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特開2025-99992交通量予測装置、交通量予測方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099992
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】交通量予測装置、交通量予測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G08G1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217051
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】ヴィナヤック ディキィシット
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス ウォラー
(72)【発明者】
【氏名】ニウ チェンス
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアス セカディニングラット
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB05
5H181BB15
5H181BB19
5H181EE02
(57)【要約】
【課題】自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置、交通量予測方法、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本開示に係る交通量予測装置は、現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、道路における自動車の走行速度の実測値と、鉄道における各駅利用者数の実測値とのうち少なくとも一つを含む入力値を受け付ける入力値受付部と、現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測する交通量予測部と、道路における自動車の走行速度の実測値から求めた移動時間と、道路網における各経路の交通量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を示す移動時間誤差を算出する移動時間誤差算出部と、移動時間誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正する現在地目的地行列校正部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、道路における自動車の走行速度の実測値と、鉄道における各駅利用者数の実測値とのうち少なくとも一つを含む入力値を受け付ける入力値受付部と、
前記現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測する交通量予測部と、
道路における自動車の走行速度の実測値から求めた移動時間と、道路網における各経路の交通量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を示す移動時間誤差を算出する移動時間誤差算出部と、
前記移動時間誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正する現在地目的地行列校正部と、を備える、
交通量予測装置。
【請求項2】
現在地目的地行列校正部は、遺伝子として現在地目的地行列の各要素を持ち、その要素に対応する経路の移動時間の誤差が小さい遺伝子を優先的に子世代に残すことを特徴とする遺伝的アルゴリズムを用いて現在地目的地行列を補正する、
請求項1に記載の交通量予測装置。
【請求項3】
前記現在地目的地行列から、鉄道網による移動情報を抽出した鉄道現在地目的地行列を生成し、鉄道網における各経路の交通量の予測値に基づく各駅利用者数と、鉄道における各駅利用者数の実測値との誤差を示す各駅利用者数誤差を算出し、算出された前記各駅利用者数誤差に基づいて、鉄道現在地目的地行列を校正する鉄道現在地目的地行列校正部と、をさらに備える、
請求項1又は2に記載の交通量予測装置。
【請求項4】
鉄道の新規建設計画ゾーンに対して、既存の鉄道網と道路網における類似ゾーンを抽出し、抽出された類似ゾーンにおける鉄道利用者と、自動車利用者の割合に基づいて、鉄道現在地目的地行列を補正する類似ゾーン補正部と、をさらに備える。
請求項1又は2に記載の交通量予測装置。
【請求項5】
鉄道の新規建設計画ゾーンに対して、既存の鉄道網と道路網における類似ゾーンを抽出し、抽出された類似ゾーンにおける鉄道利用者と、自動車利用者の割合に基づいて、鉄道現在地目的地行列を補正する類似ゾーン補正部と、をさらに備える。
請求項3に記載の交通量予測装置。
【請求項6】
前記類似ゾーン補正部は、特定の時間帯における単位人口当たりの流出数、単位人口当たりの流入数に基づいて、類似ゾーンを抽出する、
請求項4に記載の交通量予測装置。
【請求項7】
前記類似ゾーン補正部は、特定の時間帯における単位人口当たりの流出数、単位人口当たりの流入数に基づいて、類似ゾーンを抽出する、
請求項5に記載の交通量予測装置。
【請求項8】
現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、道路における自動車の走行速度の実測値と、鉄道における各駅利用者数の実測値とのうち少なくとも一つを含む入力値を受け付けるステップと、
前記現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測するステップと、
道路における自動車の走行速度の実測値から求めた移動時間と、道路網における各経路の交通量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を示す移動時間誤差を算出するステップと、
前記移動時間誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正するステップと、を含む、
交通量予測方法。
【請求項9】
現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、道路における自動車の走行速度の実測値と、鉄道における各駅利用者数の実測値とのうち少なくとも一つを含む入力値を受け付けるステップと、
前記現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測するステップと、
道路における自動車の走行速度の実測値から求めた移動時間と、道路網における各経路の交通量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を示す移動時間誤差を算出するステップと、
前記移動時間誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正するステップと、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交通量予測装置、交通量予測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
新規の鉄道の建設計画の検討などの際に、鉄道を建設した場合の移動者数の予測などを行い事業計画の採算性の検討が行われている。その際に、既存の交通機関の交通量を把握する必要があり、既存の交通機関の交通量の予測も行われる。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、自動車などの出発地点から目的地点に関する情報である現在地目的地(OD(Origin-Destination))行列に基づいて自動車の走行を模擬し、交通流を予測する交通流シミュレーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5325241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の交通流シミュレーション装置においては、シミュレーションの前提条件となるOD行列を設定するには時間を要しており、実測値に応じて適切にOD行列を補正することができなかった。
【0006】
本開示は上記課題を鑑み、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置、交通量予測方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る交通量予測装置は、現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、道路における自動車の走行速度の実測値と、鉄道における各駅利用者数の実測値とのうち少なくとも一つを含む入力値を受け付ける入力値受付部と、前記現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測する交通量予測部と、道路における自動車の走行速度の実測値から求めた移動時間と、道路網における各経路の交通量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を示す移動時間誤差を算出する移動時間誤差算出部と、前記移動時間誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正する現在地目的地行列校正部と、を備える。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る交通量予測方法は、現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、道路における自動車の走行速度の実測値と、鉄道における各駅利用者数の実測値とのうち少なくとも一つを含む入力値を受け付けるステップと、前記現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測するステップと、道路における自動車の走行速度の実測値から求めた移動時間と、道路網における各経路の交通量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を示す移動時間誤差を算出するステップと、前記移動時間誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正するステップと、を含む。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、道路における自動車の走行速度の実測値と、鉄道における各駅利用者数の実測値とのうち少なくとも一つを含む入力値を受け付けるステップと、前記現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測するステップと、道路における自動車の走行速度の実測値から求めた移動時間と、道路網における各経路の交通量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を示す移動時間誤差を算出するステップと、前記移動時間誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置、交通量予測方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示に係る交通量予測システムの構成例を示す図である。
図2図2は、本開示に係る交通量予測装置の第一実施形態の構成例を示す図である。
図3図3は、本開示に係るOD行列の現在地から目的地に至る経路の表記方法について説明する図である。
図4図4は、本開示に係るOD行列の一例を示す図である。
図5図5は、本開示に係る経路のモデル化の一例を示す図である。
図6図6は、本開示に係る交通量予測処理のフローを示すフローチャートである。
図7図7は、本開示に係る遺伝的アルゴリズムの処理のフローを示すフローチャートである。
図8図8は、本開示に係る遺伝的アルゴリズムの処理における交叉処理を説明する図である。
図9図9は、本開示に係る鉄道OD行列の補正を説明する図である。
図10図10は、本開示に係る交通量予測装置の第一実施形態の処理のフローを示すフローチャートである。
図11図11は、本開示に係る交通量予測装置の第二実施形態の構成例を示す図である。
図12図12は、本開示に係る類似ゾーンの抽出を説明する図である。
図13図13は、本開示に係る類似ゾーンに基づく鉄道OD行列の補正量の算出式を示す図である。
図14図14は、本開示に係る交通量予測装置の第二実施形態の処理のフローを示すフローチャートである。
図15図15は、本開示に係る交通量予測装置、及びサーバ装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0013】
(交通量予測システムの構成)
まず、本開示に係る交通量予測システム1について、図1を用いて説明する。図1は、本開示に係る交通量予測システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本開示に係る交通量予測システム1は、交通量予測装置100と、サーバ装置200と、ネットワークNと、を備える。
【0014】
交通量予測装置100は、各種の経路における交通量を予測する計算処理などを実行する情報処理装置である。交通量予測装置100は、例えば、PC(Personal Computer)、WS(Work Station)、サーバの機能を備えたコンピュータにより実現されてよい。なお、交通量予測装置100は、例えば、ユーザーから操作情報の入力を受け付けて、操作情報に基づいて処理を行う。
【0015】
サーバ装置200は、各種の演算処理や機能を実現する処理などを実行する情報処理装置である。サーバ装置200は、例えば、PC、WS、サーバの機能を備えたコンピュータにより実現されてよい。なお、サーバ装置200は、例えば、交通量予測装置100からネットワークNを介して送信されてきた情報に基づいて処理を行う。
【0016】
ネットワークNは、交通量予測装置100と、サーバ装置200と、を有線、又は無線により相互に通信可能に接続する。ネットワークNが有線の場合は、IEEE802.3に規定されるイーサネット(登録商標)(ETHERNET(登録商標))により実現されてよい。また、ネットワークNが無線の場合は、IEEE802.11に規定される無線LAN(Local Area Network)により実現されてよい。
【0017】
(交通量予測装置の構成)
(第一実施形態)
次に、本開示に係る交通量予測装置100について、図2を用いて説明する。図2は、本開示に係る交通量予測装置の構成例を示す図である。図2に示すように、本開示に係る交通量予測装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130と、入力部140と、表示部150と、を備える。以下に、これらの構成について順を追って説明する。
【0018】
通信部110は、有線、又は無線により外部の装置との間において各種の情報などの送受信を担う。有線の場合は、例えば有線LAN端子などのインターフェイスを備えたNIC(Network Interface Card)により実現されてよい。無線の場合は、IEEE802.11に規定される無線LANなどにより実現されてよい。
【0019】
記憶部120は、各種の情報を記憶する記憶装置である。記憶部120は、主記憶装置と、補助記憶装置と、を備える。主記憶装置は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のような半導体メモリ素子によって実現されてよい。また、補助記憶装置は、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)、光ディスク等によって実現されてよい。
【0020】
図2に示すように、記憶部120は、道路網情報記憶部121と、鉄道網情報記憶部122と、予測プログラム記憶部123と、を備える。以下、これらの構成が記憶する情報について、順を追って説明する。
【0021】
道路網情報記憶部121は、道路網に関する情報を示す道路網情報を記憶する。道路網情報は、交差点等で区切られる道路の最小区間を模擬したエッジと、交差点や道路幅変更点などを模擬したノードによって表される道路モデルに関する情報である。この場合のエッジには、区切られた道路の距離、走行する自動車の制限速度、道路の車線数、右左折レーンの有無及び数等が設定されてよい。また、この場合のノードには、地図上における位置座標が設定されてよい。なお、道路網情報は、実在する道路網を模擬した道路モデルに関する情報を記憶されていてよいし、実在しない道路網(例えば、新規に建設する道路)を模擬した道路モデルに関する情報であってもよい。
【0022】
鉄道網情報記憶部122は、鉄道網に関する情報を示す鉄道網情報を記憶する。なお、ここで、鉄道は、普通鉄道、地下鉄道(メトロ)、懸垂式や跨座式のモノレール、案内軌条式の新交通システム(AGT:Automated Guideway Transit)、ライトレールトランジット(LRT:Light Rail Transit)、ケーブルカー、自走式ロープウェイなどを含んでよい。鉄道網情報は、鉄道の路線を示すエッジ、人を乗降させるための駅を示すノードによって表される鉄道モデルに関する情報である。この場合のエッジには、出発元の駅のノードと到着先の駅のノードとの間隔の距離、鉄道の進行方向、鉄道の走行速度、鉄道の乗車可能人数等が設定されてよい。鉄道網は、実在する鉄道の路線を模擬したものであってよい。また、この場合のノードには、駅の地図上における位置座標等が設定されてよい。なお、鉄道網情報は、実在する鉄道網を模擬した鉄道モデルに関する情報であってもよいし、実在しない鉄道網(例えば、新規に建設する鉄道)を模擬した鉄道モデルに関する情報であってもよい。
【0023】
予測プログラム記憶部123は、道路網や鉄道網における交通量の予測に用いるプログラムに関する情報を記憶する。道路網や鉄道網における交通量予測に用いるプログラムのプログラム言語は問わないが、例えば、FORTRANやC言語などのプログラム言語により言語化されたものであってよい。なお、プログラム言語により記述されたプログラムをコンパイルした実行ファイルが記憶されていてもよい。
【0024】
次に、図2に戻って、制御部130について説明する。制御部130は、各種の演算処理や機能を実現する処理などを実行するコントローラである。制御部130は、CPU(Central Processing Unit)や、MPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部120に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0025】
図2に示すように、制御部130は、記憶部120に記憶されたプログラムの実行や回路構成などによって実現される機能として、入力値受付部131と、交通量予測部132と、鉄道交通量予測部133と、移動時間誤差算出部134と、現在地目的地行列校正部(OD行列校正部)135と、鉄道現在地目的地行列校正部(鉄道OD行列校正部)136と、を備える。なお、制御部130は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、複数のCPUで、これらの処理を並列に実行してもよい。以下に、これらの構成について、順を追って説明する。
【0026】
入力値受付部131は、交通量予測に用いる入力値をユーザーから受け付ける。例えば、入力値受付部131は、道路現在地目的地行列(道路OD行列)と、鉄道現在地目的地行列(鉄道OD行列)と、道路における自動車の走行速度の実測値と、鉄道における各駅利用者数の実測値のうち少なくとも一つを含む入力値を受け付ける。なお、入力値受付部131は、道路OD行列と、鉄道OD行列と、を別々に受け付ける必要はなく、道路OD行列と、鉄道OD行列と、を統合した行列をOD行列として受け付けてもよい。ここで、OD行列における現在地から目的地に至る経路の表記方法について、図3を用いて説明する。図3は、本開示に係るOD行列の現在地から目的地に至る経路の表記方法について説明する図である。図3に示すように、OD行列における現在地から目的地に至る経路の表記においては、地図を複数の格子によって区切り、区切られた格子について識別子を割り当て、当該の識別子によって現在地、及び目的地を表記する。例えば、図3に示すように、現在地Aから目的地Bに移動する交通量については、Tabという表記を行ってよい。
【0027】
次に、本開示に係るOD行列について、図4を用いて具体例を示して説明する。図4は、本開示に係るOD行列の一例を示す図である。図4に示すように、本開示に係るOD行列においては、現在地から目的地に至るまでの経路Tについて、上述の表記方法にしたがって現在地の識別子と目的地の識別子を下付き文字により表したものによって表している。例えば、図4においては、現在地Aから目的地B,C,Dに至る交通量については、それぞれTab,Tac,Tadという表記がなされて、それぞれ現在地Aから目的地B,C,Dに至る経路の移動者数を示す数値が割り当てられる。そして、行を現在地(Origin)、列を目的地(Destination)として、これらの経路の移動者数を行列に並べて示している。
【0028】
交通量予測部132は、現在地目的地行列と、道路網に関する情報、及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測する。具体的には、StrUE(Strategic User Equilibrium)を用いて、各経路の交通量を予測する。StrUEは、移動時間などの移動のコストの期待値が最小となるように、移動者が経路を選択するという前提に基づいて、各経路の交通量を予測する手法である。まず、経路のモデル化について図5を用いて説明する。
【0029】
図5は、本開示に係る経路のモデル化の一例を示す図である。図5においては、出発地点(Origin)を示すノードN1と、目的地点(Destination)を示すノードN4と、それらの間にノードN3、N4が配置されていることが示されている。また、ノードN1からノードN2をつなぐエッジE1と、ノードN1からノードN3をつなぐエッジE2と、ノードN2からノードN3をつなぐエッジE3と、ノードN2からノードN4をつなぐエッジE4と、ノードN3からノードN4をつなぐエッジE5と、が示されている。このように、各経路は有向グラフによってモデル化されている。
【0030】
次に、StrUEを用いた交通量の予測について、図6を用いて説明する。図6は、本開示に係る交通量予測処理のフローを示すフローチャートである。図6に示すフローに沿って、本開示に係る交通量予測処理について説明する。
【0031】
まず、経路iを選択するユーザーの割合ξiを設定する(ステップS101)。次に、各エッジの交通量paを算出する(ステップS102)。ここで、dを、出発地点から目的地点までの全交通量とすると、エッジ1の交通量pは、下記の式(1)によって表される。
【0032】
【数1】
【0033】
次に、各エッジのコストcaを算出する(ステップS103)。エッジ1の交通量pから、エッジ1の移動時間(コストの一部)cは、道路交通の標準的なBPR(Bureau of Public Roads)関数を用いて、下記の式(2)によって表される。
【0034】
【数2】
【0035】
次に、各エッジのコストcaを算出する(ステップS104)。次に、コストの期待値の総和を最小化するように、ξiを選択する(ステップS105)。
【0036】
すなわち、StrUEを用いた交通量予測においては、コストを最小化するように道路網における各経路の交通量を定める。
【0037】
このような処理について数式を用いて説明する。pを、エッジaを通過する割合、Dを全交通量、pDを、エッジaを通過する交通量とすると、下記の式(3)により、目的関数が表される。また、式(3)のΦ(D)は、同一の出発地から、同一の目的地に向かう交通量の分布である。下記の式(3)においては、コストCa(pD)の変数であるエッジaを通過する交通量pDに対して、0からpaDまで積分していることを示している。
【0038】
【数3】
【0039】
なお、上記の式(3)におけるコストCa(pD)は、下記の式(4)により表される。
【0040】
【数4】
【0041】
は、交通量がpDであるときのエッジaの移動時間を表す関数である。VOT(Value of Time)は、時間に対する価値係数である。σは、エッジaの移動時間の変動である。VOR(Value of Reliability)は、時間変動に対する価値係数である。fは、通行料金である。tは、交通量がpDであるときのエッジaの移動時間であり、エッジaが道路である場合には、一般的な道路交通量の関数であるBPR関数により導出される。BPR関数は、ノードiからノードjへの非混雑時の移動時間をtij0、ノードiからノードjへの交通量をxij、ノードiからノードjへの時間交通容量をcij、パラメータをα、及びβとすると、下記の式(5)により表される。
【0042】
【数5】
【0043】
鉄道交通量予測部133(交通量予測部132であってもよい)は、鉄道OD行列と、鉄道網に関する情報に基づいて、鉄道網における各経路の交通量を予測する。なお、後述して説明する通り、鉄道交通量予測部133は、必ずしも交通量予測部132と別に設ける必要はなく、道路OD行列と鉄道OD行列を合わせたOD行列を入力値として受け付けて、交通量予測部132に鉄道交通量予測部133の処理を実行させてもよい。すなわち、これから説明する鉄道交通量予測部133の処理は、交通量予測部132の処理として実装してもよい。鉄道交通量予測部133は、上述して説明した交通量予測部132と同じように、上述したStrUEを用いて、鉄道網の各経路における交通量を予測する。なお、鉄道交通量予測部133(交通量予測部132であってもよい)は、鉄道網における各経路の交通量が予測されたら、下記の式(6)を用いて、駅iから駅jまでの経路の移動時間tij(xij)を算出する。すなわち、鉄道交通量予測部133(交通量予測部132であってもよい)は、鉄道における経路の移動時間を、鉄道の車両に乗車する人数の関数として、鉄道における経路の移動時間を算出する。
【0044】
【数6】
【0045】
上記の式(6)において、tij は、駅iから駅jまでの経路の非混雑時の移動時間であり、xijは、駅iから駅jまでの経路の交通量である。μは、駅jの乗車容量である。
【0046】
また、鉄道交通量予測部133(交通量予測部132であってもよい)は、鉄道網における各経路の交通量が予測されたら各駅利用者数を算出する。各駅利用者数は、各駅への入場者数と、各駅からの出場者数と、を含む。各駅への入場者数は、各経路の交通量に基づいて、他の特定の駅から対象となる駅への入場数を全て合計することにより算出される。各駅からの出場者数は、各経路の交通量に基づいて、対象となる駅から他の特定の駅への出場者数を全て合計することにより算出される。
【0047】
なお、交通量予測部132と、鉄道交通量予測部133と、を別々に設けることは必須ではなく、交通量予測部132に鉄道交通量予測部133の処理を実行させてもよい。すなわち、道路OD行列と鉄道OD行列を合わせたOD行列を入力値として受け付けて、道路と鉄道を合わせたOD行列において、エッジが道路である場合には、式(5)のコストを用い、エッジが鉄道である場合には、式(6)のコストを用いて、各経路の交通量を予測してもよい。校正された統合されたOD行列が得られた際には、Strにより、道路、及び鉄道の交通量が分かることから、統合されたOD行列を、道路OD行列と、鉄道OD行列と、に分離してもよい。
【0048】
移動時間誤差算出部134は、実際の自動車の走行速度から求めた移動時間と、道路網における各経路の交通量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を示す移動時間誤差を算出する。まず、移動時間誤差算出部134は、道路における自動車の実際の走行速度の実測値と、各経路の距離に基づいて、各経路の実際の移動時間を算出する。そして、移動時間誤差算出部134は、道路網における経路ごとに、交通量予測部132によって算出された移動時間と、実際の走行速度から求めた移動時間との差分を取ることにより誤差を算出する。
【0049】
OD行列校正部135は、移動時間誤差に基づいて、道路現在地目的地行列を補正する。具体的には、OD行列校正部135は、遺伝的アルゴリズムを用いて道路OD行列を補正する。ここで、図7を用いて、遺伝的アルゴリズムについて説明する。図7は、本開示に係る遺伝的アルゴリズムの処理のフローを示すフローチャートである。
【0050】
まず、現世代にN個の個体をランダムに生成する(ステップS201)。次に、現世代の各個体の適応度をそれぞれ計算する(ステップS202)。次に、適応度(個体がOD行列の場合は移動時間誤差)が条件を満たすか否かを判定する(ステップS203)。適応度が条件(OD行列の場合は、例えば、移動時間誤差が所定の閾値以下)を満たさない場合(ステップS203:No)、現世代から個体を二つ選択する(ステップS204)。次に、選択した二つの個体を交叉させた次世代の個体を生成する(ステップS205)。ステップ205における交叉処理は、必ず実行しなくてもよく、次世代のすべての個体が交叉及び突然変異をさせたものではなく、現世代の個体をそのまま残してもよい。なお、交叉処理については、後述して詳細に説明する。次に、突然変異により次世代の個体を発生させる(ステップS206)。次に、次世代の個体がN個になったか否かを判定する(ステップS207)。次世代の個体がN個になった場合(ステップS207:Yes)、ステップS202に戻って以降の処理を実行する。次世代の固体がN個になっていない場合(ステップS207:No)、ステップS204に戻って以降の処理を実行する。
【0051】
次に、ステップS205における、遺伝的アルゴリズムにおける交叉処理について、図8を用いて説明する。図8は、本開示に係る遺伝的アルゴリズムの処理における交叉処理を説明する図である。図8に示すように、交叉処理においては、現世代(親世代)のN個の個体から二つ選択された個体の遺伝子をOD行列の個々の値である経路の移動時間の誤差が二つの個体と比較して小さい方の遺伝子を選択して、次世代(子世代)の遺伝子を生成する。図8においては、現世代(親世代)の個体Parent1の現在地Aから目的地Bへの経路ODABの移動時間の誤差が9%であるのに対し、現世代(親世代)の個体Parent2の現在地Aから目的地Bへの経路ODABの移動時間の誤差が1%であることから、次世代(子世代)の現在地Aから目的地Bへの経路ODABの遺伝子として、個体Parent2の遺伝子が選択されたことが示されている。このように、経路ごとに移動時間の誤差が二つの個体において小さい方の遺伝子を選択して、次世代(子世代)の遺伝子を生成する。すなわち、OD行列校正部135は、遺伝的アルゴリズムを用いて移動時間誤差に基づいて親世代の個体の遺伝子から子世代の個体の遺伝子を選択することにより子世代の個体を生成し、移動時間誤差が所定の閾値以下の個体を補正後の道路現在地目的地行列として選択することにより道路現在地目的地行列を補正する。
【0052】
鉄道OD行列校正部(鉄道現在地目的地行列校正部)136は、現在地目的地行列から、鉄道網による移動情報を抽出した鉄道現在地目的地行列を生成し、鉄道網における各経路の交通量の予測値に基づく各駅利用者数と、鉄道における各駅利用者数の実測値との誤差を示す各駅利用者数誤差を算出し、算出された前記各駅利用者数誤差に基づいて、前記鉄道現在地目的地行列を校正する。具体的には、鉄道OD行列校正部136は、以下に説明する方法により鉄道OD行列を補正する。まず、鉄道OD行列校正部136は、鉄道における実際の各駅利用者数と、鉄道交通量予測部133によって算出された各駅利用者数との誤差を算出する。次に、以下の式(7)、(8)、(9)、及び(10)を用いて、駅の入場者数の補正量TDonij、駅の出場者数の補正量TDoffijを算出する。
【0053】
OPijを、調整前の鉄道OD行列に基づく、駅iから駅jに移動する移動者の割合、TDijを、駅iから駅jへの移動者数とすると、下記の式(7)により、OPijが求められる。
【0054】
【数7】
【0055】
そして、EGiを、駅iの入場者数の誤差とすると、下記の式(8)により、駅iの入場者数の誤差に基づく鉄道OD行列の補正量であるTDonijが求められる。
【0056】
【数8】
【0057】
また、DPijを、調整前の鉄道OD行列に基づく、駅jへの移動者のうち駅iから移動する移動者の割合とすると、上述したようにTDijを、駅iから駅jへの移動者数とすると、下記の式(9)により、DPijが求められる。
【0058】
【数9】
【0059】
そして、EGjを、駅jの出場者数の誤差とすると、下記の式(10)により、駅jの出場者数の誤差に基づく鉄道OD行列の補正量であるTDoffijが求められる。
【0060】
【数10】
【0061】
そして、鉄道OD行列のi行、j列の値の補正量をTDijとすると、TDijは下記の式(11)により求められる。
【0062】
【数11】
【0063】
以上説明した鉄道OD行列の補正量の算出方法について図9を用いて説明する。図9は、本開示に係る鉄道OD行列の補正を説明する図である。上述した式(7)、及び(8)においては、図9に示すように、駅Aを出発し駅Bに到着する移動者と、駅Aを出発し駅Cに到着する移動者との割合を維持し、駅Aの入場者数を計測値と一致させるように補正量を求めている。同様に、上述した式(9)、及び(10)においては、図9に示すように、駅Bに到着する移動者のうち駅Aから出発した移動者と、駅Cから出発した移動者の割合を維持し、駅Bの出場者数を計測値と一致させるように補正量を求めている。
【0064】
入力部140は、ユーザーから各種の操作情報が入力される。例えば、入力部140は、タッチパネルにより表示面(例えば表示部150)を介して作業者からの各種操作を受け付けてもよい。また、入力部140は、各種のボタンや、キーボード、マウスによってユーザーからの各種操作を受け付けてもよい。
【0065】
表示部150は、各種の情報を表示する。表示部150は、例えば、ユーザーから各種の処理に関する操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interfase)や交通量予測シミュレーションの結果などを表示してよい。表示部150は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、マイクロLED(Light Emitting Diode)ディスプレイ等により実現されてよい。また、表示部150は、静電容量方式などの各種の方式のタッチパネルであってもよい。
【0066】
(交通量予測方法について)
次に、本開示に係る交通量予測装置の第一実施形態の処理について、図10を用いて説明する。図10は、本開示に係る交通量予測装置の第一実施形態の処理のフローを示すフローチャートである。図10に示すフローに沿って、本開示に係る交通量予測装置の第一実施形態の処理について説明する。
【0067】
まず、交通量予測装置100は、OD行列の初期値を生成する(S301)。この処理によって、初期値が設定されたOD行列(O101)が生成される。次に、OD行列(O101)、道路網(I101)、及びメトロ開業前の鉄道網(I102)に基づいて、交流量予測処理を実行する(ステップS302)。この処理によって、道路交通量(O102)、及び鉄道交通量(O103)が出力される。次に、道路交通量(O102)に基づいて、移動時間を算出する(ステップS303)。なお、道路交通量に基づく移動時間の算出においては、上述したBPR関数によって移動時間を算出してよい。また、鉄道交通量(O103)に基づいて、各駅利用者数を算出する(ステップS304)。
【0068】
これによれば、道路交通量の予測値に基づく移動時間と、自動車の実際の各経路の走行速度の計測値から求めた移動時間の誤差に基づいて、適切に補正した道路現在地目的地行列を生成することができる。したがって、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に交通量を予測することができる交通量予測装置100を提供することができる。
【0069】
(交通量予測装置の構成)
(第二実施形態)
次に、本開示に係る交通量予測装置100の第二実施形態について説明する。図11は、本開示に係る交通量予測装置の第二実施形態の構成例を示す図である。図11に示すように、本開示に係る交通量予測装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130と、入力部140と、表示部150と、を備える。なお、交通量予測装置100の第二実施形態の構成のうち、通信部110と、記憶部120と、入力部140と、表示部150とは、それぞれ交通量予測装置100の第一実施形態の通信部110と、記憶部120と、入力部140と、表示部150と同じである。
【0070】
交通量予測装置100の第二実施形態の構成のうち、交通量予測装置100の第一実施形態と異なる構成は、制御部130であり、図11に示すように交通量予測装置100の第二実施形態の制御部130は、交通量予測装置100の第一実施形態の制御部130に対して、類似ゾーン補正部137が追加されている。そのため、交通量予測装置100の第二実施形態の構成の説明においては、上述した交通量予測装置100の第一実施形態と同じ構成についての説明を省略し、交通量予測装置100の第一実施形態と異なる構成である類似ゾーン補正部137について説明する。
【0071】
類似ゾーン補正部137は、新規の鉄道建設計画ゾーンに対する既存の鉄道網と道路網における類似ゾーンを抽出し、抽出された類似ゾーンにおける鉄道利用者と、自動車利用者の割合に基づいて、鉄道OD行列を補正する。まず、類似ゾーン補正部137は、道路OD行列、及び鉄道OD行列の情報に基づいて、単位人口当たりの流出数(朝)、単位人口当たりの流出数(昼)、単位人口当たりの流入数(夕)、単位人口当たりの流入数(夜)を特徴量として、予測対象駅が設置されるゾーンと類似するゾーンを最小二乗誤差に基づき抽出する。図12を用いて類似ゾーンの抽出について説明する。図12は、本開示に係る類似ゾーンの抽出を説明する図である。例えば、図12のメトロゾーン1が示すエリアに新規の鉄道の建設を計画しているとする。この場合、類似ゾーン補正部137は、OD行列の計算結果に基づいて、単位人口当たりの流出数(朝)、単位人口当たりの流出数(昼)、単位人口当たりの流入数(夕)、単位人口当たりの流入数(夜)を特徴量として最小二乗誤差に基づいて、類似ゾーンを抽出する。図12においては、メトロゾーン1に類似するゾーンとして、メトロゾーン1の南方のエリアが抽出されたことが示されている。
【0072】
また、類似ゾーン補正部137は、類似ゾーンの抽出において、特定の時間帯における単位人口当たりの流出数、単位人口当たりの流入数に基づいて、類似ゾーンを抽出する。なお、類似ゾーンを抽出する際の特徴量を、日中と夜間の人口差に基づいて変更してもよい。例えば、日中の人口の方が夜間の人口よりも少ない場合であれば、上述したように単位人口当たりの流出数(朝)、単位人口当たりの流出数(昼)、単位人口当たりの流入数(夕)、及び単位人口当たりの流入数(夜)を特徴量として用い、日中の人口の方が夜間の人口よりも多い場合であれば、単位人口当たりの流入数(朝)、単位人口当たりの流入数(昼)、単位人口当たりの流出数(夕)、及び単位人口当たりの流出数(夜)を特徴量として用いてよい。これにより、郊外地域以外での予測精度を向上させることができる。
【0073】
類似ゾーン補正部137は、類似ゾーンが抽出されたら、メトロゾーンにおける移動者数、類似ゾーンにおける列車利用割合、及びメトロゾーンから他の列車駅が属するゾーンへの移動者数に基づき、列車利用者のOD行列を予測する。具体的には、図13に示すように、鉄道OD行列の補正量を計算する。図13は、本開示に係る類似ゾーンに基づく鉄道OD行列の補正量の算出式を示す図である。メトロゾーンiから他の駅ゾーンへjへの鉄道による流出数をDemandzoneij、列車利用流出者数の割合(類似ゾーン)に対して全流出者数を掛けたものをProduction、メトロゾーンiから他の駅ゾーンへの移動のうちゾーンjへの移動割合をproportioni,jとすると、図13の上段に示す式により、メトロゾーンiから他の駅ゾーンへjへの鉄道による流出数を算出することができる。また、メトロゾーンiへの他の駅ゾーンjからの鉄道による流入数をDemandj,zonei、列車利用流入者数の割合(類似ゾーン)に対して全流入者数を掛けたものをAttraction、メトロゾーンiへの他の駅ゾーンへの移動のうちゾーンjからの移動割合をproportionj,iとすると、図13の下段に示す式により、メトロゾーンiへの他の駅ゾーンjからの鉄道による流入数を算出することができる。類似ゾーン補正部137は、出されたメトロゾーンiから他の駅ゾーンへjへの鉄道による流出数をDemandzoneij、及びメトロゾーンiへの他の駅ゾーンjからの鉄道による流入数をDemandj,zoneiを、鉄道OD行列の補正量として、鉄道OD行列を補正する。
【0074】
(交通量予測方法について)
次に、本開示に係る交通量予測装置の第二実施形態の処理について、図14を用いて説明する。図14は、本開示に係る交通量予測装置の第二実施形態の処理のフローを示すフローチャートである。図14に示すフローに沿って、本開示に係る交通量予測装置の第二実施形態の処理について説明する。なお、図14に示す本開示に係る交通量予測装置の第二実施形態の処理のうち、ステップS402,S403、S404については、図10に示した本開示に係る交通量予測装置の第一実施形態の処理のステップS302,S303、S304と同じであるから説明を省略する。
【0075】
まず、校正後のOD行列(I201)に対して類似ゾーンの移動量に基づいて補正する(ステップS401)。これにより、補正後のOD行列(O201)が生成される。次のステップS402,S403,S404については、図10に示した本開示に係る交通量予測装置の第一実施形態の処理について、上述して説明したステップS302,S303,S304とそれぞれ同じであるから説明を省略する。次に、メトロ開業後の道路走行速度から各経路のメトロ開業後の移動時間を算出する。そして、ステップS403において算出された道路利用時の移動時間と、メトロ開業後の道路走行速度から各経路のメトロ開業後の移動時間との誤差を算出する(ステップS405)。これにより、メトロ以外の道路における移動時間の誤差(O206)が算出される。また、併せてステップS404において算出された各駅利用者数と、メトロ開業後の各駅利用者数との誤差を算出する(ステップS405)。これにより、メトロを含む鉄道における各駅利用者数の誤差(O207)が算出される。以降は、算出された誤差に基づいて、上述したように道路OD行列、及び鉄道OD行列を補正することにより、メトロ開業後の道路OD行列、及び鉄道OD行列を生成することができる。
【0076】
以上説明した本開示に係る交通量予測装置の第二実施形態の処理によれば、新規建設する鉄道の利用者数を適切に予測することができる。したがって、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に交通量を予測することができる交通量予測装置100を提供することができる。
【0077】
(サーバ装置の構成)
次に、本開示に係るサーバ装置200の構成について説明する。本開示に係るサーバ装置200は、本開示に係る交通量予測装置100の第一実施形態や第二実施形態の構成の一部、又は全部を備えて、本開示に係る交通量予測装置100の第一実施形態や第二実施形態の処理の一部、又は全部を担ってよい。例えば、道路網情報記憶部121や鉄道網情報記憶部122のために記憶領域が必要な場合であれば、サーバ装置200に記憶容量が大きい記憶媒体を設けて、交通量予測装置100の第一実施形態や第二実施形態は、サーバ装置200にネットワークNを介してアクセスすることにより、交通量予測の計算に必要な部分の道路網情報や鉄道網情報を取得してよい。また、交通量予測装置100の第一実施形態や第二実施形態において例えば、交通量予測計算の処理などの演算処理能力を要する処理だけ、サーバ装置200によって実行させるようにしてもよい。
【0078】
これにより、交通量予測装置100として演算処理能力や記憶容量などの性能が高い情報処理装置を用いることなく、交通量予測計算を実行することができる。また、複数の交通量予測装置100から同一の道路網情報や鉄道網情報を共有して、複数の交通量予測装置100によって平行して、交通量予測計算を実行することができる。
【0079】
(ハードウェア構成)
上述した実施形態に係る交通量予測装置100、及びサーバ装置200は、例えば図15に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。図15は、本開示に係る交通量予測装置、及びサーバ装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、出力装置1010、入力装置1020と接続され、演算装置1030、一次記憶装置1040、二次記憶装置1050、出力IF(Interface)1060、入力IF1070、ネットワークIF1080がバス1090により接続された形態を有する。
【0080】
演算装置1030は、一次記憶装置1040や二次記憶装置1050に格納されたプログラムや入力装置1020から読み出したプログラム等に基づいて動作し、各種の処理を実行する。一次記憶装置1040は、RAM等、演算装置1030が各種の演算に用いるデータを一次的に記憶するメモリ装置である。また、二次記憶装置1050は、演算装置1030が各種の演算に用いるデータや、各種のデータベースが記憶される記憶装置であり、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等により実現される。
【0081】
出力IF1060は、モニタやプリンタといった各種の情報を出力する出力装置1010に対し、出力対象となる情報を送信するためのインターフェイスであり、例えば、USB(Universal Serial Bus)やDVI(Digital Visual Interface)、HDMI(登録商標)(High Definition Multimedia Interface)といった規格のコネクタにより実現される。また、入力IF1070は、マウス、キーボード、およびスキャナ等といった各種の入力装置1020から情報を受信するためのインターフェイスであり、例えば、USB等により実現される。
【0082】
なお、入力装置1020は、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等から情報を読み出す装置であってもよい。また、入力装置1020は、USBメモリ等の外付け記憶媒体であってもよい。
【0083】
ネットワークIF1080は、ネットワークNを介して他の機器からデータを受信して演算装置1030へ送り、また、ネットワークNを介して演算装置1030が生成したデータを他の機器へ送信する。
【0084】
演算装置1030は、出力IF1060や入力IF1070を介して、出力装置1010や入力装置1020の制御を行う。例えば、演算装置1030は、入力装置1020や二次記憶装置1050からプログラムを一次記憶装置1040上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。
【0085】
例えば、コンピュータ1000が交通量予測装置100として機能する場合、コンピュータ1000の演算装置1030は、一次記憶装置1040上にロードされたプログラムを実行することにより、交通量予測装置100の制御部130の機能を実現する。
【0086】
(構成と効果)
本開示に係る交通量予測装置100は、現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、道路における自動車の走行速度の実測値と、鉄道における各駅利用者数の実測値とのうち少なくとも一つを含む入力値を受け付ける入力値受付部131と、現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測する交通量予測部132と、実際の自動車の走行速度から求めた移動時間と、道路網における各経路の交通量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を示す移動時間誤差を算出する移動時間誤差算出部134と、移動時間誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正する現在地目的地行列校正部135と、を備える。
【0087】
この構成によれば、道路網における各経路の交通量の予測値に基づく移動時間と、実際の自動車の走行速度の計測値から求めた移動時間の誤差に基づいて、適切に補正した現在地目的地行列を生成することができる。したがって、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置100を提供することができる。
【0088】
本開示に係る交通量予測装置100の現在地目的地行列校正部135は、遺伝子として現在地目的地行列の各要素を持ち、その要素に対応する経路の移動時間の誤差が小さい遺伝子を優先的に子世代に残すことを特徴とする遺伝的アルゴリズムを用いて現在地目的地行列として選択することにより道路現在地目的地行列を補正する。
【0089】
この構成によれば、遺伝的アルゴリズムを用いて現在地目的地行列を生成して、現在地目的地行列を補正することができる。したがって、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置100を提供することができる。
【0090】
本開示に係る交通量予測装置100は、現在地目的地行列から、鉄道網による移動情報を抽出した鉄道現在地目的地行列を生成し、鉄道網における各経路の交通量の予測値に基づく各駅利用者数と、鉄道における各駅利用者数の実測値との誤差を示す各駅利用者数誤差を算出し、算出された各駅利用者数誤差に基づいて、鉄道現在地目的地行列を校正する鉄道現在地目的地行列校正部(鉄道OD行列校正部)136と、をさらに備える。
【0091】
この構成によれば、実際の各駅利用者数の実測値に基づいて、各駅の入場者数、及び出場者数の誤差を算出し、算出された誤差に基づいて鉄道現在地目的地行列を補正することができる。したがって、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置100を提供することができる。
【0092】
本開示に係る交通量予測装置100は、鉄道の新規建設計画ゾーンに対して、既存の鉄道網と道路網における類似ゾーンを抽出し、抽出された類似ゾーンにおける鉄道利用者と、自動車利用者の割合に基づいて、鉄道現在地目的地行列を補正する類似ゾーン補正部137と、をさらに備える。
【0093】
この構成によれば、鉄道の新規建設によって当該の鉄道の利用者数を予測することができる。したがって、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置100を提供することができる。
【0094】
本開示に係る交通量予測装置100の類似ゾーン補正部137は、特定の時間帯における単位人口当たりの流出数、単位人口当たりの流入数に基づいて、類似ゾーンを抽出する。
【0095】
この構成によれば、特定の時間帯における単位人口当たりの流出数、単位人口当たりの流入数に基づいて、類似ゾーンを抽出することができるため、適切に類似ゾーンを抽出することができる。したがって、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置100を提供することができる。
【0096】
本開示に係る交通量予測方法は、現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測するステップと、実際の走行速度から求めた移動時間と、道路交流量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を算出するステップと、誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正するステップと、を含む。
【0097】
この構成によれば、道路網における各経路の交通量の予測値に基づく移動時間と、実際の自動車の走行速度の計測値から求めた移動時間の誤差に基づいて、適切に補正した現在地目的地行列を生成することができる。したがって、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置100を提供することができる。
【0098】
本開示に係るプログラムは、現在地目的地行列と、道路網に関する情報と、鉄道網に関する情報と、現在地目的地行列と、道路網に関する情報及び鉄道網に関する情報に基づき、鉄道経路の移動時間を利用者数に応じて増加させる特性を用いて、道路網及び鉄道網における各経路の交通量を予測するステップと、実際の走行速度から求めた移動時間と、道路交流量の予測値から求めた各経路の移動時間との誤差を算出するステップと、誤差に基づいて、現在地目的地行列を補正するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0099】
この構成によれば、道路網における各経路の交通量の予測値に基づく移動時間と、実際の自動車の走行速度の計測値から求めた移動時間の誤差に基づいて、適切に補正した現在地目的地行列を生成することができる。したがって、自動的に校正されたOD行列を用いて、適切に各経路の交通量を予測することができる交通量予測装置100を提供することができる。
【0100】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0101】
100 交通量予測装置
110 通信部
120 記憶部
121 道路網情報記憶部
122 鉄道網情報記憶部
123 予測プログラム記憶部
130 制御部
131 入力値受付部
132 交通量予測部
133 鉄道交通量予測部
134 移動時間誤差算出部
135 OD行列校正部
136 鉄道OD行列校正部
137 類似ゾーン補正部
140 入力部
150 表示部
200 サーバ装置
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15