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  • -電極複合粉末の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026023517
(43)【公開日】2026-02-13
(54)【発明の名称】電極複合粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/36 20060101AFI20260205BHJP
【FI】
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024125452
(22)【出願日】2024-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正博
(72)【発明者】
【氏名】矢部 裕城
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
(72)【発明者】
【氏名】筒井 靖貴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050EA15
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】本開示の方法によれば、混練容器底部への混練物の固着を低減することで、装置にかかる機械的負荷を抑制することができる。
【解決手段】電極複合粉末を製造する本開示の方法は、活物質粒子及び硫化物固体電解質を混練して、上記硫化物固体電解質を少なくとも部分的に変形させ、かつ上記活物質粒子の表面の少なくとも一部を上記硫化物固体電解質で被覆して、電極複合粉末を形成することを含み、上記混練を、混練容器底部側の少なくとも一部が開放されている枠型ブレードで行う。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質粒子及び硫化物固体電解質を混練して、前記硫化物固体電解質を少なくとも部分的に変形させ、かつ前記活物質粒子の表面の少なくとも一部を前記硫化物固体電解質で被覆して、電極複合粉末を形成することを含み、
前記混練を、混練容器底部側の少なくとも一部が開放されている枠型ブレードで行う、
電極複合粉末の製造方法。
【請求項2】
前記電極複合粉末が、1.30≦D90/D50かつD95/D50≦1.75の粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活物質粒子が、表面の少なくとも一部が被覆用固体電解質で予め被覆されている予備被覆活物質粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被覆用固体電解質が、フッ素含有固体電解質である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記被覆用固体電解質が、Li6-(4-x)b(Ti1-xAl(0<x<1、0<b≦1.5)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
下記の工程を含む、電池の製造方法:
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって電極複合粉末を製造すること、及び
前記電極複合粉末を含有する活物質層を形成すること。
【請求項7】
活物質粒子及び硫化物固体電解質を含有している電極複合粉末であって、
前記活物質粒子の表面の少なくとも一部が前記硫化物固体電解質で被覆されており、かつ
1.30≦D90/D50かつD95/D50≦1.75の粒子径を有する、
電極複合粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極複合粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化物固体電解質は、高いイオン伝導性と、比較的優れた変形性とを併せ持つ。硫化物固体電解質は、バルク型全固体電池に好適である。しかし、電極中において硫化物固体電解質が活物質と直接接触することにより、硫化物固体電解質の劣化が促進され得る。硫化物固体電解質の劣化により、例えば、イオン伝導性が損なわれる可能性がある。
【0003】
硫化物固体電解質と活物質との直接接触を低減するため、活物質を酸化物固体電解質(例えばLiNbO等)で被覆することにより、複合粒子を形成することが提案されている。さらに、複合粒子と硫化物固体電解質との界面形成を促進するため、複合粒子を硫化物固体電解質で被覆することも提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、コバルト元素、ニッケル元素、及びマンガン元素のうち少なくともいずれか1つを含み且つリチウム元素及び酸素元素をさらに含む活物質粒子、並びに当該活物質粒子表面の全部又は一部を被覆する酸化物系固体電解質を含有する複合粒子と、前記複合粒子表面の76.0%以上をさらに被覆する硫化物系固体電解質と、を備えることを特徴とする、複合活物質が開示されている。特許文献1に記載の複合活物質によると、リチウム電池に使用された際の反応抵抗を下げることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-154407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
活物質粒子を硫化物固体電解質で被覆する場合、溶剤を添加して、活物質粒子及び硫化物固体電解質を混練することで、硫化物固体電解質の少なくとも一部を変形させ、そして、活物質粒子を被覆させる。このとき、一般的に用いられる混練装置によると、活物質粒子及び硫化物固体電解質が凝集し、混練容器底部に固着することで、装置に過度な機械的負荷がかかることが懸念される。
【0007】
そこで本開示は、混練容器底部への混練物の固着を低減することで、装置にかかる機械的負荷を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の手段によって、上記目的を達成するものである。
【0009】
(態様1)
活物質粒子及び硫化物固体電解質を混練して、上記硫化物固体電解質を少なくとも部分的に変形させ、かつ上記活物質粒子の表面の少なくとも一部を上記硫化物固体電解質で被覆して、電極複合粉末を形成することを含み、
上記混練を、混練容器底部側の少なくとも一部が開放されている枠型ブレードで行う、
電極複合粉末の製造方法。
(態様2)
上記電極複合粉末が、1.30≦D90/D50かつD95/D50≦1.75の粒子径を有する、態様1に記載の方法。
(態様3)
上記活物質粒子が、表面の少なくとも一部が被覆用固体電解質で予め被覆されている予備被覆活物質粒子である、態様1又は2に記載の方法。
(態様4)
上記被覆用固体電解質が、フッ素含有固体電解質である、態様3に記載の方法。
(態様5)
上記被覆用固体電解質が、Li6-(4-x)b(Ti1-xAl(0<x<1、0<b≦1.5)である、態様4に記載の方法。
(態様6)
下記の工程を含む、電池の製造方法:
態様1~5のいずれか一項に記載の方法によって電極複合粉末を製造すること、及び
上記電極複合粉末を含有する活物質層を形成すること。
(態様7)
活物質粒子及び硫化物固体電解質を含有している電極複合粉末であって、
上記活物質粒子の表面の少なくとも一部が上記硫化物固体電解質で被覆されており、かつ
1.30≦D90/D50かつD95/D50≦1.75の粒子径を有する、
電極複合粉末。
【発明の効果】
【0010】
本開示の方法によれば、混練容器底部への混練物の固着を低減することで、装置にかかる機械的負荷を抑制することできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例における装置の平均消費電力及び最大消費電力の値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪電極複合粉末の製造方法≫
電極複合粉末を製造する本開示の方法は、
活物質粒子及び硫化物固体電解質を混練して、上記硫化物固体電解質を少なくとも部分的に変形させ、かつ上記活物質粒子の表面の少なくとも一部を上記硫化物固体電解質で被覆して、電極複合粉末を形成することを含み、
上記混練を、混練容器底部側の少なくとも一部が開放されている枠型ブレードで行う。
【0013】
電極複合粉末を製造する本開示の方法によると、混練容器底部への混練物の固着を低減することで、装置にかかる機械的負荷を抑制することができる。
【0014】
従来の製造方法では、枠型ブレードを用いて硫化物固体電解質及び活物質粒子を混練する。混練によって硫化物固体電解質に応力を加え、そして硫化物固体電解質の少なくとも一部を変形させることで、硫化物固体電解質を活物質粒子に被覆させる。
【0015】
しかしながら、本開示者等は、応力により変形する硫化物固体電解質の特徴によって、混練物が凝集し、容器底面に混練物の固着が発生しやすいことを見出した。したがって、枠型ブレードと混練容器底面との間で硫化物固体電解質及び活物質粒子を混練すると、容器底面上に混練物の固着が発生することがあった。
【0016】
これに対して本開示によると、枠型ブレードの容器底部側の少なくとも一部を開放しているので、枠型ブレードと容器底面との間で硫化物固体電解質及び活物質粒子を混練することを回避することができる。したがって、硫化物固体電解質及び活物質粒子の凝集、混練物の容器底部への固着、及びそれによる混練装置への過度な機械的負荷を抑制しつつ、硫化物固体電解質の変形及び上記硫化物固体電解質による上記活物質粒子の表面の被覆を迅速に行うことができる。
【0017】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0018】
電極複合粉末を製造する本開示の方法は、活物質粒子及び硫化物固体電解質を混練して、上記硫化物固体電解質を少なくとも部分的に変形させ、かつ上記活物質粒子の表面の少なくとも一部を上記硫化物固体電解質で被覆して、電極複合粉末を形成することを含む。
【0019】
硫化物固体電解質に応力を加えることにより、硫化物固体電解質の粒子を変形させることができる。これにより、活物質粒子を硫化物固体電解質で被覆することができる。
【0020】
本開示の方法において、混練速度は、10rpm以上、20rpm以上、又は30rpm以上であってもよく、110rpm以下、100rpm以下、又は90rpm以下であってもよい。
【0021】
また、本開示の方法において、混練時間は、硫化物固体電解質と活物質粒子とを十分に混練することができる範囲で任意に選択することができる。
【0022】
本開示の方法において、混練は、低露点環境、例えば露点温度が、0℃以下、-30℃以下、-50℃以下、又は-70℃以下の環境で行うことができる。
【0023】
本開示の方法において、混練は、混練装置として、プラネタリミキサ等を用いて行うことができる。
【0024】
(枠型ブレード)
電極複合粉末を製造する本開示の方法において、混練容器底部側の少なくとも一部が開放されている枠型ブレードで混練を行う。
【0025】
枠型ブレードは、混練部の中央が解放されている混練刃具である。本開示の方法において、枠型ブレードは、混練容器底部側の少なくとも一部が解放されている。本開示の方法において、枠型ブレードの混練容器底部側は、枠型ブレードの混練容器底部側の全体のうち、30%以上、40%以上、又は50%以上が解放されていてもよく、95%以下、85%以下、又は75%以下が解放されていてもよい。
【0026】
<各構成>
以下では、本開示の方法で用いられる各構成について説明する。
【0027】
(電極複合粉末)
本開示において、電極複合粉末は、活物質粒子及び硫化物固体電解質を含有する。
【0028】
硫化物固体電解質の配合量は、100質量部の活物質に対して、例えば、0.1~20質量部、又は0.5~15質量部であってもよい。
【0029】
硫化物固体電解質は、活物質粒子の粒子表面に均一な膜厚で被覆させることが好ましいが、本開示の製造方法の効果を阻害しなければ、不均一な膜厚であってもよい。硫化物固体電解質の膜厚は、例えば、0.1nm以上、0.5nm以上、又は1nm以上であってもよく、100nm以下、80nm以下、60nm以下、又は40nm以下であってもよい。
【0030】
本開示において、電極複合粉末の平均粒子径のD90/D50は、1.20以上、1.30以上、又は1.40以上であってもよく、1.80以下、1.70以下、又は1.60以下であってもよい。また、本開示において、電極複合粉末の平均粒子径のD95/D50は、1.20以上、1.30以上、又は1.40以上であってもよく、1.80以下、1.70以下、又は1.60以下であってもよい。また、本開示において、電極複合粉末の平均粒子径は、1.30≦D90/D50かつD95/D50≦1.75であってもよい。
【0031】
本開示における粒子の平均粒子径は、下記手順により算出される。粒子の平均粒子径の算出方法の例は以下のとおりである。粒子径の測定装置として、分散液用粒子径解析装置XPT-C(三洋貿易株式会社製)等を用いることができる。サンプル分散液を測定装置に送液し、送液中のサンプル分散液の画像を撮影し、画像を二値化処理することで粒子を検出することで、粒子径を測定することができる。各測定において、画像を複数枚、例えば、1000枚撮影し、かつ/又は測定を複数回、例えば3回行い、全測定結果を平均した値を平均粒子径とすることができる。
【0032】
(活物質粒子)
本開示において、活物質粒子は電極複合粉末に含有されており、本開示の方法によって、硫化物固体電解質で被覆される。
【0033】
本開示に関して、「活物質粒子」は、「正極活物質」であっても、「負極活物質」であってもよい。
【0034】
活物質粒子は、特に限定されないが、被覆用固体電解質による被覆層を有している予備被覆活物質粒子であってもよい。被覆層は、リチウムイオン伝導性能を有し、活物質粒子や固体電解質との反応性が低く、かつ活物質粒子や固体電解質と接触しても流動しない被覆層の形態を維持し得る物質を含有している層である。被覆用固体電解質の具体例としては、LiNbOの他、LiTi12、LiPO等を挙げることができるが、これらに限定されない。特に、被覆用固体電解質が、フッ素含有固体電解質、例えばLi2.7Ti0.3Al0.7のようなLTAF電解質(Li6-(4-x)b(Ti1-xAl(0<x<1、0<b≦1.5))である場合には、溶媒と予備被覆活物質粒子とがなじみにくく、それによって溶剤が局所分布して、混練装置へ過度な機械的負荷がかかりやすいので、本開示の方法を効果的に用いることができる。
【0035】
活物質粒子が、被覆用固体電解質による被覆層を有している予備被覆活物質粒子である場合、硫化物固体電解質は、このような予備被覆活物質粒子の表面を被覆することができる。
【0036】
(正極活物質)
正極活物質の材料は、特に限定されない。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(NCM:LiCO1/3Ni1/3Mn1/3)、ニッケル・コバルト・アルミニウム酸リチウム(LiNi0.8(CoAl)0.2)、Li1+xMn2-x-y(Mは、Al、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnから選ばれる1種以上の金属元素)で表される組成の異種元素置換Li-Mnスピネル等であってよいが、これらに限定されない。
【0037】
(活物質)
活物質は、予備被覆活物質粒子のコアである。活物質は、粒子状である。活物質は、例えば、二次粒子であってもよい。二次粒子は、一次粒子の集合体である。二次粒子のD50は、例えば、1~30μm、3~20μm、又は5~15μmであってもよい。一次粒子の平均フェレ径は、例えば、0.01~3μmであってもよい。なお、平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(メジアン径)である。
【0038】
活物質は、任意の形状を有し得る。活物質は、例えば、球状、楕円体状、フレーク状、繊維状等であってもよい。活物質は、中実粒子であってもよく、中空粒子であってもよい。
【0039】
(負極活物質)
負極活物質の材料は、特に限定されず、金属リチウムであってもよく、リチウムイオン等の金属イオンを吸蔵及び放出可能な材料であってもよい。リチウムイオン等の金属イオンを吸蔵及び放出可能な材料としては、例えば、合金系負極活物質、炭素材料、チタン酸リチウム(LiTi12)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
合金系負極活物質としては、特に限定されず、例えば、Si合金系負極活物質、Sn合金系負極活物質等が挙げられる。Si合金系負極活物質には、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素炭化物、ケイ素窒化物等、又はこれらの固溶体がある。また、Si合金系負極活物質には、ケイ素以外の金属元素、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Ti等を含むことができる。Sn合金系負極活物質には、スズ、スズ酸化物、スズ窒化物等、又はこれらの固溶体がある。また、Sn合金系負極活物質には、スズ以外の金属元素、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Ti、Si等を含むことができる。
【0041】
炭素材料としては、特に限定されず、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラファイト等が挙げられる。
【0042】
負極活物質の形状は、粒子状である。負極活物質は、一次粒子であってもよいし、複数の一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。負極活物質の平均粒子径D50は、例えば、1nm以上、5nm以上、又は10nm以上であってもよく、500μm以下、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってもよい。なお、平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(メジアン径)である。
【0043】
(硫化物固体電解質)
本開示において、硫化物固体電解質は、電極複合粉末に含有され、活物質粒子を被覆している。
【0044】
硫化物固体電解質としては、硫化物系非晶質固体電解質、硫化物系結晶質固体電解質、アルジロダイト型固体電解質等が挙げられるが、これらに限定されない。硫化物固体電解質としては、LiS-P系(Li11、LiPS、Li等)、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiBr-LiS-P、LiS-P-GeS(Li13GeP16、Li10GeP12等)、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、Li7-xPS6-xCl等、又はこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0045】
硫化物固体電解質は、ガラスであっても、結晶化ガラス(ガラスセラミックス)であってもよい。
【0046】
電極複合粉末の製造方法において、原料として用いる硫化物固体電解質は、粒子状であってもよい。この場合の硫化物固体電解質のD50は、例えば、0.01~1μm、又は0.1~0.9μmであってもよい。
【0047】
(溶剤)
本開示において、溶剤は、活物質粒子と硫化物固体電解質とを混練する際に添加されてもよい。
【0048】
溶剤は、液体である。溶剤は、混練時、活物質粒子と硫化物固体電解質との付着を促進し得る。溶剤は、スラリーにおいて、分散媒として機能し得る。溶剤は、任意の成分を含み得る。溶剤は、例えば、芳香族炭化水素、エステル、アルコール、ケトン、及びラクタムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。溶剤は、例えば、テトラリン(1,2,3,4-tetrahydronaphthalene,THN)、酪酸ブチル、ヘプタン、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0049】
酪酸ブチルは、例えば、NMP等に比べて、硫化物固体電解質を劣化させ難いことが期待される。THNは、例えば、酪酸ブチル、NMP等に比べて、硫化物固体電解質を劣化させ難いことが期待される。溶剤がTHNを含むことにより、例えば、初期抵抗の低減が期待される。
【0050】
≪電池の製造方法≫
本開示における電池の製造方法は、下記の工程を含む:
本開示に記載の方法によって電極複合粉末を製造すること、及び
上記電極複合粉末を含有する活物質層を形成すること。
【0051】
本開示における方法で製造された電池の活物質層は、電極複合粉末及び分散媒を含有する合材スラリーによって提供されていてもよい。また、合材スラリーを基材に塗布し、そして上記分散媒を乾燥除去して、活物質層を形成してもよい。
【0052】
以下に示す実施例を参照して本開示をさらに詳しく説明するが、本開示の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例0053】
以下、実施形態に係る製造方法に従って電極複合粉末及び固体電池を製造し、調査した。
【0054】
(予備被覆活物質粒子の調製)
活物質として、Li(NiCoAl)Oを準備した。以下「Li(NiCoAl)O」は「NCA」と略記され得る。
【0055】
遊星型ボールミルによって、LiF、TiF、及びAlFを混合することにより、被覆用固体電解質であるフッ化物固体電解質を合成した。フッ化物固体電解質は、Li2.7Ti0.3Al0.7の組成を有していた。このフッ化物固体電解質は、「LTAF」と略記され得る。
【0056】
活物質粒子を予備被覆するための装置として、「ノビルタNOB-MINI(ホソカワミクロン社製)」を用いた。この装置において、48.7質量部のNCAと、1.3質量部のLTAFとを混練して、予備被覆活物質粒子が形成された。装置の運転条件は、下記のとおりである。
【0057】
電力:材料1gあたり12W
回転数:6000rpm
処理時間:30分
【0058】
(その他の材料)
本開示についての実施例のため、下記材料を準備した。
硫化物固体電解質:LiS-P(ガラスセラミックス)
溶剤:THN
以下「LiS-P」は「LPS」と略記され得る。
【0059】
≪実施例1≫
以降の操作は、露点温度が-70℃以下に制御された環境下で実施した。分散装置として、超音波ホモジナイザを用いた。超音波ホモジナイザにより、硫化物固体電解質を溶剤に分散させて、分散液を調製した。
【0060】
混練装置として、容器底部側の90%が解放された枠型ブレードを装着したプラネタリミキサを準備した。上記調製で得た予備被覆活物質粒子を混練装置に供給し、さらに上記で調製した分散液を混練装置に供給した。
【0061】
下記順序で「混練」と「混練中に溶剤添加」とを行って、電極複合粉末を製造した。また、「混練中に溶剤添加」では、予備被覆活物質粒子及び硫化物固体電解質を混練しながら、スポイトで溶剤を添加した。そして、予備被覆活物質粒子が硫化物固体電解質で被覆された電極複合粉末である、実施例1に係る評価試料を得た。実施例1について10回実施したとき、混練中に容器底部への混練物の固着は発生しなかった。
【0062】
(1)混練:回転数=低、時間=短
(2)混練中に溶剤添加:THN、回転数=低、時間=短
(3)混練:回転数=中、時間=中
(4)混練中に溶剤添加:THN、回転数=低、時間=短
(5)混練:回転数=中、時間=中
(6)混練:回転数=高、時間=長
【0063】
超音波ホモジナイザにより、電極複合粉末と、イオン伝導材(LPS)と、電子伝導材(AB+VGCF)とを、溶剤(THN)に分散させて、スラリーを調製した。スラリーを基材の表面に塗工して、乾燥することにより、正極を製造した。さらに正極を含む固体電池を製造した。固体電池の構成は下記のとおりである。
【0064】
外装体:Alラミネートフィルム
負極活物質:LiTi12
【0065】
≪実施例2≫
上記LTAFをLiNbOに置き換えたことを除き、実施例1と同様にして、電極複合粉末である、実施例2に係る評価試料を得た。実施例2について10回実施したとき、混練中に容器底部への混練物の固着は発生しなかった。
【0066】
≪比較例1≫
容器底部側の90%が解放された枠型ブレードを、通常の枠型ブレードに置き換えたことを除き、実施例1と同様にして、電極複合粉末である比較例1に係る評価試料及び固体電池を得た。比較例1について10回実施したとき、混練中に容器底部への混練物の固着は4回発生した。
【0067】
≪比較例2≫
容器底部側の90%が解放された枠型ブレードを、通常の枠型ブレードに置き換えたことを除き、実施例2と同様にして、電極複合粉末である比較例2に係る評価試料を得た。比較例2について10回実施したとき、混練中に容器底部への混練物の固着は2回発生した。
【0068】
≪評価≫
実施例1及び2並びに比較例1及び2の試料について、下記の評価を実施し、結果を比較した。
【0069】
(固着回数)
比較例1及び2においては、混練中に容器底部への混練物の固着は、それぞれ4回及び2回発生した。しかしながら、実施例1及び2においては、混練中に容器底部への混練物の固着は発生しなかった。したがって、本開示における方法によって、混練中に容器底部への混練物の固着は、低減されている。
【0070】
(装置の消費電力)
実施例1及び比較例1並びに実施例2及び比較例2について、上記「(6)混練」における装置の平均消費電力及び最大消費電力をそれぞれ比較した。
【0071】
図1に、実施例1及び比較例1における、混練装置の消費電力を示す。また、表1に、実施例2及び比較例2における、混練装置の消費電力を示す。通常の枠型ブレードを用いた比較例1及び比較例2よりも、容器底部側の90%が解放された枠型ブレードを用いた実施例1及び実施例2の方が、いずれも低い平均消費電力及び最大消費電力を示した。したがって、容器底部側の90%が解放された枠型ブレードを用いる、本開示の方法によって、混練時の装置の消費電力、すなわち、混練時の装置への機械的負荷を低減することができる。
【0072】
【表1】
【0073】
(電極複合粉末の粒子径)
粒子径の測定装置として、「分散液用粒子径解析装置XPT-C(三洋貿易株式会社製)」を用いた。下記の方法で調製したサンプル分散液を測定装置に送液し、送液中のサンプル分散液の画像を撮影した。画像を二値化処理することで粒子を検出し、粒子径を測定した。各測定において、画像を1000枚撮影した。測定を3回行い、全測定結果を平均した値を平均粒子径とする。実施例1及び2並びに比較例1及び2について、電極複合粉末の平均粒子径を測定した。
【0074】
電極複合粉末0.025gとテトラリン約25gを超音波ホモジナイザで3分間処理し、濃度約0.01質量%のサンプル分散液を調製した。送液直前に超音波ホモジナイザで1分間処理し、測定を行った。実施例1及び2並びに比較例1及び2について、同様の方法でそれぞれサンプル分散液を作製した。
【0075】
表2に、実施例1及び比較例1並びに実施例2及び比較例2の電極複合粉末における、平均粒子径を示す。実施例1及び実施例2における電極複合粉末は、それぞれ比較例1及び比較例2より、低いD95を示した。また、D50に対するD95の割合D95/D50は、比較例1及び比較例2より、実施例1及び実施例2の方が低い。D95/D50が低いことは、混練物の凝集体が減少し、電極複合粉末の均質性が高いことを示す。したがって、容器底部側の90%が解放された枠型ブレードを用いる本開示の方法によって、混練物の凝集体の減少、すなわち、高い均質性を有する電極複合粉末の製造ができる。
【0076】
【表2】
【0077】
(電池性能)
実施例1及び比較例1において作製した固体電池について、放電抵抗及び充電抵抗を下記方法によって測定した。
【0078】
全固体電池のSOC(State Of Charge)を60%に調整した。72Cの時間率で全固体電池を2秒間放電した。放電中の電圧降下量及び電流から、初期の放電抵抗(直流抵抗)を求めた。放電抵抗は、放電開始後0.1秒経過時、1秒経過時、及び2秒経過時の各時点で求めた。
【0079】
さらに、32Cの時間率で全固体電池を5秒間充電した。充電中の電圧上昇量及び電流から、初期の充電抵抗(直流抵抗)を求めた。充電抵抗は、充電開始後0.1秒経過時、1秒経過時、及び5秒経過時の各時点で求めた。
【0080】
表3に、実施例1及び比較例1の電池における、電池性能を示す。実施例1における電池は、比較例1における電池より、低い放電抵抗及び充電抵抗を示した。したがって、容器底部側の90%が解放された枠型ブレードを用いる本開示の方法によって、高い均質性を有する電極複合粉末の製造ができる。
【0081】
【表3】
図1