(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026022727
(43)【公開日】2026-02-13
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20260205BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20260205BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20260205BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20260205BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20260205BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/625
B60K11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124218
(22)【出願日】2024-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】河口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 勇馬
【テーマコード(参考)】
3D038
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC20
3D038AC22
3D038AC23
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】CO
2を含む冷媒を循環させて、車両内のバッテリなどを冷却する冷却システムにおいて、システム全体の効率低下を抑制しつつ、バッテリの冷却能力を確保する。
【解決手段】冷却システム100は、冷媒を圧縮するコンプレッサ1と、コンプレッサ1からの冷媒を冷却する熱交換器2と、熱交換器2により冷却された冷媒を用いる熱交換器5a、6aと、熱交換器2からの冷媒をバッテリ6に供給し、この冷媒をコンプレッサ1に戻す冷媒通路17と、バッテリ6の上流側の冷媒通路17に設けられた膨張弁E2と、を有し、制御装置80は、バッテリ温度が第1領域R1内にある場合には、膨張弁E2の開度を一定に維持し、バッテリ温度が第2領域R2内にある場合には、膨張弁E2の開度をバッテリ温度が上昇するにつれて増加させ、バッテリ温度が第3領域R3内にある場合には、膨張弁E2の開度を大きな開度に維持する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2を含む冷媒を循環させて、車両内の冷却を行う冷却システムであって、
前記冷媒を圧縮するコンプレッサと、
前記コンプレッサにより圧縮された前記冷媒を冷却するための第1熱交換器と、
前記第1熱交換器により冷却された前記冷媒を用いて、少なくとも前記車両の空調を行うための第2熱交換器と、
前記第1熱交換器により冷却された前記冷媒を用いて前記車両内のバッテリを冷却するために、前記冷媒を前記バッテリに供給すると共に、前記バッテリにおいて冷却に用いられた後の前記冷媒を前記コンプレッサに供給するための冷媒通路と、
前記バッテリの上流側の前記冷媒通路上に設けられ、前記冷媒を膨張するための膨張弁と、
前記バッテリの温度を取得して、前記バッテリの温度に基づき前記膨張弁を制御するように構成された制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、前記バッテリを外部充電するときにおいて、
前記バッテリの温度が第1領域内にある場合には、前記膨張弁の開度を一定に維持し、
前記バッテリの温度が前記第1領域よりも高温側の第2領域内にある場合には、前記膨張弁の開度を前記第1領域よりも大きな開度にすると共に、前記膨張弁の開度を前記バッテリの温度が上昇するにつれて増加させ、
前記バッテリの温度が前記第2領域よりも高温側の第3領域内にある場合には、前記膨張弁の開度を前記第2領域よりも大きな開度に維持する、
ように構成されている、ことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記バッテリを充電するCレートが大きくなるほど、前記第1領域を縮小する一方で、前記第3領域を拡大すると共に、前記第2領域内での前記バッテリの温度に対する前記膨張弁の開度の変化率を大きくするように構成されている、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記冷媒通路を第1冷媒通路とし、前記膨張弁を第1膨張弁とすると、前記冷却システムは、前記第2熱交換器において冷却に用いられた後の前記冷媒を、前記第1冷媒通路を介さずに、前記コンプレッサに供給するための第2冷媒通路と、前記第2冷媒通路上に設けられ、前記冷媒を膨張するための第2膨張弁と、を更に有し、
前記制御装置は、前記第1膨張弁の開度が大きくなるにつれて前記第2膨張弁の開度を増加させるように構成されている、
請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記コンプレッサから吐出される前記冷媒の温度を所定温度以下にするべく、前記膨張弁の開度を所定の限界開度以下に規制するように構成されている、請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記バッテリを所定以上のCレートで充電しているときに、前記バッテリの温度に基づく前記膨張弁の制御を行うように構成されている、請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記冷却システムは、前記冷媒通路の前記冷媒を前記バッテリ内の複数のセルの周りに流して、前記複数のセルを前記冷媒により直接的に冷却するためのバッテリ熱交換器を更に有し、
前記バッテリ熱交換器には、前記膨張弁により減圧された前記冷媒が供給される、
請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記第2熱交換器は、前記車両の空調を行うための空調熱交換器を含むと共に、前記バッテリにおいて複数のセルを含むバッテリパックの外側に前記冷媒を供給して、前記複数のセルを前記冷媒により間接的に冷却するためのバッテリ熱交換器を更に含む、請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記第1熱交換器は、前記コンプレッサ、前記第2熱交換器、前記冷媒通路、及び前記膨張弁を少なくとも含む第1熱サイクル回路と、前記第1熱サイクル回路とは別に、外気と熱交換を行う外気熱交換器を含む第2熱サイクル回路と、の間で熱交換するカスケード熱交換器として構成されている、請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記冷却システムは、前記バッテリの電力を用いて前記車両を駆動するモータを、前記第1熱交換器により冷却された前記冷媒によって更に冷却するように構成されている、請求項1又は2に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2を含む冷媒を循環させて、車両内の冷却を行う冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エアコンで利用される冷凍サイクルにおいて、コンプレッサや熱交換器などを介して、冷媒を循環するシステムが用いられている。また、近年では、このような冷媒を循環するシステムが、車両内の構成要素の冷却、例えば電気自動車やハイブリッド車のバッテリの冷却にも利用されている。1つの例では、特許文献1には、圧縮機、第1熱交換器及び第2熱交換器を冷媒流路によって接続し、第2熱交換器によって冷媒と電池セルとの熱交換を行うことで、電池セルの冷却や加熱を行うシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、バッテリの急速充電や高出力化に伴って、バッテリの冷却要求が高まっており、バッテリ内部を直接冷却可能な絶縁性を有する冷却水等を用いたバッテリ冷却技術が開発されている。このような冷却液等を用いたバッテリ冷却技術では、高い冷却能力が期待できる一方で、オイルの粘度による圧力損失が発生する。これに対して、本件発明者らは、絶縁性を有する低粘度なCO2を含む冷媒(以下では適宜「CO2冷媒」と呼ぶ。)を用いて、圧力損失を下げつつ、バッテリを効率的に冷却することを考えた。このようなCO2冷媒は、いわゆる自然冷媒であるので、環境や人体への影響にも配慮したものとなっている。
【0005】
ここで、冷媒によりバッテリを冷却する冷却システムでは、冷媒によるバッテリの冷却能力を向上するために、バッテリに供給する冷媒の量を確保することが望ましい。例えば、バッテリの外部充電時、特に充電速度が大きいときには、バッテリの発熱を抑えるようにバッテリの冷却能力をしっかり確保する必要がある。一方で、バッテリに供給する冷媒の量を多くすると、システム全体の効率(つまり冷凍サイクルの効率)が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、CO2を含む冷媒を循環させて、車両内のバッテリなどを冷却する冷却システムにおいて、システム全体の効率低下を抑制しつつ、冷媒によるバッテリの冷却能力を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、CO2を含む冷媒を循環させて、車両内の冷却を行う冷却システムであって、冷媒を圧縮するコンプレッサと、コンプレッサにより圧縮された冷媒を冷却するための第1熱交換器と、第1熱交換器により冷却された冷媒を用いて、少なくとも車両の空調を行うための第2熱交換器と、第1熱交換器により冷却された冷媒を用いて車両内のバッテリを冷却するために、冷媒をバッテリに供給すると共に、バッテリにおいて冷却に用いられた後の冷媒をコンプレッサに供給するための冷媒通路と、バッテリの上流側の冷媒通路上に設けられ、冷媒を膨張するための膨張弁と、バッテリの温度を取得して、バッテリの温度に基づき膨張弁を制御するように構成された制御装置と、を有し、制御装置は、バッテリを外部充電するときにおいて、バッテリの温度が第1領域内にある場合には、膨張弁の開度を一定に維持し、バッテリの温度が第1領域よりも高温側の第2領域内にある場合には、膨張弁の開度を第1領域よりも大きな開度にすると共に、膨張弁の開度をバッテリの温度が上昇するにつれて増加させ、バッテリの温度が第2領域よりも高温側の第3領域内にある場合には、膨張弁の開度を第2領域よりも大きな開度に維持する、ように構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明によれば、冷媒を循環させる1つのシステム(冷却システム)により、車両の空調及びバッテリの冷却を適切に実現することができる。また、本発明によれば、バッテリの外部充電時において、バッテリ温度が第1領域内にある場合、つまりバッテリ温度が比較的低い場合には、膨張弁を比較的小さな開度に維持して、冷媒通路からバッテリに供給される冷媒の流量を抑えることで、冷却システムにおけるシステム全体の効率を確保することができる。他方で、本発明によれば、バッテリ温度が第2領域内にある場合、つまりバッテリ温度が比較的高い場合には、膨張弁の開度をバッテリ温度に応じて増加させて、冷媒通路からバッテリに供給される冷媒の流量を増加させることで、バッテリの冷却能力を確保することができる。また、本発明によれば、バッテリ温度が第3領域内にある場合、つまりバッテリ温度が更に高い場合には(充電速度が大きいときにバッテリ温度が高くなる傾向にある)、膨張弁の開度を大きな開度に維持することで、バッテリの冷却能力を効果的に確保することができる。以上より、本発明によれば、バッテリの外部充電時に、システム全体の効率低下を抑制しつつ、冷媒によるバッテリの冷却能力を確保することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、制御装置は、バッテリを充電するCレートが大きくなるほど、第1領域を縮小する一方で、第3領域を拡大すると共に、第2領域内でのバッテリの温度に対する膨張弁の開度の変化率を大きくするように構成されている。
このように構成された本発明によれば、バッテリ温度が高くなる傾向にある、Cレートが大きい場合に、冷媒通路からバッテリに供給される冷媒の流量をより増加させることができ、バッテリの冷却能力を効果的に確保することが可能となる。
【0010】
本発明において、好ましくは、冷媒通路を第1冷媒通路とし、膨張弁を第1膨張弁とすると、冷却システムは、第2熱交換器において冷却に用いられた後の冷媒を、第1冷媒通路を介さずに、コンプレッサに供給するための第2冷媒通路と、第2冷媒通路上に設けられ、冷媒を膨張するための第2膨張弁と、を更に有し、制御装置は、第1膨張弁の開度が大きくなるにつれて第2膨張弁の開度を増加させるように構成されている。
このように構成された本発明によれば、第1膨張弁を介して第1冷媒通路からコンプレッサに供給される冷媒の流量の増加に応じて、第2膨張弁を介して第2冷媒通路からコンプレッサに供給される冷媒の流量を増加させることで、コンプレッサから吐出される冷媒の温度の上昇を抑えることができる。その結果、例えば、冷媒中のオイルの機能低下や劣化が生じることを防止できる。
【0011】
本発明において、好ましくは、制御装置は、コンプレッサから吐出される冷媒の温度を所定温度以下にするべく、膨張弁の開度を所定の限界開度以下に規制するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、膨張弁の開度を限界開度以下に規制することで、膨張弁の開度を大きくし過ぎて、コンプレッサから吐出される冷媒の温度が高温になることを抑制できる。
【0012】
本発明において、好ましくは、制御装置は、バッテリを所定以上のCレートで充電しているときに、バッテリの温度に基づく膨張弁の制御を行うように構成されている。
このように構成された本発明によれば、バッテリ温度が高くなる傾向にある、Cレートが大きい状況において、上述した膨張弁の制御を行うことができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、冷却システムは、冷媒通路の冷媒をバッテリ内の複数のセルの周りに流して、複数のセルを冷媒により直接的に冷却するためのバッテリ熱交換器を更に有し、バッテリ熱交換器には、膨張弁により減圧された冷媒が供給される。
このように構成された本発明によれば、バッテリ熱交換器において複数のセルを冷媒により直接的に冷却するため、複数のセルを効果的に冷却することができる。この場合、バッテリパックなどの耐圧性が比較的低いことから、コンプレッサからの高圧の冷媒をそのままバッテリ熱交換器に供給するのは望ましくないので、本発明では、コンプレッサからの冷媒を膨張弁により減圧して、バッテリ熱交換器に供給している。これにより、バッテリの内部(複数のセルなど)を的確に保護することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、第2熱交換器は、車両の空調を行うための空調熱交換器を含むと共に、バッテリにおいて複数のセルを含むバッテリパックの外側に冷媒を供給して、複数のセルを冷媒により間接的に冷却するためのバッテリ熱交換器を更に含む。
このように構成された本発明によれば、バッテリパックの外側に冷媒を供給するようなバッテリ熱交換器を用いることで、バッテリを適切に冷却することができると共に、冷媒との間で比較的大きな熱交換を実現できる。
【0015】
本発明において、好ましくは、第1熱交換器は、コンプレッサ、第2熱交換器、冷媒通路、及び膨張弁を少なくとも含む第1熱サイクル回路と、第1熱サイクル回路とは別に、外気と熱交換を行う外気熱交換器を含む第2熱サイクル回路と、の間で熱交換するカスケード熱交換器として構成されている。
このように構成された本発明によれば、第1熱サイクル回路を、外気と熱交換を行う第2熱サイクル回路との間で熱交換(カスケード熱交換)を行わせることで、第1熱サイクル回路のシステム全体の効率を向上できる、換言すると第1熱サイクル回路内のコンプレッサの仕事を削減することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、冷却システムは、バッテリの電力を用いて車両を駆動するモータを、第1熱交換器により冷却された冷媒によって更に冷却するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、冷媒を循環させる1つのシステム(冷却システム)により、モータなどの車両内の種々の構成要素の冷却を適切に実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、CO2を含む冷媒を循環させて、車両内のバッテリなどを冷却する冷却システムにおいて、システム全体の効率低下を抑制しつつ、冷媒によるバッテリの冷却能力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による冷却システムが適用された車両の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態による冷却システムの概略構成図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、それぞれ、本発明の実施形態による第1バッテリ熱交換器及び第2バッテリ熱交換器の概略構成図である。
【
図4】本発明の実施形態による冷却システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、それぞれ、本発明の実施形態において定常走行時又は低速充電時に行われるE2開度及びE3開度の制御を示している。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、それぞれ、本発明の実施形態において急速充電時に行われるE2開度及びE3開度の制御を示している。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、それぞれ、本発明の実施形態においてバッテリの異常発熱時に行われるE2開度及びE3開度の制御を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による冷却システムを説明する。
【0020】
[全体構成]
まず、
図1を参照して、本実施形態による冷却システムの全体構成について説明する。
図1は、本実施形態による冷却システムが適用された車両の概略構成図である。
【0021】
図1に示すように、車両200は、例えば電気自動車であり、冷凍サイクルにて冷媒を循環する冷却システム100を有する。この冷却システム100は、主に、冷媒を圧縮するためのコンプレッサ(圧縮機)1と、コンプレッサ1により圧縮された冷媒を冷却するための熱交換器2と、車両200を駆動するための動力を発生するモータ(電動機)4と、車両200内の空調を行うエアコン5と、モータ4を駆動するための電力を供給するバッテリ6と、を有する。
【0022】
冷却システム100は、自然冷媒としてのCO2冷媒(以下では単に「冷媒」と呼ぶこともある。)を循環させる。典型的には、CO2冷媒は、CO2にPAGなどの冷凍機油(オイル)や添加剤などを含有させた冷媒である。このようなCO2冷媒を用いるため、コンプレッサ1は、冷媒を非常に高い圧力に圧縮するように構成されている。モータ4は、こうしてコンプレッサ1により圧縮された冷媒(液状(典型的には超臨界状態)の冷媒)を、ロータやステータの冷却に用いる。加えて、モータ4は、回転軸を支持する滑り軸受の潤滑にも、冷媒を用いるように構成されている。また、コンプレッサ1により圧縮された冷媒は、エアコン5での空調に用いられると共に、バッテリ6の冷却に用いられる。例えば、冷却システム100では、コンプレッサ1から熱交換器2に高温高圧気体冷媒が供給され、熱交換器2からモータ4などに低温高圧液状冷媒が供給され、モータ4などからコンプレッサ1に常温低圧気体冷媒が供給されるようになっている。
【0023】
[冷却システムの構成]
次に、
図2を参照して、本実施形態による冷却システム100について具体的に説明する。
図2は、本実施形態による冷却システム100の概略構成図である。
【0024】
図2に示すように、冷却システム100は、上記したCO
2冷媒を循環させる第1熱サイクル回路(低温回路)100aと、外気と熱交換を行う外気熱交換器30を含み、プロパンやフッ素系冷媒などの冷媒を循環させる第2熱サイクル回路(高温回路)100bと、を有しており、カスケード冷凍サイクルを実現するように構成されている。具体的には、これら第1熱サイクル回路100aと第2熱サイクル回路100bとは、熱交換器2においてカスケード熱交換するようになっている(以下では熱交換器2を「カスケード熱交換器2」と適宜表記する)。このカスケード熱交換器2は、本発明における「第1熱交換器」に相当する。
【0025】
冷却システム100の第1熱サイクル回路100aは、主に、上記したコンプレッサ1やモータ4に加えて、エアコン5において熱交換を行うための空調熱交換器5a(具体的には車内に供給する冷風を生成する蒸発器)と、バッテリ6を冷却するための熱交換を行う第1バッテリ熱交換器6a及び第2バッテリ熱交換器6bと、冷媒が流れる冷媒通路11~20と、冷媒を圧送する圧送機23と、冷媒の流量を調整する流量調整弁V1、V2、V3と、冷媒を膨張させて減圧する膨張弁E1、E2、E3と、を有する。
【0026】
本実施形態では、コンプレッサ1は、上流側の第1コンプレッサ1aと、下流側の第2コンプレッサ1bとを有しており、冷媒を2段階で圧縮するように構成されている。第1コンプレッサ1aは、冷媒の圧力P3を圧力P2に昇圧し(圧力P2>圧力P3)、第2コンプレッサ1bは、冷媒の圧力P2を圧力P1に昇圧する(圧力P1>圧力P2)。1つの例では、圧力P1は3MPa程度であり、圧力P2は1.5MPa程度であり、圧力P3は0.1MPa程度である。
【0027】
また、本実施形態では、バッテリ6は、2つの第1バッテリ熱交換器6a及び第2バッテリ熱交換器6bにより冷却されるように構成されている。これら第1バッテリ熱交換器6a及び第2バッテリ熱交換器6bの構成について、
図3(a)及び
図3(b)を参照して説明する。
図3(a)及び
図3(b)は、それぞれ、第1バッテリ熱交換器6a及び第2バッテリ熱交換器6bの一例を概略的に示している。より詳しくは、
図3(a)は、バッテリ6のバッテリパック61を外側から見た平面図を示し、
図3(b)は、バッテリパック61内を透視した平面図を示している。
【0028】
図3(a)に示すように、第1バッテリ熱交換器6aは、バッテリ6において複数のセル62を含むバッテリパック61の外側(典型的にはケースの表面)に冷媒を供給して、より詳しくは蛇行するように形成された流路63に冷媒を流して、バッテリ6内の複数のセル62を冷媒により間接的に冷却するように構成されている。なお、バッテリ6内のセル62を冷媒により間接的に冷却する構成は、
図3(a)に示した構成に限定はされず、公知の種々の構成を適用可能である。これに対して、
図3(b)に示すように、第2バッテリ熱交換器6bは、冷媒をバッテリ6内の複数のセル62の周りに流して、つまり冷媒をバッテリパック61の内部に流して、複数のセル62を冷媒により直接的に冷却するように構成されている。なお、第1バッテリ熱交換器6aと、上記した空調熱交換器5aとは、本発明における「第2熱交換器」に相当する。この場合、空調熱交換器5aは、エアコン5の蒸発器(冷却対象)を冷媒により冷却し、第1バッテリ熱交換器6aは、バッテリ6(冷却対象)を冷媒により冷却する。
【0029】
図2に戻って、第1熱サイクル回路100a内の冷媒の流れなどについて、具体的に説明する。コンプレッサ1により圧縮された冷媒は、冷媒通路11からカスケード熱交換器2に供給され、カスケード熱交換器2により冷却された冷媒は、冷媒通路11に接続された冷媒通路12、13、15のそれぞれから、空調熱交換器5a、第1バッテリ熱交換器6a及びモータ4に供給される。冷媒通路12と冷媒通路13とは、合流点C1で合流して冷媒通路16に接続され、それにより、空調熱交換器5a及び第1バッテリ熱交換器6aのそれぞれで熱交換された冷媒が、この冷媒通路16へと供給される。また、カスケード熱交換器2により冷却された冷媒は、冷媒通路11に接続された冷媒通路14によって、空調熱交換器5a及び第1バッテリ熱交換器6aを介さずに(つまり冷媒通路12、13、15をバイパスする)、冷媒通路16に直接供給されるようになっている。この場合、冷媒通路14と冷媒通路16とは、上記の合流点C1の下流側の合流点C2で合流する。また、冷媒通路12、13、14には、各通路を流れる冷媒の流量を調整するための流量調整弁V1、V2、V3がそれぞれ設けられており、冷媒通路15には、モータ4に供給される冷媒を膨張するための膨張弁E1が設けられている。膨張弁E1は、冷媒を圧力P1から圧力P2に減圧するように機能する。
【0030】
また、冷媒通路16には冷媒通路17が接続されており、冷媒通路16内の冷媒が、冷媒通路17から第2バッテリ熱交換器6bへと供給されるようになっている。この冷媒通路17には、第2バッテリ熱交換器6bの上流側に、冷媒を膨張するための膨張弁E2が設けられ、それにより、第2バッテリ熱交換器6bには、膨張弁E2によって減圧された冷媒が供給される。膨張弁E2は、冷媒を圧力P1から圧力P3に減圧するように機能する。また、冷媒通路17において、第2バッテリ熱交換器6bの下流側には、公知の二重管構造を有する内部熱交換器(IHX:Internal Heat Exchanger)6cが設けられ、更にその下流側が、コンプレッサ1の第1コンプレッサ1aに接続されている。この第1コンプレッサ1aには、上記の膨張弁E2によって減圧された圧力P3の冷媒が供給される。
【0031】
更に、冷媒通路16は、冷媒通路17の接続箇所の下流側において、冷媒通路18と冷媒通路20とに分岐する。冷媒通路18は、冷媒を膨張するための膨張弁E3が設けられている。膨張弁E3は、冷媒を圧力P1から圧力P2に減圧するように機能する。また、冷媒通路18は、膨張弁E3の下流側の合流点C3において、上記したモータ4が設けられた冷媒通路15と合流して、これら冷媒通路15、18は冷媒通路19へと接続される。冷媒通路19は、コンプレッサ1の第1コンプレッサ1aと第2コンプレッサ1bとの間に接続され、膨張弁E1や膨張弁E3で減圧された圧力P2の冷媒を、第2コンプレッサ1bに供給するようになっている。他方で、冷媒通路20は、その下流側の合流点C4において、コンプレッサ1とカスケード熱交換器2との間の冷媒通路11に接続されている。冷媒通路20には、圧送機23及び公知の二重管構造を有する内部熱交換器(IHX)24が設けられている。このような冷媒通路20によれば、上記の冷媒通路16からの冷媒を、圧送機23によって、コンプレッサ1を介さずに(つまりコンプレッサ1を迂回して)、カスケード熱交換器2へと供給できるようになっている。
【0032】
なお、冷媒通路17は、本発明における「第1冷媒通路」に相当し、冷媒通路18、19は、本発明における「第2冷媒通路」に相当する。また、膨張弁E2は、本発明における「第1膨張弁」に相当し、膨張弁E3は、本発明における「第2膨張弁」に相当する。
【0033】
続いて、冷却システム100の第2熱サイクル回路100bは、上記したようにプロパンやフッ素系冷媒などの冷媒を循環させる高温回路であり、外気と熱交換を行う外気熱交換器30に加えて、冷媒が流れる冷媒通路31と、冷媒を圧送する圧送機32と、冷媒を膨張させる膨張弁33とを有する。本実施形態による冷却システム100では、このような第2熱サイクル回路100bを、第1熱サイクル回路100aとは別に設けることで、第1熱サイクル回路100aのシステム全体の効率を向上させている、換言するとコンプレッサ1の仕事を削減するようにしている。
【0034】
次に、
図2に加えて、
図4を参照して、本実施形態による冷却システム100の電気的構成について説明する。
図4は、本実施形態による冷却システム100の電気的構成を示すブロック図である。
【0035】
図4に示すように、冷却システム100は、当該システムにおける各種制御を行うように構成された制御装置80を有する。制御装置80は、1つ以上のプロセッサ80a(典型的にはCPU)と、当該プロセッサ80a上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)や各種のデータを記憶するROMやRAMなどのメモリ80bと、を備えるコンピュータにより構成される。
【0036】
また、冷却システム100は、第1熱サイクル回路100aに設けられた、冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ41、42、43、44及び冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサ51、52、53と(
図2参照)、車室(キャビン)の温度を検出する車室温度センサ71と、バッテリ6の温度(以下では適宜「バッテリ温度」と呼ぶ。)を検出するバッテリ温度センサ72と、モータ4の温度を検出するモータ温度センサ73と、を有する。具体的には、
図2に示すように、冷媒温度センサ41は、コンプレッサ1とカスケード熱交換器2との間(詳しくは冷媒通路11と冷媒通路20との合流点C4よりも上流側)の冷媒通路11上に設けられ、冷媒温度センサ42は、冷媒通路14と冷媒通路16との合流点C2に設けられ、冷媒温度センサ43は、冷媒通路15と冷媒通路18との合流点C3に設けられ、冷媒温度センサ44は、第2バッテリ熱交換器6b及びIHX6cの下流側の冷媒通路17上に設けられている。また、冷媒圧力センサ51は、カスケード熱交換器2の下流側の冷媒通路11上に設けられ、冷媒圧力センサ52は、モータ4の下流側の冷媒通路15上に設けられ、冷媒圧力センサ53は、第2バッテリ熱交換器6b及びIHX6cの下流側の冷媒通路17上に設けられている。
【0037】
制御装置80は、上記のセンサ41~44、51~53、71~73からの検出信号に基づき、コンプレッサ1、流量調整弁V1、V2、V3、及び膨張弁E1、E2、E3に対して制御信号を供給して、これらを制御する。特に、本実施形態では、制御装置80は、バッテリ6の外部充電時に、冷却システム100(特に第1熱サイクル回路100a)の効率低下を抑制しつつ、冷媒によるバッテリ6の冷却能力を確保するように、バッテリ温度センサ72により検出されたバッテリ温度に基づき、膨張弁E2及び膨張弁E3の開度(以下では適宜「E2開度」及び「E3開度」と呼ぶ。)を制御する(詳細は後述する)。
【0038】
[制御方法]
以下では、本実施形態において制御装置80が行う制御について説明する。まず、本実施形態による制御の基本概念について説明する。
【0039】
車両200の走行状態や、車両200の走行時の冷房の使用の有無や、バッテリ6の充電速度(低速充電、急速充電)などの種々の状況に応じて、冷却システム100の効率(COP:Coefficient Of Performance)と、冷却能力とのバランスが変化する。よって、車両200の航続距離向上や、バッテリ6の充電時間短縮を実現するためには、このような状況を加味して、冷却能力と効率とのバランスを調整することが望ましい。
【0040】
本実施形態による冷却システム100では、合流点C2から冷媒通路17、膨張弁E2及び第2バッテリ熱交換器6bを介してコンプレッサ1(第1コンプレッサ1a)に供給される冷媒の割合(以下では適宜「第1冷媒割合」と呼び。)と、合流点C2から冷媒通路18、膨張弁E3、合流点C3及び冷媒通路19を介してコンプレッサ1(第2コンプレッサ1b)に供給される冷媒の割合(以下では適宜「第2冷媒割合」と呼び。)とのバランスにより、コンプレッサ1から吐出される冷媒の温度(以下では適宜「コンプレッサ吐出温度」と呼ぶ。)、システム全体の冷却能力、及びシステム全体の効率が変化する。この場合、第1及び第2冷媒割合は、それぞれ、冷媒通路17上の膨張弁E2及び冷媒通路18上の膨張弁E3により調整される。基本的には、コンプレッサ吐出温度は、第1冷媒割合が大きくなると高くなり、第2冷媒割合が大きくなると低くなるという傾向があり、システム全体の冷却能力は、第1冷媒割合が大きくなると高くなるという傾向があり、システム全体の効率は、第1冷媒割合が大きくなると低くなり、第2冷媒割合が大きくなると低くなるという傾向がある。
【0041】
1つの例では、制御装置80は、車両200の走行時には、航続距離を延ばすために、冷却能力を抑えて効率を確保するように、第1及び第2冷媒割合を比較的小さくするよう膨張弁E2、E3を制御する。別の例では、制御装置80は、バッテリ6の外部充電時には、短時間で充電が完了させるべく冷却能力を大きくし、且つコンプレッサ吐出温度を所定温度(例えば180℃)以下にし、尚且つ効率を所定値以上(例えば1以上)とするように、第1及び第2冷媒割合のそれぞれを中程度の値に設定するよう膨張弁E2、E3を制御する。
【0042】
次に、本実施形態において制御装置80が膨張弁E2、E3に対して行う具体的な制御について説明する。
【0043】
(定常走行時又は低速充電時の制御)
まず、
図5(a)及び(b)を参照して、本実施形態において定常走行時又は低速充電時に行われる制御について説明する。
図5(a)は、バッテリ温度(横軸)に応じて行われる、E2開度(縦軸)の制御を示し、
図5(b)は、E2開度(横軸)に応じて行われる、E3開度(縦軸)の制御を示している。これら
図5(a)及び(b)は、定常走行時又は低速充電時に適用される、E2開度及びE3開度の制御マップに相当する。
【0044】
本実施形態では、制御装置80は、車両200の定常走行時、又はバッテリ6の低速充電時(外部充電を意味する。以下同様とする。)に、
図5(a)及び(b)に示すような制御を行う。例えば、定常走行時とは、車両200の加減速度(絶対値)が所定値未満であるときを意味し、低速充電時とは、バッテリ6を所定未満のCレート(1つの例では1C)で充電するときを意味する。このような定常走行時や低速充電時には、バッテリ6はなだらかに発熱する(0.4kW程度)。なお、Cレートは、バッテリ6の充電速度を意味し、基本的にはバッテリ容量に対する充電電流値の比で規定される。
【0045】
具体的には、制御装置80は、定常走行時又は低速充電時に、
図5(a)に示すように、バッテリ温度が低温側の第1領域R1内にある場合には、E2開度を0(全閉)に維持する。これにより、バッテリ温度が比較的低い場合には、第1冷媒割合を抑えることで、システム全体の効率を確保することができる。なお、第1領域R1は、セル62を直接冷却する第2バッテリ熱交換器6bを用いずに、セル62を間接冷却する第1バッテリ熱交換器6aによりバッテリ6(セル62)を十分冷却できるような、バッテリ温度の範囲に相当する。また、制御装置80は、このようにE2開度を0(全閉)に設定するときには、E3開度も0(全閉)に設定する(
図5(b))。これにより、第2冷媒割合も抑えることで、システム全体の効率を効果的に確保することができる。
【0046】
他方で、制御装置80は、
図5(a)に示すように、バッテリ温度が第1領域R1よりも高温側の第2領域R2内にある場合には、E2開度をバッテリ温度が上昇するにつれて線形に増加させる。これにより、第1冷媒割合を増加させて、冷媒によるバッテリ6の冷却能力を確保することができる。より詳しくは、制御装置80は、このようにE2開度をバッテリ温度に応じて増加させる場合、コンプレッサ吐出温度を所定温度(例えば180℃)以下にするべく、E2開度を所定の限界開度Lim1以下に規制する、つまりE2開度を限界開度Lim1以下の範囲で増加させる。なお、コンプレッサ吐出温度の所定温度は、冷媒の温度が当該所定温度を超えると、冷媒中のオイルが機能しなくなり、摺動面の焼付きやシール性の低下が生じたり、オイルの劣化が生じたりするような温度に基づき設定される。そして、限界開度Lim1は、このような所定温度に基づき事前に設定される。
【0047】
更に、制御装置80は、定常走行時又は低速充電時において上記のようにE2開度を制御する場合、
図5(b)に示すように、E2開度が大きくなるにつれて、E3開度も線形に増加させるようにする。これにより、第1冷媒割合の増加に応じて第2冷媒割合も増加させることで、コンプレッサ吐出温度の上昇を抑えることができる。
【0048】
なお、上記のように、第2冷媒割合を増加させる(つまり冷媒通路18、19を介してコンプレッサ1に供給される冷媒を増加させる)ことで、コンプレッサ吐出温度の上昇を抑えることができる理由は以下の通りである。本実施形態では、コンプレッサ1を、第1及び第2コンプレッサ1a、1bによって冷媒を2段で昇圧するように構成している。そして、上流側の第1コンプレッサ1aには、膨張弁E2で減圧された冷媒を供給する一方で、下流側の第2コンプレッサ1bには、このような第1コンプレッサ1aから吐出された冷媒に対して、膨張弁E3で減圧された比較的低エンタルピー状態の冷媒(つまり上記の第1コンプレッサ1aでの昇圧後の冷媒よりも低いエンタルピーの冷媒)を混合した冷媒を供給している。これにより、第2コンプレッサ1bでの昇圧後の冷媒が高温になるのが抑制され、コンプレッサ吐出温度の上昇を抑えることができるのである。
【0049】
(急速充電時の制御)
続いて、
図6(a)及び(b)を参照して、本実施形態において急速充電時に行われる制御について説明する。
図6(a)は、バッテリ温度(横軸)に応じて行われる、E2開度(縦軸)の制御を示し、
図6(b)は、E2開度(横軸)に応じて行われる、E3開度(縦軸)の制御を示している。これら
図6(a)及び(b)は、急速充電時に適用される、E2開度及びE3開度の制御マップに相当する。
【0050】
本実施形態では、制御装置80は、バッテリ6の急速充電時に、
図6(a)及び(b)に示すような制御を行う。例えば、急速充電時とは、バッテリ6を所定以上のCレート(1つの例では2Cや3Cや4C)で充電するときを意味する。このような急速充電時では、バッテリ6において、セル62の端面からの放熱量より、セル62の内部の発熱量が大きくなる。そのため、急速充電時には、バッテリ6の局所的な温度上昇を抑えるべく、低速充電時よりも、セル62を直接冷却する要求が高くなる。
【0051】
具体的には、
図6(a)において、符号G1は、上記した定常走行時又は低速充電時に用いられるグラフ(
図5(a)と同様)を示し、符号G2、G3は、急速充電時に用いられるグラフを示している。詳しくは、グラフG3は、グラフG2よりも大きいCレートで充電する場合に用いられるグラフである。例えば、グラフG2は、充電時のCレートが3Cである場合に用いられ、グラフG3は、充電時のCレートが4Cである場合に用いられる。
【0052】
グラフG2、G3に示すように、制御装置80は、急速充電時においては、バッテリ温度が低温側の第1領域R1内にある場合には、E2開度を0(全閉)に維持し、バッテリ温度が第1領域R1よりも高温側の第2領域R2内にある場合には、E2開度をバッテリ温度が上昇するにつれて線形に増加させ、バッテリ温度が第2領域R2よりも更に高温側の第3領域R3内にある場合には、E2開度を限界開度Lim1に維持する。特に、制御装置80は、充電時のCレートが大きくなるほど、第1領域R1を縮小する一方で(R13<R12<R11)、第3領域R3を拡大し(R33>R32)、更に、第2領域R2でのバッテリ温度に対するE2開度の変化率(増加率)を大きくする。これにより、バッテリ6を充電するときのCレートが大きい場合に、第1冷媒割合を増加させて、冷媒によるバッテリ6の冷却能力を向上させることができる、具体的にはバッテリ6のセル62を効果的に冷却することができる。
【0053】
更に、制御装置80は、急速充電時において上記のようにE2開度を制御する場合、
図6(b)に示すように、E2開度が大きくなるにつれて、E3開度も線形に増加させるようにする。これにより、第1冷媒割合の増加に応じて第2冷媒割合も増加させることで、コンプレッサ吐出温度の上昇を抑えることができる。なお、こうしてコンプレッサ吐出温度の上昇を抑えることができる理由は、上述した通りである。
【0054】
(バッテリの異常発熱時の制御)
続いて、
図7(a)及び(b)を参照して、本実施形態においてバッテリ6の異常発熱時に行われる制御について説明する。
図7(a)は、バッテリ温度(横軸)に応じて行われる、E2開度(縦軸)の制御を示し、
図7(b)は、E2開度(横軸)に応じて行われる、E3開度(縦軸)の制御を示している。
【0055】
本実施形態では、制御装置80は、バッテリ6の異常発熱時に、
図7(a)及び(b)に示すような制御を行う。バッテリ6の異常発熱時とは、バッテリ6での内部短絡等に起因する熱暴走(この熱暴走はバッテリ6内での種々の反応や熱分解により生じる)による発熱が発生したときを意味する。この場合、制御装置80は、バッテリ6の電流値や電圧値などからバッテリ6の内部短絡を検出したり、バッテリ6内に発生するガスを検出したりすることで、このような異常発熱の発生を判断する。若しくは、制御装置80は、バッテリ温度の時間変化から、異常発熱の発生を判断してもよい。
【0056】
具体的には、制御装置80は、
図7(a)に示すように、バッテリ6が異常発熱していないときには、上述したように(
図5(a)参照)、バッテリ温度が低温側の第1領域R1内にある場合には、E2開度を0(全閉)に維持し、バッテリ温度が第1領域R1よりも高温側の第2領域R2内にある場合には、E2開度をバッテリ温度が上昇するにつれて線形に増加させる。しかしながら、制御装置80は、バッテリ6の異常発熱時に(矢印A1)、例えばバッテリ6の内部短絡を検出したときに、矢印A2に示すように、まず、E2開度を限界開度Lim1まで速やかに(ステップ状に)増加させる。これにより、冷媒によるバッテリ6の冷却能力を速やかに高めて、バッテリ6の異常発熱を抑えることができる。
【0057】
そして、制御装置80は、上記のようにE2開度を限界開度Lim1に設定した後も、バッテリ温度の上昇が継続する場合には、矢印A3に示すように、E2開度を限界開度Lim1よりも更に大きな限界開度Lim2まで速やかに(ステップ状に)増加させる。限界開度Lim2は、上記した所定温度を超えるコンプレッサ吐出温度が生じ得るような(つまりオイル機能低下やオイル劣化が生じ得るような)、大きなE2開度である。よって、E2開度をこのような限界開度Lim2に設定することにより、コンプレッサ吐出温度が所定温度を超えることを許容して、冷媒によるバッテリ6の冷却能力を最大限発揮させるようにすることで、バッテリ6の冷却を最優先させることが可能となる。これにより、バッテリ6の異常発熱を抑えて、バッテリ発火という最悪ケースを回避することができる。
【0058】
他方で、制御装置80は、バッテリ6の異常発熱時に上記のようにE2開度を制御する場合、
図7(b)に示すように、E2開度に応じてE3開度を制御する。まず、制御装置80は、E2開度が上記の限界開度Lim1未満である場合には(このときには基本的にはバッテリ6の異常発熱が生じていない)、
図5(b)や
図6(b)と同様に、E2開度が大きくなるにつれて、E3開度も線形に増加させるようにする。そして、制御装置80は、E2開度が限界開度Lim1以上である場合、つまりバッテリ6の異常発熱が発生してこれに対処するためにE2開度を限界開度Lim1よりも大きくした場合(
図7(a))、E2開度が大きくなるにつれて、E3開度を線形に減少させるようにする。これにより、コンプレッサ吐出温度の上昇を許容し、バッテリ6の冷却を最優先させることができる。
【0059】
[作用及び効果]
次に、本実施形態による冷却システム100の作用及び効果について説明する。本実施形態では、CO2を含む冷媒(CO2冷媒)を循環させて、車両200内の冷却を行う冷却システムであって、冷媒を圧縮するコンプレッサ1と、コンプレッサ1により圧縮された冷媒を冷却するためのカスケード熱交換器2と、カスケード熱交換器2により冷却された冷媒を用いる空調熱交換器5a及び第1バッテリ熱交換器6aと、カスケード熱交換器2により冷却された冷媒により車両200内のバッテリ6を冷却するために、冷媒をバッテリ6に供給すると共に、バッテリ6において冷却に用いられた後の冷媒をコンプレッサ1に供給するための冷媒通路17と、バッテリ6の上流側の冷媒通路17上に設けられ、冷媒を膨張するための膨張弁E2と、バッテリ温度を取得して、バッテリ温度に基づき膨張弁E2を制御するように構成された制御装置80と、を有し、制御装置80は、バッテリ6を外部充電するときにおいて、バッテリ温度が第1領域R1内にある場合には、膨張弁E2の開度を一定に維持し、バッテリ温度が第1領域R1よりも高温側の第2領域R3内にある場合には、膨張弁E2の開度を第1領域R1よりも大きな開度にすると共に、膨張弁E2の開度をバッテリ温度が上昇するにつれて増加させ、バッテリ温度が第2領域R2よりも高温側の第3領域R3内にある場合には、膨張弁E2の開度を第2領域R2よりも大きな開度に維持する、ように構成されている。
【0060】
このような本実施形態によれば、冷却システム100において循環される冷媒を用いて、車両200の空調及びバッテリ6の冷却の両方を適切に実現することができる。また、本実施形態によれば、バッテリ6の外部充電時において、バッテリ温度が第1領域R1内にある場合、つまりバッテリ温度が比較的低い場合には、膨張弁E2を比較的小さな開度に維持して、冷媒通路17からバッテリ6に供給される冷媒の流量を抑えることで、冷却システム100(特に第1熱サイクル回路100a)におけるシステム全体の効率を確保することができる。他方で、本実施形態によれば、バッテリ温度が第2領域R2内にある場合、つまりバッテリ温度が比較的高い場合には、膨張弁E2の開度をバッテリ温度に応じて増加させて、冷媒通路17からバッテリ6に供給される冷媒の流量を増加させることで、バッテリ6の冷却能力を確保することができる。また、本実施形態によれば、バッテリ温度が第3領域R3内にある場合、つまりバッテリ温度が更に高い場合には(充電速度が大きいときにバッテリ温度が高くなる傾向にある)、膨張弁E2の開度を大きな開度に維持することで、バッテリ6の冷却能力を効果的に確保することができる。以上より、本実施形態によれば、バッテリ6の外部充電時に、システム全体の効率低下を抑制しつつ、冷媒によるバッテリ6の冷却能力を確保することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、制御装置80は、バッテリ6を充電するCレートが大きくなるほど、第1領域R1を縮小する一方で、第3領域R3を拡大すると共に、第2領域R2内でのバッテリ温度に対する膨張弁E2の開度の変化率を大きくする。これにより、バッテリ温度が高くなる傾向にある、バッテリ6を充電するCレートが大きい場合に、冷媒通路17からバッテリ6に供給される冷媒の流量をより増加させることができ、バッテリ6の冷却能力を効果的に確保することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態によれば、冷却システム100は、空調熱交換器5a及び第1バッテリ熱交換器6aにおいて冷却に用いられた後の冷媒を、冷媒通路17を介さずに、コンプレッサ1に供給するための冷媒通路18、19と、冷媒通路18上に設けられ、冷媒を膨張するための膨張弁E3と、を更に有し、制御装置80は、膨張弁E2の開度が大きくなるにつれて、膨張弁E3の開度を増加させるように構成されている。これにより、膨張弁E2を介して冷媒通路17からコンプレッサ1に供給される冷媒の流量の増加に応じて、膨張弁E3を介して冷媒通路18、19からコンプレッサ1に供給される冷媒の流量を増加させることで、コンプレッサ吐出温度の上昇を抑えることができる。その結果、冷媒中のオイルの機能低下や劣化が生じることを抑制できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、制御装置80は、コンプレッサ吐出温度が所定温度以下になるように、膨張弁E2の開度を限界開度Lim1以下に規制するように構成されている。これにより、膨張弁E2の開度を大きくし過ぎて、コンプレッサ吐出温度が高温になることを抑制できる。その結果、冷媒中のオイルの機能低下や劣化を効果的に抑制できる。
【0064】
また、本実施形態によれば、制御装置80は、バッテリ6を所定以上のCレートで充電しているときに、上述したような膨張弁E2、E3の制御を行うことができる。これにより、バッテリ温度が高くなる傾向にある、Cレートが大きい状況において、上述した膨張弁E2、E3の制御を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、冷却システム100は、冷媒通路17の冷媒をバッテリ6内の複数のセル62の周りに流して、複数のセル62を冷媒により直接的に冷却するための第2バッテリ熱交換器6bを更に有し、第2バッテリ熱交換器6bには、膨張弁E2により減圧された冷媒が供給される。このような本実施形態によれば、第2バッテリ熱交換器6bにおいて複数のセル62を冷媒により直接的に冷却するため、バッテリ6の複数のセル62を効果的に冷却することができる。この場合、バッテリパック61などの耐圧性が比較的低いことから、コンプレッサ1からの高圧の冷媒をそのまま第2バッテリ熱交換器6bに供給するのは望ましくないので、本実施形態では、コンプレッサ1からの冷媒を膨張弁E2により減圧して、第2バッテリ熱交換器6bに供給している。これにより、バッテリ6の内部(複数のセル62など)を的確に保護することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、カスケード熱交換器2により冷却された冷媒を用いる熱交換器として、車両200の空調を行うための空調熱交換器5a、及び、バッテリ6において複数のセル62を含むバッテリパック61の外側に冷媒を供給して、複数のセル62を冷媒により間接的に冷却する第1バッテリ熱交換器6aを用いる。これにより、バッテリパック61の外側に冷媒を供給して複数のセル62を間接的に冷却する第1バッテリ熱交換器6aを用いることで、バッテリ6を適切に冷却することができると共に、冷媒との間で比較的大きな熱交換を実現できる。
【0067】
また、本実施形態によれば、カスケード熱交換器2は、コンプレッサ1及び空調熱交換器5a及び第1バッテリ熱交換器6aを少なくとも含む第1熱サイクル回路100aと、第1熱サイクル回路100aとは別に、外気と熱交換を行う外気熱交換器30を含む第2熱サイクル回路100bと、の間で熱交換するように構成されている。これにより、第1熱サイクル回路100aを、外気と熱交換を行う第2熱サイクル回路100bとの間で熱交換(カスケード熱交換)を行わせることで、第1熱サイクル回路100aのシステム全体の効率を向上できる、換言するとコンプレッサ1の仕事を削減することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、冷却システム100は、バッテリ6の電力を用いて車両200を駆動するモータ4を、カスケード熱交換器2により冷却された冷媒によって更に冷却する。これにより、冷却システム100において循環される冷媒を用いて、モータ4などの車両200内の種々の構成要素の冷却を適切に実現することができる。
【0069】
[変形例]
上記した実施形態では、冷却システム100が、第1熱サイクル回路100a及び第2熱サイクル回路100bにより構成されていたが、他の例では、冷却システム100を、第1熱サイクル回路100aのみにより構成してもよい。その場合、カスケード熱交換器2を外気熱交換器として構成すればよい。なお、冷却システム100を、第1熱サイクル回路100a及び第2熱サイクル回路100bにより構成した場合、システム効率は高くなるが(つまりコンプレッサ1の仕事を削減できる)、構成は複雑化する。よって、システム効率よりも、構成の簡易化を優先する場合には、冷却システム100を、第1熱サイクル回路100aのみにより構成するのがよい。
【0070】
また、上記した実施形態では、バッテリ温度センサ72によりバッテリ6の温度を検出していたが、他の例では、バッテリ6の電流値、電圧値や、バッテリ6の出力要求や、バッテリ6の充電速度要求などに応じて、バッテリ6の温度を推定してもよい。更に他の例では、第2バッテリ熱交換器6bの下流側の冷媒通路17上に設けられた冷媒温度センサ44により検出された冷媒の温度に基づき、バッテリ6の温度を推定してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 コンプレッサ
1a 第1コンプレッサ
1b 第2コンプレッサ
2 熱交換器(カスケード熱交換器)
4 モータ
5 エアコン
5a 空調熱交換器
6 バッテリ
6a 第1バッテリ熱交換器
6b 第2バッテリ熱交換器
11~20 冷媒通路
41、42、43、44 冷媒温度センサ
51、52、53 冷媒圧力センサ
61 バッテリパック
62 セル
80 制御装置
100 冷却システム
100a 第1熱サイクル回路
100b 第2熱サイクル回路
200 車両
E1、E2、E3 膨張弁
V1、V2、V3 流量調整弁