(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2026009774
(43)【公開日】2026-01-21
(54)【発明の名称】レーザアニールシステム及びレーザアニール方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/268 20060101AFI20260114BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20260114BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20260114BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01L21/268 G
H01L21/268 J
H01L21/265 602C
H01S3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109910
(22)【出願日】2024-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋平
(72)【発明者】
【氏名】薮田 久人
(72)【発明者】
【氏名】片山 慶太
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AD06
5F172EE22
5F172ZZ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板に熱損傷を与えることなく、耐熱性が乏しい材料に対しても、下層の材料や構造に熱影響を避けるアニールシステム及び方法を提供する。
【解決手段】基板上の薄膜にパルスレーザ光を照射することで薄膜をアニールするレーザアニールシステム10Aは、パルスレーザ光を出力するレーザ装置12と、パルスレーザ光を薄膜に照射する光学系である照射光学システム70と、パルスレーザ光を連続照射するバースト期間と、パルスレーザ光の連続照射を抑制する抑制期間とを繰り返すバースト照射を行うことにより、薄膜の同一箇所にパルスレーザ光を照射する制御を行うプロセッサであるレーザアニール制御プロセッサ100及びレーザ制御プロセッサ28を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の薄膜にパルスレーザ光を照射することで前記薄膜をアニールするレーザアニールシステムであって、
前記パルスレーザ光を出力するレーザ装置と、
前記パルスレーザ光を前記薄膜に照射する光学系と、
前記パルスレーザ光を連続照射するバースト期間と、前記パルスレーザ光の照射を抑制する抑制期間とを繰り返すバースト照射を行うことにより、前記薄膜の同一箇所に前記パルスレーザ光を照射する制御を行うプロセッサとを備える、
レーザアニールシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザアニールシステムであって、
前記薄膜に照射される前記パルスレーザ光のフルエンスは、前記薄膜のアブレーション閾値未満である、
レーザアニールシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザアニールシステムであって、
前記プロセッサは、
前記薄膜に照射される前記パルスレーザ光のフルエンスが前記薄膜のアブレーション閾値未満となるように前記フルエンスを制御する、
レーザアニールシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザアニールシステムであって、
前記バースト期間中に前記薄膜の表面温度が前記薄膜の結晶化閾値温度を超え、前記バースト期間及び前記抑制期間に亘って前記薄膜と前記基板との界面の温度が前記基板の損傷閾値温度未満に維持されるように、前記バースト照射の照射条件が設定される、
レーザアニールシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザアニールシステムであって、
前記照射条件は、前記バースト期間における前記パルスレーザ光のパルスエネルギ、繰り返し周波数、パルス数、前記抑制期間の長さ、及びバースト数のうち少なくとも1つのパラメータを含む、
レーザアニールシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のレーザアニールシステムであって、
前記プロセッサは、
前記バースト期間中に前記薄膜の表面温度が前記薄膜の結晶化閾値温度を超え、前記バースト期間及び前記抑制期間に亘って前記薄膜と前記基板との界面の温度が前記基板の損傷閾値温度未満に維持されるように、前記バースト照射の動作を制御する、
レーザアニールシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザアニールシステムであって、
前記レーザアニールシステムは、前記基板を冷却する冷却機構を備える、
レーザアニールシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のレーザアニールシステムであって、
複数の前記バースト期間のうち、先頭のバースト期間の前記パルスレーザ光は、他のバースト期間の前記パルスレーザ光よりも高いパルスエネルギ、高い繰り返し周波数、又は多いパルス数で照射される、
レーザアニールシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザアニールシステムであって、
複数の前記抑制期間のうち、前記先頭のバースト期間の直後の抑制期間は、前記他の抑制期間よりも長い、
レーザアニールシステム。
【請求項10】
請求項8に記載のレーザアニールシステムであって、
前記先頭のバースト期間中に前記薄膜の表面温度が前記薄膜の結晶核生成閾値温度を超え、前記他のバースト期間中に前記薄膜の表面温度が前記結晶核生成閾値温度未満に維持され、かつ前記他のバースト期間中に前記薄膜の表面温度が前記薄膜の結晶成長閾値温度を超えるように、前記バースト照射の照射条件が設定される、
レーザアニールシステム。
【請求項11】
請求項8に記載のレーザアニールシステムであって、
前記プロセッサは、
前記先頭のバースト期間中に前記薄膜の表面温度が前記薄膜の結晶核生成閾値温度を超え、前記他のバースト期間中に前記薄膜の表面温度が前記結晶核生成閾値温度未満に維持され、かつ前記他のバースト期間中に前記薄膜の表面温度が前記薄膜の結晶成長閾値温度を超えるように、前記バースト照射の動作を制御する、
レーザアニールシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のレーザアニールシステムであって、
前記抑制期間は、前記パルスレーザ光の照射を止める休止期間、又は前記バースト期間よりも低いパルスエネルギのパルスレーザ光が照射される低出力期間である、
レーザアニールシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のレーザアニールシステムであって、
前記基板をロールトゥロール方式により搬送する搬送機構を備え、
前記搬送機構により前記基板を移動しながら前記薄膜が成膜された被照射物に前記バースト照射を行う、
レーザアニールシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザアニールシステムであって、
前記被照射物に前記パルスレーザ光を照射する複数の照射エリアが前記被照射物の移動方向に沿って所定間隔で配置されている、
レーザアニールシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のレーザアニールシステムであって、
前記プロセッサは、前記被照射物の移動速度、前記照射エリアの幅、及び前記パルスレーザ光の繰り返し周波数から前記同一箇所あたりの照射回数を制御する、
レーザアニールシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のレーザアニールシステムであって、
前記レーザ装置から出力されるパルスレーザ光を前記複数の照射エリアに分配するビームスプリッタを備える、
レーザアニールシステム。
【請求項17】
請求項14に記載のレーザアニールシステムであって、
前記プロセッサは、前記複数の照射エリアのうち、上流側の照射エリアにおける前記パルスレーザ光の照射によって、前記薄膜の表面温度が結晶核生成閾値温度以上になるように照射条件を調整する、
レーザアニールシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のレーザアニールシステムであって、
前記プロセッサは、前記上流側の照射エリア以外の照射エリアにおける前記パルスレーザ光の照射によって、前記薄膜の表面温度が結晶成長閾値温度以上になり、かつ前記結晶核生成閾値温度未満の状態が維持されるように照射条件を調整する、
レーザアニールシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のレーザアニールシステムであって、
前記レーザアニールシステムは、複数の前記レーザ装置を備え、
前記プロセッサは、複数の前記レーザ装置による各パルスレーザ光の出力タイミングを遅延させる制御を行う、
レーザアニールシステム。
【請求項20】
基板上の薄膜にパルスレーザ光を照射することで前記薄膜をアニールするレーザアニール方法であって、
レーザ装置から前記パルスレーザ光を前記レーザ装置が出力することと、
前記パルスレーザ光を光学系によって前記薄膜に照射することと、
前記パルスレーザ光を連続照射するバースト期間と、前記パルスレーザ光の照射を抑制する抑制期間とを繰り返すバースト照射を行うことにより、前記薄膜の同一箇所に前記パルスレーザ光を照射することとを含む、
レーザアニール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザアニールシステム及びレーザアニール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板を用いたフラットパネルディスプレイや太陽電池、透明電極膜には酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide:ITO)が用いられている。このITOは、熱処理(アニール)を行うことでアモルファス状態から結晶化が起こり、電極としての電気伝導性及びキャリア移動度が向上する。
【0003】
透明電極膜は、より高機能なデバイスを実現する光集積素子への適用も期待されている。光集積素子は、集積回路デバイスの最上層にセンサや増幅回路、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路などの能動素子を形成することにより実現される。そのため、より高品質な透明電極膜を製造する技術が求められている。
【0004】
さらに、情報端末機器の多様化にともない、小型・軽量で消費電力が少なく自由に折り曲げが可能なフレキシブルディスプレイやフレキシブルコンピュータ、フレキシブル太陽電池に対する要求が高まりつつある。そのため、PET(Polyethylene terephthalate)などのプラスティック基板上に高品質な透明電極膜を形成する技術の確立が求められている。
【0005】
ガラス基板上、集積回路上、あるいはプラスティック基板上に高品質な透明電極薄膜を形成するためには、これらの基板に熱損傷を与えることなく透明電極膜の結晶化を行う必要がある。ディスプレイに用いられるガラス基板では400℃であるのに対して、集積回路、プラスティック基板であるPETでは150℃以下のプロセス温度が求められている。
【0006】
また、磁気センサ素子などに用いられる金属膜の合金化においても、磁気シールド基板の上に金属材料薄膜を形成し、アニールが行われている。この磁気シールド基板も耐熱性が乏しい材料もあるため、上層の合金化をさせたい表層だけを加熱する必要がある。
【0007】
透明電極や磁気センサ素子以外にも、LSI(Large Scale Integrated circuit)の電極配線の低抵抗化や半導体のプロセスにおいての結晶回復、ドーパントの拡散にアニールが用いられ、下層の材料や構造によっては熱影響を避けたい工程がある。
【0008】
下地基板に熱損傷を与えることなく表層だけをアニールする技術としてレーザアニール法が用いられている。この方法では、熱拡散による基板への損傷を抑制するため、上層の半導体薄膜で吸収されるパルス紫外レーザ光が用いられる。
【0009】
半導体薄膜がシリコンである場合には、波長351nmのXeFエキシマレーザ、波長308nmのXeClエキシマレーザ、波長248nmのKrFエキシマレーザなどが用いられる。これら紫外領域のガスレーザは、固体レーザと比較してレーザ光の干渉性が低く、レーザ光照射面でのエネルギ均一性に優れ、高いパルスエネルギで広い領域を均一にアニールできるという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-202242号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2022/0072663号
【概要】
【0011】
本開示の1つの観点に係るレーザアニールシステムは、基板上の薄膜にパルスレーザ光を照射することで薄膜をアニールするレーザアニールシステムであって、パルスレーザ光を出力するレーザ装置と、パルスレーザ光を薄膜に照射する光学系と、パルスレーザ光を連続照射するバースト期間と、パルスレーザ光の照射を抑制する抑制期間とを繰り返すバースト照射を行うことにより、薄膜の同一箇所にパルスレーザ光を照射する制御を行うプロセッサとを備える。
【0012】
本開示の他の1つの観点に係るレーザアニール方法は、基板上の薄膜にパルスレーザ光を照射することで薄膜をアニールするレーザアニール方法であって、レーザ装置からパルスレーザ光をレーザ装置が出力することと、パルスレーザ光を光学系によって薄膜に照射することと、パルスレーザ光を連続照射するバースト期間と、パルスレーザ光の照射を抑制する抑制期間とを繰り返すバースト照射を行うことにより、薄膜の同一箇所にパルスレーザ光を照射することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、レーザ装置のバースト動作の例を示すグラフである。
【
図2】
図2は、例示的なレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
【
図3】
図3は、比較例1に係るレーザアニール処理においてITO薄膜に照射されるパルスレーザ光のパルスエネルギと、レーザ照射に伴うITO薄膜の表面近傍の温度(薄膜表面温度)の推移とを示すグラフである。
【
図4】
図4は、比較例2に係るレーザアニール処理においてITO薄膜に照射されるパルスレーザ光のパルスエネルギと、レーザ照射に伴う薄膜表面温度の推移と、ITO膜と基板との界面付近の温度(界面温度)の推移との例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るレーザアニールシステムにより実施されるバースト照射の例と、バースト照射による薄膜表面温度及び界面温度の推移の例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施形態1の変形例1に係るレーザアニールシステムにより実施されるバースト照射の例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度及び界面温度の推移の例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施形態1の変形例2に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
【
図8】
図8は、
図7に示す冷却プレート及び被照射物を拡大して示す側面図である。
【
図9】
図9は、冷却動作の制御例を示すタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、パルスレーザ光の連続照射による薄膜表面温度の推移を示すグラフである。
【
図11】
図11は、
図10に示すパルスレーザ光の連続照射による薄膜の結晶化の過程を模式的に示す説明図である。
【
図12】
図12は、バーストパターンの例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度の推移の例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、
図12に示すバースト照射による薄膜の結晶化の過程を模式的に示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係るレーザアニールシステムのバースト照射の例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度の推移の例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、
図15に示すバースト照射による薄膜の結晶化の過程を模式的に示す説明図である。
【
図17】
図17は、実施形態2の変形例1に係るバースト照射の例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度の推移の例を示す。
【
図18】
図18は、実施形態2の変形例2に係るバースト照射の例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度の推移の例を示す。
【
図19】
図19は、実施形態3に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
【
図20】
図20は、レーザアニールシステムに適用されるロールトゥロール方式の搬送機構の例を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、実施形態3の変形例1に係るレーザアニールシステムの構成及び動作を示す説明図である。
【
図22】
図22は、実施形態3の変形例2に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
【
図23】
図23は、実施形態4に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
【
図24】
図24は、レーザアニールシステムによって実現されるバースト照射の例を示すグラフである。
【実施形態】
【0014】
-目次-
1.用語の説明
2.レーザアニールシステムの例
2.1 構成
2.2 動作
3.課題1
4.実施形態1
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
4.4 実施形態1の変形例1
4.4.1 構成
4.4.2 動作
4.4.3 作用・効果
4.5 実施形態1の変形例2
4.5.1 構成
4.5.2 動作
4.5.3 作用・効果
5.課題2
6.実施形態2
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
6.4 実施形態2の変形例1
6.5 実施形態2の変形例2
6.6 その他
7.実施形態3
7.1 構成
7.2 動作
7.3 搬送機構の例
7.4 作用・効果
7.5 実施形態3の変形例1
7.5.1 構成
7.5.2 動作
7.5.3 作用・効果
7.6 実施形態3の変形例2
7.6.1 構成
7.6.2 動作
7.6.3 作用・効果
8.実施形態4
8.1 構成
8.2 動作
8.3 作用・効果
9.ITO薄膜以外の他の用途について
10.プロセッサについて
11.その他
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0016】
1.用語の説明
図1は、レーザ装置のバースト動作の例を示すグラフである。レーザ装置は、バースト動作によってパルスレーザ光を出力することがある。バースト動作とは、ある期間一定の繰り返し周波数でパルスレーザ光を連続出力するバースト期間と、所定の期間パルスレーザ光を出力しない休止期間とを繰り返す動作である。バースト期間中は、レーザ装置からパルスレーザ光が出力される。休止期間中は、パルスレーザ光の出力が停止される。
【0017】
バースト期間と休止期間の繰り返しパターンであるバーストパターンは、バースト期間のパルスエネルギ、繰り返し周波数、パルス数と休止期間の長さ、及びバースト数のうちいずれか、又はこれらのうちの複数を含んだデータによって定義される。バーストパターンは、露光機や加工機などの外部装置によって指示される。
【0018】
バースト信号は、バースト期間中にON、休止期間中にOFFとする信号であって、バースト動作を指定する信号である。
【0019】
2.レーザアニールシステムの例
2.1 構成
図2は、例示的なレーザアニールシステム10の構成を概略的に示す。レーザアニールシステム10は、レーザ装置12と、光路管13と、レーザアニール装置14とを含む。
【0020】
レーザ装置12は、紫外線のパルスレーザ光を出力するレーザ装置である。例えば、レーザ装置12は、F2、ArF、KrF、XeCl、又はXeFをレーザ媒質とする放電励起式レーザ装置であってよい。あるいは、レーザ装置12は、紫外波長を出力する固体レーザ装置であってもよい。
【0021】
レーザ装置12は、発振器20と、モニタモジュール24と、シャッタ26と、レーザ制御プロセッサ28とを含む。
【0022】
発振器20は、チャンバ30と、光共振器32と、充電器36と、パルスパワーモジュル(PPM)38とを含む。
【0023】
チャンバ30には、エキシマレーザガスが封入される。チャンバ30は、一対の電極43、44と、絶縁部材45と、ウインドウ47、48とを含む。
【0024】
光共振器32は、リアミラー33と出力結合ミラー(Output Coupler:OC)34とで構成される。リアミラー33とOC34とのそれぞれは、平面基板に高反射膜と部分反射膜とがコートされる。チャンバ30は、光共振器32の光路上に配置される。
【0025】
PPM38は、スイッチ39と不図示の充電コンデンサとを含む。スイッチ39は、レーザ制御プロセッサ28からの制御信号を伝送する信号ラインと接続される。
【0026】
充電器36は、PPM38の充電コンデンサと接続される。充電器36は、レーザ制御プロセッサ28から充電電圧のデータを受信し、PPM38の充電コンデンサを充電する。
【0027】
モニタモジュール24は、ビームスプリッタ50と、光センサ52とを含む。
【0028】
シャッタ26は、モニタモジュール24から出力されるパルスレーザ光の光路上に配置される。パルスレーザ光の光路は、不図示の筐体及び光路管13によってシールされ、N2ガスなどの不活性ガスでパージされていてもよい。
【0029】
光路管13は、レーザ装置12のパルスレーザ光の出射口とレーザアニール装置14の入射口との間のパルスレーザ光の光路を覆うカバーである。
【0030】
レーザアニール装置14は、照射光学システム70と、フレーム72と、XYZステージ74と、テーブル76と、レーザアニール制御プロセッサ100とを含む。
【0031】
照射光学システム70は、高反射ミラー111、112、113と、アッテネータ120と、照明光学系130と、マスク140と、投影光学系142と、ウインドウ146と、筐体150とを含む。照射光学システム70は、本開示における「光学系」の一例である。
【0032】
高反射ミラー111は、光路管13を通過したパルスレーザ光がアッテネータ120を通過して高反射ミラー112に入射するように配置される。
【0033】
アッテネータ120は、高反射ミラー111と高反射ミラー112との間の光路上に配置される。アッテネータ120は、2枚の部分反射ミラー121、122とそれぞれのミラーへの入射角を可変とする回転ステージ123、124とを含む。
【0034】
高反射ミラー112は、アッテネータ120を通過したパルスレーザ光が高反射ミラー113に入射するように配置される。高反射ミラー113は、入射したパルスレーザ光が照明光学系130のフライアイレンズ134に入射するように配置される。
【0035】
照明光学系130は、フライアイレンズ134と、コンデンサレンズ136とを含む。照明光学系130は、マスク140上を矩形ビームでケーラ照明するように配置される。矩形ビームとは、ビーム内の光強度分布が均一化された矩形状のビームをいう。
【0036】
フライアイレンズ134は、例えば、フライアイレンズ134の焦点面とコンデンサレンズ136の前側焦点面とが一致するように配置される。コンデンサレンズ136は、コンデンサレンズ136の後側焦点面とマスク140の位置とが一致するように配置される。
【0037】
マスク140は、例えば、紫外光を透過する合成石英基板に、金属又は誘電体多層膜のパターンが形成されたフォトマスクである。マスク140は、例えばラインアンドスペースのパターンが形成されている。
【0038】
投影光学系142は、ウインドウ146を介して、マスク140の像が被照射物160の表面で結像するように配置される。投影光学系142は、複数のレンズ143、144の組合せレンズであって、縮小投影光学系であってもよい。
【0039】
ウインドウ146は、投影光学系142と、被照射物160との間のパルスレーザ光路上に配置される。ウインドウ146は、筐体150に設けられた穴に、不図示のOリングなどを介して配置される。ウインドウ146は、エキシマレーザ光を透過するCaF2結晶や合成石英基板であって、両面に反射抑制膜がコートされていてもよい。
【0040】
筐体150には、N2ガスの入口152と出口154とが配置されている。入口152には、不図示の配管を介してN2ガス供給源が接続される。筐体150は、筐体150内に外気が混入するのを抑制するようにOリングなどによってシールされていてもよい。
【0041】
フレーム72には、照射光学システム70とXYZステージ74とが固定される。XYZステージ74の上にテーブル76が固定される。被照射物160は、テーブル76上に固定される。テーブル76は被照射物160を載置する載置台の一例である。
【0042】
被照射物160は、例えば、基板上にa-ITO薄膜がコートされたPET基板であってもよい。
【0043】
2.2 動作
レーザアニール制御プロセッサ100は、レーザアニール時の照射条件パラメータを読込む。具体的には、レーザアニール制御プロセッサ100は、レーザアニールを行う際の目標のフルエンスFa、目標パルスエネルギEt、照射パルス数Na、繰り返し周波数faを読込む。
【0044】
レーザアニール制御プロセッサ100は、目標パルスエネルギEtをレーザ制御プロセッサ28に送信し、照射パルス数Naと繰り返し周波数faとに応じた発光トリガTr1をレーザ制御プロセッサ28に送信する。
【0045】
レーザ制御プロセッサ28は、目標パルスエネルギEtをレーザアニール制御プロセッサ100から受信する。
【0046】
レーザ制御プロセッサ28は、繰り返し周波数faの発光トリガTr1を受信し、発振器20が繰り返し周波数faで発振するように制御する。
【0047】
発振器20から出力されたパルスレーザ光は、モニタモジュール24のビームスプリッタ50によってサンプルされ、光センサ52によってパルスエネルギEが計測される。レーザ制御プロセッサ28は、パルスエネルギEと目標パルスエネルギEtとの差ΔEが0に近づくように、充電器36の充電電圧を制御する。
【0048】
モニタモジュール24のビームスプリッタ50を透過したパルスレーザ光は、光路管13を介してレーザアニール装置14に入射する。
【0049】
レーザアニール装置14に入射したパルスレーザ光は、高反射ミラー111によって反射され、アッテネータ120を通過して減光され、高反射ミラー112によって反射される。この際、レーザアニール制御プロセッサ100は被照射物160の表面(マスク140の像)の位置でのフルエンスが目標のフルエンスFaとなるように、2つの部分反射ミラー121、122の入射角度をそれぞれの回転ステージ123、124によって制御する。
【0050】
高反射ミラー112及び高反射ミラー113を高反射したパルスレーザ光は、照明光学系130によって光強度が空間的に均一化されてマスク140上を照明する。
【0051】
マスク140を透過したパルスレーザ光は、投影光学系142によって、被照射物160の表面に投影される。
【0052】
レーザアニール制御プロセッサ100は、投影光学系142によって転写されるマスク140の像が適切な位置に投影されるようにXYZステージ74を制御する。
【0053】
パルスレーザ光は、投影光学系142を通過して転写結像した領域の被照射物160に照射される。その結果、被照射物160の表面でパルスレーザ光が照射された部分がアニールされる。
【0054】
エキシマレーザは、照射した材料の比較的浅い表面を効率的に加熱できる。このため、レーザ装置12を用いたレーザアニール処理によれば、耐熱温度の低い基板に生成されたITO等の薄膜を、基板への影響を抑制して多結晶化できる。
【0055】
3.課題1
以下、ITO薄膜を例に具体的に説明する。レーザアニールの分野では、加工時間を短くし、単位時間当たりの加工量(スループット)を向上させることが要求されている。かかる要求に応えるために、レーザフルエンスを上げる方法が考えられる。しかし、レーザフルエンスを上げると、ITO薄膜自体がレーザアブレーションしてしまうことがある。ITO薄膜がアブレーションに伴う損傷によって導電性だけでなく透明性も保てなくなる場合がある。したがって、レーザフルエンスは、ITO薄膜がレーザアブレーションを生じない値に制限される。
【0056】
図3は、比較例1に係るレーザアニール処理においてITO薄膜に照射されるパルスレーザ光のパルスエネルギと、レーザ照射に伴うITO薄膜の表面近傍の温度の推移とを示すグラフである。比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。
【0057】
図3には、複数のパルスレーザ光を所定の時間間隔で間欠的に照射する場合の例が示されており、
図3では3パルス分が図示されている。
図3の縦軸はパルスエネルギ又は温度を表し、横軸は時間を表す。ITO薄膜の表面近傍の温度Hs(以下、薄膜表面温度Hsという。)が実線で示され、パルスレーザ光のパルスエネルギがハッチングされたブロックで模式的に示されている。
【0058】
アモルファス状態のITO薄膜をレーザアニールによって結晶化させるには、ITO薄膜の薄膜表面温度Hsを結晶化閾値温度Hcz以上の温度に上昇させる必要があり、そのためにパルスレーザ光のパルスエネルギはある程度の大きさが必要である。結晶化閾値温度Hczは結晶化が起こる温度であり、結晶化温度と同義である。
【0059】
その一方で、ITO薄膜のアブレーション閾値を超える高フルエンスのパルスレーザ光が照射されると、ITO薄膜自体がアブレーションを引き起こす。そのため、パルスレーザ光のフルエンスはアブレーション閾値未満の値に制限される。アブレーション閾値とは、レーザアブレーションが発生するレーザフルエンスの下限値である。
【0060】
図3のように、ITO薄膜に照射されるパルスレーザ光のパルスエネルギは、レーザアブレーションが発生しない閾値エネルギEab未満の値に設定される。閾値エネルギEabは、アブレーション閾値をエネルギに換算した値に相当する。
【0061】
すなわち、
図3に示す比較例1に係るレーザアニール処理では、パルスレーザ光のパルスエネルギを程よく調整して、各パルスの持続時間内で、薄膜表面温度Hsを結晶化閾値温度Hcz以上の温度に上昇させ、かつ、レーザアブレーションしないフルエンスの条件でレーザ照射が行われる。
【0062】
一方、スループットを向上させる他の方法としてレーザ照射の高繰り返し化が考えられる。
図4にその例を示す。
図4は、比較例2に係るレーザアニール処理においてITO薄膜に照射されるパルスレーザ光のパルスエネルギと、レーザ照射に伴う薄膜表面温度Hsの推移と、ITO薄膜と基板との界面の温度Hi(以下、界面温度Hiという。)の推移との例を示すグラフである。界面温度Hiは、ITO薄膜と基板との界面近傍の基板温度と理解してもよい。
【0063】
図4には、パルスレーザ光を所定繰り返し周波数で所定期間照射する場合の例が示されている。
図4の縦軸はパルスエネルギ又は温度を表し、横軸は時間を表す。
図4のように、ITO薄膜に照射するパルスレーザ光を高繰り返し化すると、ITO薄膜に熱が蓄積し、薄膜表面温度Hsが結晶化閾値温度Hcz以上の状態で長く維持されることがある。この状態が続くと、結晶核が生成され続け、最終的な結晶粒が小さくなってしまう。
【0064】
また、高繰り返し化による蓄熱効果は、ITO薄膜の表面近傍だけでなく、ITO薄膜と基板と界面への熱の侵襲を発生させる。蓄熱が続いた場合、界面温度Hiが基板の損傷閾値温度Hbdを超えることがあり、基板損傷の原因となっていた。損傷閾値温度Hbdは、基板がこの温度を超えると表面荒れや薄膜剥離等の不可逆的な損傷を受ける温度であって材料によって異なる。
【0065】
したがって、フルエンスに加えてパルスレーザ光の繰り返し周波数も制限され、結晶化までの到達照射回数が非常に多くなっていた。
【0066】
以上のように、ITO薄膜やIGZO膜などの薄膜をレーザアニールによって多結晶化する場合、スループットが制限されていた。特に、基板がPET樹脂やポリカーボネート(Polycarbonate:PC)など耐熱温度の低い材料である場合、その影響は顕著であった。
【0067】
このため、結晶成長を阻害せず、基板損傷も抑制しながらスループットを向上させるレーザアニール処理技術が求められていた。
【0068】
4.実施形態1
4.1 構成
実施形態1に係るレーザアニールシステムの装置構成は、
図2に示したレーザアニールシステム10と同様である。以下、実施形態1の説明において、
図2に示す構成と同一の参照符号を用いる。
【0069】
実施形態1に係るレーザアニールシステム10では、パルスレーザ光を所定繰り返し周波数で所定時間照射する代わりに、
図5に示すように、バースト期間Pbと休止期間Psとを繰り返すバースト照射を行う。レーザアニール制御プロセッサ100及びレーザ制御プロセッサ28は、バースト動作の、バースト期間における繰り返し周波数、パルスエネルギ及びパルス数、さらに休止期間の長さを調整することにより、被照射物16への入熱を制御する。
【0070】
すなわち、レーザアニール制御プロセッサ100及びレーザ制御プロセッサ28は、ITO薄膜表面については結晶化閾値温度Hczを超える温度の状態をなるべく維持しながらも、ITO薄膜と基板との界面を含む基板近傍は、損傷閾値温度Hbdを下回る温度が維持されるように、被照射物160に対する蓄熱を制御する。
【0071】
蓄熱の制御に関連するバースト照射の照射条件パラメータは、薄膜及び基板のそれぞれの材料や厚みによって調整される。レーザアニール制御プロセッサ100及びレーザ制御プロセッサ28は本開示におけるプロセッサの一例である。
【0072】
また、レーザアニールシステム10において、補助的に基板下面に冷却機構を設けることで、厚さ方向の温度差による基板へのダメージの軽減が可能である。
【0073】
4.2 動作
実施形態1に係るレーザアニールシステム10の動作について、
図5を用いて
図4と異なる点を詳細に説明する。
図5は、実施形態1に係るレーザアニールシステム10により実施されるバースト照射の例と、バースト照射による薄膜表面温度Hs及び界面温度Hiの推移の例を示すグラフである。
図5の縦軸及び横軸は、
図4と同様である。
【0074】
図5に示すように、レーザアニールシステム10は、パルスレーザ光を連続照射するバースト期間Pbと、パルスレーザ光の照射を止める休止期間Psとを交互に繰り返すバースト照射を行うことにより、複数のバースト期間においてITO薄膜の同一箇所にパルスレーザ光を照射する。休止期間Psは本開示の「抑制期間」の一例である。
【0075】
レーザアニール制御プロセッサ100及びレーザ制御プロセッサ28は、バースト照射の照射条件を調整することにより、被照射物160に対する入熱及び蓄熱を制御して、薄膜表面温度Hs及び界面温度Hiを制御する。
【0076】
バースト照射の照射条件には、バースト期間Pb内のパルスレーザ光のパルスエネルギ、繰り返し周波数、パルス数、休止期間Psの長さなどのパラメータが含まれる。なお、バースト期間Pb内のパルス数は、バースト期間Pbの長さに関係する。パルス数の代わりに、バースト期間Pbの長さを用いてもよい。レーザフルエンスは、
図3で説明したとおり、アブレーション閾値未満に設定される。
【0077】
図5に示すように、バースト期間Pb内における複数パルスのパルスレーザ光の連続照射によって、バースト期間Pb中は薄膜表面温度Hsと界面温度Hiとのそれぞれが徐々に上昇し、薄膜表面温度Hsが結晶化閾値温度Hczを上回る状態が一定期間維持される。
【0078】
その後、休止期間Psに移行すると入熱が止まるため、休止期間Ps中は薄膜表面温度Hsと界面温度Hiとが徐々に低下していく。休止期間Psにおいて、薄膜表面温度Hsは結晶化閾値温度Hczを下回る状態となってもよい。
【0079】
界面温度Hiは、バースト期間Pb及び休止期間Psに亘って損傷閾値温度Hbdを下回る状態が維持される。すなわち、バースト期間Pbにおいて界面温度Hiは徐々に上昇するものの、損傷閾値温度Hbdに到達する前にバースト期間Pbを終了させ、休止期間Psに移行させる。以後、バースト期間Pbと休止期間Psとを繰り返す。
【0080】
4.3 作用・効果
実施形態1のバースト照射により、薄膜表面温度Hsが結晶化閾値温度Hcz以上となる状態を必要な時間だけ維持し、下地層である基板への熱影響を最小限にできる。このため、実施形態1によれば、PET樹脂やPCなど耐熱温度の低い基板に成膜されたITO薄膜やIGZO薄膜のアニール処理のスループットを向上できる。
【0081】
また実施形態1によれば、薄膜表面は結晶化閾値温度Hcz以上の温度で、かつITO薄膜と基板との界面を含む基板近傍は損傷閾値温度Hbdを下回る温度でレーザアニールできるため、基板損傷を抑制しながら結晶核の生成及び成長を効率よく実施し、電気伝導率の向上や移動度などの電極材としての特性向上も見込める。
【0082】
4.4 実施形態1の変形例1
4.4.1 構成
実施形態1の変形例1に係るレーザアニールシステムの構成は、レーザアニールシステム10と同様である。
【0083】
図5では、バースト照射の休止期間Psは、パルスエネルギを完全にゼロとし、レーザ照射を停止させるものとして説明したが、休止期間Psに相当する期間において、パルスエネルギを完全にゼロとしなくてもよい。すなわち、休止期間Psの代わりに、
図6に示すように、バースト期間Pbより低いパルスエネルギに調整されたパルスレーザ光が照射される低出力期間Pdとしてもよい。低出力期間Pdは本開示における「抑制期間」の一例である。
【0084】
4.4.2 動作
図6は、実施形態1の変形例1に係るレーザアニールシステム10により実施されるバースト照射の例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度Hs及び界面温度Hiの推移の例を示すグラフである。
図6の縦軸及び横軸は、
図3と同様である。
図5の代わりに、
図6のようなバースト照射を採用してもよい。
【0085】
図6に示すように、レーザアニール制御プロセッサ100及びレーザ制御プロセッサ28は、休止期間Psに代わる低出力期間Pdにおいて、照射するパルスレーザ光のパルスエネルギをバースト期間Pbのパルスエネルギよりも減らして、蓄熱を抑制してもよい。なお、
図6の例では、低出力期間Pd中に薄膜表面温度Hsが結晶化閾値温度Hcz以上である状態がほぼ維持されるように低出力期間Pdのパルスエネルギが設定されているが、低出力期間Pdのパルスエネルギを調整することにより、低出力期間Pd中における薄膜表面温度Hsが結晶化閾値温度Hczを下回るようにしてもよい。
【0086】
4.4.3 作用・効果
実施形態1の変形例1によれば、バースト期間Pb後の低出力期間Pdにおいて、照射するパルスレーザ光のパルスエネルギを調整することにより、被照射物160に対する蓄熱制御の自由度を向上させることができる。
【0087】
4.5 実施形態1の変形例2
4.5.1 構成
図7は、実施形態1の変形例2に係るレーザアニールシステム10Aの構成を概略的に示す。
図7に示す構成について
図2と異なる点を説明する。
【0088】
レーザアニールシステム10Aは、テーブル76の被照射物160を載置する面に冷却プレート78を備える。冷却プレート78は、水冷方式やペルチェ素子を用いる構成であってよい。冷却プレート78は、本開示における冷却機構の一例である。冷却プレート78は、冷却のON-OFFを制御できるように、レーザアニール制御プロセッサ100に接続されてよい。冷却のON-OFFは、例えば、水冷方式の場合におけるバルブの開閉や、ペルチェ素子の電流のON-OFFなどにより制御される。
【0089】
図8は、
図7に示す冷却プレート78及び被照射物160を拡大して示す側面図である。被照射物160は、レーザ照射による被加熱対象160tと、レーザ照射による熱の影響をできる限り避けたい加熱不可部材160bとの積層構造を持つ。被加熱対象160tは、レーザアニールシステム10Aによってアニール処理される薄膜であり、例えば、ITO薄膜やIGZO薄膜などである。加熱不可部材160bは、耐熱性に乏しい材料からなる基板であり、例えば、PET樹脂やPCなどの樹脂基板である。
【0090】
4.5.2 動作
レーザアニール制御プロセッサ100は、バースト動作と同期して、冷却プレート78の冷却動作をON-OFFさせる制御を行う。
図9は、冷却動作の制御例を示すタイミングチャートである。
【0091】
図9の最上段のグラフF9Aはバースト動作のバースト期間Pb及び休止期間Psを示す。中段のグラフF9Bは冷却プレート78の冷却動作の制御例1を示し、下段のグラフF9Cは制御例2を示す。
【0092】
冷却ONのタイミングは、バースト期間Pbの開始タイミングに対して遅延させてもよいし(グラフF9B)、先行させてもよい(グラフF9C)。レーザアニール制御プロセッサ100は、バースト期間Pbに対して遅延して冷却をON、あるいは、バースト期間Pbに対して早めに冷却をONすることで、被照射物160の厚さ方向の熱分布を調整する。
【0093】
冷却ONの期間の長さは、バースト期間Pbと同じでなくてもよい。目標とする熱分布が得られるよう冷却をONするタイミングと、冷却ONの期間の長さが調整される。
【0094】
4.5.3 作用・効果
冷却プレート78は、加熱不可部材160bである基板に伝わる熱を除去することができるため、熱影響による基板損傷をさらに効果的に抑制することができる。
【0095】
レーザアニールシステム10Aによれば、冷却プレート78を用いた冷却動作により、被照射物160の厚さ方向の温度勾配を制御する効果があるため、基板の昇温を防ぎつつ、被加熱対象160tである薄膜の温度を制御しやすくなる。
【0096】
5.課題2
ITO薄膜は、レーザアニール処理によって結晶化した際に結晶粒の大きさを大きくすることで、より低抵抗率で高移動度な電極が実現されやすい。アモルファス状態から結晶化するにあたり必要なエネルギは、〔結晶核の形成〕>〔結晶粒の成長〕の関係と考えられる。そのため、結晶核の形成と結晶粒の成長のための2段階で成長させることが考案され、通常の雰囲気アニールなどではこのような方法が実現されている。
【0097】
しかしながら、
図10に示すようなパルスレーザ光の連続照射によるレーザアニール処理では、薄膜表面温度Hsが結晶化閾値温度Hczを超えて上昇し続け、結晶核生成閾値温度以上の状態で結晶粒成長が行われることになるため、結晶核が生成され続け、最終的な結晶粒が小さくなってしまう(
図11参照)。結晶核生成閾値温度以上の温度では、結晶成長よりも結晶核の形成がなされやすくなるためである。
【0098】
図10は、
図4と同様に、パルスレーザ光の連続照射による薄膜表面温度Hsの推移を示す。
図11は、
図10に示すパルスレーザ光の連続照射による薄膜の結晶化の過程を模式的に示す説明図である。
図11の左から右へ時間経過を示す。
図11において、薄膜における被照射エリアARtでは、時間経過とともに、結晶核Ccの生成及び結晶成長が起きている。
【0099】
図11中の左
図F11Aは、薄膜表面温度Hsが結晶核生成閾値温度を超えて結晶核Ccが生成された様子を示している。中央
図F11Bは、新たな結晶核Ccの生成による結晶核Ccの増加と結晶粒が成長する様子を示している。右
図F11Cは、中央
図F11Bの状態からさらに、新たな結晶核Ccの生成による結晶核Ccの増加と結晶粒Cmが成長する様子を示している。
【0100】
結晶核Ccが増加することで、結晶粒Cmは十分に大きく成長することができず、中程度の結晶粒Cmとなる。このように、高繰り返し化によるパルスレーザ光の連続照射では、結晶核生成閾値温度以上の状態で結晶粒の成長が行われるため、新たな結晶核Ccが生成され続け、個々の結晶粒Cmの最終的なサイズは比較的小さいものに留まる。
【0101】
一方で、
図12に示すような、単純なバーストパルスによるバースト照射では結晶粒の成長と同時に新たな結晶核が生成してしまう。この場合、生成される各結晶粒は結晶方位がバラバラであるため、隣り合っても合体して成長し辛いため、結晶粒のサイズが大きくならない(
図13及び
図14参照)。
【0102】
図12は、バーストパターンの例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度Hsの推移の例を示すグラフである。
図12に示すバースト照射では、バースト期間Pb中に薄膜表面温度Hsが上昇して結晶核生成閾値温度Hcc以上の状態になり、休止期間Psにおいて薄膜表面温度Hsが低下して結晶成長閾値温度Hcgを下回る状態となる。このようなバースト期間Pbと休止期間Psとが繰り返されることで、薄膜表面温度Hsが結晶核生成閾値温度Hcc以上の状態と、結晶成長閾値温度Hcg未満の状態とが間欠的に繰り返され、新しい結晶核が生成されつつ、結晶粒が成長する。
【0103】
図13は、
図12に示すバースト照射による薄膜の結晶化の過程を模式的に示す説明図である。
図13において、薄膜における被照射エリアARtでは、時間経過とともに、結晶核Ccの生成及び結晶成長が起きている。
図13について、
図11と異なる点を説明する。
【0104】
図13中の左
図F13Aは、薄膜表面温度Hsが結晶核生成閾値温度Hccを超えて結晶核Ccが生成された状態を示している。中央
図F13Bは、薄膜表面温度Hsが間欠的に結晶核生成閾値温度Hcc以上になり、且つ間欠的に結晶成長閾値温度Hcg以上になることによって、新たな結晶核Ccが増えつつ、結晶核Ccが成長して結晶粒Cbに成長する様子を示している。
【0105】
右
図F13Cは、中央
図F13Bの状態からさらに、新たな結晶核Ccが生成されて結晶粒Cm、Cbが成長する様子を示している。
【0106】
このように、
図12に示すバースト照射では新たな結晶核Ccの生成と、結晶粒Cm、Cbの成長とが同時に起こる。
【0107】
図14は、
図12に示すバースト照射によって生成された結晶粒を模式的に示す。
図14に示すように、
図12のバースト照射によって生成される結晶粒Cb、Cm1、Cm2、Cm3、Cm4は、それぞれの結晶方位が異なるため、結晶粒同士が隣り合っても合体して成長しにくく、最終的な結晶粒のサイズはあまり大きくならない。
【0108】
このような事情から、結晶成長を阻害せずにスループットを向上させるレーザアニール方法が求められていた。
【0109】
6.実施形態2
6.1 構成
実施形態2に係るレーザアニールシステムの装置構成は、
図2に示したレーザアニールシステム10又は
図7に示したレーザアニールシステム10Aと同様である。以下、実施形態2の説明において、
図2に示す構成と同一の参照符号を用いる。
【0110】
6.2 動作
実施形態2に係るレーザアニールシステム10は、バースト照射における先頭側のバースト期間を他の後続のバースト期間とは異なる照射にしてもよい。例えば、先頭側のバースト期間を他の後続のバースト期間よりも高エネルギのレーザ照射にすることで、薄膜表面温度Hsを結晶核生成閾値温度Hcc以上にまで上げる。その後のバースト期間では低エネルギのレーザ照射として結晶核生成閾値温度Hccよりも低い薄膜表面温度Hsを維持しつつ、かつ結晶成長閾値温度Hcg以上の温度を実現する。これにより、結晶を2段階で成長させることができる。なお、高エネルギのレーザ照射を行う先頭側のバースト期間は、先頭のバースト期間を含む複数のバースト期間であってもよい。
【0111】
図15は、実施形態2に係るレーザアニールシステム10のバースト照射の例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度Hsの推移の例を示すグラフである。
図15の縦軸及び横軸は、
図12と同様である。
【0112】
図15に示すように、レーザアニール制御プロセッサ100は、バースト動作における先頭のバースト期間Pb1のパルスエネルギを、次のバースト期間Pb2のパルスエネルギよりも高くする。各バースト期間Pb1、Pb2における繰り返し周波数は同じであってよい。
【0113】
先頭のバースト期間Pb1のレーザ照射により、薄膜表面温度Hsは結晶核生成閾値温度Hcc以上の状態となり、結晶核が生成される。その後、次の(2番目の)バースト期間Pb2を含む他のバースト期間におけるパルスエネルギを先頭のバースト期間Pb1のパルスエネルギよりも低く設定し、他のバースト期間中において薄膜表面温度Hsを結晶核生成閾値温度Hccよりも低い温度に維持しつつ、結晶成長閾値温度Hcg以上に維持される時間をなるべく長くするようにレーザ照射が制御される。2番目以降のバースト期間に適用されるレーザ照射条件(パルスエネルギ、繰り返し周波数、及びパルス数)は、それぞれが同じ条件であってよい。これにより、結晶核の生成と結晶粒の成長という2段階で結晶を成長させることができる。
【0114】
図16は、
図15に示すバースト照射による薄膜の結晶化の過程を模式的に示す説明図である。
図16について、
図13と異なる点を説明する。
【0115】
図16の左
図F16Aは、先頭のバースト期間Pb1のレーザ照射によって、結晶核Ccが生成された状態を示している。その後、中央
図F16Bに示すように、2番目のバースト期間Pb2のレーザ照射により、新しい結晶核Cc生成は抑制され、既に存在している結晶核Ccが結晶粒Cmに成長する。さらに、右
図F16Cに示すように、3番目以降のバースト期間のレーザ照射によって、新しい結晶核Cc生成は抑制され、既に存在している結晶粒Cmが成長し、より大きい結晶粒Cbになる。
【0116】
6.3 作用・効果
実施形態2によれば、結晶を2段階で成長させることができるため、移動度の高い、大きなサイズの結晶が得られ易い。
【0117】
6.4 実施形態2の変形例1
先頭側のバースト期間は、他のバースト期間に比べてパルスエネルギを変更する態様に限らず、例えば、先頭側のバースト期間について、他のバースト期間とは異なる繰り返し周波数に設定されてもよい。例えば、先頭側のバースト期間は、他のバースト期間よりも高繰り返し周波数としてもよい(
図17参照)。
【0118】
図17は、実施形態2の変形例1に係るバースト照射の例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度Hsの推移の例を示す。
図17の縦軸及び横軸は、
図15と同様である。
【0119】
図17に示すように、レーザアニール制御プロセッサ100は、バースト動作における先頭のバースト期間Pb1の繰り返し周波数を、次のバースト期間Pb2の繰り返し周波数よりも高くする。各バースト期間Pb1、Pb2におけるパルスエネルギは同じであってよい。
【0120】
先頭のバースト期間Pb1のレーザ照射により、薄膜表面温度Hsは結晶核生成閾値温度Hcc以上の状態となり、結晶核が生成される。その後、次の(2番目の)バースト期間Pb2を含む他のバースト期間における繰り返し周波数を先頭のバースト期間Pb1の繰り返し周波数よりも低く設定し、他のバースト期間中において薄膜表面温度Hsを結晶核生成閾値温度Hccよりも低い温度に維持しつつ、結晶成長閾値温度Hcg以上に維持される時間をなるべく長くするようにレーザ照射が制御される。2番目以降のバースト期間に適用されるレーザ照射条件(パルスエネルギ、繰り返し周波数、及びパルス数)は、それぞれが同じ条件であってよい。これにより、結晶核の生成と結晶粒の成長という2段階で結晶を成長させることができる。
【0121】
6.5 実施形態2の変形例2
先頭側のバースト期間は、パルス数(バースト時間)が他のバースト期間と異なるように設定されてもよい。例えば、先頭側のバースト期間は、他のバースト期間よりもパルス数を多くしてもよい(
図18参照)。その際、先頭側のバースト期間後の休止期間を他の休止期間と異なる長さに設定してもよい。
【0122】
図18は、実施形態2の変形例2に係るバースト照射の例と、バースト照射に伴う薄膜表面温度Hsの推移の例を示す。
図18の縦軸及び横軸は、
図15と同様である。
【0123】
図18に示すように、レーザアニール制御プロセッサ100は、バースト動作における先頭のバースト期間Pb1のパルス数を、次のバースト期間Pb2のパルス数よりも多くしてもよい。各バースト期間Pb1、Pb2におけるパルスエネルギ及び繰り返し周波数は同じであってよい。
【0124】
また、レーザアニール制御プロセッサ100は、先頭のバースト期間Pb1の直後の休止期間Ps1を他の休止期間Ps2より長く設定してもよい。
【0125】
このようなバースト照射により、
図15及び
図17の例と同様に、結晶を2段階で成長させることができる。
【0126】
6.6 その他
実施形態2及びその変形例1、2は、適宜組み合わせてよい。例えば、レーザアニール制御プロセッサ100は、先頭のバースト期間Pb1のレーザ照射を他のバースト期間よりも高エネルギ、かつ高繰り返し周波数としてもよい。また、例えば、レーザアニール制御プロセッサ100は、先頭のバースト期間Pb1のレーザ照射を、他のバースト期間よりも高エネルギだが低繰り返し周波数としてもよく、又は高繰り返し周波数だが少ないパルス数としてもよい。
【0127】
さらに、実施形態2及びその変形例1、2における休止期間の一部又は全部を
図6のような低出力期間Pdとすることも可能である。
【0128】
7.実施形態3
7.1 構成
図19は、実施形態3に係るレーザアニールシステム10Bの構成を概略的に示す。レーザアニールシステム10Bは、ウエブ状の被照射物R1に対してロールトゥロールのプロセスによってアニール処理を行うシステムである。被照射物R1は、例えば、樹脂基板上に薄膜が成膜された樹脂ロールであってよい。
【0129】
図19の中央
図F19Aに示すように、レーザアニールシステム10Bは、被照射物R1をロールトゥロール方式で搬送する不図示の搬送機構と、レーザ装置L1と、レーザ装置L1から出力されるパルスレーザ光PL1を複数の照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4に分配するための複数のビームスプリッタBS1、BS2、BS3、BS4を含む分配光学系とを備える。
【0130】
図19では、4つの照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4を備える構成を示しているが、照射エリアの数は、この例に限らない。照射エリアの数に応じてビームスプリッタの数も変更される。
【0131】
搬送機構は、巻き出しローラ、巻き取りローラ及びパスローラなど公知の構成を含む。
【0132】
複数の照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4のそれぞれは、被照射物R1に対してパルスレーザ光の照射が行われるエリアである。被照射物R1の移動方向に沿って、複数の照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4が所定間隔で配置されるように、パルスレーザ光が分配される。所定間隔を隔てて配置される照射エリアAR1と照射エリアAR2との間、照射エリアAR2と照射エリアAR3との間、及び照射エリアAR3と照射エリアAR4との間の各エリアは、レーザ照射が行われない間欠エリアARsとして設定される。
【0133】
レーザ装置L1から出力されたパルスレーザ光PL1は、ビームスプリッタBS1、BS2、BS3、BS4により分岐され、それぞれ照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4に入射する。各ビームスプリッタBS1、BS2、BS3、BS4は、各照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4におけるレーザエネルギが等しくなるように反射率が設定される。なお、最終段のビームスプリッタBS4は、反射ミラーであってもよい。
【0134】
レーザアニールシステム10Bにおいて、被照射物R1は低速で移動する。被照射物R1の移動速度は、休止期間が間欠エリアARsを通過する時間となるように設定される。また、1箇所あたりの照射回数は、移動方向の照射エリア幅と、被照射物R1の移動速度と、繰り返し周波数とから決定される。
【0135】
7.2 動作
レーザ装置L1は、ロールトゥロールによる被照射物R1の移動中に一定の繰り返し周波数でパルスレーザ光PL1を連続出力する。
図19中のグラフF19Bは、レーザ装置L1から出力されるパルスレーザ光PL1のパルスエネルギを示す。
【0136】
図19中の拡大
図F19Cは、照射エリアAR1で連続的にパルスレーザ光を照射した場合のレーザ照射結果を示す説明図である。レーザアニールシステム10Bでは、それぞれの照射エリアAR1~AR4において、照射するビームの位置が固定されているが、被照射物R1がロール進行方向(移動方向)に移動するため、相対的にレーザ照射された箇所が移動して、各ビームの照射範囲が重なっていく(拡大
図F19C参照)。
【0137】
このため、被照射物R1上における移動方向のビーム幅と、移動速度(ロール進行速度)及びパルスレーザ光PL1の繰り返し周波数から、ある1箇所(同一箇所)あたりの照射回数が決定される。複数の照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4を設定し、それらの間を間欠エリアとして設定することにより、被照射物R1上の各エリアは、実施形態1と同様のバーストパルスで照射される。
【0138】
図19中のグラフF19Dは、被照射物R1上の同一箇所に照射されるパルスレーザ光のバーストパルスの例を示す。
【0139】
複数の照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4と、それらの間の複数の間欠エリアARsとに分かれることで、ロール進行によって被照射物R1上の1箇所あたりは、グラフF19Dに示すように、バーストパルスで照射された状態となる。これにより、実施形態1におけるレーザ装置12と同様のバースト照射を行うことができる。
【0140】
レーザアニールシステム10Bは、樹脂基板上に薄膜を成膜後にロールに巻き取る途中で本アニール処理を行ってもよい。
【0141】
なお、各照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4の上流側と下流側のそれぞれの一部は照射回数が少なくなるため、素子として利用しなくてもよい。ここで、「上流側」とは被照射物R1の移動方向についての上流側を意味し、
図19における左側を指す。
【0142】
7.3 搬送機構の例
図20は、レーザアニールシステム10Bに適用されるロールトゥロール方式の搬送機構Mの例を示す斜視図である。搬送機構Mは、巻き出し部302と、巻き取り部304とを備え、巻き出し部302と巻き取り部304との間に成膜部306とレーザアニール処理部310とが設けられる。成膜部306は、巻き出し部302から送り出された基板上にITOなどの薄膜を生成する成膜工程の処理部である。レーザアニール処理部310は、成膜部306の下流側に配置され、
図20の矢印で示す部分においてレーザ照射を行うアニール処理工程の処理部である。
図20において、レーザアニール処理部310の具体的構成は図示されていないが、レーザアニール処理部310は、
図19で説明した複数の照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4を含む。レーザアニール処理部310には、レーザ照射に必要な光学系等の構成が含まれる。
【0143】
このような構成により、ロールトゥロールの工程プロセスにおいて、薄膜の成膜後にロールを巻き取る途中でアニール処理を行うことができる。
【0144】
また、搬送機構Mは、
図7及び
図8で説明した冷却プレート78に代わる、不図示の冷却ローラを備えていてもよい。冷却ローラは、複数の照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4のそれぞれにおいて基板の裏面側に配置されていてもよい。
【0145】
7.4 作用・効果
実施形態3によれば、ロールトゥロール方式において、ロールを巻き取りながらアニール処理を実施することが可能である。このため、巻き取りを停止するアニール処理に比べて、加工時間を短くできる。
【0146】
7.5 実施形態3の変形例1
7.5.1 構成
図21は、実施形態3の変形例1に係るレーザアニールシステム10Cの構成及び動作を示す説明図である。
図21に示す構成について、
図19と異なる点を説明する。
図21の上段に示す模式的な平面
図F21Aはレーザアニールシステム10Cにおける複数の照射エリアAR1、AR2、AR3…の例を示す。図示は省略されているが、レーザアニールシステム10Cは、
図19と同様に、レーザ装置L1と、複数の照射エリアAR1、AR2、AR3…のそれぞれに対してパルスレーザ光を入射させる複数のビームスプリッタとを備える。
【0147】
レーザアニールシステム10Cにおいて、実施形態2に対応するように、2段階成長を行う場合には、複数の照射エリアAR1、AR2、AR3…のうちの上流部分に、高エネルギや高繰り返し周波数のバーストパルスを照射するエリアを配置する。
【0148】
図21では、先頭の照射エリアAR1について、他の照射エリアよりも高いパルスエネルギのパルスレーザ光を照射する場合の例が示されている。この場合、例えば、上流側のビームスプリッタの反射率を他に比べて高く設定して、多くのエネルギを分配してもよい。
【0149】
図21の下段に示すグラフF21Bは、レーザアニールシステム10Cによるバースト照射の例と、バースト照射による薄膜表面温度Hsの推移の例を示すグラフである。
図21では、先頭の照射エリアAR1から3番目の照射エリアAR3の各エリアに対応するバースト期間までが図示されているが、4番目以降の照射エリアに対応するバースト期間についても同様である。グラフF21Bは、
図15で説明したグラフと同様である。
【0150】
7.5.2 動作
レーザアニールシステム10Cにおけるレーザ照射の動作は、実施形態3と同様である。レーザアニールシステム10Cによるバースト照射により、実施形態2と同様に結晶を2段階成長させる。
【0151】
7.5.3 作用・効果
レーザアニールシステム10Cによれば、ロールトゥロールのプロセスにおいて結晶を2段階成長させることができ、移動度の高い結晶が得られる。
【0152】
7.6 実施形態3の変形例2
7.6.1 構成
図22は、実施形態3の変形例2に係るレーザアニールシステム10Dの構成を概略的に示す。
図22に示す構成について、
図19と異なる点を説明する。
【0153】
レーザアニールシステム10Dは、
図19のレーザ装置L1の代わりに、複数のレーザ装置L2、L3を備える。また、レーザアニールシステム10Dは、
図19のビームスプリッタBS1~BS4の代わりに、ビームスプリッタBS5、反射ミラーRM1、ビームスプリッタBS6及び反射ミラーRM3を備える。その他の構成は、
図19と同様であってよい。
【0154】
ロールの幅や照射エリアの数又は照射エリアの位置によっては、高いパルスエネルギや高繰り返し周波数が必要となる場合がある。その場合、
図22のように、複数のレーザ装置L2、L3を配置して、それぞれ異なる照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4にパルスレーザ光を分配するようにしてもよい。
【0155】
7.6.2 動作
レーザ装置L2、L3は同期してパルスレーザ光PL2、P3を出力するように制御される。レーザ装置L2から出力されたパルスレーザ光PL2は、ビームスプリッタBS5によって2方向に分岐され、そのうちの一方のパルスレーザ光は照射エリアAR1に入射し、他方のパルスレーザ光は反射ミラーRM1によって反射され、照射エリアAR2に入射する。例えば、照射エリアAR1は、照射エリアAR2に対して高パルスエネルギのパルスレーザ光が照射されるようにしてもよい。また、レーザ装置L2は、レーザ装置L3に対して高繰り返し周波数としてもよい。
【0156】
同様に、レーザ装置L3から出力されたパルスレーザ光PL3は、ビームスプリッタBS6によって2方向に分岐され、そのうちの一方のパルスレーザ光は照射エリアAR3に入射し、他方のパルスレーザ光は反射ミラーRM2によって反射され、照射エリアAR4に入射する。その他の動作は、
図19と同様である。
【0157】
7.6.3 作用・効果
レーザアニールシステム10Dによれば、レーザアニールシステム10Bと同様の効果が得られる。また、レーザアニールシステム10Dによれば、各照射エリアに対して所望のパルスエネルギのパルスレーザ光を分配できる。さらに、レーザ装置を複数としたので各照射エリアに対して所望の繰り返し周波数のパルスレーザ光を照射できる。
【0158】
8.実施形態4
8.1 構成
図23は、実施形態4に係るレーザアニールシステム10Eの構成を概略的に示す。レーザアニールシステム10Eは、レーザ装置12の代わりに、複数のレーザ装置L4、L5、L6、L7、L8を備える。レーザ装置L4、L5、L6、L7、L8のそれぞれは、レーザ装置12と同様の構成であってよい。
【0159】
レーザアニールシステム10Eは、レーザ装置L4、L5、L6、L7、L8のそれぞれから出力されたパルスレーザ光PL4、PL5、PL6、PL7、PL8を照射エリアAR12に導く反射ミラーRMa、RMb、RMc、RMdを備える。各パルスレーザ光PL4、PL5、PL6、PL7、PL8を照射エリアAR12に導くパルスレーザ光路には、反射ミラーRMa、RMb、RMc、RMd以外の不図示の反射ミラー等の光学素子が含まれてもよい。
【0160】
照射エリアAR12は、
図2で説明したテーブル76上の領域であってもよいし、
図19で説明した照射エリアAR1、AR2、AR3、AR4であってもよい。
【0161】
なお、
図23では5台のレーザ装置L4~L8を用いる構成を示しているがレーザ装置の台数はこの例に限らない。
【0162】
8.2 動作
複数のレーザ装置L4~L8による各パルスレーザ光の出力タイミングを遅延させる制御を行うことで、照射エリアAR12における高繰り返し照射を実現してもよい。
【0163】
図24は、レーザアニールシステム10Eによって実現されるバースト照射の例を示すグラフである。
図24に示すように、レーザ装置L4~L8から出力するパルスレーザ光PL4~PL8のそれぞれの出力タイミングをずらし、同じ照射エリアAR1に照射することにより、実質的に高繰り返しのバースト動作と同様のバースト照射が可能である。
【0164】
例えば、各レーザ装置L4~L8の繰り返し周波数が200Hzの動作である場合に、これら5台のレーザ装置L4~L8の出力タイミングをずらして同一エリアを照射することで擬似的に1kHzの照射が実現できる。
【0165】
8.3 作用・効果
実施形態4に係るレーザアニールシステム10Eによれば、個々のレーザ装置L4~L8の繰り返し周波数よりも高い繰り返し周波数によるバースト照射を実現できる。
【0166】
9.ITO薄膜以外の他の用途について
本開示の技術は、次のような用途にも適用できる。
【0167】
[1]a-Siなどのチャンネル材料の結晶化のためのアニール処理
【0168】
[2]樹脂フィルム等、耐熱性の乏しい基板上に複数の金属膜を堆積後、金属材料同士で合金化するためのアニール処理(磁性体化の処理)
【0169】
[3]半導体プロセスにおいてイオン打込み後の結晶回復のためのアニール処理
【0170】
[4]ドーパント材料の基板深さ方向への熱拡散の制御
【0171】
[5]フィルムなどへのハードコーティング膜などのコーティング材料を熱処理する場合のアニール処理
【0172】
[6]半導体チップ上あるいはプリント基板上の金属配線における結晶粒拡大による低抵抗化のためのアニール処理
【0173】
10.プロセッサについて
レーザ制御プロセッサ28、レーザアニール制御プロセッサ100などのプロセッサは、本開示に含まれる各種処理を実行するためにハードウェアの形で物理的に構成されていてもよい。例えば、プロセッサは、各種処理を規定する制御プログラムが記憶されたメモリと、制御プログラムを実行する処理装置と、を含むコンピュータでもよい。制御プログラムは、1つのメモリに記憶されていてもよいし、物理的に離れて存在する複数のメモリに分かれて記憶され、それらの集合体としての制御プログラムによって各種処理が規定されてもよい。処理装置は、CPUのような汎用的な処理装置でもよいし、GPUのような特定用途の処理装置でもよい。
【0174】
また、プロセッサは、本開示に含まれる各種処理を実行するためにソフトウェアの形でプログラムされていてもよい。例えば、プロセッサは、各種処理を実行する機能がASICのような専用デバイスやFPGAのようなプログラマブルデバイスに実装されたものでもよい。
【0175】
本開示に含まれる各種処理は、1つのコンピュータ、1つの専用デバイス、又は1つのプログラマブルデバイスによって実行されてもよいし、物理的に離れて存在する複数のコンピュータ、複数の専用デバイス、又は複数のプログラマブルデバイスの協働によって実行されてもよい。各種処理は、1つ以上のコンピュータ、1つ以上の専用デバイス、及び1つ以上のプログラマブルデバイスのうちの少なくとも2つの組み合わせによって実行されてもよい。
【0176】
11.その他
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。したがって、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0177】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。