(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026008417
(43)【公開日】2026-01-19
(54)【発明の名称】エマルションインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/023 20140101AFI20260108BHJP
【FI】
C09D11/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109100
(22)【出願日】2024-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩二
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AE13
4J039BA04
4J039BA30
4J039BC02
4J039BC07
4J039BE22
4J039BE30
4J039CA06
4J039EA11
4J039EA19
4J039EA42
4J039GA04
(57)【要約】
【課題】時間を空けて印刷を再開した際の印刷適性に優れるエマルションインクを提供することを課題とする。
【解決手段】下記の方法にて測定される水相の質量減少率が50質量%以下である、エマルションインク。1)内径58.5mmの円形シャーレに水相15gを入れる、2)水相を入れたシャーレを室温23℃、相対湿度50%の環境下に開放状態で放置し、96時間放置する、3)96時間放置後の水相の質量を測定し、質量減少率を算出する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の方法にて測定される水相の質量減少率が50質量%以下である、エマルションインク。
1)内径58.5mmの円形シャーレに水相15gを入れる
2)水相を入れたシャーレを室温23℃、相対湿度50%の環境下に開放状態で放置し、96時間放置する
3)96時間放置後の水相の質量を測定し、質量減少率を算出する
【請求項2】
前記の方法にて測定される水相の質量減少率が5質量%以下である、請求項1に記載のエマルションインク。
【請求項3】
前記水相が、水溶性の塩を含む、請求項1に記載のエマルションインク。
【請求項4】
前記水溶性の塩が、潮解性を有するものである、請求項3に記載のエマルションインク。
【請求項5】
前記塩が塩化カルシウムであり、水相における塩化カルシウムの含有量が16.2質量%以上である、請求項3に記載のエマルションインク。
【請求項6】
前記塩が塩化マグネシウムであり、水相における塩化マグネシウムの含有量が13.0質量%以上である、請求項3に記載のエマルションインク。
【請求項7】
前記水相が、沸点が100℃を超える水溶性のアルコール化合物を含む、請求項1に記載のエマルションインク。
【請求項8】
前記アルコール化合物がグリセリンであり、水相におけるグリセリンの含有量が、35.2質量%以上である、請求項7に記載のエマルションインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はエマルションインクに関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションインクは主に孔版印刷に用いられるインクである。孔版印刷用のエマルションインクには、印刷に適した粘度、印刷紙に対するインクの定着性、乾燥性、経時安定性、時間を空けて印刷を再開した際の印刷適正等、様々な性能が求められる。
【0003】
特許文献1には、エマルションの経時的な粘度変化が少なく、常に一定の品質の印刷物を得ることを目的とした発明として、油相および水相を有する油中水(W/O)型エマルションインキにおいて、水相の23℃におけるpHが6.0~12.0であることを特徴とする孔版印刷用エマルションインキが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、時間を空けて印刷を再開した際の印刷適性に優れるエマルションインクを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、下記の方法にて測定される水相の質量減少率が50質量%以下である、エマルションインクに関する。
1)内径58.5mmの円形シャーレに水相15gを入れる
2)水相を入れたシャーレを室温23℃、相対湿度50%の環境下に開放状態で放置し、96時間放置する
3)96時間放置後の水相の質量を測定し、質量減少率を算出する
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、時間を空けて印刷を再開した際の印刷適性に優れるエマルションインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、塩化カルシウム水溶液の濃度と96時間放置後の質量変化率の関係をプロットしたグラフである。
【
図2】
図2は、塩化マグネシウム水溶液の濃度と96時間放置後の質量変化率の関係をプロットしたグラフである。
【
図3】
図3は、グリセリン水溶液の濃度と96時間放置後の質量変化率の関係をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳しく説明するが、本開示はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本開示では、アクリル樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの誘導体を単独で又は組み合わせて重合した樹脂を総称して意味する。(メタ)アクリル酸はアクリル酸及びメタクリル酸を総称して意味し、(メタ)アクリル酸エステルはアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを総称して意味する。
【0011】
一実施形態であるエマルションインクは、下記の方法にて測定される水相の質量減少率が50質量%以下である、エマルションインクである。
1)内径58.5mmの円形シャーレに水相15gを入れる
2)水相を入れたシャーレを室温23℃、相対湿度50%の環境下に開放状態で放置し、96時間放置する
3)96時間放置後の水相の質量を測定し、質量減少率を算出する
【0012】
上記の方法にて水相の質量減少率を測定するに際し、インクから水相を分離する方法は特に限定されないが、例えば、インクを高温条件下(例えば70~100℃の範囲)で密閉保管する方法等が挙げられる。また、水相の質量減少率は、エマルションにする前の原料段階の水相において測定される値であってもよい。
【0013】
上記の方法で用いるシャーレは内径が58.5mmの円形のものであるが、大きさの異なるシャーレで代替することもできる。この場合、シャーレ中の水相の液面の面積に応じてシャーレに入れる水相の量を変更する。例えば、シャーレ中の水相の液面の面積が半分となる大きさのシャーレを用いる場合には、水相の量も半分の7.5gとする。
【0014】
上記の方法にて測定される水相の質量減少率は、時間を空けて印刷を再開した際の印刷適性により優れ、特に、前版の残像が生じ難い点では、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。水相の質量減少率の下限値は特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。
【0015】
上記の方法にて測定される水相の質量減少率の調整方法は特に限定されないが、例えば、水相に添加する溶質の種類と量によって調整することができる。溶質としては、例えば、水溶性の酸、水溶性の塩基、水溶性の塩、沸点が100℃を超える水溶性のアルコール化合物等が挙げられる。これらの中でも、インクの安全性、安定性等の観点から、水溶性の塩及び水溶性のアルコールが好ましい。
【0016】
水溶性の塩(以下これを「塩(A)」とよぶことがある)について、陽イオンとしては、例えば、Na+、K+等の1価の金属イオン;Ca2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Ba2+等の多価金属イオン;NH4
+等が挙げられる。陰イオンとしては、例えば、F-、Cl-、Br-等のハロゲン化物イオン;硝酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、硫酸イオン、塩素酸イオン、リン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン等が挙げられる。塩(A)の中でも、時間を空けて印刷を再開した際の印刷適性により優れることから、潮解性の塩が好ましく、具体的には、CaCl2、MgCl2が好ましい。
【0017】
沸点が100℃を超える水溶性のアルコール化合物(以下これを「アルコール(B)」とよぶことがある)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。これらの中でも、時間を空けて印刷を再開した際の印刷適性により優れることから、沸点が180℃以上のものが好ましく、グリセリンが特に好ましい。
【0018】
塩(A)とアルコール(B)とは、それぞれ、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。また、塩とアルコールとを組み合わせて用いてもよい。塩(A)を二種類以上併用する場合、その組み合わせに特に制限はないが、塩(A)の析出が生じ難い点では、陽イオン又は陰イオンのどちらか一方が共通するものを用いることが好ましい。アルコール(B)を二種類以上併用する場合、又は、塩(A)とアルコール(B)とを併用する場合において、アルコールの選択に特に制限はなく、所望のインク性能等に応じて任意のものを用いることができる。
【0019】
上記の方法にて測定される水相の質量減少率を50質量%以下とするための各溶質の添加量は、水相が含む溶質の種類が一種類の場合には、水溶液における溶質の濃度と一定時間放置後の質量変化率の関係から求めることができる。
図1~3は、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、及びグリセリン水溶液について、溶質の濃度と96時間放置後の質量変化率の関係をプロットしたグラフである。質量変化率の測定は、上記の方法同様、直径58.5mmの円形シャーレに水溶液15gを入れ、23℃、相対湿度50%の環境下に開放状態で96時間放置して行った。
【0020】
図1から分かる通り、溶質が塩化カルシウムの場合には、濃度が16.2質量%以上であれば、上記の方法にて測定される質量減少率が50質量%以下となる。濃度が30.1質量%以上であれば、上記の方法にて測定される質量減少率が5質量%以下となる。また濃度が32.6質量%のときに、上記の方法にて測定される質量変化率が0質量%となる。濃度が32.16質量%を超えると、開放放置により空気中の水分を取り込むことから、質量は増加する。
【0021】
同様に、
図2から分かる通り、溶質が塩化マグネシウムの場合には、濃度が13.0質量%以上であれば、上記の方法にて測定される質量減少率が50質量%以下となる。濃度が24.8質量%以上であれば、上記の方法にて測定される質量減少率が5質量%以下となる。また濃度が26.1質量%のときに、上記の方法にて測定される質量変化率が0質量%となる。濃度が26.1質量%を超えると、開放放置により空気中の水分を取り込むことから、質量は増加する。
【0022】
図3から分かる通り、溶質がグリセリンの場合には、濃度が35.2質量%以上であれば、上記の方法にて測定される質量減少率が50質量%以下となる。濃度が67.6質量%以上であれば、上記の方法にて測定される質量減少率が5質量%以下となる。また濃度が71.2質量%のときに、上記の方法にて測定される質量変化率が0質量%となる。濃度が71.2質量%を超えると、開放放置により空気中の水分を取り込むことから、質量は増加する。
【0023】
水相が複数種の溶質を含む場合には、各溶質において所望の質量減少率となる水溶液を作成し、それらを任意の割合で配合することにより、水相の質量減少率を調整することができる。例えば、上記の方法にて測定される質量減少率が50質量%以下となり、かつ、塩化カルシウムとグリセリンとを含む水相は、塩化カルシウム濃度13.0質量%の水溶液と、グリセリン濃度35.2質量%のグリセリン水溶液を任意の割合で配合して得られる。
【0024】
水相は、上記の方法にて測定される質量減少率を調整するための溶質となる化合物の他、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤等が挙げられる。これらその他の成分の含有量は所望のインク性能等に応じて適宜調整されるが、例えば、水相の質量に対し0.01~10質量%の範囲であってよい。
【0025】
一実施形態のエマルションインクは、水相が上記の条件を満たしていれば、その他構成については特に制限されず、例えば、一般的に知られているエマルションインクの構成としてよい。また、一実施形態のエマルションインクは、一般的な孔版印刷用のエマルションインクと同様、油相中に水相が分散される油中水型エマルションインクであってよい。
【0026】
エマルションインクの油相を構成する有機溶剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。より具体的には、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れでもよく、また、単一層を形成する限りこれらの組み合わせであってもよい。また、有機溶剤は非水溶性であることが好ましい。
【0027】
非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤が挙げられる。脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤が挙げられる。
【0028】
これらの市販品としては、ENEOS株式会社製「0号ソルベントL」、「0号ソルベントM」、「0号ソルベントH」、「カクタスノルマルパラフィンN-10」、「カクタスノルマルパラフィンN-11」、「カクタスノルマルパラフィンN-12D」、「カクタスノルマルパラフィンN-13」、「カクタスノルマルパラフィンN-14」、「カクタスノルマルパラフィンYHNP」、「カクタスノルマルパラフィンSHNP」、「アイソゾール300」、「アイソゾール400」、「テクリーンN16」、「テクリーンN20」、「テクリーンN22」、「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」、「AFソルベント6号」、「AFソルベント7号」、「ナフテゾール160」、「ナフテゾール200」、「ナフテゾール220」;エクソンモービル社製「アイソパーG」、「アイソパーH BHT」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「エクソールD40」、「エクソールD60」、「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD130」;株式会社MORESCO製「モレスコホワイトP-60」、「モレスコホワイトP-70」、「モレスコホワイトP-80」、「モレスコホワイトP-100」、「モレスコホワイトP-120」、「モレスコホワイトP-150」、「モレスコホワイトP-200」、「モレスコホワイトP-260」、「モレスコホワイトP-350P」等が挙げられる。芳香族炭化水素溶剤としては、エクソンモービル社製「ソルベッソ100」、「ソルベッソ150」、「ソルベッソ200」、「ソルベッソ200ND」等が挙げられる。
【0029】
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、植物油等を好ましく挙げることができる。脂肪酸エステル系溶剤は、例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2-オクチルデシル、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸イソブチルエステル、トール油脂肪酸メチルエステル、トール油脂肪酸イソブチルエステル等が挙げられる。
【0030】
高級アルコール系溶剤は、例えば、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等が挙げられる。
【0031】
高級脂肪酸系溶剤は、例えば、ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸が挙げられる。
【0032】
植物油は、例えば、ヤシ油、パーム油、大豆油、こめ油、オリーブ油、ひまし油、アマニ油等が挙げられる。
【0033】
エマルションインク中の有機溶剤の含有量は、印刷適性等の観点から、10~30質量%の範囲であってよい。
【0034】
エマルションインクが含む色材は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。エマルションインクにおいて色材は油相と水相のどちらか一方又は両方に含まれていてもよいが、油相に含まれることが好ましい。色材は顔料、染料、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0035】
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料が挙げられる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0036】
染料としては、例えば、分散染料、酸性染料、反応染料、直接染料、建染染料等の合成染料等が挙げられる。
【0037】
エマルションインク中の色材の含有量は、インクの発色性の観点から、1~15質量%の範囲であってよい。
【0038】
色材として顔料を用いる場合には、顔料の分散安定性を高める等の目的で、顔料分散剤を用いてもよい。顔料分散剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。顔料分散剤としては、例えば、アルキルアミン系高分子化合物、アルミニウムキレート系化合物、スチレン/無水マレイン酸系共重合高分子化合物、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、脂肪族系多価カルボン酸、高分子ポリエステルのアミン塩類、ポリエーテル、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩類、長鎖ポリアミノアミドと高分子酸ポリエステルの塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩類、α-オレフィンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸塩類等が挙げられる。
【0039】
エマルションインクは樹脂を含んでいてもよい。樹脂は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。エマルションインクにおいて樹脂は油相と水相のどちらか一方又は両方に含まれていてもよいが、油相に含まれることが好ましい。樹脂の種類は特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトンレジン、硬化レジン、アクリル樹脂、ゴム誘導体、テルペン樹脂等、これらの樹脂の誘導体等が挙げられる。
【0040】
エマルションインク中の樹脂の含有量は、印刷適性等の観点から、5~20質量%の範囲であってよい。
【0041】
エマルションインクは、エマルションを安定化させるための乳化剤を含んでいてもよい乳化剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。エマルションインクにおいて乳化剤は油相と水相のどちらか一方又は両方に含まれていてもよいが、油相に含まれることが好ましい。乳化剤としては、各種の界面活性剤が挙げられ、例えば、金属石鹸、高級アルコール硫酸エステル化塩、ポリオキシエチレン付加物の硫酸エステル化塩等の陰イオン性界面活性剤;1~3級アミン塩、4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;(ポリ)グリセリン等の多価アルコールと脂肪酸のエステル、脂肪酸のポリオキシエチレン・エーテル、高級アルコールのポリオキシエチレン・エーテル、アルキル・フェノール・ポリオキシエチレン・エーテル、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリオキシエチレン・エーテル、ひまし油のポリオキシエチレン・エーテル、ポリオキシ・プロピレンのポリオキシエチレン・エーテル、脂肪酸のアルキロールアマイド等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0042】
エマルションインク中の界面活性剤の含有量は、印刷適性等の観点から、0.1~5質量%の範囲であってよい。
【0043】
エマルションインク中の水相と油相との質量比は任意であるが、印刷適性等の観点から、両者の合計質量に対する水相の割合が50~80質量%の範囲であることが好ましい。
【0044】
エマルションインクを製造する方法は特に限定されず、例えば、一般的なエマルションインクと同様の方法にて製造することができる。具体的には、3本ロールミル等によって油相を得た後、油相を撹拌しながらこれに水相を滴下し、乳化させる方法等により製造することができる。
【0045】
エマルションインクは一般に孔版印刷用に用いられており、一実施形態のエマルションインクも一般的なエマルションインク同様、孔版印刷用に用いることができる。孔版印刷方法の一例としては、製版した孔版原紙を準備する工程と、製版した孔版原紙と記録媒体を圧接させることによって孔版原紙の穿孔部からインクを通過させて記録媒体にインクを転移させる工程とを有する。孔版印刷装置は、特に限定されないが、操作性に優れる点からデジタル孔版印刷装置が好ましい。製版原紙、いわゆるマスターは、樹脂等のフィルムであり、サーマルヘッド等を用いて熱によって穿孔部が形成される。マスターは、用紙に接し穿孔部が形成されるフィルムとともに、フィルムのインクが供給される側の面に形成される多孔質支持体を備えることができる。多孔質支持体には和紙を好ましく用いることができる。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態を以下に示す。
<1>下記の方法にて測定される水相の質量減少率が50質量%以下である、エマルションインク。
1)内径58.5mmの円形シャーレに水相15gを入れる
2)水相を入れたシャーレを室温23℃、相対湿度50%の環境下に開放状態で放置し、96時間放置する
3)96時間放置後の水相の質量を測定し、質量減少率を算出する
【0047】
<2>前記の方法にて測定される水相の質量減少率が5質量%以下である、前記<1>に記載のエマルションインク。
【0048】
<3>前記水相が、水溶性の塩を含む、前記<1>又は<2>に記載のエマルションインク。
【0049】
<4>前記水溶性の塩が、潮解性を有するものである、前記<4>に記載のエマルションインク。
【0050】
<5>前記塩が塩化カルシウムであり、水相における塩化カルシウムの含有量が16.2質量%以上である、前記<3>又は<4>に記載のエマルションインク。
【0051】
<6>前記塩が塩化マグネシウムであり、水相における塩化マグネシウムの含有量が13.0質量%以上である、前記<3>又は<4>に記載のエマルションインク。
【0052】
<7>前記水相が、沸点が100℃を超える水溶性のアルコール化合物を含む、前記<1>又は<2>に記載のエマルションインク。
【0053】
<8>前記アルコール化合物がグリセリンであり、水相におけるグリセリンの含有量が、35.2質量%以上である、前記<7>に記載のエマルションインク。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の実施例及び比較例を通して、特に説明のない限り、共通する成分は同一のものである。特に説明のない限り、「%」は「質量%」を示す。
【0055】
実施例1~7及び比較例1
下記の要領にてエマルションインクを製造し、各種の評価試験を行った。エマルションインクの組成及び評価結果を表1に示す。
【0056】
[エマルションインクの製造]
表1の油相欄に示す割合で各成分を配合し、3本ロールミルを用いて顔料を分散させて油相を得た。表1の水相欄に示す割合で各成分を配合し、水相を得た。油相をディスパーサーにて撹拌しながら、油相中に水相を添加し、エマルションインクを得た。
【0057】
[水相の質量減少率の測定]
エマルションインク化する前の水相について、下記の方法にて質量減少率を測定した。
1)内径58.5mmの円形シャーレに水相15gを入れる
2)水相を入れたシャーレを室温23℃、相対湿度50%の環境下に開放状態で放置し、96時間放置する
3)96時間放置後の水相の質量を測定し、質量減少率を算出する
【0058】
[印刷物の製造]
23℃の温度条件下、先で得たエマルションインクを理想科学工業株式会社製の孔版印刷機「SF635」に装填した。中央に市松パターンを配し、周囲に10個の黒丸を配した原稿(1)を着版させて、200枚の連続印刷を行った。このときに得た200枚目の印刷物を標準印刷物とした。
印刷機の電源を切った後、16時間放置した。16時間後に再度電源を入れ、オートアイドリングを切った条件にて、原稿(1)において市松パターンの代わりに網点パターンを配した原稿(2)を着版させて、100枚の連続印刷を行った。この100枚の印刷物を評価対象印刷物とした。
【0059】
[印刷適正評価1:カスレ枚数の評価]
100枚尚評価対象印刷物を目視確認し、印刷物における原稿(2)の画像に関して印刷画像に欠損及び濃度不足がなく、所望の印刷画像が得られるまでの枚数を評価した。
【0060】
[印刷適正評価2:残像枚数の評価]
100枚尚評価対象印刷物を目視確認し、印刷開始から、原稿(1)の市松パターンの残像が視認できなくなるまでの枚数を評価した。
【0061】
[印刷適正評価3:印刷濃度上昇値の評価]
標準印刷物と、評価対象印刷物のうち10枚目の印刷物とについて、印刷から24時間後における黒丸部の印刷濃度(OD値)を測定した。両値の差を、標準印刷物からの印刷濃度(OD値)上昇値として評価した。
【0062】
【0063】
表1中の各成分の詳細は以下の通り
顔料:三菱ケミカル株式会社製「カーボンブラックMA8」、カーボンブラック
樹脂:荒川化学株式会社製「アラキード251」、アルキド樹脂、不揮発分97~100質量%
有機溶剤(1):米サラダ油
有機溶剤(2):ENEOS株式会社製「AFソルベント5号」
界面活性剤:日光ケミカルズ株式会社製「デカグリン5-OV」、ペンタオレイン酸ポリグリセリル
pH調整剤:ホウ砂
【0064】
表1中に示す通り、前述の方法にて測定される水相の質量減少率が50質量%以下である各実施例のエマルションインクは、時間を空けて印刷を再開した際の印刷適性に優れるものとなった。他方、前述の方法にて測定される水相の質量減少率が50質量%を超える比較例1のエマルションインクは、時間を空けて印刷を再開した際にカスレや残像が生じやすく、印刷適性に劣るものとなった。