(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026027631
(43)【公開日】2026-02-19
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20260212BHJP
H02S 50/15 20140101ALI20260212BHJP
【FI】
G01N21/88 K
H02S50/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024129663
(22)【出願日】2024-08-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発/移動体用太陽電池の研究開発(超高効率モジュール技術開発)」の委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100214514
【弁理士】
【氏名又は名称】鳴村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 晶一
【テーマコード(参考)】
2G051
5F251
【Fターム(参考)】
2G051AA73
2G051AB02
2G051BA08
2G051BA20
2G051BB01
2G051CA03
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB02
2G051CB05
2G051CB07
2G051CC07
5F251AA11
5F251DA11
5F251KA09
(57)【要約】
【課題】検査対象に対して非接触で実施可能な検査において、検査を充実化させる。
【解決手段】検査装置1において、表側照射ユニット10は、検査対象3に対して、フォトルミネッセンス光を発させるための第1の照射光L1と、検査対象3の表面で散乱される第2の照射光L2と、を照射する。撮像部30は、第1の照射光L1により検査対象3から発せられたフォトルミネッセンス光と、第2の照射光L2が検査対象3の表面で散乱された散乱光と、を用いて検査対象3を撮像する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に対して、フォトルミネッセンス光を発させるための第1の照射光を照射する第1の照射部と、
前記検査対象に対して、前記検査対象の表面で散乱される第2の照射光を照射する第2の照射部と、
前記第1の照射部により照射された前記第1の照射光により前記検査対象から発せられた前記フォトルミネッセンス光と、前記第2の照射部により照射された前記第2の照射光が前記表面で散乱された散乱光と、を用いて前記検査対象を撮像する撮像部と、を備える、
検査装置。
【請求項2】
前記撮像部は、
前記フォトルミネッセンス光と前記散乱光とを集光するレンズと、
前記レンズにより集光された前記フォトルミネッセンス光と前記散乱光とを受光する画像センサと、を備える、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記レンズと前記画像センサとの間にセンサ前フィルタ、を更に備え、
前記センサ前フィルタは、前記フォトルミネッセンス光を透過するフォトルミネッセンス光フィルタと、前記散乱光を透過する散乱光フィルタと、を領域別に有する、
請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1の照射部は、前記第1の照射光として、前記検査対象に対して異なる複数の波長のフォトルミネッセンス光を発させるための複数の波長域の照射光を照射し、
前記撮像部は、前記第1の照射部により照射された前記複数の波長域の照射光により前記検査対象から発せられた前記複数の波長のフォトルミネッセンス光と、前記散乱光と、を用いて前記検査対象を撮像する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第1の照射部及び前記第2の照射部は、予め定められた搬送速度で搬送される前記検査対象に対して、それぞれ前記第1の照射光及び前記第2の照射光を照射し、
前記撮像部は、前記フォトルミネッセンス光と前記散乱光とを用いて、前記搬送速度で搬送される前記検査対象を予め定められた時間間隔で繰り返し撮像することで、複数の撮像画像を取得し、
前記複数の撮像画像において前記検査対象上の同じ位置が撮像された画素の輝度値を積算した積算画像を生成する画像処理部、を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記検査対象に対して、前記検査対象を透過する第3の照射光を照射する第3の照射部、を更に備え、
前記撮像部は、前記フォトルミネッセンス光と、前記散乱光と、前記第3の照射部により照射された前記第3の照射光が前記検査対象を透過した透過光と、を用いて前記検査対象を撮像する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
前記撮像部は、
前記フォトルミネッセンス光と前記散乱光と前記透過光とを集光するレンズと、
前記レンズにより集光された前記フォトルミネッセンス光と前記散乱光と前記透過光とを受光する、可視光と赤外光との両方に感度を有する画像センサと、を備える、
請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
検査対象に対して、フォトルミネッセンス光を発させるための第1の照射光を照射する第1の照射部と、
前記検査対象に対して、前記検査対象を透過する第3の照射光を照射する第3の照射部と
前記第1の照射部により照射された前記第1の照射光により前記検査対象から発せられた前記フォトルミネッセンス光と、前記第3の照射部により照射された前記第3の照射光が前記検査対象を透過した透過光と、を用いて前記検査対象を撮像する撮像部と、を備える、
検査装置。
【請求項9】
検査対象に対して、フォトルミネッセンス光を発させるための第1の照射光と、前記検査対象の表面で散乱される第2の照射光と、を照射する照射ステップと、
前記照射ステップで照射された前記第1の照射光により前記検査対象から発せられた前記フォトルミネッセンス光と、前記照射ステップで照射された前記第2の照射光が前記表面で散乱された散乱光と、を用いて前記検査対象を撮像する撮像ステップと、を含む、
検査方法。
【請求項10】
検査対象に対して、フォトルミネッセンス光を発させるための第1の照射光と、前記検査対象を透過する第3の照射光と、を照射する照射ステップと
前記照射ステップで照射された前記第1の照射光により前記検査対象から発せられた前記フォトルミネッセンス光と、前記照射ステップで照射された前記第3の照射光が前記検査対象を透過した透過光と、を用いて前記検査対象を撮像する撮像ステップと、を含む、
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、半導体等のような検査対象を検査する技術が知られている。例えば、特許文献1は、フォトルミネッセンス(PL)を利用した太陽電池セルの検査装置を開示している。PLを利用することで、検査対象に対して非接触で検査できるため、接触による検査対象へのダメージを回避でき、また検査対象が製造工程の途中でも適用可能であるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような検査対象に対して非接触で実施可能な検査において、検査をより充実化させたいという要望がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、検査対象に対して非接触で実施可能な検査において、検査を充実化させることが可能な検査装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る検査装置は、
検査対象に対して、フォトルミネッセンス光を発させるための第1の照射光を照射する第1の照射部と、
前記検査対象に対して、前記検査対象の表面で散乱される第2の照射光を照射する第2の照射部と、
前記第1の照射部により照射された前記第1の照射光により前記検査対象から発せられた前記フォトルミネッセンス光と、前記第2の照射部により照射された前記第2の照射光が前記表面で散乱された散乱光と、を用いて前記検査対象を撮像する撮像部と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る検査装置は、
検査対象に対して、フォトルミネッセンス光を発させるための第1の照射光を照射する第1の照射部と、
前記検査対象に対して、前記検査対象を透過する第3の照射光を照射する第3の照射部と
前記第1の照射部により照射された前記第1の照射光により前記検査対象から発せられた前記フォトルミネッセンス光と、前記第3の照射部により照射された前記第3の照射光が前記検査対象を透過した透過光と、を用いて前記検査対象を撮像する撮像部と、を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る検査方法は、
検査対象に対して、フォトルミネッセンス光を発させるための第1の照射光と、前記検査対象の表面で散乱される第2の照射光と、を照射する照射ステップと、
前記照射ステップで照射された前記第1の照射光により前記検査対象から発せられた前記フォトルミネッセンス光と、前記照射ステップで照射された前記第2の照射光が前記表面で散乱された散乱光と、を用いて前記検査対象を撮像する撮像ステップと、を含む。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係る検査方法は、
検査対象に対して、フォトルミネッセンス光を発させるための第1の照射光と、前記検査対象を透過する第3の照射光と、を照射する照射ステップと
前記照射ステップで照射された前記第1の照射光により前記検査対象から発せられた前記フォトルミネッセンス光と、前記照射ステップで照射された前記第3の照射光が前記検査対象を透過した透過光と、を用いて前記検査対象を撮像する撮像ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査対象に対して非接触で実施可能な検査において、検査を充実化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る検査装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】実施形態1における表側照射ユニット及び裏側照射ユニットの構成を示す図である。
【
図3】実施形態1における撮像部の構成を示す図である。
【
図4】実施形態1における撮像部に設けられたセンサ前フィルタの例を示す図である。
【
図5】実施形態1におけるレンズ前フィルタ及びセンサ前フィルタによりフィルタリングされる波長の例を示す図である。
【
図6】実施形態1における撮像部により撮像された撮像画像の例を示す図である。
【
図7】実施形態1における画像処理部の構成を示すブロック図である。
【
図8】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ実施形態1における散乱光、PL光及び透過光による積算画像の例を示す図である。(d)は、(a)~(c)に示した積算画像を統合した統合画像を示す図である。
【
図9】実施形態1に係る検査装置により実行される検査処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】実施形態2における第1の照射ユニット及び第2の照射ユニットの構成を示す図である。
【
図11】実施形態2における撮像部に設けられたセンサ前フィルタの例を示す図である。
【
図12】実施形態2における撮像部により撮像された撮像画像の例を示す図である。
【
図13】(a)は、色収差があるレンズにおける集光位置の波長による違いを模式的に示す図である。(b)は、変更例においてセンサ前フィルタにより集光位置を調整した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
【0013】
(実施形態1)
実施形態1に係る検査装置1は、フォトルミネッセンス光(PL光)を含む、発生過程が異なる複数の光を利用して検査対象3を撮像し、得られた撮像画像に基づいて検査対象3を検査する装置である。ここで、フォトルミネッセンス(以下、“PL”という。)は、電磁波(光エネルギー)の照射に起因するルミネッセンスであって、物質に光を照射することで励起された電子が基底状態に戻る際に、励起状態と基底状態とのエネルギー差に相当する波長の光を発する現象である。
【0014】
図1に示すように、検査装置1は、搬送部5と、表側照射ユニット10と、裏側照射ユニット20と、撮像部30と、画像処理部50と、を備える。表側照射ユニット10と裏側照射ユニット20と撮像部30とを合わせて、撮像装置と呼ぶこともできる。
【0015】
搬送部5は、定められた搬送経路に沿って、検査対象3を定められた方向(
図1の例では+X方向)に予め定められた搬送速度Vで搬送する。以下では、搬送部5により検査対象3が搬送される方向をX方向と定め、搬送部5により搬送される検査対象3の幅方向をY方向と定め、鉛直方向をZ方向と定める。また、+Z方向の側を表側(上側)と称し、-Z方向の側を裏側(下側)と称する。
【0016】
<検査対象3>
検査対象3は、検査装置1による検査の対象となる物体である。検査対象3は、一例として、太陽電池である。この場合、検査対象3は、シリコンを用いた太陽電池、化合物半導体を用いた太陽電池、誘起半導体を用いた太陽電池等である。或いは、検査対象3は、従来の半導体を用いた太陽電池に限らず、ペロブスカイト型の太陽電池であっても良いし、量子ドットを用いた太陽電池であっても良い。検査対象3となる太陽電池は、最終製造工程を通過した後の状態であっても良いし、製造工程の途中の状態であっても良い。
【0017】
或いは、検査対象3は、太陽電池以外の半導体であっても良い。この場合、検査対象3は、LED(Light Emitting Diode)、メモリ、集積回路等のような半導体製品であっても良いし、製品化される前のウエハの状態であっても良いし、ウエハに様々な材料の層が形成された状態であっても良い。更には、検査対象3は、太陽電池又は半導体であることに限らず、PL光を発する物質により形成されるものであれば、どのような物体であっても良い。
【0018】
<表側照射ユニット10>
表側照射ユニット10は、検査対象3に対して表側から光を照射するユニットである。表側照射ユニット10は、搬送部5により予め定められた方向(+X方向)に搬送される検査対象3の斜め上方に配置されている。表側照射ユニット10は、可視光から赤外光にわたる波長域(波長帯)の電磁波(以下では単に「光」と呼ぶ。)を、搬送部5により搬送される検査対象3に対して表側から、すなわち+Z方向の側から照射する。より具体的には、表側照射ユニット10は、搬送される検査対象3の表面に垂直な方向(Z方向)に対して、例えば20°~60°傾いた方向から照射光L1,L2を照射する。
【0019】
図2に示すように、表側照射ユニット10は、第1の照射部11と、第2の照射部12と、を備える。第1の照射部11は、検査対象3の表側の面に対して、第1の照射光L1を照射する。第1の照射光L1は、検査対象3にPL光を発させるための励起光である。言い換えると、第1の照射光L1は、検査対象3における電子を励起させてPL光を発させるための、第1の波長域の光である。第1の波長域は、検査対象3の光学吸収端に対応する波長域であって、より詳細には、検査対象3の光学吸収端よりもやや短い波長(すなわち光学吸収端よりも高いエネルギー)側の波長域である。
【0020】
第1の照射部11は、第1の波長域の光を発する光源(例えばLED光源)を有し、光源から発せられた第1の照射光L1を、搬送部5により搬送される検査対象3に照射する。検査対象3は、第1の照射光L1を照射されると、光学吸収端のエネルギーに対応する波長のPL光を発する。第1の照射光L1により発生するPL光を用いて後述する撮像部30が撮像することで、検査対象3の組成、性質、性能等を画像化することが可能になる。
【0021】
第2の照射部12は、検査対象3の表側の面に対して第2の照射光L2を照射する。第2の照射光L2は、検査対象3の表面で散乱させるための第2の波長域の光である。第2の波長域は、検査対象3の光学吸収端よりも短い波長側であって、第2の照射光L2が検査対象3を透過せずに表面で散乱されるように、上述した第1の波長域よりも更に短い波長側の波長域である。
【0022】
第2の照射部12は、第2の波長域の光を発する光源(例えばLED光源)を有し、光源から発せられた第2の照射光L2を、搬送部5により搬送される検査対象3に照射する。検査対象3は、第2の照射光L2を照射されると、照射された第2の照射光L2を表面で散乱し、散乱光を周囲に発する。第2の照射光L2により発生する散乱光を用いて後述する撮像部30が撮像することで、検査対象3の表面形状を画像化することが可能になる。
【0023】
<裏側照射ユニット20>
図1に戻って、裏側照射ユニット20は、検査対象3に対して裏側から光を照射するユニットである。裏側照射ユニット20は、搬送部5により搬送される検査対象3の下方に配置されている。裏側照射ユニット20は、可視光から赤外光にわたる波長域の電磁波を、搬送部5により搬送される検査対象3に対して下方から垂直に、すなわち-Z方向から+Z方向に照射する。
【0024】
図2に示すように、裏側照射ユニット20は、第3の照射部21を備える。第3の照射部21は、検査対象3の裏側の面に対して第3の照射光L3を照射する。第3の照射光L3は、検査対象3の内部を透過する第3の波長域の光である。第3の波長域は、第3の照射光L3が検査対象3の裏側から表側まで透過することが可能な波長である。第3の波長域は、一例として、検査対象3の光学吸収端よりも長い波長側である赤外線領域の波長域である。但し、第3の波長域は、検査対象3の材質によっては、検査対象3の光学吸収端よりも長い波長側の波長域に限らず、検査対象3を透過することが可能な波長域であれば、どのような波長域であっても良い。
【0025】
第3の照射部21は、第3の波長域の光を発する光源(例えばLED光源)を有し、光源から発せられた第3の照射光L3を、搬送部5により搬送される検査対象3に裏側から照射する。照射された第3の照射光L3は、検査対象3の内部を透過し、透過光として検査対象3の表側に出射する。第3の照射光L3により発生する透過光を用いて後述する撮像部30が撮像することで、検査対象3の内部構造を画像化することが可能になる。
【0026】
照射部11~13のそれぞれにおいて、光源から発せられる照射光L1~L3は、図示を省略する導光部材を介して、外部に出力される。導光部材は、光源から発せられた光をライン状の出射光に導光する。導光部材を介することで、検査対象3上における光が照射される照射エリアは、検査対象3の幅方向(Y方向)に長く延び、且つ、搬送方向(X方向)に細いライン状のエリアとなる。
【0027】
各照射部11~13から照射される照射光L1~L3の波長は、使用される検査対象3に応じて適切に選定されることが必要になる。具体的には、第1の照射光L1の波長は、検査対象3で適切にPLを生じさせるように、検査対象3の光学吸収端に対応する波長よりも短い波長に選定される。また、第2の照射光L2の波長は、第2の照射光L2が検査対象3を透過せずその表面で散乱されるように、検査対象3の材料に応じて選定される。同様に、第3の照射光L3の波長は、第3の照射光L3が検査対象3を透過することができるように、検査対象3の材料に応じて選定される。
【0028】
<撮像部30>
図1に戻って、撮像部30は、検査対象3を撮像することで、検査対象3の撮像画像を取得するユニットである。撮像部30は、搬送部5により搬送される検査対象3の上方に配置されており、検査対象3から発生するPL光と散乱光と透過光とを受光する。これにより、撮像部30は、PL光と散乱光と透過光とを用いて検査対象3を撮像した撮像画像を取得する。
【0029】
図3に示すように、撮像部30は、レンズ前フィルタ31と、1個のレンズ32と、センサ前フィルタ33と、1台の画像センサ34と、を備える。これら各部は、搬送部5により搬送される検査対象3の表面に対して垂直に向かい合う向きに配置されており、検査対象3を真上から撮像する。
【0030】
ここで、検査対象3において、PL光と散乱光と透過光とは、照射光L1~L3が照射される照射エリアに対応するライン状のエリア17~19から発せられる。撮像部30は、ライン状のエリア17~19の全てを含む撮像エリアを撮像する。
【0031】
レンズ前フィルタ31は、レンズ32の手前に設置されており、レンズ32に不要な光が入らないようにするための干渉フィルタである。レンズ前フィルタ31は、検査対象3から入射するPL光と散乱光と透過光とのうちの、所定の波長THよりも短い波長成分を遮断する。所定の波長THは、PL光と散乱光と透過光とのうちのいずれのピーク波長よりも短い波長に設定される。所定の波長THよりも短い短波長成分は、大きなノイズ成分となるため、レンズ前フィルタ31によりレンズ32の手前で遮断する。なお、レンズ前フィルタ31は、
図3ではレンズ32とは離れた位置に配置されている。しかしながら、レンズ前フィルタ31は、これに限らず、レンズ32の手前に設置されるものであれば、例えばレンズ32の下側の表面にコーティングされるものであっても良い。
【0032】
レンズ32は、検査対象3から入射するPL光と散乱光と透過光とを集光する。レンズの光軸は、搬送される検査対象3の表面に対して垂直である。レンズ32は、レンズ前フィルタ31を透過したPL光と散乱光と透過光とを同時に集光し、画像センサ34上に結像させる。
【0033】
レンズ32は、PL光と散乱光と透過光という波長が異なる複数の光を1個のレンズで集光するために、可視光から赤外光にわたる波長域で色収差と湾曲収差とが十分に補正されている。例えば、色収差及び湾曲収差は、400nmから1600nmの波長域で±0.01%以内であることが望ましい。このように、レンズ32は、色収差及び湾曲収差に特化したレンズを用いることで、同じ撮像距離で、波長が異なる複数の光を画像化することができる。
【0034】
センサ前フィルタ33は、画像センサ34に不要な光が入らないようにするため、レンズ32と画像センサ34との間に設置された干渉フィルタである。センサ前フィルタ33は、検査対象3から入射するPL光と散乱光と透過光とのそれぞれに1対1で対応する複数の個別フィルタを領域別に有する。
【0035】
具体的には
図4に示すように、センサ前フィルタ33は、散乱光フィルタ33aとPL光フィルタ33bと透過光フィルタ33cという3個の個別フィルタを、3個の領域に分けて有する。散乱光フィルタ33aは、第2の照射光L2が検査対象3の表面で散乱した散乱光を個別に透過し、散乱光以外の波長成分を遮断する。PL光フィルタ33bは、第1の照射光L1により検査対象3から発せられたPL光を個別に透過し、PL光以外の波長成分を遮断する。透過光フィルタ33cは、第3の照射光L3が検査対象3を透過した透過光を個別に透過し、透過光以外の波長成分を遮断する。
【0036】
なお、PL光と散乱光と透過光とを1個のレンズ32で集光するため、検査対象3上と画像センサ34上とでX方向及びY方向における位置が反転する。そのため、3つのエリア17~19とセンサ前フィルタ33における3つの個別フィルタとの対応関係は、X方向において反転している。具体的には、検査対象3上における-X側のエリア17から入射する散乱光を透過する散乱光フィルタ33aが+X側に位置し、検査対象3上における+X側のエリア19から入射する透過光を透過する透過光フィルタ33cが最も-X側に位置する。
【0037】
図5に、レンズ前フィルタ31及びセンサ前フィルタ33でフィルタリングされる波長域の例を示す。検査対象3からレンズ32に向かう光は、まずレンズ前フィルタ31により、その所定の波長THよりも短い波長成分(
図5において濃い色付きの部分)がレンズ32の手前で遮断される。
【0038】
そして、レンズ前フィルタ31を透過した光は、レンズ32を通った後、センサ前フィルタ33により、検査対象3から入射したPL光と散乱光と透過光とのそれぞれのピーク波長を含む波長域(
図5において薄い色付きの部分)にフィルタリングされる。センサ前フィルタ33における各個別フィルタでフィルタリングされる波長域は、対応する光のピーク波長を基準として、スペクトルの強度に対して例えば50~90%をカバーするように設定される。なお、
図5における波長の値はあくまで例示である。
【0039】
図3に戻って、画像センサ34は、可視光と赤外光との両方(例えば400~1600nmの波長域)に感度を有する1台のエリアセンサである。画像センサ34は、レンズ32による集光位置に配置されている。画像センサ34は、検査対象3から発せられて、レンズ前フィルタ31、レンズ32及びセンサ前フィルタ33を通ったPL光と散乱光と透過光とを受光し、撮像画像を生成する。
【0040】
より詳細には、画像センサ34は、アレイ状に配置されたフォトダイオードと、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いた読み出し回路と、を備える。フォトダイオードは、一例として、化合物半導体であるInGaAs(インジウムガリウムヒ素)である。画像センサ34に入射したPL光と散乱光と透過光とは、フォトダイオードにより光電変換され、図示を省略する読み出し回路により信号として読み出される。読み出し回路は、例えば、画像センサ34により撮像された画像を表すアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D(Analog/Digital)変換器を含む。画像センサ34により読み出された信号は、画像処理部50に出力される。
【0041】
このように広い波長域に感度を有する画像センサ34を用いることで、PL光と散乱光と透過光という異なる波長域の光で検査対象3を一度に撮像することが可能である。そのため、検査対象3を高速に、且つ多角的な側面から検査することが可能になる。
【0042】
図6に、一例として、撮像部30により撮像された撮像画像70の例を示す。撮像画像70は、検査対象3から入射したPL光と散乱光と透過光を同時に用いて撮像された画像である。なお、上述したように、検査対象3上と画像センサ34上との対応関係は、X方向及びY方向において反転している。しかしながら、理解を容易にするため、
図6に示す撮像画像70におけるXY座標は、検査対象3上におけるXY座標と一致させている。以降の図でも同様である。
【0043】
具体的には、撮像画像70は、散乱光フィルタ33aとPL光フィルタ33bと透過光フィルタ33cとのそれぞれに対応して、3つの領域71~73に分けられる。第1の領域71は、第2の照射光L2が検査対象3の表面で散乱した散乱光であって、散乱光フィルタ33aを透過した散乱光を画像センサ34が受光することにより撮像される領域である。第2の領域72は、第1の照射光L1により検査対象3から発せられてPL光であって、PL光フィルタ33bを透過したPL光を画像センサ34が受光することにより撮像される領域である。第3の領域73は、第3の照射光L3が検査対象3を透過した透過光であって、透過光フィルタ33cを透過した透過光を画像センサ34が受光することにより撮像される領域である。
【0044】
このように散乱光とPL光と透過光とにより領域別に撮像するため、第1の領域71にはライン状のエリア17が撮像され、第2の領域72にはライン状のエリア18が撮像され、第3の領域73にはライン状のエリア19が撮像される。撮像画像70におけるライン状のエリア17~19に対応する部分(
図6における白色部分)は、それ以外の部分(
図6における色付き部分)に比べて明るい輝度値(画素値)を示す。このように、1つの撮像画像70内に、散乱光とPL光と透過光とのそれぞれによる画像を含む。
【0045】
撮像部30は、このような撮像画像70を、予め定められた時間間隔Δtで繰り返し取得することで、複数の撮像画像70を取得する。より詳細には、撮像部30は、搬送部5により検査対象3が1画素に相当する距離dを搬送される毎に、撮像画像70を取得する。そのために、時間間隔Δtは、1画素に相当する距離dを搬送速度Vで除した時間“Δt=d/V”に設定される。撮像部30は、このように時間間隔Δtで繰り返し撮像することで、搬送部5により搬送される検査対象3の端から端までのエリア全体を、散乱光とPL光と透過光とで撮像することができる。
【0046】
<画像処理部50>
図1に戻って、画像処理部50は、撮像部30により取得された撮像画像70に基づいて、検査対象3の検査に関する情報を取得するユニットである。画像処理部50は、具体的には、パーソナルコンピュータ、クラウドサーバ等の情報処理装置である。
【0047】
ここで、検査対象3の検査に関する情報は、例えば、検査対象3における欠陥の有無の情報、又は、検査対象3が所定の性能基準を満たしているか否かのような情報である。或いは、検査対象3の検査に関する情報は、例えば、後述する積算画像81~83又は統合画像85のような、検査対象3を検査する目的で撮像画像70から処理された画像であっても良い。
【0048】
より詳細には、
図7に示すように、画像処理部50は、制御部51と、記憶部52と、入力受付部53と、表示部54と、通信部55と、を備える。制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、マイクロプロセッサ等を備えており、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部51において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、画像処理部50全体の動作を制御する。なお、制御部51は、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等の画像処理用のプロセッサを備えていても良い。
【0049】
記憶部52は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部52は、制御部51によって実行されるプログラム及びデータ、及び、制御部51によって生成されるデータを記憶する。入力受付部53は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置を備えており、ユーザからの操作入力を受け付ける。表示部54は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を備えており、制御部51による制御のもとで様々な画像を表示する。例えば、表示部54は、検査装置1による検査結果を表す画像を表示する。通信部55は、画像処理部50の外部の機器と通信するための通信インタフェースを備える。例えば、通信部55は、LAN(Local Area Network)、USB(Universal Serial Bus)等の周知の通信規格に則って、撮像部30を含む外部の機器と通信する。
【0050】
制御部51は、機能的に、切り出し部110と、積算部120と、統合部130と、検査部140と、出力部150と、を備える。制御部51において、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して、そのプログラムを実行して制御することにより、これら各部として機能する。
【0051】
切り出し部110は、撮像部30により撮像された撮像画像70から、検査の対象となる対象画像を切り出す。具体的には、切り出し部110は、ROI(Region Of Interest)の機能を利用して、撮像部30により時間間隔Δtで繰り返し取得された複数の撮像画像70のそれぞれにおける領域71~73から、それぞれライン状のエリア17~19に対応する部分画像を切り出す。
【0052】
積算部120は、撮像部30により取得された複数の撮像画像70において検査対象3上の同じ位置が撮像された画素の輝度値を積算することで、積算画像を生成する。具体的に説明すると、積算部120は、切り出し部110により複数の撮像画像70から切り出された部分画像のそれぞれをTDI(Time Delay Integration)センサと見なした上で、検査対象3の搬送速度Vと同期させながら、輝度値を積算する。複数の撮像画像70における輝度値を積算することにより、露光時間を長くし、且つ、固定ノイズを抑制することができるため、撮像における感度を向上させるのに有利となる。
【0053】
積算部120は、検査対象3から入射するPL光と散乱光と透過光とのそれぞれについて、検査対象3上の同じ位置が撮像された画素の輝度値を積算する。これにより、積算部120は、領域71から切り出された部分画像から
図8(a)に示すような散乱光による積算画像81を生成し、領域72から切り出された部分画像から
図8(b)に示すようなPL光による積算画像82を生成し、領域73から切り出された部分画像から
図8(c)に示すような透過光による積算画像83を生成する。
【0054】
積算画像81は、散乱光により取得された画像であるため、検査対象3の表面形状を画像化したものである。
図8(a)において積算画像81に撮像された欠陥は、検査対象3の表面に存在するクラック、出っ張り、窪み等のような欠陥である。これに対して、積算画像82は、PL光により取得された画像であるため、検査対象3の組成、性質及び性能を画像化したものである。
図8(b)において積算画像82に撮像された欠陥は、検査対象3における結晶不良等の欠陥である。ここで、結晶不良は、例えば結晶の規則的な配列が途切れたり、不要な原子が存在したりする欠陥であって、結晶成長の過程で発生し得る欠陥である。また、積算画像83は、透過光により取得された画像であるため、検査対象3の内部構造を画像化したものである。
図8(c)において積算画像83に撮像された欠陥は、検査対象3の内部に存在するボイド等の欠陥に相当する。
【0055】
図7に戻って、統合部130は、積算部120により生成された複数の積算画像81~83を統合することで、統合画像85を生成する。具体的に説明すると、統合部130は、
図8(a)~(c)に示した3つの積算画像81~83における同じ座標の輝度値を足し合わせることで、
図8(d)に示すような統合画像85を生成する。統合画像85における各画素の輝度値は、積算画像81~83における同じ座標の画素の輝度値の和となっている。
【0056】
統合部130による統合により、3つの積算画像81~83で別々に撮像された欠陥が、1つの統合画像85内に収められる。これにより、3つの積算画像81~83で別々に撮像された欠陥を関連付けて評価することができる。例えば、積算画像82に撮像された結晶不良の領域内に積算画像81に撮像されたクラックが位置している場合、クラックの位置が結晶不良のコア部であると特定することができる。言い換えると、積算画像82から結晶不良の影響範囲を特定しつつ、積算画像81から結晶不良のコア部分を特定することができる。また、積算画像82に撮像された結晶不良の領域内に積算画像83に撮像されたボイドが位置している場合、ボイドと結晶不良との因果関係を評価することができる。
【0057】
実施形態1に係る検査装置1では、3つの積算画像81~83を1個のレンズ32及び1台のエリアセンサである画像センサ34で取得しているため、複数の積算画像81~83間における分解能及び位置の整合性が高い。そのため、高い精度の統合画像85を生成することができる。
【0058】
図7に戻って、検査部140は、積算部120により生成された積算画像81~83、又は、統合部130により生成された統合画像85に基づいて、検査対象3を検査する。具体的に説明すると、検査部140は、積算画像81~83又は統合画像85の輝度分布を解析し、欠陥が存在するか否かを判定する。
【0059】
例えば
図8(a)~(d)に示したように、積算画像81~83又は統合画像85に欠陥が撮像された場合、検査部140は、検査対象3に欠陥が含まれていることを検知する。そして、検査部140は、撮像された欠陥の形状、サイズ等の特徴量に基づいて、欠陥の種別を特定する。また、検査部140は、積算画像81~83のうちの2以上の画像に欠陥が撮像された場合、欠陥の位置関係に基づいて、欠陥の関連性を分析する。或いは、検査対象3に欠陥が無い場合であっても、検査部140は、積算画像81~83又は統合画像85の輝度分布から、検査対象3が所定の性能基準を満たすか否かを判定しても良い。
【0060】
出力部150は、検査部140による検査結果を出力する。例えば、出力部150は、検査対象3の評価結果を表す画像を表示部54に表示し、ユーザに通知する。或いは、出力部150は、検査結果を、音声で出力しても良いし、通信部55を介して外部の装置に出力しても良い。
【0061】
なお、画像処理部50は、検査部140の機能を備えていなくても良く、画像処理部50の外部の装置が、検査部140の機能を備えていても良い。その場合、出力部150は、積算部120により生成された積算画像81~83、又は、統合部130により生成された統合画像85を、通信部55を介して外部の装置に出力する。そして、外部の装置が、積算画像81~83又は統合画像85に基づいて、上述した検査部140の処理を実行しても良い。
【0062】
次に、
図9に示すフローチャートを参照して、検査装置1により実行される検査処理の流れについて説明する。
【0063】
検査処理を開始すると、搬送部5は、検査対象3を、予め定められた搬送経路に沿って一定の搬送速度Vで搬送する(ステップS1)。そして、表側照射ユニット10及び裏側照射ユニット20は、それぞれの光源をオンし、搬送部5により搬送される検査対象3に対して、異なる波長域の照射光L1~L3を照射する(ステップS2)。ステップS1,S2は、それぞれ搬送ステップ及び照射ステップの一例である。
【0064】
表側照射ユニット10及び裏側照射ユニット20により照射光L1~L3が照射されると、撮像部30は、照射された照射光L1~L3により検査対象3から生じるPL光と散乱光と透過光とを用いて、検査対象3を撮像する(ステップS3)。これにより、撮像部30は、例えば
図6に示した撮像画像70を取得する。より詳細には、撮像部30は、搬送される検査対象3を一定の時間間隔Δtで繰り返し撮像することで、複数の撮像画像70を取得する。ステップS3は、撮像ステップの一例である。
【0065】
次に、画像処理部50は、撮像部30により取得された複数の撮像画像70のそれぞれを解析し、検査対象3の検査に関する情報を取得する。具体的に説明すると、画像処理部50は、切り出し部110として機能し、取得された複数の撮像画像70のそれぞれから、PL光と散乱光と透過光とが生じるエリア17~19に対応する部分画像を切り出す(ステップS4)。
【0066】
次に、画像処理部50は、積算部120として機能し、切り出した部分画像のそれぞれについて、検査対象3上における同じ位置が撮像された画素の輝度値を積算する(ステップS5)。これにより、画像処理部50は、例えば
図8(a)~(c)に示した積算画像81~83を生成する。
【0067】
積算画像81~83を生成すると、画像処理部50は、統合部130として機能し、積算画像81~83を統合する(ステップS6)。これにより、画像処理部50は、例えば
図8(d)に示した統合画像85を生成する。
【0068】
統合画像85を生成すると、画像処理部50は、検査部140として機能し、積算画像81~83又は統合画像85を解析することにより、検査対象3を検査する(ステップS7)。具体的に説明すると、画像処理部50は、検査対象3に欠陥等が存在するか否か、又は、検査対象3が所定の性能基準を満たしているか否かを判定する。
【0069】
次に、画像処理部50は、出力部150として機能し、ステップS7における検査結果を、表示、音声、通信等により外部に出力する(ステップS8)。以上により、
図9に示した検査処理は終了する。なお、ステップS4~S8は、画像処理ステップの一例である。
【0070】
以上説明したように、実施形態1に係る検査装置1は、検査対象3に対して照射光L1~L3を照射し、照射光L1~L3により検査対象3から発生するPL光と散乱光と透過光とを用いて検査対象3を撮像する。これにより、検査対象3に対して非接触で検査を実施することができるため、検査対象3にダメージを与えるおそれがなく、また、製造プロセスの途中でも検査が可能になるため、製造プロセスの途中で生じる欠陥を特定することが可能になる。その上で、PL光だけでなく散乱光と透過光とを用いて検査対象3を検査するため、PL光による組成、性質及び性能の検査と、散乱光による表面形状の検査と、透過光による内部構造の検査と、を組み合わせることができる。その結果、多角的な側面から検査対象3を検査することができ、検査を充実化させることができる。
【0071】
更に、実施形態1に係る検査装置1は、検査対象3に対して照射光L1~L3を同時に照射し、PL光と散乱光と透過光が発生するエリア17~19の全てを同時に撮像するため、1回のスキャンで複数の波長の光による撮像が可能になる。これにより、検査対象3を高速に検査することができ、検査時間の短縮につながる。
【0072】
特に、実施形態1に係る検査装置1は、可視光から赤外光にわたる波長域に対応可能な1個のレンズと1台の画像センサ34という1個の撮像系により、複数の波長の光により検査対象3を撮像する。複数の波長の光による撮像のために複数の撮像系を設ける必要がないため、装置のサイズ及びコストを抑制することができ、装置の小型化及び軽量化につながる。
【0073】
また、実施形態1に係る検査装置1は、1個の撮像系によりPL光と散乱光と透過光とで検査対象3を撮像するため、PL光と散乱光と透過光で撮像された画像間における分解能及び位置の整合性が向上する。これにより、PL光と散乱光と透過光とで撮像された画像を高い精度で比較することができるため、検査対象3を評価精度が向上する。
【0074】
また、実施形態1に係る検査装置1は、1つのセンサ前フィルタ33によりPL光と散乱光と透過光とをフィルタリングするため、フィルタを変更するためのフィルタチェンジャ等の回転機構が不要である。そのため、回転機構の駆動に起因して検査対象3にパーティクルが付着することを抑制することができ、これにより検査対象3に付着したパーティクルを後工程で洗浄する等の手間を減らすことができる。
【0075】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態1と同様の構成及び機能については、適宜説明を省略する。
【0076】
実施形態1に係る検査装置1は、検査対象3に対して照射光L1~L3を照射し、照射光L1~L3により検査対象3から発生するPL光と散乱光と透過光とを用いて検査対象3を撮像した。これに対して、実施形態2に係る検査装置1は、検査対象3にPL光を発させるための照射光L1として、異なる複数の波長域の励起光を検査対象3に照射し、異なる複数の波長のPL光を発させる。
【0077】
実施形態2において、検査対象3は、複数の層を有する積層体である。具体的には
図10に示すように、実施形態2における検査対象3は、トップセル3aとミドルセル3bとボトムセル3cという3つの層を有する。実施形態2における検査対象3は、一例として、複数のバンドギャップを有する太陽電池である。複数のバンドギャップを有する太陽電池は、例えば、積層型、タンデム型、マルチジャンクション型等のような、多接合型の太陽電池である。多接合型の太陽電池の一例として、3-5族(III-V族)半導体太陽電池が挙げられる。
【0078】
検査対象3において、トップセル3aとミドルセル3bとボトムセル3cは、太陽光エネルギーを有効的に発電するように、それぞれ互いに異なる材料で形成されており、互いに異なるバンドギャップを有する半導体層である。トップセル3aとミドルセル3bとボトムセル3cは、励起光を照射された場合に、それぞれのバンドギャップに対応して、互いに異なる波長のPL光を発する。
【0079】
実施形態2に係る検査装置1は、
図10に示すように、第1の照射部11と第2の照射部12とが設けられた表側照射ユニット10と、第3の照射部21が設けられた裏側照射ユニット20、とを備える。第2の照射部12と第3の照射部21は、実施形態1と同様である。具体的には、第2の照射部12は、検査対象3の表側から、検査対象3の表面で散乱させて散乱光を生じさせるための照射光L2を照射する。第3の照射部21は、検査対象3の裏側から、検査対象3の内部を透過させて透過光を生じさせるための照射光L3を照射する。
【0080】
表側照射ユニット10において、第1の照射部11は、第1の照射光L1として照射光L11~L13を照射する3個の照射部11a~11cを備える。照射光L11~L13は、検査対象3におけるトップセル3aとミドルセル3bとボトムセル3cの各層における電子を励起させて、各層においてPL光を発させるための、互いに異なる波長域の励起光である。
【0081】
照射部11a~11cは、それぞれ互いに異なる波長域の照射光L11~L13を、検査対象3上の異なる照射エリアに照射する。具体的に説明すると、照射部11aは、トップセル3aに対してPLを生じさせるための、トップセル3aの材料の光学吸収端よりも短い波長にピーク波長を有する照射光L1を照射する。照射部11bは、ミドルセル3bに対してPLを生じさせるための、ミドルセル3bの材料の光学吸収端よりも短い波長にピーク波長を有する照射光L2を照射する。照射部11cは、ボトムセル3cに対してPLを生じさせるための、ボトムセル3cの材料の光学吸収端よりも短い波長にピーク波長を有する照射光L3を照射する。照射光L1~L3の波長は、検査対象3で適切にPLが生じるように、使用される検査対象3に応じて適切に選定されることが必要になる。
【0082】
このように照射部11a~11cから照射光L11~L13が照射されると、トップセル3a、ミドルセル3b及びボトムセル3cから、各層の光学吸収端に対応する波長のPL光が発せられる。その結果として、検査対象3から、異なる3つの波長のPL光が発せられる。撮像部30は、このようにして検査対象3から発せられる3つの波長のPL光と、照射光L2による散乱光と、照射光L3による透過光と、という異なる5つの波長の光を受光する。そして、撮像部30は、1個のレンズ32と1個の画像センサ34により、異なる5つの波長の光で同時に検査対象3を撮像し、検査対象3の撮像画像を取得する。
【0083】
より詳細には、実施形態1における撮像部30は、異なる3つの波長の光で同時に検査対象3を撮像するための機構を備えていたのに対して、実施形態2における撮像部30は、異なる5つの波長の光で同時に検査対象3を撮像するための機構を備える。具体的に説明すると、実施形態2において、センサ前フィルタ33は、
図11に示すように、5個の個別フィルタを領域別に有する。言い換えると、PL光フィルタ33bは、トップセル3a、ミドルセル3b及びボトムセル3cという3層のそれぞれから発せられたPL光を受光することに対応して、トップセル用PL光フィルタとミドルセル用PL光フィルタとボトムセル用PL光フィルタという3個のフィルタを領域別に有する。センサ前フィルタ33は、このような3個のフィルタを含むPL光フィルタ33bと、実施形態1と同様の散乱光フィルタ33a及び透過光フィルタ33cとにより、検査対象3の3層から発せられたPL光と、散乱光と、透過光と、を個別に透過する。
【0084】
撮像部30は、検査対象3の3層から発せられたPL光と、散乱光と、透過光と、という異なる5つの波長の光を同時に用いて検査対象3を撮像し、例えば
図12に示す撮像画像70を取得する。実施形態2における撮像画像70は、センサ前フィルタ33における5個の個別フィルタのそれぞれに対応して、5個の領域71,72a,72b,72c,73に分けられる。領域72a~72cは、それぞれ、PL光フィルタ33bにおけるトップセル用PL光フィルタ、ミドルセル用PL光フィルタ及びボトムセル用PL光フィルタを透過したPL光を画像センサ34が受光することにより撮像される領域である。撮像画像70における5個の領域71,72a,72b,72c,73には、それぞれライン状のエリア17,18a,18b,18c,19が撮像される。撮像部30は、このような撮像画像70を、予め定められた時間間隔Δtで繰り返し取得することで、複数の撮像画像70を取得する。
【0085】
画像処理部50は、撮像部30により取得された撮像画像70に基づいて、検査対象3の検査に関する情報を取得する。具体的に説明すると、切り出し部110は、5個の領域71,72a,72b,72c,73から、それぞれライン状のエリア17,18a,18b,18c,19に対応する5個の部分画像を切り出す。積算部120は、切り出し部110により切り出された5個の部分画像のそれぞれに対して、検査対象3上の同じ位置が撮像された画素の輝度値を積算することで、エリア17,18a,18b,18c,19に対応する5個の積算画像を生成する。実施形態1では、積算部120は、PL光を用いて撮像された画像として1個の積算画像82を生成したのに対して、実施形態2では、積算部120は、トップセル3aとミドルセル3bとボトムセル3cの3層のそれぞれから発せられたPL光を用いて、3層それぞれの積算画像を個別に生成する。
【0086】
統合部130は、積算部120により生成された5個の積算画像を統合することで、統合画像を生成する。検査部140は、積算部120により生成された5個の積算画像、又は、統合部130により生成された統合画像に基づいて、検査対象3を検査する。例えば、検査部140は、検査対象3に含まれる3層それぞれについて個別に生成された積算画像に基づいて、3層それぞれに欠陥が存在するか否かを判定する。或いは、検査部140は、5個の積算画像のうちの2以上の画像に欠陥が撮像された場合、欠陥の位置関係に基づいて、欠陥の関連性を分析する。また、検査部140は、積算画像又は統合画像の輝度分布から、検査対象3が所定の性能基準を満たしているか否かを判定しても良い。
【0087】
以上説明したように、実施形態2に係る検査装置1は、検査対象3に対して、PL光を発させるための異なる波長域の照射光L11~L13と、散乱光及び透過光を生じさせるための照射光L2,L3と、を照射する。そして、実施形態2に係る検査装置1は、検査対象3から発せられた異なる3つの波長のPL光と、散乱光と、透過光と、という5つの波長の光を同時に用いて検査対象3を撮像する。実施形態2では、検査対象3に含まれる3層それぞれについて個別に積算画像を生成するため、実施形態1に比べてより詳細な検査情報を取得することができ、検査をより充実化させることができる。
【0088】
なお、上記実施形態2では、検査対象3は、3つの層を有する多接合型の太陽電池であった。しかしながら、検査対象3が有する層の数は3つであることに限らず、2つであっても良いし、4つ以上であっても良い。なお、検査対象3における層の数が3つ以外である場合、第1の照射部11における光源の数、及び、PL光フィルタ33bにおける個別フィルタの数も3つではなく、検査対象3における層の数、すなわち検査対象3から発せられるPL光の波長の数と同じに設定される。
【0089】
或いは、検査対象3は、励起光が照射された場合に異なる複数の波長のPL光を発するものであれば、複数の層に明確に分かれていなくても良い。例えば、検査対象3は、互いに波長が異なるPL光を発する複数の材料が1つの層内に混在した、いわゆるマルチバンド型の太陽電池であっても良い。また、検査対象3は、異なる複数の波長のPL光を発する物質により形成されているものであれば、太陽電池以外の半導体であっても良いし、半導体以外の物体であっても良い。
【0090】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、各実施形態を組み合わせたり、各実施形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0091】
例えば、上記実施形態では、検査装置1は、第1から第3の照射部11,12,21を備えており、検査対象3に対して照射光L1~L3を照射し、照射光L1~L3により検査対象3から発生するPL光と散乱光と透過光とを用いて検査対象3を撮像した。しかしながら、検査装置1は、PL光と散乱光と透過光との全てを用いることに限らない。例えば、検査装置1は、透過光を用いず、PL光と散乱光とを用いて検査対象3を撮像しても良い。或いは、検査装置1は、散乱光を用いず、PL光と透過光とを用いて検査対象3を撮像しても良い。実施形態2のようにPL光として異なる複数の波長のPL光を用いる場合も同様である。
【0092】
透過光を用いない場合、検査装置1は、検査対象3に対して第3の照射光L3を照射する第3の照射部21を備えなくても良い。言い換えると、検査装置1は、裏側照射ユニット20を備えなくても良い。この場合、検査装置1は、表側照射ユニット10に設けられた第1の照射部11と第2の照射部12とから検査対象3に対して照射光L1,L2を照射し、PL光と散乱光とを発生させる。そして、撮像部30は、PL光と散乱光とを用いて検査対象3を撮像して撮像画像70を取得し、画像処理部50は、撮像画像70に基づいて検査対象3の検査に関する情報を取得する。
【0093】
散乱光を用いない場合、検査装置1は、表側照射ユニット10において、検査対象3に対して第2の照射光L2を照射する第2の照射部12を備えなくても良い。この場合、検査装置1は、表側照射ユニット10に設けられた第1の照射部11と、裏側照射ユニット20に設けられた第3の照射部21とから検査対象3に対して照射光L1,L3を照射し、PL光と透過光とを発生させる。そして、撮像部30は、PL光と透過光とを用いて検査対象3を撮像して撮像画像70を取得し、画像処理部50は、撮像画像70に基づいて検査対象3の検査に関する情報を取得する。
【0094】
このように、PL光と散乱光と透過光との全てを用いず、PL光と散乱光のみ、又は、PL光と透過光のみを用いることでも、PL光のみを用いる場合に比べて、検査を充実化させることができるという効果が得られる。また、1回のスキャンで複数の波長の光による撮像が可能であるため、検査対象3を高速に検査することができる。PL光と散乱光と透過光とのうちのどれを用いるか、及び、PL光として何通りの異なる波長のPL光を用いるかは、使用される検査対象3の構造及び材料に応じて、また検査する項目に応じて、自由に組み合わせることができる。
【0095】
上記実施形態では、可視光から赤外光にわたる波長域で色収差が十分に補正されたレンズ32を使用した。しかしながら、レンズ32の色収差が大きくても、センサ前フィルタ33における各個別フィルタの厚みを調整することで、レンズ32の色収差による影響を抑制することができる。具体的には、センサ前フィルタ33における複数の個別フィルタ(散乱光フィルタ33a、PL光フィルタ33b及び透過光フィルタ33c)のそれぞれ、レンズ32の光軸方向(Z方向)における厚みは、レンズ32に色収差がある条件で、各個別フィルタを透過する光の波長に応じて、互いに異なっていても良い。
【0096】
具体的に、
図13(a)に、色収差があるレンズ32により異なる波長の光を集光した場合における集光位置F1~F3の違いを示す。なお、
図13(a)では、説明のために、レンズ32と画像センサ34との間にセンサ前フィルタ33が設けられていない場合を示している。
図13(a)に示すように、レンズ32に色収差がある場合、レンズ32に入射する光の波長によって焦点距離が変化するため、各波長の光の集光位置F1~F3はZ方向にずれる。
【0097】
これに対して、
図13(b)に、レンズ32と画像センサ34との間にセンサ前フィルタ33を設置し、その上で、センサ前フィルタ33における3個の個別フィルタの厚みを異なるようにしたことで、波長毎の集光位置F1~F3を調整した例を示す。なお、
図13(b)は、理解を容易にするために3個の個別フィルタと画像センサ34付近のみを示しており、レンズ32は省略している。また、実際の寸法とは必ずしも一致しない。
【0098】
図13(b)の例では、3個の個別フィルタのうちの散乱光フィルタ33aの厚みを最も厚くし、透過光フィルタ33cの厚みを最も薄くしている。これにより、照射光L1により生じた散乱光の集光位置F1は、レンズ32に対してからより遠くに調整され、照射光L3により生じた透過光の集光位置F3は、レンズ32に対してより近くに調整される。その結果、3個の集光位置F1~F3のZ方向におけるずれを小さくすることができる。
【0099】
このように、レンズ32の色収差が大きくても、センサ前フィルタ33における個別フィルタ間で厚みに差を設けることで、異なる波長の複数の光の焦点位置を共に画像センサ34上に調整することができる。そのため、同じ撮像距離で、散乱光、PL光、透過光等のような異なる波長の複数の光のそれぞれで検査対象3を画像化することができる。
【0100】
なお、波長毎の色収差の大小は、レンズ32の設計(レンズ32のコーティングの設計を含む)によって変わるため、個別フィルタの厚みの差は、
図13(b)に示した例に限ない。例えば、レンズ32の設計に応じて、3つの個別フィルタのうちの散乱光フィルタ33aの厚みを最も薄くし、透過光フィルタ33cの厚みを最も厚くしても良い。
【0101】
また、実施形態2のようにセンサ前フィルタ33が5個の個別フィルタを有する場合のように、センサ前フィルタ33の個別フィルタの個数、すなわち検査対象3からレンズ32に入射する異なる波長の光の数は3個に限らない。センサ前フィルタ33が有する個別フィルタの数が3個以外の場合であっても、複数の個別フィルタのそれぞれの厚みが、各個別フィルタを透過する光の集光位置のZ方向におけるずれが小さくなるように、互いに異なっていても良い。
【0102】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0103】
1 検査装置、2 撮像装置、3 検査対象、3a トップセル、3b ミドルセル、3c ボトムセル、5 搬送部、10 表側照射ユニット、11,11a~11c,12,21 照射部、17~19,18a~18c エリア、20 裏側照射ユニット、30 撮像部、31 レンズ前フィルタ、32 レンズ、33 センサ前フィルタ、33a 散乱光フィルタ、33b PL光フィルタ、33c 透過光フィルタ、34 画像センサ、50 画像処理部、51 制御部、52 記憶部、53 入力受付部、54 表示部、55 通信部、70 撮像画像、71~73,72a~72c 領域、81~83 積算画像、85 統合画像、110 切り出し部、120 積算部、130 統合部、140 検査部、150 出力部、F1~F3 集光位置、L1~L3,L11~L13 照射光