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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026022915
(43)【公開日】2026-02-13
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20260205BHJP
   C10M 133/22 20060101ALN20260205BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20260205BHJP
   C10M 105/02 20060101ALN20260205BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20260205BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20260205BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M133/22
C10M107/02
C10M105/02
C10N40:25
C10N30:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124533
(22)【出願日】2024-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相田 冬樹
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA01A
4H104BA02A
4H104BA04
4H104BA07A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BE16C
4H104CA04A
4H104DA02A
4H104LA05
4H104PA41
(57)【要約】
【課題】 潤滑油基油として含有される炭化水素系基油の酸化劣化を高度な水準で抑制することが可能な潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】炭化水素系基油と;下記一般式(1):
【化1】
[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子等を示す。]
で表されるグアニジン系化合物からなる酸化防止剤と;を含有し、かつ、
前記グアニジン系化合物の含有量が組成物全量基準で0.40質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系基油と、
下記一般式(1):
【化1】
[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~24のアリール基、および、置換基を有していてもよい炭素数7~25のアラルキル基からなる群から選択される1種を示す。]
で表されるグアニジン系化合物からなる酸化防止剤と、
を含有し、かつ、
前記グアニジン系化合物の含有量が組成物全量基準で0.40質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
前記グアニジン系化合物の含有量が組成物全量基準で0.15質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記式(1)中、R及びRがそれそれ独立にフェニル基および置換基を有するフェニル基からなる群から選択される1種を示し、かつ、Rが水素原子および炭素数1~8のアルキル基からなる群から選択される1種を示すことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、可動部を有する各種機械装置において、その可動部を構成する部材の摩擦および摩耗を低減し、装置の省エネルギー性および寿命を向上させるといった観点から、潤滑油組成物が利用されてきた。このような潤滑油組成物において、必須の成分となる潤滑油基油は空気と接触した場合に酸化劣化することから、その酸化劣化を抑制するために、潤滑油基油と酸化防止剤とを組み合わせて利用することが一般的であり、そのような基油と酸化防止剤の組み合わせが種々研究されている。
【0003】
例えば、特開平01-123896号公報(特許文献1)においては、基油の種類が不飽和脂肪酸ポリオールエステルからなるエステル系基油であり、そのエステル系基油に対してN-フェニル-α-ナフチルアミン、2、6-ジ-tert-ブチル-ジメチルアミノ-p-クレゾールまたは1、3-ジフェニルグアニジンを0.5~2.8重量%および4、4-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチル-フェノール)を0.1~0.8重量%含有させたエステル系潤滑油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01-123896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、あくまでも特定のエステル系基油に対して、特定の化合物を組み合わせて酸化防止剤として利用することが開示されているに過ぎず、他の種類の基油に対して、酸化防止剤として同文献に開示されている化合物のうちのいずれか1種を選択して利用することまでは記載されていない。
【0006】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、潤滑油基油として含有される炭化水素系基油の酸化劣化を高度な水準で抑制することが可能な潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、潤滑油組成物を、炭化水素系基油と、下記一般式(1)で表されるグアニジン系化合物とを含有したものとするとともに、そのグアニジン系化合物の含有量を組成物全量基準で0.40質量%以下とすることにより、潤滑油基油として含まれる炭化水素系基油の酸化劣化を高度な水準で抑制することが可能となることを見出して本発明を完成するに至った。このように、本発明者らは、潤滑油基油が炭化水素系基油を含む場合に、酸化防止剤として特定量以下の下記一般式(1)で表されるグアニジン系化合物を利用することで、驚くべきことに、組成物中の基油の酸化反応(劣化反応)を高度に抑制することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0009】
[1]炭化水素系基油と、
下記一般式(1):
【0010】
【化1】
【0011】
[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~24のアリール基、および、置換基を有していてもよい炭素数7~25のアラルキル基からなる群から選択される1種を示す。]
で表されるグアニジン系化合物からなる酸化防止剤と、
を含有し、かつ、
前記グアニジン系化合物の含有量が組成物全量基準で0.40質量%以下である、潤滑油組成物。
【0012】
[2]前記グアニジン系化合物の含有量が組成物全量基準で0.15質量%以下である、[1]に記載の潤滑油組成物。
【0013】
[3]前記式(1)中、R及びRがそれそれ独立にフェニル基および置換基を有するフェニル基からなる群から選択される1種を示し、かつ、Rが水素原子および炭素数1~8のアルキル基からなる群から選択される1種を示す、[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、炭化水素系基油を含む潤滑油組成物において、潤滑油基油として含有される炭化水素系基油の酸化劣化を高度な水準で抑制することが可能な潤滑油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断らない限り、数値XおよびYについて「X~Y」という表記は「X以上Y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Xにも適用されるものとする。
【0016】
本発明の潤滑油組成物は、
炭化水素系基油と、
下記一般式(1):
【0017】
【化2】
【0018】
[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~24のアリール基、および、置換基を有していてもよい炭素数7~25のアラルキル基からなる群から選択される1種を示す。]
で表されるグアニジン系化合物からなる酸化防止剤と、
を含有し、かつ、
前記グアニジン系化合物の含有量が組成物全量基準で0.40質量%以下であることを特徴とするものである。このように、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油と、前記グアニジン系化合物からなる酸化防止剤とを含むものである。
【0019】
〈酸化防止剤〉
本発明にかかる酸化防止剤は、前記一般式(1)で表されるグアニジン系化合物からなるものであればよい。前記一般式(1)中のR~Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~24のアリール基、および、置換基を有していてもよい炭素数7~25のアラルキル基からなる群から選択される1種である。
【0020】
このようなR~Rとして選択され得るアルキル基は、炭素数が1~18のものである。このようなアルキル基の炭素数を前記上限以下とすることにより、基油への溶解度と酸化防止効果のバランスに優れたものとすることが可能となる。なお、このようなアルキル基の炭素数を前記上限以下の範囲で適宜選択することにより、基油の種類に応じて、その基油に対する溶解性を容易に調整することができ、それにより基油に対する溶解性を容易に高度な水準に維持することが可能となる。
【0021】
また、このようなR~Rとして選択され得る炭素数1~18のアルキル基としては、特に制限されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環構造を主構造に有する環状のアルキル基;を好適なものとして挙げることができ、中でも、原料の入手容易性の観点から、直鎖状のアルキル基が好ましい。また、このような炭素数が1~18の直鎖状のアルキル基の中でも、化合物の合成の容易さ、合成原料の入手性等の観点等からは、炭素数が1~12(さらに好ましくは1~8)のものがより好ましい。
【0022】
このようなR~Rとして選択され得る、置換基を有していてもよいアリール基は、炭素数が6~24のものである。このようなアリール基の炭素数を前記上限以下の範囲で適宜選択することにより、基油の種類に応じて、その基油に対する溶解性を容易に調整することができ、それにより基油に対する溶解性を容易に高度な水準に維持することが可能となる。このような置換基を有していてもよい炭素数6~24のアリール基としては、特に制限されるものではないが、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、キシリル基等を好適なものとして挙げることができる。また、このようなアリール基が置換基を有する場合、かかる置換基は、炭素数1~18のアルキル基であることが好ましい。さらに、このような置換基を有していてもよい炭素数6~24のアリール基としては、中でも、フェニル基、または、置換基を有するフェニル基であることが好ましく、フェニル基、トルイル基(トリル基)、または、キシリル基であることが特に好ましい。なお、前記アリール基がトルイル基、または、キシリル基である場合においてメチル基の置換位置は任意である。また、このような置換基を有していてもよい炭素数6~24のアリール基においては、用いる基油への溶解度(所望の溶解度)に応じて、アリール基が有する置換基の種類や置換基が置換する位置等を適宜変更すればよい。
【0023】
また、このようなR~Rとして選択され得る、置換基を有していてもよいアラルキル基は、炭素数7~25のものである。このようなアラルキル基の炭素数を前記上限以下の範囲で適宜選択することにより、基油の種類に応じて、その基油に対する溶解性を調整することができ、それにより基油に対する溶解性を容易に高度な水準に維持することが可能となる。また、このような置換基を有していてもよい炭素数7~25のアラルキル基としては、特に制限されるものではないが、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基を好適なものとして挙げることができる。このようなアラルキル基が置換基を有する場合、かかる置換基は、炭素数1~18のアルキル基であることが好ましい。
【0024】
このようなR~Rとして選択される基は、原料化合物の入手容易性と、最終的に得られるグアニジン系化合物基油(組み合わせる基油)に対する溶解性の観点等から、水素原子、前記アルキル基、前記アリール基および前記アラルキル基の中から適宜選定すればよいが、中でも、グアニジン化合物そのものとしての入手容易性の観点からは、R及びRがそれそれ独立にフェニル基および置換基を有するフェニル基からなる群から選択される1種(より好ましくは置換基を有するフェニル基)を示し、かつ、Rが水素原子および炭素数1~8のアルキル基からなる群から選択される1種を示すことが好ましい。また、同様の観点から、R及びRはそれそれ独立に、トルイル基(トリル基)、または、キシリル基であることが特に好ましく、また、Rは水素原子、メチル基、または、エチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0025】
また、前記グアニジン系化合物を調製するための方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を適宜採用できるが、例えば、参考文献1(横浜国立大学教育学部紀要IV、自然科学2018年、1巻、63ページ)に示される方法などを利用することができる。前記グアニジン系化合物を調製するための具体的な方法としては、例えば、カルボジイミド化合物に、1級アミン等のアミン化合物を付加させることで合成する方法を挙げることができる。このような方法に用いられるカルボジイミド化合物は、尿素化合物の脱水反応で合成は可能であるが、市販品を使用することが好ましい。また、カルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド、N-3級ブチル-N’-エチルカルボジイミド、N,N’-ジ3級ブチルカルボジイミド、N,N’-ジオルトトリルカルボジイミド、N,N’-ジパラトリルカルボジイミドなどがあげられる。また、前記1級アミンとしてはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、キシリルアミンなどが挙げられる。ここにおいて、トルイジン、キシリルアミンでの置換基の位置は任意である。また、前記アミン化合物としては、前記1級アミン以外にも、置換基のないアンモニアやモルホリンのような環状2級アミンも使用可能である。また、このような方法を採用する場合において、その反応条件は特に制限されるものではない。例えば、前記カルボジイミドと前記アミン化合物とを強塩基の存在下で反応させることにより、用いる原料の構造に応じて、所望の設計のグアニジン化合物を合成することができる。
【0026】
また、前記グアニジン系化合物としては、前述のようにして合成したグアニジン化合物の他、市販品も使用可能である。具体的には、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン、ジビフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、トリトリルグアニジン、ジクメニルグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、N,N’-ジシクロヘキシル-4-モルホリンカルボジイミド等があげられる。これらと塩酸や硫酸などの酸性化合物との塩も好適に用いることができる。
【0027】
また、本発明にかかる酸化防止剤は、前記のグアニジン系化合物を含有するものであればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、前記グアニジン系化合物とともに、公知の酸化防止剤(例えば、特開2022-158124号公報に記載されている酸化防止剤(芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、および、フェノール系酸化防止剤等)等)を併用してもよい。このように、本発明においては、組成物の用途や設計に応じて、利用する酸化防止剤を前記グアニジン系化合物のみからなるものとしてもよく、あるいは、前記グアニジン系化合物と他の公知の酸化防止剤を混合(併用)したものとしてもよい。
【0028】
〈炭化水素系基油〉
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油として、炭化水素系基油(炭化水素系潤滑油基油)を含むものである。このような炭化水素系基油に対して、前記酸化防止剤を利用することで、優れた酸化防止性能を発現させることが可能である。
【0029】
ここにいう「炭化水素系基油」としては、潤滑油の分野で通常使用される炭化水素系の基油を適宜使用することができる。また、前記炭化水素系基油としては、具体的には、鉱油系炭化水素油、合成系炭化水素油、又は両者の混合物が挙げられる。
【0030】
このような鉱油系炭化水素油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系の原油の蒸留により得られる灯油留分;灯油留分からの抽出操作等により得られるノルマルパラフィン;及びパラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系の原油の蒸留により得られる潤滑油留分、あるいは潤滑油脱ろう工程により得られる、スラックワックス等のワックス及び/又はガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる、フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等の合成ワックスを原料とし、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化異性化、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を1つ又は2つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、ノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油、芳香族系基油等が挙げられる。これらの鉱油系基油は単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。このような鉱油系基油としては、API基油分類グループI、II、III基油に分類されているものを、いずれも好適に使用できる。このような鉱油系基油の中でも、より高い粘度指数を発現できるといった観点からは、API基油分類グループIII基油(以下において、場合により「APIグループIII基油」と称する)を、より好適に使用できる。
【0031】
合成系炭化水素油としては、例えば、ポリα-オレフィン又はその水素化物;プロピレンオリゴマー、イソブチレンオリゴマー、ポリブテン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、エチレン-プロピレンオリゴマー等のオレフィンオリゴマー又はその水素化物;アルキルベンゼン;アルキルナフタレンが挙げられる。これらの合成系炭化水素油は単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0032】
また、前記合成系炭化水素油としては、API基油分類グループIV基油(ポリα-オレフィン基油、以下において、場合により「APIグループIV基油」と称する)を好適に用いることができる。
【0033】
また、本発明にかかる炭化水素系基油としては、より高い酸化安定性が得られることから、APIグループIII基油、APIグループIV基油がより好ましい。
【0034】
〈添加剤について〉
本発明の潤滑油組成物は、前記炭化水素系基油と、前記グアニジン系化合物からなる酸化防止剤とを含むものであればよく、その用途等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、潤滑油組成物の分野において利用されている公知の添加剤を適宜利用することができる。このような添加剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、無灰分散剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、極圧剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、抗乳化剤、消泡剤、および、着色剤等を挙げることができる。また、このような添加剤としては、例えば、国際公開第2017/073748号、特開2020-76004号公報、国際公開第2020/095970号、特開2022-158124号公報、特開2022-090378号公報等に記載されている各種の添加剤を適宜利用することができる。
【0035】
また、このような添加剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、コハク酸イミド系無灰分散剤等の公知の無灰分散剤;アルカリ又はアルカリ土類金属アルキルサリシレート、アルカリ又はアルカリ土類金属アルキルベンゼンスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属アルキルフェネート等の公知の金属系清浄剤;油性剤系摩擦調整剤、有機モリブデン化合物、アルキルメルカプチルボレートなどの有機ホウ素化合物、グラファイト、二硫化モリブデン、硫化アンチモン、ホウ素化合物、ポリテトラフルオロエチレン等の公知の摩擦調整剤;チオカルバミン酸金属塩(例えばMo、Zn、Pb、Sb等の各種金属の塩)、ジスルフィド等の公知の硫黄系添加剤;ジチオリン酸金属塩(例えばMo、Zn、Pb、Sb、Mo等の各種金属の塩)、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸部分エステルのアミン塩等の公知のリン系およびリン-硫黄系添加剤等の公知の摩耗防止剤;分散型または非分散型ポリ(メタ)アクリレート(分散型又は非分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート)、非分散型又は分散型エチレン-α-オレフィン共重合体およびその水素添加物、ポリイソブチレンおよびその水素添加物、スチレン-ジエン共重合体の水素添加物、スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体、並びに、ポリアルキルスチレン等の公知の粘度指数向上剤;ポリメタクリレート系ポリマー、エチレンビニルアセテート等の公知の流動点降下剤;トリルトリアゾールまたはその誘導体等の公知の金属不活性化剤;等を挙げることができる。
【0036】
〈組成について〉
本発明の潤滑油組成物において、前記酸化防止剤として利用する前記グアニジン系化合物(前記一般式(1)で表される化合物)の含有量は、組成物全量基準で0.40質量%以下である。このような含有量が0.40質量%を超えると、室温での析出量が過剰となり、潤滑油の実使用時にフィルターなどがあると、その目詰まりを起こす可能性がある。また、前記グアニジン系化合物(前記一般式(1)で表される化合物)の含有量は、少量の添加量でより高い効果が得られることから、組成物全量基準で0.30質量%以下であることが好ましく、1.0質量ppm以上0.30質量%以下であることがより好ましく、1.5質量ppm以上0.15質量%以下であることが特に好ましい。なお、さらに高度な酸化防止性能を得ることが可能となるといった観点から、前記グアニジン系化合物の含有量の下限値は、組成物全量基準で2.0質量ppm(さらに好ましくは10質量ppm、特に好ましくは100質量ppm)とすることがより好ましい。
【0037】
また、前記酸化防止剤として利用する前記グアニジン系化合物(前記一般式(1)で表される化合物)の含有量は、前記潤滑油基油1gに対して0.01マイクロモル~17マイクロモル(より好ましくは0.02マイクロモル~13マイクロモル、更に好ましくは0.3マイクロモル~7マイクロモル)であることが好ましい。このようなグアニジン系化合物の含有量を、前記下限以上とすることで、さらに高度な酸化防止性能を得ることができ、他方、前記上限以下とすることで、経済性よく高い酸化防止性能を得るといった点でさらに高い効果を得ることができる。なお、従来公知の酸化防止剤は、基本的に当量反応により酸化防止を図るものであり、長期に亘って酸化防止機能を維持させるには、その酸化防止剤の種類によっては大量に添加する必要があったが、本発明にかかるグアニジン系化合物からなる酸化防止剤を用いた場合には、その理由は必ずしも定かではないが、比較的少量の利用であっても酸化劣化を長期に亘って抑制することが可能である。
【0038】
また、本発明の潤滑油組成物において、前記潤滑油基油の含有量は特に制限されるものではないが、組成物全量基準で70質量%以上(より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上)であることが好ましい。このような潤滑油基油の含有量を前記下限以上とすると、前記下限未満の場合と比較して、前記添加剤を利用する場合に前記添加剤の溶解安定性の点でさらに優れた効果を得ることができる。
【0039】
また、本発明の潤滑油組成物に前記他の添加剤(無灰分散剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、極圧剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、抗乳化剤、消泡剤、および、着色剤等)を含有させる場合、その使用量は、本発明の効果を損なわない範囲において、組成物の用途に応じて適宜設定すればよい。前記添加剤として、例えば、無灰分散剤、粘度指数向上剤、および、流動点降下剤のうちのいずれか1種または2種以上を利用する場合、それらの含有量は、それぞれ、組成物全量基準で0.01~20質量%としてもよい。また、前記添加剤として、例えば、金属系清浄剤を利用する場合、その含有量を、組成物全量基準で、金属元素換算量として0.001~5.0質量%としてもよい。さらに、前記添加剤として、例えば、摩擦調整剤、摩耗防止剤、極圧剤のうちのいずれか1種または2種以上を利用する場合、それらの含有量は、それぞれ、組成物全量基準で0.05~5.0質量%としてもよい。また、前記添加剤として、例えば、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤のうちのいずれか1種または2種以上を利用する場合、それらの含有量は、それぞれ、組成物全量基準で、例えば0.005~5質量%としてもよい。また、前記添加剤として、例えば、金属不活性化剤を利用する場合、その含有量は、組成物全量基準で0.005~1質量%としてもよい。さらに、前記添加剤として、例えば、消泡剤を利用する場合、その含有量は、組成物全量基準で0.0001~0.1質量%としてもよい。
【実施例0040】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<潤滑油基油について>
下記の実施例等において、潤滑油基油として利用した成分を以下に説明する。
・炭化水素系基油:ポリα‐オレフィン(INEOS製、商品名:Durasyn164、略称:PAO、APIグループIV基油)
・エステル系基油:ペンタエリトリトールの2-エチルヘキサン酸とのテトラエステル体(富士フイルム和光純薬株式会社製、APIグループV基油)。
【0042】
<各実施例等で得られた組成物の特性の評価試験について>
各実施例等で得られた潤滑油組成物をそれぞれ利用し、測定装置として「酸化安定度試験器 RapidOxy(アントンパール社製)」を用いて、以下の測定手順(条件)を採用した試験を行うことで、潤滑油組成物の酸化防止性能を評価した。
【0043】
〔評価試験における測定手順〕
先ず、潤滑油組成物の約5gを前記測定装置用のガラス皿に入れて精秤し、試料として利用した(なお、精秤時の試料のサンプリング方法は各実施例等に記載する。また、精秤した潤滑油組成物の質量(試料の質量)を各実施例ごとに表1に記載する)。次に、その試料(試験用の潤滑油組成物)が入ったガラス皿を前記測定装置内に配置して密封した後、かかる装置内に室温(25℃)にて700kPaの圧力で純酸素(G2グレード)を充填した。このようにして純酸素(G2グレード)を導入することで装置内を加圧した後、装置内の圧力が安定してから試験を開始し、装置内の温度を150℃に昇温して、150℃で保持し、試験開始後から、装置内の圧力が最高到達圧力から10%低下する圧力となるまでの時間を測定した(最高到達圧力よりも10%低い圧力となった時点を終点として時間を測定した)。このような測定により、測定された時間が長いものほど、酸化防止性能がより高いものであると評価できる。なお、実施例2及び比較例3で得られた潤滑油組成物の試料については、他の比較例等と対比して長時間経過しても圧力が終点の圧力に到達しなかったため、表1に記載した時間(実施例2では31314秒、比較例3では32490秒)が経過した時点を終点として試験を終了した。ここにおいて、実施例2においては31314秒経過した時点においても最高到達圧力から低下した圧力の割合4.2%であり、比較例3においては32490秒経過した時点において最高到達圧力から低下した圧力の割合は3.3%であった。測定結果を表1に示す。なお、比較例3との対比のために、実施例1の試験において測定された最高到達圧力から低下した圧力の割合が3.3%となるまでの時間(14640秒)を表1に併せて示す。
【0044】
なお、表1には、酸化防止性能の指標として、比較例1の組成物(基油のみからなるもの)の測定時間(終点までの時間)を基準(1倍)として、同じ基油を利用している実施例1の組成物について圧力が3.3%となるまでの測定時間の倍率([実施例1の組成物の圧力が3.3%となるまでの測定時間]/[比較例1の測定時間(基準値)])を併せて示す。同様に、表1には、比較例2の組成物(基油のみからなるもの)の測定時間(終点までの時間)を基準(1倍)として、同じ基油を利用している比較例3の組成物ついて測定時間(終点までの時間:圧力が3.3%となるまでの測定時間)の倍率([比較例3の測定時間]/[比較例2の測定時間(基準値)])を併せて示す。また、本明細書においは、かかる倍率を、基油の寿命を延長させる効果の指標として利用する。
【0045】
(実施例1)
1,3-ジオルトトリルグアニジン(7.7mg、東京化成工業製)を前記炭化水素系基油(10.7267g、INEOS製)に加え、ヒートガンで100℃に加熱溶解して、混合液を得て、これを潤滑油組成物とした。なお、前記加熱溶解工程の直後に、前記混合液(潤滑油組成物)から試験サンプルを秤量し、得られた試料を酸化安定度試験機に供して酸化防止性能を評価した。また、得られた潤滑油組成物において、潤滑油基油1gに対するグアニジン系化合物の含有量は3.0μmol/g(0.72mg/g)であり、組成物全量に対するグアニジン系化合物の含有量は0.072質量%であった。
【0046】
(実施例2)
1,3-ジオルトトリルグアニジン(16.1mg、東京化成工業製)を前記炭化水素系基油(9.9697g、INEOS製)に加え、ヒートガンで100℃に加熱溶解して混合液を得て、これを潤滑油組成物とした。なお、前記加熱溶解工程の直後に、前記混合液(潤滑油組成物)から試験サンプルを秤量し、得られた試料を酸化安定度試験機に供して酸化防止性能を評価した。また、得られた潤滑油組成物において、潤滑油基油1gに対するグアニジン系化合物の含有量は6.0μmol/g(1.64mg/g)であり、組成物全量に対するグアニジン系化合物の含有量は0.14質量%であった。
【0047】
(比較例1)
グアニジン系化合物(1,3-ジオルトトリルグアニジン)を利用せず、前記炭化水素系基油(INEOS製)のみを比較のための潤滑油組成物とみなして利用した。なお、市販の前記炭化水素系基油(INEOS製)を室温(25℃程度)でサンプリングし、得られた試料を酸化安定度試験機に供して酸化防止性能を評価した。
【0048】
(比較例2)
グアニジン系化合物(1,3-ジオルトトリルグアニジン)を利用せず、前記エステル系基油(富士フイルム和光純薬株式会社製)のみを比較のための潤滑油組成物とみなして利用した。なお、市販の前記エステル系基油(富士フイルム和光純薬株式会社製)を室温(25℃程度)でサンプリングし、得られた試料を酸化安定度試験機に供して酸化防止性能を評価した。
【0049】
(比較例3)
1,3-ジオルトトリルグアニジン(7.3mg、東京化成工業製)を前記エステル基油(9.9844g、富士フイルム和光純薬株式会社製)に加え、ヒートガンで100℃に加熱溶解して、混合液を得て、これを比較のための潤滑油組成物とした。なお、前記加熱溶解工程の直後に、前記混合液(比較のための潤滑油組成物)から試験サンプルを秤量し、得られた試料を酸化安定度試験機に供して酸化防止性能を評価した。また、比較のための潤滑油組成物において、エステル基油1gに対するグアニジン系化合物の含有量は3.0μmol/g(0.72mg/g)であり、組成物全量に対するグアニジン系化合物の含有量は0.073質量%であった。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示す結果からも明らかなように、前記一般式(1)で表されるグアニジン系化合物と炭化水素系基油とを組み合わせた場合(実施例1~2)には、エステル系基油とグアニジン系化合物とを組み合わせた場合(比較例3)と比較して、より高い酸化防止性能が得られることが分かった。この点、先ず、炭化水素系基油のみを利用した場合(比較例1)においては、圧力低下の割合(圧力減少率)が10%となるまでの時間が3347秒であるのに対して、エステル系基油のみを利用した場合(比較例2)においては、圧力減少率が10%となるまでの時間が9181秒であることから、炭化水素系基油の方がエステル系基油よりも、圧力減少率が10%となるまでの時間が短く、酸化劣化の速度が速いものであると理解できる。すなわち、比較例1と比較例2の対比から、炭化水素系基油の方がエステル系基油よりも、より酸化劣化されやすい基油であるものと理解できる。次に、エステル系基油と3.0μmol/gのグアニジン系化合物とを含む比較例3で得られた組成物は圧力減少率が3.3%となるまでの時間が32490秒であることから、基油の圧力減少率が10%となるまでの時間(比較例2の終点の時間)を基準とした場合の倍率(以下、かかる倍率を「寿命の延長率」とみなして議論する)を求めたところ、比較例3ではエステル基油の寿命の延長率は約3.5倍(=32490/9181)となることが分かった。これに対して、炭化水素系基油と3.0μmol/g(比較例3と同じ割合)のグアニジン化合物とを含む実施例1で得られた組成物は圧力減少率が3.3%となるまでの時間が14640秒であることから、こちらについても基油の圧力減少率が10%となるまでの時間を基準とした場合の倍率(寿命の延長率)を求めると、実施例1では炭化水素系基油の寿命の延長率は4.4倍(=14640/3347)となることが分かった。このような延長率と、基油そのものの酸化劣化の速度とを合わせ勘案すれば、表1に示す結果から、炭化水素系基油に対するグアニジン化合物の酸化防止効果は、エステル系基油に対する酸化防止効果よりも高いことは明白であり、本発明によれば、より高い酸化防止性能が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明によれば、潤滑油基油として含有される炭化水素系基油の酸化劣化を高度な水準で抑制することが可能な潤滑油組成物を提供することが可能となる。したがって、本発明の潤滑油組成物は、可動部を有する各種機械装置(例えば、内燃機関等)の可動部を潤滑させるための組成物等として有用である。