(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026060733
(43)【公開日】2026-04-08
(54)【発明の名称】溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20260401BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20260401BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20260401BHJP
C08L 77/12 20060101ALI20260401BHJP
C08G 63/06 20060101ALI20260401BHJP
C08G 69/44 20060101ALI20260401BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20260401BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20260401BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K3/34
C08L67/04
C08L77/12
C08G63/06
C08G69/44
B29C48/08
C08J5/18 CFD
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024169440
(22)【出願日】2024-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】青島 広宣
(72)【発明者】
【氏名】中根 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】川原 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】長永 昭宏
【テーマコード(参考)】
4F071
4F207
4J001
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4F071AA48
4F071AA48X
4F071AA56
4F071AA56X
4F071AA84
4F071AA88
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4F071AH19
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4J001DA03
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4J001JB28
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4J002DJ056
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4J002FD206
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4J029EC06A
4J029HB01
4J029JB161
4J029JB171
4J029JF041
4J029KE03
4J029KE06
(57)【要約】
【課題】製膜性及び表面平滑性にバランスよく優れるフィルムを与えることができる溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたフィルムを提供する。
【解決手段】本発明に係る溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂及び(B)マイカを含有し、前記(B)マイカの含有量は、前記液晶性樹脂組成物全体に対して、0.5~15質量%である。前記(A)液晶性樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を少なくとも含む、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである。前記(B)マイカの平均粒子径は、50μm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液晶性樹脂、及び
(B)マイカ
を含有する、溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物であって、
前記(B)マイカの含有量は、前記液晶性樹脂組成物全体に対して、0.5~15質量%である、溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)液晶性樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を少なくとも含む、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである、請求項1に記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)マイカの平均粒子径は、50μm以下である、請求項1又は2に記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物。
【請求項4】
前記液晶性樹脂組成物の融点より10~30℃高い温度、歪み量1%、かつ角周波数10rad/sにおける前記液晶性樹脂組成物の溶融粘度は、80Pa・s以上300Pa・s以下である、請求項1又は2に記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物。
【請求項5】
フィルムを製造するための、請求項1又は2に記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物の使用。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物を含む、フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性樹脂は、優れた機械的強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等をバランス良く有し、優れた寸法安定性も有するため高機能エンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。また、例えば、Tダイ法やインフレーション法等の溶融押出法により、液晶性樹脂からなる溶融押出フィルムを製造することも行われている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-043664号公報
【特許文献2】特開昭63-168327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、従来の液晶性樹脂を多く含む溶融押出フィルムは、Tダイ法やインフレーション法によって製造する際に、穴が開きやすく、製膜性に改善が求められることに加え、充填剤の添加により製膜性を向上させることはできるものの、表面粗さが大きくなってしまうことが判明した。本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製膜性及び表面平滑性にバランスよく優れるフィルムを与えることができる溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、液晶性樹脂と所定量のマイカとを含有する溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0006】
(1) (A)液晶性樹脂、及び
(B)マイカ
を含有する、溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物であって、
前記(B)マイカの含有量は、前記液晶性樹脂組成物全体に対して、0.5~15質量%である、溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物。
【0007】
(2) 前記(A)液晶性樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を少なくとも含む、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである、(1)に記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物。
【0008】
(3) 前記(B)マイカの平均粒子径は、50μm以下である、(1)又は(2)に記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物。
【0009】
(4) 前記液晶性樹脂組成物の融点より10~30℃高い温度、歪み量1%、かつ角周波数10rad/sにおける前記液晶性樹脂組成物の溶融粘度は、80Pa・s以上300Pa・s以下である、(1)から(3)のいずれかに記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物。
【0010】
(5) フィルムを製造するための、(1)から(4)のいずれかに記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物の使用。
【0011】
(6) (1)から(4)のいずれかに記載の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物を含む、フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製膜性及び表面平滑性にバランスよく優れるフィルムを与えることができる溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0014】
<溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物>
本発明の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂及び(B)マイカを含有する。
【0015】
[(A)液晶性樹脂]
本発明に係る溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂を含有する。(A)液晶性樹脂は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明で使用する(A)液晶性樹脂とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0017】
上記のような(A)液晶性樹脂の種類としては特に限定されず、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましく、芳香族ポリエステルアミドであることがより好ましい。また、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。(A)液晶性樹脂としては、60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1質量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、更に好ましくは2.0~10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが好ましく使用される。
【0018】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を少なくとも含むことが好ましく、特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである。
【0019】
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステル;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステルアミド;
(5)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステルアミド等が挙げられる。更に上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0020】
(A)液晶性樹脂において、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位の含有量は、(A)液晶性樹脂の分子構造が変動するのを低く抑える観点から、全構成単位に対し、好ましくは45モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、更により好ましくは55モル%以上であり、一層更により好ましくは60モル%以上であり、特に好ましくは62モル%以上である。上記含有量の上限は、特に限定されず、全構成単位に対し、100モル%以下でよく、90モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、又は70モル%以下でもよい。
【0021】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂を構成する具体的化合物の好ましい例としては、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)で表される化合物、及び下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;1,4-フェニレンジカルボン酸、1,3-フェニレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、及び下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p-アミノフェノール、p-フェニレンジアミン、N-アセチル-p-アミノフェノール等の芳香族アミン類が挙げられる。前述の芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体としては、反応性や(A)液晶性樹脂の分子構造の安定性等の観点から、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【化1】
(X:アルキレン(C
1~C
4)、アルキリデン、-O-、-SO-、-SO
2-、-S-、及び-CO-より選ばれる基である。)
【化2】
【化3】
(Y:-(CH
2)
n-(n=1~4)及び-O(CH
2)
nO-(n=1~4)より選ばれる基である。)
【0022】
本発明に用いられる(A)液晶性樹脂の調製は、上記のモノマー化合物(又はモノマーの混合物)から直接重合法やエステル交換法を用いて公知の方法で行うことができ、通常は溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。エステル形成能を有する上記化合物類はそのままの形で重合に用いてもよく、また、重合の前段階で前駆体から該エステル形成能を有する誘導体に変性されたものでもよい。これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、例えば、脂肪酸金属塩系触媒等の金属塩系触媒や有機化合物系触媒が挙げられ、代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、1-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒が挙げられる。触媒の使用量は一般にはモノマーの全質量に対して約0.001~1質量%、特に約0.01~0.2質量%が好ましい。これらの重合方法により製造されたポリマーは更に必要があれば、減圧又は不活性ガス中で加熱する固相重合法により分子量の増加を図ることができる。
【0023】
(A)液晶性樹脂の溶融粘度は特に限定されない。(A)液晶性樹脂の融点より10~30℃高い温度、かつ、剪断速度1000sec-1における(A)液晶性樹脂の溶融粘度は、好ましくは300Pa・s以下であり、より好ましくは5~150Pa・sであり、更により好ましくは10~100Pa・sである。上記溶融粘度が上記範囲内であると、(A)液晶性樹脂そのもの、又は、(A)液晶性樹脂を含有する組成物は、その押出時において、製膜性が確保されやすい。なお、本明細書において、液晶性樹脂に関する前記溶融粘度は、ISO11443に準拠して測定される。
【0024】
本発明の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物全体に対して、(A)液晶性樹脂の含有量は、好ましくは85~99.5質量%であり、より好ましくは88~97質量%であり、更により好ましくは90~95質量%である。(A)成分の含有量が上記範囲内であると、製膜性及び表面平滑性のバランスの観点から好ましい。
【0025】
[(B)マイカ]
本発明に係る溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物は、(B)マイカを含む。本発明に係る溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物が(B)マイカを含むことにより、優れた製膜性及び表面平滑性を有するフィルムを得やすい。驚くべきことに、優れた製膜性及び表面平滑性を有するフィルムを得やすいという効果は、(B)マイカに特有であり、(B)マイカに代えて、他の充填剤を含有する液晶性樹脂組成物から得られるフィルムは、優れた製膜性は有しやすいものの、表面粗さが大きくなりやすく、表面平滑性は優れたものになりにくい。(B)マイカは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
(B)マイカの平均粒子径は、好ましくは50μm以下である。上記平均粒子径が上記範囲内であると、得られる組成物からは、製膜性及び表面平滑性にバランスよく優れつつ、破れにくいフィルムを得やすい。上記平均粒子径は、より好ましくは5~40μmであり、更により好ましくは8~30μmである。なお、本明細書において、(B)マイカの平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法で測定した体積基準の算術平均粒子径をいう。平均粒子径は、例えば、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920を用いて測定することができる。液晶性樹脂組成物中の(B)マイカの平均粒子径は、液晶性樹脂組成物を600℃で2時間の加熱により灰化して残存した(B)成分について、上記方法を適用することで測定される。
【0027】
本発明の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物全体に対して、(B)マイカの含有量は、0.5~15質量%である。(B)マイカの含有量が上記範囲内であると、得られる組成物からは、製膜性及び表面平滑性にバランスよく優れるフィルムを得やすい。(B)マイカの含有量は、好ましくは3~12質量%であり、より好ましくは5~10質量%である。
【0028】
マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。本発明において使用できるマイカとしては、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等が挙げられるが、これらのうち色相が良好であり、低価格であるという点で白雲母が好ましい。
【0029】
また、マイカの製造において、鉱物を粉砕する方法としては、湿式粉砕法及び乾式粉砕法が知られている。湿式粉砕法とは、マイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕で本粉砕し、その後、脱水、乾燥を行う方法である。湿式粉砕法と比較して、乾式粉砕法は低コストで一般的な方法であるが、湿式粉砕法を用いると、鉱物を薄く細かく粉砕することがより容易である。上記の好ましい平均粒子径と後述する好ましい厚みとを有するマイカが得られるという理由で、本発明においては薄く細かい粉砕物を使用することが好ましい。したがって、本発明においては、湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
【0030】
また、湿式粉砕法においては、被粉砕物を水に分散させる工程が必要であるため、被粉砕物の分散効率を高めるために、被粉砕物に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を加えることが一般的である。本発明において使用できる凝集沈降剤及び沈降助剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、ポリ硫酸鉄、ポリ塩化第二鉄、鉄-シリカ無機高分子凝集剤、塩化第二鉄-シリカ無機高分子凝集剤、消石灰(Ca(OH)2)、苛性ソーダ(NaOH)、ソーダ灰(Na2CO3)等が挙げられる。これらの凝集沈降剤及び沈降助剤は、pHがアルカリ性又は酸性である。本発明で使用するマイカは、湿式粉砕する際に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を使用していないものが好ましい。凝集沈降剤及び/又は沈降助剤で処理されていないマイカを使用すると、液晶性樹脂組成物中のポリマーの分解が生じにくく、多量のガス発生やポリマーの分子量低下等が起きにくいため、得られるフィルムの性能をより良好に維持するのが容易である。
【0031】
本発明において使用できるマイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、かつ/又は、結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
【0032】
[その他の成分]
本発明の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の重合体、マイカ以外の充填剤(シリカ等の粒状充填剤;タルク等の、マイカ以外の板状充填剤;ガラス繊維等の繊維状充填剤;カーボンブラック等)、一般に合成樹脂に添加される公知の物質、即ち、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等も要求性能に応じ適宜添加することができる。表面平滑性の観点から、本発明の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物は、マイカ以外の充填剤を含有しないことが好ましい。
【0033】
その他の重合体としては、例えば、エポキシ基含有スチレン系重合体、エポキシ基非含有オレフィン系重合体等が挙げられる。エポキシ基含有スチレン系重合体としては、例えば、スチレン類に由来する繰り返し単位とα,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰り返し単位とから構成される共重合体を含め、公知のエポキシ基含有スチレン系重合体が挙げられる。エポキシ基非含有オレフィン系重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-イソプレン共重合体、エチレン-プロピレン-クロロプレン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0034】
[溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物の調製]
本発明の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物の調製は特に限定されない。例えば、上記(A)成分、(B)成分、及び任意にその他の成分を配合して、これらを1軸又は2軸押出機を用いて溶融混練処理することで、上記液晶性樹脂組成物の調製が行われる。
【0035】
[溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物]
上記のようにして得られた本発明の溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物の溶融粘度は、製膜性の観点から、前記液晶性樹脂組成物の融点より10~30℃高い温度、歪み量1%、かつ角周波数10rad/sにおいて、80Pa・s以上300Pa・s以下であり、好ましくは85Pa・s以上275Pa・s以下であり、より好ましくは90Pa・s以上250Pa・s以下であり、更により好ましくは95Pa・s以上225Pa・s以下である。なお、本明細書において、液晶性樹脂組成物に関する前記溶融粘度としては、JIS K 7244-10:2005に準拠して回転式レオメーターを用いた測定方法で得られた値を採用する。
【0036】
<フィルム>
上記液晶性樹脂組成物は、溶融押出フィルム用であり、フィルムを製造するために好適に使用される。即ち、上記液晶性樹脂組成物を用いて、溶融押出フィルムを製造することができる。本発明に係るフィルムは、本発明に係る溶融押出フィルム用液晶性樹脂組成物を含む。本発明に係るフィルムとしては、特に限定されず、例えば、溶融押出フィルムが挙げられる。
【0037】
本発明に係るフィルムは、用途が特に限定されず、例えば、絶縁フィルム、防水フィルム、耐熱フィルム等の工業用フィルムとして、又は、ガスバリアフィルム等の包装材料用フィルムとして、種々の分野で利用することができる。
【0038】
本発明に係るフィルムの厚みは、フィルムの用途に適する範囲で特に限定されず、絶縁フィルム等の用途の観点から、1μm~3mmであることが好ましく、5μm~2mmであることがより好ましく、10μm~1mmであることが更により好ましく、20μm~200μmであることが特に好ましい。更に、フィルムの厚みは、20μmであっても、100μmであっても、200μmであってもよく、20μm~100μmであっても、100μm~200μmであってもよい。
【0039】
本発明に係るフィルムの表面粗さ(Wc)は、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、7以下であることが更により好ましい。表面粗さ(Wc)の下限は、特に限定されず、0以上でも、1以上でも、2以上でもよい。なお、本明細書において、表面粗さ(Wc)としては、JIS B 0601-2001に準拠して、表面粗さ測定機で測定して得られた値を採用する。フィルムの表面粗さ(Wc)は、適宜、(B)マイカの含有量、製膜温度等を変動させることにより、調整することができる。
【0040】
[フィルムの製造方法]
本発明におけるフィルムは、例えば、液晶性樹脂組成物を単軸の押出機で溶融し、溶融樹脂組成物を前記押出機から吐出してダイに供給し、該ダイからシート状に溶融樹脂組成物を押し出して冷却固化することにより溶融押出フィルムとして製造することができる。押出機で溶融された液晶性樹脂組成物がダイからシート状に吐出され、例えば、回転する冷却ドラム上でキャストされて急速に冷却固化され、溶融押出フィルムが得られる。この溶融押出フィルムは、冷却固化後、適宜、縦延伸及び横延伸に順に供してもよく、最終的に、ロール状に巻き取ってもよい。
【0041】
上記押出機は、単軸スクリュー型の押出機であり、シリンダー内に単軸スクリューを備えている。シリンダーは供給口を備え、液晶性樹脂組成物は供給口を介してシリンダー内に供給される。シリンダー内は供給口側から順に、供給口から供給された液晶性樹脂組成物を定量輸送する供給部と、液晶性樹脂組成物を混練・圧縮する圧縮部と、混練・圧縮された液晶性樹脂組成物を吐出口に搬送しながら吐出量を計量する搬送計量部とで構成される。
【0042】
押出機のスクリュー圧縮比は、例えば、2.5~5.0に設定され、L/Dは、例えば、18~45に設定される。ここで、スクリュー圧縮比とは、背圧をかけて混練するために液晶性樹脂組成物を溶融状態で圧縮する程度をいい、供給部と搬送計量部との容積比(即ち、供給部の単位長さ当たりの容積/搬送計量部の単位長さ当たりの容積)で表され、供給部のスクリュー軸の外径d1、搬送計量部のスクリュー軸の外径d2、供給部の溝部径a1、及び搬送計量部の溝部径a2を使用して算出される。また、L/Dとは、シリンダー内径(D)に対するシリンダー長さ(L)の比である。
【0043】
スクリュー圧縮比が2.5以上であると、十分に混練されやすく、未溶解部分が発生したり、剪断発熱が小さく結晶の融解が不十分となったりしにくい。逆に、スクリュー圧縮比が5.0以下であると、剪断応力がかかり過ぎず、発熱により液晶性樹脂組成物が劣化したり、液晶性樹脂分子の切断により分子量が低下したりしにくい。これにより、溶融樹脂組成物が不均一となりにくい。スクリュー圧縮比は2.6~4.0の範囲が良く、より好ましくは2.7~3.5の範囲、特に好ましくは2.8~3.0の範囲である。
【0044】
L/Dが18以上であると、溶融不足や混練不足となりにくく、スクリュー圧縮比が2.5以上の場合と同様に微細な結晶が残存しにくい。逆に、L/Dが45以下であると、押出機内での液晶性樹脂の滞留時間が長くなりにくく、樹脂の劣化を起こしにくくなる。また、滞留時間が長くなりにくいと液晶性樹脂分子の切断が起こりにくく分子量が低下しにくい。L/Dは21~40の範囲が良く、好ましくは25~35の範囲、特に好ましくは28~30の範囲である。
【0045】
上記の如く構成された押出機によって液晶性樹脂組成物が溶融され、その溶融樹脂組成物が吐出口からダイに連続的に送られる。そして、押出機によってダイに送られた溶融樹脂組成物は、ダイからシート状に押し出され、例えば、冷却ドラム上にキャストされて冷却固化され、溶融押出フィルムが製膜される。ここで、液晶性樹脂組成物の融点Tm(℃)及びダイの設定温度Td(℃)は、Tm-10≦Td≦Tm+15を満たすことが好ましい。Tm-10≦Tdであると、溶融押出フィルムには、ブツ(即ち、溶融押出フィルムに混在する粒子)が発生しにくい。Td≦Tm+15であると、溶融押出フィルムは、表面平滑性が良好となりやすい。Tm(℃)及びTd(℃)は、好ましくはTm-9≦Td≦Tm+14、より好ましくはTm-8≦Td≦Tm+13を満たす。
【実施例0046】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
<液晶性樹脂>
・芳香族ポリエステル
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に325℃まで3.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて5Torr(即ち667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドカット方式によってペレタイズして、ペレットとして目的のポリマーを得た。得られたポリマーの融点は280℃、300℃における溶融粘度は44Pa・sであった。なお、上記ポリマーの溶融粘度は、後述する溶融粘度の測定方法と同様にして測定した。
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA);837g(27モル%)
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA);1660g(73モル%)
脂肪酸金属塩系触触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1714g
【0048】
・芳香族ポリエステルアミド
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレットを得た。得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で2時間の熱処理を行って、目的のポリマーを得た。得られたポリマーの融点は335℃、350℃における溶融粘度は19.0Pa・sであった。なお、上記ポリマーの溶融粘度は、後述する溶融粘度の測定方法と同様にして測定した。
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA);1380g(60モル%)
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA);157g(5モル%)
1,4-フェニレンジカルボン酸(TA);484g(17.5モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP);388g(12.5モル%)
N-アセチル-p-アミノフェノール(APAP);126g(5モル%)
脂肪酸金属塩系触媒(酢酸カリウム触媒);110mg
アシル化剤(無水酢酸);1659g
【0049】
<融点>
示差走査熱量計(DSC、(株)日立ハイテクサイエンス製)を使用し、得られた液晶性樹脂ペレットを室温から20℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)を測定した。次いで、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した。更に、20℃/分の降温速度で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点として測定した。
【0050】
<溶融粘度>
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、下記温度で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000sec-1で、ISO11443に準拠して、液晶性樹脂の溶融粘度を測定した。
芳香族ポリエステル:300℃
芳香族ポリエステルアミド:350℃
【0051】
<液晶性樹脂以外の材料>
・マイカ1:Y-1800((株)ヤマグチマイカ製、マイカ、平均粒子径10.8μm)
・マイカ2:AB-25S((株)ヤマグチマイカ製、マイカ、平均粒子径24.0μm)
・タルク:クラウンタルクPP(松村産業(株)製、タルク、平均粒子径12.8μm)
・シリカ:デンカ溶融シリカFB-5SDC(デンカ(株)製、シリカ、平均粒子径4.8μm)
【0052】
<液晶性樹脂組成物の製造>
上記成分を、表1に示す割合で二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)を用いて、下記のシリンダー温度で溶融混練し、液晶性樹脂組成物ペレットを得た。
〔製造条件〕
シリンダー温度:
300℃(実施例1並びに比較例1及び2)
350℃(実施例2~5及び比較例3~5)
【0053】
<融点>
液晶性樹脂ペレットの代わりに液晶性樹脂組成物ペレットを用いた以外は上記と同様にして、液晶性樹脂組成物の融点を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
<溶融粘度>
回転式レオメーター(TAインスツルメント社製、DHR-3)を使用し、JIS K 7244-10:2005に準拠して、窒素雰囲気下において、液晶性樹脂組成物ペレットを測定対象として、液晶性樹脂組成物の溶融粘度を測定した。なお、具体的な測定温度やその他の条件は、下記の通りであった。結果を表1に示す。
プレート:直径25mmパラレルプレート
クリアランス:1000μm
歪み量:1%
溶融粘度:
300℃かつ角周波数10rad/sにおける値(実施例1並びに比較例1及び2)
350℃かつ角周波数10rad/sにおける値(実施例2~5及び比較例3~5)
【0055】
<溶融押出フィルムの製造>
得られた液晶性樹脂ペレットを原料として用い、単軸スクリュー押出機((株)東洋精機製作所製20mmφ単軸押出機「ラボプラストミル」)にて、スクリュー圧縮比2.9、L/D=29に設定して、下記条件で溶融させ、押出機先端のTダイ(幅:150mmのコートハンガーダイ)から、ダイの温度を液晶性樹脂組成物の融点+10℃に設定して、フィルム状に押し出して冷却し、巻き取り速度を調整して、100μmの厚みの溶融押出フィルムを作製した。
シリンダー温度:ダイの温度設定と同一
スクリュー回転数:35rpm
吐出量:30kg/h
【0056】
<表面粗さ(Wc)>
上述の通りに作製した溶融押出フィルムについて、CNC表面粗さ測定機((株)ミツトヨ製、SURFTEST Extreme SV-3000 CNC)を用いて、表面粗さ(Wc)を測定した。具体的には、60mm×15mm×100μmのサイズに切り出した溶融押出フィルムについて、JIS B 0601-2001に準拠して測定した。結果を表1に示す。なお、比較例4及び5では、後述の穴開き個数が多すぎて、表面粗さ(Wc)を測定することができなかった。
【0057】
<製膜性>
上述の通りに作製した溶融押出フィルム100cm2当たりの穴開き個数を目視で数え、以下の基準に従って製膜性を評価した。結果を表1に示す。
○(良好):上記穴開き個数が0個だった。
△(やや不良):上記穴開き個数が1~4個だった。
×(不良):上記穴開き個数が5個以上だった。
【0058】
【0059】
表1に記載の結果から明らかなように、実施例の液晶性樹脂組成物は、製膜性及び表面平滑性にバランスよく優れるフィルムを与えることができることが確認された。