(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】
(43)【公開日】
(54)【発明の名称】磁気ビーズ
(51)【国際特許分類】
【FI】
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】
(21)【出願番号】
(22)【出願日】
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中森 理夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕成
(72)【発明者】
【氏名】宇敷 武義
【テーマコード(参考)】
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AB18
2G052AB20
2G052AD26
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5E040AA11
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5E040BC01
5E040BC08
5E040CA20
5E040NN13
(57)【要約】
【課題】 回収処理の時間を短縮しつつ使用量を低減できる磁気ビーズを提供する。
【解決手段】 磁気ビーズ1は、磁性金属粉2と、磁性金属粉2の表面を被覆する被覆層10と、を有し、磁性金属粉2の磁気特性が100~200emu/gかつ体積基準での粒度分布のD50が1.0~25μmであり、被覆層10が、最表層の第1層11と、第1層11と磁性金属粉2との間に形成された多孔質の第2層12と、を有し、第1層11の膜厚が第2層12の膜厚よりも薄い。被覆層10は、さらに第2層12と磁性金属粉2との間に第3層13を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項】
磁性金属粉と、前記磁性金属粉の表面を被覆する被覆層と、を有し、
前記磁性金属粉の磁気特性が100~200emu/gかつ体積基準での粒度分布のD50が1.0~25μmであり、
前記被覆層が、最表層の第1層と、前記第1層と前記磁性金属粉との間に形成された多孔質の第2層と、を有し、
前記第1層の膜厚が前記第2層の膜厚よりも薄い磁気ビーズ。
【請求項】
前記第1層が第1酸化物材料で形成され、前記第2層が前記第1酸化物材料とは異なる第2酸化物材料で形成されている請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項】
窒素吸着による比表面積が2~45m2/gであり、窒素吸着による平均細孔径が2~25nmである請求項2に記載の磁気ビーズ。
【請求項】
前記第1酸化物材料がシリカである請求項3に記載の磁気ビーズ。
【請求項】
前記第2酸化物材料がアルミナ、チタニア、またはアパタイトのいずれかである請求項4に記載の磁気ビーズ。
【請求項】
前記被覆層が前記第2層と前記磁性金属粉との間に第3層を有し、前記第3層が前記第2層とは異なる材料で形成されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の磁気ビーズ。
【請求項】
前記第3層が前記磁性金属粉の表面にコーティングされたシリカである請求項6に記載の磁気ビーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【】
本発明は磁気ビーズに関する。
【背景技術】
【】
タンパク質、核酸、細胞などの生体物質を溶液中から回収するために、磁気ビーズ(磁性微粒子)を用いた磁気的な分離処理が行われている。
磁気ビーズの表面には、回収する目的物質(ターゲット)を特異的に吸着する被覆層が形成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【】
磁気ビーズにおいて、ターゲットの吸着効率を向上させるためには、磁気ビーズのサイズを小さくすることが有効である。しかし、磁気ビーズのもつ磁化は、その体積が小さくなるほど弱くなり、1μm以下になると液体の粘性抵抗に逆らって永久磁石で引き寄せることは困難になる。その結果、ターゲットの回収処理に時間がかかるという問題がある。
また、磁気ビーズの使用量を増やすことがある。しかし、磁気ビーズの使用量が増えると、キャリーオーバーする液量(次工程に持ち越される液量)が多くなり、洗浄効率の低下や純度の低下を招くことがあり、磁気ビーズの使用量の抑制が求められていた。
【】
本発明の目的は、回収処理の時間を短縮しつつ使用量を低減できる磁気ビーズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【】
本開示に係る磁気ビーズは、磁性金属粉と、前記磁性金属粉の表面を被覆する被覆層と、を有し、前記磁性金属粉の磁気特性が100~200emu/gかつ体積基準での粒度分布のD50が1.0~25μmであり、前記被覆層が、最表層の第1層と、前記第1層と前記磁性金属粉との間に形成された多孔質の第2層と、を有し、前記第1層の膜厚が前記第2層の膜厚よりも薄い磁気ビーズである。
【図面の簡単な説明】
【】
【図】本発明の第1実施形態の磁気ビーズを示す断面図。
【図】前記実施形態の被覆層を示す断面図。
【図】本発明の第2実施形態の被覆層を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【】
〔第1実施形態〕
図1および
図2には本発明に基づく第1実施形態が示されている。
図1において、本実施形態の磁気ビーズ1は、磁性金属粉2と、磁性金属粉2の表面を被覆する被覆層10と、を有する。
【】
磁性金属粉2は、タンパク質、核酸、細胞などの目的物質(ターゲット)の磁気回収に利用されるFe合金などの磁性金属粒子であり、磁気特性が100~200emu/gかつ体積基準での粒度分布のD50が1.0~25μmである。
さらに、磁性金属粉2は、被覆層10を形成して磁気ビーズ1とした状態で、窒素吸着による比表面積が2~45m2/gであり、窒素吸着による平均細孔径が2~25nmとされている。
【】
図2において、被覆層10は、最表層の第1層11と、第1層11と磁性金属粉2との間に形成された多孔質の第2層12と、を有する。被覆層10は、さらに第2層12と磁性金属粉2との間に形成された第3層13を有する。
【】
第1層11は、第1酸化物材料であるシリカで形成され、表面にターゲットとの結合性を増すための官能基を有する。
第1層11の官能基は、ターゲットとする物質に応じて選択され、例えばOH基、COOH基、NH2基、エポキシ基、トリメチルシリル基、NHS基などが挙げられる。
ターゲットとなる生体分子としては、ストレプトアビジン、プロテインA,プロテインGなどのタンパク質や抗体が挙げられる。核酸をターゲットとする場合、ターゲットとなる核酸と相補的な性質を有する核酸、具体的にはオリゴ(dT)プライマー、cDNAなども好ましい物質として挙げられる。細胞やエクソソームを分離する場合、CD3、CD4、CD8、CD9、CD63、CD81などの抗体が挙げられる。
【】
第2層12は、第1層11の第1酸化物材料とは異なる第2酸化物材料であるアルミナ、チタニア、またはアパタイトのいずれかで形成され、多数の細孔14を有する多孔質の材料とされている。ここで、第2層12にアルミナやチタニアを成膜するために用いられるアルコキシドは、第1層11へシリカを成膜するために用いられる原料と比べて、水やプロトン性溶媒に対しての反応性が早く、成膜過程で生成される膜の構造に細孔が形成されやすい。
第1層11の膜厚は第2層12の膜厚よりも十分に薄く形成され、第1層11は細孔14の内側の表面まで形成され、これにより第1層11の表面積は第2層12が多孔質でない場合に比べて大幅に拡大されている。
【】
第3層13は、第2層12(第2酸化物材料であるアルミナ、チタニア、またはアパタイトのいずれか)とは異なる材料であるシリカで形成され、ターゲットが分散された水中において磁性金属粉2からのFeイオン溶出を抑制する機能を有する。
【】
被覆層10を形成する際には、まず磁性金属粉2の表面に第3層13をコーティングし、次に第3層13の表面に細孔14を有する第2層12を形成する。さらに、第2層12の表面に、細孔14の内面までが被覆されるように、第1層11をコーティングする。コーティングの処理などには既存の技術が利用できる。
【】
〔本実施形態の作用効果〕
本実施形態の磁気ビーズ1は、磁性金属粉2と、磁性金属粉2の表面を被覆する被覆層10と、を有し、磁性金属粉2の磁気特性が100~200emu/gかつ体積基準での粒度分布のD50が1.0~25μmであり、被覆層10が、最表層の第1層11と、第1層11と磁性金属粉2との間に形成された多孔質の第2層12と、を有し、第1層11の膜厚が第2層12の膜厚よりも薄いものとなっている。
【】
この構成では、磁性金属粉2の磁気特性が100~200emu/gかつ体積基準での粒度分布のD50が1.0~25μmであることで、高飽和磁化特性と高比表面積とを兼ね備える磁気ビーズ1とすることができる。これにより、磁気ビーズ1の飽和磁化を高くしつつ、磁気ビーズ1をマイクロメートルオーダーの粒子径とすることで、ターゲットについた磁性粒子を素早く回収でき、ターゲットの回収を短時間で行うことができる。
また、被覆層10が、最表層の第1層11と、第1層11と磁性金属粉2との間に形成された多孔質の第2層12と、を有することで、多孔質内面を含めた第1層11の総表面積を拡大させ、ターゲット回収量を増大させることができる。
とくに、第1層11の膜厚が第2層12の膜厚よりも薄いとしたため、第2層12の外側に第1層11を形成する際に第2層12の細孔14が第1層11の材料で塞がれたり埋められたりすることがなく、第2層12の細孔14の内面まで第1層11を形成することができる。言い換えれば、第2層12の細孔14は、第1層11が第2層12上に形成された場合でも埋まらない深さを有する。すなわち、第1層11は、第2層12の細孔14の深さ未満となる膜厚となっている。これにより、多孔質の第2層12を利用した第1層11の総表面積の拡大を最大化できる。
【】
本実施形態の磁気ビーズ1では、第1層11が第1酸化物材料(シリカ)で形成され、第2層12が第1酸化物材料とは異なる第2酸化物材料(アルミナ、チタニア、またはアパタイトのいずれか)で形成されている。
この構成では、第1層11および第2層12をそれぞれ酸化物材料とすることで、滅菌処理等の高温高圧過程で処理しても特性劣化なく安定して製造できる。さらに、第1層11においてターゲットの吸着性を確保しつつ、第2層12において多孔質を形成できる。
【】
本実施形態の磁気ビーズ1では、窒素吸着による比表面積が2~45m2/gであり、窒素吸着による平均細孔径が2~25nmである。
この構成では、磁気ビーズ1の単位粒子あたりの検体の量を向上させることができる。
【】
本実施形態の磁気ビーズ1では、第1層11の第1酸化物材料がシリカである。
この構成では、第1層11としてターゲットに対する吸着性が高いシリカを用いることで、回収処理を効率よく行うことができる。
【】
本実施形態の磁気ビーズ1では、第2層12の第2酸化物材料がアルミナ、チタニア、またはアパタイトのいずれかである。
この構成では、第2層12の多孔質化を促進して核酸収率を高くすることができる。
【】
本実施形態の磁気ビーズ1では、被覆層10が第2層12と磁性金属粉2との間に第3層13を有し、第3層13が第2層12の第2酸化物材料(アルミナ、チタニア、またはアパタイトのいずれか)とは異なる材料(シリカ)で形成されている。
この構成では、第3層13によりターゲットを含む水溶液における磁性金属粉2からのFeイオン溶出を抑制できる。
【】
本実施形態の磁気ビーズ1では、第3層13が磁性金属粉2の表面にコーティングされたシリカである。
この構成では、第3層13としてシリカを用いることで、磁性金属粉2の表面へのコーティングを均一にできる。
【】
〔第2実施形態〕
図3には本発明に基づく第2実施形態が示されている。
本実施形態の磁気ビーズ1Aは、前述した第1実施形態の磁気ビーズ1と同様に、磁性金属粉2と、磁性金属粉2の表面を被覆する被覆層10Aと、を有する。本実施形態において、磁性金属粉2は前述した第1実施形態と同様である。
本実施形態の被覆層10Aは、前述した第1実施形態と同様な第1層11および第2層12を有する。ただし、第2層12は磁性金属粉2の表面に直接形成され、第1実施形態における第3層13は省略されている。
【】
このような本実施形態の磁気ビーズ1Aにおいては、第1実施形態の磁気ビーズ1における第3層13の効果(ターゲットを含む水溶液における磁性金属粉2からのFeイオン溶出を抑制できる)が得られないが、この点を除く他の効果については第1実施形態の磁気ビーズ1と同様な効果が得られる。
さらに、本実施形態の磁気ビーズ1Aでは、第1実施形態の磁気ビーズ1のような第3層13がない分、成膜工程をひとつ省略でき、磁気ビーズ1よりも製造工程を簡略化できる。
【】
〔実験例〕
前述した第1実施形態の磁気ビーズ1および第2実施形態の磁気ビーズ1Aについて具体的な試験を行った。
【】
【】
表1において、実施例1および実施例10は第1層11~第3層13を有する磁気ビーズ1(3層構造)であり、実施例2~9および比較例1~5は第3層13がない磁気ビーズ1A(2層構造)であり、比較例6は被覆層10が第1層11だけの磁気ビーズである。
〔第1実施形態の磁気ビーズ1の製造〕
磁気ビーズ1は、磁性金属粉2の表面に第3層13、第2層12、第1層11を順次成膜して形成される。
磁性金属粉2の材質は、実施例1~6,9,10および比較例2~6ではFeアモルファス粒子(Fe73Si11Cr2B11C3)を用い、実施例7ではFe87Cr2.6Si9.8、実施例8ではFe73Si10B15C2を用いた。比較例1では磁性金属粉2としてカルボニル鉄(Fe100)を用いた。磁性金属粉2の粒子径は、比較例2、3を除いて1.0~25μmの範囲とした。
【】
第3層13の形成は以下のように行った。
まず、磁性金属粉2であるFeアモルファス粒子をエタノール溶媒中に懸濁させ、超音波印加のもと1時間攪拌した。その後、触媒であるNH3(実際にはNH3水溶液)と純水を添加し、その後、TEOS(テトラエトキシシラン)を時間をかけてゆっくり滴下し、TEOSの加水分解&縮重合反応によるシリカコート反応を行った。成膜後は、磁気分離と溶媒置換(エタノール)を繰り返し、粒子を回収した。回収した粒子はホットプレートで100℃1時間乾燥させ、溶媒が揮発したことを確認し、その後200℃2hで焼成を行った。
【】
第2層12の形成は以下のように行った。
第3層13が形成された磁性金属粉2をエタノール溶媒中に懸濁させ、超音波印加のもと1時間攪拌した。その後、AIP(アルミイソプロポキシド)と純水を添加し、その後、4時間反応させた。成膜後は、磁気分離と溶媒置換(エタノール)を繰り返し、粒子を回収した。回収した粒子はホットプレートで100℃1時間乾燥させ、溶媒が揮発したことを確認し、その後200℃2hで焼成を行った。
【】
第1層11の形成は以下のように行った。
第2層12および第3層13が形成された磁性金属粉2をエタノール溶媒中に懸濁させ、超音波印加のもと1時間攪拌した。その後、触媒であるNH3水溶液と純水を添加し、その後、TEOSを時間をかけてゆっくり滴下し、TEOSの加水分解&縮重合反応によるシリカコート反応を行った。成膜後は、磁気分離と溶媒置換(エタノール)を繰り返し、粒子を回収した。回収した粒子はホットプレートで100℃1時間乾燥させ、溶媒が揮発したことを確認し、その後200℃2hで焼成を行った。焼成後の粒子は純水に懸濁し、70℃3hの加熱を行った。
【】
〔第2実施形態の磁気ビーズ1Aの製造〕
磁気ビーズ1Aは、第1実施形態の磁気ビーズ1と同じ磁性金属粉2の表面に第2層12、第1層11を順次成膜して形成される。
ここで、第2層12および第1層11の形成処理は第1実施形態の磁気ビーズ1と同じであり、第2層12の形成はFeアモルファス粒子(磁性金属粉2)に対して直接行えばよく、重複する説明は省略する。
【】
〔核酸収率の判定〕
核酸のモデルとしてヒトゲノムDNAを、夾雑物のモデルとしてリゾチームを、それぞれ用意した。次に、表1に示す各実施例1~10および各比較例1~6の磁気ビーズをそれぞれ純水に分散させ、撹拌して磁気ビーズ懸濁液を調製した。磁気ビーズ懸濁液における磁気ビーズの含有率は53.17質量%とした。次に、核酸以外の試薬を室温になるまで放置した後、チューブに、以下の順序で試薬を入れた。
・純水65μL
・濃度0.1μg/μLの核酸分散液20μL
・溶解吸着液750μL
・濃度10μg/μLのリゾチーム水溶液15μL
・磁気ビーズ懸濁液10μL
【】
次に、チューブの内容物をボルテックスミキサーで10分間撹拌した後、チューブを磁気スタンドにセットして30秒間放置した。そして、磁気ビーズが磁気捕集されたら、上清を除去した。
次に、900μLの洗浄液をチューブに加え、ボルテックスミキサーで5秒間撹拌した後、遠心分離にかけた。その後、チューブを磁気スタンドにセットして30秒間放置した。そして、磁気ビーズが磁気捕集されたら、上清を除去した。その後、洗浄液の追加、磁気捕集および上清の除去をもう一度行った。
次に、900μLの70%エタノール水溶液をチューブに加え、ボルテックスミキサーで5秒間撹拌した後、遠心分離にかけた。その後、チューブの内容物をピペットで吸って戻す操作を1回行った。その後、チューブを磁気スタンドにセットして30秒間放置した。そして、磁気ビーズが磁気捕集されたら、上清を除去した。その後、エタノール水溶液の追加、磁気捕集および上清の除去をもう一度行った。次に、チューブを遠心分離にかけた後、残りの上清を除去した。
【】
次に、チューブに100μLの純水を加えた後、ボルテックスミキサーで1分間撹拌し、核酸を溶出させた。その後、チューブを磁気スタンドにセットして30秒間放置した。そして、磁気ビーズが磁気捕集されたら、核酸が含まれる溶出液を、別のチューブに回収した。
次に、回収した溶出液に吸光光度計にセットし、波長260nmにおける吸光度から溶出液中の核酸の濃度を定量した。そして、求めた濃度から核酸回収量を算出するとともに、核酸投入量に対する核酸回収量の比率を核酸収率として算出した。
なお、核酸塩基が260nm付近に吸収極大を持っているため、核酸の濃度の定量には波長260nmにおける吸光度が用いられる。
【】
以上により算出された核酸収率について、下記の通り判定した。
◎:核酸収率が80%以上
○:核酸収率が60%以上80%未満
△:核酸収率が40%以上60%未満
×:核酸収率が40%未満
【】
〔磁気分離時間の判定〕
磁気分離時間は、磁石を近づけたときの吸光度の変化を測定することよって行った。キュベットに2.5mLのPBSと磁気ビーズ懸濁液5μLを入れる。フタをして転倒攪拌した後に分光光度計(日立ハイテクノロジーズU-3900H)にセットし、波長550nmに設定して吸光度測定を開始する。永久磁石をキュベットの側面に密着させてから、吸光度の値が初期値の10%になるまで(90%減少するまで)の時間を磁気分離時間として計測した。
【】
以上により計測された磁気分離時間について、下記の通り判定した。
◎:磁気分離時間が10秒以下
〇:磁気分離時間が10秒超過で60秒以下
△:磁気分離時間が60秒超過で300秒以下
×:磁気分離時間が300秒超過
【】
〔評価結果〕
本発明である実施例1~10では、それぞれ核酸収率および磁気分離時間がともに○または◎である良好な結果が得られた。
これに対し、本発明ではない比較例1~6においては、核酸収率または磁気分離時間に△または×の不十分な結果しか得られなかった。
【】
比較例1:磁性金属粉2がFe100であり、磁気特性において飽和磁化が220emu/gと高く、磁気分離は早いが、核酸収率に十分な値が得られない。これは、磁性金属粉2にCrが入っていない組成であるため、磁性金属粉2に腐食が発生してFeイオンが溶出し、溶出したFeイオンが核酸と強く結合するため核酸が磁気ビーズから溶出できず、その結果、核酸収率が低下すると考えられる。
これに対し、実施例1~10では、磁性金属粉2の磁気特性が100~200emu/gの範囲内とされており(実施例6,7参照)、核酸収率に十分な値が得られている。
【】
比較例2:磁気特性は100~200emu/gの範囲内であるが、粒子径が0.4μmと小さいため、粒子あたりの磁化が小さく、磁気分離時間がかかっている。
これに対し、実施例1~10では、磁性金属粉2の粒子径が1.0~25μmの範囲内とされており(実施例2,4参照)、磁気分離時間が短縮されている。
【】
比較例3:磁気特性は100~200emu/gの範囲内であるが、粒子径が36ミクロンと大きく、比表面積が小さいため、核酸収率が低下している。
これに対し、実施例1~10では、磁性金属粉2の粒子径が1.0~25μmの範囲内であり、さらに比表面積が2~45m2/gの範囲内とされており(実施例5,6参照)、核酸収率に十分な値が得られている。
【】
比較例4:第2層12の多孔質を形成するアルミナの膜厚が5nmと薄く、細孔分布が1nmと小さくなるとともに比表面積が拡張できず0.45m2/gと低く、核酸収率が低下している。
これに対し、実施例1~10では、第2層12の膜厚が30~800μmの範囲内であり、これにより比表面積が2~45m2/gの範囲内とされており(実施例5,6参照)、核酸収率に十分な値が得られている。
【】
比較例5:第2層12の多孔質を形成するアルミナの膜厚が1000nmと厚く、磁気分離が不良となっている。さらに、第2層12の膜厚が厚いことで細孔14が大きくなり、吸着した核酸を脱離できず、核酸収率が低下している。
これに対し、実施例1~10では、第2層12の膜厚が30~800μmの範囲内であり、これにより比表面積が2~45m2/gの範囲内とされており(実施例5,6参照)、核酸収率に十分な値が得られている。
【】
比較例6:多孔質の第2層12がなく比表面積が0.45m2/gと小さいため、核酸収率が低い。
これに対し、実施例1~10では、多孔質の第2層12により比表面積が2~45m2/gの範囲内とすることができ、核酸収率に十分な値が得られている。
【】
〔本開示のまとめ〕
本開示の第1態様に係る磁気ビーズは、磁性金属粉と、前記磁性金属粉の表面を被覆する被覆層と、を有し、前記磁性金属粉の磁気特性が100~200emu/gかつ体積基準での粒度分布のD50が1.0~25μmであり、前記被覆層が、最表層の第1層と、前記第1層と前記磁性金属粉との間に形成された多孔質の第2層と、を有し、前記第1層の膜厚が前記第2層の膜厚よりも薄い磁気ビーズである。
【】
この構成では、磁性金属粉の磁気特性が100~200emu/gかつ体積基準での粒度分布のD50が1.0~25μmであることで、高飽和磁化特性と高比表面積とを兼ね備える磁気ビーズとすることができ、ターゲット回収を短時間で行うことができる。
また、被覆層が、最表層の第1層と、第1層と磁性金属粉との間に形成された多孔質の第2層と、を有することで、多孔質内面を含めた第1層の総表面積を拡大させ、ターゲット回収量を増大させることができる。
とくに、第1層の膜厚が第2層の膜厚よりも薄いとしたため、第2層の外側に第1層を形成する際に第2層の細孔が第1層の材料で塞がれたり埋められたりすることがなく、第2層の細孔の内面まで第1層を形成することができる。これにより、多孔質の第2層を利用した第1層の総表面積の拡大を最大化できる。
【】
本開示の磁気ビーズにおいて、前記第1層が第1酸化物材料で形成され、前記第2層が前記第1酸化物材料とは異なる第2酸化物材料で形成されている。
この構成では、第1層および第2層をそれぞれ酸化物材料とすることで、滅菌処理等の高温高圧過程で処理しても特性劣化なく安定して製造できる。さらに、第1層においてターゲットの吸着性を確保しつつ、第2層において多孔質を形成できる。
【】
本開示の磁気ビーズにおいて、窒素吸着による比表面積が2~45m2/gであり、窒素吸着による平均細孔径が2~25nmであることが好ましい。
この構成では、単位粒子あたりの検体の量を向上させることができる。
【】
本開示の磁気ビーズにおいて、前記第1酸化物材料がシリカであることが好ましい。
この構成では、ターゲットに対する吸着性が高いシリカを用いることで、回収処理を効率よく行うことができる。
【】
本開示の磁気ビーズにおいて、前記第2酸化物材料がアルミナ、チタニア、またはアパタイトのいずれかであることが好ましい。
この構成では、多孔質化を促進して核酸収率を高くすることができる。
【】
本開示の磁気ビーズにおいて、前記被覆層が前記第2層と前記磁性金属粉との間に第3層を有し、前記第3層が前記第2層とは異なる材料で形成されていることが好ましい。
この構成では、ターゲットを含む水溶液における磁性金属粉からのFeイオン溶出を抑制できる。
【】
本開示の磁気ビーズにおいて、前記第3層が前記磁性金属粉の表面にコーティングされたシリカであることが好ましい。
この構成では、第3層としてシリカを用いることで、磁性金属粉の表面へのコーティングを均一にできる。
【符号の説明】
【】
1,1A…磁気ビーズ、2…磁性金属粉、10,10A…被覆層、11…第1層、12…第2層、13…第3層、14…細孔。
【図】
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