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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026019493
(43)【公開日】2026-02-05
(54)【発明の名称】消臭脱臭用鉄粉
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20260129BHJP
   C01G 49/04 20060101ALI20260129BHJP
   C01G 49/08 20060101ALI20260129BHJP
【FI】
A61L9/01 E
C01G49/04
C01G49/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121083
(22)【出願日】2024-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
【テーマコード(参考)】
4C180
4G002
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB02
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB08
4C180CC01
4C180DD20
4C180EA36X
4G002AA02
4G002AA04
4G002AD04
4G002AE05
(57)【要約】
【課題】本開示は、種々の対象に対する消臭脱臭効果に優れる消臭脱臭用鉄粉を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の一態様に係る消臭脱臭用鉄粉は、鉄を主成分とし、酸素を0.5質量%以上含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を主成分とし、
酸素を0.5質量%以上含む
消臭脱臭用鉄粉。
【請求項2】
比表面積が0.1m/g以上である請求項1に記載の消臭脱臭用鉄粉。
【請求項3】
マグネタイトを1.0質量%以上含む請求項1または請求項2に記載の消臭脱臭用鉄粉。
【請求項4】
ウスタイトを1.0質量%以上含む請求項1または請求項2に記載の消臭脱臭用鉄粉。
【請求項5】
酸素の含有量100質量部に対するマグネタイトの含有量が200質量部以上300質量部以下であり、
酸素の含有量100質量部に対するウスタイトの含有量が180質量部以上280質量部以下である請求項1または請求項2に記載の消臭脱臭用鉄粉。
【請求項6】
鉄および酸素以外の元素の含有量が、それぞれ1.0質量%未満である請求項1または請求項2に記載の消臭脱臭用鉄粉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消臭脱臭用鉄粉に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生意識の高まりから抗菌性物質や消臭脱臭性物質に対する需要が高まっている。特に、抗菌の有無は五感によって知覚し難いのに対し、臭いは嗅覚によって自然に知覚されるため、今日では、消臭脱臭性物質により着目されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-316401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、細かく粉砕された鉄粉末からなる硫化水素吸収剤が記載されている。一方で、例えば日常の生活空間では、消臭および脱臭の対象は、硫化水素以外にも種々存在している。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、種々の対象に対する消臭脱臭効果に優れる消臭脱臭用鉄粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る消臭脱臭用鉄粉は、鉄を主成分とし、酸素を0.5質量%以上含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る消臭脱臭用鉄粉は、種々の対象に対する消臭脱臭効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、No.1からNo.6におけるアンモニアガスの濃度の低下と経過時間との関係を示すグラフである。
図2図2は、No.1からNo.6における硫化水素ガスの濃度の低下と経過時間との関係を示すグラフである。
図3図3は、No.1からNo.6における酢酸ガスの濃度の低下と経過時間との関係を示すグラフである。
図4図4は、No.1からNo.6におけるイソ吉草酸ガスの濃度の低下と経過時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る消臭脱臭用鉄粉は、鉄を主成分とし、酸素を0.5質量%以上含む。
【0011】
当該消臭脱臭用鉄粉は、鉄を主成分とし、酸素を0.5質量%以上含むので、比表面積を大きくすることができる。より詳しくは、当該消臭脱臭用鉄粉は、その表面が表面積の大きい多数の酸化鉄微粒子に覆われることで、比表面積を大きくすることができる。その結果、悪臭等の原因となる吸着対象物質との接触面積を大きくすることができ、物理的吸着機能および化学的吸着機能の両機能を向上することができる。したがって、当該消臭脱臭用鉄粉は、種々の対象に対する消臭脱臭効果に優れる。なお、本開示において、「消臭脱臭効果」とは、消臭効果と脱臭効果との両方をあわせた効果を意味する。
【0012】
(2)上記(1)の消臭脱臭用鉄粉において、比表面積が0.1m/g以上であるとよい。この態様によれば、吸着対象物質との接触面積を十分に大きくすることができ、物理的吸着機能および化学的吸着機能の両機能をより向上することができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)の消臭脱臭用鉄粉において、マグネタイトを1.0質量%以上含むとよい。この態様によれば、吸着対象物質を静電的にトラップしやすくなると考えられる。その結果、物理的吸着機能をより向上することができる。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの消臭脱臭用鉄粉において、ウスタイトを1.0質量%以上含むとよい。この態様によれば、吸着対象物質を静電的にトラップしやすくなると考えられる。その結果、物理的吸着機能をより向上することができる。
【0015】
(5)上記(1)から(4)のいずれかの消臭脱臭用鉄粉において、酸素の含有量100質量部に対するマグネタイトの含有量が200質量部以上300質量部以下であり、酸素の含有量100質量部に対するウスタイトの含有量が180質量部以上280質量部以下であるとよい。この態様によれば、マグネタイトおよびウスタイトの含有量を、吸着対象物質を静電的にトラップしやすくなる範囲に容易に制御することができる。
【0016】
(6)上記(1)から(5)のいずれかの消臭脱臭用鉄粉において、鉄および酸素以外の元素の含有量が、それぞれ1.0質量%未満であるとよい。この態様によれば、当該消臭脱臭用鉄粉の表面性状を均質に制御することができる。その結果、種々の吸着対象物質をより確実に吸着することができる。したがって、当該消臭脱臭用鉄粉は、臭いの種類等に対する汎用性を容易に向上できる。
【0017】
なお、本開示において、「主成分」とは、質量換算で最も含有量の大きい成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分を意味する。「比表面積」とは、JIS-Z8830:2013(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準拠して測定されるBET比表面積を意味する。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態を詳説する。なお、本明細書に記載されている数値については、記載された上限値と下限値とを任意に組み合わせることが可能である。本明細書では、組み合わせ可能な上限値から下限値までの数値範囲が好適な範囲として全て記載されているものとする。
【0019】
[消臭脱臭用鉄粉]
当該消臭脱臭用鉄粉は、鉄を主成分とする。当該消臭脱臭用鉄粉は、酸素を0.5質量%以上含む。
【0020】
当該消臭脱臭用鉄粉は、鉄を主成分とし、酸素を0.5質量%以上含むので、比表面積を大きくすることができる。より詳しくは、当該消臭脱臭用鉄粉は、その表面が表面積の大きい多数の酸化鉄微粒子に覆われることで、比表面積を大きくすることができる。その結果、悪臭等の原因となる吸着対象物質との接触面積を大きくすることができ、物理的吸着機能および化学的吸着機能の両機能を向上することができる。したがって、当該消臭脱臭用鉄粉は、種々の対象に対する消臭脱臭効果に優れる。
【0021】
当該消臭脱臭用鉄粉における鉄の含有量の下限としては、60質量%であってもよく、75質量%であってもよく、85質量%であってもよく、95質量%であってもよく、97質量%であってもよく、98質量%であってもよい。一方、当該消臭脱臭用鉄粉における鉄の含有量の上限は、99.5質量%とすることができる。当該消臭脱臭用鉄粉は、例えば純鉄を主成分として含みつつ、その表面に酸化鉄皮膜を有することで、消臭脱臭効果を高めることができると考えられる。より詳しくは、当該消臭脱臭用鉄粉は、フェライト相(α相)をコアとして、その表層に多数の酸化鉄微粒子を含む酸化鉄皮膜を有することで、消臭脱臭効果を高めることができると考えられる。そのため、当該消臭脱臭用鉄粉は、鉄の含有量を上記下限以上としつつ、上記酸化鉄皮膜中に必要量の酸素を含んでいることで、優れた消臭脱臭効果を奏すると考えらえる。
【0022】
当該消臭脱臭用鉄粉における酸素の含有量の下限としては、上述のように0.5質量%であり、0.6質量%であってもよい。一方、当該消臭脱臭用鉄粉における酸素の含有量の上限としては、例えば30質量%であってもよく、20質量%であってもよく、10質量%であってもよく、5質量%であってもよく、1質量%であってもよく、0.8質量%であってもよい。
【0023】
上述のように、当該消臭脱臭用鉄粉は、その表層に酸化鉄皮膜を有することが好ましい。当該消臭脱臭用鉄粉は、上記酸化鉄皮膜を有することで、表層が複雑な結晶構造をとること等によって、比表面積を大きくすることができる。上記酸化鉄皮膜に含まれる酸化鉄としては、例えばマグネタイト(Fe)、ウスタイト(FeO)、ヘマタイト(Fe)が挙げられる。
【0024】
当該消臭脱臭用鉄粉は、マグネタイトを含むことが好ましい。マグネタイトは、多孔質で、かつ多数の微細な凹凸を有している。そのため、当該消臭脱臭用鉄粉は、マグネタイトを含むことで、比表面積を容易に大きくすることができる。上記マグネタイトの含有量の下限としては、例えば吸着対象物質を静電的にトラップしやすくして、物理的吸着機能をより向上する観点から、1.0質量%が好ましく、1.3質量%がより好ましく、1.5質量%がさらに好ましい。一方、上記マグネタイトの含有量の上限としては、所望の効果を得つつ当該消臭脱臭用鉄粉の製造コストを抑制する観点から、45質量%であってもよく、30質量%であってもよく、10質量%であってもよく、5質量%であってもよく、3質量%であってもよく、2質量%であってもよい。
【0025】
当該消臭脱臭用鉄粉は、ウスタイトを含むことが好ましい。ウスタイトは、鉄の空格子を多量に含んでいる。そのため、当該消臭脱臭用鉄粉は、ウスタイトを含むことで、比表面積を大きくすることができる。上記ウスタイトの含有量の下限としては、例えば吸着対象物質を静電的にトラップしやすくして、物理的吸着機能をより向上する観点から、1.0質量%が好ましく、1.2質量%がより好ましく、1.4質量%がさらに好ましい。一方、上記ウスタイトの含有量の上限としては、所望の効果を得つつ当該消臭脱臭用鉄粉の製造コストを抑制する観点から、40質量%であってもよく、30質量%であってもよく、10質量%であってもよく、5質量%であってもよく、3質量%であってもよく、2質量%であってもよい。
【0026】
当該消臭脱臭用鉄粉は、マグネタイトおよびウスタイトの一方のみを含んでいてもよいが、マグネタイトおよびウスタイトの両方を含んでいることが好ましい。
【0027】
酸素の含有量100質量部に対するマグネタイトの含有量の下限としては、200質量部であってもよく、220質量部であってもよい。一方、酸素の含有量100質量部に対するマグネタイトの含有量の上限としては、300質量部であってもよく、280質量部であってもよい。酸素の含有量100質量部に対するマグネタイトの含有量を上記範囲内に制御することで、当該消臭脱臭用鉄粉におけるマグネタイトの含有量を適切に調整しやすい。その結果、例えば吸着対象物質を静電的にトラップしやすくして、物理的吸着機能をより向上することができる。
【0028】
酸素の含有量100質量部に対するウスタイトの含有量の下限としては、180質量部であってもよく、200質量部であってもよく、210質量部であってもよい。一方、酸素の含有量100質量部に対するウスタイトの含有量の上限としては、280質量部であってもよく、260質量部であってもよく、240質量部であってもよい。酸素の含有量100質量部に対するウスタイトの含有量を上記範囲内に制御することで、当該消臭脱臭用鉄粉におけるウスタイトの含有量を適切に調整しやすい。その結果、例えば吸着対象物質を静電的にトラップしやすくして、物理的吸着機能をより向上することができる。
【0029】
当該消臭脱臭用鉄粉は、所望の効果を奏する範囲内で、鉄および酸素以外の元素を含んでいてもよい。一方で、当該消臭脱臭用鉄粉は、鉄および酸素以外の元素の含有量を小さくすることで、表面性状を均質に制御することができる。その結果、吸着対象物質の適用範囲を容易に大きくすることができるとともに、種々の吸着対象物質をより確実に吸着することができる。この観点から、当該消臭脱臭用鉄粉における鉄および酸素以外の元素の含有量(元素毎の含有量)は、それぞれ1.0質量%未満であってもよく、0.6質量%以下であってもよく、0.5質量%以下であってもよく、0.5質量%未満であってもよい。
【0030】
当該消臭脱臭用鉄粉において、鉄および酸素以外の元素の合計含有量の上限としては、好ましくは2.5質量%、より好ましくは2.1質量%、さらに好ましくは1.0質量%であり、1.0質量%未満であってもよい。このように、鉄および酸素以外の元素の合計含有量を小さくすることで、表面性状を均質に制御することができる。その結果、吸着対象物質の適用範囲を容易に大きくすることができるとともに、種々の吸着対象物質をより確実に吸着することができる。
【0031】
上記鉄および上記酸素以外の元素としては、例えば炭素(C)、マンガン(Mn)、硫黄(S)が挙げられる。当該消臭脱臭用鉄粉における炭素の含有量の上限としては、当該消臭脱臭用鉄粉の表層に、カルサイト(Ca(CO))等の酸化鉄以外の化合物が含まれるようになることで、比表面積と吸着機能との相関が取り難くなることを抑制する観点から、0.3質量%であってもよく、0.2質量%であってもよく、0.15質量%であってもよい。当該消臭脱臭用鉄粉におけるマンガンの含有量の上限としては、原料コスト抑制の観点から、0.3質量%であってもよく、0.25質量%であってもよい。当該消臭脱臭用鉄粉における硫黄の含有量の上限としては、例えば硫化水素等の硫黄元素を含む吸着対象物質に対する吸着性の低下を抑制する観点から、0.3質量%であってもよく、0.2質量%であってもよく、0.1質量%であってもよく、0.05質量%であってもよく、0.01質量%であってもよい。なお、当該消臭脱臭用鉄粉において、鉄および酸素以外の元素(場合によっては、鉄および酸素と、炭素、マンガンおよび硫黄以外の元素)は、不可避的不純物であってもよい。上記不可避的不純物の含有量の上限としては、0.3質量%であってもよく、0.2質量%であってもよく、0.1質量%であってもよい。
【0032】
当該消臭脱臭用鉄粉の比表面積の下限としては、吸着対象物質との接触面積を十分に大きくして、物理的吸着機能および化学的吸着機能の両機能を向上させる観点から、0.1m/gが好ましく、0.2m/gがより好ましく、0.3m/gがさらに好ましい。一方、上記比表面積の上限としては、当該消臭脱臭用鉄粉の表面性状の均質化を図りやすくする観点等から、例えば1.0m/gであってもよく、0.8m/gであってもよく、0.6m/gであってもよく、0.4m/gであってもよい。
【0033】
当該消臭脱臭用鉄粉の粒子径D50(鉄粉全体に対する粒度分布の中央値)の下限としては、例えば製造容易性等の観点から、40μmであってもよく、60μmであってもよく、70μmであってもよい。一方、上記粒子径D50の上限としては、比表面積を十分に大きくする観点から、250μmであってもよく、150μmであってもよく、100μmであってもよい。
【0034】
当該消臭脱臭用鉄粉は、例えば多数の消臭脱臭用鉄粉の集合体であってもよい。当該消臭脱臭用鉄粉は、吸着対象物質の種類を問わない適用範囲の広い消臭脱臭材として用いることができる。当該消臭脱臭用鉄粉における吸着対象物質としては、例えばアンモニア、トリメチルアミン、ピリジン等のアミン系ガス、硫化水素、メチルメルカプタン、二硫化メチル、プロパンチオール等の硫化物系ガス、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、n-吉草酸、イソ吉草酸等の有機系ガス、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド系ガスが挙げられる。
【0035】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。したがって、上記実施形態は、本明細書の記載および技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換または追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【実施例0036】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0037】
[No.1からNo.6]
表1に示す成分組成、粒子径D50および比表面積を有するNo.1からNo.6の消臭脱臭用鉄粉に対して、アンモニアガス、硫化水素ガス、酢酸ガスおよびイソ吉草酸ガスのそれぞれについての吸着特性を調査した。なお、No.1は溶解した鉄を高圧水によって解砕し急速冷却・酸化する方法によって製造された水アトマイズ粉であり、No.2は溶解し硫黄分を添加した鉄を高圧水によって解砕し急速冷却・酸化する方法によって製造された水アトマイズ粉である。また、No.3は転炉工程において湿式集塵装置で捕集された鉄粉であり、No.4はシュウ酸鉄等の鉄塩を真空中にて加熱することで得られた高酸素濃度の酸化鉄(II)であり、No.5およびNo.6は溶解した鉄を高圧水によって解砕し急速冷却・酸化した後還元する方法によって製造された水アトマイズ粉である。
【0038】
(成分組成)
No.1からNo.6についての成分組成は、X線回折法(XRD)によって測定した。なお、No.3において、炭素(C)、マンガン(Mn)、硫黄(S)については、鉄粉ごとのバラツキが大きいため測定していない。また、No.4については、鉄(Fe)、炭素(C)、マンガン(Mn)、硫黄(S)の成分毎の含有量は測定していない。さらに、表1において「-」は測定限界以下であったことを意味する。なお、No.1、No.2、No.4からNo.6において、鉄(Fe)、炭素(C)、マンガン(Mn)、硫黄(S)、酸素(O)以外は不可避的不純物である。
【0039】
(粒子径D50)
No.1、No.2、No.5、No.6の粒子径D50は、ロータップふるい振とう機によって篩分された粒度分布(非連続値)から計算によって算出した。また、No.3の粒子径D50は、レーザー回折散乱法による粒子径分布測定装置(MICROTRAC HRA 9320-X100)にて測定した。なお、No.4については、製品規格値を用いた。
【0040】
(比表面積)
No.1からNo.6の比表面積は、島津製作所製の「FlowSorbII 2300」を用いてJIS-Z8830:2013(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準拠して測定されるBET比表面積によって求めた。
【0041】
【表1】
【0042】
(吸着特性)
No.1からNo.6のそれぞれについて、アンモニアガス、硫化水素ガス、酢酸ガス、イソ吉草酸ガスを吸着対象物質として用い、以下の試験方法によって吸着特性を評価した。
【0043】
まず、エアバッグ(密閉容器)に検知管を接続した試験装置を作製した。次に、エアバッグ内に、No.1からNo.6の鉄粉を個別に200gずつ投入するとともに、アンモニアガス、硫化水素ガス、酢酸ガスおよびイソ吉草酸ガスと無臭空気との混合ガスを注入した。上記混合ガスにおけるアンモニアガス、硫化水素ガス、酢酸ガスおよびイソ吉草酸ガスの濃度[ppm]は、それぞれ100ppm、4ppm、30ppm、7.5ppmとした。さらに、30分後、2時間後および24時間後に、検知管にてガス濃度を測定し、各種吸着対象物質の濃度がどれだけ低下したかを評価した。この試験結果を表2に示す。また、アンモニアガスの濃度の低下と経過時間との関係を図1に、硫化水素ガスの濃度の低下と経過時間との関係を図2に、酢酸ガスの濃度の低下と経過時間との関係を図3に、イソ吉草酸ガスの濃度の低下と経過時間との関係を図4に示す。なお、表2において、「0」は検出下限値未満であることを意味する。また、アンモニアガスの検出下限値は0.5ppm、硫化水素ガスの検出下限値は0.05ppm、酢酸ガスの検出下限値は0.5ppm、イソ吉草酸ガスの検出下限値は0.38ppmである。
【0044】
【表2】
【0045】
[評価結果]
No.1からNo.4は、鉄を主成分とし、かつ酸素を0.5質量%以上含んでいる。その結果、No.1からNo.4は、アンモニアガス、硫化水素ガス、酢酸ガスおよびイソ吉草酸ガスのいずれに対しても、優れた吸着特性を有している。そのため、No.1からNo.4の鉄粉は、消臭脱臭用鉄粉として適していることが分かる。
【0046】
また、No.1からNo.4を比較すると、No.2は硫化水素ガスの吸着特性が低くなっている。これは、No.2は、Sを0.975質量%含んでいることに起因して、FeとSとの反応が十分に促進され難くなったためと推測できる。
【0047】
また、No.1からNo.4を比較すると、No.3は、転炉工程において捕集された鉄粉であることから、その表層にカルサイト(Ca(CO))等の酸化鉄以外の化合物が含まれていた。その結果、No.3は、比表面積が極めて大きい一方で、例えばアンモニアガスやイソ吉草酸ガスに対する吸着特性と比表面積とが十分に相関し難くなっていると推測される。
【0048】
また、No.1からNo.4を比較すると、No.1は他の鉄粉よりも比表面積は小さいが、吸着対象物質全般に対して十分な吸着特性を有している。なお、No.4は、優れた吸着特性を有しているが、酸素の含有量が極めて大きく、製造コスト等の観点から、課題がある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示の一態様に係る消臭脱臭用鉄粉は、汎用性の高い消臭脱臭用材料として適している。
図1
図2
図3
図4