(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026044077
(43)【公開日】2026-03-12
(54)【発明の名称】衝突判定装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20260305BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20260305BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024147817
(22)【出願日】2024-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一馬
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA32
3D241BB27
3D241CA15
3D241CD12
3D241CE05
3D241DB07Z
3D241DC35Z
3D241DC37Z
3D241DC43B
3D241DC43Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両の退避走行時に障害物との衝突を判定する衝突判定装置において、障害物との衝突判定の漏れが生じることを抑制しつつ、車両と障害物との衝突を判定する判定領域が過大になることを抑制する。
【解決手段】衝突判定装置(40)は、車両の周囲の障害物を検出するセンサ(21,22,23)の検出結果に基づいて、車両の周囲の障害物を認識する認識部(41)と、退避走行時の車両の走行経路を生成する経路生成部(42)とを備える。衝突判定装置は、経路生成部により生成された走行経路を含み且つ車両の車幅以上の横幅を有する判定領域に、認識部により認識された障害物がある場合に車両が障害物に衝突すると判定する判定部(45)と、経路生成部により生成された走行経路を複数の区間に分割し、各区間の走行経路の曲率の最大値に基づいて各区間における判定領域の横幅の境界を生成する境界生成部(43)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(A)の退避走行時に障害物との衝突を判定する衝突判定装置(40)であって、
前記車両の周囲の障害物を検出するセンサ(21,22,23)の検出結果に基づいて、前記車両の周囲の障害物を認識する認識部(41)と、
前記退避走行時の前記車両の走行経路を生成する経路生成部(42)と、
前記経路生成部により生成された前記走行経路を含み且つ前記車両の車幅以上の横幅を有する判定領域に、前記認識部により認識された前記障害物がある場合に前記車両が前記障害物に衝突すると判定する判定部(45)と、
前記経路生成部により生成された前記走行経路を複数の区間に分割し、各区間の前記走行経路の曲率の最大値に基づいて前記各区間における前記判定領域の前記横幅の境界を生成する境界生成部(43)と、
を備える衝突判定装置。
【請求項2】
前記経路生成部は、前記走行経路の曲がり方向によって前記走行経路の曲率の最大値を異ならせることが可能であり、
前記境界生成部は、前記経路生成部により生成された前記走行経路を、前記走行経路の曲がり方向が左の区間と前記走行経路の曲がり方向が右の区間とに分割する、請求項1に記載の衝突判定装置。
【請求項3】
前記境界生成部は、前記経路生成部により生成された前記走行経路を、前記走行経路の曲率が閾値よりも大きい区間と前記走行経路の曲率が前記閾値よりも大きくない区間とに分割し、前記走行経路の曲率が前記閾値よりも大きい前記区間において前記曲率の最大値に基づき算出される拡大幅を前記車幅に加えて前記境界を生成し、前記走行経路の曲率が前記閾値よりも大きくない前記区間において前記拡大幅を前記車幅に加えずに前記境界を生成する、請求項1に記載の衝突判定装置。
【請求項4】
前記境界生成部は、前記走行経路の曲がり部において、前記曲がり部の内側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置に基づいて生成し、前記曲がり部の外側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置よりも外側になるように生成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の衝突判定装置。
【請求項5】
前記境界生成部は、前記車両が道路の端側へ退避走行する時に、前記走行経路の曲がり部において前記曲がり部の外側が前記道路の端側と反対側である場合に、前記曲がり部の外側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置に基づいて優先的に生成する、請求項4に記載の衝突判定装置。
【請求項6】
車両(A)の退避走行時に障害物との衝突を判定する衝突判定装置(40)であって、
前記車両の周囲の障害物を検出するセンサ(21,22,23)の検出結果に基づいて、前記車両の周囲の障害物を認識する認識部(41)と、
前記退避走行時の前記車両の走行経路を生成する経路生成部(42)と、
前記経路生成部により生成された前記走行経路を含み且つ前記車両の車幅以上の横幅を有する判定領域に、前記認識部により認識された前記障害物がある場合に前記車両が前記障害物に衝突すると判定する判定部(45)と、
前記走行経路の曲がり部において、前記曲がり部の内側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置に基づいて生成し、前記曲がり部の外側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置よりも外側になるように生成する境界生成部(43)と、
を備える衝突判定装置。
【請求項7】
前記境界生成部は、前記車両が道路の端側へ退避走行する時に、前記走行経路の曲がり部において前記曲がり部の外側が前記道路の端側と反対側である場合に、前記曲がり部の外側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置に基づいて優先的に生成する、請求項6に記載の衝突判定装置。
【請求項8】
前記境界生成部は、前記車両が牽引車(Aa)と被牽引車(Ab)とで構成されている場合に、前記牽引車のみを前記車両とみなして前記判定領域の前記横幅の境界を生成する、請求項1~3,6,7のいずれか1項に記載の衝突判定装置。
【請求項9】
前記境界生成部は、前記車両が牽引車(Aa)と被牽引車(Ab)とで構成されている場合に、前記牽引車及び前記被牽引車を前記車両とみなして前記判定領域の前記横幅の境界を生成する、請求項1~3,6,7のいずれか1項に記載の衝突判定装置。
【請求項10】
前記境界生成部は、前記車両が牽引車(Aa)と被牽引車(Ab)とで構成されている場合に、前記被牽引車の横転しやすさの度合が所定度合よりも高い場合に前記牽引車及び前記被牽引車を前記車両とみなして前記判定領域の前記横幅の境界を生成し、前記被牽引車の横転しやすさの度合が前記所定度合よりも高くない場合に前記牽引車のみを前記車両とみなして前記判定領域の前記横幅の境界を生成する、請求項1~3,6,7のいずれか1項に記載の衝突判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の退避走行時に障害物との衝突を判定する衝突判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、運転者による車両の出庫操作を支援する運転支援装置であって、車両の現在の舵角に基づき走行経路を算出する経路算出部と、前記走行経路に沿った将来位置における車両の内輪側の側方に、舵角の大きさに応じた大きさの探索領域を設定し、探索領域に障害物が存在する場合に障害物に衝突すると判定する判定部と、を備えるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両を路肩等に退避走行させる時の走行経路では、走行経路の曲がり方向及び曲率が走行経路上の各位置で変化する。このため、走行経路上の位置にかかわらず車両の内輪側の側方又は外輪側の側方に一律の探索領域を設定する構成において、障害物との衝突判定の漏れが生じないように探索領域を拡大すると、探索領域が過大になるおそれがある。探索領域が過大になると、車両が実際には障害物に衝突しないにもかかわらず衝突すると判定され、退避走行が中断されたり、走行経路の変更が要求されたりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、車両の退避走行時に障害物との衝突を判定する衝突判定装置において、障害物との衝突判定の漏れが生じることを抑制しつつ、車両と障害物との衝突を判定する判定領域が過大になることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
車両(A)の退避走行時に障害物との衝突を判定する衝突判定装置(40)であって、
前記車両の周囲の障害物を検出するセンサ(21,22,23)の検出結果に基づいて、前記車両の周囲の障害物を認識する認識部(41)と、
前記退避走行時の前記車両の走行経路を生成する経路生成部(42)と、
前記経路生成部により生成された前記走行経路を含み且つ前記車両の車幅以上の横幅を有する判定領域に、前記認識部により認識された前記障害物がある場合に前記車両が前記障害物に衝突すると判定する判定部(45)と、
前記経路生成部により生成された前記走行経路を複数の区間に分割し、各区間の前記走行経路の曲率の最大値に基づいて前記各区間における前記判定領域の前記横幅の境界を生成する境界生成部(43)と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、衝突判定装置は、車両の退避走行時に障害物との衝突を判定する。認識部は、前記車両の周囲の障害物を検出するセンサの検出結果に基づいて、前記車両の周囲の障害物を認識する。経路生成部は、前記退避走行時の前記車両の走行経路を生成する。そして、判定部は、判定領域に、前記認識部により認識された前記障害物がある場合に前記車両が前記障害物に衝突すると判定する。このため、車両が退避走行時の走行経路を走行中に判定領域に障害物がある場合には、判定部は車両が障害物に衝突すると判定することができる。ここで、退避走行時に走行経路の曲がり部分を車両が走行する際には、走行経路の曲率が大きい部分ほど走行経路から横方向に離れた位置を車両の一部が通過しやすくなり、障害物との衝突判定の漏れが生じやすくなる。この点、判定領域は、前記経路生成部により生成された前記走行経路を含み且つ前記車両の車幅以上の横幅を有している。このため、障害物との衝突判定の漏れが生じることを抑制するために、判定領域の横幅を車幅以上に拡大することができる。
【0008】
さらに、境界生成部は、前記走行経路を複数の区間に分割し、各区間の前記走行経路の曲率の最大値に基づいて前記各区間における前記判定領域の前記横幅の境界を生成する。すなわち、前記各区間における前記判定領域の前記横幅の境界は各区間の前記走行経路の曲率の最大値に基づいて生成されるため、各区間の前記走行経路の最も曲がった部分を含めて各区間の走行経路全体において、障害物との衝突判定の漏れが生じることを抑制することができる。しかも、前記判定領域の前記横幅の境界を走行経路上の位置にかかわらず一律に生成する場合と比較して、前記判定領域の前記横幅の境界を区間毎に走行経路の曲率の最大値に応じて適切に生成することができる。したがって、判定領域が過大になることを抑制することができる。
【0009】
第2の手段は、車両(A)の退避走行時に障害物との衝突を判定する衝突判定装置(40)であって、
前記車両の周囲の障害物を検出するセンサ(21,22,23)の検出結果に基づいて、前記車両の周囲の障害物を認識する認識部(41)と、
前記退避走行時の前記車両の走行経路を生成する経路生成部(42)と、
前記経路生成部により生成された前記走行経路を含み且つ前記車両の車幅以上の横幅を有する判定領域に、前記認識部により認識された前記障害物がある場合に前記車両が前記障害物に衝突すると判定する判定部(45)と、
前記走行経路の曲がり部において、前記曲がり部の内側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置に基づいて生成し、前記曲がり部の外側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置よりも外側になるように生成する境界生成部(43)と、
を備える。
【0010】
車両の車幅方向の中央における所定点が走行経路上を移動すると仮定した場合、走行経路の曲がり部の内側では走行経路から車幅の半分までの範囲内を車両の内輪側全体が通過し、走行経路の曲がり部の外側では走行経路から車幅の半分を超える範囲まで車両の外輪側の一部が通過することに、本願発明者は着目した。
【0011】
そこで、前記境界生成部は、前記走行経路の曲がり部において、前記曲がり部の内側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置に基づいて生成し、前記曲がり部の外側の前記判定領域の境界を前記走行経路から前記車幅の半分の位置よりも外側になるように生成する。こうした構成によれば、走行経路の曲がり部において車両の内輪側の部分及び外輪側の部分がそれぞれ通過する範囲に応じて、前記判定領域の前記横幅の境界を適切に生成することができる。したがって、障害物との衝突判定の漏れが生じることを抑制しつつ、判定領域が過大になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】第1実施形態における退避走行時の車両の走行経路及び判定領域を示す平面図。
【
図4】第2実施形態における退避走行時の車両の走行経路及び判定領域を示す平面図。
【
図5】退避走行時の車両の判定領域の変更例を示す平面図。
【
図6】退避走行時の車両の走行経路の変更例を示す平面図。
【
図9】車両の変更例及び退避走行時の車両の判定領域の変更例を示す平面図。
【
図10】車両の変更例及び退避走行時の車両の判定領域の他の変更例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、車両に搭載され、車両の退避走行時に障害物との衝突を判定する衝突判定装置に具現化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示すように、車両は、エンジン11、ブレーキ12、ステアリング装置13、変速機14、車両制御装置18、カメラ21、ミリ波レーダ22、ソナー23、ドライバ状態検出装置25、及び衝突判定装置40等を備えている。
【0015】
カメラ21、ミリ波レーダ22、及びソナー23は、車両の周囲の障害物及び路面の標示を検出する環境センサである。カメラ21、ミリ波レーダ22、及びソナー23(センサに相当)は、検出結果を衝突判定装置40の認識部41へ入力する。なお、環境センサは、カメラ21、ミリ波レーダ22、及びソナー23の一部により構成されてもよいし、カメラ21、ミリ波レーダ22、及びソナー23以外のセンサを含んでいてもよい。
【0016】
ドライバ状態検出装置25は、ドライバの状態を撮影するカメラ、及びドライバの心拍数、脈波形、血圧、体温等を検出する生体センサ等により構成され、ドライバの体調が良好であるか、ドライバが失神しているか等を検出する。
【0017】
車両制御装置18は、ドライバ状態検出装置25の検出結果及び衝突判定装置40の判定結果に基づいて、車両の退避走行を実行する。具体的には、車両制御装置18は、ドライバ状態検出装置25によりドライバが失神していると検出され、且つ衝突判定装置40により障害物に衝突しないと判定された場合に、経路生成部42により生成された走行経路に沿って車両を走行させて道路の路肩に停止させるように、エンジン11、ブレーキ12、ステアリング装置13、及び変速機14を制御する。なお、車両制御装置18は、エンジン11、ブレーキ12、ステアリング装置13、及び変速機14にそれぞれ設けられた制御装置を介して、エンジン11、ブレーキ12、ステアリング装置13、及び変速機14を制御してもよい。
【0018】
車両制御装置18は、衝突判定装置40により障害物に衝突すると判定された場合に、退避走行を中止する。このため、車両と障害物との衝突を判定する判定領域が過大になると、車両が実際には障害物に衝突しないにもかかわらず衝突すると判定され、退避走行が中断されるおそれがある。
【0019】
そこで、本実施形態の衝突判定装置40は、以下のように構成されている。衝突判定装置40は、例えばCPU、メモリ(ROM、RAM)、及び入出力インターフェース等を備えるECU(Electronic Control Unit)により構成されている。衝突判定装置40は、認識部41、経路生成部42、境界生成部43、及び判定部45を備えている。
【0020】
認識部41は、上記環境センサの検出結果に基づいて、車両が退避走行時に走行及び停車可能な空間、及び車両の周囲の障害物を認識する。
【0021】
経路生成部42は、認識部41による認識結果に基づいて、退避走行時に車両を道路の路肩に停止させるまでの走行経路を生成する。このとき、
図2に示すように、左側走行の道路において、退避走行時の走行経路CLは、始めに左方向に曲がり、その後に右方向に曲がる。すなわち、車両Aは始めに左旋回し、その後に右旋回する。経路生成部42は、例えば車両Aが現在の位置から停車位置Sまで、走行距離が短く且つ滑らかな経路で走行するように走行経路CLを生成する。走行経路CLは、車両Aの基準点が通る曲線である。車両Aの基準点については後述する。経路生成部42は、走行経路CLの曲がり方向によって走行経路CLの曲率の最大値を異ならせることが可能である。このため、走行経路CLの左曲がり部分(区間1の走行経路CL)の曲率の最大値(破線円H1での曲率)と、右曲がり部分(区間2の走行経路CL)の曲率の最大値(破線円H2での曲率)とが異なることがある。
【0022】
境界生成部43は、経路生成部42により生成された走行経路CLを複数の区間に分割し、各区間の走行経路CLの曲率の最大値に基づいて各区間における判定領域Jの横幅の左境界BLと右境界BRとを生成する。本実施形態では、境界生成部43は、経路生成部42により生成された走行経路CLを、走行経路CLの曲がり方向が左の区間1と走行経路CLの曲がり方向が右の区間2とに分割する。
【0023】
図3は、判定領域Jの詳細を示す平面図である。同図は、
図2の区間2の走行経路CLにおいて、曲率が最大となる部分(破線円H2の部分)を示している。同図に示すように、走行経路CLの曲率半径がRwであり、走行経路CLの曲率中心がP0である。平面視において、車両Aの形状を矩形に近似している。車両Aの車幅が2Wである。車両Aの基準点P1は、本実施形態では車両Aの重心であり、車両Aの車幅方向の中央における所定点である。車両Aの前後方向において、基準点P1から車両Aの前端までの長さ又は基準点P1から車両Aの後端までの長さのうち長い方の長さが基準長Lである。同図は、車両Aの前後方向において、基準点P1から車両Aの前端までの長さが基準長Lである例を示している。矢印で示す車両Aの進行方向は、走行経路CLの接線方向である。車両Aの進行方向と曲率半径Rwの径方向とは垂直である。
【0024】
このような位置関係において、車両Aの基準点P1が走行経路CL上を移動すると仮定した場合、以下の関係が成立することに本願発明者は着目した。
【0025】
走行経路CLのカーブIN側(曲がり部の内側に相当)では、車両Aが通過する最も内輪側の位置は、車両Aの内輪側の側面と、基準点P1を通る曲率半径との交点P2である。円弧DRは、車両Aの内輪側の前隅及び後隅を通り、曲率中心P0を中心とする円弧である。このため、走行経路CLのカーブIN側では、走行経路CLから車幅2Wの半分Wまでの範囲内を車両Aの内輪側全体が通過する。そこで、境界生成部43は、判定領域Jの右境界BRを、曲率中心P0から交点P2までの長さを曲率半径とする円弧、換言すれば走行経路CLの曲率半径Rwから車幅2Wの半分Wを引いた長さを曲率半径とする円弧に設定する。すなわち、境界生成部43は、走行経路CLの曲がり部において、曲がり部の内側の判定領域Jの右境界BRを、走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置に基づいて生成する。なお、境界生成部43は、判定領域Jの右境界BRを設定する際に、車両制御装置18が車両Aを制御する際の制御誤差を考慮してもよい。
【0026】
一方、走行経路CLのカーブOUT側(曲がり部の外側に相当)では、車両Aが通過する最も外輪側の位置は、車両Aの外輪側の前隅P3又は外輪側の後隅P4である。同図は、車両Aが通過する最も外輪側の位置は、車両Aの外輪側の前隅P3である例を示している。このため、走行経路CLのカーブOUT側では、走行経路CLから車幅2Wの半分Wを超える範囲まで車両Aの外輪側の一部が通過する。そこで、境界生成部43は、判定領域Jの左境界BLを、曲率中心P0から外輪側の前隅P3までの長さを曲率半径Rbとする円弧に設定する。三平方の定理により、Rb=√{L^2+(W+Rw)^2}で表すことができる。L^2はLの2乗を表す。すなわち、境界生成部43は、走行経路CLの曲がり部において、曲がり部の外側の判定領域Jの左境界DLを、走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置よりも外側になるように生成する。車両Aの外輪側の側面と、基準点P1を通る曲率半径との交点P5から、判定領域Jの左境界BL上の点P6までの拡大幅Mは以下の式で表すことができる。M=Rb-Ra。Ra=W+Rwである。なお、円弧DLは、交点P5を通り、曲率中心P0を中心とする円弧である。
【0027】
上述したように、
図3は、
図2の区間2の走行経路CLにおいて、曲率が最大となる部分を示している。また、区間2における内輪側と外輪側との関係を逆にすれば、
図2の区間1の走行経路CLにおいても上記と同様の関係が成立する。そして、走行経路CLの曲率半径は、走行経路CLの曲率の逆数である。このため、境界生成部43は、経路生成部42により生成された走行経路CLを複数の区間に分割し、各区間1,2の走行経路CLの曲率の最大値に基づいて各区間1,2における判定領域Jの横幅の右境界BR及び左境界BLを生成しているといえる。
【0028】
そして、衝突判定装置40の判定部45は、経路生成部42により境界BR,BLが生成された判定領域Jに、認識部41により認識された障害物がある場合に車両Aが障害物に衝突すると判定する。衝突判定装置40の判定部45は、判定領域Jに、認識部41により認識された障害物がない場合に車両Aが障害物に衝突しないと判定する。車両制御装置18は、ドライバ状態検出装置25の検出結果及び衝突判定装置40の判定部45の判定結果に基づいて、車両Aの退避走行を実行する。
【0029】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0030】
・退避走行時に走行経路CLの曲がり部分を車両Aが走行する際には、走行経路CLの曲率が大きい部分ほど走行経路CLから横方向に離れた位置を車両Aの一部が通過しやすくなり、障害物との衝突判定の漏れが生じやすくなる。この点、判定領域Jは、経路生成部42により生成された走行経路CLを含み且つ車両Aの車幅2W以上の横幅(2W+M)を有している。このため、障害物との衝突判定の漏れが生じることを抑制するために、判定領域Jの横幅を車幅2W以上に拡大することができる。
【0031】
・境界生成部43は、走行経路CLを区間1,2に分割し、各区間1,2の走行経路CLの曲率の最大値に基づいて各区間1,2における判定領域Jの横幅の境界BR,BLを生成する。すなわち、各区間1,2における判定領域Jの横幅の境界BR,BLは各区間1,2の走行経路CLの曲率の最大値に基づいて生成されるため、各区間1,2の走行経路CLの最も曲がった部分(
図2の破線円H1,H2の部分)を含めて各区間1,2の走行経路CL全体において、障害物との衝突判定の漏れが生じることを抑制することができる。しかも、判定領域Jの横幅の境界BR,BLを走行経路CL上の位置にかかわらず一律に生成する場合と比較して、判定領域Jの横幅の境界BR,BLを区間毎に走行経路CLの曲率の最大値に応じて適切に生成することができる。したがって、判定領域Jが過大になることを抑制することができる。
【0032】
・境界生成部43は、経路生成部42により生成された走行経路CLを、走行経路CLの曲がり方向が左の区間1と走行経路CLの曲がり方向が右の区間2とに分割する。こうした構成によれば、走行経路CLの左曲がり部分の曲率の最大値と、右曲がり部分の曲率の最大値とが異なる場合であっても、判定領域Jの横幅の境界BR,BLを走行経路CLの曲がり方向に応じて適切に生成することができる。
【0033】
・境界生成部43は、区間2の走行経路CLの曲がり部において、曲がり部の内側の判定領域Jの右境界BRを走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置に基づいて生成し、曲がり部の外側の判定領域Jの左境界BLを走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置よりも外側になるように生成する。こうした構成によれば、走行経路CLの曲がり部において車両Aの内輪側の部分及び外輪側の部分がそれぞれ通過する範囲に応じて、判定領域Jの横幅の境界BR,BLを適切に生成することができる。
【0034】
(第2実施形態)
以下、境界生成部43の構成を変更した第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことによりその説明を援用する。
【0035】
図4に示すように、走行経路CLがほぼ直線の部分(例えば区間1)を車両Aが走行する場合は、車両Aにおいて車幅2Wを超えた位置を通過する部分は小さくなる。このような場合に、判定領域Jの横幅を車幅2Wよりも拡大すると、判定領域Jを過剰に拡大するおそれがある。
【0036】
そこで、境界生成部43は、経路生成部42により生成された走行経路CLを、走行経路CLの曲率が閾値よりも大きい区間2,4と、走行経路CLの曲率が閾値よりも大きくない区間1,3,5とに分割する。そして、境界生成部43は、走行経路CLの曲率が閾値よりも大きい区間2,4において、走行経路CLの曲率の最大値に基づき算出される上記拡大幅Mを車幅2Wに加えて境界BR,BLを生成する。
【0037】
一方、境界生成部43は、走行経路CLの曲率が閾値よりも大きくない区間1,3,5において、拡大幅Mを車幅2Wに加えずに境界BR,BLを生成する。具体的には、境界生成部43は、走行経路CLの曲率が閾値よりも大きくない区間1,3,5において、判定領域Jの右境界BRを走行経路CLから車幅2Wの半分Wだけ右の位置に生成し、判定領域Jの左境界BLを走行経路CLから車幅2Wの半分Wだけ左の位置に生成する。
【0038】
上記構成によれば、障害物との衝突判定の漏れが生じやすい区間2,4の判定領域Jを拡大する一方、判定領域Jを拡大させる必要性が低い区間1,3,5の判定領域Jを拡大しないようにすることができる。したがって、判定領域Jを過剰に拡大することを抑制することができ、車両Aが実際には障害物に衝突しないにもかかわらず衝突すると判定すること抑制することができる。
【0039】
なお、第1実施形態及び第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1実施形態及び第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことによりその説明を援用する。
【0040】
・経路生成部42は、走行経路CLの曲がり方向が左である区間1の走行経路CLの曲率の最大値と、走行経路CLの曲がり方向が右である区間2の走行経路CLの曲率の最大値とを等しくすることもできる。すなわち、経路生成部42は、走行経路CLの曲がり方向にかかわらず走行経路CLの曲率の最大値を等しくすることもできる。
【0041】
・平面視において車両Aの形状が矩形と異なる場合に、境界生成部43は、走行経路CLの曲がり部において、曲がり部の内側の判定領域Jの境界を走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置に基づいて生成し、曲がり部の外側の判定領域Jの境界を走行経路CLから車両Aの形状に応じて車幅2Wの半分Wの位置よりも外側になるように生成してもよい。こうした構成によれば、車両Aの形状を考慮して、走行経路CLの曲がり部において車両Aの内輪側の部分及び外輪側の部分がそれぞれ通過する範囲に応じて、判定領域Jの横幅の境界BR,BLを適切に生成することができる。
【0042】
・
図5に示すように、車両Aが道路の左端側(端側)へ退避走行する時は、車両Aに対して道路の左端側と反対側(
図5では右側)に障害物がある可能性は低い。
【0043】
そこで、境界生成部43は、車両Aが道路の端側へ退避走行する時に、走行経路CLの曲がり部において曲がり部の外側が道路の端側と反対側である場合に、曲がり部の外側の判定領域Jの境界を走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置に基づいて優先的に生成する。例えば、境界生成部43は、車両Aが道路の左端側へ退避走行する時に、走行経路CLの曲がり部CLaにおいて曲がり部CLaの外側が道路の中央側であるため、曲がり部CLaの外側の判定領域Jの右境界BRを走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置に生成する。このため、曲がり部CLaでは、車両Aにおける外輪側の前隅P7は、判定領域Jの右境界BRからはみ出している。こうした構成によれば、障害物がある可能性が低い位置まで判定領域Jが拡大されることを抑制することができる。
【0044】
なお、境界生成部43は、車両Aが道路の左端側へ退避走行する時に、走行経路CLの曲がり部CLbにおいて曲がり部CLbの外側が道路の左端側であるため、曲がり部CLbの外側の判定領域Jの左境界BLを、走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置よりも外側に生成する。このため、曲がり部CLbでは、車両Aにおける外輪側の前隅P8は、判定領域Jの左境界BLからはみ出していない。
【0045】
・
図6に示すように、走行経路CLは、走行点CP1~CPnからなる点列で構成されていてもよい。そして、各走行点CP1~CPnに情報が付与されていてもよい。例えば、各走行点CP1~CPnは、現在位置を原点とした縦位置及び横位置の情報、並びに各走行点CP1~CPnにおける走行経路CLの曲率の情報を有していてもよい。こうした構成によれば、境界生成部43は、走行経路CLを分割する各区間の設定や、各区間における走行経路CLの曲率の最大値の抽出を容易に行うことができる。また、走行経路CLの各走行点CP1~CPnにおける曲率に基づいて、車両Aの舵角を計算することも可能になる。なお、走行経路CLの曲率として、走行点CP1~CPnを結ぶ曲線の曲率を用いることもできる。また、各走行点CP1~CPnは、曲率の情報に代えて、曲率を計算可能な情報、例えば車両Aの舵角の情報、又は、車速及びヨーレートの情報を有していてもよい。
【0046】
・
図7に示すように、車両Aの基準点P1を、車両Aの後ろ側の車軸における車幅方向の中心(車幅方向の中央における所定点に相当)に変更することもできる。この場合であっても、車両Aの前後方向において、基準点P1から車両Aの前端までの長さ又は基準点P1から車両Aの後端までの長さのうち長い方の長さが基準長Lである。同図では、車両Aの前後方向において、基準点P1から車両Aの前端までの長さが基準長Lとなる。
【0047】
そして、境界生成部43は、判定領域Jの右境界BRを、曲率中心P0から交点P2までの長さを曲率半径とする円弧、換言すれば走行経路CLの曲率半径Rwから車幅2Wの半分Wを引いた長さを曲率半径とする円弧に設定する。すなわち、境界生成部43は、走行経路CLの曲がり部において、曲がり部の内側の判定領域Jの右境界BRを、走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置に基づいて生成する。なお、境界生成部43は、判定領域Jの右境界BRを設定する際に、車両制御装置18が車両Aを制御する際の制御誤差を考慮してもよい。
【0048】
また、境界生成部43は、判定領域Jの左境界BLを、曲率中心P0から外輪側の前隅P3までの長さを曲率半径Rbとする円弧に設定する。すなわち、境界生成部43は、走行経路CLの曲がり部において、曲がり部の外側の判定領域Jの左境界BLを、走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置よりも外側になるように生成する。
【0049】
したがって、車両Aの基準点P1を車両Aの後ろ側の車軸における車幅方向の中心に変更した場合も、境界生成部43は、
図3と同様の考え方により判定領域Jの境界BR,BLを生成することができる。なお、車両Aの基準点P1を車両Aの前端における車幅方向の中心(車幅方向の中央における所定点に相当)に変更した場合も、境界生成部43は、
図3と同様の考え方により判定領域Jの境界BR,BLを生成することができる。
【0050】
・
図8に示すように、車両Aが牽引車Aaと被牽引車Abとで構成されている場合がある。この場合に、
図9に示すように、境界生成部43は、牽引車Aaのみを車両Aとみなして判定領域Jの横幅の境界BR,BLを生成することができる。
【0051】
こうした構成によれば、被牽引車Abの内輪側の後隅P9は、判定領域Jの右境界BRからはみ出している。このため、ドライバが乗車している牽引車Aaが障害物に衝突することを抑制しつつ、被牽引車Abが障害物に衝突することは許容することができる。したがって、牽引車Aaの安全を確保しつつ、退避走行をできるだけ実行することができる。
【0052】
・車両Aが牽引車Aaと被牽引車Abとで構成されている場合に、
図10に示すように、境界生成部43は、牽引車Aa及び被牽引車Abを車両Aとみなして判定領域Jの横幅の境界BR,BLを生成することもできる。
【0053】
こうした構成によれば、被牽引車Abの内輪側の後隅P9は、判定領域Jの右境界BRからはみ出していない。このため、ドライバが乗車している牽引車Aaと、被牽引車Abとが障害物に衝突することを抑制することができる。したがって、例えば被牽引車Abが横転しやすい構造である場合に、障害物との衝突による被牽引車Abの横転を抑制することができる。
【0054】
・車両Aが牽引車Aaと被牽引車Abとで構成されている場合に、境界生成部43は、被牽引車Abの横転しやすさの度合が所定度合よりも高い場合に牽引車Aa及び被牽引車Abを車両Aとみなして判定領域Jの横幅の境界BR,BLを生成し、被牽引車Abの横転しやすさの度合が所定度合よりも高くない場合に牽引車Aaのみを車両Aとみなして判定領域Jの横幅の境界BR,BLを生成することもできる。こうした構成によれば、被牽引車Abの横転しやすさに応じて、
図10に示すように被牽引車Abが障害物と衝突することを抑制する場合と、
図9に示すように退避走行の実行を優先する場合とを切り替えることができる。
【0055】
・第1実施形態及び第2実施形態の境界生成部43に代えて、境界生成部43は、経路生成部42により生成された走行経路CLを、所定距離(例えば一定距離)毎に分割することもできる。その場合であっても、境界生成部43は、各区間の走行経路CLの曲率の最大値に基づいて各区間における判定領域Jの横幅の境界BR,BLを生成すればよい。なお、所定距離は、一定距離に限らず、互いに異なる複数の距離を含んでいたり、可変の距離であってもよい。
【0056】
・第1実施形態及び第2実施形態の境界生成部43に代えて、境界生成部43は、経路生成部42により生成された走行経路CLを複数の区間に分割せず、走行経路CLの曲がり部において、曲がり部の内側の判定領域Jの境界を走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置に基づいて生成し、曲がり部の外側の判定領域Jの境界を走行経路CLから車幅2Wの半分Wの位置よりも外側になるように生成することもできる。例えば、境界生成部43は、走行経路CLの各位置に対して、判定領域Jの左境界BLを、曲率中心P0から外輪側の前隅P3までの長さを曲率半径Rbとする各円弧に設定することができる。こうした構成によっても、走行経路CLの曲がり部において車両Aの内輪側の部分及び外輪側の部分がそれぞれ通過する範囲に応じて、判定領域Jの横幅の境界BR,BLを適切に生成することができる。したがって、障害物との衝突判定の漏れが生じることを抑制しつつ、判定領域Jが過大になることを抑制することができる。
【0057】
なお、第1実施形態及び第2実施形態、並びにそれらの各変更例を、組み合わせ可能な範囲で組み合わせて実行することもできる。
【符号の説明】
【0058】
21…カメラ(センサ)、22…ミリ波レーダ(センサ)、23…ソナー(センサ)、40…衝突判定装置、41…認識部、42…経路生成部、43…境界生成部、45…判定部、A…車両。