(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026016296
(43)【公開日】2026-02-03
(54)【発明の名称】光学フィルム、光学積層体及びその製造方法、並びに、偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20260127BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025070110
(22)【出願日】2025-04-22
(62)【分割の表示】P 2025516731の分割
【原出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2023074674
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪股 貴道
(72)【発明者】
【氏名】幸本 壮悟
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149BA13
2H149CA02
2H149CB04
2H149CB06
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA12Z
2H149FA61
2H149FA63
2H149FA68
2H149FA69
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD08
2H149FD12
2H149FD18
2H149FD44
2H149FD47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薄膜干渉ムラを生じにくい光学フィルムを含む光学積層体の製造方法。
【解決手段】光学フィルムと基材フィルムとを含む光学積層体の製造方法。前記光学フィルムは、厚みが4μm以下、算術平均高さSaが50nm以下である主面S1を有し、下記式(1)を満たす。製造工程は、前記主面S1に直接設けられる、算術平均高さSaが50nm以下である主面S2を有する基材フィルムを用意する工程(1)、前記主面S2上に重合体及び溶媒を含有する樹脂液を塗布する工程(2)、前記樹脂液の層を乾燥する工程(3)からなる。前記工程(3)が、乾燥温度T1、次いで乾燥温度T2で乾燥する工程を含み、T1<T2、T1はSbp以上Sbp+20℃以下、Sbpは前記溶媒の沸点(℃)。X≧Y(1)Xは、本文に記載の方法で得られた光学フィルムの厚さの標準偏差の平均値(μm)、Yは下記式(2)。Y=-0.0159×Haze+0.0392(2)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムと、基材フィルムとを含む、光学積層体の製造方法であって、
前記光学フィルムは、
厚みが4μm以下であり、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S1を有し、
下記式(1)を満たし、
前記基材フィルムは、
前記光学フィルムの前記主面S1に直接して設けられており、
前記光学積層体の製造方法は、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S2を有する基材フィルムを用意する工程(1)、
前記基材フィルムの前記主面S2上に、重合体及び溶媒を含有する樹脂液を塗布して樹脂液の層を形成する工程(2)、及び
前記樹脂液の層を乾燥して、前記基材フィルムの前記主面S2上に光学フィルムを形成する工程(3)を含み、
前記工程(3)が、前記樹脂液の層を乾燥温度T1で乾燥する工程(3-1)、次いで前記樹脂液の層を乾燥温度T2で乾燥する工程(3-2)を含み、
T1<T2であり、T1は、Sbp以上Sbp+20℃以下であり、
ここでSbpは、前記樹脂液に含有される溶媒の沸点(℃)を表す、
光学積層体の製造方法。
X≧Y (1)
式(1)において、
Xは、前記光学フィルムに含まれる一辺が225mmである正方形の領域を、一辺が75mmの正方形である9つの区画に分け、前記9つの区画のそれぞれにおいて複数箇所の厚みを測定して、前記9つの区画のそれぞれの標準偏差を算出し、算出された9つの前記標準偏差の算術平均を算出して得られた、標準偏差の平均値(μm)であり、
Yは下記式(2)で表され、式(2)中、Hazeは、光学フィルムのヘイズ値(%)を表す。
Y=-0.0159×Haze+0.0392 (2)
【請求項2】
前記工程(3-1)が、下記条件式を満たす、請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
4≧B≧-0.25A+6.25
ここで、
Aは、前記工程(3-1)における乾燥時間(秒)を意味し、
Bは、前記光学フィルムの厚み(μm)を意味する。
【請求項3】
前記光学フィルムは、厚み100μm当たりの水蒸気透過率が、4.0g/(m2・day)以下である、請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項4】
前記光学フィルムは、光弾性定数が、10×10-13cm2/dyn以下である、請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項5】
前記光学フィルムは、測定波長550nmにおける面内のレターデーションReが0nm以上2nm以下であり、厚み方向のレターデーションRthが、-5nm以上5nm以下である、請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項6】
前記光学フィルムが、脂環式構造を含有する重合体を含む、請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項7】
前記光学フィルムの前記主面S1と直接する前記基材フィルムの主面S2は、算術平均高さSaが50nm以下であり、前記光学フィルムと前記基材フィルムとが、同一の溶媒を含む、請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、光学積層体及びその製造方法、並びに、偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、偏光子などの光学要素が含まれうる。これらの光学要素を保護するための保護フィルムとして、樹脂フィルムを用いる場合がある。
また、近年、スマートフォンなどの端末装置の小型化及び薄型化が進められ、端末装置に備えられる表示装置の薄型化の要求が高まっている。表示装置に含まれる光学要素も、薄型化が求められている。したがって、光学要素を保護する保護フィルムも、薄型化が求められる。
薄い保護フィルムを実現するために、支持体上に樹脂フィルムを形成し、樹脂フィルムを偏光子に転写する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、偏光子を含む積層体にさらに、支持体上に形成されたハードコート層を転写する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-130298号公報
【特許文献2】国際公開第2019/087806号(対応外国公報:米国特許出願公開第2021/0109268号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学フィルムを薄型化して、他の光学要素と組み合わせて積層体とした場合に、薄膜干渉による表示ムラ(以下、薄膜干渉ムラともいう。)が視認される場合がある。
従来、光学フィルムを他の光学要素と組み合わせて積層体とした場合に、薄膜干渉ムラが生じるか否かの評価は、光学フィルムを実際に積層体として、評価する者が積層体を観察することにより行われていた。
しかし、このような評価方法では、評価の度に光学フィルムから評価用の積層体を作製する手間が生じる。さらに、評価する者の評価経験によらず、薄膜干渉ムラの評価をより客観的な数値に基づき行うことができれば、光学フィルムの品質管理の点から好ましい。薄膜干渉ムラを生じにくい光学フィルムを、光学フィルムが有する特性に基づき特定することが求められる。
【0005】
したがって、積層体とした場合に、薄膜干渉ムラを生じにくい光学フィルム;かかる光学フィルムを含む光学積層体;光学積層体の製造方法;かかる光学フィルムを含む偏光板;が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、本発明者は、後述する標準偏差の平均値Xが、光学フィルムのヘイズ値と一定の関係にある場合に、光学フィルムを含む積層体において薄膜干渉ムラを生じにくいことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0007】
<1> 厚みが4μm以下であり、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S1を有し、
下記式(1)を満たす、光学フィルム。
X≧Y (1)
式(1)において、
Xは、前記光学フィルムに含まれる一辺が225mmである正方形の領域を、一辺が75mmの正方形である9つの区画に分け、前記9つの区画のそれぞれにおいて複数箇所の厚みを測定して、前記9つの区画のそれぞれの標準偏差を算出し、算出された9つの前記標準偏差の算術平均を算出して得られた、標準偏差の平均値(μm)であり、
Yは下記式(2)で表され、式(2)中、Hazeは、光学フィルムのヘイズ値(%)を表す。
Y=-0.0159×Haze+0.0392 (2)
<2> 厚み100μm当たりの水蒸気透過率が、4.0g/(m2・day)以下である、<1>に記載の光学フィルム。
<3> 光弾性定数が、10×10-13cm2/dyn以下である、<1>又は<2>に記載の光学フィルム。
<4> 測定波長550nmにおける面内のレターデーションReが0nm以上2nm以下であり、厚み方向のレターデーションRthが、-5nm以上5nm以下である、<1>~<3>のいずれか一項に記載の光学フィルム。
<5> 脂環式構造を含有する重合体を含む、<1>~<4>のいずれか一項に記載の光学フィルム。
<6> <1>~<5>のいずれか一項に記載の光学フィルムと、前記光学フィルムの前記主面S1に直接して設けられている基材フィルムとを含む、光学積層体。
<7> 前記光学フィルムの前記主面S1と直接する前記基材フィルムの主面S2は、算術平均高さSaが50nm以下であり、前記光学フィルムと前記基材フィルムとが、同一の溶媒を含む、<6>に記載の光学積層体。
<8> <1>~<5>のいずれか一項に記載の光学フィルムと、偏光子とを含む、偏光板。
<9> 更に光学異方層を含み、前記光学異方層、前記光学フィルム、及び前記偏光子が、厚み方向から見てこの順に配置されている、<8>に記載の偏光板。
<10> 前記光学異方層が、第一位相差層を含み、
前記第一位相差層は、Re1(550)が100nm以上150nm以下であり、Re1(450)/Re1(550)が0.80以上1.30以下であり、
ここで、Re1(550)は、前記第一位相差層の波長550nmにおける面内レターデーションを表し、Re1(450)は、前記第一位相差層の波長450nmにおける面内レターデーションを表す、<9>に記載の偏光板。
<11> 前記光学異方層が、更に第二位相差層を含み、前記第二位相差層の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth2(550)が、-140nm以上-10nm以下である、<10>に記載の偏光板。
<12> 前記光学異方層が、第三位相差層及び第四位相差層を含み、
前記第三位相差層は、Re3(550)が100nm以上150nm以下であり、Re3(450)/Re3(550)が0.80以上1.30以下であり、
前記第四位相差層は、Re4(550)が200nm以上290nm以下であり、
ここで、Re3(550)は、前記第三位相差層の波長550nmにおける面内レターデーションを表し、Re3(450)は、前記第三位相差層の波長450nmにおける面内レターデーションを表し、Re4(550)は、前記第四位相差層の波長550nmにおける面内レターデーションを表す、<9>に記載の偏光板。
<13> 前記光学異方層が、更に第二位相差層を含み、前記第二位相差層の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth2(550)が、-140nm以上-10nm以下である、<12>に記載の偏光板。
<14> <6>又は<7>に記載の光学積層体の製造方法であって、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S2を有する基材フィルムを用意する工程(1)、
前記基材フィルムの前記主面S2上に、重合体及び溶媒を含有する樹脂液を塗布して樹脂液の層を形成する工程(2)、及び
前記樹脂液の層を乾燥して、前記基材フィルムの前記主面S2上に光学フィルムを形成する工程(3)を含む、光学積層体の製造方法。
<15> 前記工程(3)が、前記樹脂液の層を乾燥温度T1で乾燥する工程(3-1)、次いで前記樹脂液の層を乾燥温度T2で乾燥する工程(3-2)を含み、
T1<T2であり、T1は、Sbp以上Sbp+20℃以下であり、
ここでSbpは、前記樹脂液に含有される溶媒の沸点(℃)を表す、<14>に記載の光学積層体の製造方法。
<16> 前記工程(3-1)が、下記条件式を満たす、<15>に記載の光学積層体の製造方法。
4≧B≧-0.25A+6.25
ここで、
Aは、前記工程(3-1)における乾燥時間(秒)を意味し、
Bは、前記光学フィルムの厚み(μm)を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積層体とした場合に、薄膜干渉ムラを生じにくい光学フィルム;かかる光学フィルムを含む光学積層体;光学積層体の製造方法;かかる光学フィルムを含む偏光板;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1~7及び比較例1~4における、第一乾燥条件(T1=90℃)における乾燥時間A(秒)と光学フィルムの膜厚B(μm)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下に示す実施形態の構成要素は、適宜組み合わせうる。
【0011】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、用語「板」とは、別に断らない限り、剛直な部材に限らず、樹脂製のフィルムなどの可撓性を有する部材も包含する。
【0013】
以下の説明において、あるフィルムの正面方向とは、別に断らない限り、当該フィルムの主面の法線方向を意味し、具体的には前記主面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0014】
以下の説明において、あるフィルムの傾斜方向とは、別に断らない限り、当該フィルムの主面に平行でも垂直でもない方向を意味し、具体的には前記主面の極角が0°より大きく90°より小さい範囲の方向を指す。
【0015】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の文言は、「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの組み合わせを包含する。
【0016】
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、層の厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは層の厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0017】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0018】
以下の説明において、別に断らない限り、長尺のフィルムにおいて幅方向とは、フィルム長手方向に垂直である、フィルムの面内方向をいう。通常、長尺のフィルムの長手方向は、フィルムの搬送方向に一致する。
【0019】
以下の説明において、接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
したがって、「接着層」は、狭義の接着剤の層の他、粘着剤の層をも包含する。
【0020】
以下の説明において、別に断らない限り、溶媒には、分散媒が含まれる。
【0021】
<1.光学フィルム>
<1.1.光学フィルムの概要>
本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、
厚みが4μm以下であり、
算術平均高さSaが50nm以下である主面S1を有し、
下記式(1)を満たす。
X≧Y (1)
【0022】
式(1)において、
Xは、前記光学フィルムに含まれる一辺が225mmである正方形の領域を、一辺が75mmの正方形である9つの区画に分け、前記9つの区画のそれぞれにおいて複数箇所の厚みを測定して、前記9つの区画のそれぞれの標準偏差を算出し、算出された9つの前記標準偏差の算術平均を算出して得られた、標準偏差の平均値(μm)であり、
Yは下記式(2)で表され、式(2)中、Hazeは、光学フィルムのヘイズ値(%)を表す。
Y=-0.0159×Haze+0.0392 (2)
【0023】
光学フィルムが、前記構成を備えていることにより、光学フィルムを、他の光学要素(例えば、偏光子)との積層体とした場合に、薄膜干渉ムラを生じさせにくい。
したがって、光学フィルムを実際に他の光学要素と積層する前の段階で、光学フィルムが薄膜干渉ムラを生じさせにくいフィルムであるか否かを、容易に判別しうる。
【0024】
一辺が225mmである正方形の領域は、光学フィルムの任意の位置に設定しうる。例えば、光学フィルムが長尺のフィルムである場合、幅方向中央部に設定してもよく、幅方向端部に設定してもよく、長手方向中央部に設定してもよく、長手方向の端部に設定してもよい。一辺が225mmである正方形の領域を、例えば、正方形の辺方向が光学フィルムの幅方向又は長手方向に平行になるように設定してもよい。
【0025】
一辺が225mm程度の正方形の領域は、通常光学フィルム又は光学フィルムを含む積層体を評価する者が頭部を動かさずに視認しうる範囲であり、その範囲において、通常薄膜干渉ムラの有無の評価を効率的に行いうる。
したがって、一辺が225mmの正方形の領域において、前記標準偏差の平均値Xを算出し、式(2)で表されるY値との関係を求めることにより、人間が行う薄膜干渉ムラの有無の評価に相当する評価が可能である。
【0026】
一辺が225mmの正方形の領域を9つの区画に分けず、正方形の領域において複数箇所の厚みを測定しそれら厚みから得られた標準偏差(X’とする。)と比較して、当該正方形の領域を9つの区画に分けて、前記のとおり標準偏差の算術平均を算出して得られた平均値Xは、通常、大きくなる。
したがって、光学フィルムの薄膜干渉ムラの強弱を、感度良く判別することができる。一辺が225mmの正方形の領域を9つの区画に分けることで、局所的なムラを検出することができる。
【0027】
前記9つの区画それぞれにおける厚みの測定箇所は、例えば、隣り合う測定箇所の間隔が0.8mm以上、例えば0.9mm以上であり、例えば1.2mm以下、例えば1.1mm以下であり、例えば1.0mmであるような位置であってよい。
前記9つの区画それぞれにおける厚みの測定箇所の個数は、例えば4032個以上、例えば4785個以上であり、例えば8977個以下、例えば7111個以下、例えば5776個以下、例えば5776個であってよい。
【0028】
<1.2.式(1)及び式(2)>
X≧Y (1)
Y=-0.0159×Haze+0.0392 (2)
本発明者は、光学フィルムの薄膜干渉ムラの程度が、光学フィルムの厚みムラに係る、前記標準偏差の平均値X(μm)及び光学フィルムのヘイズ値Haze(%)に相関することを見出した。
式(1)は、光学フィルムのヘイズが同一であっても、光学フィルムの厚みムラに係るXが大きい場合には、光学フィルムの薄膜干渉ムラは生じにくいことを示す。
式(2)は、光学フィルムの厚みムラに係る平均値Xが同一であっても、光学フィルムのヘイズ値が大きいほど光学フィルムの薄膜干渉ムラは生じにくいことを示す。
【0029】
光学フィルムの厚みムラは、光学フィルムを樹脂液から製造する際に、樹脂液の層の乾燥速度を調整することにより調整しうる。樹脂液の層の乾燥速度は、例えば、樹脂液に含まれる溶媒の種類を、その沸点に応じて選択すること;樹脂液の不揮発成分の濃度、乾燥温度、温度プロファイル、乾燥用オーブン内の風速、乾燥用オーブン内の溶媒ガス濃度、乾燥用オーブンの吸排気量などを調整すること;により、調整しうる。
【0030】
(光学フィルムのヘイズ)
光学フィルムのヘイズは、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.4%以上であり、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
光学フィルムのヘイズは、ヘイズメーターを用いて、JIS-K-7361に準拠して測定しうる。
標準偏差を求めた光学フィルムの9つの区画のうち、任意の3つの区画においてヘイズを測定し、得られた3箇所におけるヘイズの平均値を、光学フィルムのヘイズとしうる。
光学フィルムのヘイズが前記範囲内であると、より効果的に薄膜干渉ムラを低減しうる。
【0031】
<1.3.光学フィルムの厚み>
光学フィルムの厚みは、通常4μm以下、好ましくは3.8μm以下、より好ましくは3.5μm以下であり、通常0μmより大きく、0.5μm以上であってもよい。
光学フィルムの厚みは、光学フィルムの幅方向の両端部及び中央、並びに幅方向の端部と中央との中点の、計5箇所を測定し、得られた厚みデータから平均値を求め、平均値を光学フィルムの厚みとしうる。
光学フィルムの厚みは、例えば光干渉法膜厚測定計により測定しうる。
ある積層体を構成する層の厚みが小さいと、積層体に薄膜干渉ムラが生じやすい。
しかし、本実施形態の光学フィルムによれば、厚みが4μm以下であっても、薄膜干渉ムラが生じにくい。
【0032】
<1.4.光学フィルムの算術平均高さ>
光学フィルムの主面S1における算術平均高さSaは、通常0nmより大きく、好ましくは4nmより大きく、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは6nm以上であり、通常50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0033】
光学フィルムの主面S1の算術平均高さSaが、前記上限値以下であると、光学フィルムを組み込んだ表示装置において、ぼやけが少ない精細な表示を実現しうる。
【0034】
算術平均高さSaは、表面粗さ測定機により、ISO 25178に準拠し測定しうる。
【0035】
光学フィルムの主面S1における算術平均高さSaは、後述する工程(A)を含む製造方法において、基材フィルムの主面S2における算術平均高さSaを調整することにより、調整することができる。基材フィルムの主面S2における算術平均高さSaを調整する方法については後述する。
【0036】
<1.5.光学フィルムの材料>
光学フィルムは、好ましくは樹脂を含み、より好ましくは樹脂のみからなる。樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂であり、樹脂は、通常、重合体と、必要に応じて含まれる任意の成分とを含む。
【0037】
本発明の利点を顕著に発揮させる観点から、光学フィルムは、好ましくは樹脂のみからなりかつ樹脂が粒子を含まないことが好ましい。本発明の利点を顕著に発揮させる観点から、光学フィルムにおける粒子の重量割合は、光学フィルムの重量を100重量%として、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、更に好ましくは、0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下であり、通常0.00%又は0.00%を超え、0.00%であってもよい。
一般に、粒子を含まない樹脂液を用いた塗布法により樹脂フィルムを形成すると、塗布法により得られた樹脂フィルムの表面が平滑になりやすく、樹脂フィルムを含む積層体に薄膜干渉ムラが発生しやすい傾向がある。しかし本実施形態の光学フィルムにおいて、粒子の重量割合が前記範囲内である場合でも、光学フィルムを含む積層体において薄膜干渉ムラが生じにくい。
【0038】
(重合体)
光学フィルムに含まれる重合体としては、例えば、ポリエステル、アクリル重合体、脂環式構造を含有する重合体などが挙げられる。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、光学フィルムの水蒸気透過率を低くする観点から、環状オレフィン系重合体などの、脂環式構造を含有する重合体が好ましい。環状オレフィン系重合体とは、環状オレフィンを重合して得られる構造単位を有する重合体又はその水素化物を意味する。
【0039】
脂環式構造を含有する重合体は、その重合体の繰り返し単位が脂環式構造を含有する。脂環式構造を含有する重合体は、通常、水蒸気透過率が低い。そのため、脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂で光学フィルムを形成した場合、水蒸気透過率が低い光学フィルムを得ることができる。
【0040】
脂環式構造を含有する重合体は、主鎖に脂環式構造を含有していてもよく、側鎖に脂環式構造を含有していてもよく、主鎖及び側鎖の双方に脂環式構造を含有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点からは、少なくとも主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0041】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0042】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、光学フィルムの機械的強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0043】
脂環式構造を含有する重合体において、脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0044】
脂環式構造を含有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びその水素化物は、透明性と成形性が良好である。
【0045】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。
【0046】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
【0047】
光学フィルムに含まれる重合体の重量平均分子量Mwは、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、光学フィルムを形成する樹脂の機械的強度及び成形性が高度にバランスされる。
【0048】
光学フィルムに含まれる重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。分子量分布が前記範囲の下限値以上である場合重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、分子量分布が前記範囲の上限値以下である場合、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、光学フィルムの安定性を高めることができる。
【0049】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。GPCで用いる溶媒としては、シクロヘキサン、トルエン、テトラヒドロフランが挙げられる。GPCを用いた場合、重量平均分子量は、例えばポリイソプレン換算またはポリスチレン換算の相対分子量として測定しうる。
【0050】
光学フィルムに含まれる重合体のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下である。重合体のガラス転移温度が前記範囲にある場合、高温環境下における光学フィルムの耐久性を高めることができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して測定しうる。
【0051】
光学フィルムの重量100重量%に対して、光学フィルム中の重合体の含有率は、特定の範囲にあることが好ましい。この重合体の含有率の特定の範囲は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下、更に好ましくは99重量%以下、特に好ましくは96重量%以下である。
【0052】
(溶媒)
光学フィルムに含まれる樹脂は、重合体に加えて、溶媒を含有していてもよい。
光学フィルムに含まれる樹脂が含有しうる溶媒は、通常、光学フィルムから除去されずに残った、光学フィルムを製造する際に用いられた溶媒の一部である。溶媒としては、有機溶媒が好ましく、光学フィルムに含まれうる重合体を溶解可能な有機溶媒が特に好ましい。溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、アルキルシクロヘキサン(メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、など)、トルエン等の炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン等の環状エーテル溶媒;等が挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
光学フィルムが溶媒を含有する場合、光学フィルムに含有される溶媒の含有率は、光学フィルムの単位重量を100重量%として、好ましくは0.01重量%以上であり、好ましくは10重量%以下である。ここで、光学フィルム中に複数種の溶媒が含まれている場合、溶媒の含有率は、それら複数種の溶媒の含有率の合計である。
【0054】
光学フィルムにおける溶媒の含有率が前記上限値以下であると、光学フィルムに残留する溶媒の揮散により、光学フィルムを組み込んだ表示装置が備える樹脂部材が変質することを低減しうる。また、光学フィルムの機械的強度を高めうる。
光学フィルムにおける溶媒の含有率が前記下限値以上であると、光学フィルムを、樹脂液を用いた塗布法により容易に製造しうる。また、光学フィルムと、後述する基材フィルムとの剥離力を、より適切な範囲に調整することができる。
【0055】
光学フィルムにおける溶媒の含有率は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法を採用しうる。
【0056】
光学フィルムにおける溶媒の含有率は、例えば、光学フィルムの形成時における樹脂液の乾燥温度及び乾燥時間を調整することにより、調整できる。
【0057】
(その他の任意成分)
光学フィルムは、前記の重合体及び任意の溶媒に加えて、更に任意の成分を含みうる。 任意の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;帯電防止剤;などが挙げられる。
【0058】
<1.6.光学フィルムのその他の特性>
(水蒸気透過率)
光学フィルムは、小さい水蒸気透過率を有することが好ましい。具体的には、光学フィルムの厚み100μm当たりの水蒸気透過率は、好ましくは4.0g/(m2・day)以下、より好ましくは3.0g/(m2・day)以下、特に好ましくは2.0g/(m2・day)以下である。下限値は、理想的には0g/(m2・day)であり、通常0g/(m2・day)以上であり、0.1g/(m2・day)以上であってもよい。光学フィルムが前記のように小さい水蒸気透過率を有する場合、光学フィルムによって偏光子を安定して保護できる。よって、偏光子の湿気による劣化を効果的に抑制できるので、偏光子の偏光度の低下を抑制できる。さらに、偏光子に浸入した湿気により偏光子内のヨウ素がブリードアウトすることを抑制できるので、そのヨウ素が表示装置内の電極等の金属部品を腐食することを効果的に抑制できる。
【0059】
光学フィルムの厚み100μm当たりの水蒸気透過率は、下記の方法で測定できる。光学フィルムの水蒸気透過率を、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W」)により、JIS K7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定する。この水蒸気透過率の測定値に「100(μm)/光学フィルムの厚み(μm)」を掛け算して、厚み100μm当たりの値に換算して、光学フィルムの厚み100μm当たりの水蒸気透過率を得る。
【0060】
(光弾性係数)
光学フィルムの光弾性定数は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、光学フィルムの光弾性定数は、小さいほど好ましく、好ましくは10×10-13cm2/dyn以下、より好ましくは5×10-13cm2/dyn以下、特に好ましくは2×10-13cm2/dyn以下である。下限は、通常0.0×10-13cm2/dyn以上である。光学フィルムの光弾性定数が前記範囲にある場合、膨張又は収縮の応力によるレターデーションの変化を小さくできるので、表示装置の表示均一性を保つことができる。光学フィルムの光弾性定数は、光学フィルムに応力を加えた場合に生じる複屈折から、計算による求めうる。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法を採用しうる。
【0061】
(レターデーション)
光学フィルムは、面内方向及び厚み方向の両方において、光学的異方性が小さいことが好ましく、光学的等方性を有することが更に好ましい。光学フィルムの光学的異方性が小さいと、光学フィルムを透過することによる偏光の偏光状態の変化を通常は小さくでき、好ましくは無くすことができる。したがって、光学フィルムを偏光子と貼り合わせた場合に、光学フィルムによる偏光状態の変化を抑制できるので、光学フィルム及び偏光子を含む偏光板を透過する偏光の偏光状態の制御をシンプルにできる。
【0062】
したがって、光学フィルムの面内レターデーションは、小さいことが好ましい。具体的には、光学フィルムの測定波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは2nm以下であり、通常0nm以上であり、0nmであってもよい。
また、光学フィルムの厚み方向のレターデーションは、ゼロ又はゼロに近いことが好ましい。具体的には、光学フィルムの測定波長550nmにおける厚み方向のレターデーションは、好ましくは-5nm以上、より好ましくは-4nm以上、更に好ましくは-3nm以上、特に好ましくは-2nm以上であり、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nm以下、更に好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。
【0063】
光学異方性の小さい光学フィルムは、例えば、後述する塗布法のように、光学フィルムに加えられる応力を小さくできる光学フィルムの形成方法により、形成できる。
【0064】
(光学フィルムの寸法)
光学フィルムの寸法は、通常225mmである正方形の領域を設定しうる大きさであり、通常長手方向が225mm以上、通常幅方向が225mm以上である。
光学フィルムは、長尺であってもよく、枚葉の形態であってもよい。光学フィルムが長尺であると、光学フィルムと他の部材との貼合を効率よく行いうる。
光学フィルムの幅は、特に限定されない。光学フィルムの幅は、例えば1340mm以上、例えば1540mm以上であり、例えば3000mm以下、例えば2800mm以下である。
【0065】
(全光線透過率)
光学フィルムの全光線透過率は、大きいほど好ましい。光学フィルムの全光線透過率は、好ましくは89%以上、より好ましくは90%以上であり、通常100%以下である。光学フィルムの全光線透過率は、ヘイズメーターを用いて、JIS-K-7361に準拠して測定しうる。
【0066】
<1.7.光学フィルムの用途>
光学フィルムは、薄型でありながら、薄膜干渉による表示ムラ(薄膜干渉ムラ)を生じさせにくい。よって、光学フィルムを、表示装置の構成要素として好適に用いうる。例えば、表示装置が視認側に備えうる光学要素(例、偏光子)の保護フィルムとして、好適に用いうる。
光学フィルムを組み込む表示装置の例としては、特に限定されず、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置が挙げられる。
【0067】
<2.光学フィルムの製造方法>
(光学フィルムの製造方法の概要)
前記の光学フィルムは、任意の方法により製造されうる。
例えば、前記の光学フィルムは、光学フィルムと前記光学フィルムの前記主面S1に直接して設けられている基材フィルムとを含む光学積層体を製造する工程(A)、及び、光学積層体から、基材フィルムを剥離して光学フィルムを得る工程(B)を含む、製造方法により、製造することができる。以下、光学フィルムの好ましい製造方法として、工程(A)及び工程(B)を含む方法を説明する。
【0068】
(工程(A):光学積層体を製造する工程)
工程(A)では、光学積層体を製造する。
光学積層体は、前記光学フィルムと、前記光学フィルムの前記主面S1に直接して設けられている基材フィルムとを含む。基材フィルムは、その主面S2が光学フィルムの主面S1と直接している。
光学フィルムの主面S1と基材フィルムの主面S2とが直接しているとは、光学フィルムの主面S1と基材フィルムの主面S2との間に任意の層が介在していないことを意味する。
【0069】
基材フィルムは、延伸されている延伸フィルムであってもよく、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、好ましくは、基材フィルム表面の算術平均高さSaを調整しやすいので、延伸されている延伸フィルムである。
【0070】
基材フィルムは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材フィルムとして、熱可塑性樹脂層のみからなるフィルムを用いてもよい。
または、熱可塑性樹脂層と熱可塑性樹脂層上に形成された離型層とを含む離型フィルムを用いてもよい。基材フィルムが離型層を含む場合、離型層は、基材フィルムの最も外側に設けられており、基材フィルムの主面S2は、離型層の表面に相当する。
【0071】
基材フィルムが熱可塑性樹脂層を含む場合、熱可塑性樹脂層に含まれうる重合体の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの、ポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどの、α-オレフィンの重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの、塩化ビニル系重合体;ポリビニルアルコール;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド;ポリイミド;含フッ素原子重合体;ポリアミド;アクリル重合体;ノルボルネン系重合体などの、環状オレフィン系重合体;が挙げられる。熱可塑性樹脂層に含まれうる重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0072】
なかでも、価格、機械的強度、延伸加工のしやすさの観点から、熱可塑性樹脂層は、好ましくはポリエステルを含み、より好ましくはポリエチレンテレフタレートを含む。
【0073】
熱可塑性樹脂層中の重合体の含有割合は、好ましくは80重量%~100重量%、より好ましくは90重量%~100重量%、更に好ましくは95重量%~100重量%としうる。
【0074】
熱可塑性樹脂層は、前記の重合体に加えて、必要に応じて任意の成分を含みうる。任意の成分としては、光学フィルムに含まれうる任意の成分の例と同様の例が挙げられる。任意の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
基材フィルムが離型層を含む場合、離型層に含まれうる樹脂の例としては、アルキド系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;含フッ素原子樹脂;シリコーン系樹脂;ウレタン系樹脂;アクリル系樹脂が挙げられる。
【0076】
離型層が、弾性率が低く、柔らかい樹脂で形成されているほど、熱可塑性樹脂層と離型層との積層体を延伸した場合に、熱可塑性樹脂層の延伸による変形に、離型層の変形が追随しやすくなるので、離型層の断裂が生じにくくなる。その結果、離型層表面の算術平均高さSaを小さくすることができる。
一方、離型層が、弾性率が高く、硬い樹脂で形成されているほど、熱可塑性樹脂層と離型層との積層体を延伸した場合に、熱可塑性樹脂層の延伸による変形に、離型層の変形が追随しにくくなり、離型層の断裂が生じやすくなる。その結果、離型層表面の算術平均高さSaを大きくすることができる。
離型層の弾性率は、離型層を構成する樹脂の種類を選択すること;樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量、樹脂に含まれる重合体の配合比率、及び/又は樹脂に含まれる共重合体における構成単位の重量割合を調整すること;により、調整しうる。例えば、離型層の弾性率は、離型層を構成する樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量を大きくすることにより、高くなる傾向がある。
【0077】
さらに、熱可塑性樹脂層と離型層との積層体を延伸する際の倍率を小さくするほど、離型層の断裂が生じにくくなり、離型層表面の算術平均高さSaを小さくすることができる。
【0078】
基材フィルムとして、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、ユニチカ社製「ユニピールシリーズ」が挙げられる。市販品である基材フィルムを、更に延伸して、主面S2の算術平均高さSaを調整してもよい。
【0079】
基材フィルムの主面S2が有する算術平均高さSaは、所望とする光学フィルムの主面S1における算術平均高さSaに応じた値であることが好ましい。具体的には、所望とする光学フィルムの主面S1における算術平均高さSaと同じ値であることが好ましい。基材フィルムの主面S2が有する算術平均高さSaは、通常0nmより大きく、好ましくは4nmより大きく、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは6nm以上であり、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、更に好ましくは10nm以下である。
【0080】
また、基材フィルムと光学フィルムとは、共通の溶媒を含んでいることが好ましく、同一の溶媒を含んでいることがより好ましい。基材フィルムと光学フィルムとが、共通の溶媒、好ましくは同一の溶媒を含んでいることで、基材フィルムと光学フィルムとの親和性が向上して、基材フィルムと光学フィルムとの剥離力を調整することができる。
【0081】
例えば、基材フィルム上に、溶媒を用いた塗布法により光学フィルムを形成することで、基材フィルム及び光学フィルムに残留する溶媒の種類を共通又は同一としうる。
【0082】
光学フィルムを形成するために用いた溶媒が、複数種の混合溶媒である場合、光学フィルムに含まれうる溶媒及び基材フィルムに含まれうる溶媒は、複数種でありうる。
光学フィルムに含まれうる溶媒の重量組成と、基材フィルムに含まれうる溶媒の重量組成とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0083】
光学積層体を製造する工程(A)は、好ましくは下記工程(1)、工程(2)、及び工程(3)をこの順に含み、更に任意の工程を含みうる。
工程(1)では、算術平均高さSaが50nm以下である主面S2を有する基材フィルムを用意する。工程(2)では、前記基材フィルムの前記主面S2上に、重合体及び溶媒を含有する樹脂液を塗布して樹脂液の層を形成する。工程(3)では、前記樹脂液の層を乾燥して、前記基材フィルムの前記主面S2上に光学フィルムを形成する。
【0084】
工程(2)において、樹脂液は、通常光学フィルムに含まれうる重合体と溶媒とを含み、さらに、光学フィルムに含まれうる重合体以外の任意成分とを含む。
樹脂液に含まれうる溶媒の例としては、前記光学フィルムに含まれうる溶媒として挙げた例が挙げられる。
ここで、樹脂液に含まれる重合体及び任意の成分等の不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に溶解していてもよい。また、前記不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に分散していてもよい。
【0085】
樹脂液は、本発明の利点を顕著に発揮させる観点から、粒子を含まないことが好ましい。本発明の利点を顕著に発揮させる観点から、樹脂液における粒子の重量割合は、樹脂液の不揮発成分を100重量%として、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、更に好ましくは、0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下であり、通常0.00%又は0.00%を超え、0.00%であってもよい。
工程(1)、工程(2)、及び工程(3)をこの順に含む製造方法によれば、光学フィルムが粒子を含まない場合であっても、光学フィルムを含む積層体の薄膜干渉ムラを効果的に抑制しうる。
【0086】
溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
溶媒の常圧下での沸点は、例えば60℃以上、例えば150℃以下である。
【0088】
樹脂液における不揮発成分の濃度は、樹脂液が塗布に適した粘度となる範囲で、任意に設定しうる。具体的な濃度範囲は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、特に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。
【0089】
基材フィルムへの樹脂液の塗布方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、及びギャップコーティング法が挙げられる。
【0090】
工程(2)で、基材フィルムの主面S2上に樹脂液の層が形成される。
【0091】
工程(3)では、前記樹脂液の層を乾燥して、前記基材フィルムの主面S2上に光学フィルムを形成する。樹脂液の層の乾燥条件は、適宜調整しうる。
例えば、乾燥温度、乾燥温度プロファイル、乾燥用オーブン内の風速、乾燥用オーブン内の溶媒ガス濃度、乾燥用オーブンの吸排気量などの乾燥条件を調整しうる。
乾燥条件を調整することにより、光学フィルムが粒子を含まない場合であっても、光学フィルムを含む積層体の薄膜干渉ムラを特に効果的に抑制しうる。
【0092】
一実施形態において、工程(3)における乾燥温度は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、特に好ましくは130℃以下である。
【0093】
一実施形態において、工程(3)における乾燥時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、特に好ましくは90秒以上であり、好ましくは5分以下、より好ましくは4分以下、特に好ましくは3分以下である。
【0094】
工程(3)における樹脂液の層の乾燥温度は段階的に変化させることが好ましい。特に、樹脂液の層を形成した直後において、樹脂液の層の乾燥温度を段階的に変化させることが好ましい。樹脂液の層を形成した直後における、乾燥温度のプロファイルは、樹脂液の層を乾燥して得られうる光学フィルムの表面形状に特に影響を与えうる。
樹脂液の層の乾燥温度を段階的に変化させるには、樹脂液の層を、互いに異なる温度に設定された複数の区間を通過させることにより行いうる。
形成された樹脂液の層を、最初に第一乾燥条件で乾燥する第一乾燥区間、次いで第二乾燥条件で乾燥する第二乾燥区間を通過させて、乾燥することが好ましい。ここで、第一乾燥区間の乾燥温度T1は、Sbp以上Sbp+20℃以下の範囲が好ましい。ここで、Sbpは、樹脂液に含まれる溶媒の沸点(常圧下)を表し、樹脂液に含まれる溶媒が複数種である場合は、それら溶媒の沸点のうち、最も低い温度を表す。また、第二乾燥区間の乾燥温度T2は、第一乾燥区間の乾燥温度T1よりも高く、T1<T2であることが好ましい。
T1が低いほど、ブラッシングが生じてヘイズが大きくなる傾向がある。T1が高いほど、薄膜干渉ムラが大きくなる傾向がある。
T2は、特に限定されないが、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いる場合、105℃以上130℃以下としうる。
T2が低いほど、溶媒の乾燥速度が遅くなり、光学フィルムに残留する溶媒量が多くなる傾向がある。T2が高すぎると、光学フィルムと基材フィルムとの密着性が大きくなりすぎたり、光学フィルムと基材フィルムとの熱膨張係数の差に起因して、光学フィルムが基材フィルムから剥離したりする場合がある。
【0095】
工程(3)は、前記樹脂液の層を乾燥温度T1で乾燥する工程(3-1)、次いで乾燥温度T2で乾燥する工程(3-2)を含み、T1<T2であり、T1は、Sbp以上Sbp+20℃以下であることが好ましい。
【0096】
第二乾燥区間の後に、さらに第二乾燥区間と温度設定などの乾燥条件が異なる乾燥区間を通過させてもよい。
【0097】
ここで、第一乾燥区間における(工程(3-1)における)乾燥時間をA(秒)、樹脂液の層を乾燥して得られうる光学フィルムの厚みをB(μm)として、条件式:4≧B≧-0.25A+6.25が満たされるように、乾燥時間A及び光学フィルムの厚みBを設定することが好ましい。前記の条件式が満たされる場合、薄膜干渉ムラを効果的に低減しうる。さらに、第一乾燥区間における乾燥温度T1が90℃の場合に、前記の条件式が満たされることが特に好ましい。
【0098】
基材フィルムの主面S2上に形成された光学フィルムの主面は、基材フィルムの主面S2の凹凸に対応する凹凸を有することとなる。したがって、基材フィルムの主面S2に対向する、光学フィルムの主面S1は、基材フィルムの主面S2が有する算術平均高さSaに対応する算術平均高さSaを有する。基材フィルムの主面S2に対向する、光学フィルムの主面S1の算術平均高さSaは、通常0nmより大きく、好ましくは4nmより大きく、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは6nm以上であり、通常50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0099】
前記の工程(1)~(3)を含む方法により、光学フィルムと基材フィルムとを含む光学積層体が得られる。
【0100】
工程(A)が含みうる任意の工程の例としては、特に限定されず、光学積層体をトリミングする工程、光学積層体を巻き取る工程が挙げられる。
【0101】
(工程(B))
工程(B)では、光学積層体から基材フィルムを剥離して光学フィルムを得る。光学積層体が、長尺である場合、通常剥離は連続的に行われる。
工程(B)では、光学積層体に含まれる光学フィルムと、偏光子などの光学要素とを対向させて貼合しながら、基材フィルムを剥離することにより、光学フィルムを光学要素に転写してもよい。貼合には、適切な接着剤又は接着剤の層を用いうる。基材フィルムを剥離することにより、光学フィルムと偏光子などの光学要素とを含む積層体を得ることができる。
【0102】
<3.偏光板>
<3.1.偏光板の概要>
本発明の一実施形態に係る偏光板は、前記光学フィルムと、偏光子とを含む。本実施形態の偏光板によれば、表示装置に組み込まれた場合に、ムラの少ない表示を実現しうる。
偏光子は、光学フィルムの前記主面S1とは反対側の主面(主面S3)に接するように設けられていることが好ましい。ここで、用語「接する」とは、特に断らない限り、直接する場合及び間接する場合を包含する。すなわち、偏光子は光学フィルムの主面(好ましく主面S3)に直接するように設けられていてもよく、光学フィルムの主面(好ましくは主面S3)に間接するように設けられていてもよい。
ここで、「偏光子が光学フィルムの主面に直接するように設けられている」とは、偏光子と光学フィルムの主面との間に、任意の層が介在しないことを意味する。
また、「偏光子が光学フィルムの主面に間接するように設けられている」とは、偏光子と光学フィルムの主面との間に、任意の層が介在していてもよいことを意味する。
【0103】
偏光子としては、振動方向が直角に交わる二つの直線偏光のうち、一方を透過させ、他方を吸収又は反射できるフィルムを用いることができる。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を表す。このようなフィルムは、通常、偏光透過軸を有し、当該偏光透過軸と平行な振動方向を有する直線偏光を透過でき、偏光透過軸と垂直な振動方向を有する直線偏光を吸収又は反射できる。
【0104】
偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体を含む、ポリビニルアルコール樹脂のフィルムに、ヨウ素等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。偏光子は、ポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましい。
【0105】
偏光子の厚みは、好ましくは1μmより大きく、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは19μm以下、より好ましくは18μm以下である。偏光子の厚みが前記下限値より大きい場合、偏光板の光学性能を十分に高めることができる。また、偏光子の厚みが前記上限値以下である場合、偏光板を備える表示体の反りを軽減し、偏光板の屈曲復元性を効果的に高めることができる。
【0106】
偏光板は、光学フィルムと偏光子とを、適切な接着剤と貼合することにより製造しうる。前記の光学フィルムと基材フィルムとを含む光学積層体を、偏光子と貼合して基材フィルムを剥離することにより、光学フィルムと偏光子とを含む偏光板を得てもよい。また、基材フィルムを剥離せず、基材フィルム、光学フィルム、及び偏光子を含む積層体として、この積層体に対して他の光学要素との貼合、巻き取り、保存、運搬などの操作を行ってもよい。
さらに、偏光板は、前記光学積層体、前記偏光子、及び前記光学積層体をこの順に備えるフィルムとして製造し、当該フィルムとして保存及び運搬などの操作を行ってもよい。このフィルムは、基材フィルム、光学フィルム、偏光子、光学フィルム、及び基材フィルムをこの順に備えるので、光学フィルム及び偏光子を基材フィルムによって保護できる。また、この場合、使用の直前に基材フィルムを剥離して複層フィルムを得て、その複層フィルムを表示装置への取り付け等の用途に用いうる。
【0107】
光学フィルムと偏光子とを貼合するための接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、変性ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、塩化ビニル-酢酸ビニル系接着剤、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)系接着剤、エチレン-スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。接着剤としては、当該接着剤の硬化を短時間で行うという観点では、紫外線硬化型の接着剤が好ましいが、接着層をより薄くするという観点ではポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール系の水系接着剤であってもよい。
【0108】
偏光板は、光学フィルム及び偏光子に加えて、任意の層を含みうる。任意の層としては、光学的等方性を有する光学等方層、光学的異方性を有する光学異方層が挙げられる。
光学的等方性を有する光学等方層の面内レターデーションReは、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下であり、通常0nm以上であり、0nmであってもよい。光学等方層の厚み方向のレターデーションRthの絶対値は、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下であり、通常0nm以上であり、0nmであってもよい。
【0109】
偏光板は、光学フィルム及び偏光子に加えて、光学異方層を含み、前記光学異方層、前記光学フィルム、及び前記偏光子が、厚み方向から見てこの順に配置されていてもよい。以下、光学異方層、光学フィルム、及び偏光子を含む実施形態に係る偏光板について説明する。
【0110】
<3.2.偏光板の実施形態1>
実施形態1に係る偏光板は、光学異方層、前記光学フィルム、及び前記偏光子が、厚み方向から見てこの順に配置されており、光学異方層が、第一位相差層を含む。
第一位相差層は、波長550nmにおける面内レターデーションRe1(550)が、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは145nm以下である。面内レターデーションRe1(550)が、前記範囲内にある第一位相差層は、1/4波長板として機能しうる。
【0111】
第一位相差層は、Re1(450)/Re1(550)が好ましくは0.80以上、より好ましくは0.83以上、更に好ましくは0.85以上であり、好ましくは1.30以下、より好ましくは1.10以下である。ここで、Re1(450)は、第一位相差層の波長450nmにおける面内レターデーションを表す。Re1(450)/Re1(550)が、前記範囲内にあると、広い波長範囲において、第一位相差層が1/4板として機能しうる。
【0112】
光学異方層は、第一位相差層に加えて、更に第二位相差層を含んでいてもよい。第二位相差層の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth2(550)は、好ましくは-140nm以上、より好ましくは-100nm以上であり、好ましくは-10nm以下、より好ましくは-40nm以下である。光学異方層が、更に第二位相差層を含むことにより、傾斜方向においても位相差を付与する機能を有する光学異方層としうる。
第二位相差層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)は、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下であり、通常0nm以上である。
【0113】
光学異方層が第一位相差層と第二位相差層とを含む場合において、第一位相差層と第二位相差層との厚み方向における配置は任意であり、例えば、第一位相差層、第二位相差層、光学フィルム、及び偏光子の順に配置されていてもよく、例えば、第二位相差層、第一位相差層、光学フィルム、及び偏光子の順に配置されていてもよい。
【0114】
<3.3.偏光板の実施形態2>
実施形態2に係る偏光板は、光学異方層、前記光学フィルム、及び前記偏光子が、厚み方向から見てこの順に配置されており、光学異方層が、第三位相差層及び第四位相差層を含む。第三位相差層は、波長550nmにおける面内レターデーションRe3(550)が、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは145nm以下である。面内レターデーションRe3(550)が前記範囲内にある第三位相差層は、1/4波長板として機能しうる。
【0115】
第三位相差層は、Re3(450)/Re3(550)が好ましくは0.80以上、より好ましくは0.83以上、更に好ましくは0.85以上であり、好ましくは1.30以下、より好ましくは1.10以下である。ここで、Re3(450)は、第三位相差層の波長450nmにおける面内レターデーションを表す。Re3(450)/Re3(550)が、前記範囲内にあると、広い波長範囲において、第三位相差層が1/4板として機能しうる。
【0116】
第四位相差層の波長550nmにおける面内レターデーションRe4(550)は、好ましくは200nm以上、より好ましくは210nm以上であり、好ましくは290nm以下、より好ましくは280nm以下である。面内レターデーションRe4(550)が前記範囲内にある第四位相差層は、1/2波長板として機能しうる。
【0117】
光学異方層が第三位相差層及び第四位相差層を含む場合、第三位相差層、第四位相差層、光学フィルム、及び偏光子の順に配置されていることが好ましい。
【0118】
光学異方層は、第三位相差層及び第四位相差層に加えて、更に第二位相差層を含んでいてもよい。第二位相差層が有する、厚み方向のレターデーションRth2(550)及び面内レターデーションRe2(550)のそれぞれの好ましい範囲は、前記と同様としうる。
【0119】
光学異方層が第三位相差層と第四位相差層と、更に第二位相差層とを含む場合において、第二位相差層の厚み方向における配置は任意である。さらに、光学異方層は、複数の第二位相差層を含んでいてもよい。
【0120】
<4.光学フィルムの評価方法>
光学フィルムの評価方法は、下記のステップを含む。
光学フィルムに含まれる一辺が225mmである正方形の領域を、一辺が75mmの正方形である9つの区画に分け、前記9つの区画のそれぞれにおいて複数箇所の厚みデータを得るステップ(1)、
前記9つの区画のそれぞれにおいて、測定された複数箇所の厚みデータの標準偏差を算出し、算出された9つの前記標準偏差の算術平均を算出して、標準偏差の平均値X(μm)を得るステップ(2)、
平均値XとY値とを比較し、X≧Yであるか否かを判定するステップ(3)、及び
X≧Yである場合に、前記光学フィルムを含む積層体は薄膜干渉ムラを生じにくいと評価するステップ(4)。
ここで、Y値は、前記式(2)により算出される値である。
【0121】
前記光学フィルムの評価方法は、膜厚計と、膜厚計と通信可能に接続された、パーソナルコンピュータなどの制御装置とを含む処理装置により実現できる。
【実施例0122】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0123】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温(20℃±15℃)及び常圧(1atm)の条件において行った。
【0124】
<評価方法>
(厚み)
フィルム又は層の厚みを、フィルメトリックス株式会社製 膜厚測定システム「F20」により測定した。フィルム又は層における、幅方向の両端部及び中央、並びに幅方向の端部と中央との中点の、計5箇所を測定し、得られた厚みデータから平均値を求め、平均値をフィルム又は層の厚みとした。
【0125】
(算術表面高さSa)
転写用積層体から、光学フィルムを剥がした。剥がした光学フィルムの基材フィルムと接していた面(主面S1)の算術平均高さSaを、表面粗さ測定機(サーフコーダーSE800 株式会社小池研究所製)を用いISO 25178に準拠し測定した。
【0126】
(全光線透過率及びヘイズ)
光学フィルムの全光線透過率及びヘイズを、ヘイズメーター(NDH 7000 日本電色工業社製)を用いてJIS-K-7361に準拠して測定した。標準偏差を求めた光学フィルムの9つの区画のうち、任意の3つの区画においてヘイズを測定し、得られた3箇所におけるヘイズの平均値を、光学フィルムのヘイズとした。全光線透過率も同様に、3箇所における全光線透過率の平均値を、光学フィルムの全光線透過率とした。
【0127】
(レターデーション)
転写用積層体から光学フィルムを剥がした。この光学フィルムについて、位相差計(AXOMETRICS社製「Axo Scan」)を用いて、測定波長550nmにおける面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthを測定した。
【0128】
(水蒸気透過率)
転写用積層体から光学フィルムを剥がした。この光学フィルムについて、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W」)により、JIS K7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件にて、水蒸気透過率を測定した。こうして得られた水蒸気透過率の測定値を、厚み100μm当たりの値に換算して、光学フィルムの厚み100μm当たりの水蒸気透過率を得た。具体的には、測定値に「100(μm)/光学フィルムの厚み(μm)」を掛け算して、厚み100μm当たりの水蒸気透過率を得た。
【0129】
(光弾性定数)
転写用積層体から光学フィルムを剥がした。この光学フィルムをカットして、幅1cmのフィルム片を複数用意した。これらのフィルム片に、重さ50g、100g、150g及び200gの分銅を吊り下げ、測定波長550nmで面内レターデーションを測定した。面内レターデーションの測定は、位相差計(AXOMETRICS社製「Axo Scan」)を用いて行った。測定された面内レターデーションを光学フィルムの厚みで割り算して、複屈折を求めた。得られた複屈折、及び、その複屈折に対応する分銅によって光学フィルムに与えられる単位断面積当たりの力の大きさを、力の大きさを横軸、複屈折を縦軸とする座標系にプロットした。得られたプロットから最小二乗法によって近似直線を得た。この近似直線の傾きとして、光学フィルムの光弾性定数を求めた。
【0130】
(溶媒の含有率の測定方法)
転写用積層体から、光学フィルムを剥がした。剥がした光学フィルムを40mm×200mmにカットした後、秤量し、バイアル瓶に投入した。光学フィルムを150℃で30分加熱して光学フィルム中の溶媒を気化させ、その気化した溶媒の量を、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製「GC-2010 Plus/Trubomatrix 40」;カラムはAgilent techologies製「DB-5ms」)を用いて測定した。具体的な溶媒の量は、予め準備した検量線に基づいて求めた。求めた溶媒の量から、溶媒の含有率を計算した。
【0131】
(標準偏差の平均値X及びY値)
300mm×300mmの正方形にカットした転写用積層体の内側225mm×225mmの正方形の領域について、干渉式膜厚計(浜松フォトニクス製 Optical NanoGauge)を用い、走査速度0.5mm/sec、搬送方向及び幅方向のそれぞれにおいて1mmピッチで膜厚を計測した。その後、75mm×75mmで区切った正方形の9区画について、それぞれの区画内の膜厚測定値の標準偏差を求めた後、それらを平均し、標準偏差の平均値Xを求めた。
その後、前記式(2)の計算式により判定のためのY値を算出した。
【0132】
(薄膜干渉ムラ目視評価)
転写用積層体の基材フィルムの面側に遮光用・外観検査用 黒色粘着テープ(巴川製紙社製)を貼り合わせ、3波長蛍光灯下で薄膜干渉ムラを目視評価した。
薄膜干渉ムラの程度について、下記のとおりの評価基準で評価した。
0:全く視認されない。
1:やや視認されるが、表示品位に問題ないレベルである。
2:明確に視認され、用途によっては表示品位を低下される懸念がある。
3:非常に強く視認され、表示品位が低下する。
【0133】
<実施例1>
ノルボルネン系重合体水素化物(日本ゼオン社製「ZEONOR」;ガラス転移温度132℃)と、シクロヘキサン:エチルシクロヘキサンを重量比2:1で混合して得られた混合溶媒とを混合して、樹脂液として、ノルボルネン系重合体の濃度11重量%の樹脂溶液を得た。シクロヘキサンの常圧下での沸点は、81℃であり、エチルシクロヘキサンの常圧下での沸点は、132℃である。
【0134】
(1-1.基材フィルムの用意)
基材フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を含む離型層を備える長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピール高平滑品」、算術平均高さSa=5nm)を用意した。
【0135】
(1-2.樹脂液の層の形成)
この基材フィルムの離型層の面上に、前記の樹脂溶液を塗布して、樹脂溶液の層を形成した。形成する樹脂溶液の層は、厚み4μmの光学フィルムが得られる厚みとした。
【0136】
(1-3.光学フィルムの形成)
その後、樹脂溶液の層に対して、オーブン中で、第一乾燥条件としての90℃で10秒間の加熱を行った後、第二乾燥条件としての110℃で1分50秒間の加熱を行って、樹脂溶液の層を乾燥し、基材フィルム上に厚み4μmの光学フィルムを形成した。
以上の操作により、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された光学フィルムとを備える転写用積層体(光学積層体)を得た。
【0137】
得られた転写用積層体を用いて、上述した方法により、算術平均高さSa、光学フィルムの溶媒の含有率、ヘイズ、透過率、面内レターデーション、厚み方向のレターデーション、水蒸気透過率、光弾性定数、薄膜干渉ムラを評価した。
【0138】
<実施例6>
・前記(1-3)における操作を下記のとおり変更した。
実施例6においては、樹脂溶液の層に対して、第一乾燥条件としての90℃で11秒間の加熱を行った後、第二乾燥条件としての110℃で1分49秒間の加熱を行った。
以上の操作以外は実施例1と同様に操作して、基材フィルム上に厚み4μmの光学フィルムを形成し、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された光学フィルムとを備える転写用積層体(光学積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0139】
<実施例2~5、7、比較例1~4>
・前記(1-2)において、厚み3μmの光学フィルムが得られるように、基材フィルムに塗布する樹脂溶液の層の厚みを変更した。
・前記(1-3)において、オーブンによる乾燥条件を下記のとおりに変更した。
実施例2:90℃で17秒間の加熱後、110℃で1分43秒間加熱した。
実施例3:90℃で16秒間の加熱後、110℃で1分44秒間加熱した。
実施例4:90℃で15秒間の加熱後、110℃で1分45秒間加熱した。
実施例5:90℃で14秒間の加熱後、110℃で1分46秒間加熱した。
実施例7:90℃で13秒間の加熱後、110℃で1分47秒間加熱した。
比較例1:90℃で12秒間の加熱後、110℃で1分48秒間加熱した。
比較例2:90℃で10秒間の加熱後、110℃で1分50秒間加熱した。
比較例3:90℃で11秒間の加熱後、110℃で1分49秒間加熱した。
比較例4:120℃で2分間加熱した。
以上の操作以外は実施例1と同様に操作して、基材フィルム上に厚み3μmの光学フィルムを形成し、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された光学フィルムとを備える転写用積層体(光学積層体)を得て、実施例1と同様にして評価した。
【0140】
<結果>
結果を表1及び2に示す。
表1及び表2において、略号は下記の意味を表す。
「膜厚」:光学フィルムの厚み
「Sa」:光学フィルムの主面S1の算術平均高さSa
「ヘイズ」:光学フィルムのヘイズHaze
「透過率」:全光線透過率
「残溶媒量」:光学フィルムにおける溶媒の含有率
「X’値」:厚みの全測定値について求めた標準偏差
「X値」:9区画それぞれにおいて求めた厚みの標準偏差9点の平均値
「Y値」:式(2)により求めたY値
【0141】
【0142】
【0143】
以上の結果によれば、X値がY値以上である、実施例1~7に係る光学フィルムは、薄膜干渉ムラの程度が小さいことがわかる。
一方、X値がY値よりも小さい、比較例1~4に係る光学フィルムは、薄膜干渉ムラの程度が大きいことがわかる。
【0144】
図1は、実施例1~7及び比較例1~4における、第一乾燥条件(T1=90℃)における乾燥時間A(秒)と光学フィルムの膜厚B(μm)との関係を示すグラフである。
図1のグラフでは、横軸に90℃における乾燥時間A(秒)をとり、縦軸に膜厚B(μm)をとっている。
図1に示すとおり、実施例1~7では、4≧B≧-0.25A+6.25が満たされており、干渉ムラの評価が0又は1であり良好な結果が得られていることがわかる。