(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026003234
(43)【公開日】2026-01-13
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 69/18 20060101AFI20260105BHJP
【FI】
D05B69/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024101086
(22)【出願日】2024-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 靖典
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】峰松 容浩
(72)【発明者】
【氏名】黒川 和樹
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CB03
3B150CE01
3B150CE04
3B150LA15
3B150LB01
3B150QA02
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】移動検出装置を用いて縫製する場合の、縫製開始時又は縫製再開時にユーザの意図しない挙動をする可能性を低減することに貢献するミシンを提供すること。
【解決手段】ミシンは針棒、針板、押え棒、ミシンモータ、押えモータ及びプロセッサを備える。ミシンモータは針板よりも縫針の下端が上方にある針上位置と、針板よりも縫針の下端が下方にある針下位置とを含む範囲において針棒を上下方向に移動させる。押えモータは通常位置と下降位置との間において押え棒を上下方向に移動させる。プロセッサは縫製開始時及び縫製再開時の少なくとも何れかに針棒を針下位置から針上位置に移動後に、押え棒を下降位置から通常位置に移動させる一針目処理を実行する(S5からS9)。プロセッサは移動検出装置の検出結果に基づき、押え棒が通常位置にある状態で針棒を上下方向に移動させる二針目処理を実行する(S12)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる針棒と、
前記針棒に装着された縫針が挿通可能な針穴が形成された針板と、
前記上下方向に延び、前記針板に載置された被縫製物の移動を検出する移動検出装置が装着される押え棒と、
前記針板よりも前記縫針の下端が上方にある針上位置と、前記針板よりも前記縫針の前記下端が下方にある針下位置とを含む範囲において前記針棒を前記上下方向に移動させるミシンモータと、
通常位置と、前記通常位置よりも前記押え棒の下端が下方にある下降位置とを含む範囲において、前記押え棒を前記上下方向に移動させる押えモータと、
プロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
縫製開始時及び縫製再開時の少なくとも何れかに、前記ミシンモータを駆動して、前記針棒を前記針下位置から前記針上位置に移動させた後に、前記押えモータを駆動して、前記押え棒を前記下降位置から前記通常位置に移動させる一針目処理と、
前記移動検出装置の検出結果に基づき、前記ミシンモータを駆動して、前記押え棒が前記通常位置にある状態で前記針棒を前記上下方向に移動させる二針目処理と
を実行するよう構成されていることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記針上位置は、前記針板よりも前記縫針の前記下端が上方にあり、かつ、前記被縫製物の上面よりも前記縫針の前記下端が上方にある位置であることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記二針目処理において、前記一針目処理で前記押え棒が前記通常位置に移動した後に取得された前記移動検出装置の検出結果に基づき、前記被縫製物が所定量より多く移動していた場合に、前記押え棒が前記通常位置にある状態で、所定速度で前記針棒を前記上下方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記二針目処理において、前記一針目処理で前記針上位置に前記針棒が移動した後に取得された前記移動検出装置の検出結果に基づき、前記被縫製物が所定量より多く移動していた場合に、前記押え棒が前記通常位置にある状態で、所定速度で前記針棒を前記上下方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記二針目処理後、前記移動検出装置の検出結果に基づき、前記ミシンモータを駆動して、前記被縫製物の移動量に応じた速度で前記針棒を前記上下方向に移動させる縫製制御処理と、
前記縫製制御処理中、前記移動検出装置の検出結果に基づき、前記被縫製物の前記移動量が所定量以下の場合に、前記針板よりも前記縫針の前記下端が上方にある針上停止位置で前記ミシンモータの駆動を停止して、前記針棒を停止させる停止処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記一針目処理において、前記押え棒を下降させて、前記移動検出装置が前記被縫製物に当接する位置を前記下降位置とし、前記下降位置から所定距離上方の位置を前記通常位置として、前記針棒を前記針下位置から前記針上位置に移動させた後に、前記押え棒を前記下降位置から前記通常位置に移動させることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項7】
入力インターフェイスを更に備え、
前記プロセッサは、
前記入力インターフェイスを介して縫製指示が検出されたことに応じて、前記一針目処理を実行することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンは、布の移動を検出する移動検出装置の検出結果に基づき縫目の長さを調整できる(特許文献1参照)。移動検出装置は、光を検出して布の移動を検出する光検出部と、光検出部が内蔵され、ミシンの押え棒に対して着脱可能である本体部と、布に接触可能な布押え部が形成され、本体部に対して着脱可能である押え支持部とを備える。本体部の底面には光が通過可能な窓部が設けられ、押え支持部が本体部に対して取り付けられた状態で、布押え部は、本体部の底面よりも下方に位置する。移動検出装置は、布の移動量に応じた検出結果をミシンに出力する。
【0003】
従来のミシンは、フリーモーションモードが設定されたときに、送り歯を針板の上方に突出しない位置に移動させ、押え足を被縫製物の所定距離上方に配置して、縫製を行う(特許文献2参照)。具体的には、ミシンは、送り歯の状態を非作用位置に切替えた上で、押え足昇降機構を制御して、押え足を被縫製物に当接する押圧位置まで下降させ、押圧位置での高さ位置検出器の検出信号から被縫製物の厚さを検出する。ミシンは、検出された厚さに基づいて、押え足を被縫製物の上面から所定距離だけ上昇させた浮上り位置に停止させた状態で、ミシンモータを制御し、針棒を縫針の先端部が加工布に刺さる直前の設定位置に移動させる。ユーザは、針棒の駆動に併せて手動で被縫製物を移動することで、縫製を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-035293公報
【特許文献2】特開2009-291416公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のミシンを組み合わせて、移動検出装置の検出結果に基づき針棒を駆動しながらフリーモーションモードで縫製を行う場合、縫製開始時に針棒が上昇するときに縫針が被縫製物を上方に引っ張り、被縫製物が針板から浮き上がることがある。この時の被縫製物の移動が移動検出装置により検出されると、ミシンは移動検出装置の検出結果に基づき縫製を開始する等のユーザの意図しない挙動をする可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、移動検出装置を用いて縫製する場合の、縫製開始時又は縫製再開時にユーザの意図しない挙動をする可能性を低減することに貢献するミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るミシンは、上下方向に延びる針棒と、前記針棒に装着された縫針が挿通可能な針穴が形成された針板と、前記上下方向に延び、前記針板に載置された被縫製物の移動を検出する移動検出装置が装着される押え棒と、前記針板よりも前記縫針の下端が上方にある針上位置と、前記針板よりも前記縫針の前記下端が下方にある針下位置とを含む範囲において前記針棒を前記上下方向に移動させるミシンモータと、通常位置と、前記通常位置よりも前記押え棒の下端が下方にある下降位置とを含む範囲において、前記押え棒を前記上下方向に移動させる押えモータと、プロセッサとを備え、前記プロセッサは、縫製開始時及び縫製再開時の少なくとも何れかに、前記ミシンモータを駆動して、前記針棒を前記針下位置から前記針上位置に移動させた後に、前記押えモータを駆動して、前記押え棒を前記下降位置から前記通常位置に移動させる一針目処理と、前記移動検出装置の検出結果に基づき、前記ミシンモータを駆動して、前記押え棒が前記通常位置にある状態で前記針棒を前記上下方向に移動させる二針目処理とを実行するよう構成されている。ミシンのプロセッサが実行する一針目処理は、縫製開始時又は縫製再開時の一針目の縫製時に押え棒が通常位置にある場合に比べ、針棒が下降位置から通常位置に移動することに伴い、縫針が被縫製物を上方に引っ張る時に、下降位置にある押え棒に装着される移動検出装置が被縫製物の上方への移動を制限することに貢献する。ミシンの一針目処理は、一針目処理実行時の移動検出装置の検出結果に基づき誤って二針目の縫製が実行されることを抑制することに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】移動検出装置9が装着されたミシン1の斜視図である。
【
図2】(A)は移動検出装置9が装着されたミシン1の左側面図であり、(B)は、押え足25が被縫製物Cに当接した状態の移動検出装置9を拡大した図であり、(C)は、押え足25が被縫製物Cから所定距離上方に配置された移動検出装置9を拡大した図である。
【
図4】ミシン1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】移動検出装置9が装着された場合に実行されるメイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1の上下方向、左下方向、右上方向、左上方向、及び右下方向が各々、ミシン1の上下方向、左方向、右方向、後方向、及び前方向である。ベッド11及びアーム13の長手方向D2がミシン1の左右方向である。水平方向と平行な平面におけるベッド11及びアーム13の短手方向D1がミシン1の前後方向である。ミシン1において、脚柱12が配置されている側が右側である。脚柱12の伸長方向がミシン1の上下方向である。上下方向と直交し、針棒15から押え棒16に向かう方向は後方であり、順方向Fと定義される。順方向Fの反対方向は前方であり、逆方向Bと定義される。順方向F及び逆方向Bは、短手方向D1に沿った方向である。
【0010】
図1に示すように、ミシン1は、ベッド11、脚柱12、及びアーム13を備える。脚柱12は、上下方向に延びる。ベッド11は、ベッド面10を有し、脚柱12の下端から左方に延びる。アーム13は、ベッド11の上方において、脚柱12の上端からベッド11と平行に左方に延びる。アーム13は、左端部に頭部14を有する。
【0011】
ベッド面10は、水平方向に広がる。ベッド面10は、水平方向に広がる針板41を備える。針板41には、針棒15に装着された縫針17が挿通可能な針穴40が形成される。ベッド11には、針板41の下方に、
図4に示す送り機構31、及び図示しない釜機構等が設けられる。送り機構31は、送り歯32を備える。送り機構31は、送り歯32を駆動し、被縫製物を所定の移動量で順方向F又は逆方向Bに移動させる。順方向Fは、ユーザに対してミシン1が配置される方向に対応する。釜機構は、釜を備える。釜機構は、釜を駆動し、上糸を下糸に絡ませる。
【0012】
図1に示すように、脚柱12の前側には、上下方向に長い液晶ディスプレイ(LCD)43及びタッチスクリーン44が設けられる。LCD43は、縫製作業に必要なメッセージ等を表示する。タッチスクリーン44は、LCD43の前面に設けられる。ユーザがLCD43に表示された項目を指及び専用のスタイラスペン等の指示体で選択すると、タッチスクリーン44により選択位置が検出される。ユーザは、ミシン1に対してタッチスクリーン44を介して種々の指示を入力できる。
【0013】
アーム13の前面には、スタート/ストップスイッチ45を含む複数のスイッチが設けられる。スタート/ストップスイッチ45は、縫製動作の開始及び停止を指示するためのスイッチである。アーム13の上部には、図示しない開閉可能なミシンカバーが設けられる。
図1及び
図2(A)では、アーム13のミシンカバーの図示が省略されている。アーム13のうち、ミシンカバーが開放された状態で露出する上面53には、糸収容部50が設けられる。糸収容部50は、上糸が巻回された糸駒Tを収容可能な、下方に凹んだ凹部である。糸立棒51は、糸収容部50の右側の内壁面から左方に延びる。糸駒Tは、糸立棒51に糸駒Tの挿入孔が挿入されることによってミシン1に装着される。
【0014】
頭部14は、頭部14の内部に、図示しない針棒機構、及び押え足機構を備える。
図2(A)から
図2(C)に示すように針棒機構は、上下方向に延びる針棒15を有し、針棒15を上下方向に往復移動させる。針棒15の下端部は、頭部14の下端から下方に向けて突出する。針棒15の下端には、縫針17が取り外し可能に装着される。針棒15に装着された縫針17は、上下方向に往復移動する。縫針17に挿通された上糸は、釜により下糸と絡み、被縫製物に縫目を形成する。押え足機構は、上下方向に延びる押え棒16を有し、押え棒16を上下方向に往復移動させる。押え棒16の下端部は、頭部14の下端から下方に向けて突出する。
【0015】
移動検出装置9は、送り歯32を用いずに、ベッド面10に載置された被縫製物Cをユーザが手動で移動させながら縫製する場合に使用される。移動検出装置9は、針板41に載置された被縫製物Cの移動を検出し、被縫製物Cの移動量に応じた検出結果を出力する。移動検出装置9は、押え棒16の下方においてベッド11に配置された被縫製物Cの移動量を検出し、ミシン1に出力する。ミシン1は、被縫製物Cの単位時間当たりの移動量、つまり、移動速度に基づき
図4に示すミシンモータ33の駆動を制御することで、被縫製物Cに形成される縫目の長さを調整する。移動検出装置9は、押え足25を着脱可能である。押え足25は、後述の通常位置において被縫製物Cの上面から所定距離上方に配置され、被縫製物Cの上下方向の移動を所定距離の範囲内に制限することで、ベッド面10に載置された被縫製物Cの浮き上がりを抑制する。
【0016】
図3に示すように、移動検出装置9は、筐体95、センサ97、ケーブル99、及び装着体98を備える。筐体95は、左右方向よりも前後方向に長い直方体状である。筐体95は、ミシン1の押え棒16に対して着脱可能である。筐体95は、センサ97を収容する。
【0017】
センサ97は、筐体95の下面96に形成された開口100の上方に位置する。センサ97は、
図4に示す発光素子971及び受光素子972を有する。発光素子971及び受光素子972は、開口100の上方に位置する。発光素子971は、被縫製物Cの移動量を検出するために、被縫製物Cに向けて光を発する。発光素子971は、例えば赤外線を照射する赤外線発光ダイオードである。移動検出装置9がミシン1の押え棒16に装着された状態で、発光素子971の光の照射方向は下方である。照射された光は、開口100を通過して被縫製物Cに到達して反射する。被縫製物Cで反射した光は、開口100を通過する。受光素子972は、検出領域内にある被縫製物Cに反射された反射光を検出するための素子であり、被縫製物Cから反射された光を検出して電気信号に変換する。検出領域は、開口100の下方に位置する、平面視円状の領域である。発光素子971は、例えば赤外線を検出する赤外線撮像素子である。センサ97は、発光素子971により被縫製物Cに向けて周期的に光を照射し、単位時間あたりの被縫製物Cの移動量を検出する。本実施形態の移動検出装置9は、短手方向D1の移動量と、長手方向D2の移動量との各々を検出する。移動検出装置9は、後方の移動量をプラスの移動量、前方の移動量をマイナスの移動量として、短手方向D1の移動量を検出する。移動検出装置9は、右方の移動量をプラスの移動量、左方の移動量をマイナスの移動量として、長手方向D2の移動量を検出する。
【0018】
ケーブル99は、筐体95の上面後方から上方に延びる。ケーブル99は、アーム13の背面に設けられた図示しないコネクタに取り外し可能に接続される。移動検出装置9は、ケーブル99を介して、単位時間あたりの被縫製物Cの移動量をミシン1に出力する。装着体98は、筐体95の上面前部から上方に延びる。装着体98は、押え棒16に取り外し可能に装着される。これにより押え棒16の下端部には、移動検出装置9が取り外し可能に装着される。
【0019】
上記構成を有するミシン1において、送り歯32によって被縫製物を搬送する場合の動作を簡単に説明する。ミシン1は、スタート/ストップスイッチ45の押下を検出すると、釜機構、送り機構31、針棒機構、及び押え足機構を同期して駆動させる。これにより、針棒15に装着された縫針17によって、ベッド面10に載置された被縫製物Cに対して縫目が形成される。
【0020】
図4を参照して、ミシン1の電気的構成を説明する。ミシン1のプロセッサ3は、CPU61、ROM62、RAM63、記憶装置64、及び入出力インターフェイス65を備えている。CPU61は、バス66を介して、ROM62、RAM63、記憶装置64、及び入出力インターフェイス65と接続されている。
【0021】
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、ROM62に記憶された各種プログラムに従って、縫製に関わる各種演算及び処理を実行する。ROM62は、図示しないが、プログラム記憶エリアを含む複数の記憶エリアを備える。プログラム記憶エリアには、後述のメイン処理を実行させるためのプログラムを含む、ミシン1を動作させるための各種プログラムが記憶されている。RAM63には、CPU61が演算処理した演算結果等を収容する記憶エリアが設けられる。記憶装置64には、ミシン1が各種処理を実行するための各種パラメータ等が記憶されている。記憶装置64は、針棒15が上死点にある場合の主軸34の角度を0度として、後述のエンコーダ38の検出結果と、針棒15の上下位置との対応を記憶する。記憶装置64は、後述の縫製制御処理における被縫製物Cの移動量と、針棒15の移動速度との対応を記憶する。
【0022】
入出力インターフェイス65には、プロセッサ3が有する駆動回路91から94、タッチスクリーン44、スタート/ストップスイッチ45、エンコーダ38、並びに移動検出装置9のセンサ97の発光素子971及び受光素子972が接続されている。
【0023】
駆動回路91には、ミシンモータ33が接続されている。駆動回路91は、CPU61からの制御信号に従って、ミシンモータ33を駆動する。ミシンモータ33の駆動に伴い、ミシン1の主軸34を介して針棒機構が駆動され、針棒15が上下方向に往復移動する。ミシンモータ33は、針板41よりも縫針17の下端18が上方にある針上位置と、針板41よりも縫針17の下端18が下方にある針下位置とを含む範囲において針棒15を上下方向に移動させる。針棒15の移動可能範囲の上端は上死点であり、下端は下死点である。駆動回路92には、送り量調整モータ30が接続されている。送り量調整モータ30は、出力軸を回動することで、送り機構31による被縫製物Cの前後方向の送り量を調整する。駆動回路93は、CPU61からの制御信号に従って、押えモータ35を駆動する。押えモータ35の駆動に伴い、ミシン1の主軸34の駆動とは独立して、押え棒16が上下方向に移動する。押えモータ35は、通常位置と、通常位置よりも押え棒16の下端19が下方にある下降位置とを含む範囲において、押え棒16を上下方向に移動する。押え棒16の移動可能範囲の上端は通常位置よりも上方の上昇位置であり、下端は押え足25が針板41に接触する接触位置である。駆動回路94は、CPU61からの制御信号に従ってLCD43を駆動することにより、LCD43に画像を表示する。エンコーダ38は、ミシンモータ33の回転角度に応じた検出結果を入出力インターフェイス65に出力する。
【0024】
図5を参照して、ミシン1のメイン処理を説明する。メイン処理では、押え棒16に移動検出装置9が装着された状態で、縫製開始時及び縫製再開時の少なくとも何れかに、スタート/ストップスイッチ45が選択され、縫製指示が検出されたことに応じて、移動検出装置9の検出結果に基づき針棒15を上下方向に往復移動して、被縫製物Cに縫製する処理が実行される。プロセッサ3は、メイン処理を実行する指示を検出すると、ROM62のプログラム記憶エリアに記憶されたメイン処理を実行するためのプログラムを、RAM63に読み出す。プロセッサ3は、RAM63に読み出されたプログラムに含まれる指示に従って、以下のステップを実行する。プログラムは、プロセッサ3に以下の処理を実行させるための指示を含む。メイン処理を実行するのに必要な各種パラメータは、記憶装置64に記憶されている。メイン処理の過程で得られた各種データは、適宜RAM63に記憶される。以下の説明では、ステップをSと略記する。
【0025】
メイン処理開始時は、押え棒16は、上昇位置にあり、針棒15は、針上停止位置又は針下位置にある。針上停止位置は、針板41よりも縫針17の下端18が上方にある位置であればよく、本実施形態では、主軸34の角度が32度である、針棒15が上死点よりもやや下方にある位置である。針下位置は、針板41よりも縫針17の下端18が下方にある位置であり、本実施形態では、主軸34の角度が125度である、縫針17の下端18が針板41と同じ高さとなる位置から下死点に向かう途中の位置である。メイン処理実行時には、送り歯32は送り歯32の上端が針板41よりも上方とならない位置に配置されている。メイン処理実行時には、押え棒16は、送り歯32を用いた縫製時と異なり、針棒15の上下方向の移動に伴い上下方向に移動しない。
【0026】
プロセッサ3は、入力インターフェイスであるスタート/ストップスイッチ45を介して縫製指示が検出されたことに応じて、メイン処理を起動し、押え棒16を下降させて、移動検出装置9が被縫製物Cに当接する位置を下降位置とし、下降位置から所定距離上方の位置を通常位置として、針棒15を針下位置から針上位置に移動させた後に、押え棒16を下降位置から通常位置に移動させる一針目処理を実行する。具体的には、プロセッサ3は、
図2(B)に示すように、押えモータ35を駆動して、押え棒16を下降開始させ(S1)、被縫製物Cと押え足25が接触した位置に基づき被縫製物Cの厚みを取得したかを判断する(S2)。厚みが取得されていない場合(S2:NO)、プロセッサ3は、処理をS2に戻す。厚みが取得された場合(S2:YES)、移動検出装置9の押え足25が被縫製物Cに接触する位置で押え棒16の下降を停止させる(S3)。
【0027】
プロセッサ3は、エンコーダ38の検出結果に基づき、針棒15が針下位置にあるかを判断する(S4)。針棒15が針下位置にある場合(S4:YES)、プロセッサ3は、ミシンモータ33を駆動して、上昇速度で針棒15を上昇する(S5)。上昇速度は予め設定された速度であればよく、例えば、70rpmである。
【0028】
プロセッサ3は、エンコーダ38の検出結果に基づき、主軸34の回転角度が所定角度に達したかを判断する(S6)。所定角度は、針板41よりも縫針17の下端18が上方にある針上位置となる角度である。本実施形態の針上位置は、針板41よりも縫針17の下端18が上方にあり、かつ、被縫製物Cの上面よりも縫針17の下端18が上方にある位置である。針上位置は、S2で取得された被縫製物Cの厚みに基づき設定されてもよいし、通常縫製される被縫製物の厚みの最大値に基づき設定された値でもよい。
【0029】
主軸34の回転角度が所定角度に達していない場合(S6:NO)、プロセッサ3は、処理をS6に戻す。主軸34の回転角度が所定角度に達した場合(S6:YES)、プロセッサ3は、押え棒16の上昇を開始する(S7)。プロセッサ3は、S7からの押えモータ35の駆動量に基づき、押え棒16が通常位置に達したかを判断する(S8)。
図2(C)に示すように、プロセッサ3は、被縫製物Cの厚みを取得後、押えモータ35を駆動して、押え足25が被縫製物Cに接触する位置から所定距離上方を通常位置とする。所定距離は、例えば、1mmから4mmの値が設定される。
【0030】
押え棒16が通常位置に達していない場合(S8:NO)、プロセッサ3は、処理をS8に戻す。押え棒16が通常位置に達した場合(S8:YES)、プロセッサ3は、押え棒16の上昇を終了させる。S5からS9の処理により、プロセッサ3は、縫製開始時及び縫製再開時の少なくとも何れかに、ミシンモータ33を駆動して、針棒15を針下位置から針上位置に移動させた後に(S6:YES)、押えモータ35を駆動して、押え棒16を下降位置から通常位置に移動させる一針目処理を実行する(S7)。一針目処理により、縫針17の下端18が被縫製物Cの上面よりも上方、且つ押え足25が被縫製物Cの上面の上方に配置されるので、ユーザは、被縫製物Cをスムーズに水平方向に移動できる。
【0031】
プロセッサ3は、押え棒16が通常位置に移動した後に取得された移動検出装置9の検出結果、又は縫針17の下端18が針板41よりも上方にある所定位置に針棒15が移動した後に取得された移動検出装置9の検出結果に基づき、被縫製物Cの移動量を取得する(S10)。所定位置は、縫針17の下端18が針板41よりも上方であればよい。所定位置は、針上位置と同じ上下方向の位置又は針上位置よりも上方になる位置であることが好ましい。
【0032】
プロセッサ3は、S10で取得された移動量の絶対値が所定量よりも大きいか否かを判断する(S11)。所定量は、移動検出装置9の検出精度等を考慮して、0以上の値が適宜設定されればよい。本実施形態の移動検出装置9は、短手方向D1の移動量と、長手方向D2の移動量との各々を検出するので、プロセッサ3は、例えば、少なくとも何れかの移動量の絶対値が所定量よりも大きいか否かを判断してもよい。プロセッサ3は、短手方向D1の移動量と、長手方向D2の移動量との各々に基づくベクトルの長さを移動量として算出し、算出された移動量が所定量よりも大きいか否かを判断してもよい。移動量の絶対値が所定量よりも大きくはない場合(S11:NO)、プロセッサ3は、エンコーダ38の検出結果に基づき、針棒15が針上停止位置にあるか否かを判断する(S19)。
【0033】
針棒15が針上停止位置にない場合(S19:NO)、プロセッサ3は、処理をS11に戻す。針棒15が針上停止位置にある場合(S19:YES)、プロセッサ3は、ミシンモータ33の駆動を停止して、針上停止位置で針棒15を停止させる(S20)。プロセッサ3は、針棒15が所定時間以上停止しているかを判断する(S21)。針棒15が所定時間以上停止していない場合(S21:NO)、プロセッサ3は、処理をS11に戻す。針棒15が所定時間以上停止している場合(S21:YES)、プロセッサ3は、針棒15を針下位置へ移動させる(S22)。プロセッサ3は、以上でメイン処理を終了する。
【0034】
移動量が所定量よりも大きい場合(S11:YES)、プロセッサ3は、移動検出装置9の検出結果に基づき、ミシンモータ33を駆動して、押え棒16が通常位置にある状態で針棒15を上下方向に移動させる二針目処理を実行する(S12)。すなわち、本実施形態のプロセッサ3は、二針目処理において、一針目処理で押え棒16が通常位置に移動した後に取得された移動検出装置9の検出結果に基づき、被縫製物Cが所定量より多く移動していた場合に(S11:YES)、押え棒16が通常位置にある状態で、所定速度で針棒15を上下方向に移動する処理を開始する(S12)。所定速度は、S5の上昇速度と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。所定速度は、例えば、400rpmである。プロセッサ3は、停止指示が検出されたかを判断する(S13)。ユーザは、縫製を終了する場合、又は縫製を中断する場合に、スタート/ストップスイッチ45を押下して、停止指示を入力する。停止指示が検出された場合(S13:YES)、プロセッサ3は、エンコーダ38の検出結果に基づき、ミシンモータ33を制御して、針棒15を針下位置で停止させる(S18)。停止指示が検出されない場合(S13:NO)、プロセッサ3は、移動量が所定量よりも大きいかを判断する(S14)。S14の所定量は、S11と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0035】
移動量が所定量よりも大きい場合(S14:YES)、プロセッサ3は、記憶装置64に記憶された被縫製物Cの移動量と、針棒15の移動速度との対応に基づき、S12の二針目処理後、移動検出装置9の検出結果に基づき、ミシンモータ33を駆動して、被縫製物Cの移動量に応じた速度で針棒15を上下方向に移動させる縫製制御処理を行う(S16)。
【0036】
縫製制御処理中、移動検出装置9の検出結果に基づき、被縫製物Cの移動量が所定量以下の場合に(S14:NO)、針棒15を針上停止位置で停止させる(S15)。S15の針上停止位置は、S20の針上停止位置と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。プロセッサ3は、針棒15が針上停止位置で所定時間停止したかを判断する(S17)。S17の所定時間は、S21の所定時間と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。針棒15が針上停止位置で所定時間停止していない場合(S17:NO)、プロセッサ3は、処理をS13に戻す。針棒15が針上停止位置で所定時間停止した場合(S17:YES)、プロセッサ3は、エンコーダ38の検出結果に基づき、ミシンモータ33を制御して、針棒15を針下位置に移動させる(S22)。プロセッサ3は以上でメイン処理を終了する。
【0037】
図5から
図7を参照して、移動検出装置9の検出結果に基づきミシン1が従来の縫製処理を実行した場合を比較例とし、ミシン1が上記メイン処理を実行した場合を実施例とした評価試験について説明する。
図6及び
図7は、縫製開始時又は縫製再開時の移動検出装置9の検出結果に基づく被縫製物Cの単位時間当たりの移動量、針棒15の上下位置、及び押え棒16の上下位置の経時変化を示す。
図6及び
図7の移動量において、移動検出装置9によって検出される被縫製物Cの単位時間当たりの短手方向D1の移動量を実線で示し、長手方向D2の移動量を点線で示す。評価試験開始時には、押え棒16は、上昇位置にあり、針棒15は、針下位置にある。
【0038】
図6に示すように、比較例の縫製処理を実行する場合、ミシン1は、タイミングT1で、縫製指示が検出されたことに応じて、押えモータ35を駆動して、押え棒16の下降を開始させ、被縫製物Cと押え足25が接触した位置に基づき被縫製物Cの厚みを取得した後、押え棒16の下降を停止させる。ミシン1は、その後、被縫製物Cを手動で水平方向に移動可能とするため、押え棒16を通常位置に上昇させる。押え棒16の上昇により、押え足25及び移動検出装置9と被縫製物Cとの間には、上下方向に数mm程度の隙間が形成される。ミシン1は、タイミングT2で、押え棒16が通常位置にある状態で、針棒15を針上停止位置に向けて上昇させる。針棒15を上昇させる過程で、縫針17の先端が被縫製物Cから抜ける時に、縫針17が刺さっていた部分の被縫製物Cが縫針17と共に上昇し、針板41と、押え足25及び移動検出装置9との間で上下方向に移動する。期間T3、T4では、移動検出装置9がこの時の被縫製物Cの移動を検出するので、ミシン1は、移動検出装置9の検出結果に基づき、針棒15を針上停止位置で停止させず、そのままミシンモータ33の駆動を継続し、二針目の縫製を行う。
【0039】
一方、
図5及び
図7に示すように、実施例のメイン処理を実行する場合、ミシン1は、上記メイン処理において、タイミングT1で、縫製指示が検出されたことに応じて、押えモータ35を駆動して、押え棒16を下降開始させ(S1)、被縫製物Cと押え足25が接触した位置に基づき被縫製物Cの厚みを取得した後(S2:YES)、押え棒16の下降を停止させる(S3)。ミシン1は、押え棒16を通常位置に上昇させる前に、タイミングT5でミシンモータ33を駆動し(S4:YES、S5)、針棒15を上昇させる。針棒15を上昇させる過程で、縫針17の先端が被縫製物Cから抜ける時にも、押え足25及び移動検出装置9の筐体95が被縫製物Cを上方から押さえているので、縫針17が刺さっていた部分の被縫製物Cは縫針17と共に上昇しない。このため、移動検出装置9は縫針17の先端が被縫製物Cから抜ける時にも被縫製物Cの移動を検出しない。ミシン1は、針棒15が針上位置に達したタイミングT6において押え棒16の上昇を開始する(S7)。タイミングT12で押え棒16が通常位置に移動した後に取得された移動検出装置9の検出結果、又はタイミングT6で縫針17の下端18が針板41よりも上方にある所定位置に針棒15が移動した後に取得された移動検出装置9の検出結果に基づき、期間T9では、移動検出装置9は被縫製物Cの移動を検出しないので(S11:NO)、ミシン1は、エンコーダ38の検出結果に基づき、ミシンモータ33を制御して、タイミングT7において針棒15を針上停止位置で停止させる(S20)。ミシン1は、期間T10の移動検出装置9の検出結果に基づき針上停止位置で停止を継続後(S11:NO)、期間T11の移動検出装置9の検出結果に基づき(S11:YES)、タイミングT8で針棒15の上下方向の移動を開始する(S12)。
【0040】
上記の評価試験の結果から、針棒15が針下位置にある状態から、移動検出装置9の検出結果に基づき縫製を開始する場合又は縫製を再開する場合に、ミシン1にメイン処理を実行させることにより、被縫製物Cの浮き上がりを抑制し、ユーザの意図しない挙動をする可能性を低減することに貢献することが確認された。
【0041】
上記実施形態において、ミシン1は、本発明のミシンの一例である。プロセッサ3は、本発明のプロセッサの一例である。移動検出装置9は、本発明の移動検出装置の一例である。針棒15は、本発明の針棒の一例である。押え棒16は、本発明の押え棒の一例である。縫針17は、本発明の縫針の一例である。ミシンモータ33は、本発明のミシンモータの一例である。押えモータ35は、本発明の押えモータの一例である。針板41は、本発明の針板の一例である。針穴40は、本発明の針穴の一例である。被縫製物Cは、本発明の被縫製物の一例である。スタート/ストップスイッチ45は、本発明の入力インターフェイスの一例である。S15の処理は、本発明の停止処理の一例である。S5からS9の処理は、本発明の一針目処理の一例である。S12の処理は、本発明の二針目処理の一例である。S16の処理は、本発明の縫製制御処理の一例である。
【0042】
上記実施形態のミシン1は、針棒15、針板41、押え棒16、ミシンモータ33、押えモータ35、及びプロセッサ3を備える。針棒15は、上下方向に延びる。針板41は、針棒15に装着された縫針17が挿通可能な針穴40が形成される。押え棒16は、上下方向に延び、針板41に載置された被縫製物Cの移動を検出する移動検出装置9が装着される。ミシンモータ33は、針板41よりも縫針17の下端18が上方にある針上位置と、針板41よりも縫針17の下端18が下方にある針下位置とを含む範囲において針棒15を上下方向に移動させる。押えモータ35は、通常位置と、通常位置よりも押え棒16の下端19が下方にある下降位置とを含む範囲において、押え棒16を上下方向に移動させる。プロセッサ3は、縫製開始時及び縫製再開時の少なくとも何れかに、ミシンモータ33を駆動して、針棒15を針下位置から針上位置に移動させた後に、押えモータ35を駆動して、押え棒16を下降位置から通常位置に移動させる一針目処理を実行する(S5からS9)。プロセッサ3は、移動検出装置9の検出結果に基づき、押え棒16が通常位置にある状態で針棒15を上下方向に移動させる二針目処理を実行する(S12)。ミシン1のプロセッサ3が実行する一針目処理は、縫製開始時又は縫製再開時の一針目に押え棒16が通常位置にある場合に比べ、針棒15が下降位置から通常位置に移動することに伴い、縫針17が被縫製物Cを上方に引っ張る時に、移動検出装置9が被縫製物Cの上方への移動を制限することに貢献する。ミシン1の一針目処理は、一針目処理実行時の移動検出装置9の検出結果に基づき誤って二針目の縫製が実行されることを抑制することに貢献する。
【0043】
針上位置は、針板41よりも縫針17の下端18が上方にあり、かつ、被縫製物Cの上面よりも縫針17の下端18が上方にある位置である。ミシン1のプロセッサ3が実行する一針目処理は、縫針17の下端18が被縫製物Cの上面よりも上方にある位置に針棒15が移動する前に、押え棒16を下降位置から通常位置に移動させる場合に比べ、針棒15が下降位置から通常位置に移動することに伴い、縫針17が被縫製物Cを上方に引っ張る時に、移動検出装置9が被縫製物Cの上方への移動を制限することに貢献する。
【0044】
プロセッサ3は、二針目処理において、一針目処理で押え棒16が通常位置に移動した後に取得された移動検出装置9の検出結果に基づき、被縫製物Cが所定量より多く移動していた場合に(S11:YES)、押え棒16が通常位置にある状態で、所定速度で針棒15を上下方向に移動させる(S12)。ミシン1のプロセッサ3が実行する二針目処理は、押え棒16が通常位置に移動する前に取得された移動検出装置9の検出結果に基づき二針目の縫製を行う場合に比べ、一針目処理実行時の移動検出装置9の検出結果に基づき誤って二針目の縫製が実行されることを抑制することに貢献する。
【0045】
プロセッサ3は、二針目処理において、一針目処理で縫針17の下端18が針板41よりも上方にある所定位置に針棒15が移動した後に取得された移動検出装置9の検出結果に基づき、被縫製物Cが所定量より多く移動していた場合に(S11:YES)、押え棒16が通常位置にある状態で、所定速度で針棒15を上下方向に移動させる(S12)。ミシン1のプロセッサ3が実行する二針目処理は、針棒15が移動位置に移動する前に取得された移動検出装置9の検出結果に基づき二針目の縫製を行う場合に比べ、一針目処理実行時の移動検出装置9の検出結果に基づき誤って二針目の縫製が実行されることを抑制することに貢献する。
【0046】
プロセッサ3は、二針目処理後、移動検出装置9の検出結果に基づき、ミシンモータ33を駆動して、被縫製物Cの移動量に応じた速度で針棒15を上下方向に移動させる縫製制御処理を実行する(S16)。プロセッサ3は、縫製制御処理中、移動検出装置9の検出結果に基づき、被縫製物Cの移動量が所定量以下の場合に、針板41よりも縫針17の下端18が上方にある針上停止位置でミシンモータ33の駆動を停止して、針棒15を停止させる停止処理を行う(S15)。ミシン1のプロセッサ3が実行する停止処理は、針上停止位置で針棒15を停止させることで、縫製を中断した状態からスムーズに縫製を再開することに貢献する。
【0047】
プロセッサ3は、一針目処理において、押え棒16を下降させて、移動検出装置9が被縫製物Cに当接する位置を下降位置とし、下降位置から所定距離上方の位置を通常位置として、針棒15を針下位置から針上位置に移動させた後に(S6:YES)、押え棒16を下降位置から通常位置に移動させる(S7からS9)。ミシン1のプロセッサ3が実行する一針目処理は、下降位置において移動検出装置9が被縫製物Cに当接しない場合に比べ、針棒15が下降位置から通常位置に移動することに伴い、縫針17が被縫製物Cを上方に引っ張る時に、移動検出装置9が被縫製物Cの上方への移動を制限することに貢献する。
【0048】
ミシン1は、入力インターフェイスとして、スタート/ストップスイッチ45を備える。プロセッサ3は、入力インターフェイスを介して縫製指示が検出されたことに応じて、一針目処理を実行する。ミシン1の一針目処理は、ユーザの意図しないタイミングで一針目処理が実行されることを回避することに貢献する。
【0049】
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。ミシン1は、移動検出装置9を用いた縫製専用のミシンであってもよく、その場合、送り量調整モータ30、送り機構31、及び送り歯32は、省略されてもよい。ミシン1は、移動検出装置9を備えてもよいし、移動検出装置9を省略してもよい。移動検出装置9は、押え棒16に装着され、針板41に載置された被縫製物Cの移動を検出可能であればよく、構成、形状等は適宜変更されてよい。移動検出装置9は、ミシン1に内蔵されていてもよい。その場合、例えば、ベッド11又は頭部14に移動検出装置9に相当する構成が内蔵されていればよい。移動検出装置9は、被縫製物Cの移動を検出できればよく、被縫製物Cの移動量を検出できなくてもよいし、被縫製物Cの短手方向D1の移動量及び長手方向D2の移動量の一方のみを検出できてもよいし、水平方向の移動量を検出できてもよい。移動検出装置9の検出結果は、被縫製物Cの移動量のみを表し、移動方向を表さなくてもよい。
【0050】
入力インターフェイスは、情報をプロセッサ3に入力可能なデバイス及び方法であればよく、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、グラフィックスタブレット等のポインティングデバイス、スキャナ、ディスプレイに組み込まれたタッチスクリーン、音声認識システムなどの音声入力デバイス、及びマイクロホン等の他の種類の入力デバイスであってもよい。
【0051】
図5のメイン処理を実行させるための指令を含むプログラムは、プロセッサ3が、プログラムを実行するまでに、各装置の記憶機器に記憶されればよい。したがって、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更されてもよい。プロセッサ3が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0052】
メイン処理の各ステップは、プロセッサ3によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。メイン処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。メイン処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。メイン処理に、以下の変更が適宜加えられてもよい。
【0053】
被縫製物Cの厚みの取得方法は適宜変更されてよいし、プロセッサ3は、被縫製物Cの厚みを取得せずに、押え棒16を下降位置に配置してもよい。下降位置及び通常位置は適宜変更されてよい。下降位置は押え足25が被縫製物Cに接触する位置であってもよいし押え足25が被縫製物Cに接触する位置よりも数mm上方の位置であってもよい。針上位置は、針板41よりも縫針17の下端18が上方にある位置であればよく、縫針17の下端18が、被縫製物Cの上面以下となる位置でもよい。針上位置は、針上停止位置と同じ上下位置であってもよいし、針上停止位置よりも上方にあってもよいし、上死点であってもよい。通常位置は、下降位置よりも上方であればよく、下降位置によらず、同一の位置であってもよい。針下位置及び針上停止位置は、適宜変更されてよい。S8の処理は、押えモータ35の駆動量を検出するエンコーダの検出結果に基づき実行されてもよいし、押え棒16の上下方向の位置を検出する位置センサの検出結果に基づき実行されてもよい。
【0054】
プロセッサ3は、二針目処理において、押え棒16が通常位置に移動する前に取得された移動検出装置9の検出結果に基づき、押え棒16が通常位置にある状態で、所定速度又は被縫製物Cの移動量に応じた速度で針棒15を上下方向に移動させてもよい。プロセッサ3は、二針目処理において、針上位置に針棒15が移動する前に取得された移動検出装置9の検出結果に基づき、押え棒16が通常位置にある状態で、所定速度で針棒15を上下方向に移動させてもよい。プロセッサ3は、縫針17の下端18が針板41よりも上方となる期間の移動検出装置9の検出結果に基づき針棒15の二針目処理及び縫製制御処理の少なくとも何れかを実行してもよい。移動検出装置9が常にプラスの値を出力する場合、プロセッサ3は、S11、S14では、移動量が所定量よりも大きいか否かを判断すればよい。
【0055】
プロセッサ3は、二針目処理後、移動検出装置9の検出結果に基づき、被縫製物Cの移動量によらず所定速度で針棒15を上下方向に移動させてもよい。プロセッサ3は、S11及びS14において、移動量の絶対値が所定量以上かを判断してもよい。プロセッサ3は、縫製制御処理中、移動検出装置9の検出結果に基づき、被縫製物Cの移動量が所定量以下の場合に、針上停止位置で針棒15を停止させる停止処理を省略してもよい。この場合、ミシン1は、例えば、停止指示を検出した場合に、針棒15を停止してもよい。プロセッサ3は、停止処理で、針上停止位置ではなく、針下位置で針棒15を停止させてもよい。この場合、ミシン1のプロセッサ3が実行する停止処理は、針下位置で針棒15を停止させることで、縫製を中断している間に縫針17を被縫製物Cに刺した状態で被縫製物Cの向きを変更しやすくすることに貢献する。プロセッサ3は、停止処理で、任意の位置で針棒15を停止させてもよい。ミシン1は、縫製指示の検出によらず、針棒15が針下位置にある状態で、所定時間経過後に自動的に、一針目処理を実行してもよい。
【0056】
上記変形例は矛盾のない範囲で適宜組み合わされてもよい。本願出願人は、特許請求の範囲において例示された組み合わせに加え、本発明の要旨を逸脱しない範囲、且つ、矛盾が生じない範囲で互いに組み合わされた態様についても特許権を取得する意思を有する。
【符号の説明】
【0057】
1:ミシン、3:プロセッサ、9:移動検出装置、15:針棒、16:押え棒、17:縫針、33:ミシンモータ、35:押えモータ、40:針穴、41:針板、45:スタート/ストップスイッチ、C:被縫製物