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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026036890
(43)【公開日】2026-03-06
(54)【発明の名称】車両管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20260227BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20260227BHJP
   B60G 23/00 20060101ALI20260227BHJP
【FI】
G08G1/00 J
B60G17/015 A
B60G23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139740
(22)【出願日】2024-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 浩貴
【テーマコード(参考)】
3D301
5H181
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA05
3D301CA01
3D301DA08
3D301DA33
3D301DA38
3D301EA04
3D301EA05
3D301EA06
3D301EA08
3D301EA19
3D301EA20
3D301EA21
3D301EA35
3D301EA43
3D301EB13
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC69
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL09
5H181MC16
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】車両の車輪の上下運動に関連するパラメータと位置との対応関係を表すマップの充実度の向上を促進すること。
【解決手段】車両管理システムは、車両の車輪の上下運動に関連する上下運動パラメータと位置との対応関係を示すマップを保持する。また、車両管理システムは、対象車両のユーザに対して特典を与える。対象車両の目的地までの経路は、第1経路と、第1経路よりもマップの充実度が低い第2経路とを含む。車両管理システムは、対象車両が第2経路を走行する場合の特典を、対象車両が第1経路を走行する場合の特典よりも多くなるように設定する。また、対象車両が第2経路を走行する場合、車両管理システムは、第2経路に沿ったマップを更新するための情報を対象車両に収集させる。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪の上下運動に関連する上下運動パラメータと位置との対応関係を示すマップを格納するように構成された1又は複数の記憶装置と、
対象車両のユーザに対して特典を与えるように構成された1又は複数のプロセッサと
を備え、
前記対象車両の目的地までの経路は、第1経路と、前記第1経路よりも前記マップの充実度が低い第2経路とを含み、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記対象車両が前記第2経路を走行する場合の前記特典を、前記対象車両が前記第1経路を走行する場合の前記特典よりも多くなるように設定し、
前記対象車両が前記第2経路を走行する場合、前記第2経路に沿った前記マップを更新するための情報を前記対象車両に収集させる
ように構成された
車両管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両管理システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記対象車両が前記第2経路を走行する前と後との間の前記マップの前記充実度の増加量に比例するマップ拡充度を取得し、
前記マップ拡充度に応じて、前記対象車両が前記第2経路を走行する場合の前記特典を設定する
ように構成された
車両管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両管理システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、前記第1経路と前記第2経路と前記特典を前記ユーザに提示するように構成された
車両管理システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両管理システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、前記第1経路よりも前記第2経路を優先的に前記対象車両の走行経路として決定するように構成された
車両管理システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の車両管理システムであって、
前記対象車両は、前記マップから得られる前記上下運動パラメータに基づいて前記対象車両の振動を抑制するプレビュー制御を実行するように構成され、
複数のモードは、第1モードと、前記第1モードよりも前記特典を優先する第2モードとを含み、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記第1モードにおいては、前記第2経路よりも前記第1経路を優先的に前記対象車両の走行経路として決定し、
前記第2モードにおいては、前記第1経路よりも前記第2経路を優先的に前記対象車両の走行経路として決定する
ように構成された
車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の車輪の上下運動に関連するパラメータと位置との対応関係を示すマップの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、路面変位(路面凹凸)と位置との対応関係を表す路面変位マップを開示している。そのような路面変位マップを利用することにより、制振制御が行われる。具体的には、路面変位マップから、車両前方の所定位置における路面変位が予め認識される。予め認識された路面変位に応じてアクティブサスペンションの制御量が予め算出される。そして、車輪が当該所定位置を通過するタイミングでアクティブサスペンションを制御することにより、車両の振動が効果的に抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0154723号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の車輪の上下運動に関連するパラメータと位置との対応関係を示すマップについて考える。そのようなマップは、制振制御等の車両制御に利用され得る。しかしながら、マップがまだ生成されていないエリアにおいては、そのマップを利用した車両制御を行うことができない。
【0005】
本開示の1つの目的は、車両の車輪の上下運動に関連するパラメータと位置との対応関係を表すマップの充実度の向上を促進することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの観点は、車両管理システムに関する。
車両管理システムは、
車両の車輪の上下運動に関連する上下運動パラメータと位置との対応関係を示すマップを格納するように構成された1又は複数の記憶装置と、
対象車両のユーザに対して特典を与えるように構成された1又は複数のプロセッサと
を備える。
対象車両の目的地までの経路は、第1経路と、第1経路よりもマップの充実度が低い第2経路とを含む。
1又は複数のプロセッサは、対象車両が第2経路を走行する場合の特典を、対象車両が第1経路を走行する場合の特典よりも多くなるように設定する。
対象車両が第2経路を走行する場合、1又は複数のプロセッサは、第2経路に沿ったマップを更新するための情報を対象車両に収集させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、マップの充実度が低い第2経路を対象車両が走行した場合、より多くの特典が対象車両のユーザに与えられる。言い換えれば、対象車両のユーザに対して、マップの充実度が低い第2経路を選択するインセンティブが与えられる。これにより、マップの充実度が低い第2経路を対象車両が走行する機会が増えることが期待される。対象車両が第2経路を走行すると、第2経路に沿ったマップ更新用情報が新たに得られる。その結果、第2経路に沿ったマップの充実度が向上する。このように、本開示によれば、マップの充実度の向上を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る車両の構成例を示す概略図である。
図2】実施の形態に係るサスペンションの構成例を示す概念図である。
図3】実施の形態に係るばね下変位算出処理の一例を示すフローチャートである。
図4】実施の形態に係る車両制御システムの構成例を示すブロック図である。
図5】実施の形態に係る運転環境情報の例を示すブロック図である。
図6】実施の形態に係るマップ管理システムの構成例を示すブロック図である。
図7】実施の形態に係るばね下変位マップを説明するための概念図である。
図8】実施の形態に係るマップ生成/更新処理を要約的に示すフローチャートである。
図9】実施の形態に係るばね下変位マップを利用したプレビュー制御を説明するための概念図である。
図10】実施の形態に係るばね下変位マップを利用したプレビュー制御を示すフローチャートである。
図11】実施の形態に係るばね下変位マップのマップ充実度について説明するための概念図である。
図12】実施の形態に係る車両管理システムの概要を説明するための概念図である。
図13】実施の形態に係る車両管理システムの構成例を説明するためのブロック図である。
図14】実施の形態に係る車両管理システムのユーザ提示機能を説明するための概念図である。
図15】実施の形態に係る車両管理システムの経路決定機能を説明するための概念図である。
図16】実施の形態に係る車両管理システムのモード切替機能を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0010】
1.サスペンション及び上下運動パラメータ
図1は、本実施の形態に係る車両1の構成例を示す概略図である。車両1は、車輪2とサスペンション3を備えている。車輪2は、左前輪2FL、右前輪2FR、左後輪2RL、及び右後輪2RRを含んでいる。それら左前輪2FL、右前輪2FR、左後輪2RL、及び右後輪2RRのそれぞれに対してサスペンション3FL、3FR、3RL、及び3RRが設けられている。以下の説明では、特に区別の必要が無い場合、各車輪を車輪2と呼び、各サスペンションをサスペンション3と呼ぶ。
【0011】
図2は、サスペンション3の構成例を示す概念図である。サスペンション3は、車両1のばね下構造体4とばね上構造体5との間を連結するように設けられている。ばね下構造体4は、車輪2を含んでいる。サスペンション3は、スプリング3S、ダンパ(ショックアブソーバ)3D、及びアクチュエータ3Aを含んでいる。スプリング3S、ダンパ3D、及びアクチュエータ3Aは、ばね下構造体4とばね上構造体5との間に並列に設けられている。スプリング3Sのばね定数はKである。ダンパ3Dの減衰係数はCである。ダンパ3Dの減衰力は可変であってもよい。アクチュエータ3Aは、ばね下構造体4とばね上構造体5との間に上下方向の制御力Fcを付与する(作用させる)。
【0012】
ここで、用語の定義を行う。「路面変位Zr」は、路面RSの上下方向の変位である。「ばね下変位Zu」は、ばね下構造体4の上下方向の変位である。「ばね上変位Zs」は、ばね上構造体5の上下方向の変位である。「ばね下速度Zu'」は、ばね下構造体4の上下方向の速度である。「ばね上速度Zs'」は、ばね上構造体5の上下方向の速度である。「ばね下加速度Zu''」は、ばね下構造体4の上下方向の加速度である。「ばね上加速度Zs''」は、ばね上構造体5の上下方向の加速度である。尚、各パラメータの符号は、上向きの場合に正であり、下向きの場合に負である。
【0013】
車輪2は、路面RS上を移動する。以下の説明において、車輪2の上下運動(vertical motion)に関連するパラメータを、「上下運動パラメータ」と呼ぶ。上下運動パラメータとしては、上記の路面変位Zr、ばね下変位Zu、ばね下速度Zu'、ばね下加速度Zu''、ばね上変位Zs、ばね上速度Zs'、ばね上加速度Zs''、等が例示される。上下運動パラメータは、路面変位Zrに関連する「路面変位関連パラメータ」であると言うこともできる。
【0014】
一例として、以下の説明においては、上下運動パラメータがばね下変位Zuである場合について考える。一般化する場合は、以下の説明における「ばね下変位」を「上下運動パラメータ」で読み替えるものとする。
【0015】
図3は、ばね下変位算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0016】
ステップS11において、ばね上構造体5に設置されたばね上加速度センサ22によってばね上加速度Zs''が検出される。ステップS12において、ばね上加速度Zs''を2階積分することによりばね上変位Zsが算出される。
【0017】
ステップS13において、ばね上構造体5とばね下構造体4との間の相対変位であるストロークST(=Zs-Zu)が取得される。例えば、ストロークSTは、サスペンション3に設置されたストロークセンサにより検出される。他の例として、ストロークSTは、単輪2自由度モデルに基づいて構成されたオブザーバによって、ばね上加速度Zs''に基づいて推定されてもよい。
【0018】
ステップS14において、センサドリフト等の影響を抑えるために、ばね上変位Zsの時系列データに対してフィルタリング処理が行われる。同様に、ステップS15において、ストロークSTの時系列データに対してフィルタリング処理が行われる。例えば、フィルタは、特定周波数帯の信号成分を通過させるバンドパスフィルタである。特定周波数帯は、車両1のばね上共振周波数を含むように設定されてもよい。例えば、特定周波数帯は、0.3~10Hzである。
【0019】
ステップS16において、ばね上変位ZsとストロークSTとの差分がばね下変位Zuとして算出される。
【0020】
ステップS14及びS15の代わりに、ステップS16において算出されるばね下変位Zuの時系列データに対してフィルタリング処理が行われてもよい。
【0021】
更に他の例として、ばね下加速度センサによってばね下加速度Zu''が検出され、ばね下加速度Zu''からばね下変位Zuが算出されてもよい。
【0022】
2.車両制御システム
2-1.構成例
図4は、本実施の形態に係る車両制御システム10の構成例を示すブロック図である。車両制御システム10は、車両1に適用され、車両1を制御する。例えば、車両制御システム10は、車両1に搭載される。他の例として、車両制御システム10は、車両1と遠隔装置とに分散していてもよい。車両制御システム10は、車両状態センサ20、認識センサ30、位置センサ40、通信装置50、走行装置60、及び制御装置70を含んでいる。
【0023】
車両状態センサ20は、車両1に搭載され、車両1の状態を検出する。車両状態センサ20は、車両1の車速Vを検出する車速センサ(車輪速センサ)21、ばね上加速度Zs''を検出するばね上加速度センサ22、等を含んでいる。車両状態センサ20は、ストロークSTを検出するストロークセンサ23を含んでいてもよい。車両状態センサ20は、ばね下加速度センサを含んでいてもよい。その他、車両状態センサ20は、横加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等を含んでいる。
【0024】
認識センサ30は、車両1に搭載され、車両1の周囲の状況を認識(検出)する。認識センサとしては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。
【0025】
位置センサ40は、車両1に搭載され、車両1の位置及び方位を検出する測位機器を含んでいる。例えば、位置センサ40は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を含んでいる。例えば、位置センサ40は、RTK-GNSSを含んでいる。
【0026】
通信装置50は、車両1の外部と通信を行う。
【0027】
走行装置60は、車両1に搭載された操舵装置61、駆動装置62、制動装置63、及びサスペンション3(図2参照)を含んでいる。操舵装置61は、車輪2を転舵する。例えば、操舵装置61は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置62は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置62としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置63は、制動力を発生させる。
【0028】
制御装置70は、車両1を制御するコンピュータである。制御装置70は、車両1に搭載されていてもよいし、部分的に遠隔装置に含まれていてもよい。制御装置70は、1又は複数のプロセッサ71(以下、単にプロセッサ71と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置72(以下、単に記憶装置72と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ71は、各種処理を実行する。プロセッサ71としては、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、等が例示される。プロセッサ71を処理回路 (processing circuitry)ということもできる。記憶装置72は、プロセッサ71による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置72としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。制御装置70は、1又は複数のECU(Electronic Control Unit)を含んでいてもよい。
【0029】
車両制御プログラム80は、車両1を制御するためのコンピュータプログラムであり、プロセッサ71によって実行される。車両制御プログラム80は、記憶装置72に格納される。あるいは、車両制御プログラム80は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。プロセッサ71が車両制御プログラム80を実行することにより、制御装置70の機能が実現される。
【0030】
2-2.運転環境情報
図5は、車両1の運転環境を示す運転環境情報90の一例を示すブロック図である。運転環境情報90は、記憶装置72に格納される。運転環境情報90は、地図情報91、車両状態情報92、周辺状況情報93、及び位置情報94を含んでいる。
【0031】
地図情報91は、一般的なナビゲーション地図を含む。地図情報91は、レーン配置、道路形状、等を示していてもよい。地図情報91は、白線、信号機、標識、ランドマーク、等の位置情報を含んでいてもよい。地図情報91は、地図データベースから得られる。尚、地図データベースは、車両1に搭載されていてもよいし、外部の管理サーバに格納されていてもよい。後者の場合、制御装置70は、管理サーバと通信を行い、必要な地図情報91を取得する。
【0032】
地図情報91は、更に、「ばね下変位マップ200」を含んでいる。ばね下変位マップ200の詳細については後述される。
【0033】
車両状態情報92は、車両1の状態を示す情報である。制御装置70は、車両状態センサ20から車両状態情報92を取得する。例えば、車両状態情報92は、車速V、ばね上加速度Zs''、ストロークST、横加速度、ヨーレート、舵角、等を含む。車速Vは、位置センサ40によって検出される車両位置から算出されてもよい。制御装置70は、図3で示された手法によりばね下変位Zuを算出してもよい。その場合、車両状態情報92は、制御装置70によって算出されたばね下変位Zuも含む。
【0034】
周辺状況情報93は、車両1の周囲の状況を示す情報である。制御装置70は、認識センサ30を用いて車両1の周囲の状況を認識し、周辺状況情報93を取得する。例えば、周辺状況情報93は、カメラによって撮像される画像情報を含む。他の例として、周辺状況情報93は、LIDARによって得られる点群情報を含む。
【0035】
周辺状況情報93は、更に、車両1の周囲の物体に関する「物体情報」を含んでいる。物体としては、歩行者、自転車、他車両(先行車両、駐車車両、等)、道路構成(白線、縁石、ガードレール、壁、中央分離帯、路側構造物、等)、標識、ポール、障害物、等が例示される。物体情報は、車両1に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。例えば、カメラによって得られた画像情報を解析することによって、物体を識別し、その物体の相対位置を算出することができる。また、LIDARによって得られた点群情報に基づいて、物体を識別し、その物体の相対位置と相対速度を取得することもできる。
【0036】
位置情報94は、車両1の位置及び方位を示す情報である。位置は、水平位置と垂直位置を含んでいる。例えば、水平位置は、緯度と経度により定義される。垂直位置は、高度(標高)により定義される。高度としては、海抜、ジオイド高、楕円体高、等が例示される。制御装置70は、GNSS等の位置センサ40による測定結果に基づいて位置情報94を取得する。他の例として、制御装置70は、デッドレコニングにより位置情報94を取得してもよい。更に他の例として、制御装置70は、物体情報と地図情報91を利用した周知の自己位置推定処理(Localization)により、高精度な位置情報94を取得してもよい。
【0037】
2-3.車両制御
制御装置70は、車両1の走行を制御する車両走行制御を実行する。車両走行制御は、操舵制御、駆動制御、及び制動制御を含む。制御装置70は、走行装置60(操舵装置61、駆動装置62、及び制動装置63)を制御することによって車両走行制御を実行する。制御装置70は、運転環境情報90に基づいて、車両1の運転を支援する運転支援制御を行ってもよい。運転支援制御としては、車線維持制御、衝突回避制御、自動運転制御、等が例示される。
【0038】
更に、制御装置70は、サスペンション3を制御する。典型的には、制御装置70は、サスペンション3を制御して車両1(対象車両)のばね上構造体5の振動を抑制する制振制御を行う。例えば、制御装置70は、アクチュエータ3Aを制御して、ばね下構造体4とばね上構造体5との間に上下方向の制御力Fcを発生させ(図2参照)、それによりばね上構造体5の振動を抑制する。他の例として、制御装置70は、ダンパ3Dの減衰力を可変制御してもよい。制振制御は、後述される「プレビュー制御」を含んでいる。
【0039】
3.マップ管理システム
3-1.構成例
図6は、本実施の形態に係るマップ管理システム100の構成例を示すブロック図である。マップ管理システム100は、各種の地図情報を管理するコンピュータである。地図情報の管理は、地図情報の生成、更新、提供、配信、等を含む。典型的には、マップ管理システム100は、クラウド上の管理サーバである。マップ管理システム100は、複数のサーバが分散処理を行う分散システムであってもよい。
【0040】
マップ管理システム100は、通信装置110を含んでいる。通信装置110は、通信ネットワークNETに接続されている。例えば、通信装置110は、通信ネットワークNETを介して多数の車両1と通信を行う。
【0041】
マップ管理システム100は、更に、1又は複数のプロセッサ120(以下、単にプロセッサ120と呼ぶ)及び1又は複数の記憶装置130(以下、単に記憶装置130と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ120は、各種情報処理を実行する。プロセッサ120としては、CPU、ASIC、FPGA、等が例示される。プロセッサ120を処理回路(processing circuitry)と呼ぶこともできる。記憶装置130は、各種の地図情報を格納する。また、記憶装置130は、プロセッサ120による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置130としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD、SSD、等が例示される。
【0042】
マップ管理プログラム140は、マップ管理のためのコンピュータプログラムであり、プロセッサ120によって実行される。マップ管理プログラム140は、記憶装置130に格納される。あるいは、マップ管理プログラム140は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。プロセッサ120がマップ管理プログラム140を実行することにより、マップ管理システム100の機能が実現される。
【0043】
プロセッサ120は、通信装置110を介して車両1の車両制御システム10と通信を行う。プロセッサ120は、車両制御システム10から各種情報を収集し、収集した情報に基づいて地図情報を生成、更新する。また、プロセッサ120は、車両制御システム10に地図情報を配信する。また、プロセッサ120は、車両制御システム10からのリクエストに応答して地図情報を提供する。
【0044】
3-2.ばね下変位マップ
マップ管理システム100が管理する地図情報の一つが、「ばね下変位マップ(上下運動パラメータマップ)200」である。ばね下変位マップ200は、ばね下変位Zu(上下運動パラメータ)に関する地図であり、ばね下変位Zu(上下運動パラメータ)と位置との対応関係を示す。ばね下変位マップ200は、記憶装置130に格納されている。
【0045】
図7は、ばね下変位マップ200を説明するための概念図である。XY面は水平面を表す。例えば、水平面における絶対座標系は緯度方向と経度方向により定義され、水平位置は緯度と経度により定義される。ばね下変位マップ200は、少なくとも水平位置(X,Y)とばね下変位Zuとの対応関係を表す。言い換えれば、ばね下変位マップ200は、ばね下変位Zuを少なくとも水平位置(X,Y)の関数として表す。
【0046】
道路領域は、水平面上でメッシュ状に区分されてもよい。つまり、道路領域は、水平面上で複数の単位エリアMに区分されてもよい。単位エリアMは、例えば正方形である。正方形の1辺の長さは、例えば10cmである。ばね下変位マップ200は、単位エリアMの位置とばね下変位Zuとの対応関係を表す。単位エリアMの位置は、その単位エリアMの代表位置(例:中心位置)で定義されてもよいし、その単位エリアMの範囲(緯度範囲、経度範囲)で定義されてもよい。単位エリアMのばね下変位Zuは、例えば、その単位エリアM内で取得されたばね下変位Zuの平均値である。単位エリアMを小さくするほど、ばね下変位マップ200の解像度は増加する。
【0047】
変形例として、車速範囲毎に異なるばね下変位マップ200が用意されていてもよい。例えば、低速用、中速用、高速用のそれぞれのばね下変位マップ200が用意されていてもよい。
【0048】
3-3.マップ生成/更新処理
プロセッサ120は、通信装置110を介して、多数の車両1から情報を収集する。そして、プロセッサ120は、多数の車両1から収集した情報に基づいて、ばね下変位マップ200の生成及び更新を行う。以下、マップ生成/更新処理の例について更に詳しく説明する。
【0049】
ばね下変位マップ200における位置は、車輪2が通過した位置である。各車輪2の位置は、上記の位置情報94に基づいて算出される。具体的には、車両1における車両位置の基準点と各車輪2との間の相対位置関係は既知情報である。その相対位置関係と位置情報94で示される車両位置に基づいて、各車輪2の位置を算出することができる。
【0050】
ばね下変位Zuは、図3で示されたような手法により算出される。すなわち、車両1に搭載された車両状態センサ20を用いることによって、ばね上変位ZsやストロークSTが得られる。これらばね上変位ZsやストロークSTを、便宜上、「センサベース情報」と呼ぶ。ばね下変位Zuは、このセンサベース情報に基づいて算出される。
【0051】
例えば、車両1の走行中、車両制御システム10の制御装置70は、センサベース情報に基づいてリアルタイムにばね下変位Zuを算出する。また、制御装置70は、同じタイミングの車輪位置とばね下変位Zuとを関連付ける。そして、制御装置70は、車輪位置の時系列データとばね下変位Zuの時系列データのセットをマップ管理システム100に送信する。マップ管理システム100のプロセッサ120は、車輪位置の時系列データとばね下変位Zuの時系列データに基づいて、ばね下変位マップ200を生成、更新する。
【0052】
他の例として、車両制御システム10の制御装置70は、同じタイミングの車輪位置とセンサベース情報とを関連付ける。そして、制御装置70は、車輪位置の時系列データとセンサベース情報の時系列データのセットをマップ管理システム100に送信する。マップ管理システム100のプロセッサ120は、受信したセンサベース情報に基づいてばね下変位Zuを算出する。更に、プロセッサ120は、車輪位置の時系列データとばね下変位Zuの時系列データに基づいて、ばね下変位マップ200を生成、更新する。
【0053】
尚、マップ管理システム100においてばね下変位Zuを算出する場合、処理時間の制約はないため、ゼロ位相フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことができる。ゼロ位相フィルタを利用することにより、“位相ずれ”を防止することができる。
【0054】
図8は、本実施の形態に係るマップ生成/更新処理を要約的に示すフローチャートである。
【0055】
ステップS100において、マップ管理システム100のプロセッサ120は、通信装置110を介して、車両1(車両制御システム10)から「マップ更新用情報」を取得する。マップ更新用情報は、車両1の位置(車輪位置)の時系列データを含む。また、マップ更新用情報は、ばね下変位Zuを算出するために必要なセンサベース情報(例:ばね上変位Zs、ストロークST)の時系列データを含む。あるいは、マップ更新用情報は、車両制御システム10の制御装置70によって算出されたばね下変位Zuの時系列データを含んでいてもよい。
【0056】
ステップS200において、マップ管理システム100のプロセッサ120は、マップ更新用情報に基づいて、ばね下変位マップ200を生成/更新する。
【0057】
例えば、過去に得られたマップ更新用情報が記憶装置130に蓄積される。プロセッサ120は、同一の位置に関して、最新の(今回の)マップ更新用情報と過去のマップ更新用情報に基づいてばね下変位マップ200を更新する。例えば、ある位置(単位エリアM)のばね下変位Zuは、最新のマップ更新用情報を含むN回のマップ更新用情報から算出されるばね下変位Zuの平均値である。ここで、Nは1以上の整数である。Nを「走行回数」、「データ母数」、等と呼ぶこともできる。走行回数Nが増加するにつれて、N回のマップ更新用情報から算出されるばね下変位Zuの精度も高くなる。図7に示されるように、ばね下変位マップ200は、「位置(単位エリアM)」と「走行回数N」と「ばね下変位Zu」との対応関係を示していてもよい。
【0058】
3-4.変形例
車両1の車両制御システム10が、ばね下変位マップ200のデータベースを保持し、自身のばね下変位マップ200の生成/更新を行ってもよい。つまり、マップ管理システム100は車両制御システム10に含まれていてもよい。
【0059】
4.ばね下変位マップを利用したプレビュー制御
車両制御システム10の制御装置70は、通信装置50を介してマップ管理システム100と通信を行う。制御装置70は、車両1の現在位置を含むエリアのばね下変位マップ200をマップ管理システム100から取得する。ばね下変位マップ200は、記憶装置72に格納される。そして、制御装置70は、ばね下変位マップ200に基づいて、制振制御の一種である「プレビュー制御」を実行する。
【0060】
図9は、プレビュー制御を説明するための概念図である。図10は、プレビュー制御を示すフローチャートである。図9及び図10を参照して、プレビュー制御について説明する。
【0061】
ステップS31において、制御装置70は、各車輪2の現在位置P0を取得する。車両1における車両位置の基準点と各車輪2との間の相対位置関係は既知情報である。その相対位置関係と位置情報94で示される車両位置に基づいて、各車輪2の位置を算出することができる。
【0062】
ステップS32において、制御装置70は、プレビュー時間tp後の車輪2の予測通過位置Pfを算出する。プレビュー時間tpは、例えば、サスペンション3のアクチュエータ3Aを作動させるまでに必要な計算処理や通信処理に要する時間以上に設定される。プレビュー時間tpは、固定であってもよいし、状況に応じて可変であってもよい。プレビュー距離Lpは、プレビュー時間tpと車速Vの積により与えられる。予測通過位置Pfは、現在位置P0からプレビュー距離Lpだけ前方の位置である。変形例として、制御装置70は、車速Vと車輪2の舵角に基づいて予想走行ルートを算出し、予想走行ルートに基づいて予測通過位置Pfを算出してもよい。
【0063】
ステップS33において、制御装置70は、予測通過位置Pfにおけるばね下変位Zuをばね下変位マップ200から読み出す。
【0064】
ステップS34において、制御装置70は、予測通過位置Pfにおけるばね下変位Zuに基づいて、サスペンション3のアクチュエータ3Aの目標制御力Fc_tを算出する。目標制御力Fc_tは、例えば、次のように算出される。
【0065】
ばね上構造体5(図2参照)に関する運動方程式は、次の式(1)により表される。
【0066】
【数1】
【0067】
式(1)において、mはばね上構造体5の質量であり、Cはダンパ3Dの減衰係数であり、Kはスプリング3Sのばね定数であり、Fcはアクチュエータ3Aが発生させる上下方向の制御力Fcである。仮に、制御力Fcによってばね上構造体5の振動が完全に打ち消される場合(Zs''=0,Zs'=0,Zs=0)、その制御力Fcは次の式(2)により表される。
【0068】
【数2】
【0069】
少なくとも制振効果をもたらす制御力Fcは、次の式(3)により表される。
【0070】
【数3】
【0071】
式(3)において、ゲインαは、0より大きく且つ1以下であり、ゲインβも、0より大きく且つ1以下である。式(3)中の微分項を省略した場合、少なくとも制振効果をもたらす制御力Fcは、次の式(4)により表される。
【0072】
【数4】
【0073】
制御装置70は、上記式(3)あるいは式(4)に従って、目標制御力Fc_tを算出する。すなわち、制御装置70は、予測通過位置Pfにおけるばね下変位Zuを式(3)あるいは式(4)に代入して、目標制御力Fc_tを算出する。
【0074】
ステップS35において、制御装置70は、車輪2が予測通過位置Pfを通過するタイミングで目標制御力Fc_tを発生させるようにアクチュエータ3Aを制御する。車輪2が予測通過位置Pfを通過するタイミングはプレビュー時間tpから分かる。
【0075】
以上に説明されたばね下変位マップ200を利用したプレビュー制御により、車両1(ばね上構造体5)の振動を効果的に抑制することが可能となる。
【0076】
5.マップ充実度とその向上
5-1.マップ充実度
上記セクション3で説明した通り、ばね下変位マップ200は、多数の車両1から収集されるマップ更新用情報に基づいて生成、更新される。マップ更新用情報が未だ得られてない位置では、ばね下変位マップ200のマップデータ(ばね下変位Zu)は存在しない。マップデータが存在しない位置では、マップデータを利用するプレビュー制御等の車両制御を実施することができない。また、マップデータは存在するが、走行回数Nが少ない位置では、マップデータの精度が低い可能性もある。マップデータの精度が低い位置では、マップデータを利用するプレビュー制御等の車両制御の精度も低くなるおそれがある。
【0077】
従って、ばね下変位マップ200がどれだけ充実しているか把握することは、ばね下変位マップ200を利用する車両制御の観点から有用である。ばね下変位マップ200がどれだけ充実しているかを表す度合いを、以下、「マップ充実度」と呼ぶ。マップ充実度を、ばね下変位マップ200の「カバレッジ」と言うこともできる。マップ充実度を、ばね下変位マップ200の「マップデータ量」と言うこともできる。
【0078】
図11は、ばね下変位マップ200のマップ充実度について説明するための概念図である。ここでは、特に、車両1が走行する経路のマップ充実度について説明する。簡単のため、車両1の現在位置から目的地までの経路として、第1経路P1と第2経路P2の2種類を考える。3種類以上の経路の場合も同様である。
【0079】
図11中の(A)において、ハッチング領域は、経路上でマップデータが存在する区間を表している。経路上でマップデータが存在する区間の全長を、以下、「マップ存在距離L_map」と呼ぶ。第1マップ存在距離L1_mapは第1経路P1上のマップ存在距離L_mapであり、第2マップ存在距離L2_mapは第2経路P2上のマップ存在距離L_mapである。第1マップ存在距離L1_mapは、第2マップ存在距離L2_mapよりも長いとする。
【0080】
図11中の(A)では、マップ充実度は、マップ存在距離L_mapに基づいて算出される。例えば、マップ充実度は、マップ存在距離L_mapに比例するように算出される。第1マップ存在距離L1_mapは第2マップ存在距離L2_mapよりも長いため、第1経路P1のマップ充実度は、第2経路P2のマップ充実度よりも高い。他の例として、目的地までの経路の全長L_totに対するマップ存在距離L_mapの比率である「マップ存在率(L_map/L_tot)」が用いられてもよい。その場合、マップ充実度は、マップ存在率に比例するように算出される。例えば、第1経路P1の全長と第2経路P2の全長が等しい場合、第1経路P1のマップ充実度は、第2経路P2のマップ充実度よりも高い。
【0081】
尚、経路の粒度は、道路であってもよいし、道路内の車線(レーン)であってもよいし、車線内の位置であってもよい。例えば、図11中の(B)で示されるように、第1経路P1と第2経路P2は、同じ道路内の異なる車線であってもよい。
【0082】
また、図11中の(B)で示されるように、道路あるいは車線の幅方向(横方向)において、必ずしも全ての横位置にマップデータが存在するとは限らない。マップデータが存在する横位置と存在しない横位置が混在する可能性もある。よって、経路の粒度が道路あるいは車線である場合、マップ存在距離L_mapは例えば次のように算出されてもよい。まず、経路に沿った単位距離毎に、横方向におけるマップデータの有無の分布が取得される。マップデータが存在する横位置(単位エリアM)には係数「1」が割り当てられ、マップデータが存在しない横位置(単位エリアM)には係数「0」が割り当てられる。続いて、横方向における係数の平均値が、その単位距離に関する補正係数(重み)として算出される。そして、単位距離と補正係数(重み)の積を経路に沿って積分したものが、マップ存在距離L_mapとして算出される。
【0083】
図11中の(C)では、上述の走行回数Nが考慮される。ある位置のマップデータ(ばね下変位Zu)は、最新のマップ更新用情報を含むN回のマップ更新用情報から算出される。走行回数Nは、マップデータがどれだけ多くのマップ更新用情報に基づいて算出されたかを表していると言える。走行回数Nが増加するにつれて、マップデータの精度は高くなる。よって、走行回数Nが増加することもマップ充実度の向上に寄与する。各位置(単位エリアM)における走行回数Nは、図7で示されたようなばね下変位マップ200から得られる。そして、経路に沿った走行回数Nの総和あるいは平均値に比例するように、マップ充実度が算出される。図11中の(C)に示される例では、第1経路P1に沿った走行回数Nは全体的に多く、第2経路P2に沿った走行回数Nは全体的に少ない。よって、第1経路P1のマップ充実度は、第2経路P2のマップ充実度よりも高い。尚、上述の横方向におけるマップデータの有無の分布を考慮した補正係数(重み)は、走行回数Nにも適用可能である。
【0084】
図11中の(D)では、車速範囲毎に異なるばね下変位マップ200が生成される。第1経路P1に関しては、高速用、中速用、低速用の全てのばね下変位マップ200が既に存在している。一方、第2経路P2に関しては、低速用のばね下変位マップ200しか存在しておらず、他の車速範囲のばね下変位マップ200は存在していない。この場合も、第1経路P1のマップ充実度は、第2経路P2のマップ充実度よりも高いと言える。
【0085】
上記観点の組み合わせも可能である。すなわち、図11中の(A)、(C)、(D)のうち2以上の観点の組み合わせに基づいてマップ充実度が算出されてもよい。例えば、マップ存在距離L_mapと走行回数Nを所定の評価式に入力することによって評価値(スコア)が算出される。そして、評価値(スコア)が高いほどマップ充実度が高くなるように算出される。他の例として、2以上の観点に基づいて算出された2以上のマップ充実度を足し合わせることによって最終的なマップ充実度が算出されてもよい。
【0086】
5-2.マップ充実度の向上
ばね下変位マップ200のマップ充実度を向上させることは、ばね下変位マップ200を利用する車両制御の観点から好ましい。そこで、本実施の形態は、ばね下変位マップ200のマップ充実度の向上を促進することができる技術を提案する。
【0087】
図12は、本実施の形態に係る車両管理システム300の概要を説明するための概念図である。車両管理システム300は、車両制御システム10及びマップ管理システム100と連携可能である。車両管理システム300は、車両制御システム10及びマップ管理システム100と通信可能である。車両管理システム300は、車両制御システム10に含まれていてもよいし、車両制御システム10と部分的に共通であってもよい。車両管理システム300は、マップ管理システム100に含まれていてもよいし、マップ管理システム100と部分的に共通であってもよい。車両管理システム300は、車両制御システム10とマップ管理システム100に分散していてもよい。
【0088】
対象車両1Tは、車両制御システム10による車両制御の対象である。車両管理システム300は、車両制御システム10と連携して、条件を満たす対象車両1TのユーザUに対して「特典」を与えるように構成される。特典としては、サービス利用料の割引、ポイント付与、クーポン提供、等が例示される。例えば、対象車両1TがMaaS、タクシー等のモビリティサービスを提供する場合、特典は、そのモビリティサービスの利用料の割引である。他の例として、ばね下変位マップ200が有料である場合、特典は、そのばね下変位マップ200の利用料の割引である。車両管理システム300は、ユーザUに与えられる特典をユーザ端末UEに提供してもよい。
【0089】
車両管理システム300は、ばね下変位マップ200を保持している。車両管理システム300は、対象車両1Tの目的地までの経路の現在のマップ充実度を、ばね下変位マップ200に基づいて算出する。経路のマップ充実度の算出方法は、上記セクション5-1で説明した通りである。
【0090】
更に、車両管理システム300は、経路のマップ充実度に応じて特典を設定する。目的地までの経路候補として第1経路P1と第2経路P2があり、第1経路P1のマップ充実度は第2経路P2のマップ充実度よりも高いとする。この場合、車両管理システム300は、対象車両1Tが第2経路P2を走行する場合の特典を、対象車両1Tが第1経路P1を走行する場合の特典よりも多くなるように設定する。これにより、対象車両1TのユーザUに対して、マップ充実度が低い第2経路P2を選択するインセンティブが与えられる。その結果、マップ充実度が低い第2経路P2を対象車両1Tが走行する機会が増えることが期待される。車両管理システム300は、対象車両1Tが実際に走行した経路に応じた特典をユーザUに与える。
【0091】
対象車両1Tが少なくとも第2経路P2を走行する場合、車両管理システム300は、車両制御システム10と連携して、第2経路P2に沿ったマップ更新用情報を収集させる。上述の通り、マップ更新用情報は、ばね下変位Zu(上下運動パラメータ)を算出するための情報である。対象車両1Tによって収集されたマップ更新用情報は、マップ管理システム100に送られる。マップ管理システム100は、新たなマップ更新用情報に基づいて、第2経路P2に沿ったばね下変位マップ200のマップデータを更新する。これにより、第2経路P2に沿ったマップ充実度が向上する。
【0092】
対象車両1Tが第2経路P2を走行する前と後とでマップ充実度が変化する。車両管理システム300は、「マップ拡充度」を取得してもよい。マップ拡充度は、対象車両1Tが第2経路P2を走行する前と後との間のマップ充実度の増加量に比例する。マップ拡充度は、対象車両1Tが第2経路P2を走行した後に算出されてもよいし、対象車両1Tが第2経路P2を走行する前に推定されてもよい。そして、車両管理システム300は、マップ拡充度に応じて、対象車両1Tが第2経路P2を走行する場合の特典を設定してもよい。より詳細には、車両管理システム300は、マップ拡充度が増加するほど特典を大きく設定してもよい。これにより、特典の量がより適正化される。
【0093】
以上に説明されたように、ばね下変位マップ200のマップ充実度が低い第2経路P2を対象車両1Tが走行した場合、より多くの特典が対象車両1TのユーザUに与えられる。言い換えれば、対象車両1TのユーザUに対して、マップ充実度が低い第2経路P2を選択するインセンティブが与えられる。これにより、マップ充実度が低い第2経路P2を対象車両1Tが走行する機会が増えることが期待される。対象車両1Tが第2経路P2を走行すると、第2経路P2に沿ったマップ更新用情報が新たに得られる。その結果、第2経路P2に沿ったマップ充実度が向上する。このように、本実施の形態によれば、マップ充実度の向上を促進することが可能となる。マップ充実度の向上は、ばね下変位マップ200を利用するプレビュー制御等の車両制御の観点から好適である。
【0094】
5-3.車両管理システムの構成例
図13は、本実施の形態に係る車両管理システム300の構成例を示すブロック図である。車両管理システム300は、1又は複数のインタフェース310、1又は複数のプロセッサ320、及び1又は複数の記憶装置330を備えている。
【0095】
インタフェース310は、通信インタフェースを含む。車両管理システム300は、通信インタフェースを介して、車両制御システム10やマップ管理システム100と通信可能である。また、インタフェース310は、ユーザUに対して情報を提供し、ユーザUからの入力を受け付けるユーザインタフェースを含んでいてもよい。ユーザインタフェースとしては、タッチパネル、ディスプレイ、等が例示される。ユーザインタフェースは、対象車両1Tに搭載されたナビシステムであってもよい。ユーザインタフェースは、ユーザ端末UEであってもよい。
【0096】
プロセッサ320は、各種情報処理を実行する。プロセッサ320としては、CPU、ASIC、FPGA、等が例示される。プロセッサ320を処理回路(processing circuitry)と呼ぶこともできる。プロセッサ320は、車両制御システム10のプロセッサ71と同じであってもよい。プロセッサ320は、マップ管理システム100のプロセッサ120と同じであってもよい。
【0097】
記憶装置330は、各種情報を格納する。記憶装置330としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD、SSD、等が例示される。記憶装置330は、車両制御システム10の記憶装置72と同じであってもよい。記憶装置330は、マップ管理システム100の記憶装置130と同じであってもよい。記憶装置330は、ばね下変位マップ200を格納する。ばね下変位マップ200は、マップ管理システム100から得られる。また、記憶装置330は、地図情報91や位置情報94を格納する。位置情報94は、対象車両1Tの位置を示す情報であり、車両制御システム10から得られる。
【0098】
プロセッサ320は、コンピュータプログラムを実行してもよい。コンピュータプログラムは、記憶装置330に格納される。あるいは、コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。プロセッサ320がコンピュータプログラムを実行することにより、車両管理システム300の機能が実現されてもよい。
【0099】
プロセッサ320は、対象車両1Tの目的地の情報を取得する。目的地の設定方法は任意である。例えば、プロセッサ320は、インタフェース310を介して、ユーザUから目的地の情報を受け取る。プロセッサ320は、目的地と地図情報91と位置情報94とに基づいて、対象車両1Tの現在位置から目的地までの1以上の経路候補を算出する。経路候補の算出方法は周知技術であり、特に限定されない。距離が長すぎる経路候補や、所要時間が長すぎる経路候補は予め除外されていてもよい。距離や所要時間を考慮する度合いは、ユーザUによって適宜設定されてもよい。経路情報400は、算出された経路候補を示す。経路情報400は、記憶装置330に格納される。
【0100】
プロセッサ320は、経路情報400とばね下変位マップ200に基づいて、各経路候補の現在のマップ充実度を算出する。マップ充実度の算出方法は、上記セクション5-1で説明した通りである。更に、プロセッサ320は、経路のマップ充実度に応じて特典を設定する。目的地までの経路候補として第1経路P1と第2経路P2があり、第1経路P1のマップ充実度は第2経路P2のマップ充実度よりも高いとする。この場合、プロセッサ320は、対象車両1Tが第2経路P2を走行する場合の特典を、対象車両1Tが第1経路P1を走行する場合の特典よりも多くなるように設定する。
【0101】
特典情報500は、経路候補毎に設定された特典の内容を示す。特典情報500は、記憶装置330に格納される。プロセッサ320は、インタフェース310を介して、特典情報500をユーザUに提示してもよい。プロセッサ320は、対象車両1Tが実際に走行した経路に応じた特典をユーザUに与える。例えば、プロセッサ320は、ユーザUに与えられる特典をユーザ端末UEに提供する。
【0102】
対象車両1Tが少なくとも第2経路P2を走行する場合、プロセッサ320は、車両制御システム10と連携して、第2経路P2に沿ったマップ更新用情報を収集させる。これにより、第2経路P2に沿ったマップ充実度が向上する。
【0103】
プロセッサ320は、マップ拡充度を取得してもよい。マップ拡充度は、対象車両1Tが第2経路P2を走行する前と後との間のマップ充実度の増加量に比例する。マップ拡充度は、対象車両1Tが第2経路P2を走行した後に算出されてもよいし、対象車両1Tが第2経路P2を走行する前に推定されてもよい。そして、プロセッサ320は、マップ拡充度に応じて、対象車両1Tが第2経路P2を走行する場合の特典を設定してもよい。より詳細には、プロセッサ320は、マップ拡充度が増加するほど特典を大きく設定してもよい。これにより、特典の量がより適正化される。
【0104】
5-4.ユーザ提示機能
図14は、車両管理システム300のユーザ提示機能を説明するための概念図である。車両管理システム300(プロセッサ320)は、ユーザ提示部340を含んでいる。インタフェース310は、ユーザインタフェース315を含んでいる。例えば、ユーザインタフェース315は、対象車両1Tに搭載されたナビシステムである。他の例として、ユーザインタフェース315は、ユーザ端末UEであってもよい。
【0105】
ユーザ提示部340は、ユーザインタフェース315を介して、経路情報400と特典情報500を対象車両1TのユーザUに提示する。例えば、図14に示されるように、第1経路P1と第1経路P1の場合に与えられる第1特典、並びに、第2経路P2と第2経路P2の場合に与えられる第2特典が提示される。ユーザUは、提示された情報を見て、第1経路P1と第2経路P2のいずれを選択するか検討することができる。
【0106】
ユーザUは、希望する経路をユーザインタフェース315を用いて指定する。例えば、ナビシステムは、ユーザUによって指定された経路に基づいてナビゲーションを開始する。ユーザUは、指定した経路に従って対象車両1Tを運転する。他の例として、対象車両1Tが自動運転車両である場合、対象車両1Tは、ユーザUによって指定された経路に従って自動走行する。いずれの場合であっても、対象車両1Tが実際に走行する経路に応じた特典がユーザUに与えられる。
【0107】
5-5.経路決定機能
図15は、車両管理システム300の経路決定機能を説明するための概念図である。車両管理システム300(プロセッサ320)は、経路決定部350を含んでいる。経路決定部350は、所定のポリシーに従い、経路情報400とマップ充実度に基づいて、対象車両1Tの走行経路を自動的に決定する。例えば、目的地までの経路候補として第1経路P1と第2経路P2があり、第1経路P1のマップ充実度は第2経路P2のマップ充実度よりも高いとする。この場合、経路決定部350は、第1経路P1よりも第2経路P2を優先的に対象車両1Tの走行経路として決定してもよい。これにより、ユーザUは多くの特典を得ることができると共に、第2経路P2に沿ったマップ充実度が向上する。
【0108】
5-6.モード切替機能
対象車両1Tの走行経路の決定に関して、複数のモードが用意されていてもよい。例えば、複数のモードは、快適重視モード(第1モード)と特典重視モード(第2モード)を含んでいる。快適重視モードは、ばね下変位マップ200を利用したプレビュー制御を積極的に利用するモードである。一方、特典重視モードは、より多くの特典を取得することを重視するモードである。つまり、特典重視モードは、快適重視モードよりも特典を優先する。対象車両1Tのユーザは、自身の好みのモードを選択することができる。
【0109】
図16は、車両管理システム300のモード切替機能を説明するための概念図である。車両管理システム300(プロセッサ320)は、経路決定部350とモード切替部360を含んでいる。インタフェース310は、ユーザインタフェース315を含んでいる。
【0110】
モード切替部360は、ユーザインタフェース315を通して、複数のモードをユーザUに提示する。ユーザUは、ユーザインタフェース315を通して、好みのモードを選択する。モード切替部360は、ユーザインタフェース315を通して、ユーザUによるモード選択結果を受け取る。
【0111】
快適重視モードが選択された場合、モード切替部360は、快適重視モードで経路決定部350を作動させる。快適重視モードでは、経路決定部350は、第2経路P2よりも第1経路P1を優先的に対象車両1Tの走行経路として決定する。対象車両1Tはマップ充実度が高い第1経路P1を走行するため、ばね下変位マップ200を利用したプレビュー制御を十分且つ効果的に行うことができる。その結果、ユーザUの快適性と満足度が向上する。
【0112】
一方、特典重視モードが選択された場合、モード切替部360は、特典重視モードで経路決定部350を作動させる。特典重視モードでは、経路決定部350は、第1経路P1よりも第2経路P2を優先的に対象車両1Tの走行経路として決定する。その結果、ユーザUはより多くの特典を得ることができると共に、第2経路P2に沿ったマップ充実度が向上する。
【0113】
複数のモードが更に細分化されてもよい。一般化すれば、複数のモードは、第1モードと、第1モードよりも特典を優先する第2モードを含む。第1モードにおいては、経路決定部350は、第2経路P2よりも第1経路P1を優先的に対象車両1Tの走行経路として決定する。その結果、ユーザUの快適性と満足度が向上する。一方、第2モードにおいては、経路決定部350は、第1経路P1よりも第2経路P2を優先的に対象車両1Tの走行経路として決定する。その結果、ユーザUはより多くの特典を得ることができると共に、第2経路P2に沿ったマップ充実度が向上する。
【符号の説明】
【0114】
1 車両
2 車輪
3 サスペンション
10 車両制御システム
70 制御装置
100 マップ管理システム
200 ばね下変位マップ
300 車両管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16