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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】
(43)【公開日】
(54)【発明の名称】回転電機のロータ構造
(51)【国際特許分類】
   
   
【FI】
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】
(21)【出願番号】
(22)【出願日】
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板坂 直樹
【テーマコード(参考)】
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621HH01
5H621PP10
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】漏れ磁束の効果的な抑制と磁力変更への利用を可能にして、着磁効率を向上させる。
【解決手段】ロータコア32に設置される磁力の変更が可能な磁力可変磁石50を備える。磁力可変磁石50に隣接して、誘導電流が流れ得る閉回路体1がロータコア32に設置されている。矢印A4が示す方向に相当する、磁力可変磁石50が形成する磁極の向きと、矢印A5が示す方向に相当する、誘導電流の流れる向きとが交差するように、閉回路体1が配置されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項】
回転電機のロータ構造であって、
ステータと対向した状態で回転可能に支持されるロータコアと、
前記ロータコアに設置される磁力の変更が可能な磁力可変磁石と、
を備え、
前記磁力可変磁石に隣接して、誘導電流が流れ得る閉回路体が前記ロータコアに設置されていて、
前記磁力可変磁石が形成する磁極の向きと前記誘導電流の流れる向きとが交差するように、前記閉回路体が配置されているロータ構造。
【請求項】
請求項1に記載のロータ構造において、
前記誘導電流の流れる方向が一方向に制限されているロータ構造。
【請求項】
請求項2に記載のロータ構造において、
前記閉回路体がダイオードを含み、
前記ダイオードによって前記誘導電流の流れる方向を制限しているロータ構造。
【請求項】
請求項2又は3に記載のロータ構造において、
前記磁力可変磁石の磁力を変更するために、前記磁力可変磁石の磁極と向きが同じ増磁磁界を前記磁力可変磁石に作用させた場合に前記誘導電流が流れて、前記磁力可変磁石の磁極と向きが逆の減磁磁界を前記磁力可変磁石に作用させた場合に前記誘導電流が流れないように、前記閉回路体が配置されているロータ構造。
【請求項】
請求項4に記載のロータ構造において、
前記磁力可変磁石に隣接してロータコアに設置される磁力固定磁石を更に備え、
前記磁力可変磁石に作用する前記磁力固定磁石による外部磁界の向きが前記増磁磁界の向きと逆になるように、前記磁力固定磁石が前記ロータコアに配置されているロータ構造。
【請求項】
請求項1~3のいずれか1つに記載のロータ構造において、
前記閉回路体が、各端に第1端部と第2端部とを有するコイルを更に含み、
前記コイルの前記第1端部と前記第2端部を接続することによって前記閉回路体が構成されているロータ構造。
【請求項】
請求項1に記載のロータ構造において、
磁束が通過する経路を横切るように前記ロータコアに形成されている空隙に、前記閉回路体が設置されているロータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【】
開示する技術は、自動車の駆動に好適な回転電機のロータ構造に関する。
【背景技術】
【】
近年、ハイブリッド車や電気自動車など、自動車の電動化が進んでいる。自動車に搭載される駆動モータは、低速での運転時には低回転ではあるが高トルクな出力が要求されるし、高速での運転時には低トルクではあるが高回転な出力が要求される。そのような広い範囲で、駆動モータは安定した出力が要求される。
【】
この種の駆動モータには永久磁石同期モータが広く用いられており、高トルクを出力するために、そのロータには、磁力が強力な永久磁石が組み付けられている。そして、車載の駆動モータは、バッテリを電源とし、インバータでその電流を制御することによって駆動する。そのため、バッテリの電圧やインバータの容量を超える電流は駆動モータに供給できない。
【】
回転数の上昇に伴って逆起電力も増加するが、電流量が限られるので、駆動モータが出力できる回転数は制限を受ける。そのため、駆動モータの制御において、ステータに所定の電流を流すことにより鎖交磁束を弱める弱め磁界制御(弱め磁束制御)が一般に行われている。弱め磁界制御により、制限を超える高回転が出力可能になるが、銅損、鉄損が増加する。
【】
それに対し、最近では、保磁力の小さい永久磁石を用いることにより、ロータの磁力を変更できるようにした駆動モータ(以下、磁力可変モータともいう)が注目されている。ロータの磁力を駆動状態に応じて可変できれば、逆起電力の低減とともに、駆動モータの高出力化、高効率化などが実現できるようになるので、自動車の燃費、電費を向上できる。
【】
磁力可変モータは、例えば特許文献1に開示されている。その磁力可変モータのロータには、磁力が変わらない永久磁石(磁力固定磁石)とともに、磁力の変更が可能な永久磁石(磁力可変磁石)が組み付けられている。また、これら磁石の周辺の所定位置には、所定形状の空隙が設けられている。その空隙で磁束の流れ方向を制限することにより、磁力変更時、特に減磁時に磁力可変磁石に作用させるために発生させた磁束から漏れ出る磁束(漏れ磁束)を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【】
【特許文献】特開2024-108416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【】
特許文献1のように、空隙によって特定の磁路を形成すれば、漏れ磁束を抑制できる。
【】
しかし、磁力変更時に必要とされる磁束が大きくなれば、それに伴って漏れ磁束も大きくなる。従って、特定の磁路を形成しても、その磁路が漏れ磁束の大きさに対して不十分であると、その抑制効果は限定的になる。特定の磁路の形成だけでは漏れ磁束の抑制効果が不十分になるおそれがある。
【】
そこでこの明細書では、漏れ磁束の効果的な抑制に加え、漏れ磁束を磁力変更に利用することも可能になることによって、磁力可変磁石の着磁効率を向上できる技術について開示する。
【課題を解決するための手段】
【】
開示する技術は、回転電機のロータ構造に関する。
【】
前記ロータ構造は、ステータと対向した状態で回転可能に支持されるロータコアと、前記ロータコアに設置される磁力の変更が可能な磁力可変磁石と、備える。前記磁力可変磁石に隣接して、誘導電流が流れ得る閉回路体が前記ロータコアに設置されている。そして、前記磁力可変磁石が形成する磁極の向きと前記誘導電流の流れる向きとが交差するように、前記閉回路体が配置されている。
【】
すなわち、このロータ構造によれば、磁力の変更が可能な磁力可変磁石を備えるので、回転電機の駆動状態に応じてその磁力を変更すれば、力率を最適化できる。従って、モータ効率を向上できる。
【】
そして、誘導電流が流れ得る閉回路体がロータコアに設置されている。つまり、閉回路体を磁束が通過した場合に、電磁誘導の作用により、閉回路体に誘導起電力が生じて電流が流れ得るように構成された閉回路体がロータコアに設置されている。
【】
磁力変更時には、磁力可変磁石の磁極の向きに磁束が流れるように、磁力可変磁石の周囲に強い磁界が形成される。その際、磁力可変磁石の周辺には、磁力変更に寄与しない漏れ磁束が生じる。それに対し、その磁力可変磁石に隣接した位置に、閉回路体が、磁力可変磁石が形成する磁極の向きと誘導電流の流れる向きとが交差するように配置されている。
【】
それにより、磁力変更時に生じる漏れ磁束は閉回路体を通過する。漏れ磁束が閉回路体を通過する際、電磁誘導の作用により、漏れ磁束を打ち消す逆向きの磁束が生じる。従って、漏れ磁束を効果的に抑制できる。
【】
更に、閉回路体に誘導電流が流れると、それによって誘導電流の流れに沿って新たな磁界が形成される。従って、その磁界を磁力変更に利用すれば、磁力可変磁石の磁力変更を促進できる。
【】
前記誘導電流の流れる方向が一方向に制限されている、としてもよい。例えば、前記閉回路体がダイオードを含み、前記ダイオードによって前記誘導電流の流れる方向を制限している、としてもよい。
【】
そうすれば、閉回路体の機能を、漏れ磁束を受け入れる方向の一方に制限できる。それにより、磁力可変磁石の2つの着磁方向(増磁及び減磁)の一方にのみ、閉回路体を機能させることができる。必要性に応じた閉回路体の利用が可能になり、利便性に優れる。
【】
前記磁力可変磁石の磁力を変更するために、前記磁力可変磁石の磁極と向きが同じ増磁磁界を前記磁力可変磁石に作用させた場合に前記誘導電流が流れて、前記磁力可変磁石の磁極と向きが逆の減磁磁界を前記磁力可変磁石に作用させた場合に前記誘導電流が流れないように、前記閉回路体が配置されている、としてもよい。
【】
モータ出力の関係から、減磁シーンよりも増磁シーンの方が強い磁界が求められるのが一般的である。それに対し、このように閉回路体を配置すれば、増磁シーンにおいて閉回路体が機能する。増磁磁界の漏れ磁束を効果的に抑制でき、その漏れ磁束を増磁に利用することも可能になる。一方、減磁シーンでは閉回路体は機能しない。従って、閉回路体による減磁磁界の漏れ磁束の抑制効果は得られないが、閉回路体による、減磁シーン以外での不必要な減磁を抑制できる。従って、モータ出力の低下を回避できる。
【】
前記磁力可変磁石に隣接してロータコアに設置される磁力固定磁石を更に備える場合には、前記磁力可変磁石に作用する前記磁力固定磁石による外部磁界の向きが前記増磁磁界の向きと逆になるように、前記磁力固定磁石が前記ロータコアに配置されている、としてもよい。
【】
このように磁力固定磁石を配置すれば、モータ出力をよりいっそう向上できる。そして、増磁シーンにおいて必要とされる増磁磁界が強くなっても、閉回路体によって漏れ磁束を効果的に抑制できるし、その漏れ磁束を増磁に利用できる。従って、着磁電流を大きくしなくても、着磁作用を増強できる。着磁効率を向上でき、モータを小型化できる。
【】
前記閉回路体は、各端に第1端部と第2端部とを有するコイルを更に含み、前記コイルの前記第1端部と前記第2端部を接続することによって前記閉回路体が構成されている、としてもよい。
【】
そうすれば、電磁誘導の作用をよりいっそう増強できる。漏れ磁束をよりいっそう効果的に抑制できるし、漏れ磁束を増磁によりいっそう利用できる。
【】
磁束が通過する経路を横切るように前記ロータコアに形成されている空隙に、前記閉回路体が設置されている、としてもよい。
【】
そうすれば、ロータコアの強度低下を抑制しながら、漏れ磁束の抑制及び磁力変更への利用を効果的に実現できる。
【発明の効果】
【】
開示する技術によれば、漏れ磁束の効果的な抑制に加え、漏れ磁束を磁力変更に利用することも可能になる。従って、磁力可変磁石の着磁効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【】
【図】磁力変更について説明するための図である。
【図】増磁シーン及び減磁シーンの違いについて説明するための図である。
【図】磁力固定磁石が有る場合での増磁シーン及び減磁シーンの違いについて説明するための図である。
【図】閉回路体の一例を示す概略図である。
【図】増磁シーンへの開示技術の適用前後を比較して説明するための図である。
【図】減磁シーンへの開示技術の適用前後を比較して説明するための図である。
【図】開示技術の具体的な実施例を示す概略図である。
【図】図6における磁極部の部分の拡大図である。
【図】閉回路体の別形態を示す概略図である。
【図】閉回路体の別形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【】
以下、実施形態により開示技術について説明する。ただし、以下の説明は本質的に例示に過ぎない。
【】
<磁力可変磁石及びその磁力変更>
【】
開示技術(ロータ構造)は、ハイブリッド車、電気自動車など、モータの駆動で走行可能な自動車に好適である。
【】
すなわち、車載の駆動モータ(回転電機)は、広い運転領域において高出力が求められる。それに対し、この種の駆動モータには永久磁石同期モータが広く用いられている。通常、高出力を得るために、そのロータには、強力な磁力が安定して得られる永久磁石(磁力固定磁石)が組み付けられている。その場合、ロータの磁力は変わらないため、力率が最適、つまりその磁力とステータが出力する電磁力とが略同じになる運転領域は限られる。
【】
それに対し、磁力を変更できる磁力可変磁石であれば、ロータの磁力を変更できる。磁力可変磁石を駆動モータに適用して、そのロータの磁力を運転領域に応じて変更する。そうすることで、運転領域の広い範囲で力率を最適化できる。広い運転領域で力率を最適化できれば、モータ効率を向上できる。
【】
図1に、駆動モータの部分概略図を示す。図1を参照して、磁力可変磁石及びその磁力の変更について説明する。
【】
例示の駆動モータは、インナーロータ型である。環状のステータ10の内側にロータ30が配置されている。そして、そのロータ30のロータコア32には、磁極を構成する複数の永久磁石(ここでは磁力可変磁石50)が設置されている。
【】
ステータ10を構成しているステータコア11の内側には、複数のティース11aが径方向に突出している。これらティース11aの各々にワイヤを巻回することにより、複数のコイル12が形成されている。これらコイル12に、制御された3相の交流電流を流すことによってロータ30が回転する。例示の駆動モータは、永久磁石型の3相同期モータでもある。
【】
磁力可変磁石50は、磁性体の残留磁束密度が可変、つまり磁力の変更が可能な磁石である。磁力可変磁石50には、磁束密度は高いが、保磁力(抗磁力)が比較的小さい磁石(アルニコ磁石など)が用いられる。保磁力が小さいと、比較的弱い磁界で磁力が変化する。
【】
対して、磁力固定磁石は、磁性体の残留磁束密度が不変、つまり磁力が安定していて、ほとんど変化しない磁石である。磁力固定磁石には、磁束密度が高く、保磁力も大きい磁石(ネオジム磁石など)が用いられる。保持力の大きい磁力固定磁石は、強い磁界でなければ磁力は変化しない。
【】
コイル12に大きな磁化電流(例えば750Arms)を流すことによって所定の強い着磁磁界を形成する。そうすることで、磁力固定磁石の磁力はそのままで、磁力可変磁石50の磁力を変更できる。尚、駆動モータを駆動する時に流れる駆動電流は、磁化電流よりも十分に小さい。従って、駆動電流では磁力可変磁石50の磁力は変化しない。駆動時の磁力可変磁石50は永久磁石として機能する。
【】
図1は、磁力可変磁石50の磁力を変更する着磁シーンを例示している。所定のコイル12に、磁化電流として機能する所定の大きなパルス状のd軸電流(磁束を発生させる電流成分であり、トルクに寄与しない電流成分)を流す。それにより、強い磁界が形成される。破線で示すように磁束が流れる。
【】
その磁束の大部分は、磁力可変磁石50の磁力変更に作用するように、ロータ30は設計されている。しかし、その一部に、磁力変更に寄与しない磁束(漏れ磁束LF)が発生する。漏れ磁束LFが多いと、磁力可変磁石50の着磁効率が悪化する。
【】
そのため、図1の右側に仮想線で示すように、漏れ磁束LFが通過する経路を横切るように、空隙60(フラックスバリア)をロータコア32に形成することが一般に行われている。
【】
ロータコア32よりも空気の方が透磁率が低いので、漏れ磁束LFは空隙60を通り難い。従って、空隙60により、漏れ磁束LFの流れる方向を制限でき、また、漏れ磁束LFの通過を抑制できる。空隙60に低透磁率の合成樹脂などが充填される場合もある。
【】
ロータコア32における磁力可変磁石50の周辺に、このような低透磁率の部位を形成すれば、漏れ磁束LFを抑制できる。しかし、これは消極的な対策でしかない。例えば、着磁磁界が強くなってその磁束量が増えれば、漏れ磁束LFの増加は避けられない。そのため、特に強い着磁磁界が必要とされる増磁シーンにおいて、漏れ磁束LFの対策が課題となっている。
【】
(増磁シーン及び減磁シーン)
図2Aを参照して、着磁における増磁シーン及び減磁シーンの違いについて説明する。磁力可変磁石50の外部には、その磁極の向きに対応して、N極の側からS極の側に向かう磁力線mlによって表される磁界が形成される。
【】
一方、磁力可変磁石50の内部においても、N極の側からS極の側に向かう磁界(反磁界DMF)が形成されている。着磁磁界が無い時を原点(0)にとり、磁力可変磁石50の磁極の向きをプラス方向とする。
【】
磁力が増える方向に磁力可変磁石50の磁力を変更する増磁シーンであれば、磁力可変磁石50の磁極と向きが同じ着磁磁界(増磁磁界MF1)が形成される。磁力が減る方向に磁力可変磁石50の磁力を変更する減磁シーンであれば、磁力可変磁石50の磁極と向きが逆の着磁磁界(減磁磁界MF2)が形成される。
【】
尚、減磁磁界MF2が非常に強いと、磁力可変磁石50の磁極が反転する場合もあり得る。しかし、ここでの磁力変更では、便宜上、磁力可変磁石50の磁極の方向は不変で、その磁力が増減する場合を扱うものとする。
【】
磁力可変磁石50を増磁するためには、増磁磁界MF1は、磁力可変磁石50の保磁力(Hc)よりも強くなければならない。同様に、磁力可変磁石50を減磁するためには、減磁磁界MF2は、磁力可変磁石50の保磁力(-Hc)よりも強くなければならない。
【】
それに対し、磁力可変磁石50には、元々、その増磁磁界MF1とは逆向きの反磁界DMFが作用している。そのため、増磁に必要とされる増磁磁界MF1の強さは、その反磁界DMFの分だけ大きくなる。逆に、減磁に必要とされる減磁磁界MF2の強さは、その反磁界DMFの分だけ小さくなる。すなわち、着磁磁界の原点位置が減磁側に移動した状態になる(0→r0)。従って、増磁シーンでは、より強い増磁磁界MF1が必要とされる。
【】
その強い増磁磁界MF1に応じた大きい着磁電流を流せば、磁力可変磁石50を増磁できる。しかし、消費電力が増えるし、インバータなどの駆動モータに付設される電力機器は、その大きい電流に対応した性能が必要になる。コストアップを招く。
【】
磁力可変磁石50の保磁力を小さくして磁力変更し易くすることも考えられる。しかし、その場合、増磁だけでなく、減磁もし易くなる。従って、不必要な減磁によるモータ出力の低下を招く。
【】
更に、磁力可変磁石50に隣接してロータコア32に磁力固定磁石40が設置される場合には、よりいっそう強い着磁磁界が増磁シーンで必要になる。図2Bを参照して、それについて説明する。
【】
モータ出力との関係上、駆動モータが正回転する方向に強いトルクが得られるようにするのが好ましい。そのため、磁力固定磁石40は、ステータ10の磁極に対応したロータコア32の複数箇所に配置するのが一般的である。そして、ロータコア32の周方向にそのN極及びS極が交互に並ぶように、磁力固定磁石40の磁極の向きは設定される。
【】
その場合、磁力可変磁石50の磁極も、図2Bに示すように、同様の理由から磁力固定磁石40の磁極の向きに合わせて配置するのが好ましい。ところがそうした場合、磁力可変磁石50に作用する磁力固定磁石40による外部磁界EMFの向きは、増磁磁界MF1の向きと逆になる。
【】
その結果、増磁磁界MF1の強さは、更にその外部磁界EMFの分だけ大きくなる。減磁磁界MF2の強さは、その外部磁界EMFの分だけ更に小さくなる。すなわち、着磁磁界の原点位置が更に減磁側に移動することになる。このような理由から、特に増磁シーンにおいて漏れ磁束LFの対策が課題となっている。
【】
<漏れ磁束に対する積極的な対策>
そこで、漏れ磁束LFを抑制することだけに止まらず、漏れ磁束LFを着磁にも利用できるように、ロータ30の構造を工夫した。
【】
具体的には、誘導電流が流れ得る所定の電気回路部材(閉回路体)をロータコア32の磁力可変磁石50に隣接した箇所に設置して、磁力可変磁石50が形成する磁極の向きと誘導電流の流れる向きとが交差するように、その閉回路体を配置した。
【】
(閉回路体)
図3に、閉回路体の一例を示す。例示の閉回路体1は、環状配線1aとダイオード1bを有している。環状配線1aは、銅などの電気伝導性に優れた線状導体を環状に接続した配線である。環状配線1aは、閉回路を構成している。
【】
環状配線1aの形状、断面形状、長さなどは、仕様に応じて選択できる。例示の環状配線1aは、断面丸形の電線からなる。そして、後述する実施例を踏まえて、矩形の環状に形成されている。
【】
ダイオード1bは、公知の電子素子である。ダイオード1bは、整流作用を有し、電流を一方向にのみ流す。ダイオード1bは、環状配線1aを構成している線状導体の両端間に接続されている。それにより、環状配線1aの途中に介在するように、環状配線1aに取り付けられている。
【】
例示の閉回路体1は、後述する実施例を踏まえて、絶縁性を有する矩形塊状の合成樹脂5に埋設されている。絶縁性のカバーで閉回路体1の全体を被覆してもよい。
【】
閉回路体1に外部磁界EMFが作用すると、環状配線1aに誘導電流が流れ得る。
【】
例えば、図3におけるF1の簡略図の破線矢印A1で示すように、環状配線1aを通過して流れるように、閉回路体1の一方の側面(作用面P1)から外部磁界EMFの磁束を受け入れる。そうした場合、電磁誘導の作用により、その磁束を打ち消す逆向きの磁束Φが生じるように、環状配線1aに誘導起電力が生じる。
【】
その誘導起電力によって流れる誘導電流の向きは、矢印Aiで示す方向になる。例示の閉回路体1の場合、ダイオード1bにより、誘導電流の流れる方向は一方向に制限されている。しかし、ここで誘導電流の流れる方向はダイオード1bと順方向になるため、環状配線1aに誘導電流が流れる。
【】
環状配線1aに誘導電流が流れると、環状配線1aの周囲に同心円状の磁界mfが生じる。その磁界mfの向きは、誘導電流が流れる方向に対して右回りになる。
【】
対して、図3におけるF2の簡略図の破線矢印A2で示すように、環状配線1aを通過して流れるように、閉回路体1の他方の側面(非作用面P2)から外部磁界EMFの磁束を受け入れる。そうした場合も同様に、電磁誘導の作用によって誘導起電力が生じる。しかし、その誘導起電力によって流れる誘導電流の向きは、ダイオード1bと逆方向になる。従って、環状配線1aに誘導電流は流れない。
【】
すなわち、例示の閉回路体1に外部磁界EMFが作用して、その一方から外部磁界EMFの磁束が通過すると、その磁束と逆向きの磁束Φが作用する。すなわち、外部磁界EMFによる磁束を抑制できる。
【】
環状配線1aに誘導電流が流れると、それによって環状配線1aの周囲に新たな磁界mfが形成される。従って、この磁界mfを着磁に利用すれば、着磁を促進できる。
【】
そして、この閉回路体1のように誘導電流の流れが制限されていれば、他方から閉回路体1に外部磁界EMFが作用した場合に、閉回路体1はその外部磁界EMFに作用しないし作用も受けないようにできる。すなわち、閉回路体1の機能を一方向に制限できる。
【】
開示技術では、このような閉回路体1をロータコア32の磁力可変磁石50に隣接した箇所に設置する。そして、閉回路体1で電磁誘導の現象が生じるように、磁力可変磁石50が形成する磁極の向きと誘導電流の流れる向きとが交差、好ましくは略直交するように、閉回路体1を配置する。
【】
そうすることにより、着磁の際に漏れ磁束LFを効果的に抑制できる。更に、漏れ磁束LFを利用して着磁を促進できる。着磁電流を大きくしなくても、着磁作用を増強できる。着磁効率を向上でき、モータを小型化できる。
【】
上述したように、車載の駆動モータでは、特に増磁シーンにおいて、着磁作用の増強が必要とされていて漏れ磁束の対策が求められている。従って、増磁の促進に有効な対策の一例を次に示す。
【】
(増磁シーン)
図4に、増磁シーンにおいて、開示技術の適用前後を比較して示す。増磁するために、所定の着磁電流をステータ10のコイル12に流す。着磁電流の立ち上がり時には、強い増磁磁界MF1が形成されて、磁力可変磁石50に強い磁束が作用する。それと共に、漏れ磁束LFが空隙60に向かう。開示技術の適用前は、空隙60によって漏れ磁束LFは抑制できるが、その効果は限定的である。漏れ磁束LFの一部は空隙60を通過する。
【】
それに対し、開示技術の適用後は、空隙60に代えて閉回路体1が設置される。具体的には、空隙60に閉回路体1を嵌入して、閉回路体1をロータコア32に接着すればよい。そうすれば、開示技術の適用前よりもロータコア32の強度低下を低減できる。
【】
そうすることにより、閉回路体1は、増磁磁界MF1による漏れ磁束LFによって誘導電流が流れるように配置される。その結果、漏れ磁束LFが流れると、第1に、電磁誘導の作用により、その漏れ磁束LFを打ち消す逆向きの磁束Φが生じる。漏れ磁束LFの通過を抑制できる。
【】
第2に、環状配線1aに誘導電流が流れることにより、その周囲に磁界mfが生じる。その磁界mfの向きを増磁磁界MF1の向きに合わせることで、増磁磁界MF1を増大できる。漏れ磁束LFを抑制するだけでなく、漏れ磁束LFを利用して増磁を促進できる。
【】
(減磁シーン)
図5に、減磁シーンにおいて、開示技術の適用前後を比較して示す。減磁するために、所定の着磁電流をステータ10のコイル12に流す。尚、同じ磁化レベルで比較した場合、減磁シーンの着磁電流は、増磁シーンの着磁電流よりも小さい。
【】
着磁電流の立ち上がり時には磁力可変磁石50に強い減磁磁界MF2が作用する。それと共に、漏れ磁束LFが空隙60に向かう。開示技術の適用前は、空隙60によって漏れ磁束LFは抑制できるが、その効果は限定的である。漏れ磁束LFの一部は空隙60を通過する。
【】
そして、閉回路体1は、上述したように、増磁磁界MF1による漏れ磁束LFによって誘導電流が流れるように配置されている。換言すれば、減磁磁界MF2による漏れ磁束LFによっては誘導電流は流れないように配置されている。閉回路体1は減磁磁界MF2に作用しないし作用も受けない。
【】
従って、減磁シーンでは、磁力可変磁石50に作用する減磁磁界MF2は従来と同じである。漏れ磁束LFの抑制効果は、開示技術の適用前後で変わらない。上述したように、減磁磁界MF2は、増磁磁界MF1ほど強くなくてもよい。従って、減磁シーンへの悪影響はほとんどない。
【】
また、減磁シーン以外のシーンで起き得る、磁力可変磁石50の不必要な減磁作用を促進することもない。従って、開示技術の適用後も、適用前と同様にモータの出力低下を抑制できる。
【】
すなわち、この例示の開示技術では、磁力可変磁石50の磁力を変更するために、増磁磁界MF1を磁力可変磁石50に作用させた場合に誘導電流が流れて、減磁磁界MF2を磁力可変磁石50に作用させた場合に誘導電流が流れないように、閉回路体1が配置されている。それにより、磁力可変磁石50の不必要な減磁作用によるモータの出力低下を防ぎながら、増磁を促進できる。
【】
<実施例>
図6、図7に、開示技術の具体的な実施例を示す。ここでは、上述した特許文献1の駆動モータに適用した場合について示す。
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図6に、回転軸Jが延びる方向(回転軸方向)から見た駆動モータの断面構造を示す。駆動モータは、ステータ10、ロータ30、シャフト20、ハブ21などで構成されている。
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ステータ10は、円筒状の部材である。ステータ10は、回転軸方向の断面が環状のステータコア11と、複数のコイル12とを有している。ステータコア11は、透磁率の高い複数の鋼板を回転軸方向に積層して構成されている。
【】
ステータコア11には、内側に等間隔で放射状に張り出す複数(48個)のティース11aが設けられている。これらティース11aの間に形成されている空間(スロット)に電線を所定の順序で巻き掛けることで複数のコイル12が形成されている。これらコイル12は、流れる電流の位相が異なるU相、V相、およびW相からなる三相のコイル群を構成している。各相のコイル12は、周方向に順番に配置されている。
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ロータ30は、ハブ21を介してシャフト20に一体化された環状の部材からなり、ステータ10の内側に配置されている。ロータ30の外周面は、ステータ10の内周面と所定のエアギャップを介して対向している。
【】
ロータ30は、ステータコア11と同様に、透磁率の高い複数の環状鋼板を積層して構成されたロータコア32を有している。ロータコア32は、シャフト20及びハブ21と共に、回転可能に支持されている。ロータコア32の外周側には、磁極(N極及びS極)が径方向外側に向いた状態で周方向に交互に並ぶ複数(16個)の磁極部33が設けられている。
【】
図7に、その磁極部33の部分を拡大した図を示す。磁極部33の各々は、磁力固定磁石40、第1補助磁力固定磁石41、第2補助磁力固定磁石42、磁力可変磁石50、複数の空隙60などによって構成されている。
【】
磁力固定磁石40は、各磁極部33の主体となる要素であり、その磁力は最も強い。磁力固定磁石40は、d軸を中心にして磁力が径方向に向くように、その磁極面PFをd軸に直交させた状態でロータコア32に配置されている。
【】
第1補助磁力固定磁石41は、各磁極部33の補助的な要素であり、磁力固定磁石40の磁力を補強する機能を有している。その磁力は磁力固定磁石40に次いで強い。第1補助磁力固定磁石41は、磁力固定磁石40の磁極と同じ向きで、磁極面PFをd軸に直交させた状態でロータコア32に配置されている。
【】
第2補助磁力固定磁石42は、各磁極部33の補助的な要素であり、磁力固定磁石40の磁束を誘導する機能を有している。第2補助磁力固定磁石42の各々は、その磁極面PFが磁力固定磁石40の周方向側端面と接するように、磁力固定磁石40の端部に配置されている。
【】
磁力可変磁石50は、磁力固定磁石40に対して、径方向の外側、かつ、周方向に隣接した位置に、複数配置されている。磁力可変磁石50の各々は、q軸を中心とする位置に配置されている。磁力可変磁石50の磁極面PFは、その磁力が周方向に向くように周方向に面している。
【】
ロータコア32における磁力可変磁石50よりも径方向内側に、両側が空隙60によって挟まれることによって径方向に延びる柱状の部位(柱部35)が設けられている。その柱部35に設けられた空隙60aに、合成樹脂5と共に閉回路体1が嵌入されている。
【】
すなわち、磁力可変磁石50の径方向の内側に隣接した状態で、径方向に延びるように閉回路体1が配置されている。閉回路体1はまた、その作用面P1及び非作用面P2と磁力可変磁石50の磁極面PFとが略平行になるように配置されている。
【】
そうして、増磁を促進できるように閉回路体1の向きが設定されている。具体的には、増磁シーンでは、図7に矢印A4で示す方向(磁力可変磁石50の磁極の向きと同じ方向)に、各磁力可変磁石50に増磁磁界MF1が作用する。各閉回路体1に、誘導電流が流れ得る向きを矢印A5で示す。矢印A5は、環状配線1aの手前側及び奥方の部分のうち、その手前側を流れる方向を示している。
【】
すなわち、各閉回路体1は、増磁磁界MF1による漏れ磁束の流れによって誘導電流が流れるように、その作用面P1の向きが設定されている。それにより、各磁力可変磁石50を増磁する際に増磁磁界MF1が発生すると、電磁誘導の作用により、漏れ磁束LFの通過を抑制できる。そして、誘導電流によって生じる磁界mfによって増磁磁界MF1を増大できる。従って、増磁を促進できる。
【】
<閉回路体の別形態>
上述した実施形態では、環状配線1aが1つの閉回路体1を例示した。しかし、図8Aに示すように、環状配線1a及びダイオード1bを2以上並列に配置して閉回路体1を構成してもよい。そうすれば、電磁誘導の作用をよりいっそう増強できるので、効果的である。
【】
また、図8Bに示すように、環状配線1aを、ターン数が2以上のコイル状にしてもよい。具体的には、コイル配線2の第1端部2aと第2端部2bを渡り線3などで接続することによって閉回路体1を構成すればよい。この場合、ダイオード1bは1つでよい。従って、電磁誘導の作用を安価で増強できる。尚、コイル配線2は同軸の渦巻き状であってもよい。
【】
尚、開示技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、ロータの具体的な構造などは駆動モータの仕様に応じて適宜選択できる。向きに関係なく漏れ磁束の抑制だけでよい場合などは、誘導電流が流れる方向は制限しなくてもよい。誘導電流の流れを一方向に制限する手段は、ダイオードが好適であるが、それ以外でもよい。
【符号の説明】
【】
1 閉回路体
1a 環状配線
1b ダイオード
5 合成樹脂
10 ステータ
11 ステータコア
11a ティース
12 コイル
30 ロータ
32 ロータコア
33 磁極部
35 柱部
40 磁力固定磁石
41 第1補助磁力固定磁石
42 第2補助磁力固定磁石
50 磁力可変磁石
60 空隙
PF 磁極面
J 回転軸
【図】
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