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  • -破壊限界の評価方法および評価装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026019334
(43)【公開日】2026-02-05
(54)【発明の名称】破壊限界の評価方法および評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/08 20060101AFI20260129BHJP
   B21D 22/00 20060101ALI20260129BHJP
【FI】
G01N3/08
B21D22/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024120842
(22)【出願日】2024-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(72)【発明者】
【氏名】太田 英一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康元
(72)【発明者】
【氏名】一条 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】池本 誠
(72)【発明者】
【氏名】岩田 徳利
【テーマコード(参考)】
2G061
4E137
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AA17
2G061BA04
2G061BA07
4E137AA21
4E137BA01
4E137BA05
4E137BA06
4E137BA07
4E137BB01
4E137CA03
4E137CB01
4E137CB03
4E137DA01
4E137DA02
4E137DA04
4E137DA14
4E137EA02
(57)【要約】
【課題】単軸引張り試験等では評価できないビード通過部の破壊限界(許容される板厚の限界値)を効率的に評価できる方法を提案する。
【解決手段】本発明の破壊限界評価方法は、前方から後方に幅が減少する帯状の板材からなる試験片(T)を、プレス成形型のドロービードを模した模擬型(1)で挟んだ状態で、試験片を模擬型に対して相対的に前方へ引いて試験片を破断させる引張工程と、この試験片の破断部近傍(一様伸び部)の厚さである限界厚さを測る測定工程とを備える。こうして得られた限界厚さ、またはその限界厚さと初期板厚から求まる最大板厚減少率等を用いると、ドロービードを通過した板材(ビード通過部)に成形不良(割れ等)が生じるか否かを適確に評価できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方から後方に幅が減少する帯状の板材からなる試験片を、プレス成形型のドロービードを模した模擬型で挟んだ状態で、該試験片を該模擬型に対して相対的に該前方へ引いて該試験片を破断させる引張工程と、
該試験片の破断部近傍の厚さである限界厚さを測る測定工程とを備え、
該限界厚さに基づいて該ドロービードを通過する板材の破壊限界を評価する方法。
【請求項2】
前記試験片の初期板厚と前記限界厚さから、前記プレス成形型で前記板材を成形するときに許容される最大板厚減少率を算出する評価工程を備え、
該最大板厚減少率を前記破壊限界とする請求項1に記載の破壊限界評価方法。
【請求項3】
前記引張工程は、前記試験片に後方張力を印加しつつなされる請求項1に記載の破壊限界評価方法。
【請求項4】
プレス成形型のドロービードを模した模擬型と、
前方から後方に幅が減少する帯状の板材からなる試験片を該模擬型で挟む挟持機構と、
該試験片を該模擬型に対して相対的に該前方へ移動させる引張機構とを備え、
請求項1または3に記載の破壊限界評価方法に用いられる装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形される板材のビード部における破壊限界を評価する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や家電製品等に多く用いられるプレス成形品(単に「成形品」ともいう。)は、金属製の板材(通常は平板)を成形型(通常は金型)で加圧し、塑性変形させて得られる。成形型の設計に際して、成形不良(割れ、皺、かじり(傷)等)の発生を抑止するために、成形部(キャビティ)のみならず、その周囲に配設されるドロービードも重要となる。ドロービードの形態、隙間または押付力等を適切に設定することにより、成形される板材の流れを制御したり、その板材に作用する張力を調整したりできる。
【0003】
ところで、成形型の設計や成形工程を開発する場合、一般的に、CAE(Computer Aided Engineering)を用いた成形シミュレーションが事前になされる。その際、板材に割れ等を生じることなく成形できるか否を判断するために、板材の特性(機械的性質、破断限界等)が必要となる。このような板材の特性の評価に関連する記載が下記の文献にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2024-17821
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】"Over five-times improved elongation-tofractureof dual-phase 1180 steel by continuous-bendingunder-tension",Materials & Design Volume 161, 5 January 2019,Pages 95-105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、引張曲げされる頂部における成形限界(板厚方向の局部くびれが生じる時点)を評価している。
【0007】
非特許文献1は、二相鋼からなる板材を3つのローラ間で往復させて引張曲げ戻しを繰り返すことにより、その破断伸びが向上する旨を報告している。
【0008】
いずれの文献も、ドロービードを通過する板材の特性(破壊限界)に着目したものではなく、それに関連する具体的な評価や示唆等もされていない。
【0009】
実際にプレス成形すると、割れ等を生じるに至る板厚は、成形部位や成形過程(加工履歴)等により異なる。このため、単軸引張試験により得られる一様な板材の特性のみでは、成形シミュレーションにおいて、実際の成形に沿った正確な評価ができない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、ドロービードを通過する板材の特性(破壊限界)を効率的に評価できる新たな方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意研究した結果、板幅を連続的に減少(単調減少)させた板材を、ドロービードを模した型内で挟みつつ引き抜くことにより、ドロービードを通過した板材(ビード通過部)に許容される板厚の限界値(最小値/破壊限界)を効率よく適確に評価できることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0012】
《破壊限界評価方法》
(1)本発明は、前方から後方に幅が減少する帯状の板材からなる試験片を、プレス成形型のドロービードを模した模擬型で挟んだ状態で、該試験片を該模擬型に対して相対的に該前方へ引いて該試験片を破断させる引張工程と、該試験片の破断部近傍の厚さである限界厚さを測る測定工程とを備え、該限界厚さに基づいて該ドロービードを通過する板材の破壊限界を評価する方法である。
【0013】
本発明の破壊限界評価方法(単に「評価方法」という。)によれば、ドロービード(単に「ビード」ともいう。)を通過した板材に許容される板厚の限界値(または最大板厚減少率/破壊限界)を効率的に評価できる。これにより、成形型の設計や成形工程の開発、その際に予めなされる成形シミュレーション等を、現実のプレス成形に沿って適切に行える。このような効果が得られる機序は次のように考えられる。
【0014】
試験片は、模擬型を通過する際、(引張)曲げ戻し変形により伸びて薄くなる。ここで本発明に係る試験片は、拡幅側(前方側)から縮幅側(後方側)に至る方向(「引抜方向」という。)に沿って、その幅(引抜方向および厚さ方向に直交する方向の長さ)が減少している。この試験片を模擬型に対して相対的に拡幅側から縮幅側へ移動させる(つまり引き抜く)と、試験片に作用する(引張)応力は増加し、これに伴って試験片の厚さも減少し、やがて試験片は破断する(引張工程)。その破断部近傍(拡幅側/前方側)の厚さが、成形時に許容される板厚の限界値(限界厚さ:t)となる。
【0015】
その限界厚さを破壊限界としてもよいし、試験片の初期板厚(t)を基準にした(最大)板厚減少量(Δt=t-t)または(最大)板厚減少量率(Δt/tまたはその百分率)を破壊限界としてもよい(評価工程)。本明細書では、適宜、最大板厚減少量率を破壊限界とする。
【0016】
ちなみに、試験片は、通常、模擬型を通過した付近において、拡散くびれ(板幅方向の縮減)や局所くびれ(厚さ方向の縮減)を生じて破断する。限界厚さは、そのようなくびれがなく、略一様な伸びが生じている部位(一様伸び部という。)で測定されるとよい。一様伸び部は、平面ひずみ状態(板面内で引張直交方向のひずみが殆どない状態)にあり、実際に成形される板材のビード通過部を反映している。
【0017】
こうして本発明によれば、想定している実際のプレス成形に応じて、模擬型(ドロービードの形態、隙間、押付力等)や試験片(材質、板厚、板幅の変化、長さ、張力等)を適切に選択、調整すれば、試験片を模擬型に対して一方向へ一度引き抜くだけでも、ドロービードを通過する板材の破壊限界(限界厚さ、最大板厚減少率等)を簡便に効率よく評価できる。
【0018】
《破壊限界評価装置》
本発明は、上述した評価方法を実施するための装置(評価装置、試験装置)としても把握され得る。例えば、本発明は、プレス成形型のドロービードを模した模擬型と、前方から後方に幅が減少する帯状の板材からなる試験片を該模擬型で挟む挟持機構と、該試験片を該模擬型に対して相対的に該前方へ移動させる引張機構とを備える評価装置でもよい。
【0019】
《その他》
(1)本発明でいう「破断」には、試験片が完全に分離した状態の他、割れ等の欠陥が発生した状態や、破断の兆候(発散くびれ、局所くびれ等)が現れた状態が含まれる。有意義な限界厚さが測定される限り、試験片が完全に分離するまで評価(試験)を継続する必要は必ずしもない。
【0020】
(2)本明細書では、適宜、試験片(板材)の模擬型に対する移動方向を前後方向、試験片の模擬型による挟持(把持)方向または厚さ方向を上下方向、試験片の幅方向を左右方向という。また、試験片が模擬型に対して相対的に移動する前方(前向き)を引抜方向という。
【0021】
(3)本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】破壊限界の評価に係る試験装置と試験片を模式的に示す正面図と断面図である。
図2】その評価過程を示すフローチャートと模式図である。
図3】試験片の変位とその板厚の変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で説明する内容は、評価方法のみならず、評価装置や試験片にも該当し得る。本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素が、本発明の構成要素に付加され得る。方法に関する構成要素も物に関する構成要素となり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象や要求性能等により異なる。
【0024】
《試験片》
試験片は、帯状の板材からなり、板幅が一方から他方へ減少する幅減部(供試域)を有する。試験片の全長にわたって幅減部が設けられてもよいし、試験片の中央側または一端側だけに幅減部が設けられてもよい。つまり、把持される試験片の端部は、必ずしも板幅が減少していなくてもよい。
【0025】
幅減部にける板幅の減少割合(形態、傾向)は、直線的(一次関数)でも、曲線的(べき関数、指数関数等)でも、それらを組み合わせたものでもよい。幅減部の長さと板幅の減少率を調整して、試験片を所望域で破断させてもよい。なお、試験片の板幅は、連続的または単調に、緩やか(徐々)に減少すると好ましい。但し、破壊限界(限界厚さ)の評価に殆ど影響ない範囲ならば、試験片の板幅は段階的に減少してもよい。
【0026】
試験片の材質や形態(形状、サイズ)は、想定しているプレス成形に応じて適宜選択される。試験片(板材)の材質は、例えば、鋼等の鉄(合金)、アルミニウム(合金)、マグネシウム(合金)、チタン(合金)等の金属からなる。試験片は、例えば、短冊状の平板(薄板)からなる。
【0027】
想定しているプレス成形の種類(冷間成形、熱間成形、ホットスタンプ等)に応じて、試験片は冷間のままでもよいし、所望温度に加熱されて評価(試験)されてもよい。
【0028】
《模擬型》
模擬型は、プレス成形型(例えばブランクホルダー)に設けられるドロービードを模した凸部(突起)および/または凹部(溝)を有する。凸部や凹部の形態(形状、大きさ)、数(条数)、間隔等は、想定している成形型(成形品)や成形工程に応じて適宜調整される。
【0029】
模擬型に設けられる凸部や凹部は、例えば、断面形状が円弧状、長円(楕円)状、多角形(三角、台形など)状等のいずれでもよい。凸部や凹部は、1条(シングルビード)でも、2条(ダブルビード)でも、3条以上あってもよい。凸部や凹部は、試験片の板幅方向へ、直線的に延在する他、曲線的または折れ線的に延在してもよい。
【0030】
模擬型は、通常、試験片の上面(表面)と下面(裏面)をそれぞれ、上下方向から挟む上型と下型を備える。ドロービードを模した凸部や凹部は、上型と下型に嵌合的に設けられる他、上型と下型の一方のみに設けられてもよい。例えば、一方の型に設けられた凸部に、他方の型の平坦面が対向してもよい。
【0031】
《装置》
前方引張機構は、試験片を模擬型に対して前方側(拡幅側)へ引く。後方引張機構を設けて、模擬型の後方側(縮幅側)でも、試験片に張力(後方張力)を作用させてもよい。前方引張機構と後方引張機構は、一直線状に配置されていなくてもよい。引張機構の駆動源は、例えば、油圧や電動力である。後方引張機構は、一定の張力(抵抗力)を発生させるものに限らず、油圧ダンパー等の減衰装置でもよい。
【0032】
引張機構は、試験片の端部を把持する機構(前方把持機構、後方把持機構)を備える。把持機構は、着脱自在なチャックやネジに依る他、溶接等の接合で代替されてもよい。
【0033】
挟持機構は、模擬型(上型および/または下型)に押付力や保持力を印加し、試験片を模擬型で挟持された状態にする。挟持機構の制御は、模擬型(上型および下型)と試験片のクリアランスを調整する位置制御でも、模擬型が試験片に及ぼす圧力を調整する圧力制御でもよい。挟持機構の駆動源は、例えば、油圧や電動力である。クリアランス(隙間)は、例えば、模擬型にディスタンスブロックを配設して調整されてもよい。
【0034】
《評価》
引張工程は、試験片が破断するまで試験片を模擬型に対して前方へ移動させて引き抜く。試験片の移動速度(引抜速度)または試験片の張力は、一定でもよいし、連続的または段階的に変化させてもよい。試験片の変位(移動)、試験片に作用する負荷(張力)等は、例えば、レーザ変位計、ロードセル等により計測される。
【0035】
測定工程は、破断した試験片に対して、その破断部の近傍の厚さ(限界厚さ)を測る。厚さ測定は、例えば、拡散くびれや局所くびれがない一様伸び部(さらにいえば、その幅方向の中央付近)でなされるとよい。なお、試験片の破断は、通常、模擬型の出口付近で生じる。厚さ測定は、その破断が生じた部位の前方側にある一様伸び部でなされるとよい。
【0036】
厚さ測定は、一箇所でなされてもよいし、複数箇所でなされてもよい。複数箇所で測定したとき、例えば、各測定値の算術平均値を限界厚さとしてもよい。厚さは、例えば、マイクロメータ等で測定される。
【実施例0037】
プレス成形される板材のビード通過部における破壊限界の評価例を示しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0038】
[装置]
破壊限界を評価する試験装置S(単に「装置S」という。/評価装置)の正面図と断面図を図1に示した。説明の便宜上、図中に示す矢印の方向を、前後方向、上下方向、幅方向または引抜方向とする。
【0039】
装置Sは、基台B上に設置され、模擬型1と、挟持機構2と、前方引張機構31および後方引張機構32(両者を併せて「引張機構3」という。)とを備える。
【0040】
模擬型1は、想定しているプレス成形型に設けられるドロービードを模擬した上型11および下型12と、ディスタンスブロック13とを備える。
【0041】
上型11は、基板110の下面側に、凸部111と凹部112が交互に形成されている。凸部111は、断面が略円弧状で、幅方向(図1の紙面垂直方向)へ直線的に延びている。凹部112は、凸部111の両側にあり、凸部111と平行して延びる平坦な底面を有する。
【0042】
下型12は、基板120の上面側に、凸部121と凹部122が交互に形成されている。凸部121および凹部122はそれぞれ、凸部111および凹部112と同形態である。
【0043】
2条の凸部111は2条の凹部122にそれぞれ対面しており、3条の凸部121は3条の凹部112にそれぞれと対面している。こうして上型11と下型12の対向間に、嵌合的なダブルドロービードが模擬に形成されている。
【0044】
ディスタンスブロック13は、基板120の四隅から上方へ起立した4本の円柱体からなる。ディスタンスブロック13はいずれも同じ高さである。基板110の下面の四隅が各ディスタンスブロック13の上端面に当接し、上型11と下型12の間隔(クリアランス)が一定に規制される。
【0045】
挟持機構2は、アクチュエータ21と、アクチュエータ21と上型11を連接するロッド22と、ロッド22に配設されたロードセル23とを備える。ロードセル23により上型11に作用する押付力が計測され、その計測値に基づいてアクチュエータ21が制御される。
【0046】
前方引張機構31は、アクチュエータ311と、ロッド312と、ロードセル313と、チャック314を備える。チャック314(前方把持機構)により、試験片Tの前端部が着脱自在に把持される。ロッド312は、アクチュエータ311とチャック314を連接し、ロードセル313はロッド312に配設される。ロードセル313により試験片Tを前方へ引き抜く張力が計測され、その計測値に基づいてアクチュエータ311が制御される。
【0047】
後方張機構32は、アクチュエータ321と、ロッド322と、ロードセル323と、チャック324を備える。チャック324(後方把持機構)により、試験片Tの後端部が着脱自在に把持される。ロッド322は、アクチュエータ321とチャック324を連接し、ロードセル323はロッド322に配設される。ロードセル323により試験片Tに印加される後方張力が計測され、その計測値に基づいてアクチュエータ321が制御される。本実施例では、前方引張機構31のロッド312と後方張機構32のロッド322とを略一直線状に配設した。
【0048】
各アクチュエータには、油圧式を用いたが、電動(サーボ)式、スクリュー駆動式、電気機械式などを用いてもよい。
【0049】
[試験片]
試験片Tは、図1に示すように、プレス成形に用いられる金属平板(軟鋼板等)を加工した帯状である。試験片Tは、前端から後端にかけて、その幅が両側から対称的かつ直線的に、緩やかに単調減少(徐減)している。なお、評価前の試験片Tの厚さ(初期板厚:t)は全体的に均一である。
【0050】
[試験/評価]
装置Sと試験片Tを用いて、板材のビード通過部における破壊限界を評価する試験を図2に示すフローチャートに沿って行った。
【0051】
ステップS1で、上型11と下型12の間に配設した試験片Tの前端部と後端部をそれぞれ、チャック314とチャック324で把持する(セット工程)。
【0052】
ステップS2で、アクチュエータ21を作動させて上型11を押し下げ、基台B上にある下型12との間で試験片Tの前方域を挟持する。このとき、ディスタンスブロック13により、上型11と下型12の間隔は一定に保持される。試験片Tには、上型11の凸部111および凹部112と下型12の凸部121および凹部122とにより、ダブルビードが形成される(ビード成形工程)。
【0053】
ステップS3で、上型11と下型12に挟持された試験片Tを、アクチュエータ311を作動させて前方(引抜方向)へ引張って移動させる(引抜工程/引張工程)。試験片Tが破断するまで、その引抜きを継続する。
【0054】
その際、アクチュエータ321を作動させて、試験片Tに後方張力を印加してもよい。アクチュエータ21、311、321はそれぞれ、ロードセル23、313、323から得られる信号に基づいて、出力(駆動力)または変位(速度)が制御される。
【0055】
ステップS4で、引抜いた試験片Tに破断(またはその兆候)が観られた時点で、試験片Tの引抜きを停止する。
【0056】
ステップS5で、試験片Tの破断部近傍の前方域にある一様伸び部(拡散くびれ等が観られない領域)において、試験片Tの板厚(限界厚さ)を、マイクロメータ等で測定する(測定工程)。
【0057】
試験片Tの引抜き前の様子と、試験片Tの引抜き中の様子とを図3に示した。図3には、試験片Tの引抜き中に生じる試験片Tの板厚変化も併せて模式的に示した。引き抜かれた試験片T(初期板厚:t)は、上型11と下型12の間を通過する際に曲げ伸ばされ、模擬型1の出口付近まで徐々に薄くなる。その出口付近の板厚(t)は試験片Tの後方側ほど小さくなる。
【0058】
[実験例]
上述した試験を下記の条件下で実際に行った。その結果得られた最大板厚減少率を表1に例示した。
【0059】
(1)条件
試験片Tには、初期板厚0.65mmの軟鋼板(引張強さ270MPa相当)を用いた。試験片Tは全長700mmとし、前端(幅110mm)から後端(幅30mm)まで板幅を直線的に減少させた。
【0060】
上型11と下型12のクリアランス(凸部の頂点と凹部の底面との距離)は0.70mmまたは0.85mmとした。
【0061】
試験片Tに印加する後方張力を、3.2kN、3.7kNまたは4.2kNのいずれかとした。いずれの場合も、試験片Tの前端部を把持するチャック314を、10mm/s(引抜速度)で、200mm前方へ移動させた(引張工程)。
【0062】
試験片Tの板厚(t)は、ビード通過部で拡散くびれが生じていない領域の中央付近で測定した(測定工程)。その板厚(t)の初期板厚(t)に対する割合から、(最大)板厚減少率(100×(t-t)/t)を算出した(評価工程)。
【0063】
(2)評価
表1からわかるように、ドロービードを通過した領域(「ビード通過部」という。)の板厚減少率は、単軸引張り試験で得られる一様伸び部の板厚減少率(約22%)よりも遙かに大きくなった。つまり、ビード通過部は、他部(ドロービードを通過してない部分)よりかなり薄くなっても、割れ等を生じないことが確認された。
【0064】
表1からわかるように、クリアランスや後方張力の相違により、上記の移動距離内(≦200mm)では破断を生じない場合もあったが、ビード通過部の板厚減少率はいずれも30%超となった。このような結果は、実際のプレス成形品の板厚を測定した結果に整合的であった。
【0065】
以上から、本発明によれば、単軸引張り試験等では評価できないビード通過部の破断限界(破断箇所近傍の一様伸び部における最大板厚減少率)を、適切かつ効率的に評価できることが確認された。
【0066】
【表1】
【符号の説明】
【0067】
S 試験装置
T 試験片
1 模擬型
2 挟持機構
3 引張機構
図1
図2
図3