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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026006076
(43)【公開日】2026-01-16
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20260108BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20260108BHJP
   F16P 5/00 20060101ALI20260108BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
B23Q11/00 D
F16P5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104835
(22)【出願日】2024-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正人
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011DD02
(57)【要約】
【課題】スライド扉の移動時における安全性を高めることが可能な工作機械を提供することを目的とする。
【解決手段】工作機械では、ワークが加工される加工室の開口部が形成された機体カバーと、モータの回転により、スライド扉に連結されたテーブルを開口部に対して左右に移動させることで、スライド扉により開口部を開閉させることが可能な扉開閉装置と、モータの回転を制御すると共に、モータが過負荷状態である場合に、モータの回転を停止させる制御装置と、を有し、扉開閉装置は、スライド扉とテーブルとを連結しており、スライド扉に対して移動方向で閉位置側に向く所定値以上の力が加わると、スライド扉とテーブルとの連結を解除する連結機構を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが加工される加工室の開口部が形成された機体カバーと、
モータの回転により、スライド扉に連結されたテーブルを前記開口部に対して左右に移動させることで、前記スライド扉により前記開口部を開閉させることが可能な扉開閉装置と、
前記モータの回転を制御すると共に、前記モータが過負荷状態である場合に、前記モータの回転を停止させる制御装置と、を有し、
前記扉開閉装置は、
前記スライド扉と前記テーブルとを連結しており、前記スライド扉に対して移動方向で閉位置側に向く所定値以上の力が加わると、前記スライド扉と前記テーブルとの連結を解除する連結機構を有する、工作機械。
【請求項2】
前記連結機構は、
前記テーブルに固定された被把持部材と、
前記スライド扉に固定されており、前記被把持部材を、前記スライド扉の前記移動方向と交差する方向において、前記所定値の摩擦力で把持する把持部材とを有する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記モータが第1値以上の負荷トルクを生じさせる過負荷状態であれば、前記モータの回転を停止させ、
前記連結機構は、
前記スライド扉に対して、前記所定値として、前記第1値よりも大きい第2値よりも大きな力が加わると、前記スライド扉と前記テーブルとの連結を解除する、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御装置は、
過負荷状態により前記モータの回転を停止させる場合、前記モータを逆転させて、前記テーブルを開位置側に移動させる、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記スライド扉の閉位置への移動を開始すると、前記モータの回転速度を加速させて、前記スライド扉の移動速度を増加させ、
その後、前記モータの回転速度を減速させて、前記スライド扉を前記閉位置で停止させる、請求項1又は2に記載の工作機械。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド扉を有する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、ワークが加工される加工室の開口部が形成されており、その開口部を閉じるスライド扉を開閉することによって、密閉された加工室内でのワークの加工および、作業者による各装置への作業が可能になっている。特許文献1には、モータの回転により、スライド扉を移動させることで、加工室の開口部を覆うことが可能な工作機械が記載されている。このような工作機械では、スライド扉を閉じる際に作業者の体の一部が挟まった場合に、モータの過負荷状態を検知し、モータの回転を停止する処理を行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-109286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの過負荷状態を検知して、スライド扉に物体が挟まれたことを判断する構成では、過負荷状態の検知に誤差が生じることで、スライド扉から過剰な力が物体に加えられる前にモータの回転を停止できない場合がある。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決すべく、スライド扉の移動時における安全性を高めることが可能な工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作機械では、ワークが加工される加工室の開口部が形成された機体カバーと、モータの回転により、スライド扉に連結されたテーブルを開口部に対して左右に移動させることで、スライド扉により開口部を開閉させることが可能な扉開閉装置と、モータの回転を制御すると共に、モータが過負荷状態である場合に、モータの回転を停止させる制御装置と、を有し、扉開閉装置は、スライド扉とテーブルとを連結しており、スライド扉に対して移動方向で閉位置側に向く所定値以上の力が加わると、スライド扉とテーブルとの連結を解除する連結機構を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成の工作機械では、物体がスライド扉に挟まれた際に、制御装置によるモータの過負荷状態の検知に誤差が生じる場合でも、物体からスライド扉に加わる反作用での力を利用して、スライド扉とテーブルとの連結を解除することができる。その結果、スライド扉に物体が挟まれた際に、スライド扉から物体に過剰な力が加わり続けるのを防止することができ、工作機械の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械の斜視図である。
図2】工作機械のブロック構成図である。
図3】扉開閉装置を説明する図である。
図4】スライド扉の開位置への移動の際に、制御装置により実行される処理を説明するフローチャートである。
図5】スライド扉及び連結機構に作用する力を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。工作機械1はNC旋盤であって、機体カバー7によって各種の加工装置が覆われ、前面には加工室に通じる開口部2が形成されている。機体カバー7の前面には、開口部2に対して左右にスライド(移動)可能なスライド扉9が設けられており、このスライド扉9を移動させることで、開口部2の解放と遮蔽とが可能になっている。
【0010】
機体カバー7の内部には、ワークを回転可能に把持するワーク主軸装置3と、複数の工具が取り付けられたタレット装置5とが設けられている(図2で示す)。ワーク主軸装置3は、その中心線が移動方向であって且つ水平に設計されている。なお、本実施形態で説明する「左右」とは機体正面から見た移動方向を示している。なお、各加工装置3、5の構成は周知であるため説明を省略する。
【0011】
上記構成の工作機械1では、ワーク主軸装置3のチャック機構にワークが把持され、そのワークに対してタレット装置5による所定の加工が実行される。タレット装置5では割出し用サーボモータの駆動制御が行われ、刃物台に装着された複数の工具から加工を実行する所定の工具が旋回割出しされる。
【0012】
スライド扉9は、機体カバー7を支持する機体フレームの上部に設けられた上下のスライド機構により、開口部2に対して左右に移動可能に保持されている。機体フレームの上部には移動方向に延びるガイドレールが設けられ、スライド扉9に設けられたガイドブロックが、このガイドレールに対して摺動可能に噛み合っている。機体フレームの下部には棒状のレールが固定され、スライド扉9に軸支された溝車輪がこのレールを転動可能な構成となっている。図1では、スライド扉9は開口部2を覆う閉位置に位置しており、スライド扉9を機体幅方向で右側に移動させることで、スライド扉9が開口部2を覆わない開位置に移動する。
【0013】
機体フレームの上部には、モータ21の回転により、スライド扉9に連結されたテーブル22を開口部2に対して左右に移動させることで、開口部2をスライド扉9により開閉させることが可能な扉開閉装置20が設けられている。扉開閉装置20は、モータ21の回転によりテーブル22の移動方向での位置を位置決めする電動式のスライダー装置であり、このテーブル22には、スライド扉9が後述する連結機構50を介して連結されている。
【0014】
図2に示すように、モータ21の出力軸には、移動方向である機体幅方向に延設するボールネジ24が回転可能に取り付けられている。ボールネジ24には、テーブル22がこのボールネジ24に螺合するスライドブロック23を介して取り付けられている。また、スライドブロック23の下方には、ガイドレール25が機体幅方向に沿って延設されており、スライドブロック23は、このガイドレールに対して摺動可能な構成となっている。
【0015】
モータ21は、IPM(Interior Permanent Magnet Motorの略称)といった交流駆動方式のモータであり、後述するモータ駆動回路36から出力される駆動信号に応じて出力軸を正転、又は逆転させることができる。本実施形態では、モータ21の出力軸を正転させた場合に、ボールネジ24の回転によりテーブル22を移動方向において右側に移動させるものとし、出力軸を逆転させた場合に、ボールネジ24の回転によりテーブル22を移動方向において左側に移動させるものとする。無論、モータ21の出力軸の回転とテーブル22の移動方向との関係は、逆であってもよい。
【0016】
次に、工作機械1の電気的構成を説明する。図2に示すように、工作機械1の制御装置30には、CPU31、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34がバスラインを介して接続されている。ROM32には、CPU31が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納されている。不揮発性メモリ34には、ワークを加工するためのワーク加工プログラムなどが格納されている。CPU31は、ROM32又は不揮発性メモリ34に記憶されたプログラムやパラメータを、RAM33に展開することで、プログラムの読み出しや、読み出されたプログラムに従った所定の処理を実行することができる。
【0017】
制御装置30にはI/Oポート35が設けられており、このI/Oポート35には、ワーク主軸装置3、タレット装置5、操作盤装置6、モータ駆動回路36が、ドライバ等を介して接続されている。操作盤装置6は、タッチパネル形式のディスプレイや、物理キーを備え、画面に表示されたアイコンに対する操作や、物理キーに対する操作を受け付けることで、操作に応じた指示を制御装置30に出力することができる。
【0018】
モータ駆動回路36は、交流電源ACからの交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路37と、変換された直流電圧によりモータ21を駆動させるための駆動信号を生成するインバータ回路38とを備えている。インバータ回路38は、コンバータ回路37により変換された直流電圧と、制御装置30から出力される指令値とを用いて、モータ21の各相コイルを励磁するための駆動信号を生成する。制御装置30から出力される指令値は、モータ21が発生させるトルクや、回転速度を指定するための情報である。
【0019】
更に、制御装置30には、スライド扉9が、開位置又は閉位置に位置していることを検知するための位置センサ26、27が接続されている。位置センサ26は、機体フレームにおける上部右側に配置されており、開位置でのスライド扉9を検知する。位置センサ27は、機体フレームにおける上部中ほどに配置されており、閉位置でのスライド扉9を検知する。各位置センサ26、27は、赤外線といった波長の長い光を照射して近くの検知対象の有無を検知する近接センサである。スライド扉9には、各位置センサ26、27の検知対象となる不図示の検知用ブラケットが設けられている。いずれかの位置センサ26、27が、スライド扉9の検知用ブラケットを検知することで、スライド扉9の位置に応じた位置検知信号を制御装置30に出力する。
【0020】
制御装置30には、モータ駆動回路36に流れる電流を検出する電流センサ28が接続されている。後述するように、電流センサ28は、モータ駆動回路36に流れる電流値によりモータ21の過負荷状態の有無を検出するセンサでもある。
【0021】
制御装置30は、スライド扉9に作業者の体の一部等の物体が挟まった場合に、モータ21の過負荷状態を検知し、モータ21の回転を停止させる安全機能を備えている。しかし、制御装置30による過負荷状態の検知に誤差が生じることで、過負荷状態が検知されてスライド扉9の移動が停止するまでに、物体に対してスライド扉9から過剰な力が加わり続ける場合がある。そこで、本実施形態に係る工作機械1では、制御装置30による過負荷状態の検知に加えて、スライド扉9に物体が挟まれた際に、この物体からスライド扉9に加わる反作用での力を利用してスライド扉9とテーブル22との連結を解除する構成を備えている。
【0022】
図3(a)に示すように、扉開閉装置20のテーブル22は、連結機構50を介してスライド扉9に連結されている。連結機構50は、スライド扉9に対して移動方向で開位置側に向く力が加わった場合に、テーブル22とスライド扉9との連結を解除する機構である。本実施形態では、連結機構50は、テーブル22に固定された被把持部材51と、この被把持部材51を把持する把持部材52と、把持部材52をスライド扉9に固定する固定ブラケット53とを備えている。
【0023】
被把持部材51は、薄板状の基部54と、この基部54から上方に向けて突設する連結ピン55とを有している。固定ブラケット53は、スライド扉9の上部に固定されたブラケット状の部材である。
【0024】
図3(b)は、連結ピン55を把持しない把持部材52を拡大して示す斜視図である。把持部材52は、被把持部材51の連結ピン55を移動方向に交差する交差方向で把持する一対のクランプレバー60を備えている。各クランプレバー60は、回動用ボルト61を介して固定ブラケット53に回動可能に固定されている。これにより、各クランプレバー60は、回動用ボルト61を中心として、長手辺の先端を交差方向に開いたり閉じたりすることが可能となっている。
【0025】
クランプレバー60の先端側における内側面には、被把持部材51の連結ピン55を把持する把持面62が形成されている。把持面62は、一対のクランプレバー60の対向する内側面を、半円状に窪ませた形状となっている。クランプレバー60の内側面において、把持面62よりも先端側には、この把持面62からクランプレバー60の先端に向けて傾斜する誘導斜面63が形成されており、クランプレバー60の内側に挿入された連結ピン55を、誘導斜面63により把持面62に向けて案内することができる。
【0026】
更に、各クランプレバー60における長手辺の後端側、即ち、回動用ボルト61が貫通する位置よりも移動方向で開位置側には、クランプレバー60に連結ピン55を把持するための力を与えるバネ部材64が設けられている。バネ部材64からの弾性力により、クランプレバー60の後端側を交差方向で開くことで、図3(c)で示すように、クランプレバー60の先端側が回動用ボルト61を中心に交差方向で閉じ、把持面62から連結ピン55に向く力Faが加えられる。これにより、把持面62には、その摩擦係数に応じて、連結ピン55に対して移動方向での移動を妨げる摩擦力Fbが生じる。なお、図3(c)では説明の便宜のため、摩擦力Fbを移動方向において閉位置(左)側を向く力として図示しているが、摩擦力Fbの向きは、移動方向に対して左右どちらにも生じる力である。
【0027】
本実施形態では、バネ部材64の弾性係数は、クランプレバー60の把持面62に第2値の摩擦力Fbを生じさせる値である。第2値は、150[N]以上の値である。なお、把持部材52が連結ピン55を把持することで把持面62に生じさせる摩擦力Fbは、以下の(式1)から算出することができる。
Fb=2×Fa×μ …(式1)
なお、μは把持面62の摩擦係数である。
【0028】
次に、スライド扉9を開位置から閉位置に向けて移動させる場合に、制御装置30により実行される処理について説明する。図4に示す処理は、制御装置30が、操作盤装置6に対して、スライド扉9を閉位置側へ移動させるための操作を検知したことを契機に実行される。まずは、作業者の体の一部がスライド扉9に挟まれていない場合を例に説明する。
【0029】
制御装置30は、ステップ10で、モータ駆動回路36に指令値「高速」を出力することで、モータ21を回転させて、スライド扉9に連結されたテーブル22を閉位置側へ移動させる。以下、ステップを、「S」とも記載する。制御装置30が実行するモータ21の駆動制御では、まず、S10において、モータ21の回転速度を所定の回転速度(高速)まで加速させることで、スライド扉9を高速移動させる。その後、後述するS11での減速条件が成立すると、モータ21の回転速度を減速させることで、スライド扉9を減速移動させながら、閉位置で停止させる。
【0030】
制御装置30は、S11で減速条件が成立したか否かを判断する。減速条件は、スライド扉9の移動速度を減速させるタイミングを示す条件であり、本実施形態では、指令値「高速」でモータ21の回転速度を増加させてから、モータ21が備えるエンコーダからの出力により予め定められた距離だけテーブル22が移動したことである。制御装置30は、減速条件が不成立であれば(S11:NO)、S10に戻り、モータ駆動回路36への指令値「高速」の出力を維持することで、モータ21を回転させて、スライド扉9を高速で閉位置へ向けて移動させる。
【0031】
その後、時間の経過によりテーブル22が所定距離だけ移動することで、スライド扉9の移動速度を減速させる減速条件が成立すると(S11:YES)、S12に進み、モータ駆動回路36に、指令値「減速」を出力する。これにより、モータ21の回転速度が減速し、テーブル22を閉位置に向けて移動させる。
【0032】
制御装置30は、S13で、モータ21の過負荷状態の監視を開始する。具体的には、制御装置30は、モータ駆動回路36に流れる電流を、電流センサ28により監視しており、監視電流の値からモータ21が過負荷状態となっているか否かを判断する。モータ21の過負荷状態とは、モータ21の出力軸の回転に及ぼす負荷が通常想定される値よりも大きくなることで、モータ21に過剰な負荷トルクを生じさせている状態である。スライド扉9に作業者の体の一部が挟まると、モータ21の出力軸にかかる負荷が過剰となり、モータ21の負荷トルクが過剰となる。なお、モータ21の負荷トルクは、モータ21又はモータ駆動回路36に流れる電流により推定することができる。
【0033】
制御装置30は、S14で、監視電流の値からモータ21が過負荷状態となっていなければ(S14:NO)、S16に進む。本実施形態では、監視電流の値が、モータ21に第1値以上の負荷トルクが生じている場合の電流値よりも大きな値であれば、モータ21が過負荷状態であると判断する。本実施形態では、第1値は、150[N]よりも小さな値であり、把持部材52が連結ピン55を把持することにより生じさせる摩擦力(第2値)よりも小さな力である。
【0034】
制御装置30は、S16で、スライド扉9が閉位置まで到達したか否かを判断する。制御装置30は、スライド扉9が閉位置にあることを検知する位置センサ27からの位置検知信号がOFFのままであれば、スライド扉9は閉位置に到達していないため(S16:NO)、S12に戻り、モータ駆動回路36への指令値「減速」の出力を維持する。
【0035】
制御装置30は、位置センサ27からの位置検知信号がOFFからONに変化することで、スライド扉9が閉位置まで移動したことを判断すると(S16:YES)、S17に進み、スライド扉9を閉位置で停止させるための停止処理を行う。制御装置30は、停止処理において、モータ駆動回路36への指令値「減速」の出力を停止する。このとき、モータ21の出力軸の回転を瞬間的に反転させるブレーキ動作を行うものであってもよい。制御装置30は、S17の処理が終了すると、図4の処理を終了する。
【0036】
次に、スライド扉9が減速移動している期間に、作業者の体の一部がスライド扉9に挟まれた場合の制御装置30の処理を説明する。作業者の体の一部がスライド扉9に挟まれることにより、モータ21が過負荷状態となり(S14:YES)、制御装置30は、S15に進む。
【0037】
制御装置30は、S15で、モータ駆動回路36に指令値「逆転」を出力した後、モータ21の回転を停止させる。作業者の体の一部がスライド扉9に挟まれているため、制御装置30は、テーブル22の移動方向を閉位置側から開位置側へ反転させることで、スライド扉9と作業者の体の一部との当接状態を解除し、作業者を保護する。
【0038】
また、制御装置30によるS14での過負荷状態の検知に誤差がある場合でも、連結機構50は、作業者の体の一部からスライド扉9に加わる力に応じて、スライド扉9とテーブル22との連結を解除する。具体的には、図5(a)の破線で示す移動方向に移動するスライド扉9に作業者の体の一部Obが当接することで、スライド扉9には、反作用として作業者の体の一部Obから移動方向で開位置(右)側に向く反力Fcが加わる。スライド扉9に加わる反力Fcは、固定ブラケット53を介して把持部材52にも伝達される。
【0039】
既に説明したように、連結ピン55を把持する把持部材52の把持面62には、移動方向において、連結ピン55との連結を保持するための摩擦力Fbが生じている。スライド扉9に加わる反力Fcが摩擦力Fb(第2値)以下であれば、図5(b)に示すように、固定ブラケット53を介して把持部材52に加わる反力Fcにより把持部材52は開位置側に移動せず、把持部材52による連結ピン55の把持は解除されない。そのため、スライド扉9は、モータ21の逆転によるテーブル22の移動に伴い、開位置側に移動する。
【0040】
一方、スライド扉9に加わる反力Fcが摩擦力Fb(第2値)よりも大きければ、図5(c)に示すように、固定ブラケット53を介して把持部材52に加わる反力Fcにより把持部材52は開位置側に移動し、把持部材52による連結ピン55の把持が解除される。その結果、スライド扉9から作業者の体の一部Obに力が加わり続けるのを防止することができる。なお、スライド扉9は、上下のスライド部材により保持されているため、テーブル22との連結が解除された後も、機体カバー7から外れてしまうことはない。
【0041】
スライド扉9とテーブル22とを再び連結させる場合、作業者は、スライド扉9を手に持って、把持部材52を被把持部材51の連結ピン55に近づける。連結ピン55が誘導斜面63により把持面62の手前まで案内された後、スライド扉9を閉位置側に向けてさらに押し出すことで、クランプレバー60の先端側が回動用ボルト61を中心として交差方向に開き、連結ピン55が把持面62まで挿入される。連結ピン55が把持面62まで挿入されると、クランプレバー60の先端側は、バネ部材64の力により回動用ボルト61を中心として交差方向に閉じ、連結ピン55を把持する。これにより、スライド扉9は、テーブル22に連結される。
【0042】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
工作機械1の制御装置30は、扉開閉装置20のモータ21が過負荷状態である場合に、モータ21の回転を停止させる安全機能を有している。また、扉開閉装置20の連結機構50は、スライド扉9に閉じ方向での所定値以上の力が加わると、スライド扉9とテーブル22との連結を解除する。これにより、作業者の体の一部がスライド扉9に挟まれた場合において、制御装置30によるモータ21の過負荷状態の検知に誤差がある場合でも、作業者の体の一部からスライド扉9に加わる力を利用して、スライド扉9とテーブル22との連結を解除することができる。
【0043】
連結機構50は、テーブル22に固定された被把持部材51と、スライド扉9に固定されており、被把持部材51を、第2値の摩擦力で、スライド扉9の移動方向と交差する方向で把持する把持部材52とを有する。これにより、スライド扉9に物体が挟まることで、スライド扉9に物体からの反力が加わると、この反力が把持部材52の摩擦力よりも大きければ、スライド扉9とテーブル22との連結が解除される。一方で、スライド扉9をテーブル22に再び連結させる場合は、把持部材52により被把持部材51の連結ピン55を把持すればよい。これにより、スライド扉9とテーブル22との連結が解除された後において、作業者は、簡易な操作によりスライド扉9とテーブル22とを再び連結させることができる。
【0044】
制御装置30は、モータ21が第1値以上の負荷トルクを生じさせる過負荷状態であれば、モータ21の回転を停止させる。連結機構50は、スライド扉9に対して、第2値よりも大きな力が加わると、スライド扉9とテーブル22との連結を解除する。これにより、作業者の体の一部がスライド扉9に挟まることで、作業者に危険を及ぼしかねない第2値よりも大きな力が加わる場合にのみ、スライド扉9とテーブル22との連結を解除する構成とすることで、作業者の安全を考慮しつつ、不要にスライド扉9の連結が解除されるのを防止することができる。
【0045】
制御装置30は、過負荷状態によりモータ21の回転を停止させる場合、モータ21を逆転させて、テーブル22を開位置側に移動させる。これにより、モータ21を過負荷状態で停止させる場合は、スライド扉9と作業者の体の一部との当接状態を解除することで、作業者の安全性を高めることができる。
【0046】
モータ21の回転を停止しても、スライド扉9に加わる慣性力により、スライド扉9の移動速度が直ちに低下せず、作業者の体の一部に大きな力が加わり続ける場合がある。一方で、慣性力を大きくしないためにスライド扉9の移動速度を初めから遅くすると、スライド扉9が閉位置に達するまでに時間を要し、工作機械1の生産性を低下するおそれがある。そこで、モータ21の回転を制御して、スライド扉9の移動速度を増加させた後、スライド扉9が閉位置に達するまでに、スライド扉9の移動速度を減少させて停止することで、スライド扉9の閉位置までの移動に要する時間の短縮と、作業者の体の一部がスライド扉9に挟まれた場合における安全性の向上とを両立させることができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
上述の実施形態では、制御装置30は、スライド扉9を閉位置に移動させる場合に、モータ21の回転速度を加速させた後、モータ21の回転速度を減速させて、停止させた。これに代えて、制御装置30は、モータ21の回転速度を一定速度で制御して、スライド扉9を移動させる構成としてもよい。
【0048】
上述の実施形態では、扉開閉装置20は、モータ21によりボールネジ24を回転させて、テーブル22を移動させる構成であった。これに代えて、扉開閉装置20は、モータ21の出力軸に連結された能動プーリと、従動プーリとを備え、これら一対のプーリにかけ渡された無端状のベルトを回転させてテーブル22を移動させる構成としてもよい。
【0049】
上述の実施形態では、扉開閉装置20のモータ21は、交流駆動式のモータであった。これに代えて、モータ21は、パルス駆動式のステッピングモータであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…工作機械、2…開口部、7…機体カバー、9…スライド扉、20…扉開閉装置、21…モータ、22…テーブル、30…制御装置、50…連結機構、51…被把持部材、52…把持部材、53…固定ブラケット。
図1
図2
図3
図4
図5