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2026-73637非水電解質二次電池用正極板、製造方法および非水電解質二次電池
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  • -非水電解質二次電池用正極板、製造方法および非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026073637
(43)【公開日】2026-05-01
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用正極板、製造方法および非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/131 20100101AFI20260423BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20260423BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20260423BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20260423BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20260423BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/66 A
H01M4/525
H01M4/62 Z
H01M4/1391
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024184035
(22)【出願日】2024-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 早騎
(72)【発明者】
【氏名】畑中 辰也
(72)【発明者】
【氏名】池田 匠
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017EE05
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA18
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA09
5H050DA11
5H050EA21
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】出力抵抗の上昇を抑制すると共に充電容量の低下を抑制することができる正極板、その製造方法および正極板を含む非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】正極合材層および正極芯材を含む非水電解質二次電池用正極板であって、正極芯材はアルミニウムを含み、正極合材層は、正極活物質と、式(1)または式(2)で表されるヘテロ環含有化合物の少なくとも1種とを含み、正極活物質は、リチウムとニッケルとを含むリチウム遷移金属複合酸化物であり、リチウム遷移金属複合酸化物中のニッケルの含有量は、リチウム以外の金属元素の総モル数に対して70モル%以上であり、正極活物質のBET比表面積は、0.2~1.1m/gであり、正極合材層中のヘテロ環含有化合物の含有量は、正極合材層の質量に対し0.01~0.5質量%である、非水電解質二次電池用正極板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極合材層および正極芯材を含む非水電解質二次電池用正極板であって、
前記正極芯材はアルミニウムを含み、
前記正極合材層は、正極活物質と、下記式(1):
【化1】

[式(1)中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基であり、
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基である。]
または下記式(2):
【化2】

[式(2)中、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基であり、
およびRは、互いに結合して置換基を有していてもよい炭素数4~12の環を形成していてもよく、
Zは、NまたはC-Rであり、
は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基であり、
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基である。]
で表されるヘテロ環含有化合物の少なくとも1種とを含み、
前記正極活物質は、リチウムとニッケルとを含むリチウム遷移金属複合酸化物であり、
前記リチウム遷移金属複合酸化物中のニッケルの含有量は、リチウム以外の金属元素の総モル数に対して70モル%以上であり、
前記正極活物質のBET比表面積は、0.2~1.1m/gであり、
前記正極合材層中の前記ヘテロ環含有化合物の含有量は、前記正極合材層の質量に対し0.01~0.5質量%である、非水電解質二次電池用正極板。
【請求項2】
前記正極活物質は、平均粒子径D50が2~6μmである第1活物質を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極板。
【請求項3】
前記第1活物質は、単粒子または2~10個の一次粒子が凝集した二次粒子である、請求項2に記載の非水電解質二次電池用正極板。
【請求項4】
前記第1活物質のBET比表面積は0.2~1.5m/gである、請求項2に記載の非水電解質二次電池用正極板。
【請求項5】
前記正極活物質は、平均粒子径D50が10~20μmである第2活物質を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極板。
【請求項6】
前記第2活物質は、50個以上の一次粒子が凝集した二次粒子である、請求項5に記載の非水電解質二次電池用正極板。
【請求項7】
前記第2活物質のBET比表面積は0.2~1.0m/gである、請求項5に記載の非水電解質二次電池用正極板。
【請求項8】
請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法であって、
前記正極活物質と前記ヘテロ環含有化合物とを混合して正極合材スラリーを得るスラリー調製工程を含む、非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
【請求項9】
前記スラリー調製工程は、
前記正極活物質と、結着剤と、分散媒とを混合して第1混合物を得る第1工程と、
前記第1混合物と前記ヘテロ環含有化合物とを混合して第2混合物を得る第2工程と
を含む、請求項8に記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
【請求項10】
前記正極活物質と前記ヘテロ環含有化合物とを、前記正極合材スラリー中の固形分に対する前記ヘテロ環含有化合物の含有量が0.01~0.5質量%となるように混合する、請求項8に記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極板を含む、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池用正極板に関し、さらにはその製造方法および非水電解質二次電池にも関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-113825号公報(特許文献1)には、ニッケル含有量の高い正極活物質を含むリチウムイオン二次電池用正極材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-113825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池においてニッケル含有量の高い正極活物質を含む正極板を用いた場合、高容量化が可能となる一方、出力抵抗が増加する傾向にある。
【0005】
本開示の目的は、出力抵抗の上昇を抑制すると共に充電容量の低下を抑制することができる正極板、その製造方法および正極板を含む非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 正極合材層および正極芯材を含む非水電解質二次電池用正極板であって、
前記正極芯材はアルミニウムを含み、
前記正極合材層は、正極活物質と、下記式(1):
【化1】

[式(1)中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基であり、
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基である。]
または下記式(2):
【化2】

[式(2)中、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基であり、
およびRは、互いに結合して置換基を有していてもよい炭素数4~12の環を形成していてもよく、
Zは、NまたはC-Rであり、
は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基であり、
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基である。]
で表されるヘテロ環含有化合物の少なくとも1種とを含み、
前記正極活物質は、リチウムとニッケルとを含むリチウム遷移金属複合酸化物であり、
前記リチウム遷移金属複合酸化物中のニッケルの含有量は、リチウム以外の金属元素の総モル数に対して70モル%以上であり、
前記正極活物質のBET比表面積は、0.2~1.1m/gであり、
前記正極合材層中の前記ヘテロ環含有化合物の含有量は、前記正極合材層の質量に対し0.01~0.5質量%である、非水電解質二次電池用正極板。
[2] 前記正極活物質は、平均粒子径D50が2~6μmである第1活物質を含む、[1]に記載の非水電解質二次電池用正極板。
[3] 前記第1活物質は、単粒子または2~10個の一次粒子が凝集した二次粒子である、[2]に記載の非水電解質二次電池用正極板。
[4] 前記第1活物質のBET比表面積は0.2~1.5m/gである、[2]または[3]に記載の非水電解質二次電池用正極板。
[5] 前記正極活物質は、平均粒子径D50が10~20μmである第2活物質を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極板。
[6] 前記第2活物質は、50個以上の一次粒子が凝集した二次粒子である、[5]に記載の非水電解質二次電池用正極板。
[7] 前記第2活物質のBET比表面積は0.2~1.0m/gである、[5]または[6]に記載の非水電解質二次電池用正極板。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法であって、
前記正極活物質と前記ヘテロ環含有化合物とを混合して正極合材スラリーを得るスラリー調製工程を含む、非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
[9] 前記スラリー調製工程は、
前記正極活物質と、結着剤と、分散媒とを混合して第1混合物を得る第1工程と、
前記第1混合物と前記ヘテロ環含有化合物とを混合して第2混合物を得る第2工程と
を含む、[8]に記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
[10] 前記正極活物質と前記ヘテロ環含有化合物とを、前記正極合材スラリー中の固形分に対して前記ヘテロ環含有化合物の含有量が0.01~0.5質量%となるように混合する、[8]に記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
[11] [1]~[7]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極板を含む、非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、出力抵抗の上昇を抑制すると共に充電容量の低下を抑制することができる正極板、その製造方法および正極板を含む非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、正極板の層構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態における正極板の製造方法の概略フローチャートである。
図3図3は、本実施形態における電池の構成の一例を示す概略図である。
図4図4は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<非水電解質二次電池用正極板>
本開示の非水電解質二次電池用正極板(以下、正極板ともいう)は、正極合材層および正極芯材を含み、正極芯材はアルミニウム(Al)を含み、正極合材層は、正極活物質と、式(1)または式(2)で表されるヘテロ環含有化合物(以下、ヘテロ環含有化合物ともいう)の少なくとも1種とを含み、正極活物質は、リチウム(Li)とニッケル(Ni)とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であり、リチウム遷移金属複合酸化物中のNiの含有量(以下、Ni含有量ともいう)は、Li以外の金属元素の総モル数に対して70モル%以上であり、正極活物質のBET比表面積は、0.2~1.1m/gであり、正極合材層中のヘテロ環含有化合物の含有量は、正極合材層の質量に対し0.01~0.5質量%である。
【0010】
本開示によれば、非水電解質二次電池(以下、電池ともいう)の出力抵抗の上昇を抑制すると共に充電容量の低下を抑制することができる。本発明者によって、Ni含有量の高い正極活物質を含む正極板を用いた場合に生じる出力抵抗の増加は、正極活物質とAlを含む正極芯材との界面においてAlが腐食する為であることが突き止められた。これは、Ni含有量の高い正極活物質はアルカリ含有量が高く、正極活物質からアルカリ成分が放出され易い傾向にあり、正極活物質がAlを含む正極芯材と接触したときに、その界面において放出されたアルカリ成分がAlを含む正極芯材を腐食させる為であることが分かった。また、正極活物質のBET比表面積が高い場合、正極活物質が正極芯材と接触する面積が増え、その結果、正極芯材が腐食し易いことも見出された。本開示の正極板では、Ni含有量の高い正極活物質を用いることで充電容量の低下を抑制する共に、ヘテロ環含有化合物が、正極活物質およびAlを含む正極芯材の両方の表面に吸着する為、正極活物質およびAlを含む正極芯材の直接的な接触を抑制し、また、正極活物質のBET比表面積を上記範囲とすることにより、Ni含有量の高い正極活物質を用いた場合でも正極芯材の腐食を抑え、出力抵抗の上昇を抑制することが可能となる。
【0011】
本開示の非水電解質二次電池用正極板(以下、正極板ともいう)について図1を参照しながら説明する。正極板10は、正極合材層12および正極芯材11を含む。正極合材層12は正極芯材11の表面に配置されていてよい。図1に示されるように正極合材層12は、正極芯材11の片面のみに配置されていてよい。正極合材層12は、正極芯材11の表裏両面に配置されていてもよい。
【0012】
正極芯材11は導電性シートである。正極芯材11はAlを含む。正極芯材11は、純Al箔またはAl合金箔であってよい。正極芯材11は、例えば10~30μmの厚みを有していてもよい。正極板10の厚みは、例えば20~290μmであってよく、50~250μmであってよく、100~200μmであってよい。正極板10の長手方向の寸法は、例えば0.5~5mであってよく、1~3mであってよい。正極板10は、長手方向に平行な端部の一方において正極芯材11が露出していてもよい。正極芯材11が露出した部分には、後述の正極集電部材が接合され得る。
【0013】
正極合材層12は、正極活物質を含む。正極活物質は、LiとNiとを含むリチウム遷移金属複合酸化物である。リチウム遷移金属複合酸化物は、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2およびLiFePO4からなる群から選択される少なくとも1種を含む。例えば「Li(NiCoMn)O2」等の組成式においては、括弧内の組成比の合計が1である。すなわち「CNi+CCo+CMn=1」の関係が満たされている。例えば「CNi」はNiの組成比を示す。組成比の合計が1である限り、各成分の組成比は任意である。正極合材層12は、正極活物質粒子を含むことができる。正極活物質粒子は任意の成分を含み得る。正極活物質粒子は、上述のリチウム遷移金属複合酸化物を含み得る。
【0014】
リチウム遷移金属複合酸化物中のNi含有量は、Li以外の金属元素の総モル数に対して70モル%以上であり、充填容量の観点から好ましくは80mol%以上、より好ましくは90モル%以上である。リチウム遷移金属複合酸化物中のNi含有量が上記範囲であることにより電池の充電容量が向上し易くなる傾向にある。
【0015】
リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば下記式(i):
Li1-a1Nix1Me1 1-x12 (i)
[式(i)中、
「a1」は、-0.3≦a1≦0.3の関係を満たす。
「x1」は、0.70≦x1≦1.0の関係を満たす。
「Me1」は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、Al、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ケイ素(Si)、バナジウム(V)、クロム(Cr)およびゲルマニウム(Ge)からなる群より選択される少なくとも1種を示す。]
で表される第1層状金属酸化物を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0016】
リチウム遷移金属複合酸化物は、好ましくはリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物である。リチウム遷移金属複合酸化物は、例えばLiNi0.82Co0.13Mn0.052、およびLiNi0.92Co0.04Mn0.042からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。リチウム遷移金属複合酸化物は実質的に、例えばLiNi0.82Co0.13Mn0.052、およびLiNi0.92Co0.04Mn0.042からなる群より選択される少なくとも1種からなっていてもよい。
【0017】
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、例えば水酸化リチウム等のリチウム源とニッケルコバルトマンガン複合水酸化物とを混合して焼成した後、ボールミル等を用いて湿式粉砕し、乾燥することで得ることができる。ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物は、例えば共沈法等により得られるものであってよい。ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物は、例えば一般式:NiCoMn(OH)(式中、x+y+z=1)で表される化合物であってよい。
【0018】
正極活物質のBET比表面積は0.2~1.1m/gである。正極活物質のBET比表面積が0.2m/g未満であると、充電容量が向上しにくくなる傾向にある。正極活物質のBET比表面積が1.1m/g超であると、正極活物質の正極芯材との接触面積が大きくなり、正極芯材の腐食が起こり易くなり、出力抵抗の増加が抑制されにくくなる傾向にある。正極活物質が2種類以上の正極活物質を含む場合、正極活物質全体のBET比表面積が上記範囲となる。BET比表面積は、ガス吸着法により測定される吸着等温線において、BET多点法により算出される比表面積を示す。BET比表面積は比表面積測定装置を用いて測定できる。BET比表面積は、例えば正極活物質を製造するのに用いる原料の比率や、焼成パラメーター(例えば焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気等)を調節することにより制御することができる。
【0019】
正極活物質は、平均粒子径D50が2~6μmである第1活物質または平均粒子径D50が10~20μmである第2活物質を含むことができる。正極活物質は第1活物質または第2活物質であってよい。第1活物質は、第2活物質に比べて小さい平均粒子径D50を有することができる。本明細書において、平均粒子径D50は、体積基準の粒度分布において小粒径側からの累積粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を表す。平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により測定され得る。
【0020】
第1活物質は、単粒子または2~10個の一次粒子が凝集した二次粒子であってよい。第1活物質が二次粒子である場合、一次粒子の凝集数は、2~8個であってもよく、2~5個であってもよい。
【0021】
第1活物質が単粒子または2~10個の一次粒子が凝集した二次粒子である場合、単粒子および一次粒子の平均粒子径R1は、例えば0.5μm以上または1.0μm以上または1.5μm以上または1.7μm以上であってよく、1.7~6μmであってもよく、2~5μmであってもよく、2.5~4.5μmであってもよい。平均粒子径R1は、第1活物質の表面のSEM観察像から求めた値であり、複数の第1活物質の表面のSEM画像を画像解析して各単粒子または一次粒子の最長径を決定し、これを複数の単粒子または一次粒子について平均した値である。
【0022】
第1活物質のBET比表面積は、例えば0.2~1.5m/gであってよい。
【0023】
第2活物質の平均粒子径D50は、例えば10~20μmであってよく、好ましくは12~20μmであり、より好ましくは13~19μmであり、さらに好ましくは14~18μmである。
【0024】
第2活物質は、50個以上の一次粒子が凝集した二次粒子(以下、凝集粒子ともいう)であってよい。第2活物質において、一次粒子の凝集数は、100個以上であってよく、1000個以上であってよく、10000個以上であってよく、通常5×10個以下であり、5×10個以下であってよい。
【0025】
第2活物質が凝集粒子である場合、凝集粒子を構成する一次粒子の平均粒子径R2は、2.0μm以下であり、例えば0.1μm以上であってよく、0.5~1.7μmであってよく、0.7~1.5μmであってよい。平均粒子径R2は、第2活物質の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察像から求めた値であり、複数の第2活物質の表面のSEM画像を画像解析して各一次粒子の最長径を決定し、これを複数の第2活物質について平均した値である。
【0026】
第2活物質のBET比表面積は、例えば0.2~1.0m/gであってよい。
【0027】
正極活物質は、充填性の観点から好ましくは第1活物質と第2活物質とを含む。正極活物質が第1活物質と第2活物質とを含む場合、第2活物質の含有量は、正極活物質の総質量を100質量%としたとき例えば10~90質量%であってよく、25~85質量%であってよく、正極合材層の充填密度の観点から好ましくは40~80質量%である。
【0028】
一般に、正極活物質が第1活物質を含む場合、正極活物質が第2活物質を含む場合に比べ正極芯材の腐食が起こり易い傾向にある。これは、第1活物質のようなNi含有量が高く、および平均粒子径D50が比較的小さい正極活物質は、(1)構造が比較的不安定であり、アルカリ溶出が多いこと、(2)平均粒子径D50が比較的小さい為、Alを含む正極芯材との接触面積が大きくなること、および(3)第1活物質の密度が低い為、正極合材層の密度を第2活物質を含む正極合材層と同程度にするには正極板の製造工程においてより高い強度で圧縮が行われることが理由として挙げられる。しかしながら、本開示によれば、正極活物質が第1活物質を含む場合であっても、正極芯材の腐食を抑制し、出力抵抗の上昇を抑制し易くすることができる。
【0029】
本開示において用いられるヘテロ環含有化合物は、式(1):
【化3】

[式(1)中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基であり、
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基である。]
【0030】
または式(2):
【化4】

[式(2)中、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基であり、
およびRは、互いに結合して置換基を有していてもよい炭素数4~12の環を形成していてもよく、
Zは、NまたはC-Rであり、
は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基であり、
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基である。]
のいずれかで表される。
【0031】
式(1)で表されるヘテロ環含有化合物は、構造異性体であってもよい。具体的には、式(1)で表されるヘテロ環含有化合物の構造異性体としては、例えば、下記式(1-A)~(1-G):
【化5】

[式中、R~R、Xは、上記と同じである。]
で表されるヘテロ環含有化合物がそれぞれ挙げられる。
【0032】
が、水素原子である場合において、上記構造異性体のうち互変異性体が好ましい。なお、Xが水素原子である場合、その互変異性体はプロトン互変異性体とも呼ばれる。
【0033】
~Rの「置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基」における炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1~6の直鎖または分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~6の環状アルキル基が挙げられる。
【0034】
~Rの「置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基」における炭素数2~6のアルケニル基としては、エテニル基、n-1-プロペニル基、n-2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、n-1-ブテニル基、n-2-ブテニル基、n-3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基およびn-1-ペンテニル基等が挙げられる。
【0035】
~Rの「置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基」における炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0036】
~Rは置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、エステル基、ケトン基、アミノ基、フェニル基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボン酸クロリド基、チオール基等が挙げられる。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、メトキシジメチルシリル基、トリエトキシシリル基、ジエトキシメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基等が挙げられる。本開示において、カルボキシ基が好ましい。R~Rが置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0037】
~Rとしては、水素原子、カルボキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基が好ましく、ならびに、上記式(2)のRおよびRは、互いに結合して形成される、置換基を有していてもよい炭素数4~12の環が好ましい。
【0038】
また、R~Rとしては、水素原子、カルボキシ基、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基がより好ましく、ならびに、上記式(2)のRおよびRは、互いに結合して形成される、置換基を有していてもよい炭素数4~12の環がより好ましい。
【0039】
さらに、R~Rとしては、水素原子、カルボキシ基、炭素数1~3のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基がより一層好ましく、ならびに、上記式(2)のRおよびRは、互いに結合して形成される、置換基を有していてもよい炭素数6~10の環がより一層好ましい。
【0040】
さらに、R~Rとしては、水素原子、カルボキシ基、メチル基、またはフェニル基がさらに好ましく、ならびに、上記式(2)のRおよびRは、互いに結合して形成される、置換基を有していてもよいベンゼン環がさらに好ましい。
【0041】
Zは、NまたはC-Rであり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基である。
【0042】
Zとしては、Nが好ましい。
【0043】
の「置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基」における炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1~6の直鎖または分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~6の環状アルキル基が挙げられる。
【0044】
の「置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基」における炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0045】
は置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、エステル基、ケトン基、アミノ基、フェニル基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボン酸クロリド基、チオール基等が挙げられる。上記アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、メトキシジメチルシリル基、トリエトキシシリル基、ジエトキシメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基等が挙げられる。本発明では、カルボキシ基、およびアルコキシシリル基が好ましく、カルボキシ基、およびトリメトキシシリル基がより好ましい。
【0046】
としては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、および置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基が好ましい。
【0047】
また、Xとしては、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、および炭素数6~10のアリール基がより好ましい。
【0048】
さらに、Xとしては、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、および炭素数6~8のアリール基がより一層好ましい。
【0049】
式(1)で表されるヘテロ環含有化合物の具体例としては、下記式(1-1)~(1-14)で表されるヘテロ環含有化合物が挙げられる。
【0050】
【化6】
【0051】
式(2)で表されるヘテロ環含有化合物の具体例としては、下記式(2-1)~(2-13)で表されるヘテロ環含有化合物が挙げられる。
【化7】

*式(2-6)で表されるヘテロ環含有化合物の構造は、信越化学工業(株)製のX-12-1214Aとして、同社のカタログに記載された化合物の構造である。
【0052】
式(1)または式(2)で表されるヘテロ環含有化合物は、例えば市販品を用いることができる。式(1)または式(2)で表されるヘテロ環含有化合物の市販品としては、例えばSA-426H(日産化学株式会社製)およびX-12-1214A(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
正極合材層12中のヘテロ環含有化合物の含有量は、正極合材層12の質量に対し0.01~0.5質量%である。正極合材層中のヘテロ環含有化合物の含有量が上記範囲であると、正極活物質がヘテロ環含有化合物で均一に覆われ、正極活物質からのアルカリ溶出が抑制され易くなり、および充電容量の低下が起こりにくくなる。正極合材層中のヘテロ環含有化合物の含有量が0.01質量%未満であると正極心材の腐食を抑制できなくなり、出力抵抗の上昇が抑制されにくくなる傾向にある。正極合材層中のヘテロ環含有化合物の含有量が0.5質量%超であると充電容量が向上しにくく傾向にある。また、上記ヘテロ環含有化合物以外の他の添加剤を使用する場合、アルカリ溶出およびこれに伴う正極芯材の腐食を抑制する効果を得るには上記ヘテロ環含有化合物の含有量に比べて多く添加する必要があり、その結果、添加量が多くなるため逆に出力特性に悪影響が及ぶため、出力抑制効果が得られなくなる。正極合材層12中のヘテロ環含有化合物の含有量は、出力抵抗および充電容量の観点から好ましくは正極合材層12の質量に対し0.0125~0.3質量%であり、より好ましくは0.025~0.2質量%である。
【0054】
正極合材層12は、正極活物質およびヘテロ環含有化合物のほか、結着材および導電材等を含んでいてもよい。結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂;カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系樹脂等の公知の材料が挙げられる。導電材としては、例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料は、例えば繊維状炭素、カーボンブラック、コークス、および活性炭からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック(AB)が挙げられる。
【0055】
正極合材層12の厚みは、積層体40に含まれる正極合材層12の厚みの合計を示す。例えば、正極板10の両面に正極合材層12が形成されている場合、正極合材層12の厚みは、両面(2つ)の正極合材層12の厚みの合計を示す。正極合材層12は、例えば10~260μmの厚みを有していてもよいし、20~60μmの厚みを有していてもよいし、30~50μmの厚みを有していてもよい。なお、片面(1つ)の正極合材層12の厚みは、例えば10~30μmであってもよいし、15~25μmであってもよい。
【0056】
正極合材層12の密度は、例えば3.0~4.0g/cm3であってよく、好ましくは3.2~3.6g/cmである。
【0057】
<正極板の製造方法>
正極板10は、例えば正極芯材11上に正極合剤スラリーを塗布し、乾燥し、圧縮することにより正極合材層12を形成することで製造することができる。正極板10の製造方法は、図2に示すように、正極活物質とヘテロ環含有化合物とを混合して正極合材スラリーを調製するスラリー調製工程(S1)を含む。正極板の製造方法は、塗布工程(S2)、乾燥工程(S3)および圧縮工程(S4)をさらに含むことができる。
【0058】
スラリー調製工程(S1)において、正極活物質とヘテロ環含有化合物とを含む正極合材スラリーを調製する。正極合材スラリーは、正極活物質とヘテロ環含有化合物とが分散媒中に分散されることにより調製される。分散媒は例えば有機溶媒であってよい。有機溶媒は、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。有機溶媒の使用量は任意である。正極合材スラリーは、任意の固形分濃度(固形分の質量分率)を有し得る。正極合材は例えば40~80%の固形分濃度を有し得る。混合は任意の攪拌装置、混合装置、分散装置が使用され得る。スラリー調製工程(S1)において、正極活物質とヘテロ環含有化合物とを、正極合材スラリー中の固形分に対してヘテロ環含有化合物の含有量が0.01~0.5質量%となるように混合することができる。
【0059】
スラリー調製工程(S1)は、正極活物質と、結着剤と、分散媒とを混合して第1混合物を得る第1工程と、第1混合物とヘテロ環含有化合物とを混合して第2混合物を得る第2工程とを含むことができる。スラリー調製工程(S1)が第1工程と第2工程とを含む場合、正極活物質全体に分散媒をなじませた後、ヘテロ環含有化合物を添加することで、正極活物質にヘテロ環含有化合物が吸着してヘテロ環含有化合物の分散に偏りが生じにくくすることができる。
【0060】
第1工程において、例えば正極活物質と、結着剤と、分散媒とを固形分が85~95%となるように10~20rpmの回転速度で混練することができる。
【0061】
第2工程においてヘテロ環含有化合物は分散媒と共に添加することができる。
【0062】
第2工程において得られた第2混合物を、正極合材スラリーとして用いることができる。また、正極合材層が導電材を含む場合、第1混合物または第2混合物に導電材を添加して正極合材スラリーを調製することができる。スラリー調製工程(S1)は、第1混合物または第2混合物に導電材を添加する導電材添加工程をさらに含むことができる。導電材添加工程は、第1工程後、第2工程前に行ってよく、すなわち第1工程後、第2工程前に導電材を第1混合物に添加してよい。あるいは、導電材添加工程は、第2工程と同時に行ってよく、すなわち第2工程においてヘテロ環含有化合物と共に導電材を添加してよい。あるいは、導電材添加工程は、第2工程後に行ってよく、すなわち第2混合物に導電材を添加してよい。導電材は分散媒と共に添加することができる。
【0063】
導電材添加工程において、例えば第1混合物または第2混合物と導電材とを固形分が70~83%となるように20~40rpmの回転速度で混練することができる。
【0064】
塗布工程(S2)において、正極合材スラリーを基材の表面に塗工することにより、塗膜を形成する。塗工は任意の塗工装置を用いることができる。
【0065】
乾燥工程(S3)において、例えば熱風乾燥機等により塗膜を加熱して乾燥させ、乾燥塗膜を形成する。圧縮工程(S4)は、乾燥塗膜を、任意の圧縮装置を用いて圧縮して正極合材層12を形成することを含み得る。乾燥後の塗膜が圧縮され、正極合材層12が形成され、正極板10が完成する。正極板10は、電池の仕様に応じて、所定の平面サイズに切断され得る。正極板10は、例えば帯状の平面形状を有するように切断されてもよい。正極板10は、例えば矩形状の平面形状を有するように切断されてもよい。
【0066】
<非水電解質二次電池>
本開示の非水電解質二次電池(以下、電池ともいう)はリチウムイオン電池であることができる。図3は、本実施形態における電池の一例を示す概略図である。図3に示す電池100は、例えば電動車両の主電源または動力アシスト用電源等に用いるリチウムイオン電池であってよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。電池100は、例えば1~200Ahの定格容量を有していてもよい。
【0067】
電池100は、外装体90を含む。外装体90は、例えば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。封口板91は、外装缶92の開口部を塞いでいる。例えばレーザ加工等により、封口板91と外装缶92とが接合されていてもよい。なお、外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えばパウチ形等であってもよい。すなわち外装体90は、Alラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0068】
外装体90は、電極体50および非水電解質(不図示)を収納する。封口板91には、正極端子81と負極端子82とが設けられている。封口板91に、注入口(不図示)、ガス排出弁(不図示)等がさらに設けられていてもよい。注入口から外装体90の内部に電解液が注入され得る。注入口は、例えば封止栓等によって閉塞され得る。
【0069】
正極集電部材71は、正極端子81と電極体50とを接続している。正極集電部材71は、例えばAl板等であってもよい。負極集電部材72は、負極端子82と電極体50とを接続している。負極集電部材72は、例えば銅(Cu)板等であってもよい。
【0070】
図4は、本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。図2の電極体50はW軸方向に平行な巻回軸Rを有する巻回型電極体である。電極体50は、正極板10、セパレータ30および負極板20を含む。すなわち電池100は正極板10を含む。正極板10は、正極合材層12と正極芯材11とを含む。
【0071】
負極板20は通常、負極芯材21と、負極芯材21の片面または両面に形成された負極合材層22とを有する。負極芯材21は例えば銅および銅合金等の銅材料を用いて構成された金属箔である。負極合材層22は負極活物質を含み、さらに導電材およびバインダ等を含んでいてもよい。
【0072】
負極活物質としては公知の材料が挙げられ、例えば、黒鉛等の炭素系活物質粒子、およびSi、Sn、Sb、Bi、TiおよびGe等からなる群より選択される元素を含む金属系活物質粒子等が挙げられる。導電材は、上記したものが挙げられる。バインダは、CMC、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリアクリル酸;スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。CMCは増粘剤としても使用し得る。
【0073】
セパレータ30は、単層構造または多層構造の基材を有し、基材の少なくとも片面に機能層を有していてもよい。基材は、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなるフィルムおよび不織布等の多孔質シートであってもよい。機能層は、例えば接着層および/または耐熱層が挙げられる。接着層は、例えば接着剤によって形成できる。耐熱層は、例えばフィラーおよびバインダを含むことができる。
【0074】
電解液は、好ましくは有機溶媒等の非水溶媒中に電解質を含有させたものである。電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiFSO、およびLiB(C等のうちの1種以上が挙げられる。非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびジエチルカーボネート(DEC)等のうちの1種以上が挙げられる。電解液は、さらに、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート等の添加剤を含んでいてもよい。
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例0076】
[正極活物質]
正極活物質として、表1に示すNiとCoとMnのモル比(以下、NCM比ともいう)、平均粒子径D50およびBET比表面積を有するリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質A~Hとして準備した。正極活物質A~HにおいてLiとLi以外の金属元素(Me)のモル比(Li:Me)は1.05:1であった。正極活物質A~D、GおよびHは、単粒子または2~5個の一次粒子が凝集した二次粒子(第1活物質)であった。正極活物質EおよびFは、50個以上の一次粒子が凝集した二次粒子(第2活物質)であった。BET比表面積は、比表面積測定装置を用いて測定した。
【0077】
【表1】
【0078】
<試験例1>
正極活物質Aと、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、正極活物質A:AB:PVDF=97.5:1.5:1.0の質量比で混合し、得られた混合物にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。Al箔製の正極芯材の両面に、正極合材スラリーを塗布し、乾燥して正極合材層を形成した。圧延ローラーにより正極合材層をロールプレスした後、所定の寸法に裁断して試験例1の正極板を作製した。
【0079】
<試験例2>
正極活物質Aと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを混合後、この混合溶液に、導電材としてのアセチレンブラック(AB)とヘテロ環含有化合物を含有する添加剤とを、正極活物質A:AB:PVDF:ヘテロ環含有化合物=97.495:1.5:1.0:0.005の質量比となるように添加して混合し、正極合材スラリーを調製した。ヘテロ環含有化合物を含有する添加剤は、式(1)または式(2)で表されるヘテロ環含有化合物を35質量%含有するN-メチルピロリドン溶液(日産化学株式会社製「SA-426H」)を用いた。Al箔製の正極芯材の両面に、正極合材スラリーを塗布し、乾燥して正極合材層を形成した。圧延ローラーにより正極合材層をロールプレスした後、所定の寸法に裁断して試験例2の正極板を作製した。
【0080】
<試験例3~10>
試験例2において表2に示す添加剤量としたこと以外は、試験例2と同様にして正極板を作製した。
【0081】
<試験例11~20>
試験例2において表2に示す正極活物質の種類および添加剤量としたこと以外は、試験例2と同様にして正極板を作製した。
【0082】
[評価用リチウムイオン二次電池の作製]
負極活物質としての黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=98:1:1の質量比で、イオン交換水中で混合し、負極合材スラリーを調製した。この負極合材スラリーを、銅箔上に塗布し、乾燥を行い、負極合材層を形成した。圧延ローラーにより負極合材層を、所定の密度となるようにロールプレスした後、所定の寸法に裁断して負極板を作製した。
【0083】
セパレータとして、多孔性ポリオレフィンシートを用意した。それぞれの試験例の正極板と、負極板とをセパレータが介在するようにしつつ重ね合わせ、積層型電極体を作製した。
【0084】
積層型電極体に電極端子を取り付け、これをアルミラミネートシートで構成される電池ケースに挿入し、非水電解質を注液した。なお、非水電解質には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:EMC:DMC=30:70の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させ、ビニレンカーボネートを0.3質量%となるように添加したものを用いた。その後、電池ケースを封止することによって評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0085】
[充電容量の評価]
評価用リチウムイオン二次電池を、25℃の温度条件下、電流密度0.2mA/cmで、4.3Vvs.Li/Li+の電位となるまで定電流充電を行い、さらに、4.3Vvs.Li/Li+の電位で、0.04mA/cmの電流密度となるまで定電圧充電を行い、正極活物質の単位質量当たりの充電容量[mAh/g]を測定した。結果を表2に示す。
【0086】
[出力抵抗の評価]
評価用リチウムイオン二次電池の充電率(SOC)が50%(初期放電容量に対する充電容量が50%)の時点の出力抵抗を25℃で測定した。結果を表2に示す。出力抵抗の判定は、出力抵抗値が0.090Ω以上を「×」、0.090Ω未満0.080Ω以上を「△」、0.080Ω未満を「○」とした。
【0087】
【表2】
【0088】
ヘテロ環含有化合物を所定の含有量で含み、所定のBET比表面積を有する正極活物質を含む試験例3~9、11および12は出力抵抗が良好であり、充電容量の低下を抑制することができた。これに対し、ヘテロ環含有化合物を含まない試験例1は正極芯材(Al箔)が腐食し、出力抵抗が上昇した。また、試験例2はヘテロ環含有化合物の含有量が少なかったため出力抵抗が上昇した。一方、試験例10は、ヘテロ環含有化合物の含有量が多かったため出力抵抗が上昇すると共に充電容量が低下した。
【0089】
試験例13は、ヘテロ環含有化合物を所定の含有量で含むものの、正極活物質のBET比表面積が大きすぎるため、正極芯材(Al箔)が腐食し、出力抵抗が上昇した。また、試験例14は、ヘテロ環含有化合物の含有量を試験例13より多くしたものの、出力抵抗が上昇した。
【0090】
試験例15はヘテロ環含有化合物を含まないため、正極芯材(Al箔)が腐食し、出力抵抗が上昇した。また、試験例15と同じ正極活物質を含む試験例16は、ヘテロ環含有化合物を所定の含有量で含むことで出力抵抗が良好となり、充電容量の低下を抑制することができた。
【0091】
試験例17は正極活物質のBET比表面積が小さいもののNi含有量が高く、ヘテロ環含有化合物を含まないため、正極芯材(Al箔)が腐食し、出力抵抗が上昇した。
【0092】
試験例18は、所定のBET比表面積を有する正極活物質を含むものの、ヘテロ環含有化合物を含まないため、正極芯材(Al箔)が腐食し、出力抵抗が上昇した。これに対し、試験例19は、所定のBET比表面積を有する正極活物質を含み、ヘテロ環含有化合物を所定の含有量で含むため、出力抵抗が良好であり、充電容量の低下を抑制することができた。
【0093】
試験例20は、Ni含有量が低いため、ヘテロ環含有化合物を含まずとも出力抵抗の上昇は見られなかったが、充電容量が低下した。
【符号の説明】
【0094】
10 正極板、11 正極芯材、12 正極合材層、20 負極板、21 負極芯材、22 負極合材層、30 セパレータ、40 積層体、50 電極体、71 正極集電部材、72 負極集電部材、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 封口板、92 外装缶、100 電池。
図1
図2
図3
図4