(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026021222
(43)【公開日】2026-02-10
(54)【発明の名称】ピロール重合用電解液及びそれを用いた固体電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20260203BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20260203BHJP
【FI】
H01G9/028 G
H01G9/00 290H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024199035
(22)【出願日】2024-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2024122357
(32)【優先日】2024-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】株式会社カーリット
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 井手・小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天間 知久
(72)【発明者】
【氏名】井上 和文
(72)【発明者】
【氏名】村田 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】金本 和之
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高導電性を持ったポリピロールを与えるピロール重合用電解液及びそれを用いる静電容量が高くESRが低く耐久性に優れた固体電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】ピロール重合用電解液は、ピロールと支持電解質とが、溶媒に溶解されてなるピロール重合用電解液において、一般式(1)(Rはアルキレン基を表し、Aはスルホン酸基を除く置換基を有する芳香族)で表される繰返し単位及び所定の一般式で表される繰返し単位を含む共重合体からなる支持電解質と、スルホン酸基又はカルボキシ基の何れかの電子求引基が1分子に2個以上置換されてなる芳香族スルホン酸化合物からなる支持電解質と、を含有する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロールと支持電解質とが、溶媒に溶解されてなるピロール重合用電解液において、下記一般式(1)で表される繰返し単位及び下記一般式(2)で表される繰返し単位を含む共重合体からなる支持電解質(D1)と、
スルホン酸基又はカルボキシ基のいずれかの電子求引基が1分子に2個以上置換されてなる芳香族スルホン酸化合物からなる支持電解質(D2)と、
を含有するピロール重合用電解液であって、
支持電解質(D1)において、一般式(2)で表される繰返し単位が、10モル%以上70モル%以下であることを特徴とするピロール重合用電解液。
【化1】
((1)式において、Rはアルキレン基を表し、Aはスルホン酸基を除く置換基を有していてもよい芳香環を表す。nは1又は2を表す。)
【化2】
((2)式において、Rはアルキレン基を表し、Bは芳香環を表す。nは1又は2を表す。)
【請求項2】
支持電解質(D1)と支持電解質(D2)の質量比が、5:95~80:20であることを特徴とする請求項1に記載のピロール重合用電解液。
【請求項3】
溶媒が、水を含むものである請求項1に記載のピロール重合用電解液。
【請求項4】
前記スルホン酸基又はカルボキシ基のいずれかの電子求引基が1分子に2個以上置換されてなる芳香族スルホン酸化合物が、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、4-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸ジメチル及び5-スルホサリチル酸からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のピロール重合用電解液。
【請求項5】
更に、下記一般式(4)~(6)で表される化合物及び脂肪族環状アミン化合物からなる群から選ばれる添加剤の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のピロール重合用電解液。
【化3】
(式(4)~(6)中、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい、水素原子、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基又はフェニル基を示す。)
【請求項6】
誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、請求項1から3のいずれか1つに記載のピロール重合用電解液中でポリピロール層を電解重合により形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項7】
誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、予備導電層を形成する工程と、前記予備導電層上に請求項1から3のいずれか1つに記載のピロール重合用電解液中でポリピロール層を電解重合により形成する工程とを有する固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高導電性を示すポリピロール層を形成可能なピロール重合用電解液、及びそれを使用し、ポリピロールからなる固体電解質層が形成された固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化に伴い、これらに使用されるコンデンサは、小型大容量であること、高耐久性であること、高周波領域において低インピーダンスを示すこと、等価直列抵抗(以下、「ESR」と略記する。)および誘電損失(以下、「tanδ」と略記する。)特性に優れること等が要求されている。
【0003】
このような要求に対応すべく、電解液を真の陰極として使用した従来の電解液型コンデンサとは異なり、導電性高分子を固体電解質層とした固体電解コンデンサが開発されている。
【0004】
上記固体電解コンデンサは一般的に、エッチング処理により表面積を拡大した弁作用金属箔、あるいは弁作用金属の粒子を焼結させることにより表面積を拡大した焼結体を、化成処理により該表面に誘電体酸化皮膜を形成させ、次いで、該誘電体酸化皮膜上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成し、カーボン及び銀ペーストからなる導電層を順次形成した後、リードフレームなどの外部端子に接続し、トランスファーモールド等による外装を施して製品化されたものが知られている。
【0005】
固体電解コンデンサのESRは、コンデンサを構成する各部材の固有抵抗と、各部材間に発生する接触抵抗からなる合成抵抗が主要な因子となっており、それらの改善によるESRの低減が望まれている。
【0006】
特許文献1に固体電解質層として、エチレンジオキシチオフェン又はアルキル化エチレンジオキシチオフェンの電解重合層を形成する際に、スルホン化度が3~9%のスルホン化ポリエステルをドーパントアニオンとすることを特徴とした固体電解コンデンサの製造方法が開示されている。
【0007】
しかし、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェンの電解重合膜は、均質な重合膜の生成が困難で、表面に突起状のバリが生じやすいため、得られる固体電解コンデンサの耐電圧や漏れ電流(LC)特性に問題が生じるという課題があった。また、ピロールの重合において、特許文献1に開示されたようなスルホン化度の低いスルホン化ポリエステルをドーパントアニオンとして使用した場合、得られるポリピロール層の電導度が不十分となり、固体電解コンデンサの静電容量やESRを改善することが困難であった。
【0008】
特許文献2にピロールの電解重合工程を有する固体電解コンデンサの製造において、支持電解質としてアントラキノン2-スルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸塩類、ベンゼンスルホン酸塩類等の芳香族スルホン酸化合物を用いたピロール重合用電解液を使用した固体電解コンデンサの製造方法が提案されているが、得られる固体電解コンデンサの耐久性が不十分であり、改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-004758号公報
【特許文献2】特開2011-236339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高導電性を持ったポリピロールを与えるピロール重合用電解液を提供することである。また、該ピロール重合用電解液を用い、静電容量が高く、ESRが低く、耐久性に優れた固体電解コンデンサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のスルホン化度を有するスルホン化ポリエステルを第1の支持電解質として用い、さらに、第2の支持電解質として特定の芳香族スルホン酸化合物を含むピロール重合用電解液、及びそれを用いて作製した固体電解コンデンサが上記課題を解決することを見出し、完成するに至った。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
第一の発明は、ピロールと支持電解質とが、溶媒に溶解されてなるピロール重合用電解液において、下記一般式(1)で表される繰返し単位及び下記一般式(2)で表される繰返し単位を含む共重合体からなる支持電解質(D1)と、
スルホン酸基又はカルボキシ基のいずれかの電子求引基が1分子に2個以上置換されてなる芳香族スルホン酸化合物からなる支持電解質(D2)を含有するピロール重合用電解液であって、
支持電解質(D1)において、一般式(2)で表される繰返し単位が、10モル%以上70モル%以下であることを特徴とするピロール重合用電解液である。
【0014】
【化1】
((1)式において、Rはアルキレン基を表す。Aはスルホン酸基を除く置換基を有していてもよい芳香環を表す。nは1又は2を表す。)
【0015】
【化2】
((2)式において、Rはアルキレン基を表す。Bは芳香環を表す。nは1又は2を表す。)
【0016】
第二の発明は、支持電解質(D1)と支持電解質(D2)の重量比が5:95~80:20であることを特徴とする第一の発明に記載のピロール重合用電解液である。
【0017】
第三の発明は、溶媒が水を含むものである第一又は第二の発明に記載のピロール重合用電解液である。
【0018】
第四の発明は、前記スルホン酸基又はカルボキシ基のいずれかの電子求引基が1分子に2個以上置換されてなる芳香族スルホン酸化合物が、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、4-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸ジメチル及び5-スルホサリチル酸からなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、第一から第三の発明のいずれか1つに記載のピロール重合用電解液である。
【0019】
第五の発明は、更に、下記一般式(4)~(6)で表される化合物及び脂肪族環状アミン化合物からなる群から選ばれる添加剤の1種または2種以上を含有することを特徴とする第一から第四の発明のいずれか一つに記載のピロール重合用電解液である。
【0020】
【化3】
(式(4)~(6)中、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい、水素原子、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基又はフェニル基を表す。)
【0021】
第六の発明は、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、第一から第五の発明のいずれか1つに記載のピロール重合用電解液中でポリピロール層を電解重合により形成する工程を少なくとも有する固体電解コンデンサの製造方法である。
【0022】
第七の発明は、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、予備導電層を形成する工程と、前記予備導電層上に第一から第五の発明のいずれか1つに記載のピロール重合用電解液中でポリピロール層を電解重合により形成する工程とを有する固体電解コンデンサの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電導度に優れ、固体電解コンデンサの固体電解質に好適なポリピロール層を与えるピロール重合用電解液を提供することができる。また、従来の固体電解コンデンサと比較して著しく優れた静電容量とESR特性を示し、耐湿熱性に優れた固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明のピロール重合用電解液について説明する。
【0025】
本発明のピロール重合用電解液のベースは、ピロールと支持電解質とが、溶媒に溶解されてなるものである。支持電解質はドーパントを放出可能なものである。また、ピロールモノマーは導電性高分子単量体である。
【0026】
本発明のピロール重合用電解液は、ピロールと支持電解質とが、溶媒に溶解されてなるピロール重合用電解液において、更に下記一般式(1)で表される繰返し単位及び下記一般式(2)で表される繰返し単位を含む化合物を含む支持電解質(D1)及びスルホン酸基又はカルボキシ基のいずれかの電子求引基が1分子に2個以上置換されてなる芳香族スルホン酸化合物を含む支持電解質(D2)と、を含有するものである。
【0027】
ピロール重合用電解液の前記溶媒としては、水、あるいはメタノールやエタノール、イソプロパノール等の水溶性有機溶剤の単独溶媒や、水と水溶性有機溶剤の混合溶媒が挙げられる。水と水溶性有機溶剤を含むものは30質量%以下の割合で水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。これら溶媒の中でも水を含む溶媒が好ましく、水を単独溶媒としたものがより好ましい。
【0028】
本発明のピロール重合用電解液に含まれる支持電解質(D1)を構成する繰り返し単位のうち、一般式(1)で表すものについて説明する。
【0029】
【化4】
((1)式において、Rはアルキレン基を表す。Aはスルホン酸基を除く置換基を有していてもよい芳香環を表す。nは1又は2を表す。)
【0030】
(1)式におけるRのアルキレン基としては、特に限定されないが、好ましくは炭素数1~6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。
【0031】
(1)式におけるAの芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環が例示でき、特にベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。
【0032】
また、Aが有していてもよい、スルホン酸基を除く置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~4のアルキル基である。なお、Aがスルホン酸基を除く置換基を有していてもよいとは、Aがスルホン酸基以外の置換基を有していてもよいことを意味する。
【0033】
支持電解質(D1)が上記一般式(1)で表される繰り返し構造を有することにより、ピロールとの相容性が良好になるため、得られるポリピロールの機械的特性を向上させる作用がある。
【0034】
本発明のピロール重合用電解液に含まれる支持電解質(D1)を構成する繰り返し単位のうち、一般式(2)で表すものについて説明する。
【0035】
【化5】
((2)式において、Rはアルキレン基を表す。Bは芳香環を表す。nは1又は2を表す。)
【0036】
(2)式におけるRのアルキレン基としては、特に限定されないが、好ましくは炭素数1~6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。
【0037】
(2)式におけるBの芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環が例示でき、特にベンゼン環が好ましい。
【0038】
支持電解質(D1)が上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有することにより、上記一般式(1)の繰り返し単位と同様に、ピロールとの混和性、相溶性が良好になるため、ポリピロールの機械的特性を向上させる。また、スルホン酸基を有しているため、ポリピロールのドーパントアニオンとして機能し、導電性を向上させる作用がある。
【0039】
このような上記一般式(1)と(2)で表される繰り返し単位を有する共重合体は、例えば、多価カルボン酸成分(上記一般式(1)と(2)においてAとカルボン酸残基に相当する成分)とグリコール成分(上記一般式(1)と(2)においてR-Oに相当する成分)をそれぞれエステル交換反応させて得ることができる。また、上記一般式(1)と(2)の割合は、例えば、上記多価カルボン酸成分とグリコール成分のエステル交換反応時の仕込み量により調整することができる。
【0040】
上記一般式(1)と(2)で表される繰り返し単位を有する共重合体において、一般式 (2)で表される繰り返し単位は、10~70モル%含まれていることが好ましく、15~65モル%がより好ましい。この範囲であると、得られるポリピロールの導電性及び耐久性が特に優れるため好ましい。
この共重合体中の一般式(2)のスルホン酸基を有する繰り返し単位のモル百分率をスルホン化率とすると、スルホン化率は、少なくとも10%以上であることが好ましく、15%~65%がより好ましく、に20~60%が好ましい。スルホン化率が10%に満たない場合、十分な導電性が得られない場合がある。
【0041】
上記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位を有する共重合体として、特に好ましいものは下記一般式(1a)および/または(1b)並びに(2a)で示される繰り返し単位を有する共重合体である。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
これらの共重合体において、一般式(2a)で示される繰り返し単位は、少なくとも10モル%含まれていることが好ましく、より好ましくは15~65モル%、特に好ましくは20~60モル%である。すなわち、(2a)のスルホン酸基を有する繰り返し単位のモル百分率をスルホン化率とすると、スルホン化率は、少なくとも10%以上であることが好ましく、15~65%がより好ましく、20~60%が特に好ましく、35~45%が最も好ましい。スルホン化率が10%に満たない場合、得られるポリピロールの十分な導電性が得られない場合がある。上記繰り返し単位を有するスルホン化率が40%の共重合体として、互応化学工業株式会社製プラスコートZ-4000-100が市販されており、本発明に好ましく使用することができる。
【0046】
上記一般式(1a)および/または(1b)並びに(2a)で示される繰り返し単位を有する共重合体は、具体的には、多価カルボン酸成分として、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルを20~60モル%、テレフタル酸ジメチルを0~40モル%、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムを40モル%使用し、グリコール成分としてエチレングリコールを70~100モル%、ジエチレングリコールを0~30モル%を用い、多価カルボン酸成分及びグリコール成分を1:2のモル比で混合してエステル交換反応器に仕込み、これに触媒としてシュウ酸チタニウムカリを全成分の0.01質量%添加して窒素雰囲気下で250℃まで昇温することにより、エステル交換反応生成を進行させると共に副生成物であるメタノールを留去する。次いで、反応器内の温度を255~260℃まで昇温させると圧力を1mmHg(1.3hPa)まで減圧して、重縮合反応を適宜進行させると共に副生成物であるジオールを回収することでスルホン化率40%の共重合体(ポリエステル樹脂)を得ることができる。
【0047】
支持電解質(D2)は以下のものである。スルホン酸基又はカルボキシ基のいずれかの電子求引基が1分子に2個以上置換されてなる芳香族スルホン酸化合物を用いる。ここで、スルホン酸基又はカルボキシ基のいずれかの電子求引基が1分子に2個以上置換されてなるとは、芳香族スルホン酸化合物が有するスルホン酸基に加え、さらに1つ以上の他のスルホン酸基あるいはカルボキシ基を有し、1分子に2個以上の電子求引基が置換されている化合物を示す。つまり、芳香族スルホン酸化合物は少なくとも一つはスルホン酸基を有する。スルホン酸基又はカルボキシ基のいずれかの電子求引基が1分子に2個以上置換されてなる芳香族スルホン酸化合物としては、例えば、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、4-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸ジメチル及び5-スルホサリチル酸からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが挙げられる。上記化合物は、1種類若しくは2種類以上を使用することができる。
【0048】
本発明のピロール重合用電解液はモノマーであるピロール、支持電解質、溶媒等を含むものであるが、前記ピロール重合用電解液は、ピロールを0.01~5mol/Lの濃度で含有するものが好ましい。また、本発明のピロール重合用電解液において、前記支持電解質は支持電解質(D1)と支持電解質(D2)の合計で0.1~500mmol/Lで含有するものが好ましく、1~20mmol/Lで含有することがさらに好ましい。
【0049】
ピロール重合用電解液における支持電解質(D1)と支持電解質(D2)の質量比は5:95~80:20であることが好ましく10:90~75:25がより好ましい。
【0050】
本発明のピロール重合用電解液中には上記必須成分の他、更に、添加剤を含有することが耐久性に著しく優れたものが得られるため好ましい。本発明にて使用される添加剤は、主に酸化防止剤、界面活性剤のいずれかの特性を有するものが好ましい。そのような添加剤としてより好ましくは下記一般式(4)~(6)で示される化合物及び脂肪族環状アミン化合物である。これらの添加剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0051】
【0052】
上記一般式(4)~(6)中、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい、水素原子、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基又はフェニル基を示す。
【0053】
上記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、4-ニトロフェノール、2-メチル-4-ニトロフェノール、3-メチル-4-ニトロフェノール、2-エチル-4-ニトロフェノール、3-エチル-4-ニトロフェノール、2-ヘキシル-4-ニトロフェノール、3-ヘキシル-4-ニトロフェノール等のニトロフェノール類が挙げられる。
上記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、4-ニトロ-1-ナフトール等のニトロナフトール類が挙げられる。
上記一般式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-4-ニトロアントラキノン等のニトロアントラキノン類を挙げることができる。
【0054】
上記一般式(4)~(6)により表される化合物は、1種もしくは2種以上を使用することができる。上記一般式(4)~(6)により表される化合物は、得られるポリピロールの湿熱耐久性の面から、4-ニトロフェノール(PNP)であることが好ましい。
【0055】
本発明のピロール重合用電解液における一般式(4)~(6)表される化合物の含有量は、とくに制限はないが、0.1~2質量%であることが好ましい。含有量が0.1質量%より少ないと効果が得られない場合があり、2質量%を超過すると、得られる導電性高分子の電気電導度が悪化する場合があり、得られる固体電解コンデンサの特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0056】
本発明に用いられる脂肪族環状アミン化合物は、飽和脂肪族環状アミン構造を有することが好ましい。上記飽和脂肪族環状アミン構造としては、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環又はモルホリン環などの炭素数2~10の飽和脂肪族環状アミンなどが挙げられる。これらの飽和脂肪族環状アミン構造は任意の組み合わせであってもよい。
【0057】
さらに、上記脂肪族環状アミン化合物の環状アミン構造には本発明の効果を損なわない範囲において置換基を有してもよい。置換基としては、炭化水素基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基により置換された環状アミン構造としては、例えば、ジメチルピロリジン環などが挙げられる。
【0058】
これら脂肪族環状アミン化合物の中でも、得られるポリピロールの電気電導度及び耐久性の面から、下記一般式(7)で示される少なくとも1つの脂肪族環状アミン化合物であることが好ましい。
【0059】
【0060】
上一般式(7)中、nは繰り返し単位であり、1~4の整数を表す。この一般式(7)で示される脂肪族環状アミン化合物の中でもnが3のピロリジンが好ましい。
【0061】
本発明のピロール重合用電解液における脂肪族環状アミン化合物の含有量は、とくに制限はないが、0.001~0.06質量%であることが好ましい。含有量が0.001質量%より少ないと効果が得られない場合があり、0.06質量%を超過すると、得られる導電性高分子の電気電導度が悪化する場合があり、得られる固体電解コンデンサの特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0062】
上記したような添加剤を含有させたピロール重合用電解液を用いて電解重合を実施することで、耐久性に著しく優れたポリピロールが得られる。
【0063】
本発明のピロール重合用電解液を用い、固体電解コンデンサを製造する方法について説明する。本発明のピロール重合用電解液を用い、固体電解コンデンサを製造するには、従来の固体電解コンデンサの製造方法においてポリピロール層を本発明のピロール重合用電解液を用いて形成すればよい。具体的には、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、本発明のピロール重合用電解液中でポリピロール層を電解重合により形成する工程を有すればよい。
【0064】
上記(陽極)弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンからなる群から選ばれる1種が挙げられ、これらは焼結体又は箔の形状で用いられる。
【0065】
上記弁作用金属に誘電体酸化皮膜を形成する方法は特に限定されないが、例えば、公知の化成処理を施せばよい。
【0066】
誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、本発明のピロール重合用電解液中でポリピロール層を電解重合により形成する方法は、特に限定されないが、本発明のピロール重合用電解液中にて、電解(陽極酸化)することで、ポリピロールを重合する方法である。すなわち、前記弁作用金属に必要により予備導電層を設けたものを陽極とし、対向電極(陰極)との間で電解することにより、前記弁作用金属上にポリピロール層を形成することができる。陽極酸化の際の電流密度や電解時間に関しては、特に制限なく、使用するコンデンサ素子の種類や大きさに応じ適宜設定することができる。例えば、前記弁作用金属上にポリピロール層を形成したコンデンサ素子1つに対して0.001~50mAの値で1~1000分間、電流を流すことや、0.01~30mAで5~600分間、電流を流すこと等が挙げられる。電解重合後は、必要により、誘電体酸化皮膜を修復するための化成処理を行ってもよい。
【0067】
次に弁作用金属から陽極リード端子、陰極層から陰極リード端子を接続して電極を取り出して素子を形成し、この素子全体をエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂、あるいはセラミック製や金属製の外装ケース等により封止することで固体電解コンデンサを得ることができる。なお、陰極層は該ポリピロール層にカーボンペースト、銀ペースト等の導電性ペーストを塗布乾燥することによって形成する。
【0068】
上記製造方法において、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に、予備導電層を形成する工程と、前記予備導電層上に上記ピロール重合用電解液中でポリピロール層を電解重合により形成する工程を有することがより好ましい。このような予備導電層を設けることにより得られる固体電解コンデンサの電気特性(静電容量、tanδ、ESR)が良好となる。
【0069】
予備導電層の形成方法としては(1)化学重合による導電性高分子層を形成する方法、(2)導電性高分子溶液/導電性高分子分散液を塗布乾燥して導電性高分子層を形成する方法、(3)二酸化マンガン層を形成する方法、等の公知の方法が挙げられる。これら予備導電層の形成方法は繰り返し行ってもよい。
【0070】
(1)における予備導電層を化学重合によって形成する導電性高分子層について説明する。
導電性高分子単量体としては、ピロール、アニリン、エチレンジオキシチオフェン又はそれらの誘導体が挙げられる。
化学重合の方法としては、前記導電性高分子単量体を含有する溶液と、酸化剤とを、誘電体酸化被膜が形成された弁作用金属上にて接触し、酸化重合する方法が挙げられる。
前記酸化剤としては、過酸化水素、過硫酸塩、過ホウ酸塩等の無機酸化剤や、塩化第二鉄、硫酸第二鉄等の無機第二鉄塩、あるいは、パラトルエンスルホン酸第二鉄塩等の有機スルホン酸第二鉄塩が挙げられ、好ましくはそれらを適切な濃度に調整した溶液を酸化剤として用いることができる。
上記のよう導電性高分子単量体を含有する溶液と、前記酸化剤含有溶液とを弁作用金属上で接触させることで、予備導電層を形成することができる。
【0071】
(2)における導電性高分子溶液として、具体的にはポリアニリンをN-メチルピロリドン(NMP)に0.1~10質量%溶解した液が挙げられる。
このような溶液を誘電体酸化被膜が形成された弁作用金属上に塗布後、50℃~160℃にて加熱乾燥することによって、予備導電層を形成することができる。
また、(2)における導電性高分子分散液として、具体的には、水あるいはアルコール、メチルエチルケトン、トルエン又はそれらの混合物等の有機溶剤に、ポリピロール又はポリエチレンジオキシチオフェンの重合体微粒子が分散混合された溶液が挙げられる。
なお、この分散溶液中には、必要に応じてドーパントとなる有機スルホン酸系アニオンや有機高分子スルホン酸系アニオンが含有されていても良い。
このような溶液を誘電体酸化被膜が形成された弁作用金属上に塗布後、50℃~160℃にて加熱乾燥することによって、予備導電層を形成することができる。
【0072】
(3)における二酸化マンガン層は、硝酸マンガンを含浸させてから熱分解して二酸化マンガン層を形成する方法や過マンガン酸塩水溶液を付着し、過熱し還元させて二酸化マンガン層を形成する方法より得ることができる。
【0073】
次に前記予備導電層上に上記ピロール重合用電解液中でポリピロール層を電解重合により形成する方法は、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に上記ピロール重合用電解液中でポリピロール層を電解重合により形成する方法と同様でよい。
【0074】
前記予備導電層上にポリピロール層を本発明のピロール重合用電解液を用いて電解重合により形成した後、該ポリピロール層にカーボンペースト、銀ペースト等の導電性ペーストを塗布乾燥することによって陰極層を形成する。この後は、上記したように弁作用金属から陽極リード端子、陰極層から陰極リード端子を接続して電極を取り出して素子を形成し、この素子全体をエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂、あるいはセラミック製や金属製の外装ケース等により封止することで固体電解コンデンサを得ることができる。
【0075】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、用いられる(陽極)弁作用金属の種類、形状により、チップ型または巻回型の製造方法のいずれにも適用することができる。
【0076】
本発明のピロール重合用電解液を用いることによって、導電性に優れ、かつ、特定の電圧を印加した際も安定な構造をとるポリピロールが得られ、さらに前記ポリピロールを固体電解質とすることにより、従来よりも格段に優れた耐久性、静電容量、ESR特性を有する固体電解コンデンサを得ることができる。
【実施例0077】
以下、本発明について実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例等により、なんら限定されない。
【0078】
(比較例1)
タンタル金属粉末を加圧成形し、焼結された陽極体を弁作用金属として用い、これを0.2質量%リン酸水溶液の電解液中において約8Vの定電圧で約9時間化成処理し、弁作用金属上に誘電体酸化皮膜を形成した。
【0079】
次に前記化成処理済み陽極体をピロール:EtOH=2:1のモノマー溶液に浸漬し、引き上げ後、過酸化水素15質量%、水35質量%、EtOH45質量%、パラトルエンスルホン酸5質量%の酸化剤溶液に浸漬後、引き上げて化学酸化重合を行った。
【0080】
さらに、化学酸化重合によるポリピロール層の形成操作をもう一度行い、予備導電層を形成した。
【0081】
次に化学酸化重合によるポリピロール層(予備導電層)を形成した陽極体を0.2質量%リン酸水溶液の電解液中において8Vの定電圧で約5分間再び化成処理を行い、誘電体酸化皮膜を修復した。
【0082】
次いで、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物としてプラスコートZ221(互応化学工業株式会社製、スルホン化率5%)を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:93.8(g)の電解重合液中で0.15mAの電流を100分流し、ポリピロール膜からなる陰極層を形成した。
【0083】
電解重合が終了した後、陰極層上にカーボンペーストと銀ペーストを順に塗布し、乾燥させて、合計20個のコンデンサ素子を完成させた。
【0084】
これら20個のコンデンサ素子の室温20℃での100kHzにおける等価直列抵抗(ESR)の平均値をESR値とし、室温20℃での120Hzにおける静電容量(μF)の平均値を容量値とし、125℃で300時間放置後のESR値を初期特性評価時の測定値で除して耐熱変化率(倍)を求めた。また、85℃85%RHで500時間放置後のESRを初期特性評価時の測定値で除して耐湿変化率(倍)を求めた。
【0085】
(比較例2)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:93.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0086】
(比較例3)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物としてプラスコートZ221(互応化学工業株式会社製、スルホン化率5%)を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:1(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.8(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:97.0(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0087】
(比較例4)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物としてプラスコートZ221(互応化学工業株式会社製、スルホン化率5%)を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:92.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0088】
(比較例5)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率80%のポリエステル樹脂系化合物(上記プラスコートのスルホン化率のみを変えたもの)を20%質量の濃度で水に溶解させた溶液:5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:92.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0089】
(比較例6)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にポリスチレンスルホン酸ナトリウムを20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:92.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0090】
(比較例7)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液に5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:97.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0091】
(比較例8)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液に5-スルホサリチル酸ナトリウム二水和物:1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:97.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0092】
(比較例9)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液に2,7-ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:97.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0093】
(比較例10)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩水和物:1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:97.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0094】
(比較例11)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:5(g)+アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムを40質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:91.3(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0095】
(実施例1)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:0.15(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:97.65(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0096】
(実施例2)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:4.5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:94.2(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0097】
(実施例3)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:1(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.8(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:97.0(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0098】
(実施例4)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:95.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0099】
(実施例5)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:3.5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.3(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:95.0(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0100】
(実施例6)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率20%のポリエステル樹脂系化合物(上記プラスコートのスルホン化率のみを変えたもの)を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:95.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0101】
(実施例7)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率60%のポリエステル樹脂系化合物(上記プラスコートのスルホン化率のみを変えたもの)を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:95.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0102】
(実施例8)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+5-スルホサリチル酸ナトリウム二水和物:0.5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:95.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0103】
(実施例9)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+2,7-ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム:0.5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:95.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0104】
(実施例10)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩水和物:0.5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:95.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0105】
(実施例11)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.5(g)+ピロール:1.2(g)+PNP(パラニトロフェノール):0.5(g)+H2O:95.3(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0106】
(実施例12)
ポリピロールの製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例1と同様にして、20個のコンデンサ素子を得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.5(g)+ピロール:1.2(g)+PD(ピロリジン):0.01g+H20:95.79(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層を形成した。コンデンサ素子の特性評価を比較例1と同様に行った。
【0107】
比較例1~11及び実施例1~12のコンデンサ素子の測定結果を表1に示す。
【0108】
【0109】
表中の略称を以下に示す。
SIP:5-スルホイソフタル酸一ナトリウム
PSS:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム
SSA:5-スルホサリチル酸ナトリウム二水和物
NDS:2,7-ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム
NTS:ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩水和物
ANS:アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム
PNP:パラニトロフェノール
PD :ピロリジン
【0110】
比較例1~11及び実施例1、2を比較すると実施例1、2は高い容量及び低いESRを保持したまま、耐久性の向上が見られた。
【0111】
(D1):(D2)の質量比を5:95~80:20にした本実施例3~10にすることでさらに容量特性、ESR特性および耐久性が向上することが分かった。
【0112】
さらに、添加剤を加えた実施例11、12にすることでESR特性及び耐久性がより優れているものであった。
【0113】
[電解重合により得られた導電性高分子膜の重合バリ評価]
【0114】
(比較例12)
タンタル金属粉末を加圧成形し、焼結された陽極体を弁作用金属として用い、これを0.2質量%リン酸水溶液の電解液中において約8Vの定電圧で約9時間化成処理し、弁作用金属上に誘電体酸化皮膜を形成した。
【0115】
次に前記化成処理済み陽極体をピロール:EtOH=2:1のモノマー溶液に浸漬し、引き上げ後、過酸化水素15質量%、水35質量%、EtOH45質量%、p-トルエンスルホン酸5質量%の酸化剤溶液に浸漬後、引き上げて化学酸化重合を行った。
【0116】
さらに、化学酸化重合によるポリピロール層の形成操作をもう一度行い予備導電層を形成した。
【0117】
次に化学酸化重合によるポリピロール層(予備導電層)を形成した陽極体を0.2質量%リン酸水溶液の電解液中において8Vの定電圧で約5分間再び化成処理を行い、誘電体酸化皮膜を修復した。
【0118】
次いで、電解重合液にスルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物としてプラスコートZ221(互応化学工業株式会社製、スルホン化率5%)を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:5(g)+3,4-エチレンジオキシチオフェン:1.2(g)+H2O:46.9(g)+エタノール:46.9(g)の電解重合液中で0.15mAの電流を100分流し、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン層からなる陰極層を20個形成した。得られたポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン層の重合バリの発生数を目視で確認した。
【0119】
(比較例13)
ポリピロール層の製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例9と同様にして、導電性高分子層からなる陰極層を20個得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.5(g)+3,4-エチレンジオキシチオフェン:1.2(g)+H2O:47.9(g)+エタノール:47.9(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン層からなる陰極層を形成し、得られたポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン層の重合バリの発生数を目視で確認した。
【0120】
(実施例13)
ポリピロール層の製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例9と同様にして、ポリピロール層からなる陰極層を20個得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:0.15(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:1(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:97.65(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層からなる陰極層を形成し、得られたポリピロール層の重合バリの発生数を目視で確認した。
【0121】
(実施例14)
ポリピロール層の製造方法を以下の方法に代えたこと以外は比較例9と同様にして、ポリピロール層からなる陰極層を20個得た。すなわち、電解重合液にスルホン化率40%のポリエステル樹脂系化合物プラスコートZ4000-100を20質量%の濃度で水に溶解させた溶液:2.5(g)+5-スルホイソフタル酸一ナトリウム:0.5(g)+ピロール:1.2(g)+H2O:95.8(g)の混合溶液を用いて電解重合を行い、ポリピロール層からなる陰極層を形成し、得られたポリピロール層の重合バリの発生数を目視で確認した。
【0122】
比較例12、13及び実施例13、14の重合バリの発生数の測定結果を表2に示す。
【0123】
【0124】
表中の略称を以下に示す。
SIP:5-スルホイソフタル酸一ナトリウム
EDOT:3,4-エチレンジオキシチオフェン
Py:ピロール
【0125】
比較例12、13及び実施例13、14を比較すると実施例13、14はバリの発生を低減することが出来ていた。
本発明のピロール重合用電解液により得られるポリピロールは、固体電解コンデンサはもとより、有機ELディスプレイ、有機トランジスタ、ポリマー電池、太陽電池、各種センサー材料、電磁波シールド材料、帯電防止材料、エレクトロクロミック材料、人工筋肉などに好適に使用できる。