(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026020338
(43)【公開日】2026-02-06
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20260129BHJP
B43K 7/00 20060101ALI20260129BHJP
【FI】
B43K3/00 H
B43K7/00 100
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025205480
(22)【出願日】2025-11-27
(62)【分割の表示】P 2021129911の分割
【原出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 精一
(57)【要約】
【課題】螺合可能な2つの円筒部品を有する筆記具において、過剰な締め込みを行ったとしても、雄ねじと雌ねじの乗り越えを防止し、且つ、円筒部品の破損を防止可能な筆記具を提供する。
【解決手段】筆記具1が、第1係止部2b及び少なくとも1つの第2係止部2cと雄ねじが形成された雄ねじ部2aとを有する前軸2と、第1被係止部3b及び少なくとも1つの第2被係止部3cと雄ねじと螺合する雌ねじが形成された雌ねじ部3aとを有する後軸3と、を具備し、前軸2及び後軸3の組み立てが完了した状態で、前軸2の第1係止部2bと後軸3の第1被係止部3bとが係止するように構成され、組み立て完了後の締め込み時にのみ、前軸2の少なくとも1つの第2係止部2cと後軸3の対応する少なくとも1つの第2被係止部3cとが係止するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの円筒部品、例えば前軸及び後軸について、前軸の後端部の外周面に形成された雄ねじと、後軸の前端部の内周面に形成された雌ねじとを螺合し、前軸及び後軸を連結することが一般に行われている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、後軸の前端面が前軸の外周面に設けられた段部に当接して係止するまで、前軸に対して後軸を一方に回転させることによって、連結が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後軸が係止した後、前軸に対して後軸を一方にさらに回転させるという過剰な締め込みを行うと、弾性変形を伴いながら、雄ねじ及び雌ねじの螺合によって後軸が前進しようとするものの、前軸の段部との係止によって前進が阻止される。このとき、雌ねじが形成された後軸の前端部は、軸方向の圧縮応力を受ける一方で、雄ねじが形成された前軸の後端部は、軸方向の引張応力を受ける。その結果、雄ねじ及び雌ねじのねじ山の各々が、相対的に軸方向に移動して強く摩擦し、破損してしまう虞がある。さらには、雄ねじ及び雌ねじの軸方向の相対的な移動に際し、雄ねじが雌ねじを乗り越える虞がある。さらには、雄ねじが雌ねじを乗り越える際に、外側に配置された後軸の前端部が径方向外方に膨張し、且つ、より内側に配置された前軸の後端部が径方向内方に収縮することで、前軸又は後軸の端部が破損してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、螺合可能な2つの円筒部品を有する筆記具において、過剰な締め込みを行ったとしても、雄ねじと雌ねじの乗り越えを防止し、且つ、円筒部品の破損を防止可能な筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、第1係止部及び少なくとも1つの第2係止部と、雄ねじが形成された雄ねじ部とを有する第1の円筒部品と、第1被係止部及び少なくとも1つの第2被係止部と、前記雄ねじと螺合する雌ねじが形成された雌ねじ部とを有する第2の円筒部品と、を具備し、前記第1の円筒部品及び前記第2の円筒部品の組み立てが完了した状態で、前記第1の円筒部品の前記第1係止部と前記第2の円筒部品の前記第1被係止部とが係止するように構成され、組み立て完了後の締め込み時にのみ、前記第1の円筒部品の前記少なくとも1つの第2係止部と前記第2の円筒部品の対応する前記少なくとも1つの第2被係止部とが係止するように構成されていることを特徴とする筆記具が提供される。
【0007】
前記第1係止部と前記少なくとも1つの第2係止部とが、軸方向において前記雄ねじ部に対して互いに反対側に配置され、前記第1被係止部と前記少なくとも1つの第2被係止部とが、軸方向において前記雌ねじ部に対して互いに反対側に配置されていてもよい。前記第1の円筒部品及び前記第2の円筒部品の組み立て完了時に、前記第1の円筒部品の前記少なくとも1つの第2係止部と前記第2の円筒部品の対応する前記少なくとも1つの第2被係止部とが、軸方向において0.5mm以下だけ離間していてもよい。前記少なくとも1つの第2係止部及び対応する前記少なくとも1つの第2被係止部の少なくとも1つが、縦断面において軸方向に対して傾斜していてもよい。前記円筒部品の一方が軸筒の前軸であり、記円筒部品の他方が軸筒の後軸であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、螺合可能な2つの円筒部品を有する筆記具において、過剰な締め込みを行ったとしても、雄ねじと雌ねじの乗り越えを防止し、且つ、円筒部品の破損を防止可能な筆記具を提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による筆記具の縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された前軸及び後軸の嵌合部の拡大縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された前軸の後端部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0011】
図1は、本発明の実施形態による筆記具1の縦断面図である。筆記具1は、ノック式筆記具である。
【0012】
筆記具1は、第1の円筒部材である前軸2と、前軸2の後方に配置された、第2の円筒部材である後軸3と、後軸3の後方に配置された内筒4とを備えた軸筒5を有している。また、筆記具1は、軸筒5内に配置され且つ一端に筆記部6aを備えた筆記体であるリフィル6を有している。本実施形態では、リフィル6はボールペンのリフィルである。本明細書では、筆記具1の軸方向において、筆記部6a側を「前」側と規定し、筆記部6aとは反対側を「後」側と規定する。
【0013】
内筒4には、クリップ保持部4aを介して、金属線材からなるクリップ部材7が取り付けられている。軸筒5内には、リフィル6を後方へ付勢するリターンスプリング8と、リフィル6の後方に配置された回転子9とが配置されている。回転子9の後部は、操作部であるカバー部材10によって覆われている。軸筒5内、特に前軸2の前半部分には、金属材料から形成された筒状の錘部材である錘体11が配置されている。錘体11の前端部は、前軸2の前端開口から突出している。突出する錘体11の前端部は、テーパー状に形成された前軸2の前端部と連続的になるようにテーパー状に形成され、意匠上の一体性を呈している。リターンスプリング8は、前端が錘体11の内部に設けられた段部と係止することによって支持され、リフィル6を後方へ付勢している。
【0014】
リターンスプリング8の付勢力に抗してカバー部材10を前方に押圧するノック操作を行うことによって、回転子9を介して、リフィル6の筆記部6aが軸筒5の先端から突出した筆記状態(図示せず。)と筆記部6aが軸筒5内に没入した非筆記状態(
図1)とが切り替えられる。
【0015】
図2は、
図1に示された前軸2及び後軸3の嵌合部の拡大縦断面図である。前軸2は、後端部の外周面において、雄ねじが形成された雄ねじ部2aを有している。後軸3は、前端部の内周面において、雌ねじが形成された雌ねじ部3aを有している。後軸3の雌ねじ部3aよりも後方の内周面には、
図2に示されるような縦断面において軸方向に対して傾斜し且つ前方に面する当接面3cを備えた環状突起3dが形成されている。
【0016】
前軸2及び後軸3は、第1被係止部である後軸3の前端面3bが、第1係止部である前軸2の外周面に設けられた段部2bに当接して係止するまで、前軸2に対して後軸3を一方に回転させることによって、螺合が完了し、組み立てが完了する。組み立ての完了又は螺合の完了とは、前軸2及び後軸3が軸方向に弾性変形することなく、前軸2の段部2bと後軸3の前端面3bとがちょうど当接している状態をいう。言い換えると、前軸2及び後軸3の組み立てが完了した状態は、前軸2及び後軸3は、略設計上の寸法の通りの位置関係で嵌合している。前軸2及び後軸3の組み立てが完了した状態で、第2係止部である前軸2の後端部2cと第2被係止部である後軸3の当接面3cとは、
図3に示されるように間隔Dだけ離間している。
【0017】
前軸2及び後軸3の組み立て完了後に、前軸2に対して後軸3を一方にさらに回転させる過剰な締め込みを行うと、弾性変形を伴いながら、雄ねじ及び雌ねじの螺合によって後軸3が前進しようとする。しかしながら、前軸2に対する後軸3の相対的な前進は、後軸3の前端面3bと前軸2の段部2bとの係止によって阻止される。このとき、雌ねじが形成された後軸3の端部は、軸方向の圧縮応力を受ける一方で、雄ねじが形成された前軸2の端部は、軸方向の引張応力を受ける。その結果、前軸2の後端部及び後軸3の前端部が弾性変形して前軸2の後端部2cと後軸3の当接面3cとが接近し、係止する。
【0018】
すなわち、過剰な締め込みによる前軸2に対する後軸3の前進は、前軸2の段部2bと後軸3の前端面3bとの係止に加え、前軸2の後端部2cと後軸3の当接面3cとの係止によっても阻止される。前軸2及び後軸3が、軸方向に離間した二カ所で係止することによって、前軸2の後端部及び後軸3の前端部の過剰な弾性変形が抑制される。それによって、雄ねじ部2aと雌ねじ部3aの乗り越え、さらには、雄ねじ又は雌ねじの破損が防止され、さらには前軸2又は後軸3の端部の破損が防止される。
【0019】
前軸2及び後軸3の組み立てが完了した状態における、第2係止部である前軸2の後端部2cと第2被係止部である後軸3の当接面3cとの間隔Dは、0.5mm以下であることが好ましい。間隔Dが0.5mmよりも大きいと、さらなる締め込みによって第2係止部及び第2被係止部が互いに係止するまでの間に雄ねじ部2aと雌ねじ部3aの乗り越えや、前軸2及び後軸3が破損してしまう虞がある。
【0020】
上述した実施形態では、第2係止部及び第2被係止部は一組であったが、さらに別の箇所に第2係止部及び第2被係止部を設けてもよい。例えば、
図2において、前軸2の雄ねじ部2aと後端部2cとの間にさらなる第2係止部として別の段部を設け、後軸3の雌ねじ部3aと環状突起3dとの間にさらなる第2被係止部として別の環状突起を設けてもよい。この場合、前軸2の後端部2cと後軸3の当接面3cとの係止と同時に、当該係止よりも前に、又は、当該係止よりも後に、さらなる第2係止部とさらなる第2被係止部とが係止するようにしてもよい。第2係止部及び第2被係止部をさらに追加して設けてもよい。要するに、組み立て完了後の締め込み時にのみ、前軸2の少なくとも1つの第2係止部と後軸3の対応する少なくとも1つの第2被係止部とが係止するように構成してもよい。
【0021】
上述した実施形態では、第1係止部と少なくとも1つの第2係止部とが、軸方向において雄ねじ部2aに対して互いに反対側に配置され、第1被係止部と少なくとも1つの第2被係止部とが、軸方向において雌ねじ部3aに対して互いに反対側に配置されている。それによって、弾性変形の影響が、雄ねじ部2a又は雌ねじ部3aに及ぶことが防止される。
【0022】
上述した実施形態では、前軸2の段部2bが第1係止部であり、後軸3の前端面3bが第1被係止部であり、前軸2の後端部2cが第2係止部であり、後軸3の当接面3cが第2被係止部であった。しかしながら、前軸2の後端部2cを第1係止部とし、後軸3の当接面3cを第1被係止部として、組み立て完了時に当接するように、前軸2及び後軸3を構成してもよい。この場合、前軸2の段部2bが第2係止部となり、後軸3の前端面3bが第2被係止部となる。第1係止部及び第1被係止部の一方、又は、第2係止部及び第2被係止部の一方を、縦断面において軸方向に対して傾斜する斜面として構成にしてもよい。これらを斜面とすることによって、斜面と当接する対応する部材を、係止時に径方向内方又は径方向外方へ僅かばかり弾性変形させ、破損を防止することができる。なお、第1係止部及び第1被係止部、並びに、第2係止部及び第2被係止部は、互いに係止可能な限りにおいて任意に構成してもよい。
【0023】
ところで、錘体11は、金属材料から形成され、且つ、前軸2の前半分、すなわち軸筒5全体としては比較的前方に配置されていることから、筆記具1の重心は、筆記具1の全長の半分よりも前方に位置している。使用者は通常、筆記具1の全長の半分よりも前方の部分を指で把持して筆記を行う。筆記動作は、指で把持した筆記具1の部分近傍を中心とした円運動又は揺動運動の組み合わせで行われる。このとき、筆記具1の全長の中央部分に筆記具1の重心があると、指で把持した位置、すなわちグリップ部との関係で、筆記時における筆記具のバランスが悪く、安定感に欠く場合がある。
【0024】
グリップ部は、一般的に筆記具1の先端から35mmの位置である。グリップ部における慣性モーメントが小さすぎると、少し力を加えただけで、筆記部6aが大きく移動してしまい、安定感に欠ける。そのため、グリップ部における慣性モーメントがより大きいと、筆記動作時に筆記部6aの位置を制御し易くなるため好ましい。また、筆記具1において、グリップ部よりも前方に位置する部分の重量配分が大きい方が、すなわち低重心である方が、安定した筆記動作が可能となるため好ましい。具体的には、筆記具1の先端から35mmの位置回りの慣性モーメントが30000gf・mm2以上であり、且つ、筆記具1の先端から35mmよりも前方に位置する部分の重量が、筆記具1全体の25%以上を占めることが好ましい。
【0025】
上述したような効果的な重心の位置や慣性モーメントは、錘体11の大きさ、形状及び重さを調節することによって実現可能である。錘体11は、金属材料、例えば真鍮から形成されるが、任意の材料、例えば金属及び樹脂の混合材料で形成してもよい。特に錘体11を真鍮で形成すると、低重心でより快適な書き心地が得られるだけでなく、その色や艶感によって、前軸2から突出した錘体11の前端部がワンポイントとなった意匠性を高めることができる。すなわち、前軸2から錘体11の前端部が突出することによって、従来の樹脂製の筆記具と異なり、見る者に対してよりシャープでスマート且つ高級感のある印象を与えることができる。錘体11は、上任意の形状であってもよく、例えば、錘体11は筒状の部材ではなく、C字形の横断面形状を有する部材であってもよい。
【0026】
上述した実施形態では、筆記具が、軸筒の後端部に操作部が設けられたノック式筆記具であったが、前軸及び後軸が螺合する限りにおいて、任意の筆記具であってもよい。例えば、本発明の実施形態による筆記具は、軸筒の側面に操作部が設けられたノック式筆記具であってもよく、複数のフィルを備えた多芯式筆記具であってもよく、キャップ式筆記具であってもよい。また、第1係止部及び少なくとも1つの第2係止部と、雄ねじが形成された雄ねじ部とを有する第1の円筒部品と、第1被係止部及び少なくとも1つの第2被係止部と、雄ねじと螺合する雌ねじが形成された雌ねじ部とを有する第2の円筒部品とを具備する限りにおいて、その他の筆記具用の部品、例えば、口先部材及び前軸や、消しゴム等のホルダー及び回転スリーブ等の組み合わせに、本発明を適用してもよい。
【0027】
リフィル6は、ボールペンのリフィル以外にマーキングペン、タッチペン、消しゴム等のその他種類のリフィルであってもよい。また、操作部であるカバー部材10の一部又は全部を、筆記具1による筆跡を消去する消去部としてもよい。操作部として、回転子9及びカバー部材10間に、ノック部材を配置してもよい。この場合、ノック部材の一部又は全部を、ノック式筆記具による筆跡を消去する消去部としてもよく、ノック部材に消去部材を設けてもよい。
【0028】
リフィル6は、熱変色性インクが収容されたボールペンであってもよい。ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクをいう。熱変色性インクを用いた熱変色性筆記具では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して消去部である摩擦部材によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 筆記具
2 前軸
2a 雄ねじ部
3 後軸
3a 雌ねじ部
4 内筒
5 軸筒
6 リフィル
7 クリップ部材
8 リターンスプリング
9 回転子
10 カバー部材
11 錘体