまい、レジ業務領域から出て、床に落ちた商品を陳列棚に戻す作業を行うような場合でも、業務領域から外に出ていた時間が予め規定する閾値より短い場合には、当該業務領域から出ていた時間の移動距離を業務間移動距離とはみなさず、レジ業務中移動距離とみなし、レジ業務中移動距離を算出してもよい。労働者の業務は定型的な業務ばかりではなく、空き時間に別の業務を行うことや、緊急に対応すべき業務が発生することも珍しくはない。業務領域に該当するか否かを厳格に判定する場合、かえって業務中移動距離を適切に判定することができなくなってしまう。緊急時の対応など非定型業務が起こり得る職場等においては、労働者が業務領域外に出た時間が予め規定する閾値より短い場合には、業務中移動距離とみなすことが好ましい。
【0080】
移動距離算出手段606は、時間が隣接する2つの位置情報から移動距離を算出する。また、移動情報判定手段605により同一の業務において業務中移動情報と判定された移動情報に基づく距離を業務中移動距離と識別し、業務間移動情報と判定された移動情報に基づく距離を業務間移動距離と識別する。隣接する移動情報間の距離の算出方法は、隣接する座標間の直線距離を累積した値でもよいが、これに限定されず、ユーザが任意に設定することができる。
【0081】
業務割当手段609は、労働者が対応すべき業務を割り当てる業務割当情報を作成する。労働者への業務割当は、本発明の移動距離分析システムの管理者が手動で行ってもよく、又は業務ごとの業務中移動距離、連続する業務間の業務間移動距離、及び業務に必要となる労働者数等の実績データを教師データとする学習済みモデルにより行われてもよい。業務割当手段609により割り当てられた個々の労働者の業務割当情報は労働者情報DB303に記憶され、労働者ごとの業務割当情報を統合した職場全体の業務割当情報は、施設情報DB302に記憶される。
【0082】
図10は業務割当情報と、労働者移動情報との関係の他の実施例を示す。業務割当情報は、レジ、品出し、倉庫清掃、レジという業務が時刻に対応して割り当てられるが、業務間の移動時間を考慮しないことがある。しかし、実際にはレジ業務から品出し業務に移行する場合、レジ業務領域aから品出し業務領域bへの移動が必要となる(
図10(b))。また、品出し業務領域bから倉庫清掃領域cへの移動(
図10(c))、倉庫清掃領域cからレジ業務領域aへの移動(
図10(d))が必要である。したがって移動情報判定手段605が、労働者の移動情報における各時刻と、業務割当情報において業務が割り当てられた時刻とを対比させて、移動種別の判定を行う場合には、連続する業務の業務間移動に要する時間の平均値を考慮することが好ましい。
【0083】
[3.5顧客対応機能]
顧客移動情報取得手段610は、職場としての店舗に来店した顧客の移動情報を取得する。撮像装置は、労働者位置情報の取得とともに顧客位置情報の取得に利用してもよい。そして、移動情報装置100は、労働者位置情報と同様に、顧客位置情報から顧客移動情報を生成し、移動距離分析装置110へ出力する。顧客移動情報取得手段610は、移動情報装置100から顧客移動情報を取得し、施設情報DB302に記憶する。顧客移動情報取得手段610は、後述の対応労働者特定手段からの要求に応じ顧客移動情報を施設情報DB302から取得してもよい。
【0084】
労働者属性情報取得手段611は、必要に応じ、労働者情報DB303から労働者属性情報を取得することができる。
【0085】
対応労働者特定手段は608、特定の顧客に対して対応する労働者を特定し、指示手段612へ出力する。例えば、顧客位置情報により、特定の顧客が同じ位置に長時間留まっていることが検出された場合、当該顧客の要望を聞くため、対応労働者特定手段は、対応すべき労働者を特定する。労働者の特定にあたり、労働者属性情報取得手段611は、顧客対応能力を有する労働者を取得する。対応労働者特定手段608は、労働者属性情報取得手段611が取得した労働者の中から、例えば顧客位置情報に最も近い労働者を対応労働者として特定する。顧客位置情報に最も近い労働者が、直ちに顧客を支援することが否かを判断するために、業務割当情報取得手段607により、業務割当情報を取得する。
【0086】
指示手段612は、対応労働者特定手段608により特定された労働者に、顧客への対応指示を伝達する。指示手段612は、労働者の携帯する携帯端末へ指示情報を送信するアプリでもよく、或いは労働者に業務連絡を伝えるための店内放送設備又は表示装置であってもよい。
【0087】
[4.算出した労働者移動距離情報の用途]
算出された業務中移動距離に基づいて、労働者の業務量を特定できる。例えば、業務中移動距離が多い業務及び時間帯ほど業務量が多いと判断できる。また、業務中移動距離及び業務間移動距離を合算した総移動距離は、多忙な労働者の特定や労働者の評価等に活用でき、参考情報として雇用者に通知してもよい。
【0088】
業務中移動距離に基づいて、業務の見直しを行うことができる。例えば、レジ業務中の移動距離が他職場の平均値を超える場合には、レジカウンター内の業務オペレーション(宅配便送付表の置き場所が離れている等)に改善すべき事項があると認識できる。また、品出し業務中の移動距離が他の労働者の平均値より少ない場合には、品出し業務を効率よく実施している労働者であると評価でき、当該労働者の業務フローをマニュアル化することもできる。
【0089】
業務間移動距離が他職場の平均値を超える場合には、業務を割り当てる業務割当情報に改善すべき事項があると認識でき、移動距離分析装置が、業務間移動距離が最も短くなる業務割当情報を提案してもよい。例えば、労働者に割り当てる業務として業務A、業務B及び業務Cが予定されている場合を想定する。業務Aを行う業務領域Aと、業務Cを行う業務領域Cとを移動する距離が、業務Bを行う業務領域Bと業務領域Aとの移動距離や業務領域Bと業務領域Cとの移動距離と比較して大きい場合には、業務割当情報の調整にも利用されるサーバは、業務Aの後には、(業務Cではなく)業務Bを行う業務割当情報を雇用者に提案してもよい。
【0090】
業務間移動距離が大きい業務は、連続して割り当てないように設定してもよい。例えば、労働者に割り当てる業務として、業務D、業務E及び業務Fが予定されている場合を想定する。業務Dを行う業務領域Dと、業務Eを行う業務領域Eと、業務Fを行う業務領域Fとが離れた場所にあり、異なる業務領域に移動する距離が所定の距離より大きい場合には、業務D、業務E及び業務Fを一人の労働者に割り当てるのではなく、2人以上、好ましくは3人の労働者に業務D、業務E及び業務Fを割り当てる割当情報を提案してもよい。職場の管理者がサーバを利用して業務割当情報を調整する場合、業務D、業務E及び業務Fを一人の労働者に割り当てようとした場合には、サーバが業務領域D、業務領域E及び業務領域Fの間の平均移動距離を取得し、所定の距離を超える場合には、注意喚起のメッセージを雇用者に提供してもよい。
【実施例0091】
以下、本発明の移動距離分析装置及び移動距離分析システムの具体的な実施例を説明する。
【0092】
[実施例1]
(1)労働者位置情報及び労働者移動情報の取得
図4のレイアウトの職場で働く労働者Aは、移動情報を算出するために必要なデータを取得して移動情報装置100に送信するためのアプリがインストールされている携帯端末を携帯している。職場内には1か所以上の場所にビーコンが配置されており、ビーコンからは、常時又は周期的にビーコンIDを含む電波が発信されている。
【0093】
労働者の携帯端末にインストールされたアプリは、ビーコンが発信する電波を受信すると、i)当該携帯端末に固有の携帯端末IDと、ii)受信したビーコンIDと、iii)受信した電波の強度と、iv)ビーコンIDを含む電波を携帯端末が受信した時刻と、を含む情報を移動情報装置100に送信する。移動情報装置100は、受信電波の強度と、ビーコンIDによって特定されるビーコンの設置位置と、に基づいて労働者位置情報を取得する。
【0094】
移動距離分析装置110(以下、実施例においてサーバという)は、ビーコンIDと職場内のビーコンの設置位置とを対応付けたテーブル、及びビーコンが発信する電波の強度とビーコンとの距離とを対応付けたテーブルを含む施設情報と、携帯端末IDと労働者IDとを対応付けたテーブルを含む労働者情報を記憶している。移動情報装置100は、当該施設情報及び労働者情報をサーバから取得し、労働者位置情報の取得及び労働者移動情報の生成に使用する。
【0095】
移動情報装置100は、取得した施設情報に基づいて、ビーコンIDに対応したビーコンの設置位置を特定し、さらにビーコンが発信する電波の強度に対応した携帯端末とビーコンとの距離を特定することにより、労働者位置情報を特定する。移動情報装置100は、取得した労働者情報に基づいて、特定した労働者位置情報を、携帯端末の受信時刻及び労働者IDと関連付け、労働者移動情報を生成する。
【0096】
(2)労働者の業務中移動情報及び業務間移動情報の取得
労働者Aは、シフトスケジュールに基づいて、
図4のレイアウトの職場において13時から15時まではレジ業務を行い、15時から16時までは冷蔵ケースへの品出し業務を行うように業務が割り当てられている。
【0097】
「レジ業務」は、職場の入り口近くの区画に設けられたレジカウンター内の業務である。レジカウンター内の業務としては、レジ業務の他に宅配便の受付け等が含まれているが、労働者がレジ業務を行うために移動する領域は、レジカウンター内(
図4中、(1,0)、(7,0)、(1,1)、(7,1)で囲まれる領域)に限られている。
【0098】
「品出し業務」は、職場に設けられた冷蔵ケースを含む陳列棚に商品を陳列する業務であり、労働者が品出し業務を行うために移動する領域は、陳列棚の近傍領域(
図4中、(8,0)、(9,0)、(8,7)、(9,7)で囲まれる領域)である。
【0099】
職場には複数のビーコンが配置されている。労働者Aがシフトスケジュールに基づいた業務を行う過程において、労働者が携帯する携帯端末は、労働者Aが携帯する携帯端末に固有の携帯端末IDと、受信したビーコンのビーコンIDと、ビーコンから発信された電波の受信強度と、ビーコンから発信された電波を受信した受信時刻と、を含む情報を移動情報装置100に送信する。
【0100】
移動情報処理装置100は、ビーコンIDとビーコンの設置位置との対応関係、ビーコンが発信する電波の強度とビーコンとの距離の対応関係、及び携帯端末IDと労働者IDとの対応関係を、予め移動距離分析装置110から取得し、記憶している。移動情報処理装置100は、これらの対応関係を利用して、ビーコンから携帯端末までの距離を算出し、労働者位置情報を算出する。
移動情報処理装置100は、算出した労働者位置情報に対して、受信時刻と、携帯端末IDと労働者IDとの対応関係から特定した労働者Aの労働者IDとを関連付け、労働者移動情報を生成する。移動情報処理装置100は、生成した労働者移動情報を、サーバに送信する。
【0101】
サーバは、送信された労働者移動情報を受信し、記憶装置230に記憶する。サーバに記憶され、蓄積された労働者Aの位置及び時刻は、労働者Aが業務を遂行するために移動する「労働者移動情報」となる。すなわち、サーバに記憶される「労働者移動情報」は、移動情報装置100から連続的に送信される「労働者移動情報」が蓄積されてなるデータテーブルである。
【0102】
サーバ内の記憶装置230(施設情報DB302)には、職場内の業務を行う業務領域が記憶されている。それらはレジカウンター内のレジ業務領域や陳列棚の近傍である品出し業務領域の位置情報(以下、実施例において「業務領域位置情報」という)である。業務領域位置情報は、職場の管理者が入力してもよいし、職場内を撮像した画像情報に基づいて、サーバ内で自動算出してもよい。
【0103】
労働者Aが職場の位置Pにいる場合、ビーコン01、ビーコン02及びビーコン05から発信されるビーコンID情報の強度に基づいて、労働者Aの位置Pを特定することができる。
【0104】
労働者位置である位置Pと、職場の業務領域位置情報とを比較し、労働者位置がレジ業務領域に含まれている労働者移動情報を特定する。たとえば、位置Pの位置座標が(6.0,0.5)の場合、労働者は、レジカウンター領域に存在することが特定できる。また、位置Pの位置座標が(8.5,6.0)の場合、労働者は、品出し業務領域に存在することが特定できる。
【0105】
時系列の位置Pに基づいて、労働者の移動軌跡を取得することができる。例えば、位置座標(6.0,0.5)から位置座標(8.5,6.0)に移動する場合、労働者はレジ業務領域を出て、冷蔵ケース前の品出し業務領域に移動する移動軌跡を取得することができる。
【0106】
サーバは、労働者Aの位置Pの位置座標が存在する業務領域位置情報に基づいて、労働者移動情報に対応した業務を特定する。例えば、労働者Aの位置Pの位置座標が(6.0,0.5)の場合、労働者は、レジカウンター領域に存在することが特定でき、この労働者移動情報に対して「レジ業務」という業務内容を関連付ける。また、労働者Aの位置Pの位置座標が(8.5,6.0)の場合、労働者は、品出し業務領域に存在することが特定でき、この労働者移動情報に対して「品出し業務」という業務内容を関連付ける。
業務領域位置情報と業務内容の対応関係は、サーバ内の記憶装置230(施設情報DB302)に記憶されている。
【0107】
業務領域位置情報を利用せずに、労働者Aのシフトスケジュールと、労働者Aの労働者移動情報とに基づき、労働者Aがレジ業務を行っている時間帯における労働者移動情報を、レジ業務中移動情報として特定することも可能である。同様に労働者Aが品出し業務を行っている場合の品出し業務中移動情報を特定できる。そして、労働者移動情報のうち、レジ業務から品出し業務に移る場合の業務間移動情報を特定できる。
【0108】
例えば、13時から15時までは倉庫の清掃業務を行い、15時から15時15分までを移動時間とし、15時15分から17時までは搬出業務を行うシフトスケジュールが割り当てられた労働者Bを想定する。
【0109】
サーバが記憶する労働者移動情報は、労働者Bの位置と、当該位置に労働者Bが存在した時刻とを関連付けた情報である。労働者Bが存在した時刻が15時から15時15分までの労働者移動情報を業務中移動情報とし、15時15分から17時までの労働者移動情報を業務中移動情報として特定する。また、労働者Bが存在した時刻が15時から15時15分までの労働者移動情報を、業務間移動時間として特定する。
【0110】
(3)労働者の移動距離の算出
時間が隣接する2つの位置情報から移動距離を算出する。例えば、労働者の時刻14時6分10秒の位置情報(x1,y1)及び時刻14時6分11秒の位置情報(x2,y2)との間の直線距離を算出し、時刻14時6分11秒から時刻14時6分12秒の間の労働者の移動距離とする。各業務の移動距離は、隣接する2つの位置情報から算出した移動距離の累積が各業務領域内の移動距離となる。サーバは、レジ業務の業務中移動情報、品出し業務の移動情報、業務間移動情報を特定した後、移動距離算出手段606によってレジ業務中の移動距離、品出し業務中の移動距離、及び業務間移動距離を算出する。
【0111】
[実施例2]
実施例2は、リアルタイムで取得した労働者移動情報及び顧客移動情報に基づき、労働者に対して顧客対応の指示を与える例である。
(1)顧客の位置情報の取得
図4のレイアウトの職場において、顧客が利用するショッピングカートに携帯端末が取り付けられており、当該携帯端末にインストールされたアプリが、ビーコンが発信するビーコンIDを含む電波を受信すると、携帯端末は、受信電波の強度、受信時刻、ビーコンID、及びショッピングカートに固有のカートIDを移動情報装置100に送信する。移動情報装置100におけるショッピングカートの位置である顧客位置情報の取得並びに顧客移動情報の生成及びサーバへの出力は、労働者位置情報の取得並びに労働者移動情報の生成及びサーバへの出力を行う実施例1と同様である。なお顧客位置情報は、ビーコンの他にも、職場内に配置した撮像装置が撮像した画像データを用いることによって特定することができる。撮像装置を使用して顧客位置情報を取得する場合、労働者の顔画像を予めサーバ内の記憶装置230(労働者情報DB303)に登録しておき、登録された労働者以外の顔画像と、撮像装置が撮像した画像データ中の顔画像に基づいて、顧客の顔画像を認識し、認識された顧客の位置情報を特定することができる。なお、労働者以外の顔画像を顧客の顔画像と判断してもよいし、顧客の顔画像を予め登録したり、職場や工場に入る度に登録してもよい。顧客の顔画像は、サーバ内の記憶装置230における顧客情報DB306に登録される。
【0112】
(2)対応すべき顧客の特定
図4のレイアウトの職場に来店した顧客には、労働者の対応を求める顧客もいれば、労働者の対応を必要とせず、顧客自身がゆっくりと商品等を選択したいと考えている顧客もいる。これら多様な顧客の中から、労働者が対応すべき顧客を特定する。
【0113】
具体的には、顧客移動情報が、所定の時間以上にわたって陳列棚の隣接領域に固定されている場合は、当該陳列棚に陳列された商品の選択を迷っている可能性が高く、労働者が対応することが好ましい。所定の時間以上にわたって陳列棚の隣接領域に固定されているか否かは、サーバ内の記憶装置230(施設情報DB302)に記憶された業務領域位置情報及び顧客移動情報に基づいてサーバが判定する。撮像された画像情報データ中の顔画像によって、購入額の多い優良顧客であることが特定された場合にも、労働者が対応することが好ましい。購入額を含む顧客の基本情報(顧客の氏名、性別、年齢、居所、購入履歴を含む)は、顧客の顔画像と同様に、サーバ内の記憶装置230における顧客情報DB306に記憶される。
【0114】
万引き等の疑いが持たれる顧客に対しては、顧客の近隣に労働者を配置させる必要がある。万引き等の疑いは、撮像された画像情報中の顔画像や、労働者が存在する領域を避けるように移動する顧客移動情報を分析することによって判定することができる。万引き等の疑い等、注意すべき顧客移動情報である注意顧客移動情報は、サーバ内の記憶装置230における顧客情報DB306に記憶される。サーバは、取得した顧客移動情報と注意顧客移動情報を比較し、その類似度を評価することにより、注意すべき顧客であるか否かを判定する。また、飲食店舗の場合、来店した顧客、来店又は前回の注文から所定時間を超えた顧客、メニューを見る動作をした顧客、所定回数を超えて店舗従業員を見る動作をした顧客、店舗従業員に向けて手を挙げている顧客を画像情報から特定し、労働者に対応させてもよい。労働者に対応させるべき顧客の動作は、注意顧客動作としてサーバ内の記憶装置230における顧客情報DB306に記憶されている。サーバは、画像情報から特定した顧客の動作と注意顧客動作を比較し、その類似度を評価することにより、注意すべき顧客であるか否かを判定する。
【0115】
(3)顧客に対応する労働者の決定
サーバ内の記憶装置230における労働者情報DB303には、労働者の業務履歴及び勤務評価が記憶されている。サーバ内の対応労働者特定手段608は、労働者移動情報と、業務割当情報と、顧客移動情報と、労働者の業務履歴及び勤務評価とに基づき、顧客の対応を行う労働者を特定する。労働者移動情報、業務割当情報、顧客移動情報、労働者の業務履歴、及び労働者の勤務評価ごとに対応可能性を評価し、ユーザが入力した重みづけに基づいて総合評価を算出し、対応を行う労働者を特定する。例えば、労働者移動情報を優先して、顧客に近い労働者を顧客に対応させてもよいし、評価の高い労働者を優先して顧客に対応させてもよい。労働者移動情報から業務中移動距離を算出し、直前の所定時間における業務中移動距離が少ない労働者は、余裕のある労働者であると判定し、顧客に対応させてもよい。労働者の業務割当情報を優先して、時間を変更しやすい業務、例えば清掃業務が割り当てられている労働者を顧客に対応させてもよい。
【0116】
(4)労働者に対する指示
顧客に対応する労働者を決定した後、当該労働者に対して顧客への対応を指示する。労働者への指示は、職場内に設けられた表示装置又は音声スピーカーを用いることができる。労働者が携帯する携帯端末や、労働者が携帯する携帯端末に対して、サーバから直接指示を送信してもよい。
【0117】
[変形例]
図6に示される、本発明の移動距離分析システムの構成においては、労働者位置情報を取得して労働者移動情報を生成する機能は、移動情報装置100の機能である。しかし、労働者位置情報を取得して労働者移動情報を生成する機能は、労働者が携帯する携帯端末の機能であってもよい。かかる場合、
図7に示すように労働者の携帯する携帯端末は、移動情報装置100としても機能し、労働者位置情報を取得して生成した労働者移動情報を移動距離分析装置110に常時出力し続ける。移動距離分析装置110の労働者移動情報取得手段604は、携帯端末(移動情報装置100)から出力された労働者移動情報を取得し、移動情報DB304へ保存する。
【0118】
労働者移動情報は、移動情報装置100から出力された労働者位置情報に基づいて生成されたものでなくともよい。例えば冷凍庫等のビーコンを配置することが難しい場所や、他の場所に配置したビーコンから出力される電波が届かない場所のように、労働者の位置を特定することが困難な領域、そして更衣室やトイレ等のようにカメラを配置できない領域(以下、「位置特定困難領域」という)では、業務中移動距離を推定することにより算出してもよい。例えば、労働者が位置特定困難領域に入った時刻と退出した時刻とに基づいて、労働者の位置特定困難領域における滞在時間を算出する。記憶装置230の移動距離情報DB305には、業務領域位置情報における、労働者の滞在時間及び業務中移動距離の実績データが記憶されている。そして、位置特定困難領域と同様の広さを有する他の業務領域における、労働者の滞在時間と業務中移動距離との関係を過去の実績データから算出する。移動距離分析装置110は、過去の実績データから算出した滞在時間と業務中移動距離との関係に基づいて、労働者の位置特定困領域における滞在時間から、労働者の位置特定困難領域における業務中移動距離を推定することができる。或いは、位置特定困難領域における業務内容と同様の業務内容である他の業務領域における、労働者の滞在時間と業務中移動距離との関係を利用してもよい。その場合は、位置特定困難領域と他の業務領域との面積比を考慮する。例えば、位置特定困難領域の面積が100m2であり、他の業務領域Kの面積が50m2の場合、他の業務領域における業務中移動距離を2倍してもよい。また、当該労働者のデータがない場合には、別の労働者の滞在時間と業務中移動距離との関係を利用して推定してもよい。
【0119】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0120】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、
図1~
図7に示された機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。
即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が移動距離分析システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるかは特に
図1~
図7の例に限定されない。また、機能ブロック及びデータベースの存在場所も、
図1~
図7に特に限定されず、任意でよい。例えば、各種処理の実行に必要となる機能ブロック及びデータベースの少なくとも一部を、ユーザ端末等に移譲させてもよい。逆にユーザ端末の機能ブロック及びデータベースをサーバ等に移譲させてもよい。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0121】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0122】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザ等にプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザ等に提供される記録媒体等で構成される。
【0123】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0124】
以上を換言すると、本発明の移動距離分析装置に使用される情報処理装置は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明の移動距離分析装置に使用される情報処理装置は、
図1~
図10に記載の機能を有する。
これにより、労働者の業務中の移動に関する情報を取得し、分析することにより、労働者に対する業務の割当を評価し、改善を図ることができる。
100:位置情報装置、110:移動距離分析装置、120:外部装置、210:制御部、220:入力装置、230:記憶装置、240:表示装置、250:通信装置、260:出力装置、270:システムバス、301:ユーザ情報DB、302:施設情報DB、303:労働者情報DB、304:移動情報DB、305:移動距離情報DB、306:顧客情報DB、601:労働者位置情報取得手段、602:労働者移動情報生成手段、603:労働者移動情報出力手段、604:労働者移動情報取得手段、605:移動情報判定手段、606:移動距離算出手段、607:業務割当情報取得手段、608:対応労働者特定手段、609:業務割当手段、610:顧客移動情報取得手段、611:労働者属性情報取得手段、612:指示手段。