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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026020126
(43)【公開日】2026-02-06
(54)【発明の名称】時計部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 13/02 20060101AFI20260129BHJP
【FI】
G04B13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2025123202
(22)【出願日】2025-07-23
(31)【優先権主張番号】24190559.5
(32)【優先日】2024-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファリーン, シルヴェイン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーシャー, フィリップ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最適化された機械的性質を有する時計部品を確実かつ強固に製造することを可能にする。
【解決手段】機械加工されるブロックを調達する、回転軸A周りの回転形状を有する、時計部品ブランクを形成する、ステップを含む、時計部品の製造方法であって、方法は、その方向が、回転軸に平行ではなく、回転軸と交差せず、機械加工されるブランクに対して接線ではない、オフセンタレーザビーム11を用いて、ブランクを機械加工する、ことからなるステップを含む、時計部品の製造方法。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工されるブロックを調達する、
回転軸(A)周りの回転形状を有する、時計部品ブランクを形成する、
ステップを含む、時計部品の製造方法であって、方法は、
その方向が、前記回転軸(A)に平行ではなく、前記回転軸(A)と交差せず、前記機械加工されるブランクに対して接線ではない、オフセンタレーザビームを用いて、前記ブランクを機械加工する、
ことからなるステップを含む、
時計部品の製造方法。
【請求項2】
オフセンタレーザビームを用いて前記ブランクを機械加工することからなる前記ステップは、フレア輪郭部分を含む、少なくとも1つの形状を形成し、前記ブランクの前記回転軸(A)に垂直な前記断面は、前記直角半径方向の寸法が、前記回転軸(A)から半径方向に離れる前記方向に増加する、形状を有する
請求項1に記載の時計部品の製造方法。
【請求項3】
オフセンタレーザビームを用いて前記ブランクを機械加工することからなる前記ステップは、レーザを採用し、その前記レーザビーム角度は、前記ブランクの前記回転軸(A)に対して、45から90°の間、更には70から90°の間、更には80から90°の間である、
請求項1または2に記載の時計部品の製造方法。
【請求項4】
オフセンタレーザビームを用いて前記ブランクを機械加工することからなる前記ステップは、極短パルスを生成するレーザを、特にフェムト秒パルスレーザを採用する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項5】
オフセンタレーザビームを用いて前記ブランクを機械加工することからなる前記ステップは、機械加工を必要とする前記ブランクの前記区域にアクセスするため、前記ブランクの自身の回転軸周りの旋回を、及びまたは前記レーザの移動を、採用する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項6】
前記機械加工されるブロックは、全体がセラミック製である、またはセラミックコーティングを含み、前記セラミックは、好ましくは焼結及び硬化工業用セラミックである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項7】
前記セラミックは、ジルコニアを主成分とする、特にイットリア安定ジルコニア、またはアルミナまたはジルコニア-アルミナ複合材料、または炭化ケイ素、または窒化ケイ素を主成分とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項8】
前記機械加工されるブロックは、500HV以上の、更には600HV以上の、更には700HV以上の、更には800HV以上の、更には1000HV以上の、更には1200HV以上の硬度を有する、剛体及びまたは脆弱及びまたは硬質材料製である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項9】
前記ブロックは、金属または金属合金、特にステンレス鋼、またはオーステナイト鋼、またはマルテンサイト鋼、またはアモルファスまたは部分的アモルファス金属合金、またはチタン合金Ti、またはタングステン、またはジルコニウム合金、またはサーメット、または前記素材の組み合わせ製である、
請求項1から5または8のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項10】
方法は、前記ブランクの前記回転軸を交差する前記方向にレーザビームを生成する、センタードレーザの助力により前記ブランクを機械加工することからなる、追加ステップを含み、センタードレーザの助力により前記ブランクを機加工することからなる当該ステップは、オフセンタレーザを用いて前記ブランクを機械加工することからなる前記ステップの前に、または同時に実行される、
請求項1から9のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項11】
センタードレーザを用いて前記ブランクを機械加工することからなる前記ステップは、連続的に旋回駆動される前記ブランク上に、連続的に作用するレーザにより、もたらされる、及びまたはセンタードレーザを用いて前記ブランクを機械加工することからなる前記ステップは、振動態様で駆動される前記ブランク上にもたらされる、
請求項10に記載の時計部品の製造方法。
【請求項12】
回転対称を有して成形された時計部品ブランクを形成することからなる前記ステップは、粉末とバインダの混合物の押出加工のステップ、またはマイクロインジェクション、及びまたはレーザ旋盤加工及び機械加工、または旋盤加工プロセスを用いた切削工具による旋盤加工及び機械加工のステップを採用する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
所定の表面粗さを達成するための、最終仕上げステップを含む、
請求項1から12のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項14】
一体鋳造時計部品の、特に少なくとも1つのシャフトと少なくとも1つのギヤ歯を含む、特に前記時計部品の前記深さにわたりまたは前記長さにわたり、直線状、螺旋状、渦巻き状、またはヘリングボーン歯列、を含む、ピニオンまたは歯付き歯車の、全体または一部を製造する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項15】
機械加工されるブロックを保持するよう構成された少なくとも1つの回転スピンドルと、請求項1から14のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法を採用するよう構成されたオフセンタされることが可能なレーザとを含む、機械加工装置。
【請求項16】
800HV以上の、または1000HV以上の、または1200HV以上の硬度を有する素材、特にジルコニアまたはアルミナを主成分とするセラッミック製の、時計部品であって、前記時計部品は、シャフトと少なくとも1つの歯を含む一体鋳造構成を有し、前記シャフトに垂直な平面上の少なくとも1つの歯の断面は、フレア輪郭部分を含む形状を有し、前記シャフトに垂直な前記断面は、前記直角半径方向の寸法が、前記回転軸から半径方向に離れる前記方向に増加する、形状を有する、時計部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計部品の製造方法に関する。本発明はまた、当該製造方法を採用する機械加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
時計部品の製造は、以下の要件間の、適切な妥協を必要とする。
- 時計への適用に課される、高い機械的要件に少なくとも取り組む、高性能素材、
- 大規模での使用を想定する、確実で強固である、十分に単純な、製造方法。
【0003】
第一の既存の解決策は、素材の除去により成形するために、初期ブロックに直接接触して作用する、機械的切削工具を必要とする旋盤加工プロセスによる金属時計部品の製造からなる。当該切削工具は、レーザビームがブロックに対して離れて作用することを可能にするレーザ機械加工とは対照的に、ブロックと直接接触する。このような方法は、高精度を、迅速に、且つ良好な制御下で、得ることを可能にする。しかしながら、使用する合金に応じて、金属は、磁場に敏感であるという欠点を有し、これは使用のいくつかの状況下において、小型時計の稼働に対する信頼性の問題に発展する可能性がある。更に、金属は、必ずしも十分に硬いとは限らず、その硬度を増加させるために、そして場合によりその表面状態を向上させるために、追加作業を必要とし、これは最終的に製造方法を複雑にすることになる。最後に、いくつかの硬質非磁性合金は、切削工具の過度に高い摩耗を引き起こすため、機械加工が難しいことが判明することもある。
【0004】
第二の既存の解決策は、第一解決策で使用される金属のいくつかの欠点を含まない、セラミックといった、非常に剛体の非磁性素材の選択に依拠する。しかしながら、セラミック時計部品の製造は、一般的にレーザ機械加工を含む、より複雑なプロセスを必要とし、これは伝統的機械加工と比較して、より制御が難しく、より遅いものである。実際、レーザ機械加工は、特に時計部品を正しく機能させるために必要な高精度の、複雑な立体形状を有する部品の、製造には用いることができない。例えば、特定の複雑形状を有する歯を機械加工することはできない。更に、脱進機ピニオン部品といったいくつかの製品は、別々に製造された後に、シャフト上に打ち込まれ、これは遊びの問題と、破損のリスクを生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、本発明の目的は、上述の要求に対する最大限良好な回答を構成し、既存の解決策を改善する、時計部品の製造の解決策を提案することである。
【0006】
より詳細には、本発明の目的は、最適化された機械的性質を有する時計部品を確実かつ強固に製造することを可能にする、時計部品製造解決策を定義することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明は、
機械加工されるブロックを調達する、
回転軸周りの回転形状を有する、時計部品ブランクを形成する、
ステップを含む、時計部品の製造方法であって、方法は、
その方向が、前記回転軸に平行ではなく、前記回転軸と交差せず、前記機械加工されるブランクに対して接線ではない、オフセンタレーザビームを用いて、前記ブランクを機械加工する、
ことからなるステップを含む、時計部品の製造方法に基づく。
【0008】
前記機械加工されるブロックは、全体がセラミック、好ましくは焼結及び硬化工業用セラミック製である。
【0009】
本発明はまた、機械加工されるブロックを保持するよう構成された少なくとも1つの回転スピンドルと、上述の時計部品の製造方法を採用するよう構成されたオフセンタされることが可能なレーザとを含む、機械加工装置に関する。
【0010】
本発明はまた、800HV以上の、または1000HV以上の、または1200HV以上の硬度を有する素材、特にジルコニアまたはアルミナを主成分とするセラッミック製の、時計部品であって、前記時計部品は、シャフトと少なくとも1つの歯を含む一体鋳造構成を有し、前記シャフトに垂直な平面上の少なくとも1つの歯の断面は、フレア輪郭部分を含む形状を有し、前記シャフトに垂直な前記断面は、前記直角半径方向の寸法が、前記シャフトから半径方向に離れる前記方向に増加する、形状を有する、時計部品に関する。
【0011】
本発明は、より詳細には、請求項により定義される。
【0012】
本発明の目的、特徴、及び利点は、添付の図面に関して与えられる、特定の実施形態についての以下の非限定的説明において、詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の製造方法により製造可能な、脱進機ピニオンの横断輪郭の、概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態にかかる製造方法の、第三ステップの第一段階の、脱進機ピニオンの機械加工段階の、概略図である。
図3図3は、本発明の当該実施形態にかかる製造方法の、第三ステップの第一段階の第一アプローチにかかる、脱進機ピニオンブランクのレーザ処理を、層毎に、概略的に図示する。
図4図4は、図3に図示する層の、レーザショットの、時間の分布と継続時間を図示する。
図5図5は、本発明の当該実施形態にかかる製造方法の、第三ステップの第一段階の第二アプローチにかかる、脱進機ピニオンブランクのレーザ処理を、概略的に図示する。
図6図6は、本発明の当該実施形態にかかる製造方法の、第三ステップの第二段階の第一アプローチにかかる、脱進機ピニオンブランクのレーザ処理を、模式的に図示する。
図7図7は、本発明の当該実施形態にかかる製造方法の、第三ステップの第二段階の第一アプローチにかかる、脱進機ピニオンブランクのレーザ処理を、模式的に図示する。
図8図8は、本発明の当該実施形態にかかる製造方法の、第三ステップの第二段階の第二アプローチにかかる、脱進機ピニオンブランクのレーザ処理を、概略的に図示する。
図9図9は、本発明の当該実施形態にかかる製造方法の、第三ステップの第二段階の第二アプローチにかかる、脱進機ピニオンブランクのレーザ処理を、概略的に図示する。
図10図10は、本発明の一実施形態にかかる、時計部品の斜視図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
説明を単純化するため、また慣習により、縦方向は、関連する時計部品、及びまたは具体的に時計部品の回転軸が延長する、主たる方向である。「横断」の形容詞は、縦方向に垂直な方向を指定するために用いられる。
【0015】
本発明は、横断輪郭が、即ち横断平面内にある輪郭が、換言すれば脱進機ピニオンの回転軸Aに垂直な平面上の断面が、図1に示される同一歯を含む、脱進機ピニオンの製造の文脈で説明される。このような歯形1は、直角半径方向の寸法oが、脱進機ピニオンのシャフトから半径方向に離れる方向(方向R)に、即ち歯の基部3からその頂部4に向かい延長する方向Rに、プラスに展開する、簡潔さのために「フレア部」と称される部分2を含むという特定の特徴の形状を有する。
【0016】
特に、このような歯の輪郭は、ピニオンの原始直径の下の歯の厚さの減縮を含む、オジーブ状形状を有してもよい。このようなピニオン歯の実用性は、動きの開始時に効率的に噛み合うように設計されたピニオンの原始直径を有する上部の結果としての、2つの噛み合う歯の間の最適化された初期相互作用を可能にするものである。同時に、歯の底の、即ち歯元の厚さの減少は、対向する歯からの適切な解放を保証し、運動の滑らか且つ正確な伝達を保証する。このような機構は、摩擦を最小化し、噛み合い組立体の耐久性の向上に有利に働く。
【0017】
本発明のコンセプトは、特にこのような歯形が効果的に製造されることを可能にする、レーザ機械加工の特定の種類に基づく、製造方法を用いることからなる。
【0018】
上述の歯形と同一歯を有する脱進機ピニオンの製造を可能にする製造方法は、以下に詳細に説明される。
【0019】
製造方法は、機械加工されるブロックを調達することからなる第一ステップを含む。当該機械加工されるブロックは、有利には、全体がセラミック製である。セラミックは、好ましくは、一体鋳造の機械加工されるブロック全体にわたり均質である。工業用セラミックを、そして好ましくは焼結工業用セラミックを用いることが有利である。「工業用」の形容詞は、選択されたセラミックの高性能性質に言及するものである。実際、工業用セラミックは、化学的不活性と非磁性に加えて、良好な機械的、熱的、更には電気的及びまたは生化学的特性を達成可能であり、そのため時計部品の使用に適切なものにさせるものである。ここで用いられる工業用セラミックは、精製合成粉末から得られるもので、例えば長石やカオリンといった天然鉱物粉末からではないという点で、その組成において、従来のセラミックとは異なるものである。例として、セラミックは、ジルコニアに、特にイットリア安定ジルコニア、アルミナ、ジルコニア-アルミナ複合材料、炭化ケイ素、または窒化ケイ素に基づいてもよい。代替的に、機械加工されるブロックは、セラミックコーティングを含む。
【0020】
セラミックは、ジルコニア及びまたはアルミナ及びまたはその他のタイプのセラミックに加えて、以下の要素を1以上含んでもよい。
- カーボンナノチューブ、
- グラフェン、
- フラーレン、
- 酸化イットリウム、
- 酸化セリウム、
- 炭化ジルコニウム、
- 炭化チタン、
- ホウ化ジルコニウム、
- 窒化ホウ素、
- 窒化チタン。
【0021】
より一般的に、機械加工されるブロックの素材は、有利には、500HV以上の、更には600HV以上の、更には700HV以上の、更には800HV以上の、更には1000HV以上の、更には1200HV以上の硬度を有する、剛体及びまたは脆弱及びまたは硬質材料である。
【0022】
セラミックの代替として、機械加工されるブロックは、金属または金属合金、特にステンレス鋼またはオーステナイト鋼またはマルテンサイト鋼、またはアモルファスまたは部分的アモルファス金属合金、またはチタン合金Ti、またはタングステンまたはジルコニウム合金であってもよい。代替的に、機械加工されるブロックの素材は、サーメットであってもよい。更なる代替として、素材は、上述の素材の組み合わせであってもよい。
【0023】
製造方法は、その後、回転軸A周りの回転形状を有する、時計部品ブランクを形成することからなる、第二ステップを採用する。
【0024】
当該ブランクは、粉末とバインダの混合物の押出成形やマイクロインジェクションといった、様々な伝統的方法で得ることができる。好ましい実施形態において、ブランクは機械加工により形成される。このため、機械加工されるブロックは、機械加工スピンドルに搭載され、回転駆動される。その後、ブランクの側面は、従来の態様での旋盤加工またはレーザ旋盤加工により輪郭形成される。特に、レーザ旋盤加工の場合、レーザビームは、約30μJの、著しいエネルギーを有してもよい。レーザビームは、正確に使用されることができる。
【0025】
製造方法は、その後、2つの段階を含んでもよい、ブランクを機械加工する第三ステップを採用する。当該機械加工ステップは、有利には、レーザを採用するが、レーザは、515nmの波長で、または代替的に1030nmの波長で機能する、レーザであってもよい。
【0026】
第一段階において、先行する第二ステップで得られたブランクは、ブランクを形成するために用いられたのと同じ装置であってもよいレーザ機械加工装置により、機械加工される。歳差運動無くして採用されるレーザは、好ましくは、ピコ秒または理想的にはフェムト秒パルスタイプ(500fsのオーダーの、更には400fs、更には400fsより小さいパルス長さ)の、極短パルスを生成するレーザである。これは、レーザが素材を加熱することを防止する。当該第一段階において、レーザビームは、ブランクの回転軸Aと同じ平面内で、回転軸Aに垂直にまたは実質的に垂直に、作用する。このため、これは「センタードレーザ」と称される。このため、レーザビームは、パーツをその長さにわたり機械加工し、特に将来の脱進機ピニオン歯の一部を切り取る。図2は、当該段階を概略的に示す。曲線10は、ブランクの初期形状を示す。曲線12は、レーザビーム11を用いた当該第一機械加工段階で得られた、歯の形状を示す。図2は更に、機械加工される仕上げられた歯の上述の特定のフレア部分2を図示する。当該第一機械加工段階において、歯の頂部4に向かう幅広部がレーザビーム11の通過を阻止し、フレア部分2の形成を防止するため、歯の当該フレア部分2は形成されることができない。図2は更に、左側及び右側の図により図示される、図2のレーザビーム11の移動が、2つの隣接する歯1の間に延長する全体積を機械加工することを可能にすることを示す。
【0027】
レーザ機械加工は、当該第一段階において、2つの異なるアプローチを採用することができる。
【0028】
第一アプローチを用いて、機械加工は、機械加工装置の回転スピンドル上で、自身の回転軸A周りに回転駆動されるブランクの周囲の全てにわたり連続的に実施される。レーザパルスを発生させるため、そして好ましくは歯の頂点部間で、素材を層毎に除去することで歯を形成するために、レーザショットが連続的に当てられる。スピンドルの回転速度は、例えば同一のレーザ機械加工装置を用いてブランクを形成するために用いられる場合と比較して、大きく減少される。レーザショットは、ブランクの回転と同期され、図2の曲線12で示される、要求される歯と空洞を形成する。図3及び4は、当該第一アプローチの使用を図示する。図3は、ブランクの回転中にレーザにより処理される、3つの別個の層に対応する、3つの曲線21、22、23を図示する。図4は、当該3つの層のそれぞれの、時間の分布とレーザショットの継続時間を図示する、換言すれば各層21、22、23の断続的レーザショットを図示する。3つの線のそれぞれの、それぞれの高(オン)部は、それぞれのレーザショット31、32、33を図示し、低(オフ)部は、素材が除去されず、このため形成される歯の部分を形成するためブランクに維持される、中断されたレーザ段階を図示する。
【0029】
第一アプローチの代替である、第二アプローチにおいて、レーザ機械加工は、各歯に個別に実施される。この場合、レーザは、連続するシーケンスで機能し、2つの歯の間の加工を可能にするように計算された振動を実施するため、ブランクに対して移動される。レーザは、素材を、層毎に除去する。このため、レーザの繰り返される通過は、振動の中心においてより深く加工するために用いられる。ブランクの振動の振幅は、要求されるパーツの形状、レーザフルエンスと焦点直径で表されるレーザの出力、といったいくつかの要因により決定される。振動角度は、好ましくは、レーザビーム11が2つの隣接する歯1の頂部4に到達するように調整される。図5は、より具体的に、当該第二アプローチの使用を図示する。例として、同一且つ対称的な10本の歯のピニオンを考える。約12μmのレーザ焦点直径と、約125μmの2つの歯の頂点部間の距離について、2つの歯1間の機械加工されるべきパーツの振動の角度は、歯の根部に中心を取り、約±16°である。追加の時間中に、当該角度を(図では8°に)減少させることで、とりわけ部分2を形成しないことにより、要求された最終輪郭と異なる、曲線12で示される最終輪郭を形成するために、2つの歯1の根部においてより深い加工を実施することが可能である。
【0030】
上述の通り、第一機械加工段階は、要求された最終輪郭を達成することなく、脱進機ピニオンの歯の第一切削を可能にする。
【0031】
このため、第三機械加工ステップは、レーザのアラインメントが、ブランクの回転軸からオフセットする、即ち発生されたレーザビーム11が、ブランクの回転軸と整列されず、また回転軸と交差するような態様に向けられていない、第二レーザ機械加工段階を採用する。レーザビームはまた、ブランクの端部に対して接線でない、即ち加工表面上に接線の入射角で用いられないことを注記する。レーザは、単に、本明細書の残部において、単純化された態様で、「オフセットレーザ」または「オフセンタレーザ」と称される。当該レーザの再配向は、歯1の、とりわけ詳細に上記したフレア部分2の、最終形状の非常に詳細な加工を可能にする。
【0032】
このため、レーザは、そのレーザビーム11が、歯1の幅広い上部に当たることなく、ブランクの原始直径下の歯1に到達可能なように、ブランクの回転軸の片側にオフセットする。このため、これは当該歯1の複雑な完全輪郭を仕上げるために必要な、深さと厚さの全てにわたる、素材の除去を可能にする。
【0033】
レーザの出力は、有利には、当該第二段階で減少される。例えば、パルスレーザエネルギーは、1から20μJの間で変動する。ブランクの回転速度も、同様に、当該特定の部分2の詳細な加工を可能にするため、著しく減少される。
【0034】
当該第二レーザ機械加工段階はまた、2つの異なるアプローチで採用されてもよい。
【0035】
第一アプローチにおいて、レーザビームが歯の端部からの妨害無くして無くして歯の根部に直接アクセスできるよう、ブランクは不動化され、レーザに対して向けられる。レーザは、その後、レーザビーム11の並進の運動により、またはレーザビームの旋回により、またはこれら2つの運動の組み合わせにより、回転軸から離れるようまたは回転軸に向かうよう移動される。図6は、当該第一アプローチを用いた第一歯の片側のレーザ機械加工の仕上げを図示する。図7は、2つの隣接する歯1の対称平面Pに対するレーザの対称的オフセンタリングの第一アプローチを用いた、隣接する第二歯の他方の側のレーザ機械加工の仕上げを図示し、当該対称平面Pは、ブランクの回転軸Aを含む。これら2つの図6、7において、左側の図と右側の図は、形成されるフレア部分2の高さでのレーザビーム11の運動を図示する。これら図から明らかなように、レーザビームは、図2から5を参照して説明されたレーザ機械加工とは異なり、ブランクの回転軸Aを交差する方向に向けられていない。レーザビームは、有利には、回転軸Aに垂直な、または回転軸Aに対して90°の角度の方向に向けられ、当該角度は、上述のように、回転軸Aを交差しないときにレーザビームにより定義される直線分の方向数学的ベクトルにより定義される。単純には、レーザは、回転軸Aに垂直な方向を有するということである。より一般的には、当該方向は、ブランクの回転軸Aに対して45から90°の間の、更には70から90°の間の、更には80から90°の間の角度である。
【0036】
第二アプローチを用いて、レーザビームは、歯の端部からの妨害なくして歯の根部への直接アクセスを有するように、ブランクに対して不動化され、ブランクに対して向けられる。このため、第一アプローチとは異なり、既に仕上げられ機械加工されてはならない歯の端部からの妨害なくしてフレア部分を形成するために機械加工されるブランクの区域への直接アクセスを提供するため、自身の回転軸A周りにわずかに旋回されるのは、ブランクである。図8は、当該第二アプローチを用いて第一歯の片側のレーザ機械加工の仕上げを図示する。図9は、当該2つの隣接する歯1の対称平面Pに対するブランクの対称的オフセンタリング後に、第二アプローチを用いた隣接する第二歯の他方の側のレーザ機械加工の仕上げを図示し、当該対称平面Pは、ブランクの回転軸Aを含む。これら2つの図8、9において、左側の図及び右側の図は、レーザビーム11に対するブランクの、特に形成されるフレア部分2の高さにおける、傾斜の変化を図示する。これら図から明らかなように、レーザビームは、「オフセンタレーザ」原理に基づき、第一アプローチを参照して説明するものと同様に、ブランクに対する向きを維持する。
【0037】
代替的に、2つのアプローチの組み合わせももちろん予見可能であり、ブランクの機械加工区域は、レーザビームとブランクとを協調的態様で回転軸周りに移動させることで攻撃される。当該第三アプローチの使用の例として、レーザに当該2つの隣接する歯の端部からの妨害なくして2つの隣接する歯の根部への交互の直接アクセスを与えるため、同時にブランクが自身の回転軸周りに旋回される場合に、レーザビームは2つの隣接する歯の根部を機械加工可能である。この組み合わせアプローチは、最終的には、2つの隣接する歯の半分を、同時にまたはほぼ同時に、即ち同一作業において、機械加工することを可能にする。このため、当該アプローチは、2つの先行するアプローチと比較して、第二段階の機械加工時間を減少させる利点を有する。
【0038】
全ての場合において、第三ステップは、時計部品の複雑形状が、特に少なくとも1つの歯の少なくとも1つのフレア部分が、簡単に得られることを可能にする、本発明のコンセプトの核を形成する上述の第二段階を採用する。当該第二段階は、レーザビームとブランクとが、要求された結果に適切な相対運動で駆動されるステップで終了し、レーザはオフセンタである、即ち入射レーザビームにより定義される直線分に対して、レーザの軸は整列されず、より一般的にはブランクの回転軸と平行ではなく、ブランクの回転軸と交差せず、機械加工されるブランクに対して接線ではない。
【0039】
当該第三ステップにおいて、第一段階は任意であることを注記する。機械加工される寸法に応じて、第一段階は省略可能である。このため、第一段階は任意である。
【0040】
一実施形態において、第三ステップは、先行する2つの段階を同時に、即ち、一方では中心に配置された軸を有するレーザを用いて、他方ではオフセットレーザを用いて、ブランクを同時に機械加工することを採用可能である。このため、これら2つの機械加工ステップは、同一作業中に実施可能である。
【0041】
第三ステップは、2つの隣接する歯の部分的機械加工のために説明された。もちろん、当該ステップは、ブランクの全ての歯に対して繰り返される。このため、ブランクは、全ての歯をオフセットレーザに提供するため、上述の各機械加工ステップ中に、及びまたはその後に、連続的にまたは非連続的に旋回されることができる。上述のように、オフセットレーザは、代替的に、または追加的に、ブランクの回転軸周りに移動される。
【0042】
レーザとブランクのそれぞれで選択された向きは、複雑な形状の簡単な形成を可能にするだけでなく、従来の方法に比べて改善された表面状態を得ることを可能にすることを注記する。第三ステップの終わりに、時計部品は仕上げられる、または半仕上げられる。にもかかわらず、製造方法は、任意で更に、所定の表面粗さを達成するために、最終仕上げステップを含む。
【0043】
例えば、このような最終仕上げステップは、好ましくは時計部品の表面の全てで、研磨媒体を用いて実施されてもよい。特に、当該ステップは、研磨剤混合物を用いた、好ましくは、一般的にはタンク内で実施される、震動、振動、または回転運動による、衝撃による機械的処理を含んでもよい。一または複数の時計部品を、特に大量にばらばらに、このようなタンク内に配置して、同時に処理してもよい。
【0044】
本発明を限定することなくして、当該最終仕上げステップは、バレル研磨、トライボ仕上げ、超微細サンドブラスト、または湿式噴霧により実施されてもよい。
【0045】
更に、当該最終仕上げステップは、時計部品の表面の全てにわたり、または代替的に表面の一部のみにわたり、有利には少なくとも時計部品の可視表面に、適用される。
【0046】
代替的に、当該最終仕上げステップは、方法の第三ステップに用いられるレーザ機械により直接実施されてもよい、研磨を含んでもよい。当該研磨は、上述の様々なレーザアブレーション段階(第三ステップ)中またはその後に、連続的にまたは非連続的に実施されてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、製造方法は、全て同一形状を有する歯を含む、脱進機ピニオンの製造について説明されてきた。もちろん、方法は、あらゆる歯付き時計部品またはあらゆる歯車列について用いられてもよい。更に、全ての場合において、歯は、全て、同一の輪郭または異なる輪郭を有してもよい。方法は、直線状、螺旋状、渦巻き状、またはヘリングボーン歯列、及びまたは非対称歯列、及びまたは部分的歯列、及びまたは時計部品の周囲にわたり、深さにわたり、または長さにわたり展開する歯列を含む、時計部品の製造に適している。全ての場合において、本発明は、あらゆる歯の、更にはより一般的には、フレア部分の形状がどのようなものであれ、少なくとも1つのフレア部分を、即ち回転軸から離れる方向に増加する直角半径方向の幅を有する部分を、有する横断輪郭を含む、あらゆる形状の、単純な製造を可能にするということで、特に有利である。
【0048】
本発明の方法は、多数の時計部品を形成するために使用可能である。特に、本発明は、ピニオンまたは歯付き歯車だけでなく、そのシャフト及びまたはギヤ歯の製造に有益である。実際、利点の一つは、方法が、別々のシャフトと歯付き部分の事後の組立という欠点を回避する、同一の時計部品のシャフトと歯付き部分の、一体鋳造態様での、即ち一体での同時製造を可能にすることである。
【0049】
このため、図10は、本発明にかかる、それぞれの端部に2つのピボット41と、歯付きピニオン42とを有する、シャフトを含む、一体の、一体鋳造時計部品40の図を図示する。図10は、図1のものに実質的に対応する、歯付きピニオン42の各歯1の横断輪郭を示す。
【0050】
このように、本製造方法は、噛み合いを最適化する、新たなシャフト及びまたは歯の形状の製造を可能にする。例えば、本製造方法は、一方向での巻き上げと、他の方向での噛み合い解除に最適化されたシャフトの構成を可能にする。
【0051】
本発明はまた、全体または部分的に、800HV以上の、更には1000HV以上の、更には1200HV以上の硬度を有する素材、特にジルコニアまたはアルミナを主成分とするセラミックからなる、時計部品そのものに関し、シャフトと少なくとも1つの歯を含む一体鋳造構成を有し、時計部品のシャフトに垂直な平面上の少なくとも1つの歯の断面は、フレア部分を含む形状を有する。
【0052】
本発明はまた、機械加工されるブロックを保持するよう構成された、少なくとも1つの回転スピンドルと、時計部品を製造する、上述の方法を実施するよう構成された、オフセットレーザであってもよいレーザを含む、機械加工装置に関する。
【0053】
本発明のおかげで、レーザは、1つの歯の形状に特定の、フライス工具を必要とすることなく、あらゆる素材を機械加工することを可能にする。フライス工具の使用は、工具が劣化し、定期的に交換されなければならないため、更に一層問題が生じる。このため、部品と、より具体的にはフレア歯の「カスタマイズされた」デザインの製造が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 歯
2 フレア部分
3 基部
4 頂部
11 レーザビーム
A 回転軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】