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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】導水装置
(51)【国際特許分類】
   E21F 16/02 20060101AFI20220104BHJP
   E21D 11/38 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
E21F16/02
E21D11/38 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017056650
(22)【出願日】2017-03-22
(65)【公開番号】P2018159223
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2019-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】391035360
【氏名又は名称】ニホン・ドレン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517101492
【氏名又は名称】松原 健藏
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 伸平
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-270297(JP,A)
【文献】特開平04-213698(JP,A)
【文献】特公昭60-012519(JP,B2)
【文献】特開2014-088706(JP,A)
【文献】特開2007-056604(JP,A)
【文献】特開昭58-044200(JP,A)
【文献】米国特許第04915542(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 16/02
E21D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の壁面に沿って配設される、可撓性を有する長尺の導水体と、
粘着性を有する帯状のシート体から成る、前記導水体を覆うように前記壁面に装着される粘着シートであって、
前記導水体上に配設される中間部と、
前記中間部に連なり、前記壁面に粘着して接合される接合部と、を有する粘着シートと、を備え、
前記粘着シートは、基材層と、前記基材層の一表面に積層される粘着層と、を有し、
前記導水体は、デュロメータA硬さがA60以上、A75以下の軟質ポリ塩化ビニルから成り
前記導水体は、
前記壁面によって支持される複数の脚部と、
前記複数の脚部を、前記壁面から離間した位置で連結する壁部と、を有し、
前記構造物に打設され、前記接合部を壁面に固定するアンカー体を、さらに含むことを特徴とする導水装置。
【請求項2】
構造物の壁面に沿って配設される、可撓性を有する長尺の導水体と、
粘着性を有する帯状のシート体から成る、前記導水体を覆うように前記壁面に装着される粘着シートであって、
前記導水体上に配設される中間部と、
前記中間部に連なり、前記壁面に粘着して接合される接合部と、を有する粘着シートと、を備え、
前記粘着シートは、基材層と、前記基材層の一表面に積層される粘着層と、を有し、
前記導水体は、複数の透孔を有する筒状部材から成り、
前記構造物に打設され、前記接合部を壁面に固定するアンカー体を、さらに含むことを特徴とする導水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルおよび擁壁などの構造物の凹凸のある壁面に設けられ、構造物の目地および亀裂などから流れ出た水を、排水渠などの排水設備へ導くために好適に実施することができる導水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な従来技術の導水装置は、たとえば特許文献1に示されている。この従来技術の導水装置は、構造物の壁面に、道路軸線方向に500mm毎に等間隔をあけて平行に設けられる一対の長手の保持具と、各保持具に幅方向両側部が保持される導水受板とを備える。
【0003】
各保持具は、合成樹脂製の保持体と、保持体の幅方向両側部に設けられる一対のシール部材とを有する。各保持体の幅方向両側部間の幅方向中間部には、構造物の壁面とは反対側の空間に臨んで開放した凹所が長手方向に延びて形成されている。
【0004】
各保持体の凹所内には、構造物に打ち込まれたアンカー体の頭部が突出し、この頭部にナットが螺着されて、各保持具が壁面に固定される。構造物は、道路トンネルの覆工コンクリート壁であって、壁面に固定された各保持具は、覆工コンクリート壁の壁面の目地部の両側に、各保持具が配置されるように、位置決めされる。
【0005】
各保持具の凹所は、構造物の壁面とは反対側のトンネル内の空間に臨んで開放し、この凹所の幅方向両側には、幅方向外側方に臨んで開放する凹状の一対の嵌合保持部が設けられる。各嵌合保持部には、導水受板の幅方向一側部および幅方向他側部がそれぞれ嵌まり込んで保持され、各導水受板と壁面との間に水密な導水空間を形成する。
【0006】
導水空間には、覆工コンクリート壁の目地部および亀裂などから漏出した地下水が流れ込んで集水される。導水空間内に流れ込んだ水は、導水装置の長手方向両側の下端部の開口に導かれて、路面両側の路側帯に設けられる上部排水溝に排出される。上部排水溝の下には、暗渠排水溝が設けられ、暗渠排水溝内の水は、図示しない排水管へ導かれて河川などへ放流される。
【0007】
各保持体は、硬質ポリ塩化ビニルなどの硬質合成樹脂の押出し形材から成る長尺材によって実現される。またシール部材は、独立気泡の発泡合成樹脂と合成ゴムとの2層構造の長尺材によって実現される。また導水受板は、耐侯性および耐薬品性を有する硬質合成樹脂からなり、厚みが2mm程度の帯状パネルによって実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第2916407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1に記載される従来技術では、保持体が硬質ポリ塩化ビニルの押出し形材から成り、導水受板が耐侯性および耐薬品性を有するアクリル樹脂と硬質ポリ塩化ビニルとが混合された合成樹脂から成る。そのため、各保持体および導水受板が取付けられる構造物の壁面が、補修工事などによって地山にコンクリートを吹付けて構築された覆工コンクリート壁の凹凸のある壁面である場合には、壁面の凹凸に沿って保持具および導水受板を湾曲させて取付けることができないため、水密な導水空間が得られず、凹凸のある壁面には導水装置を設置することができないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、凹凸のある壁面であっても水密な導水空間を形成することができる導水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、構造物の壁面に沿って配設される、可撓性を有する長尺の導水体と、
粘着性を有する帯状のシート体から成る、前記導水体を覆うように前記壁面に装着される粘着シートであって、
前記導水体上に配設される中間部と、
前記中間部に連なり、前記壁面に粘着して接合される接合部と、を有する粘着シートと、を備え、
前記粘着シートは、基材層と、前記基材層の一表面に積層される粘着層と、を有し、
前記導水体は、デュロメータA硬さがA60以上、A75以下の軟質ポリ塩化ビニルから成り
前記導水体は、
前記壁面によって支持される複数の脚部と、
前記複数の脚部を、前記壁面から離間した位置で連結する壁部と、を有し、
前記構造物に打設され、前記接合部を壁面に固定するアンカー体を、さらに含むことを特徴とする導水装置である。
【0012】
また本発明は、前記導水体は、
前記壁面によって支持される複数の脚部と、
前記複数の脚部を、前記壁面から離間した位置で連結する壁部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記導水体は、複数の透孔を有する筒状部材から成ることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、構造物の壁面に沿って配設される、可撓性を有する長尺の導水体と、
粘着性を有する帯状のシート体から成る、前記導水体を覆うように前記壁面に装着される粘着シートであって、
前記導水体上に配設される中間部と、
前記中間部に連なり、前記壁面に粘着して接合される接合部と、を有する粘着シートと、を備え、
前記粘着シートは、基材層と、前記基材層の一表面に積層される粘着層と、を有し、
前記導水体は、複数の透孔を有する筒状部材から成り、
前記構造物に打設され、前記接合部を壁面に固定するアンカー体を、さらに含むことを特徴とする導水装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可撓性を有する長尺の導水体が構造物の壁面に沿って配設され、粘着性を有する帯状の粘着シートが導水体を覆うように壁面に装着される。粘着シートは、導水体上に配設される中間部と、中間部に連なる接合部とを有し、各接合部は壁面に粘着して接合される。このような構成によって、凹凸のある壁面であっても、導水体は、デュロメータA硬さがA60以上、A75以下の軟質ポリ塩化ビニルから成り、粘着シートは、基材層と、前記基材層の一表面に積層される粘着層と、を有し、導水体は、壁面によって支持される複数の脚部と、複数の脚部を、前記壁面から離間した位置で連結する壁部と、を有し、構造物に打設され、前記接合部を壁面に固定するアンカー体を、さらに含む。このような構成によって、導水体および粘着シートは該壁面の凹凸に沿って変形させた状態で取付けることができ、導水体と壁面との間および粘着シートと壁面との間に水密な導水空間を形成し、壁面からの漏水を導水空間によって排水溝などの排水設備へ導いて排水することができる。
【0016】
また本発明によれば、導水体は、壁面によって支持される複数の脚部と、複数の脚部を壁面から離間した位置で連結する壁部とを有するので、流路抵抗の少ない導水空間を実現することができ、漏水中の土砂、ごみなどの異物が導水体に係着しにくく、目詰まりが生じにくい導水装置を実現することができる。また壁面から流れ出す漏水の流量、壁面の目地および亀裂などの位置などの各種の設置条件に応じて、導水装置の設置位置および設置本数を変更して、設置条件に対して適切な設置態様を容易に実現することができ、設計上の自由度が高い導水装置を提供することができる。
【0017】
また本発明によれば、導水体は、複数の透孔を有する筒状部材から成るので、壁面から流れ出す漏水の流量、壁面の目地および亀裂などの位置、導水装置の壁面からの突出量、導水装置の幅などの各種の設置条件に応じて、筒状部材の本数および粘着シートの幅を変更して、断面幅の異なる導水空間を容易に実現することができ、設計上の自由度が高い導水装置を提供することができる。
【0018】
また本発明によれば、構造物の壁面に沿って配設される、可撓性を有する長尺の導水体と、粘着性を有する帯状のシート体から成る、導水体を覆うように壁面に装着される粘着シートであって、導水体上に配設される中間部と、中間部に連なり、壁面に粘着して接合される接合部と、を有する粘着シートと、を備え、粘着シートは、基材層と、前記基材層の一表面に積層される粘着層と、を有し、導水体は、複数の透孔を有する筒状部材から成り、構造物に打設され、接合部を壁面に固定するアンカー体を、さらに含む。このような構成によって、いたずらなどによる人為的な操作および車両が跳ね飛ばした石、空き缶、木片など飛翔物の当接による外力の作用によって、粘着シートが剥離してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態の導水装置1を示す断面図である。
図2図1の下方から見た導水装置1の一部の正面図である。
図3】導水装置1が構造物2に取付けられた状態を示す断面図である。
図4】粘着シート5の一部の拡大断面図である。
図5】本発明の他の実施形態の導水装置1Aを示す断面図である。
図6】本発明の他の実施形態の導水体4Aを示す断面図である。
図7】本発明の他の実施形態の導水体4Bを示す断面図である。
図8】本発明の他の実施形態の導水装置1Bを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の一実施形態の導水装置1を示す断面図であり、図2図1の下方から見た導水装置1の一部の正面図であり、図3は導水装置1が構造物2に取付けられた状態を示す断面図である。本実施形態の導水装置1は、構造物2の壁面3に沿って配設され、可撓性を有する長尺の導水体4と、粘着性を有する帯状のシート体から成り、壁面3に導水体4を覆うように装着される粘着シート5とを含む。なお、本実施形態において、「漏水」は、主に地山の浸透水または湧水に土砂などの固体粒子およびごみなどの異物が混入した混合流体であるが、固体粒子が混合していない液体、たとえば結露水、雨水、地下水、湧水などの水をも含む。
【0021】
構造物2は、トンネル6の覆工コンクリート壁7であって、地山にコンクリートまたはコンクリートモルタルを吹付けて構築されている。そのため壁面3は、トンネル6内の車道空間8に臨んで凹凸状であり、一様な連続曲面の存在しない不揃いな曲面から成っている。このような壁面3には、本実施形態の導水装置1が道路軸線L1方向に500mm毎に等間隔をあけて平行に水密に設置され、覆工コンクリート壁7の目地または亀裂から流出した漏水を、車道空間8に滴下しないように、路肩などに設けられる排水溝へ導くことができるように構成されている。導水装置1の道路軸線L1方向の設置間隔は、500mmに限るものではなく、300mm~1000mmの範囲で漏水の流出量、流出箇所などの現場の設置条件に応じて適宜決定される。
【0022】
導水体4は、壁面3によって支持される複数(本実施形態では3)の脚部9a,9b,9cと、複数の脚部9a~9cを壁面3から垂直な方向に離間した位置9a1,9b1,9c1で連結する帯状の壁部10とを有する。
【0023】
各脚部9a~9cは、導水体4の長手方向(図1の紙面に垂直な方向)に垂直な断面において、幅方向に間隔ΔL1,ΔL2をあけて設けられており、断面形状が長方形の基部9a2,9b2,9c2と、半円状の先端部9a3,9b3,9c3とを有する。各脚部9a~9cの幅bは、たとえば4.5mmであり、間隔ΔL1,ΔL2は、たとえば45mm程度であり、壁部10の幅Bは、たとえば130mmである。また各脚部9a~9cの壁部10の車道空間8に臨む側の表面からの高さHは、たとえば10mm、壁部10の厚さT1は、たとえば2mm程度であり、長さ8の定尺の押出し形材が用いられる。これらの寸法は、一例であって、壁面3の凹凸の大きさ、漏水の流出量などに応じて適宜決定される。
【0024】
各先端部9a3,9b3,9c3は、導水装置1が設置された状態において、壁面3に弾発的に当接し、壁部10と構造物2の壁面3との間に導水体4の長手方向に延びる空隙S1,S2を形成する。各脚部9a~9cは、半円状の先端部9a3~9c3を有するので、岩石などによって大きく湾曲した壁面3に導水体4が取付けられた状態で、壁面3の微細な凹凸を吸収し、導水体4を水密に壁面3に密着させることができる。このような導水体4は、可撓性を有する軟質の合成樹脂から成る。
【0025】
粘着シート5は、導水体4上に配設される中間部11と、中間部11の長手方向(図1の紙面に垂直な方向)に垂直な幅方向(図1の左右方向)両側部11a,11bにそれぞれ連なり、壁面3に粘着して接合される接合部12a,12bとを有する。このような粘着シート5は、粘着性を有する帯状のシート体から成る。
【0026】
上記の導水装置1は、導水体4の長手方向に間隔L2をあけて構造物2に打設され、各接合部12a,12bを壁面3に固定する複数のアンカー体13a,13bと、各接合部12a,12bの幅方向外側方(図1の左方および右方)の側端部と壁面3とにわたって線状に打設されるシール材14a,14bとさらに含む。
【0027】
各アンカー体13a,13bは、導水体4および粘着シート5の長手方向に500mm毎に打設され、たとえばステンレス鋼製のナベ頭コンクリートビスが用いられる。このようなナベ頭コンクリートビスに代えて、粘着シート5を壁面3に強固に固定する必要がある場合には、構造物2内に埋設される円筒部の軸線方向一端部に周方向に分断された複数の拡開片が一体的に形成され、円筒部の軸線方向他端部には外ねじが刻設されるねじ部を有する中空のアンカースリーブと、軸線方向一端部に拡開片に挿入される円錐台状のテーパ部が設けられるアンカーロッドと、アンカースリーブのねじ部に螺着されるナットとを有するアンカー体が用いられてもよい。これらのアンカースリーブ、アンカーロッドおよびナットは、たとえばステンレス鋼から成る。このようなアンカー体は、構造物2にコンクリートドリルなどの穿孔工具によって穿孔して予め下穴を形成し、この下穴に前記アンカースリーブを打ち込むことによってテーパ部が拡開片を半径方向外方へ押し開いて拡開させ、拡開した拡開片が周囲のコンクリートに噛み込むことによって、アンカースリーブが構造物2に固定される。
【0028】
導水体4は、前述したように、可撓性を有する軟質の合成樹脂から成る。可撓性を有する軟質の合成樹脂としては、軟質ポリ塩化ビニルが用いられ、その物性は、次の表1に示すとおりである。
【0029】
【表1】
【0030】
本実施形態の導水装置1において、導水体4に用いられる軟質ポリ塩化ビニルは、JIS K 6253に基づいて、温度23℃でデュロメータによって測定した硬さがA75であるが、難燃性を付与するための添加剤として、三酸化アンチモンおよび炭酸カルシウムが添加され、耐候性を付与するための添加剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名:チヌビン(登録商標))が添加され、さらに柔軟性を付与するための添加剤として、フタル酸ジイソノニル(略称DINP)およびアジビル酸ジオクチル(略称DOA)が添加されることを考慮して、軟質ポリ塩化ビニルの硬さは、A60以上、A75以下に選ばれ、好ましくはA70に選ばれる。
【0031】
このように本実施形態の導水装置1では、導水体4は軟質ポリ塩化ビニルから成るので、設置対象の壁面3の凹凸に応じて湾曲し、壁面3との間に隙間を生じることなしに密着させ、壁面3と粘着シート5と間に水密な導水空間を形成することができる。
【0032】
図4は粘着シート5の一部の拡大断面図である。前述の粘着シート5は、前述したように、粘着性を有する帯状のシート体から成る。このような粘着シート5は、基材層20と、基材層20の一表面に積層される粘着層21と、粘着層21の基材層20とは反対側の他表面に剥離可能に粘着される剥離フィルム22とを有する。基材層20は、その厚さがたとえば0.8mmであり、シリコーンゴムから成る。粘着層21は、その厚さがたとえば1.0mmであり、シリコーンゲルから成る。粘着シート5の物性は、次の表2に示すとおりである。
【0033】
【表2】
【0034】
粘着シート5は、25mm~200mmの試験片をJIS C 2107に規定された電気絶縁用粘着テープ試験方法に準じて、コンクリートモルタルの表面に乾燥状態で貼り付けたときの粘着力が16~18N/25mm、同じ試験片をアスファルト面に乾燥状態で貼り付けたときの粘着力が12~14N/25mmを一週間発揮することが好ましい。
【0035】
以上のように本実施形態の導水装置1は、可撓性を有する長尺の導水体4が構造物2の壁面3に沿って配設され、粘着性を有する帯状の粘着シート5が導水体4を覆うように壁面3に装着されるので、凹凸のある壁面3であっても、導水体4および粘着シート5は壁面3の凹凸に沿って変形させた状態で取付けることができ、導水体4と壁面3との間および粘着シート5と壁面3との間に水密な導水空間を形成し、壁面3からの漏水を導水空間によって排水溝などの排水設備へ確実に導いて排水することができる。
【0036】
また導水体4は、壁面3によって支持される複数の脚部9a~9cと、複数の脚部9a~9cを壁面3から離間した位置で連結する壁部10とを有するので、流路抵抗の少ない導水空間を実現することができ、漏水中の土砂、ごみなどの異物が導水体に係着しにくく、目詰まりが生じにくい導水装置を実現することができる。また壁面3から流れ出す漏水の流量、壁面の目地および亀裂などの位置などの各種の設置条件に応じて、導水装置1の設置位置および設置本数を変更して、設置条件に対して適切な設置態様を容易に実現することができ、設計上の自由度が高い導水装置を提供することができる。
【0037】
また導水体4の長手方向に間隔をあけて構造物2に打設された複数のアンカー体13a,13bによって、粘着シート5の各接合部12a,12bを壁面3に固定することができるので、いたずらなどによる人為的な操作および車両が跳ね飛ばした石、空き缶、木片など飛翔物の当接による外力の作用によって、粘着シート5が剥離してしまうことを防止することができる。
【0038】
図5は本発明の他の実施形態の導水装置1Aを示す断面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の導水装置1Aは、道路軸線L1方向に隣接して配設された複数(本実施形態では2)の導水体4a,4bを粘着シート5によって覆う広幅の導水装置である。一方の導水体4aの壁部10の一方の側縁部10bと、一方の導水体4aに道路軸線L1方向に隣接する他方の導水体4bの壁部10の前記一方の側縁部10bに隣接する側の一方の側縁部10aとは、厚み方向に重ねられた状態で、接着剤または両面粘着テープによって接着または粘着されて互いに水密に接合される。
【0039】
このように本実施形態の導水装置1Aは、道路軸線L1方向に複数の導水体4a,4bが水密に接合されるので、道路軸線L1方向に2以上の複数の導水体4a,4b,…が接合された幅広の導水装置1Aを壁面3に構築して、広範囲の漏水に容易に対処することができる。
【0040】
図6は本発明の他の実施形態の導水体4Aを示す断面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。前述の実施形態では、導水体4の各脚部9a~9cの先端部9a3,9b3,9c3は、長手方向に垂直な断面が半円状であったが、本実施形態の導水体4Aは、各脚部9a~9cの先端部9a3,9b3,9c3は長方形であり、各基部9a2,9b2,9c2に連なって一様な長方形断面を成す。
【0041】
導水体4Aの各脚部9a~9cの先端部9a3~9c3の断面が長方形であるので、壁面3に対して大きな摩擦力が得られ、物体の当接などによる外力に対して導水体4Aの変位を抑制し、導水体4Aのずれによる水密性の低下を防止することができる。設置態様としては、図1に示すように1つの導水体4Aを用いてもよく、図5に示すように、複数の導水体4Aを接合して用いてもよい。
【0042】
図7は本発明の他の実施形態の導水体4Bを示す断面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の導水体4Bは、各脚部9a~9cの先端部9a3~9c3の長手方向に垂直な断面が三角形とされる。
【0043】
導水体4Bの各脚部9a~9cの先端部の断面が三角形であるので、壁面3の微小な粗面状の凹凸を先端部9a3~9c3の変形によって吸収し、高い水密性を得ることができる。設置態様としては、図1に示すように1つの導水体4Aを用いてもよく、図5に示すように、複数の導水体4Aを接合して用いてもよい。
【0044】
図8は本発明の他の実施形態の導水装置1Bを示す断面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の導水装置1Bは、複数の透孔を有する筒状部材から成る複数の導水体4Cが用いられる。筒状部材は、外径が10mm程度であり、特殊変性ポリプロピレン樹脂から成る単繊維を中空編みした網状ホースによって実現されてもよい。網状ホースは、弾力性および屈曲性に富み、耐薬品性、耐寒性、耐水性に優れている。
【0045】
このような構成によって、壁面3から流れ出す漏水の流量、壁面3の目地および亀裂などの位置、導水装置の壁面からの突出量、導水装置の幅などの各種の設置条件に応じて、導水体4Cの本数および粘着シート5の幅を変更して、断面幅の異なる導水空間を容易に実現することができ、設計上の自由度が高い導水装置を提供することができる。
【0046】
本発明のさらに他の実施形態では、粘着シート5は、コンベアベルト、通路用マットなどに使用される、たとえば200N/mm以上の高張力のゴムシートによって実現されてもよい。ゴム材料の材質としては、天然ゴム(略称NR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム(略称EPT)、スチレンゴム(略称SBR)、ブチルゴム(略称HR)、ハイパロン(略称CSM)、アクリルゴム(略称ACM、ANM)などの各種材料を選択的に用いることができる。
【0047】
本発明の導水装置は、凹凸のある壁面に限らず、平面状の壁面のも当然に設置が可能である。また構造物は、上記のトンネルの覆工コンクリート壁に限らず、その他の構造物、たとえば橋台、橋脚、擁壁などの各種のコンクリート構造物であってもよい。また、壁面の凹凸の形状、漏水の範囲、漏水の流出量などに応じて、図1図8に示される各実施形態の導水体4,4A,4Bを組み合わせた態様も可能であり、上述と同様に高い水密性を有する導水空間を容易に構築することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B 導水装置
2 構造物
3 壁面
4;4a,4b;4A;4B;4C 導水体
5 粘着シート
6 トンネル
7 覆工コンクリート壁
8 車道空間
9a,9b,9c 脚部
9a2,9b2,9c2 基部
9a3,9b3,9c3 先端部
10 壁部
11 中間部
11a,11b 側部
12a,12b 接合部
13a,13b アンカー体
14a,14b シール材
20 基材層
21 粘着層
22 剥離フィルム
L1 道路軸線
ΔL1,ΔL2 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8