(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026021799
(43)【公開日】2026-02-12
(54)【発明の名称】魚釣用リールの調速装置、ハンドル装置及び魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20260204BHJP
A01K 89/015 20060101ALI20260204BHJP
【FI】
A01K89/01 E
A01K89/015 Z
A01K89/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024122960
(22)【出願日】2024-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BA01
2B108BB02
2B108BD02
2B108BE02
2B108BE04
(57)【要約】
【課題】魚釣用リールに取り付け可能であり、釣糸巻き取りの速度ムラを低減することがでる魚釣用リールの調速装置、ハンドル装置及び魚釣用リールを提供する。
【解決手段】ハンドル3と一体的に回転する入力部材101と、入力部材101の回転に応じて回転し、釣糸を巻き取るための動力を伝達する出力部材102と、入力部材101と出力部材102との間で、ハンドル3の回転分の回転方向の復元力を蓄積及び発生可能なばね部材103と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと一体的に回転する入力部材と、
前記入力部材の回転に応じて回転し、釣糸を巻き取るための動力を伝達する出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材との間で、前記ハンドルの回転分の回転方向の復元力を蓄積及び発生可能なばね部材と、を備えることを特徴とする魚釣用リールの調速装置。
【請求項2】
前記出力部材に対し、回転方向において復元力が作用する方向と逆方向に、回転速度に応じた抵抗力を発生させる抵抗発生手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リールの調速装置。
【請求項3】
前記抵抗発生手段は、粘性流体と、前記粘性流体を収容するとともに前記出力部材が配置される収容空間と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リールの調速装置。
【請求項4】
前記抵抗発生手段は、前記粘性流体の収容空間の容積を変更するように、前記出力部材に対向するとともに利用者の操作により前記出力部材との間の距離を変えることができる可動部材を備えることを特徴とする請求項3に記載の魚釣用リールの調速装置。
【請求項5】
前記出力部材及び可動部材の一方は、軸方向に凹み周方向に延びる抵抗溝を備え、他方は、軸方向に突出し周方向に延びるとともに前記抵抗溝に対向する抵抗突部を備えることを特徴とする請求項4に記載の魚釣用リールの調速装置。
【請求項6】
前記入力部材と前記出力部材とを当接させて直接的に動力伝達をする状態と、前記入力部材と前記出力部材とを離間させて前記ばね部材を介して間接的に動力伝達をする状態とに切り替え可能な操作部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リールの調速装置。
【請求項7】
前記抵抗発生手段は、遠心ブレーキを備えることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リールの調速装置。
【請求項8】
前記抵抗発生手段は、脱進機を備えることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リールの調速装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の魚釣用リールの調速装置と、
前記入力部材に動力を伝達するハンドルと、を備え、魚釣用リールに取り付け可能なハンドル装置。
【請求項10】
リール本体と、
前記リール本体に設けられ請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の魚釣用リールの調速装置と、を備える魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールの調速装置、ハンドル装置及び魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
ルアー、タイラバと呼ばれる疑似餌を使った釣りでは、疑似餌の動かし方によって釣果が変わり得るが、速度変化のない、一定の速さで疑似餌を動かすことで対象魚の警戒心を解き、釣果を上げるテクニックがある。
しかし、ハンドルを手動で回すことによって、疑似餌を動かすリールでは、利用者の手の位置とハンドルの角度は刻々と変わり、ハンドルの自重の影響も位置によって変化する。これにより、任意の速度で速度ムラなくハンドルを回すことは、初心者には難しく、修練が必要と言われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、魚釣用リールのハンドルの1回転内でハンドルを回転させるべき速度を利用者に案内できるハンドル操作支援装置が開示されている。当該魚釣用リールでは、一定間隔で報知音を鳴らすことで、利用者が一定回転に回すための目安とすることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ハンドルを一定スピードで回すという目的に対しては依然として利用者任せであり、機構としては従来のリールと何ら変わりがなかった。また、一般的な電動リールを使えば、速度ムラなく疑似餌を動作させることは容易であるが、電動リールはモータや電源が必須となるため、重量増となり、利用範囲(釣りの対象魚)が限られてしまう。
【0006】
そこで本発明は、魚釣用リールに取り付け可能であり、釣糸巻き取りの速度ムラを低減することができる魚釣用リールの調速装置、ハンドル装置及び魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ハンドルと一体的に回転する入力部材と、前記入力部材の回転に応じて回転し、釣糸を巻き取るための動力を伝達する出力部材と、前記入力部材と前記出力部材との間で、前記ハンドルの回転分の回転方向の復元力を蓄積及び発生可能なばね部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ハンドルの回転に応じて回転方向の復元力をばね部材に蓄積及び発生させることで、出力部材の回転速度を均一化させ、釣糸巻き取りの速度ムラを低減することができる。
【0009】
また、前記出力部材に対し、回転方向において復元力が作用する方向と逆方向に、回転速度に応じた抵抗力を発生させる抵抗発生手段を備えることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、出力部材の回転速度をより均一化することができる。
【0011】
また、前記抵抗発生手段は、粘性流体と、前記粘性流体を収容するとともに前記出力部材が配置される収容空間と、を備えることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、抵抗発生手段を容易に構成することができる。
【0013】
また、前記抵抗発生手段は、前記粘性流体の収容空間の容積を変更するように、前記出力部材に対向するとともに利用者の操作により前記出力部材との間の距離を変えることができる可動部材を備えることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、利用者の操作に応じて出力部材の回転速度を調整することができる。
【0015】
また、前記出力部材及び可動部材の一方は、軸方向に凹み周方向に延びる抵抗溝を備え、他方は、軸方向に突出し周方向に延びるとともに前記抵抗溝に対向する抵抗突部を備えることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、粘性流体との接触面積増やして効果的に抵抗力を発生させることができる。
【0017】
また、前記入力部材と前記出力部材とを当接させて直接的に動力伝達をする状態と、前記入力部材と前記出力部材とを離間させて前記ばね部材を介して間接的に動力伝達をする状態とに切り替え可能な操作部材を備えることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、利用者の好みに応じて動力伝達を変更することができる。
【0019】
また、前記抵抗発生手段は、遠心ブレーキを備えることが好ましい。
また、前記抵抗発生手段は、脱進機を備えることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、抵抗発生手段を容易に構成することができる。
【0021】
また、本発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の魚釣用リールの調速装置と、前記入力部材に動力を伝達するハンドルと、を備え、魚釣用リールに取り付け可能なハンドル装置である。
また、本発明は、リール本体と、前記リール本体に設けられ請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の魚釣用リールの調速装置と、を備える魚釣用リールである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の魚釣用リールの調速装置、ハンドル装置及び魚釣用リールによれば、魚釣用リールに取り付け可能であり、釣糸巻き取りの速度ムラを低減することがでる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る魚釣用リールの全体構成を示す側面図である。
【
図2】第一実施形態に係る魚釣用リールの全体構成を示す断面図である。
【
図3】第一実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置を示す斜視図である。
【
図5】第二実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置を示す分解斜視図である。
【
図6】第二実施形態に係るばね部材周りを示す分解斜視図である。
【
図7】第二実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置を示す縦断面図(高粘性状態)である。
【
図8】第二実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置を示す縦断面図(低粘性状態)である。
【
図9】第二実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置を示す縦断面図(ロックオン状態)である。
【
図10】従来のハンドル及びローターの構成を示すモデル図である。
【
図11】第二実施形態に係るハンドル及びローターの構成を示すモデル図である。
【
図12】第二実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置のばね蓄積量とトルクとの関係を示すグラフである。
【
図13】第二実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置のハンドル速度と抵抗トルクとの関係を示すグラフである。
【
図14】本発明の第三実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置の抵抗発生手段を示す断面図である。
【
図15】本発明の第四実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置の抵抗発生手段を示す平断面図である。
【
図16】第四実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置の抵抗発生手段を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第一実施形態]
本発明の実施形態に係る魚釣用リールR1について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「前後」「上下」を言うときは
図1に示した方向を基準とし、「左右」を言うときは
図2に示す方向を基準とする。各実施形態において、同一の部分については同様の符号を付し詳細な説明は省略する。
【0025】
はじめに魚釣用リールR1の基本構造について説明する。
図1に示すように、魚釣用リールR1は、ハンドル3が取り付けられたリール本体1と、リール本体1の前側に設けられ、ハンドル3の巻き取り操作により回転するローター4と、ローター4の前側に設けられ、ハンドル3の巻き取り操作により前後方向に往復運動するスプール5とを備えている。
【0026】
リール本体1は、左側に向って開口する側部開口部11が形成されたボディ10と、ボディ10の上部から上方に延びて釣竿に装着される竿取付部を先端に有する脚部12と、側部開口部11を塞ぐ蓋部材13と、ボディ10の後部に取り付けられた保護カバー14とを備えている。また、ボディ10は、駆動軸筒7及びスプール軸8が貫通する筒状のボディ前部10A(
図2参照)を備える。駆動軸筒7の前端にローター4が取り付けられ、また、スプール軸8の前端にスプール5が取り付けられている。
【0027】
蓋部材13は、
図2に示すように、側部開口部11の内側に挿入される円筒状の挿入部13aを備えている。挿入部13aの外周面には、雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、側部開口部11の内周面に形成された雌ねじ部と螺合している。この螺合により、ボディ10と蓋部材13とが一体になっている。
【0028】
ボディ10内には、ハンドル3の操作に連動して駆動軸筒7及びスプール軸8を駆動させるための構成として、左右方向に延在するドライブギャ軸2と、スプール往復動装置60とが備わる。
ドライブギャ軸2は、ドライブギャ21及び歯車22を備えている。ドライブギャ軸2は、左右のボールベアリング15,16を介して蓋部材13及びボディ10に回転自在に支持されている。
【0029】
スプール往復動装置60は、摺動子61と、連動歯車62とを備え、ボディ10の前後方向に延びるガイド軸(不図示)に沿って、摺動子61が前後方向に移動するように構成されている。摺動子61は、スプール軸8の後端に固定ねじ8aにより固定されており、右側に開口する案内溝61aを備えている。連動歯車62は、ボディ10の右側壁に設けられた支持部材63に支持され、ドライブギャ軸2の歯車22に噛合して回転する。連動歯車62は、摺動子61の案内溝61aに係合する偏芯突部62aを備えている。
【0030】
以上から、ハンドル3の巻き取り操作によってドライブギャ軸2及び歯車22が回転すると、連動歯車62が回転し、その回転運動が偏芯突部62a及び案内溝61aを介して摺動子61の前後運動に変換される。これにより、スプール軸8(スプール5)が前後方向に往復移動する。
【0031】
次に、
図2及び
図3に示すように、ハンドル3と、調速装置100とを備えたハンドル装置200について説明する。調速装置100は、入力部材101と、出力部材102と、ばね部材103と、固定筒104と、を備えている。
【0032】
入力部材101は、ハンドル3と一体的に回転する軸状部材である。入力部材101は、本体部111と、フランジ部112と、切欠き部113と、先端部114とを備えている。本体部111は、軸状を呈し、ハンドル3のスカート部3aの中空部から固定筒104の内部に亘って回転軸Cに沿って配置されている。フランジ部112は、回転軸Cと直交する方向に張り出しており、ハンドル3と一体回転可能に固定されている。切欠き部113は、本体部111の一部が切り欠かれて構成されており、ばね部材103の一端側が連結される部位である。
【0033】
出力部材102は、入力部材101の回転に応じて回転し、ローター4を回転させる動力(釣糸を巻き取るための動力)を伝達する部材である。出力部材102は、入力部材101に対して相対回転可能に設置されている。出力部材102は、基板部121と、収納筒部122と、固定筒部123とを備えている。基板部121は、回転軸Cに対して垂直に配置された板状部位である。基板部121の中央には、入力部材101の先端部114が挿入される貫通孔121aが形成されている。収納筒部122は、回転軸Cと平行に、基板部121からハンドル3側に延設する筒状部位である。基板部121及び収納筒部122とで構成された中空部にばね部材103が配置されている。固定筒部123は、回転軸Cと平行に、基板部121から蓋部材13側に延設する筒状部位である。固定筒部123の内周面には、ドライブギャ軸2と螺合するネジ溝が形成されている。これにより、出力部材102とドライブギャ軸2とは同期して回転する。また、出力部材102とドライブギャ軸2とは取り付け又は取り外しが可能になっている。
【0034】
固定筒部123の内部には、留め部材105が配置されている。留め部材105は、入力部材101の先端部114に出力部材102を留め付ける部材である。
【0035】
ばね部材103は、入力部材101と出力部材102との間で、ハンドル3の複数回転分の回転方向の復元力を蓄積及び発生可能な部材である。ばね部材103は、本実施形態ではぜんまいばねを用いているが、他のばねであってもよい。換言すると、ばね部材103は、ローター4を概ね一定の速度で回転させることができる部材であることが好ましい。ばね部材103の一端は入力部材101の切欠き部113に連結され、他端は出力部材102の収納筒部122の切欠き部122aに連結されている。ばね部材103(ぜんまいばね)は、入力部材101周りに渦巻き状に構成され、入力部材101と出力部材102との間の相対回転角度(以降、この角度をθとする)に応じて復元力を発生させる。一般に知られているように、ぜんまいばねを接触型とした場合に発生させる復元力は、θに比例して大きくなる領域と、θに対して非線形的に変化する領域がある。
【0036】
固定筒104は、ハンドル3と蓋部材13との間に配置される筒状部材である。固定筒104は、筒状部131と、蓋部132と、張出部133とを備えている。筒状部131は、回転軸Cと同心に配置されている。筒状部131の蓋部材13側の端部に設けられた凸部131aは、蓋部材13の凹溝13cに嵌合されている。蓋部132は筒状部131のハンドル3側の端部を覆う板状部位である。蓋部132の中央には、収納筒部122が挿入される貫通孔132aが形成されている。張出部133は、筒状部131の高さ方向の中間部分において回転軸C方向に張り出す板状部位である。張出部133の中央には、固定筒部123が挿入される貫通孔133aが形成されている。
【0037】
固定筒104の筒状部131、蓋部132及び張出部133で囲まれた空間と、出力部材102とで収容空間Nが形成されている。当該収容空間Nに、本実施形態ではグリスが充填されることで、「抵抗発生手段」を構成している。グリスは、十分な粘性力を発生させるために、粘度の高い材種で構成するのが望ましい。収容空間N内のグリスの充填量が多いと回転抵抗が大きくなりドライブギャ軸2及び出力部材102が比較的遅く回転し、充填量が少ないと回転抵抗が小さくなりドライブギャ軸2及び出力部材102が比較的速く回転する。グリスの充填量は、収容空間Nにおいて適宜調整することができる。また、グリスに代えて、ゲル等の他の粘性流体を用いてもよい。
【0038】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。利用者がハンドル3を一方向に回すと、当初は出力部材102は回転せず、ばね部材103に復元力が蓄積される。つまり、入力部材101を介してばね部材103が締め込まれる。ハンドル3は、複数回回転させることが好ましいが、少なくとも90°以上回転させればよい。
【0039】
その後、ばね部材103の蓄積量(チャージ量)に応じて、出力部材102は徐々に回転を始める。このとき、出力部材102の回転速度は、ばね部材103の蓄積量によって変化する。入力部材101の回転速度は、直接的には出力部材102の回転速度に依存しない。ハンドル3の回転操作を停止しても、ばね部材103の蓄積量が十分大きい場合は、出力部材102は回転方向のトルクを受け続け、概ね一定の速さで回転を継続する。ばね部材103の蓄積量が小さくなると出力部材102の回転も遅くなり最終的には回転を停止する。
【0040】
これにより、利用者がハンドル3を回転操作するスピードに変化があっても、出力部材102の回転速度の変化は小さくなる。したがって、魚釣用リールR1が釣糸を巻き取る速度ムラを低減することができ、疑似餌を使った場合等に代表される特定の釣法では魚が喰いつく可能性を上げることができる。
【0041】
また、本実施形態では、出力部材102に対し、回転方向において復元力が作用する方向と逆方向に、回転速度に応じた抵抗力を発生させる抵抗発生手段を備えている。つまり、収容空間Nに充填されるグリスが回転抵抗となるため、ローター4の回転速度をより均一にすることができる。また、グリスの充填量を調整することで、釣糸の巻き取りスピードを調整することができる。なお、速度ムラを低減することや抵抗発生手段の効果のメカニズムについては、第二実施形態で詳述する。
【0042】
また、本実施形態では、調速装置100の部分を既存の魚釣用リールに着脱することができる。これにより、利用者の希望に応じてカスタマイズすることができる。また、本実施形態では蓋部材13の外部に調速装置100を配置したが、蓋部材13の内部(リール本体1の内部)に配置してもよい。また、調速装置100は、右ハンドル又は左ハンドルのいずれにも対応可能である。なお、右ハンドルと左ハンドルでは、ハンドルの巻き取り方向が逆になる。したがって、右ハンドル用のハンドル装置と左ハンドル用の調速装置では、ばね部材103の巻き取り方向をそれぞれ逆向きに組む必要がある。
【0043】
なお、抵抗発生手段は、本実施形態では前記した構成としたが、他の構成であってもよい。また、抵抗発生手段は省略してもよい。
【0044】
[第二実施形態]
次に、
図4及び
図5に示すように、本発明の第二実施形態に係るハンドル装置300について説明する。ハンドル装置300は、ハンドル301と、ロックレバー302と、調速装置400とを備えている。
【0045】
図5~7に示すように、ハンドル301は、入力部材411に取り付けられており、入力部材411と同期して回転する。ハンドル301は、第一実施形態のハンドル3と同様に、利用者の回転動作を入力部材411等を介してローター4に回転力を伝達させる部材である。
【0046】
ロックレバー(操作部材)302は、ハンドル301に対して蓋部材13側に設けられている。ロックレバー302は、ナット部材303を介して入力部材411の一端側に螺合されている。ロックレバー302は、回転軸Cに対して所定の角度で一方向又は他方向に回転可能に設けられている。
【0047】
調速装置400は、
図5~7に示すように、入力部材411と、出力部材412と、ばね部材413と、筐体414と、調整部材415と、可動部材416と、固定筒417とを備えている。
【0048】
入力部材411は、ハンドル301と一体的に回転する軸状部材である。入力部材411の一端側には、ナット部材303と螺合する雄ねじ421が形成されている。入力部材411の他端側には、ばね部材413の一端が連結される切欠き部422が形成されている。入力部材411の中間部には径方向外側に張り出すフランジ423が設けられている。
【0049】
出力部材412は、入力部材411の回転に応じて回転し、釣糸を巻き取るための動力を伝達する部材である。出力部材412は、底部材412Aと、蓋部材412Bとの二部材で構成されている。底部材412Aは、基板部431と、収納筒部432と、固定筒部433とを備えている。基板部431は、回転軸Cに対して垂直に配置された板状部位である。基板部431の中央には、入力部材411の先端部425が挿入される貫通孔431aが形成されている。収納筒部432は、回転軸Cと平行に、基板部431からハンドル301側に延設する筒状部位である。基板部431及び収納筒部432とで構成された中空部にばね部材413が配置されている。固定筒部433は、回転軸Cと平行に、基板部431から蓋部材13側に延設する筒状部位である。固定筒部433の内周面には、ドライブギャ軸2と螺合するネジ溝が形成されている。これにより、出力部材412(412A,412B)とドライブギャ軸2とは同期して回転する。また、出力部材412とドライブギャ軸2とは取り付け又は取り外し可能になっている。
【0050】
蓋部材412Bは、底部材412Aの開放側を覆うように配置される部材である。蓋部材412Bは、基板部441と、第一筒部442と、第二筒部443と、抵抗突部444とを備えている。基板部441は、回転軸Cに対して垂直に配置されており、収納筒部432を覆う板状部位である。第一筒部442は、基板部441からハンドル301側に延設し入力部材411の外周を覆う筒状部位である。第一筒部442の先端側の内部には、異なる内径で形成された段差部442aが形成されている。第二筒部443は、基板部441から蓋部材13側に延設し収納筒部432の外周面に周接する筒状部位である。基板部431と、第二筒部443とは複数の接合部材Pを介して接合されている。
【0051】
抵抗突部444は、第一筒部442の径方向外側において、基板部441からハンドル301側に周方向に亘って立ち上っている。抵抗突部444は、先端に向かうにつれて先細り(断面台形状)になっている。抵抗突部444の形状は他の形状であってもよい。
【0052】
ばね部材413は、入力部材411と出力部材412との間で、ハンドル301の複数回転分の回転方向の復元力を蓄積及び発生可能な部材である。ばね部材413は、本実施形態ではぜんまいばねを用いているが、他のばねであってもよい。ばね部材413の一端は入力部材411の切欠き部422に連結され、他端は出力部材412の収納筒部432の一部に連結されている。
【0053】
筐体414は、
図7に示すように、本体筒部451と、蓋部452と、フランジ部453とを備えている。本体筒部451は、出力部材412及び可動部材416の径方向外側を覆う筒状部位である。本体筒部451の一部には調整部材415のガイドピン473が貫通する貫通孔451aが形成されている。貫通孔451aは、
図5に示すように、回転軸Cに対して平行に延設されている。
【0054】
蓋部452は、本体筒部451のハンドル301側を覆う板状部位である。蓋部452の中央には、第一筒部442が貫通する貫通孔452aが形成されている。また、蓋部452の外周部には調整部材415が筐体414周りに相対回転可能に係合する係合溝454が形成されている。
【0055】
フランジ部453は、本体筒部451の蓋部材13側の端部の外周面から径方向外側に張り出している。フランジ部453は、固定筒417に複数の接合部材Qを介して接合されている。
【0056】
調整部材415は、抵抗発生手段における粘性力を調整する部材である。調整部材415は、円筒状を呈し、筐体414の外周において、筐体414に対して相対回転可能に配置されている。調整部材415は、調整リブ461と、係合突部462と、カム溝463とを備えている。調整リブ461は、利用者の指で回転しやすいように、調整部材415の外周に亘って凸凹に形成されている。係合突部462は、筐体414の係合溝454に回転可能に係合する溝である。カム溝463は、
図5に示すように、調整部材415の周方向に亘って略らせん状に切り欠かれている。
【0057】
可動部材416は、筐体414の内部において、蓋部材412Bの第一筒部442の外周に配置されるリング状の部材である。可動部材416の底面には、周方向に亘って抵抗溝471が形成されている。抵抗溝471は、抵抗突部444が挿入されるように断面略台形状になっている。抵抗突部444と抵抗溝471とで構成された空間で収容空間Nが形成されている。収容空間Nにグリスが充填されることで、「抵抗発生手段」を構成している。
【0058】
また、可動部材416の側面には、ガイドピン473が外側に向けて突出するように配置されている。ガイドピン473は、貫通孔451aを挿通するとともにカム溝463に係合している。利用者が、調整部材415を回転軸C周りに一方向又は他方向に回転させるとカム溝463も周方向に移動するため、カム機構により貫通孔451a内においてガイドピン472が高さ方向に移動する。これに伴って、蓋部材412Bに対して可動部材416が高さ方向に可動する。つまり、可動部材416は、回転軸Cに対して回転不能であるが、高さ方向に移動可能に形成されている。
【0059】
図7に示すように、蓋部材412Bに対して可動部材416が近いほど、収容空間Nが小さくなるため高粘性状態となる。一方、
図8に示すように、蓋部材412Bに対して可動部材416が遠いほど、収容空間Nが大きくなるため低粘性状態となる。抵抗発生手段の粘性については、調整部材415の回転量に応じて細かく変化させることができる。
なお、本実施形態では、蓋部材412Bに抵抗突部444を設け可動部材416に抵抗溝471を設けたが、蓋部材412Bに抵抗溝を設け可動部材416に抵抗突部を設けてもよい。
【0060】
固定筒417は、筐体414と蓋部材13との間に配置される筒状部材である。固定筒417のハンドル301側には第一凹部481が形成され、蓋部材13側には第二凹部482が形成されている。第一凹部481には出力部材412が相対回転可能に配置されている。第二凹部482には蓋部材13の中央部が配置されている。蓋部材13の凹溝13cに、固定筒417の端部に設けられた凸部484が嵌合されている。第一凹部481の底部には、第二凹部482に貫通する貫通孔483が形成されている。貫通孔483には、出力部材412の固定筒部433が挿通されている。
【0061】
次に、第二実施形態に係るハンドル装置300の作用効果について説明する。ハンドル装置300は、ロックレバー302を回転軸C周りに一方向又は他方向に回転させることにより、通常巻取りモードと定速巻取りモードの二種類の巻き取りモードを備えている。
【0062】
<通常巻取りモード・ロックオン状態>
図9に示すように、ロックレバー302を回転軸C周りに一方向に回転させると、入力部材411と出力部材412とが当接して、通常巻取りモードとなる。つまり、通常モードでは、一般的な魚釣用リールと同様に、利用者のハンドル操作に応じて釣糸巻き取りの速度が可変する。
【0063】
より詳しくは、
図9に示すように、ロックレバー302を回転軸C周りに一方向に回転させると、ナット部材303と入力部材411の雄ねじ421との螺合によりナット部材303が出力部材412側に変位しナット部材303と出力部材412とが面接触する。さらに、入力部材411のフランジ423が第一筒部442の段差部442aと係合するため、ナット部材303とフランジ423との間で第一筒部442の先端側が挟持される。これにより、ナット部材303の底面と出力部材412の第一筒部442の端面との間で摩擦力が発生する。つまり、入力側摩擦発生部(ナット部材303の底面)と出力側摩擦発生部(第一筒部442の端面)との間に大きな軸力を発生させることで、回転方向の摩擦力を生じさせる。以上より、ハンドル301、入力部材411及び出力部材412が一体的に同期して回転するため、一般的な魚釣用リールと同様にハンドル301を回転させることにより釣糸巻き取り操作が可能である。利用者がハンドル装置300をリール本体1に着脱作業を行うときや、魚をかけた際など所定以上の張力で釣糸を巻き取りたい時は、通常巻取りモードを使うと良い。
【0064】
<定速巻取りモード・ロックオフ状態>
一方、
図7に示すように、ロックレバー302を回転軸C周りに他方向に回転させると出力部材412とナット部材303とが離間して、釣糸を定速で巻き取ることが可能な定速巻取りモードとなる。つまり、ロックレバー302を回転軸C周りに他方向に回転させるとナット部材303と入力部材411の雄ねじ421との螺合によりナット部材303がハンドル301側に変位し、ナット部材303と出力部材412とが離間する。これにより、入力部材411の入力は、出力部材412に直接的には伝達しない。
【0065】
定速巻取りモードにおいて、利用者がハンドル301を一方向に回すと、ばね部材413に復元力が蓄積される。当初は出力部材412に回転せず、ばね部材413に復元力が蓄積される。つまり、入力部材411を介してばね部材413が締め込まれる。ハンドル301は、複数回回転させることが好ましいが、少なくとも90°以上回転させればよい。
【0066】
その後、ばね部材413の蓄積量(チャージ量)に応じて、出力部材412は徐々に回転を始める。このとき、出力部材412の回転速度は、ばね部材413の蓄積量によって変化する。入力部材411の回転速度は、直接的には出力部材412の回転速度に依存しない。ハンドル301の回転操作を停止しても、ばね部材413の蓄積量が十分大きい場合は、出力部材412は回転方向のトルクを受け続け、概ね一定の速さで回転を継続する。ばね部材413の蓄積量が小さくなると出力部材412の回転も遅くなり最終的には回転を停止する。
【0067】
これにより、利用者がハンドル301を回転操作するスピードに変化があっても、出力部材412の回転速度の変化は小さくなる。したがって、魚釣用リールR1が釣糸を巻き取る速度ムラを低減することができ、疑似餌を使った場合等に代表される特定の釣法では魚が喰いつく可能性を上げることができる。
【0068】
ここで、これらの効果をモデル図を用いて詳細に説明する。
図10は、従来のハンドル及びローターの構成を示すモデル図である。
図11は、第二実施形態に係るハンドル及びローターの構成を示すモデル図である。
【0069】
図10に示すように、ローターF2の位置をY、ハンドルF1の位置をX、ギヤ比をGとすると、従来のリールにおいては、ローターF2の位置はハンドルF1の位置のギヤ比倍となるため、Y=GXとなる。従ってハンドル速度dX/dtに速度ムラがあると、ローターF2の速度ムラdY/dtは、ハンドルF1の速度ムラに比例して発生する。
【0070】
一方、
図11に示すように、本実施形態においては、ローター4の質量m、ばね定数k、抵抗発生手段の減衰係数をcとすると、ローター4の質量と位置において運動方程式が成り立つので、m・Y=k(X-Y)-cYとなり、いわゆる二次遅れ系となる。すなわち、ハンドル301を動かすと、ローター4は安定位置(ばねの蓄積量が0となる状態)に向かって徐々に移動する。
【0071】
したがって、ハンドル速度dX/dtに速度ムラがある場合でも、その速度ムラの周波数が所定値以下の場合、二次遅れ系によって速度ムラの高周波成分にローパスフィルタ効果がかかり、ローター4自体は比較的速度変化の無い動作を実現できる。なお、通常ローター4にはワンウェイクラッチやラチェット等により、逆方向の回転が制限されるため、一般的な二次遅れ系の挙動とは異なり、ローター4の振動は発生しない。
【0072】
上述の説明では、ばね部材413の蓄積量に比例してばねの反発力が大きくなる比例タイプのばねを用いたが、本発明はこの限りではない。定荷重ばねや接触式ぜんまいばね等、ばねの蓄積量と反発力に非線形的な特性のあるばねを用いても良い。
【0073】
これにより、ばね部材413の蓄積量が変化しても、ばね部材413による反発力の変化を小さくすることができ、ローター4の速度ムラを低減させることができる。また、ばね部材413としてぜんまいばねを用いることで、蓄積量が360°以上になるような大きな角度変化に対しても、破断することなく反発力を生じることができるため、速度ムラが大きくなっても効果が発揮できる。また、比較的小さなスペースにエネルギーを蓄えることができるため、装置全体の小型化を図ることができる。
【0074】
本発明として用いるばねは、ぜんまいばねに限らず、ねじり方向のトルクを蓄積してエネルギーを蓄えるようなものであれば良い。そのようなばね部材には、ぜんまいばね以外にも、トーションばね(ねじりばね)等がある。この場合も、可動できる角度範囲を大きくできるように巻き数を増やしたものが良い。利用者がハンドル301を操作する際に発生する速度ムラは、ハンドル301とリール本体の角度に依存して発生することが多いので、本発明で用いるばね部材は360°以上の許容変位量を有するものが望ましい。
【0075】
また、本実施形態の抵抗発生手段は、グリスの粘性を調整することで巻き取り速度を変化させることができる。つまり、
図7に示すように、調整部材415を回転させて高粘性状態にすると、出力部材412も大きな抵抗を受けて比較的ゆっくり回転する。したがって、高粘性状態にすると比較的遅い速度で速度ムラなく巻き取ることができる。
【0076】
一方、
図8に示すように、調整部材415を回転させて低粘性状態にすると、出力部材412が受ける抵抗も小さいため比較的速く回転する。したがって、低粘性状態にすると比較的速い速度で速度ムラなく巻き取ることができる。
【0077】
ここで、粘性力付与などの抵抗発生手段によって、ローター4の速度を調速することのメカニズムについて、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、第二実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置のばね蓄積量とトルクとの関係を示すグラフである。
図13は、第二実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置のハンドル速度と抵抗トルクとの関係を示すグラフである。
【0078】
ばね部材として、接触形のぜんまいばねを用いた場合、
図12に示すように、ばね蓄積量が少ない状態ではトルクはばね蓄積量に対して概ね比例で上昇し、ばね蓄積量が大きくなると接触摩擦の影響により、ばね蓄積量の増加に対してトルクがほとんど変わらない領域(A領域)が出てくる。このときのトルクをTとする。
【0079】
一方、粘性力付与等の抵抗発生手段は、
図13に示すように、反力による抵抗トルクはハンドル速度に依存して大きくなる。その抵抗トルクがTとなる速度V1では、ばね部材413による復元トルクと抵抗発生手段によるトルクとが釣り合う。すなわち、ローター4がV1となる速度が、安定状態となる。ローター4が回転すると、ばね部材413は徐々に蓄積量を失うが、利用者がハンドル301を回し続けることで、再度ばね部材413は蓄積される。その蓄積量がAの領域に居続けると、ローター4は速度V1の状態を維持することができる。したがって、Aの角度範囲が大きいほど、利用者のハンドル操作のムラを軽減することができる。Aの領域は90°以上大きくすることが望ましい。
【0080】
また、本実施形態のように、抵抗発生手段で生じる反力の特性を調整できるようにすると、ローター4の安定速度を調整することができる。粘性が大きくなる状態を設定1、粘性が小さくなる状態を設定2とすると、設定1ではローター速度V1で安定する。設定2では、速度V1より速いローターの速度V2で安定する。このように、抵抗発生手段を調整できるようにすると、任意の速度を安定速度とすることができる。
【0081】
図12に示す、ばね蓄積量とトルクとの関係においては、グラフの形状が上に凸になるような特性(比例関係よりも低次となるような関係)が望ましい。ばね蓄積量の変動に対して、トルクの変動が小さくなるような特性となるからであり、その場合、許容できるハンドル301の角度範囲Aが広くなる。
【0082】
図13に示す、ハンドル速度と抵抗発生手段による抵抗トルクの関係においては、グラフの形状が下に凸になるような特性(比例関係よりも高次となるような関係)が望ましい。ばね部材413によるトルクTが変動した場合、吊り合う速度V1の変動が小さくなるためである。
【0083】
また、本実施形態によれば、ロックレバー302を備えているため、通常巻取りモードと定速巻取りモードを利用者の好みに応じて使い分けることができる。
つまり、利用者が、釣糸を巻き取る速度ムラを低減したい際は、ロックレバー302をオフ側に操作する。これにより、ハンドル301を巻き取る速度にムラがあっても、魚釣用リールR1が釣糸を巻き取る速度ムラを低減することができる。
一方、釣針に食いついた魚を巻き取りたい時や、釣針が根がかりした時、ハンドル301の着脱をしたい時など、利用者が直接出力部材412を回転操作したいような状況では、ハンドル301を操作しても、出力部材412にはばね部材413を介してトルク伝達されるため、十分な操作トルクを出力部材412に与えられないことがある。このような状況では、ロックレバー302をオン側に操作する。これにより、出力部材412に十分なトルクを伝達することができ、ダイレクトにローター4を操作することができる。
【0084】
なお、抵抗発生手段において、グリス等の粘性流体の種類、抵抗突部444及び抵抗溝471の形状、カム機構の構成等を適宜設計することで、調整部材415の回転操作に対する粘性を自由に設定することができる。
【0085】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。本発明で用いる抵抗発生手段は、上述のような粘性流体の粘性力によるものに限らない。例えば、
図14に示すような、遠心力を利用したものでも良い。
図14は、第三実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置の抵抗発生手段を示す断面図である。本実施形態では、抵抗発生手段を、魚釣用リールR1のローター4に設けている。
【0086】
本実施形態での抵抗発生手段550において、ローター4は、径方向に伸びる案内棒552を有している。案内棒552には、遠心ブレーキシュー553が径方向に並進移動可能に支持される。ローター4が高速回転をすると、遠心ブレーキシュー553には遠心力が発生する。その力は、遠心ブレーキシュー553の質量をM、回転中心から重心までの距離をR、ローター4の角速度をωとすると、MRω2となる。遠心ブレーキシュー553の外側には、リール本体1に一体となる外壁554を有し、ローター4が回転すると遠心ブレーキシュー553は外壁554との間に摩擦力を生じる。この摩擦力が、上述の実施形態での粘性力による抵抗発生手段と同等の機能を実現する。
【0087】
本実施形態のように遠心力による抵抗発生手段では、粘性流体の特性に依存しない反力を生じることができるので、比較的温度変化に対して安定した反力を得ることができる。本発明による抵抗発生手段は、前述の実施形態のように、ハンドル軸に作用させても良いし、本実施形態のように、リール本体1に内蔵させてローター軸に作用させても良い。一般に、ローター軸はハンドル軸よりも増速されることがほとんどなので、ローター軸に作用させたほうが遠心力による反力を生じさせやすい。
【0088】
また、本発明の調速装置をキャスト用ベイトリールに用いることもできる。本発明の調速装置をキャスト用ベイトリールに用いる場合、一般的にキャスト用ベイトリールにはキャスト用制動手段を有することが殆どであり、そのキャスト用制動手段を本発明の抵抗発生手段として用いることができる。キャスト用制動手段は、スプールの回転が速くなるほど制動力を増すことが可能であり、多くの場合制動力を調整するための機構を備えている。キャスト用制動手段には、遠心力と摩擦力を利用するものや、磁場中の導体に発生する渦電流を利用するもの、磁場中のコイルに発生する発電ブレーキの作用を利用するものなどが知られている。
キャスト用制動手段は、釣糸放出時の糸絡みを防ぐための制動力を与えるものであるが、本発明に用いる場合は、釣糸巻き取り時にばねの復元力と釣り合わせるための制動力を発生させる役割を果たすことができる。
【0089】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。本発明で用いる抵抗発生手段は、上述のような粘性流体の粘性力によるものに限らない。例えば、
図15及び
図16に示すような、脱進機を利用したものでも良い。
図15及び
図16は、第四実施形態に係る魚釣用リールのハンドル装置の抵抗発生手段を示す平断面図である。
【0090】
図15及び
図16に示すように、本実施形態による抵抗発生手段は、出力部材412に設けられた雁木車651と、脱進機653の作用によって実現される。雁木車651は、出力部材412の回転軸を中心軸として、径方向に突出するように形成された複数の歯であり、脱進機653の両端に形成された2本の爪654,655と交互に当接する。脱進機653は、固定筒417上に設けられた回転軸652によって、揺動可能に軸支される。
【0091】
図15に示すように、脱進機653の一方の爪655が雁木車651から離間している際、他方の爪654は雁木車651と噛み合っており、爪654は蓄積されたばね部材413が開放される際の作用により、雁木車651から逃げる方向の力を受ける。爪654が雁木車651から逃げると、雁木車651は一歯分回転する。脱進機653の他方の爪655が雁木車651と噛み合うと、出力部材412は一旦回転を停止し、
図16の状態になる。この状態で、爪655は蓄積されたばね部材413が開放される際の作用により、雁木車651から逃げる方向の力を受ける。爪654が雁木車651から逃げると、雁木車651は一歯分回転し、
図15の状態になる。
【0092】
このように、雁木車651と脱進機653の作用により、出力部材412は一歯分ずつの回転を間歇的に続ける。このとき、脱進機653が一往復動作するときの周期は、脱進機653の質量とばね定数によって決まるため、ばね部材413の蓄積量にほとんど左右されない。したがって、ローター4の回転の速度ムラが非常に少ない調速機を構成可能である。一方、本実施形態のように雁木車651と脱進機653で構成した場合、騒音が発生しやすい、所定以外の速度でローター4を動かすのが難しいといったデメリットもある。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、抵抗発生手段は省略してもよい。抵抗発生手段があった方がより速度ムラは抑制できるが、抵抗発生手段を省略してばね要素-質量要素だけでも速度ムラを減らす効果はある(二次おくれ系:ばねとローターの慣性質量で決まる固有振動数よりも高周波な成分は伝わりにくくなる効果)。
また、利用者がハンドルを回す際に生じる回転の速度ムラは、早くても10Hz程度の周波数になるため、ばねとローターの慣性質量で決まる固有振動数は、これよりも低周波数にするのが望ましい。
【0094】
また、本実施形態のハンドル装置(又は調速装置単体)は、既存の魚釣用リールに対して後付けで取り付けることができる。
一方、本実施形態の調速装置をリール本体に内蔵にした場合、リール本体の筐体の一部を調速装置の筐体と兼ねることができるため、調速装置を取付けた後の装置全体の小型化、軽量化を図ることができる。
【0095】
また、第二実施形態のロック機構の代わりに、出力部材に第2の操作部材(ロックレバー)を付けても良い。その場合、調速効果を機能させたいときは第1の操作部材(ハンドル)を操作し、調速効果を機能させたくないときは第2の操作部材(ロックレバー)を操作すると良い。
このように、入力部材と出力部材をロックさせる方式と類似の機能が実現できる。2つの方式を比較すると、入力部材と出力部材をロックさせる方式(第二実施形態の方式)では、ロック中に入力部材と出力部材の間に大きな接触摩擦力を生じさせる必要があるため、摩耗の影響を受けてしまったり、入力部材と出力部材をロックできるトルク容量に制限ができてしまったりなどの課題がある。一方、第1の操作部材(ハンドル301)を回転操作しても、第2の操作部材(ロックレバー302)と交差することが無いため、操作性が良いというメリットがある。
【0096】
一方、出力部材に第2の操作部材を設ける方式では、出力部材と操作ハンドルが可動しない構造のため、出力部材に大きなトルクを伝達することができ、摩耗の影響も受けないという効果がある。一方、第1の操作部材を回転操作する際に、第2の操作部材と交差しやすいため、操作性の確保が難しくなる。
【符号の説明】
【0097】
1 リール本体
3 ハンドル
4 ローター
5 スプール
100 調速装置
101 入力部材
102 出力部材
103 ばね部材
104 固定筒
R1 魚釣用リール